説明

医療用針

【課題】患者の皮膚から湾曲針を抜いた後において、伸縮部を伸長状態のまま維持し続けることが可能な医療用針を提供する。
【解決手段】湾曲針10と、基部20と、パンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30と、板状部材60とを備える医療用針1。伸縮部30は、湾曲針10を間にして対向配置された第1及び第2伸縮部材32,36と、第1及び第2伸縮部材32,36に配置されたフック部40と、第1及び第2伸縮部材32,36に配置され、第1及び第2伸縮部材32,36が伸長した状態のときにフック部40が係止される切り欠き部42と、切り欠き部42の近傍に配置され、フック部40が切り欠き部42に係止されるときにフック部40を切り欠き部42に向けて押さえる機能を有する押さえ部材46とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用針に関する。
【背景技術】
【0002】
皮下埋込式カテーテルアクセスポートに穿刺するための針として、従来、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部を有する湾曲針と、パンタグラフのように伸縮する伸縮部と、湾曲針を通過させる通過部を有する板状部材とを備える医療用針が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。伸縮部の一端は、湾曲針の基端部側に設けられた基部と接続されており、伸縮部の他端は、板状部材と接続されている。
【0003】
従来の医療用針によれば、上記した伸縮部を備えているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、医療用針を使用する者(医療従事者及び患者本人を含む。以下、使用者という。)が誤って使用後の医療用針を自分に刺してしまう事故(いわゆる誤刺)の発生を防止することができる。
また、従来の医療用針によれば、上記した板状部材を備えているため、患者の皮膚から湾曲針を抜く際、板状部材の上面(患者の皮膚に接しない方の面)を上から押さえることにより、比較的スムーズに湾曲針を抜くことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−369884号公報
【特許文献2】特開2006−61379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、患者の皮膚から湾曲針を抜いた後において、伸縮部を伸長させた状態(以下、「伸長状態」ということもある。)のまま維持し続けたいという要望が、近年高まりつつある。なぜなら、使用者の意図しないときに伸縮部の伸長状態が解除されてしまうと、湾曲針の先端部が伸縮部(板状部材)から露出してしまう場合があるからである。湾曲針の先端部が伸縮部(板状部材)から露出してしまうと、誤刺が発生しかねない。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、患者の皮膚から湾曲針を抜いた後において、伸縮部を伸長状態のまま維持し続けることが可能な医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の医療用針は、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1(z)方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1(z)方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成された伸縮部材であり、さらに、パンタグラフ状に伸縮可能であって、前記湾曲針(10)を間にして対向配置された第1伸縮部材(32)及び第2伸縮部材(36)と、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)のうち一方側に配置されたフック部(40)と、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)のうち他方側に配置され、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が伸長した状態のときに前記フック部(40)が係止される切り欠き部(42)と、前記切り欠き部(42)の近傍に配置され、前記フック部(40)が前記切り欠き部(42)に係止されるときに前記フック部(40)を前記切り欠き部(42)に向けて押さえる機能を有する押さえ部材(46)とを有することを特徴とする。
【0008】
このため、本発明の医療用針によれば、上記したフック部及び切り欠き部を備えているため、第1及び第2伸縮部材を伸長状態にして切り欠き部にフック部を係止することにより、第1及び第2伸縮部材の伸長状態を維持し続けることが可能となる。
したがって、本発明の医療用針は、患者の皮膚から湾曲針を抜いた後において、伸縮部(第1及び第2伸縮部材)を伸長状態のまま維持し続けることが可能な医療用針となる。
【0009】
また、本発明の医療用針によれば、上記した押さえ部材を備えているため、フック部と切り欠き部との係合力をさらに高めることが可能となる。このため、第1及び第2伸縮部材の伸長状態を、より強い係合力でもって維持し続けることが可能となる。
【0010】
また、本発明の医療用針によれば、フック部と切り欠き部と押さえ部材とによる比較的簡易な部材で構成されているため、製造コストがそれほど高くなることもない。
【0011】
また、本発明の医療用針によれば、第1及び第2伸縮部材を最も伸ばしたときの第1方向に沿った長さが、湾曲針の先端部から湾曲部までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0012】
[2]上記[1]に記載の医療用針においては、前記切り欠き部(42)は、前記基部(20)側に位置する第1開口端(43)と、前記板状部材(60)側に位置する第2開口端(44)と、前記第1開口端(43)及び前記第2開口端(44)を繋ぐ第3開口端(45)とを有し、前記押さえ部材(46)は、一方端(47)が前記第1開口端(43)近傍位置に接続され、他方端(48)が前記第1開口端(43)から前記第2開口端(44)方向に向けて伸びるツメ状の押さえ部材であって、前記他方端(48)と前記第2開口端(44)との間に所定の空間(P)が形成されるように構成されていることが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、ツメ状の押さえ部材の他方端と切り欠き部の第2開口端との間に所定の空間が形成されるため、当該空間が形成されない場合(すなわち、押さえ部材の両端が切り欠き部の開口端近傍位置と接続されている場合)と比べて、スムーズにフック部を切り欠き部に係合させることが可能となる。
