説明

医療診断支援装置、画像処理方法、画像処理プログラム、およびバーチャル顕微鏡システム

【課題】癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別できる医療診断支援情報を取得できる医療診断支援装置を提供する。
【解決手段】2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する医療診断支援装置であって、染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段142と、取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する標識強調手段143と、標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する標識抽出手段144と、抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する標識状態判定手段145と、その判定結果に基づいて標識状態を強調して表示する標識状態強調表示手段147,130と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色標本を撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する医療診断支援装置、画像処理方法、画像処理プログラム、およびバーチャル顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体に固有の物理的性質を表す物理量の一つに分光透過率スペクトルがある。分光透過率は、各波長における入射光に対する透過光の割合を表す物理量であり、照明光の変化に依存するRGB値等の色情報とは異なり、外因的影響によって値が変化しない物体固有の情報である。このため、分光透過率は、被写体自体の色を再現するための情報として様々な分野で利用されている。例えば、生体組織標本、特に病理標本を用いた病理診断の分野では、標本を撮像した画像の解析に分光特性値の一例として分光透過率が利用されている。
【0003】
病理診断では、臓器摘出によって得たブロック標本や針生検によって得た病理標本を、厚さ数ミクロン程度に薄切りした後、様々な所見を得るために顕微鏡を用いて拡大観察することが広く行われている。なかでも光学顕微鏡を用いた透過観察は、機材が比較的安価で取り扱いが容易である上、歴史的に古くから行われてきたこともあって、最も普及している観察方法の一つである。この場合、薄切りされた標本は、光を殆ど吸収および散乱せず無色透明に近いため、観察に先立って色素による染色を施すのが一般的である。
【0004】
染色手法としては、種々のものが提案されており、その総数は100種類以上にも達するが、特に病理標本に関しては、色素として青紫色のヘマトキシリンと赤色のエオジンの2つを用いるヘマトキシリン−エオジン染色(以下、「HE染色」と称す)が標準的に用いられている。
【0005】
ヘマトキシリンは、植物から採取された天然の物質であり、それ自身には染色性はない。しかし、その酸化物であるヘマチンは、好塩基性の色素であり、負に帯電した物質と結合する。細胞核に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)は、構成要素として含むリン酸基によって負に帯電しているため、ヘマチンと結合して青紫色に染色される。なお、前述の通り、染色性を有するのはヘマトキシリンではなく、その酸化物であるヘマチンであるが、色素の名称としてはヘマトキシリンを用いるのが一般的であるため、以下それに従う。
【0006】
一方、エオジンは、好酸性の色素であり、正に帯電した物質と結合する。アミノ酸やタンパク質が正負どちらに帯電するかは、pH環境に影響を受け、酸性下では正に帯電する傾向が強くなる。このため、エオジン溶液に酢酸を加えて用いることがある。細胞質に含まれるタンパク質は、エオジンと結合して赤から薄赤に染色される。
【0007】
HE染色後の標本(染色標本)では、細胞核や骨組織等が青紫色に、細胞質や結合組織、赤血球等が赤色に染色され、容易に視認できるようになる。この結果、観察者は、細胞核等の組織を構成する要素の大きさや位置関係等を把握でき、標本の状態を形態学的に判断することが可能となる。
【0008】
染色された標本の観察は、観察者の目視によるものの他、この染色された標本をマルチバンド撮像して外部装置の表示画面に表示することによっても行われている。表示画面に表示する場合には、撮像したマルチバンド画像から標本各点の分光透過率を推定する処理や、推定した分光透過率をもとに標本を染色している色素の色素量を推定する処理等が行われ、表示用の標本のRGB画像である表示画像が合成される。
【0009】
標本のマルチバンド画像から標本各点の分光透過率を推定する手法としては、例えば、主成分分析による推定法や、ウィナー(Wiener)推定による推定法等が挙げられる。ウィナー推定は、ノイズの重畳された観測信号から原信号を推定する線形フィルタ手法の一つとして広く知られており、観測対象の統計的性質とノイズ(観測ノイズ)の特性とを考慮して誤差の最小化を行う手法である。カメラからの信号には、何らかのノイズが含まれるため、ウィナー推定は原信号を推定する手法として極めて有用である。
【0010】
以下、標本のマルチバンド画像から表示画像を合成する従来の方法について説明する。
【0011】
先ず、標本のマルチバンド画像を撮像する。例えば、16枚のバンドパスフィルタをフィルタホイールで回転させて切り替えながら、面順次方式でマルチバンド画像を撮像する。これにより、標本の各点において16バンドの画素値を有するマルチバンド画像が得られる。なお、色素は、本来、観察対象となる標本内に3次元的に分布しているが、通常の透過観察系ではそのまま3次元像として捉えることはできず、標本内を透過した照明光をカメラの撮像素子上に投影した2次元像として観察される。したがって、ここでいう各点は、投影された撮像素子の各画素に対応する標本上の点を意味している。
【0012】
ここで、撮像されたマルチバンド画像の任意の点(画素)xについて、バンドbにおける画素値g(x,b)と、対応する標本上の点の分光透過率t(x,λ)との間には、カメラの応答システムに基づく次式(1)の関係が成り立つ。
【0013】
【数1】

【0014】
式(1)において、λは波長、f(b,λ)はb番目のフィルタの分光透過率、s(λ)はカメラの分光感度特性、e(λ)は照明の分光放射特性、n(b)はバンドbにおける観測ノイズをそれぞれ表す。bはバンドを識別する通し番号であり、ここでは1≦b≦16を満たす整数値である。実際の計算では、式(1)を波長方向に離散化した次式(2)が用いられる。
G(x)=FSET(x)+N ・・・(2)
【0015】
式(2)において、波長方向のサンプル点数をD、バンド数をB(ここではB=16)とすれば、G(x)は、点xにおける画素値g(x,b)に対応するB行1列の行列である。同様に、T(x)は、t(x,λ)に対応するD行1列の行列、Fは、f(b,λ)に対応するB行D列の行列である。一方、Sは、D行D列の対角行列であり、対角要素がs(λ)に対応している。同様に、Eは、D行D列の対角行列であり、対角要素がe(λ)に対応している。Nは、n(b)に対応するB行1列の行列である。なお、式(2)では、行列を用いて複数のバンドに関する式を集約しているため、バンドを表す変数bが記述されていない。また、波長λに関する積分は、行列の積に置き換えられている。
【0016】
ここで、表記を簡単にするため、次式(3)で定義される行列Hを導入する。この行列Hはシステム行列とも呼ばれる。
H=FSE ・・・(3)
【0017】
よって、式(3)は、次式(4)に置き換えられる。
G(x)=HT(x)+N ・・・(4)
【0018】
次に、ウィナー推定を用いて、撮像したマルチバンド画像から標本各点における分光透過率を推定する。分光透過率の推定値(分光透過率データ)T^(x)は、次式(5)で計算することができる。なお、T^は、Tの上に推定値を表す記号「^(ハット)」が付いていることを示す。
【0019】
【数2】