【0014】
また、上記のように構成することにより、第1及び第2伸縮部材が伸長状態のときに基部の上方(第1方向に沿った方向)から力が加わった場合に、フック部の端面が第1開口端とぶつかるため、フック部が切り欠き部から外れ難くなる。このときさらに、ツメ状の押さえ部材の他方端が第1開口端から第2開口端方向に向けて伸びるように構成されていることから、フック部が切り欠き部から外れようとするのをさらに抑制することが可能となる。その結果、第1及び第2伸縮部材の伸長状態を、さらに強い係合力でもって維持し続けることが可能となる。
【0015】
[3]上記[1]又は[2]に記載の医療用針においては、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2(y)方向としたとき、前記フック部(40,50)、前記切り欠き部(42,52)及び前記押さえ部材(46,56)のそれぞれは、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)における前記第2(y)方向手前側の面及び前記第2(y)方向奥側の面の両面に配置されていることが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、第1及び第2伸縮部材における第2方向手前側及び奥側の両方からフック部と切り欠き部とで係合させ、かつ、押さえ部材で係合力を高めていることから、第1及び第2伸縮部材の伸長状態を、さらに強い係合力でもって維持し続けることが可能となる。
【0017】
なお、フック部、切り欠き部及び押さえ部材のそれぞれが、第1及び第2伸縮部材における第2方向手前側の面及び第2方向奥側の面の両面に配置されている場合は、(A)第1伸縮部材における第2方向手前側の面及び奥側の面の両方に切り欠き部及び押さえ部材が配置され、第2伸縮部材における第2方向手前側の面及び奥側の面の両方にフック部が配置されていてもよいし、(B)第2伸縮部材における第2方向手前側の面に第1のフック部が配置され、第1伸縮部材における第2方向手前側の面に第1のフック部に対応する第1の切り欠き部及び第1の押さえ部材が配置され、第1伸縮部材における第2方向奥側の面に第2のフック部が配置され、第2伸縮部材における第2方向奥側の面に第2のフック部に対応する第2の切り欠き部及び第2の押さえ部材が配置されていてもよい。
【0018】
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の医療用針においては、前記基部(20)に設けられ、前記基部(20)を中心軸として回動可能に構成された翼部(170)をさらに備え、前記翼部(170)は、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が折り畳まれた状態のときに前記フック部(40,50)が係止される被係止部(175,176)を有し、前記被係止部(175,176)は、前記翼部(170)のうち、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が折り畳まれた状態のときにおける、前記フック部(40,50)の位置に対応する位置に配置され、かつ、前記翼部(170)を回動させることにより前記フック部(40,50)との係合状態を解除可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、第1及び第2伸縮部材が折り畳まれた状態を維持し続けることが可能となる。例えば、患者の皮膚に湾曲針を穿刺した際に、仮に第1及び第2伸縮部材に対して伸長しようとする力(伸縮部が開こうとする力)が発生した場合であっても、本発明の医療用針によれば、被係止部にフック部を係止することによって、そのような伸長しようとする力を抑制することが可能となる。したがって、本発明の医療用針は、患者の皮膚に安定して穿刺可能な医療用針となる。
【0020】
また、被係止部が、翼部を回動させることによってフック部との係合状態を解除可能に構成されているため、「翼部を摘まむ」という簡単なアクションで被係止部とフック部との係合状態を解除することが可能となる。
【0021】
[5]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の医療用針においては、前記基部(20)に設けられた翼部(70)と、前記伸縮部(30)が折り畳まれた状態で前記翼部(70)及び前記板状部材(60)を押さえるとともに、前記湾曲針(10)を覆う針カバー部材(80)とをさらに備え、前記針カバー部材(80)には、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が折り畳まれた状態のときにおける、前記フック部(40)及び前記押さえ部材(46)のうち少なくとも一方の位置に対応する位置に、所定のクリアランスが設けられていることが好ましい。
【0022】
医療用針を使用する前(患者の皮膚に穿刺する前)においては、安全性を確保しつつ、コンパクトな医療用針が求められる。ここで、第1及び第2伸縮部材を折り畳んだ状態とすると、医療用針全体の大きさを小さくすることができる一方、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができない。また、第1及び第2伸縮部材を伸ばした状態とすると、湾曲針(の先端部)を第1及び第2伸縮部材によってカバーすることができる一方、医療用針全体の大きさが比較的大きなものとなってしまう。
本発明の医療用針によれば、医療用針を使用する前は、第1及び第2伸縮部材を折り畳んだ状態で針カバー部材内に湾曲針、第1及び第2伸縮部材並びに板状部材などを格納することができるため、第1及び第2伸縮部材を折り畳んだ状態のままで安全性を確保することができる。つまり、本発明の医療用針は、安全性を確保しつつ、コンパクトな医療用針となる。
【0023】
また、針カバー部材に上記した所定のクリアランスが設けられていることにより、針カバー部材内に湾曲針、第1及び第2伸縮部材並びに板状部材などを格納したときに、フック部や押さえ部材が針カバー部材に引っかかってしまうのを防止することができる。
また、上記のように構成することにより、クリアランスを設けた部分以外の針カバー部材の厚みを薄くできるため、針カバー部材も含めた医療用針全体の小型化に寄与することができる。
【0024】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各手段の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の医療用針について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0026】
[実施形態1]
図1は、医療用針1の斜視図である。図2は、図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図である。図3は、医療用針1の正面図である。図4は、医療用針1の背面図(医療用針1をチューブ接続部22側から見た図)である。図5は、医療用針1の側面図である。なお、図1〜図5においては、針カバー部材80の図示を省略している。
【0027】
図6は、第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図である。図6(a)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も折り畳んだ状態のときの医療用針1の正面図であり、図6(e)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も伸長させた状態のときの医療用針1の正面図であり、図6(b)〜図6(d)は図6(a)に示す状態から図6(e)に示す状態になるまでの途中経過を示す医療用針1の正面図である。
【0028】
図7は、フック部40,50が切り欠き部42,52に係止される様子を説明するために示す図である。なお、図7においては、フック部40,50、切り欠き部42,52及び押さえ部材46,56の部分における、y−x平面での断面を模式的に図示している。
【0029】
図8は、フック部40、切り欠き部42及び押さえ部材46を説明するために示す図である。図8(a)は切り欠き部42及び押さえ部材46をy方向に沿って見た部分拡大図であり、図8(b)は切り欠き部42及び押さえ部材46をx方向に沿って見た部分拡大図であり、図8(c)は第1及び第2伸縮部材32,36を伸長状態としたときにおける、フック部40、切り欠き部42及び押さえ部材46をy方向に沿って見た部分拡大図である。
【0030】
図9及び図10は、針カバー部材80を説明するために示す図である。図9(a)は針カバー部材80の正面図であり、図9(b)は針カバー部材80の側面図であり、図9(c)は針カバー部材80の上面図であり、図9(d)は針カバー部材80の底面図である。図10(a)は針カバー部材80の斜視図であり、図10(b)は針カバー部材80を装着したときの医療用針1の斜視図である。
【0031】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx方向、y方向、z方向とする。x方向とは「第3方向」のことであり、y方向とは「第2方向」のことであり、z方向とは「第1方向」のことである。x方向は、板状部材60の長辺方向と同一の方向であり、y方向は、板状部材60の短辺方向と同一の方向(または、基部20の長手方向と同一の方向)であり、z方向は、湾曲針10の湾曲部14から先端部16に沿った方向(または、板状部材60における基部20側の面に垂直な方向)である。
【0032】
実施形態1に係る医療用針1は、図1〜図5に示すように、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部14を有する湾曲針10と、湾曲針10の一部が植設された基部20と、基部20に設けられ、パンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置された板状部材60と、基部20に設けられた翼部70と、針カバー部材80(図9及び図10参照。)とを備える。
【0033】
湾曲針10は、図5に示すように、基端部12と、例えば90度に湾曲した湾曲部14と、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポート(後述する図12参照。)に穿刺される先端部16とを有する。基端部12から湾曲部14までは、y方向に平行な直管状であり、湾曲部14から先端部16の手前までは、z方向に平行な直管状である。先端部16は、コアリング(アクセスポートにおけるセプタムの穴あきや削りカスの発生)防止のために若干屈曲した構成となっている。
【0034】
基部20は、湾曲針10の基端部12及び湾曲部14を覆うように構成されている。また、基部20は、管状のチューブ接続部22を有し、チューブ接続部22の部分で図示しないチューブに接続可能に構成されている。
【0035】
伸縮部30は、図3及び図4に示すように、湾曲針10を間にして対向配置された第1伸縮部材32及び第2伸縮部材36と、第2伸縮部材36におけるy方向手前側の面に配置されたフック部40と、第1伸縮部材32におけるy方向手前側の面に配置された切り欠き部42と、切り欠き部42の近傍に配置された押さえ部材46と、第1伸縮部材32におけるy方向奥側の面に配置されたフック部50と、第2伸縮部材36におけるy方向奥側の面に配置された切り欠き部52と、切り欠き部52の近傍に配置された押さえ部材56とを有する。
【0036】
第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、端部が基部20及び板状部材60に接続されており、屈曲部34,38の部分で略「くの字」状に屈曲可能に構成されている(図3及び図4参照。)。また、第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、第1及び第2伸縮部材32,36の各端部と基部20及び板状部材60との接続部分においても、屈曲可能に構成されている。このように構成された第1及び第2伸縮部材32,36が湾曲針10を間にして対向配置されているため、図6(a)〜図6(e)に示すように、x方向に沿って広がるように又は狭まるように、パンタグラフ状に伸縮することができる。
また、伸縮部30は、第1及び第2伸縮部材32,36が広がる方向が、後述する板状部材60の長辺方向と同じ方向となるように配置されている。
【0037】