【0020】
ここで、Wは次式(6)で表され、「ウィナー推定行列」あるいは「ウィナー推定に用いる推定オペレータ」と呼ばれる。
W=RSS(HRSS+RNN−1 ・・・(6)
ただし、():転置行列、()−1:逆行列
【0021】
式(6)において、RSSは、D行D列の行列であり、標本の分光透過率の自己相関行列を表す。また、RNNは、B行B列の行列であり、撮像に使用するカメラのノイズの自己相関行列を表す。
【0022】
このようにして分光透過率データT^(x)を推定したら、次に、このT^(x)をもとに対応する標本上の点(標本点)における色素量を推定する。推定の対象とする色素は、ヘマトキシリン、細胞質を染色したエオジン、赤血球を染色したエオジンまたは染色されていない赤血球本来の色素の3種類であり、それぞれ色素H,色素E,色素Rと略記する。なお、厳密には、染色を施さない状態であっても、赤血球はそれ自身特有の色を有しており、HE染色後は、赤血球自身の色と染色過程において変化したエオジンの色が重畳して観察される。このため、正確には両者を併せたものを色素Rと呼称する。
【0023】
一般に、光を透過する物質では、波長λ毎の入射光の強度I0(λ)と射出光の強度I(λ)との間に、次式(7)で表されるランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則が成り立つことが知られている。
【0024】
【数3】

【0025】
式(7)において、k(λ)は波長に依存して決まる物質固有の値、dは物質の厚さをそれぞれ表す。
【0026】
ここで、式(7)の左辺は、分光透過率t(λ)を意味している。したがって、式(7)は次式(8)に置き換えられる。
t(λ)=e−k(λ)・d ・・・(8)
【0027】
また、分光吸光度a(λ)は次式(9)で表される。
a(λ)=k(λ)・d ・・・(9)
【0028】
したがって、式(8)は次式(10)に置き換えられる。
t(λ)=e−a(λ) ・・・(10)
【0029】
ここで、HE染色された標本が、色素H,色素E,色素Rの3種類の色素で染色されている場合、ランベルト・ベールの法則により各波長λにおいて次式(11)が成立する。
【0030】
【数4】

【0031】
式(11)において、k(λ),k(λ),k(λ)は、それぞれ色素H,色素E,色素Rに対応するk(λ)を表し、例えば、標本を染色している各色素の色素スペクトル(以下、「基準色素スペクトル」と称す)である。また、d,d,dは、マルチバンド画像の各画像位置に対応する標本各点における色素H,色素E,色素Rの仮想的な厚さを表す。なお、色素は標本中に分散して存在するため、厚さという概念は正確ではないが、標本が単一の色素で染色されていると仮定した場合と比較して、どの程度の量の色素が存在しているかを表す相対的な色素量の指標となる。すなわち、d,d,dは、それぞれ色素H,色素E,色素Rの色素量を表しているといえる。なお、k(λ),k(λ),k(λ)は、色素H,色素E,色素Rを用いてそれぞれ個別に染色した標本を予め用意し、その分光透過率を分光器で測定することによって、ランベルト・ベールの法則から容易に求めることができる。
【0032】
ここで、位置xにおける分光透過率をt(x,λ)とし、分光吸光度をa(x,λ)とすると、式(9)は次式(12)に置き換えられる。
a(x,λ)=k(λ)・d+k(λ)・d+k(λ)・d ・・・(12)
【0033】
そして、式(5)を用いて推定された分光透過率T^(x)の波長λにおける推定分光透過率をt^(x,λ)、推定吸光度をa^(x,λ)とすると、式(12)は次式(13)に置き換えられる。なお、t^は、tの上に記号「^」が付いていることを示し、a^は、aの上に記号「^」が付いていることを示す。
【0034】
【数5】

【0035】
式(13)において、未知変数は、d,d,dの3つであるから、少なくとも3つの異なる波長λについて式(13)を連立させれば、これらを解くことができる。より精度を高めるために、4つ以上の異なる波長λに対して式(13)を連立させ、重回帰分析を行ってもよい。例えば、3つの波長λ,λ,λについて式(13)を連立させた場合、次式(14)のように行列表記できる。
【0036】
【数6】

【0037】
ここで、式(14)を次式(15)に置き換える。
【0038】
【数7】

【0039】
式(15)において、波長方向のサンプル点数をDとすれば、A^(x)は、a^(x,λ)に対応するD行1列の行列であり、Kは、k(λ)に対応するD行3列の行列、d(x)は、点xにおけるd,d,dに対応する3行1列の行列である。なお、A^は、Aの上に記号「^」が付いていることを示す。
【0040】
そして、式(15)に従い、最小二乗法を用いて色素量d,d,dを算出する。最小二乗法とは、単回帰式において誤差の二乗和を最小にするようにd(x)を決定する方法であり、次式(16)で算出できる。なお、式(16)において、d^(x)は、推定された色素量である。
【0041】
【数8】