第1及び第2伸縮部材32,36は、図6(e)から分かるように、第1及び第2伸縮部材32,36を最も伸ばしたときのz方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されている。
【0038】
フック部40,50の先端部は、図1及び図2に示すように、鉤状になっている。第1及び第2伸縮部材32,36を伸長状態(図6(e)に示す状態)にすると、図7に示すように、フック部40は切り欠き部42に係止され、フック部50は切り欠き部52に係止されることとなる。
【0039】
切り欠き部42は、図8(a)及び図8(b)に示すように、基部20側に位置する第1開口端43と、板状部材60側に位置する第2開口端44と、第1開口端43及び第2開口端44を繋ぐ第3開口端45とを有する。
【0040】
押さえ部材46は、一方端47が第1開口端43近傍位置に接続され、他方端48が第1開口端43から第2開口端44方向に向けて伸びるツメ状の押さえ部材である。言い換えれば、ツメ状の押さえ部材46は、伸縮部30を伸長させたときにツメの先端(他方端48)が板状部材60側に向くように構成されている。押さえ部材46は、他方端48と第2開口端44との間に所定の空間P(図8(b)参照。)が形成されるように構成されている。
【0041】
押さえ部材46は、フック部40が切り欠き部42に係止されるときにフック部40を切り欠き部42に向けて押さえる機能を有する(図7参照。)。
【0042】
なお、フック部40が切り欠き部42に完全に係止された後においては、押さえ部材46は、フック部40と接触していてもよいし、フック部40と接触していなくてもよい。つまり、フック部40が切り欠き部42に完全に係止された後においては、押さえ部材46は、必ずしもフック部40を切り欠き部42に向けて押さえていなくてもよい。
【0043】
切り欠き部52及び押さえ部材56は、上記の切り欠き部42及び押さえ部材46と同様の構成及び機能を有するため、詳細な説明は省略する。
【0044】
板状部材60は、図1及び図2に示すように、略長方形状の板状部材であり、長方形の四隅の角は丸め処理が施されている。板状部材60は、その長辺がx方向に沿い、短辺がy方向に沿うように配置されている。板状部材60は、略中央部に形成され、湾曲針10を通過させる通過部62を有する。通過部62は、スリット状(切れ込み状)の通過部である。
【0045】
翼部70は、図1〜図4に示すように、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材であって、略矩形状の把持部72,74と、基部20と各把持部72,74との間に配置され、把持部72,74の厚みよりも薄く形成された薄肉部77,78とを有する。把持部72,74は、基部20と薄肉部77,78との接続部分を軸として所定角度回動可能に構成されている(後述する図11(a1)〜図11(c1)及び図11(a2)〜図11(c2)参照。)。薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、翼部70を把持する際に、基部20と薄肉部77,78とが干渉してしまうのを抑制することができ、結果として、翼部70を把持しやすくなる。また、薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、把持部72,74を回動させやすいという効果もある。
【0046】
基部20、伸縮部30、板状部材60及び翼部70は、同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなり、射出成形することによって形成されている。
【0047】
針カバー部材80は、図9及び図10に示すように、所定の厚みを残して中身がくり抜かれた、正面視略T字状の部材である。針カバー部材80は、伸縮部30を折り畳んだ状態で翼部70、伸縮部30及び板状部材60を格納可能な第1格納部82と、伸縮部30を折り畳んだ状態で湾曲針10(の先端部16)を格納可能な第2格納部84とを有する。第1格納部82の上面には、基部20の位置に対応して切り欠き83が設けられている。伸縮部30を折り畳んだ状態とすると、図10(b)から分かるように、翼部70、伸縮部30及び板状部材60が第1格納部82に格納され、湾曲針10(の先端部16)が第2格納部84に格納される。
【0048】
また、針カバー部材80には、第1及び第2伸縮部材32,36が折り畳まれた状態(図6(a)に示す状態)のときにおける、フック部40の位置に対応する位置に凸部86が設けられており、フック部50の位置に対応する位置に平面視コの字形状の溝部87が設けられており、押さえ部材46の位置に対応する位置に略四角形状の穴部88が設けられている。これら凸部86、溝部87及び穴部88によって、針カバー部材80とフック部40,50及び押さえ部材46との間に所定のクリアランスが設けられることとなる(図10(b)参照。)。
【0049】
第1格納部82は、図9(a)に示すように、凸部86を設けた部分以外のz方向に沿った厚みT1が、凸部86を設けた部分のz方向に沿った厚みT2よりも薄くなるように構成されている。
【0050】
実施形態1に係る医療用針1について、図11〜図13を用いてさらに詳細に説明する。
図11〜図13は、医療用針1を説明するために示す図である。図11(a1)〜図11(e1)は医療用針1を使用したときの各状態を示す正面図であり、図11(a2)〜図11(e2)は図11(a1)〜図11(e1)に示す状態のときの斜視図である。図12(a)は医療用針1を患者の皮膚Sに穿刺したときの様子を模式的に示す図であり、図12(b)は医療用針1を患者の皮膚Sから抜いたときの様子を模式的に示す図である。なお、図12(a)及び図12(b)においては、アクセスポートAPに対する医療用針1の大きさや、患者の皮膚SからアクセスポートAPまでの深さ(距離)などは誇張して図示している。図13(a)は第1及び第2伸縮部材32,36が伸長状態のときに基部20の上方(z方向に沿った方向)から力が加わった場合の、医療用針1の正面図であり、図13(b)は図13(a)の符号Aで示す部分の拡大図である。なお、図13(b)においては、図面を分かりやすくするために、フック部40に斜線を付して図示している。
【0051】
医療用針1を使用する際には、まず、針カバー部材80が装着された状態の医療用針1(図10(b)参照。)から、針カバー部材80を取り外す。
次に、翼部70の把持部72,74を把持し、把持部72,74が接触するまで翼部70を回動させる(図11(a1)〜図11(c1)及び図11(a2)〜図11(c2)参照。)。
そして、把持部72,74を把持した状態で、患者の皮膚Sの下に埋め込まれたアクセスポートAPの所定部位に湾曲針10を穿刺する(図12(a)参照。)。穿刺後は、必要に応じて、把持部72,74を広げて把持部72,74の上からテープ止めを行う。
【0052】
患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜くときは、テープ止めを行った場合はテープを剥がして、板状部材60を押さえながら把持部72,74を摘まみ上げ、患者の皮膚Sから湾曲針10を引き抜く(図11(d1)、図11(e1)、図11(d2)、図11(e2)及び図12(b)参照。)。この湾曲針10の引き抜き動作とともに、または当該引き抜き動作の直後に、切り欠き部42,52にフック部40,50を係止させる(図8(c)参照。)。
【0053】
なお、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜く方法としては、上述の方法に限定されない。図示による説明は省略するが、各把持部72,74を第1及び第2伸縮部材32,36に沿わせる(板状部材60側に垂らす)ようにして、第1及び第2伸縮部材32,36と把持部72,74とを一緒に摘まみ上げてもよい。
【0054】
実施形態1に係る医療用針1によれば、上記したフック部40,50及び切り欠き部42,52を備えているため、第1及び第2伸縮部材32,36を伸長状態にして切り欠き部42,52にフック部40,50を係止することにより、第1及び第2伸縮部材32,36の伸長状態を維持し続けることが可能となる。
したがって、実施形態1に係る医療用針1は、患者の皮膚から湾曲針を抜いた後において、伸縮部(第1及び第2伸縮部材)を伸長状態のまま維持し続けることが可能な医療用針となる。
【0055】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、上記した押さえ部材46,56を備えているため、フック部40と切り欠き部42との係合力(及びフック部50と切り欠き部52との係合力)をさらに高めることが可能となる。このため、第1及び第2伸縮部材32,36の伸長状態を、より強い係合力でもって維持し続けることが可能となる。
【0056】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、フック部40,50と切り欠き部42,52と押さえ部材46,56とによる比較的簡易な部材で構成されているため、製造コストがそれほど高くなることもない。
【0057】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、第1及び第2伸縮部材32,36を最も伸ばしたときのz方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲針10(の先端部16)を伸縮部30によってカバーすることができる(図12(b)参照。)。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0058】
実施形態1に係る医療用針1においては、押さえ部材46(及び押さえ部材56)は、他方端48が第1開口端43から第2開口端44方向に向けて伸びるツメ状の押さえ部材であって、他方端48と第2開口端44との間に所定の空間Pが形成されるように構成されているため、当該空間が形成されない場合(すなわち、押さえ部材の両端が切り欠き部42の開口端近傍位置と接続されている場合)と比べて、スムーズにフック部40,50を切り欠き部42,52に係合させることが可能となる。
【0059】
実施形態1に係る医療用針1においては、図13(a)に示すように、第1及び第2伸縮部材32,36が伸長状態のときに基部20の上方(z方向に沿った方向)から力が加わった場合、図13(b)に示すように、フック部40の端面が第1開口端43とぶつかるため、フック部40が切り欠き部42から外れ難くなる。図示による説明は省略するが、フック部50についても同様に、フック部50の端面が切り欠き部52の第1開口端とぶつかるため、フック部50が切り欠き部52から外れ難くなる。さらに、ツメ状の押さえ部材46,56の他方端が、第1開口端から第2開口端方向に向けて伸びるように構成されていることから、フック部40,50が切り欠き部42,52から外れようとするのをさらに抑制することが可能となる。その結果、第1及び第2伸縮部材32,36の伸長状態を、さらに強い係合力でもって維持し続けることが可能となる。
【0060】
実施形態1に係る医療用針1においては、フック部40,50、切り欠き部42,52及び押さえ部材46,56のそれぞれは、第1及び第2伸縮部材32,36におけるy方向手前側の面及びy方向奥側の面の両面に配置されている。これにより、第1及び第2伸縮部材32,36におけるy方向手前側及び奥側の両方からフック部40,50と切り欠き部42,52とで係合させ、かつ、押さえ部材46,56で係合力を高めていることから、第1及び第2伸縮部材32,36の伸長状態を、さらに強い係合力でもって維持し続けることが可能となる。
【0061】
実施形態1に係る医療用針1においては、上記した翼部70をさらに備えるため、翼部70を把持して湾曲針10の抜き差しを容易に行うことが可能となる。
【0062】
実施形態1に係る医療用針1においては、上記した針カバー部材80をさらに備えるため、医療用針1を使用する前は、伸縮部30を折り畳んだ状態で針カバー部材80内に湾曲針10、伸縮部30及び板状部材60などを格納することができる。このため、伸縮部30を折り畳んだ状態のままで安全性を確保することができる。つまり、実施形態1に係る医療用針1は、安全性を確保しつつ、コンパクトな医療用針となる。
【0063】
実施形態1に係る医療用針1においては、針カバー部材80には、上記した凸部86、溝部87及び穴部88が形成されている。すなわち、針カバー部材80とフック部40,50及び押さえ部材46との間に所定のクリアランスが設けられているため、針カバー部材80内に湾曲針10、第1及び第2伸縮部材32,36並びに板状部材60などを格納したときに、フック部40,50や押さえ部材46が針カバー部材80に引っかかってしまうのを防止することができる。
また、上述したように、凸部86を設けた部分以外の針カバー部材80の厚みを薄くできるため(図9(a)に示すように「T1<T2)」に設定されているため)、針カバー部材80も含めた医療用針1全体の小型化に寄与することができる。