【0042】
以上のようにして標本を染色している色素の色素量を推定したら、その推定した色素量に基づいて、標本の表示画像であるRGB画像を合成する。
【0043】
ところで、色素量を用いた病理診断法として、2種類の染料で病理標本を染色し、スペクトル画像から色素量を推定して、2つの色素量の比から癌細胞の有無を判定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この病理診断法は、癌細胞と正常細胞とで、2つの色素量の比が明らかに異なる比を示す場合に、癌細胞の検出に適用することができる。しかし、HE染色は、単に核と細胞質とを染色する染料であり、癌細胞を特異的に染色しない。このため、別途、癌細胞を特異的に染色する染料を施す必要がある。
【0044】
一方、蛍光観察により、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅を検出する方法として、Fluorescence In Situ Hybridization(FISH)法が知られている。FISH法においては、標識を蛍光物質や酵素などで標識させ、目的の遺伝子をハイブリダイゼーションさせて蛍光顕微鏡で観察する。また、複数の蛍光で染色された標本から、アンミキシング法を用いて染色毎に画像を分離して観察する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示の観察方法をFISH法に適用すれば、FISH法においては標識が強く発色するので、分離された各染色画像上の標識を容易に視認することが可能となる。
【0045】
また、明視野観察により、FISH法と同じように癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅を検出する方法として、Chromogenic In Situ Hybridization (CISH)法が知られている。CISH法は、免疫染色のような手順で光学顕微鏡を用いて標識を検出する方法である。このCISH法には、FISH法と比較して以下の利点がある。
【0046】
(1)標識と形態を同時に観察できる。
(2)標識は非常に安定で、スライドを常温で保存できる。
(3)高価な顕微鏡が必要ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特表2001−525580号公報
【特許文献2】特開2007−10340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
しかしながら、従来、CISH法を用いて、同一標本に対して複数の染色を行うことは技術的に困難であった。このため、複数の染色を施して観察したい場合は、FISH法が用いられていた。しかし、近年になって、CISH染色法でも、2重に染色を行うDual CISH染色法が提案されるようになった。このDual CISH染色法によると、異なる標識を、例えば、赤・青の2色で染色し、各染色による標識の位置が同じか(正常)、離れているか(転座)で確定診断を行うことができる。
【0049】
ところが、CISH染色はFISH染色と比較して、標識以外の細胞質も染色される。染色の度合いは各細胞によってバラツキがあり、濃く染色された細胞の細胞質の染色濃度と薄く染色された細胞の標識の染色濃度が同程度となる場合が生じる。このため、標識の判断がFISH法より難しい。特に、Dual CISH染色では、両染色が混ざるため、各染色の標識を容易に判別できず、転座の判断が容易ではなかった。
【0050】
以上のようなことから、病理診断の分野では、Dual CISH染色法のような明視野観察によって、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別できる医療診断支援情報が取得できる技術の開発が望まれている。
【0051】
本発明は、かかる要望に応えるべくなされたもので、その目的とするは、2以上の染色方法で染色された標本を明視野観察して、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別できる医療診断支援情報を取得できる医療診断支援装置、画像処理方法、画像処理プログラム、およびバーチャル顕微鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0052】
上記目的を達成する医療診断支援装置の発明は、
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する医療診断支援装置であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段と、
該染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する標識強調手段と、
該標識強調手段により標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する標識抽出手段と、
該標識抽出手段により抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する標識状態判定手段と、
該標識状態判定手段による判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示する標識状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0053】
さらに、上記目的を達成する画像処理方法の発明は、
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理方法であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得するステップと、
取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調するステップと、
標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出するステップと、
抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定するステップと、
判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示するステップと、
を含むことを特徴とするものである。
【0054】
さらに、上記目的を達成する画像処理プログラムの発明は、
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理プログラムであって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する処理と、
取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する処理と、
標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する処理と、
抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する処理と、
判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0055】
さらに、上記目的を達成するバーチャル顕微鏡システムの発明は、
2以上の染色方法で染色された標本から医療診断支援情報を取得するバーチャル顕微鏡システムであって、
顕微鏡を用いて前記標本を投過光で撮像して染色標本画像を取得する画像取得手段と、
該画像取得手段により取得された染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段と、
該染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する標識強調手段と、
該標識強調手段により標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する標識抽出手段と、
該標識抽出手段により抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する標識状態判定手段と、
該標識状態判定手段による判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示する標識状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0056】
さらに、上記目的を達成する医療診断支援装置の発明は、
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する医療診断支援装置であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて標識および細胞をそれぞれ強調する対象領域強調手段と、
該対象領域強調手段により強調された標識および細胞を抽出する対象領域抽出手段と、
該対象領域抽出手段により抽出された標識に基づいて、当該対象領域抽出手段により抽出された細胞の細胞状態を判定する細胞状態判定手段と、
該細胞状態判定手段による判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示する細胞状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0057】
さらに、上記目的を達成する画像処理方法の発明は、
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理方法であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得するステップと、
取得された各染色の特徴量に基づいて細胞を強調するステップと、
細胞が強調された特徴量に基づいて細胞を抽出するステップと、
前記取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調するステップと、
標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出するステップと、
抽出された標識に基づいて抽出された細胞の細胞状態を判定するステップと、
判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示するステップと、
を含むことを特徴とするものである。
【0058】
さらに、上記目的を達成する画像処理プログラムの発明は、
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理プログラムであって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する処理と、