【0064】
[実施形態2]
図14は、実施形態2に係る医療用針2を説明するために示す図である。図14(a)は医療用針2の正面図であり、図14(b)は図14(a)のA−A断面図である。なお、図14においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図14において、図1〜図5と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0065】
実施形態2に係る医療用針2は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、翼部の構成が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0066】
すなわち、実施形態2に係る医療用針2においては、図14に示すように、翼部として、被係止部175,176(被係止部176のみ図14(a)及び図14(b)に図示。)を有する翼部170を備えている。
【0067】
翼部170は、略矩形状の把持部172,174と、基部20と各把持部172.174との間に配置され、把持部172,174の厚みよりも薄く形成された薄肉部177,178と、各把持部172,174の端面の一部に配置された被係止部175,176とを有する。把持部172,174及び薄肉部177,178は、実施形態1で説明した把持部72,74及び薄肉部77,78と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0068】
被係止部175,176は、第1及び第2伸縮部材32,36が折り畳まれた状態のときにおける、フック部40,50の位置に対応する位置に配置されている。また、被係止部175,176は、第1及び第2伸縮部材32,36が折り畳まれた状態のときにフック部40,50が係止される機能と、翼部70(把持部172,174)を回動させたときにフック部40,50との係合状態が解除される機能とを有する。
【0069】
このように、実施形態2に係る医療用針2は、実施形態1に係る医療用針1とは翼部の構成が異なるが、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、上記したフック部40,50及び切り欠き部42,52を備えているため、第1及び第2伸縮部材32,36を伸長状態にして切り欠き部42,52にフック部40,50を係止することにより、第1及び第2伸縮部材32,36の伸長状態を維持し続けることが可能となる。
したがって、実施形態2に係る医療用針2は、患者の皮膚から湾曲針を抜いた後において、伸縮部(第1及び第2伸縮部材)を伸長状態のまま維持し続けることが可能な医療用針となる。
【0070】
実施形態2に係る医療用針2においては、上記した被係止部175,176を有する翼部170を備えているため、第1及び第2伸縮部材32,36が折り畳まれた状態を維持し続けることが可能となる。例えば、患者の皮膚に湾曲針10を穿刺した際に、仮に第1及び第2伸縮部材32,36に対して伸長しようとする力(伸縮部が開こうとする力)が発生した場合であっても、実施形態2に係る医療用針2によれば、被係止部175,176にフック部40,50を係止することによって、そのような伸長しようとする力を抑制することが可能となる。したがって、実施形態2に係る医療用針2は、患者の皮膚に安定して穿刺可能な医療用針となる。
【0071】
また、被係止部175,176が、翼部170を回動させることによってフック部40,50との係合状態を解除可能に構成されているため、「翼部170を摘まむ」という簡単なアクションで被係止部175,176とフック部40,50との係合状態を解除することが可能となる。
【0072】
実施形態2に係る医療用針2は、翼部の構成が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0073】
以上、本発明の医療用針を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0074】
(1)上記各実施形態においては、ツメ状の押さえ部材46,56が、伸縮部30を伸長させたときにツメの先端が板状部材60側に向くように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、伸縮部30を伸長させたときにツメの先端が基部20側に向くように構成されていてもよい。また、上記各実施形態においては、押さえ部材として、他方端48が切り欠き部42の第2開口端44に接続されていない、いわゆるツメ状の押さえ部材を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、押さえ部材の両端が切り欠き部の第1又は第2開口端近傍位置に接続された構成からなる押さえ部材であってもよい。
【0075】
(2)上記各実施形態においては、切り欠き部42,52の切り欠き形状が、図1及び図8(b)から分かるように、略コの字形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、U字状や台形状など、フック部が係止可能な形状であれば、どのような切り欠き形状であってもよい。また、フック部の形状についても、切り欠き部の切り欠き形状に応じて適宜変更することが可能である。
【0076】
(3)上記各実施形態においては、第1伸縮部材32におけるy方向手前側の面に切り欠き部42及び押さえ部材46が配置され、第2伸縮部材36におけるy方向手前側の面にフック部40が配置され、第1伸縮部材32におけるy方向奥側の面にフック部50が配置され、第2伸縮部材36におけるy方向奥側の面に切り欠き部52及び押さえ部材56が配置された場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1伸縮部材32におけるy方向手前側の面及び奥側の面の両方に切り欠き部及び押さえ部材が配置され、第2伸縮部材36におけるy方向手前側の面及び奥側の面の両方にフック部が配置されていてもよい。
【0077】
(4)上記各実施形態においては、第1及び第2伸縮部材32,36における屈曲部34,38よりも板状部材60に近い位置に、フック部40,50、切り欠き部42,52及び押さえ部材46,56が配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材32,36における屈曲部34,38近傍位置又は屈曲部34,38よりも基部20に近い位置に、フック部、切り欠き部及び押さえ部材がそれぞれ配置されていてもよい。
【0078】
(5)上記各実施形態においては、第1及び第2伸縮部材32,36におけるy方向手前側の面及び奥側の面の両方に、フック部、切り欠き部及び押さえ部材が1組ずつ配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材32,36におけるy方向手前側の面及び奥側の面のいずれか一方にのみ、フック部、切り欠き部及び押さえ部材が1組配置されていてもよいし、第1及び第2伸縮部材32,36におけるy方向手前側の面及び奥側の面のいずれか一方にのみ、フック部、切り欠き部及び押さえ部材が複数組配置されていてもよいし、第1及び第2伸縮部材32,36におけるy方向手前側の面及び奥側の面の両方に、フック部、切り欠き部及び押さえ部材が複数組配置されていてもよい。
【0079】
(6)上記各実施形態においては、針カバー部材とフック部40,50及び押さえ部材46との間に所定のクリアランスを設けるために、凸部86、溝部87及び穴部88が設けられた針カバー部材80を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。針カバー部材とフック部40,50及び押さえ部材46との間に所定のクリアランスを設けることが可能であれば、他の形状・構成からなる針カバー部材を用いてもよい。また、凸部86、溝部87及び穴部88についても、上記した形状に限定されるものではない。
【0080】
(7)上記実施形態2においては、図14から分かるように、把持部172,174の端面の一部に被係止部175,176が設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、把持部172,174の端面全体に被係止部が設けられていてもよい。
【0081】
(8)上記各実施形態においては、板状部材が略長方形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状や丸形状の板状部材であってもよいし、三角形状や正方形状の板状部材であってもよいし、5角形以上の多角形状の板状部材であってもよい。
【0082】
(9)上記各実施形態においては、板状部材60に形成される通過部62が、スリット状(切れ込み状)のものである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。通過部としては、例えば、湾曲針10が通過する位置(板状部材の略中央部)に形成された穴(丸穴や角穴)であってもよい。
【0083】
(10)上記各実施形態においては、基部20、伸縮部30、板状部材60及び翼部70,170が一体成形されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これら各部材を個別に作成した後、各部材を接合してもよい。
【0084】
(11)上記各実施形態においては、基部20、伸縮部30、板状部材60及び翼部70,170が同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、部材ごとで異なるプラスチック材料を用いてもよいし、プラスチック材料以外の材料でこれら部材を形成してもよい。
【0085】
(12)上記各実施形態においては、湾曲針10の湾曲部14が90度湾曲している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。90度未満又は90度を超える角度で湾曲した湾曲針を備える医療用針についても本発明を適用可能である。
【0086】
(13)上記各実施形態においては、翼部70,170が、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基部20の上方に1つの翼部材がz方向に沿って伸びるように配置されていてもよい。また、上記各実施形態においては、略矩形状の把持部72,74,172,174を有する翼部70,170を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、略矩形状とは異なる形状(例えば丸形状など)の把持部を有する翼部であってもよい。
【0087】
(14)上記各実施形態においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と板状部材60の長辺方向とが同じx方向で揃えられ、翼部70,170の把持部72,74,172,174がx方向に伸びる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じx方向で揃えられ、翼部の把持部がy方向に伸びるように構成されていてもよい。または、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じy方向で揃えられ、翼部の把持部がy方向に伸びるように構成されていてもよい。
なお、後者の場合、すなわち、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と、板状部材の長辺方向と、翼部の把持部が伸びる方向とが、基部20の長手方向であるy方向と同じ向きに揃えられているときには、医療用針全体のx方向の幅を比較的小さくすることができるため、例えば、医療用針を2つ以上並べて配置したいときに、各医療用針と繋がる各チューブの導出方向を一方向に揃えた状態で医療用針を配置することが可能となる。
【0088】
(15)上記各実施形態においては、基部として、チューブ接続部22を有する基部20を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チューブ接続部が省略された基部(チューブ接続部を有しない基部)を備えていてもよい。この場合は、例えば、湾曲針10の基端部12を基部から露出させ、基端部12とチューブとを直接接続すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】医療用針1の斜視図。
【図2】図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図。
【図3】医療用針1の正面図。
【図4】医療用針1の背面図。
【図5】医療用針1の側面図。
【図6】第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図。