取得された各染色の特徴量に基づいて標識および細胞をそれぞれ強調する処理と、
強調された標識および細胞のそれぞれの特徴量に基づいて標識および細胞を抽出する処理と、
抽出された標識に基づいて抽出された細胞の細胞状態を判定する処理と、
判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0059】
さらに、上記目的を達成するバーチャル顕微鏡システムの発明は、
2以上の染色方法で染色された標本から医療診断支援情報を取得するバーチャル顕微鏡システムであって、
顕微鏡を用いて前記標本を投過光で撮像して染色標本画像を取得する画像取得手段と、
該画像取得手段により取得された染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段と、
該染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量に基づいて標識および細胞をそれぞれ強調する対象領域強調手段と、
該対象領域強調手段により強調された標識および細胞のそれぞれの特徴量に基づいて標識および細胞を抽出する対象領域抽出手段と、
該対象領域抽出手段により抽出された標識に基づいて、当該対象領域抽出手段により抽出された細胞の細胞状態を判定する細胞状態判定手段と、
該細胞状態判定手段による判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示する細胞状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、各細胞によってバラツキがあっても、標識のみが識別されて表示されるので、医師等のユーザは、標識を容易に視認することができる。また、陽性な標識状態と陰性な標識状態とが容易に判別できるように表示されるので、医師等のユーザは、標識状態の陽性/陰性を容易に視認することができる。これにより、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別することが可能となる。
【0061】
また、本発明によれば、標識および細胞がそれぞれ強調して抽出され、その抽出された標識に基づいて抽出された細胞の細胞状態を識別されて表示されるので、医師等のユーザは、細胞を容易に視認することができる。また、陽性な細胞状態と陰性な細胞状態とが容易に判別できるように識別されて表示されるので、医師等のユーザは、細胞状態の陽性/陰性を容易に視認することができる。これにより、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る医療診断支援装置の要部の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した画像取得部の要部の構成を示す模式図である。
【図3】図2に示したRGBカメラに配置されるカラーフィルタの配列例およびRGB各バンドの画素配列を模式的に示す図である。
【図4】図2に示したRGBカメラの分光感度特性を示す図である。
【図5】図2に示したフィルタ部を構成する一方の光学フィルタの分光透過率特性を示す図である。
【図6】図2に示したフィルタ部を構成する他方の光学フィルタの分光透過率特性を示す図である。
【図7】図1に示した医療診断支援装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す色素量の推定処理を説明するイメージ画像を示す図である。
【図9】図7に示す標識の強調処理を示すフローチャートである。
【図10】図9に示す処理により標識が強調されたイメージ画像である。
【図11】図7に示す標識の抽出処理によって得られる標識のイメージ画像を示す図である。
【図12】図7に示す標識状態の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】図12に示す両標識の重心間の距離算出処理を説明するための図である。
【図14】図7に示す標識状態の判定処理の他の例を示すフローチャートである。
【図15】図14に示す判定処理による判定例を説明するための図である。
【図16】図1に示した識別表示指定部によるGUIによる表示モードの指定態様を示す図である。
【図17】図1に示した医療診断支援装置による染色標識の識別表示態様を示す図である。
【図18】本発明の第2実施の形態に係る医療診断支援装置による標識間の特徴量の算出方法を説明するための図である。
【図19】本発明の第3実施の形態に係る医療診断支援装置による標識間の特徴量の算出方法を説明するための図である。
【図20】本発明の第4実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムを構成する顕微鏡装置の要部の構成を示す図である。
【図21】図20に示したホストシステムの要部の構成を示す図である。
【図22】本発明の第5実施の形態に係る医療診断支援装置の要部の機能構成を示すブロック図である。
【図23】図22に示した医療診断支援装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図24】図22に示した医療診断支援装置による細胞状態の判定例を説明するための図である。
【図25】図22に示した医療診断支援装置による細胞状態の識別表示態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明の好適実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0064】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る医療診断支援装置の要部の機能構成を示すブロック図である。この医療診断支援装置は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを含んで構成されるもので、顕微鏡を含む画像取得部110、入力部120、表示部130、演算部140、記憶部150、および各部を制御する制御部160を備える。
【0065】
画像取得部110は、対象の染色標本(以下、「対象標本」と称す)の顕微鏡によるマルチバンド画像(ここでは、6バンド画像)を取得するもので、図2に要部の構成を模式的に示すように、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子等を備えたRGBカメラ111、対象標本Sが載置される標本保持部112、標本保持部112上の対象標本Sを透過照明する照明部113、対象標本Sからの透過光を集光して結像させる顕微鏡対物レンズを含む光学系114、結像する光の波長帯域を所定範囲に制限するためのフィルタ部115を備える。
【0066】
RGBカメラ111は、例えばデジタルカメラ等で広く用いられているもので、モノクロの撮像素子上に、例えば図3(a)に示すようなベイヤー配列のRGBのカラーフィルタ116が配置された単板式のものを用いる。このRGBカメラ111は、撮像される画像の中心が照明光の光軸上に位置するように設置される。このRGBカメラ111の場合、各画素は、図3(b)に示すように、R,G,Bいずれかの成分しか撮像することはできないが、近傍の画素値を利用することで、不足するR,G,B成分が補間される。この手法は、例えば特許第3510037号公報において公知である。
【0067】
なお、RGBカメラ111は、3CCDタイプ(3板式)のカメラを使用すれば、最初から各画素におけるR,G,B成分を取得できる。本実施の形態では、単板式または3板式のいずれを用いても構わないが、以下ではRGBカメラ111で撮像された画像の各画素においてR,G,B成分が取得できているものとする。また、RGBカメラ111は、照明部113からの照明光を、光学系114を介して撮像する際、図4に示すような、R,G,Bの各バンドの分光感度特性を有するものとする。
【0068】
本実施の形態では、図4に示した分光感度特性を有するRGBカメラ111を用いて6バンドの画像を取得するため、フィルタ部115に、回転式のフィルタ切り替え部117を設け、このフィルタ切り替え部117に、R,G,Bの各バンドの透過波長領域を2分するように、それぞれ異なる分光透過率特性を有する2枚の光学フィルタ118a,118bを保持する。図5は、この場合の一方の光学フィルタ118aの分光透過率特性を示し、図6は、他方の光学フィルタ118bの分光透過率特性を示す。
【0069】
そして、制御部160により、先ず、例えば光学フィルタ118aを、照明部113からRGBカメラ111に至る光路上に位置させて、照明部113により標本保持部112上に載置された対象標本Sを照明し、その透過光を光学系114および光学フィルタ118aを経てRGBカメラ111の撮像素子上に結像させて第1の撮像を行う。次いで、制御部160により、フィルタ切り替え部117を回転させて、光学フィルタ118bを照明部113からRGBカメラ111に至る光路上に位置させて、同様にして第2の撮像を行う。
【0070】
これにより、第1の撮像および第2の撮像でそれぞれ異なる3バンドの画像を得て、合計で6バンドのマルチバンド画像を得る。なお、フィルタ部115に設ける光学フィルタの数は2枚に限定されるものではなく、3枚以上の光学フィルタを用いて、さらに多くのバンドの画像を得ることも可能である。
【0071】
上記の画像取得部110で取得された対象標本Sのマルチバンド画像(以下、「対象標本画像」と称す)は、マルチバンド画像データとして記憶部150に格納される。
【0072】
入力部120は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の各種入力装置によって実現されるものであり、操作入力に応じた入力信号を制御部160に出力する。
【0073】
表示部130は、LCD(Liquid Crystal Display)やEL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の表示装置によって実現されるものであり、制御部160から入力される表示信号をもとに各種画面を表示する。
【0074】
演算部140は、画像再構成部141、染色特徴量取得部142、標識強調部143、標識抽出部144、標識状態判定部145、標識状態識別部146、および標本陽性判定部147を有する。染色特徴量取得部142は、スペクトル推定部142aを含む色素量推定部142bを有する。標識強調部143は、フィルタサイズ設定部143a、平滑化処理部143bおよび差分特徴量算出部143cを有する。標識状態判定部145は、標識間特徴量算出部145aおよび標識陽性判定部145bを有する。また、標識状態識別部146は、識別表示指定部146aを有する。この演算部140は、CPU等のハードウェアによって実現される。
【0075】
記憶部150は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体およびその読取装置等によって実現されるものである。この記憶部150には、本実施の形態に係る医療診断支援装置を動作させて、この医療診断支援装置が備える種々の機能を実現するための画像処理プログラム151や、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が格納される。
【0076】
制御部160は、入力部120から入力される入力信号や画像取得部110から入力される画像データ、記憶部150に格納されているプログラムやデータ等に基づいて医療診断支援装置を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、全体の動作を統括的に制御する。また、制御部160は、画像取得部110の動作を制御して対象標本画像を取得する画像取得制御部161を含む。この制御部160は、CPU等のハードウェアによって実現される。
【0077】
以下、本実施の形態に係る医療診断支援装置の動作について、Dual CISH染色法により、赤色(R)と青色(B)とに染色された標本をマルチバンド撮像して医療診断支援情報を得る場合を例にとって説明する。なお、ここで説明する処理は、記憶部150に格納された画像処理プログラム151に従って医療診断支援装置の各部が動作することにより実現される。
【0078】
図7は、本実施の形態に係る医療診断支援装置の概略動作を示すフローチャートである。先ず、制御部160は、画像取得制御部161により画像取得部110の動作を制御して対象標本Sをマルチバンド撮像し、その各バンドの対象標本画像を取得する(ステップS101)。この対象標本画像の画像データは、記憶部150に格納される。
【0079】
本実施の形態では、各バンドの対象標本画像を、例えば、深度の異なる複数枚の画像から再構成して取得する。このため、図2において、対象標本Sに対する光学系114のフォーカス位置(深度)を変更しながら、各深度で対象標本Sをマルチバンド撮像して、深度の異なる画像データを記憶部150に格納する。ここで、マルチバンド撮像する深度単位は、細胞核の直径が5〜10μmであるから、例えば、1μm単位とする。
【0080】
そして、画像再構成部141により、記憶部150に格納されている深度の異なる複数枚の画像データに基づいて、各バンドの対象標本画像を再構成して取得する。なお、画像再構成部141は、例えば、深度の異なる複数枚の画像データから各領域で焦点が合うように画像を再構成するか(例えば、特開2005−37902号公報参照)、あるいは、深度の異なる複数枚の画像データを平均して画像を再構成する。
【0081】
このように、対象標本Sの深度の異なるマルチバンド画像を撮像して、その深度の異なる複数枚の画像データに基づいて、各バンドの対象標本画像を再構成して取得すれば、深度の異なる細胞核をより反映した画像を得ることができる。
【0082】
各バンドの対象標本画像を取得したら、制御部160は、次に、染色特徴量取得部142により、各バンドの対象標本画像の各画素における各染色の特徴量を取得し、その特徴量に基づいて染色毎の分離画像(染色分離画像)を作成する。ここで、各染色の特徴量には、(1)各染色の色素量、(2)任意のバンドの画素値、すなわち任意の波長帯域の照明光で撮像した染色標本画像の画素値、(3)色相等の任意の数式で変換した画像の特徴量、(4)リニア・アンミキシングで算出した特徴量、等があり、いずれの特徴量を取得してもよい。本実施の形態では、各染色の特徴量として、(1)の色素量を取得する。以下、画素値からスペクトルを推定し、スペクトルから各染色の色素量を推定して、色素量に基づいて染色分離画像を作成する処理を説明する。
【0083】
先ず、スペクトル推定部142aにより、ステップS101で取得した対象標本画像の画素値をもとに、対象標本のスペクトル(分光透過率)を推定する(ステップS103)。そして、上述した式(5)に従って、対象標本画像の推定対象画素である任意の点xにおける画素の画素値の行列表現G(x)から、対応する対象標本の標本点における分光透過率の推定値T^(x)を推定する。得られた分光透過率の推定値T^(x)は、記憶部150に格納する。
【0084】
次に、色素量推定部142bにより、ステップS103で推定した分光透過率の推定値T^(x)に基づいて、対象標本の色素量を推定する(ステップS105)。ここで、色素量推定部142bは、対象標本の染色に用いた染色方法の各色素の基準分光特性に基づいて、対象標本画像の任意の点xに対応する標本点における各染色方法の色素量を推定する。具体的には、対象標本画像の点xにおける分光透過率の推定値T^(x)に基づいて、点xに対応する対象標本の標本点に固定されたそれぞれの色素量を推定する。すなわち、上述した式(16)に従って、d^,d^について解く。推定された対象標本画像の点xにおける色素量d^,d^は、記憶部150に格納される。これにより、例えば、図8(a)に示すような原画像から、図8(b)に示す色素量d^の画像および図8(c)に示す色素量d^の画像がそれぞれ得られる。なお、図8(a)〜(c)は、イメージ画像で、背景の右上がり斜線は薄く赤みかかった部分を表し、右下がり斜線は薄く青みかかった部分を表している。
【0085】
以上により、各染色の特徴量を取得して染色分離画像を作成したら、次に、標識強調部143により、ステップS105で推定した各染色の特徴量すなわち色素量に基づいて、各染色分離画像における標識を強調する(ステップS107)。以下、図9に示すフローチャートを参照して、着目画素における染色の特徴量と近傍画素における染色の特徴量とに基づいて、標識を強調する場合の処理を説明する。
【0086】
先ず、フィルタサイズ設定部143aにより2つの異なるフィルタサイズを設定する(ステップS201)。ここで、一方のフィルタサイズは、1すなわち着目画素のみに設定し、他方のフィルタサイズは標識と同サイズに設定する。次に、2つのフィルタサイズそれぞれを用いて、平滑化処理部143bにより、染色の特徴量に平滑化処理を行う(ステップS203)。平滑化処理は、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、平均値フィルタ、ローパスフィルタのいずれを用いてもよい。その後、差分特徴量算出部143cにより、平滑化処理により算出した2つの特徴量の差分を算出する(ステップS205)。
【0087】
ここで、平滑化処理部143bにおいて、大きいサイズのフィルタを用いて平滑化すると、細胞内の構造による染色のバラツキが平滑化されるので、各細胞による染色のバラツキを示す特徴量が算出される。これに対し、小さいサイズのフィルタを用いて平滑化すると、細胞内の構造による染色のバラツキと各細胞による染色のバラツキとの両方を含む特徴量が算出される。また、両フィルタによる平滑化により、RGBカメラ111の撮像素子によるセンサノイズも低減される。したがって、差分特徴量算出部143cにおいて、両特徴量の差分を求めると、細胞内の構造による染色のバラツキ、つまり、所望のエッジである標識のみを強調できる。
【0088】
フィルタサイズ設定部143aによる2つの異なるフィルタサイズは、上述したように標識のみが強調されるように、入力部120を介して適切に設定する。なお、標識は、顕微鏡の倍率によって画像上におけるサイズが異なるので、少なくとも一方のフィルタサイズは顕微鏡の倍率に応じて適宜調整する。差分特徴量算出部143cにより算出された2つの特徴量の差分は、標識が強調された特徴量(色素量)として記憶部150に格納される。これにより、図10(a)に示すように、背景の赤みかかった部分が低減されて標識が強調された色素量d^の画像が得られるとともに、図10(b)に示すように、背景の青みかかった部分が低減されて標識が強調された色素量d^の画像が得られる。なお、図10(a)は図8(b)に対応するイメージ画像であり、図10(b)は図8(c)に対応するイメージ画像である。
【0089】
図7において、ステップS107による標識の強調処理が終了したら、次に、標識が強調された特徴量に基づいて、標識抽出部144により各染色の標識を抽出する(ステップS109)。ここでは、染色毎に所定の閾値(第1の閾値)を用い、各染色分離画像から対応する第1の閾値と特徴量との比較に基づいて標識を抽出する。この標識抽出部144で抽出された標識データは、記憶部150に格納される。これにより、図11(a)に示すような色素量d^に基づく標識の画像と、図11(b)に示すような色素量d^に基づく標識の画像とが得られる。なお、図11(a)は図10(a)に対応するイメージ画像であり、図11(b)は図10(b)に対応するイメージ画像である。
【0090】
ここで、標識を抽出するための染色毎の第1の閾値は、標本の染色状態に関わらず一義的に設定するか、あるいは、任意のアルゴリズムにより標本の染色状態に応じて適応的に設定する。アルゴリズムにより適応的に設定する場合は、例えば、非階層型クラスタリング手法の単純な手法であるK-means(K平均法とも呼ぶ)を用いて算出する。K-meansは、クラスタの平均を用い、与えられたクラスタ数K個に分類する。K-meansは、一般には、以下のような流れで実行される。
【0091】
(1)データの数をn、クラスタの数をKとしておく。
(2)各データに対してランダムにクラスタを割り振る。
(3)割り振ったデータをもとに各クラスタの中心を計算する。計算は通常割り当てられたデータの各要素の平均が使用される。
(4)各データと各クラスタの中心との距離を求めて、当該データを最も近い中心のクラスタに割り当て直す。
(5)上記の処理で全てのデータのクラスタの割り当てが変化しなかった場合は処理を終了する。それ以外の場合は新しく割り振られたクラスタから各クラスタの中心を再計算して上記の処理を繰り返す。
【0092】
K-meansによる結果は、最初のクラスタのランダムな割り振りに大きく依存するので、例えば、特徴量の最小値から最大値の範囲を均等に分割してクラスタを割り振ってもよい。これにより、結果を常に同等の値に収束させることができる。そして、いずれかのクラスタの平均値を閾値とする。クラスタ数や何番目のクラスタの平均値を閾値とするかは、適宜設定する。以上により、標本の染色状態に応じた適切な閾値が設定される。
【0093】
各染色の標識を抽出したら、次に、標識状態判定部145により標識状態を判定する(ステップS111)。この標識状態判定処理では、先ず、標識間特徴量算出部145aにより、各染色分離画像を重畳(合成)した状態で、各染色の標識データから異なる染色の標識間の特徴量を算出する。本実施の形態では、この標識間の特徴量として、異なる両標識の重心間距離を用いる。
【0094】
以下、異なる両標識の重心間の距離を用いる標識状態判定処理の一例について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。先ず、次式(17)により、各標識の重心を求める(ステップS301)。
【0095】
【数9】