【図7】フック部40,50が切り欠き部42,52に係止される様子を説明するために示す図。
【図8】フック部40、切り欠き部42及び押さえ部材46を説明するために示す図。
【図9】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図10】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図11】医療用針1を説明するために示す図。
【図12】医療用針1を説明するために示す図。
【図13】医療用針1を説明するために示す図。
【図14】実施形態2に係る医療用針2を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0090】
1,2 医療用針
10 湾曲針
12 湾曲針の基端部
14 湾曲部
16 湾曲針の先端部
20 基部
22 チューブ接続部
30 伸縮部
32 第1伸縮部材
34,38 屈曲部
36 第2伸縮部材
40,50 フック部
42,52 切り欠き部
43 第1開口端
44 第2開口端
45 第3開口端
46,56 押さえ部材
47 (押さえ部材の)一方端
48 (押さえ部材の)他方端
60 板状部材
62 通過部
70,170 翼部
72,74,172,174 把持部
77,78,177,178 薄肉部
80 針カバー部材
82 第1格納部
83 (第1格納部の)切り欠き
84 第2格納部
86 凸部
87 溝部
88 穴部
175,176 被係止部
AP アクセスポート
S 患者の皮膚
T1 凸部を設けた部分以外のz方向に沿った厚み
T2 凸部を設けた部分のz方向に沿った厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1(z)方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、
前記伸縮部(30)は、
前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1(z)方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成された伸縮部材であり、さらに、
パンタグラフ状に伸縮可能であって、前記湾曲針(10)を間にして対向配置された第1伸縮部材(32)及び第2伸縮部材(36)と、
前記第1及び第2伸縮部材(32,36)のうち一方側に配置されたフック部(40)と、
前記第1及び第2伸縮部材(32,36)のうち他方側に配置され、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が伸長した状態のときに前記フック部(40)が係止される切り欠き部(42)と、
前記切り欠き部(42)の近傍に配置され、前記フック部(40)が前記切り欠き部(42)に係止されるときに前記フック部(40)を前記切り欠き部(42)に向けて押さえる機能を有する押さえ部材(46)とを有することを特徴とする医療用針(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用針において、
前記切り欠き部(42)は、前記基部(20)側に位置する第1開口端(43)と、前記板状部材(60)側に位置する第2開口端(44)と、前記第1開口端(43)及び前記第2開口端(44)を繋ぐ第3開口端(45)とを有し、
前記押さえ部材(46)は、一方端(47)が前記第1開口端(43)近傍位置に接続され、他方端(48)が前記第1開口端(43)から前記第2開口端(44)方向に向けて伸びるツメ状の押さえ部材であって、前記他方端(48)と前記第2開口端(44)との間に所定の空間(P)が形成されるように構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療用針において、
前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2(y)方向としたとき、
前記フック部(40,50)、前記切り欠き部(42,52)及び前記押さえ部材(46,56)のそれぞれは、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)における前記第2(y)方向手前側の面及び前記第2(y)方向奥側の面の両面に配置されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の医療用針において、
前記基部(20)に設けられ、前記基部(20)を中心軸として回動可能に構成された翼部(170)をさらに備え、
前記翼部(170)は、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が折り畳まれた状態のときに前記フック部(40,50)が係止される被係止部(175,176)を有し、
前記被係止部(175,176)は、
前記翼部(170)のうち、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が折り畳まれた状態のときにおける、前記フック部(40,50)の位置に対応する位置に配置され、かつ、
前記翼部(170)を回動させることにより前記フック部(40,50)との係合状態を解除可能に構成されていることを特徴とする医療用針(2)。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の医療用針において、
前記基部(20)に設けられた翼部(70)と、
前記伸縮部(30)が折り畳まれた状態で前記翼部(70)及び前記板状部材(60)を押さえるとともに、前記湾曲針(10)を覆う針カバー部材(80)とをさらに備え、
前記針カバー部材(80)には、前記第1及び第2伸縮部材(32,36)が折り畳まれた状態のときにおける、前記フック部(40)及び前記押さえ部材(46)のうち少なくとも一方の位置に対応する位置に、所定のクリアランスが設けられていることを特徴とする医療用針(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−125173(P2010−125173A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304841(P2008−304841)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】