【0096】
次に、下式(18)により、異なる両標識の重心間の距離を求める(ステップS303)。図13は、式(18)により算出される標識I,Jの重心間の距離distanceijの一例を示す。
【0097】
【数10】

【0098】
その後、標識状態判定部145は、両標識の重心間の距離に基づいて標識状態を判定する。そのため、例えば、両標識の重心間の距離を所定の閾値(第2の閾値)と比較する(ステップS305)。その結果、第2の閾値以下である場合、当該標識対を正常と判定する(ステップS307)。これに対し、一方の染色における任意の標識と、他方の染色における全標識との重心間の距離が、第2の閾値を満たさない場合、すなわち第2の閾値を超える場合は、当該任意の標識を転座と判定する(ステップS309)。これにより、全標識は、2標識の標識対で構成される正常状態と、1標識のみで構成される転座状態とのいずれかに判定される。なお、両標識の重心間の距離は、顕微鏡の倍率によって画像上における距離が異なるので、第2の閾値は、例えば、次式(19)に従って顕微鏡の倍率に応じて適切に調整する。
【0099】
【数11】

【0100】
なお、両標識の重心間の距離を用いる標識状態の判定処理は、図12に限らず、図14に示すフローチャートに従って実行することもできる。図14において、各標識の重心を算出して(ステップS401)、両標識の重心間の距離を求める(ステップS403)までは、図12のステップS301〜S303と同様である。その後、標識状態判定部145は、例えば、一方の染色における任意の標識が他方の染色における2以上の標識に対して、両標識の重心間の距離が第3の閾値を満たすか否かを判定する(ステップS405)。その結果、満たす(Yes)場合は、次式(20)により両標識の重心間の距離が最小となる標識対を正常と判定し、それ以外の標識を転座と判定する(ステップS407)。図15は、この場合の判定例を説明するための図である。図15において、標識I,Jの重心間の距離distanceij、標識I,Kの重心間の距離distanceikj、標識I,Lの重心間の距離distanceil、がそれぞれ第3の閾値を満たす場合、重心間の距離が最小の標識I,Jの対が正常と判定され、他の標識K,Lは転座と判定される。
【0101】
【数12】

【0102】
これに対し、ステップS405において、一方の染色における任意の標識が他方の染色における2以上の標識に対して、両標識の重心間の距離が第3の閾値を満たさない(No)場合は、他方の染色における1つの標識に対して、両標識の重心間の距離が第3の閾値を満たすか否かを判定する(ステップS409)。その結果、満たす場合は、上述した判定処理の場合と同様に、当該標識対を正常と判定する(ステップS411)。これに対し一方の染色における任意の標識と、他方の染色における全標識との重心間の距離が、第3の閾値を満たさない場合は、当該任意の標識を転座と判定する(ステップS413)。これにより、全標識は、上述した判定処理の場合と同様に、2標識の標識対で構成される正常状態と、1標識のみで構成される転座状態とのいずれかに判定される。なお、両標識の重心間の距離は、顕微鏡の倍率によって画像上における距離が異なるので、第3の閾値は、例えば、上式(19)に従って顕微鏡の倍率に応じて適切に調整する。この第3の閾値は、上述した判定処理における第2の閾値と同じとすることもできる。
【0103】
図7において、ステップS111により、上述したようにして判定された標識状態の判定結果は、記憶部150に格納される。その後、標識陽性判定部145bは、標識状態の判定結果に基づいて、2標識の標識対で構成される正常状態の場合を陰性、1標識のみで構成される転座状態の場合を陽性と判定して、その陽性判定結果を記憶部150に格納する。
【0104】
以上により、標識状態判定部145による判定処理が終了したら、次に、標識状態識別部146により、識別表示指定部146aに指定されている表示モードに応じて、標識状態を、染色を特徴的に表す原色、パターンやテクスチャー、あるいは半透明な色で識別して表示部130に表示する(ステップS113)。したがって、本実施の形態において、標識状態識別部146および表示部130は、標識状態識別表示手段を構成している。なお、識別表示指定部146aにより表示モードを指定するにあたっては、制御部160の制御のもとに、例えば、図16に示すように、表示部130にグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)により「陽性」ボタン171および「陰性」ボタン172を表示させて、ユーザにより入力部120を介して所望のボタンを選択させる。
【0105】
そして、例えば、「陽性」ボタン171が選択された場合は、陽性表示モードを指定して、図17(a)に示すように、陽性な標識のみを識別して表示させ、「陰性」ボタン172が選択された場合は、陰性表示モードを指定して、図17(b)に示すように、陰性な標識対のみを識別して表示させ、「陽性」ボタン171および「陰性」ボタン172の両方が選択された場合は、全表示モードを指定して、図17(c)に示すように、陽性な標識および陰性な標識対の両方を識別して表示させる。
【0106】
なお、図17(c)に示す全表示モードの場合は、図17(d)に示すように、陽性な標識と陰性な標識対とを異なる色の破線等で囲むように表示してもよい。また、図17(e)に示すように、陽性な標識と陰性な標識対とをそれぞれ異なる色で識別して表示してもよい。例えば、各染色の陽性な標識をともに赤色(図では白抜き)に、陰性な標識対の2標識をともに青色(図では黒塗り)に表示してもよい。
【0107】
また、後述するように、例えば、対象標本Sの陽性判定を行う場合は、図17(f)に示すように、標識対の重畳部分を異なる色で表示してもよい。例えば、ある染色による標識を青色、もう一方の染色による標識を赤色、両染色による標識の重畳部分を緑色(図では黒塗り)に表示する。
【0108】
その後、標本陽性判定部147により、対称標本Sが陽性か否かを判定する。この標本陽性判定においては、例えば、標識状態判定部145で判定された陽性な標識対と陰性な標識との比率を、次式(21)で算出する。
【0109】
【数13】

【0110】
あるいは、標識抽出部144で抽出された各染色の全標識の画素のうち、他方の染色の標識の画素と重畳している比率を、次式(22)で算出する。
【0111】
【数14】

【0112】
そして、上式(21)または(22)で算出された標本の陽性度と、所定の閾値との比較に基づいて、対象標本Sが陽性か否かを判定して、その結果を記憶部150に格納する。あるいは、上記の標本の陽性度を、そのまま対象標本Sの病状を表す参考値として、記憶部150に格納してもよい。
【0113】
本実施の形態に係る医療診断支援装置によれば、各細胞によってバラツキがあっても、Dual CISH染色法により染色された標識のみが識別されて表示されるので、医師等のユーザは、標識を容易に視認することができる。また、陽性な標識状態と陰性な標識状態とが容易に判別できるように識別されて表示されるので、医師等のユーザは、標識状態の陽性/陰性を容易に視認することができる。これにより、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別することが可能となる。
【0114】
なお、上記実施の形態では、対象標本Sを各深度でマルチバンド撮像して得た複数枚の画像データに基づいて、画像再構成部141により各バンドの対象標本画像を再構成して取得したが、画像再構成部141を省略し、画像を再構成することなく、対象標本Sを所定の深度でマルチバンド撮像して各バンドの対象標本画像を取得してもよい。
【0115】
また、標識強調部143は、2つの異なるフィルタサイズを用いてそれぞれ平滑化した2つの特徴量の差を算出して標識を強調処理したが、例えば、エッジ強調処理により標識を強調してもよい。エッジ強調処理の場合は、1つのフィルタサイズを用いて、染色の特徴量にエッジ強調処理を行う。これにより、細胞内の構造による染色のバラツキ、つまり、標識のみが強調された特徴量を得て記憶部150に格納する。このエッジ強調処理に用いるフィルタは、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタ、ハイパスフィルタのいずれでもよいが、フィルタサイズは、標識が強調されるように適切に設定する。なお、エッジ強調処理により標識を強調する場合も、フィルタサイズは顕微鏡の倍率に応じて適宜調整するのが好ましい。
【0116】
また、標識抽出部144は、K-meansに限らず、形態解析により標識データから標識のみを抽出してもよい。例えば、標識画像の各粒子に対して、標識の形態を示す円形度や面積を算出し、その算出した円形度や面積と所定の閾値とを比較することにより、標識のみをフィルタリングして抽出する。これにより、標識と誤って強調された非円形の細胞質の端による粒子等を除去することが可能となる。
【0117】
さらに、上記実施の形態では、標識状態判定部145による標識状態の判定結果に基づいて、標本陽性判定部147により対象標本Sの陽性判定を行うようにしたが、標本陽性判定部147を省略して、標識状態を識別して表示するのみでもよい。
【0118】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態に係る医療診断支援装置は、上述した第1実施の形態において、図7のステップS111で標識状態を判定するにあたり、標識間の特徴量として、各染色の標識が重畳している面積と重畳していない面積との比率を用いる。すなわち、図18(a)に示す標識Iあるいは標識Jの面積に対して、図18(b)に示す標識Iおよび標識Jが重畳する面積との比率を用いる。そして、この面積の比率と所定の閾値との比較に基づいて、上記と同様にして、正常および転座の標識状態を判定する。
【0119】
ここで、上記の面積の比率は、次式(23)により求めることができる。なお、式(23)において、overlay_rateiは標識Iの重畳面積比を、overlay(x,y)は該画素が重畳しているかどうかを表し、重畳している場合は1、重畳していない場合は0とする。その他の構成および動作は、第1実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0120】
【数15】

【0121】
このように、各染色の標識が重畳している面積と重畳していない面積との比率を標識間の特徴量として用いれば、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0122】
(第3実施の形態)
本発明の第3実施の形態に係る医療診断支援装置は、上述した第1実施の形態において、画像取得部110により取得した対象標本Sの各深度におけるマルチバンド画像に基づいて、図7のステップS103〜S109の処理を実行して、深度毎の各染色の標識を抽出する。
【0123】
その後、図7のステップS111において、次式(24)により、標識間の特徴量として、異なる深度における異なる両標識の重心間距離を算出して、その算出した重心間距離と所定の閾値との比較に基づいて、上記と同様にして、正常および転座の標識状態を判定する。図19は、式(24)により算出される深度(z方向)の異なる標識I,Jの重心間の距離distanceijの一例を示す。その他の構成および動作は、第1実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0124】
【数16】

【0125】
このように、深度の異なる両標識の重心間の距離を標識間の特徴量として用いれば、第1実施の形態と同様の効果が得られる他、z方向の距離も考慮されるので、実際の3次元空間に即した重心間距離を算出できる効果が得られる。
【0126】
(第4実施の形態)
図20および図21は、本発明の第4実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムの要部の構成を示す図である。このバーチャル顕微鏡システムは、顕微鏡装置200とホストシステム400とがデータの送受信が可能に接続されて構成されている。図20は、顕微鏡装置200の概略構成を示し、図21は、ホストシステム400の概略構成を示す。
【0127】
図20に示すように、顕微鏡装置200は、対象標本Sが載置される電動ステージ210と、側面視略コの字状を有し、電動ステージ210を支持するとともにレボルバ260を介して対物レンズ270(図2の光学系114に相当)を保持する顕微鏡本体240と、顕微鏡本体240の底部後方に配設された光源280と、顕微鏡本体240の上部に載置された鏡筒290とを備える。また、鏡筒290には、対象標本Sの標本像を目視観察するための双眼部310と、対象標本Sの標本像を撮像するためのTVカメラ320とが取り付けられている。すなわち、顕微鏡装置200は、図1の画像取得部110に相当する。ここで、図20に示す対物レンズ270の光軸方向をZ方向とし、Z方向と垂直な平面をXY平面として定義する。
【0128】
電動ステージ210は、XYZ方向に移動自在に構成されている。すなわち、電動ステージ210は、モータ221およびこのモータ221の駆動を制御するXY駆動制御部223によってXY平面内で移動自在である。XY駆動制御部223は、顕微鏡コントローラ330の制御のもと、図示しないXY位置の原点センサによって電動ステージ210のXY平面における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータ221の駆動量を制御することによって、対象標本S上の観察箇所を移動させる。そして、XY駆動制御部223は、観察時の電動ステージ210のX位置およびY位置を適宜顕微鏡コントローラ330に出力する。
【0129】
また、電動ステージ210は、モータ231およびこのモータ231の駆動を制御するZ駆動制御部233によってZ方向に移動自在である。Z駆動制御部233は、顕微鏡コントローラ330の制御のもと、図示しないZ位置の原点センサによって電動ステージ210のZ方向における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータ231の駆動量を制御することによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に対象標本Sを焦準移動させる。そして、Z駆動制御部233は、観察時の電動ステージ210のZ位置を適宜顕微鏡コントローラ330に出力する。
【0130】
レボルバ260は、顕微鏡本体240に対して回転自在に保持され、対物レンズ270を対象標本Sの上方に配置する。対物レンズ270は、レボルバ260に対して倍率(観察倍率)の異なる他の対物レンズとともに交換自在に装着されており、レボルバ260の回転に応じて観察光の光路上に挿入されて対象標本Sの観察に用いる対物レンズ270が択一的に切り換えられるようになっている。
【0131】
顕微鏡本体240は、底部において対象標本Sを透過照明するための照明光学系を内設している。この照明光学系は、光源280から射出された照明光を集光するコレクタレンズ251、照明系フィルタユニット252、視野絞り253、開口絞り254、照明光の光路を対物レンズ270の光軸に沿って偏向させる折曲げミラー255、コンデンサ光学素子ユニット256、トップレンズユニット257等が、照明光の光路に沿って適所に配置されて構成される。光源280から射出された照明光は、照明光学系によって対象標本Sに照射され、その透過光が観察光として対物レンズ270に入射する。したがって、光源280および照明光学系は、図2の照明部113に相当する。
【0132】
また、顕微鏡本体240は、その上部においてフィルタユニット300を内設している。フィルタユニット300は、標本像として結像する光の波長帯域を所定範囲に制限するための2枚以上の光学フィルタ303を回転自在に保持し、この光学フィルタ303を、適宜対物レンズ270後段において観察光の光路上に挿入する。このフィルタユニット300は、図2に示したフィルタ部115に相当する。なお、ここでは、光学フィルタ303を対物レンズ270の後段に配置する場合を例示したが、これに限定されずるものではなく、光源280からTVカメラ320に至る光路上のいずれかの位置に配置することとしてよい。対物レンズ270を経た観察光は、このフィルタユニット300を経由して鏡筒290に入射する。
【0133】
鏡筒290は、フィルタユニット300を経た観察光の光路を切り換えて双眼部310またはTVカメラ320へと導くビームスプリッタ291を内設している。対象標本Sの標本像は、ビームスプリッタ291によって双眼部310内に導入され、接眼レンズ311を介して検鏡者に目視観察される。あるいはTVカメラ320によって撮像される。TVカメラ320は、標本像(詳細には対物レンズ270の視野範囲の標本像)を結像するCCDやCMOS等の撮像素子を備えて構成され、標本像を撮像し、標本像の画像データをホストシステム400に出力する。すなわち、TVカメラ320は、図2に示したRGBカメラ111に相当する。
【0134】
さらに、顕微鏡装置200は、顕微鏡コントローラ330とTVカメラコントローラ340とを備える。顕微鏡コントローラ330は、ホストシステム400の制御のもと、顕微鏡装置200を構成する各部の動作を統括的に制御する。例えば、顕微鏡コントローラ330は、レボルバ260を回転させて観察光の光路上に配置する対物レンズ270を切り換える処理や、切り換えた対物レンズ270の倍率等に応じた光源280の調光制御や各種光学素子の切り換え、あるいはXY駆動制御部223やZ駆動制御部233に対する電動ステージ210の移動指示等、対象標本Sの観察に伴う顕微鏡装置200の各部の調整を行うとともに、各部の状態を適宜ホストシステム400に通知する。
【0135】
TVカメラコントローラ340は、ホストシステム400の制御のもと、自動ゲイン制御のON/OFF切換、ゲインの設定、自動露出制御のON/OFF切換、露光時間の設定等を行ってTVカメラ320を駆動し、TVカメラ320の撮像動作を制御する。
【0136】
一方、ホストシステム400は、図21に示すように、入力部410、表示部420、演算部430、記憶部500、装置各部を制御する制御部540を備えている。入力部410は、図1の入力部120に相当し、表示部420は、図1の表示部130に相当する。なお、図21には、ホストシステム400の機能構成を示したが、実際のホストシステム400は、CPUやビデオボード、メインメモリ(RAM)等の主記憶装置、ハードディスクや各種記憶媒体等の外部記憶装置、通信装置、表示装置や印刷装置等の出力装置、入力装置、各部を接続し、あるいは外部入力を接続するインターフェース装置等を備えた公知のハードウェア構成で実現でき、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータを利用することができる。
【0137】
本実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムは、第1〜3実施の形態のいずれかの実施の形態に係る医療診断支援装置の機能を有するもので、演算部430は図1の演算部140に相当し、記憶部500は図1の記憶部150に相当し、制御部540は図1の制御部160に相当する。したがって、演算部430は、図1と同様の、染色特徴量取得部142、標識強調部143、標識抽出部144、標識状態判定部145、標識状態識別部146、標本陽性判定部147を有する。また、演算部430は、VS画像生成部440を備えている。なお、演算部430は、第1実施の形態の変形例の構成を適用することも可能である。
【0138】
VS画像生成部440は、顕微鏡装置200が対象標本Sを部分的にマルチバンド撮像することによって得られる複数の対象標本画像をそれぞれ処理して、VS画像を生成する。ここで、VS画像とは、顕微鏡装置200によってマルチバンド撮像した1枚以上の画像を繋ぎ合せて生成した画像であり、例えば高倍率の対物レンズ270を用いて対象標本Sを部分毎に撮像した複数の高解像画像を繋ぎ合せて生成した画像であって、対象標本Sの全域を映した広視野でかつ高精細のマルチバンド画像のことを言う。なお、第3実施の形態で説明した医療診断支援装置の機能を実現する場合は、対象標本Sの異なる深度について生成した上記の広視野でかつ高精細のマルチバンド画像を含む。
【0139】
記憶部500は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体およびその読取装置等によって実現されるものである。この記憶部500には、ホストシステム400を動作させ、このホストシステム400が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が格納される。
【0140】
例えば、記憶部500には、VS画像生成プログラム510を含む画像処理プログラム511と、VS画像データ(マルチバンド画像データ)520が格納される。VS画像生成プログラム510は、対象標本SのVS画像を生成する処理を実現するためのプログラムである。したがって、このVS画像に対して、画像処理プログラム511により、上述した第1実施の形態と同様に、標識の強調、抽出、判定等の処理が実行されて、標識状態が識別されて表示部420に表示される。
【0141】
制御部540は、CPU等のハードウェアによって実現されるもので、顕微鏡装置200各部の動作指示を行って対象標本Sを部分毎に撮像したマルチバンドの対象標本画像を取得するための画像取得制御部550を有する。そして、制御部540は、入力部410から入力される入力信号や、顕微鏡コントローラ330から入力される顕微鏡装置200の各部の状態、TVカメラ320から入力される画像データ、記憶部500に記録されるプログラムやデータ等をもとにホストシステム400を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、あるいは顕微鏡コントローラ330やTVカメラコントローラ340に対する顕微鏡装置200の各部の動作指示を行い、バーチャル顕微鏡システム全体の動作を統括的に制御する。
【0142】
これにより、本実施の形態に係るバーチャル顕微鏡システムによれば、上記実施の形態で説明した医療診断支援装置と同様の効果を奏することができる。
【0143】
(第5実施の形態)
図22は、本発明の第5実施の形態に係る医療診断支援装置の要部の機能構成を示すブロック図である。この医療診断支援装置は、演算部600の構成が、図1に示した医療診断支援装置の演算部140と異なるものである。すなわち、演算部600は、画像再構成部601、染色特徴量取得部602、対象領域強調部603、対象領域抽出部604、細胞状態判定部605、細胞状態識別部606、および標本陽性判定部607を有する。染色特徴量取得部602は、図1と同様に、スペクトル推定部602aを含む色素量推定部602bを有する。対象領域強調部603は、フィルタサイズ設定部603a、平滑化処理部603bおよび差分特徴量算出部603cを有する。また、標識状態識別部606は、識別表示指定部606aを有する。その他の構成は、図1と同様であるので、同一構成要素には、同一参照符号を付して説明を省略する。
【0144】
図23は、本実施の形態に係る医療診断支援装置の概略動作を示すフローチャートである。先ず、制御部160は、上記実施の形態の場合と同様に、画像取得制御部161により画像取得部110の動作を制御して対象標本Sをマルチバンド撮像し、その各バンドの対象標本画像を取得する(ステップS501)。次に、制御部160は、染色特徴量取得部602において、ステップS501で取得した対象標本画像の画素値をもとに、スペクトル推定部602aにより対象標本のスペクトル(分光透過率)を推定し(ステップS503)、その推定した分光透過率の推定値に基づいて、対象標本の各染色分離画像を作成する特徴量(ここでは、色素量)を推定する(ステップS505)。
【0145】
その後、制御部160は、対象領域強調部603により、ステップS505で推定した各染色の色素量のうちの一方の染色、例えば赤色(R)の染色の色素量に基づいて、当該染色分離画像における細胞を強調する(ステップS507)。この細胞強調処理においては、図9に示した標識の強調処理と同様にして、着目画素における染色の特徴量と近傍画素における染色の特徴量とに基づいて細胞を強調する。すなわち、フィルタサイズ設定部603aにより2つの異なるフィルタサイズを設定して、平滑化処理部603bにより染色の特徴量をそれぞれ平滑化し、その平滑化処理された2つの特徴量の差分を差分特徴量算出部603cにより算出して細胞を強調する。ここで、フィルタサイズ設定部603aにより設定する一方のフィルタサイズは、1すなわち着目画素のみに設定し、他方のフィルタサイズは細胞と同サイズに設定する。
【0146】
次に、制御部160は、対象領域抽出部604において、対象領域強調部603で強調された細胞の特徴量と閾値との比較に基づいて細胞を抽出する(ステップS509)。この抽出された細胞データは、記憶部150に格納される。
【0147】
以上により、細胞を強調して抽出したら、次に、制御部160は、上記第1〜3実施の形態で説明したと同様にして、ステップS503で推定した特徴量(ここでは、色素量)に基づいて、対象領域強調部603において各染色の標識を強調し(ステップS511)、その後、対象領域抽出部604において、対象領域強調部603で強調された各染色の標識の特徴量と閾値との比較に基づいて各標識を抽出する(ステップS513)。この抽出された標識データは、記憶部150に格納される。
【0148】
その後、制御部160は、細胞状態判定部605により細胞状態を判定する(ステップS515)。この細胞状態判定処理では、ステップS509で抽出された細胞と、ステップS513で抽出された各染色の標識とに基づいて、陰性か陽性かを判定する。例えば、図24(a)に示すように、抽出された細胞C内に含まれる異なる染色の標識数が一致する場合を陰性と判定し、図24(b)や(c)に示すように一致しない場合を陽性と判定する。また、染色によっては、細胞内の異なる染色の各標識数が1である場合を陰性と判定し、異なる染色の各標識数が1でない場合を陽性と判定する。
【0149】
以上により、細胞状態判定部605による判定処理が終了したら、次に、制御部160は、細胞状態識別部606により、識別表示指定部606aに指定されている表示モードに応じて、細胞状態を識別して表示部130に表示する(ステップS517)。したがって、本実施の形態において、細胞状態識別部606および表示部130は、細胞状態識別表示手段を構成している。なお、識別表示指定部606aにより表示モードを指定するにあたっては、上記実施の形態の場合と同様、制御部160の制御のもとに、例えば、図16に示したように、表示部130にグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)により「陽性」ボタン171および「陰性」ボタン172を表示させて、ユーザにより入力部120を介して所望のボタンを選択させる。
【0150】
そして、例えば、「陰性」ボタン172が選択された場合は、陰性表示モードを指定して、図25(a)に示すように、陰性な細胞のみを識別して表示させ、「陽性」ボタン171が選択された場合は、陽性表示モードを指定して、図25(b)や(c)に示すように、陽性な細胞のみを識別して表示させ、「陰性」ボタン172および「陽性」ボタン171の両方が選択された場合は、全表示モードを指定して、陰性な細胞および陽性な細胞の両方を識別して表示させる。
【0151】
その後、制御部160は、必要に応じて、標本陽性判定部147により、例えば、細胞状態判定部605で判定された陽性な細胞と陰性な細胞との比率に基づいて、対称標本Sが陽性か否かを判定して、その結果を記憶部150に格納する。あるいは、上記の標本の陽性度を、そのまま対象標本Sの病状を表す参考値として、記憶部150に格納する。
【0152】
このように、本実施の形態に係る医療診断支援装置によれば、Dual CISH染色法により染色された標識を有する細胞の「陰性」および「陽性」を表す細胞状態が識別されて表示されるので、医師等のユーザは、細胞の陽性/陰性を容易に視認することができる。これにより、癌や遺伝子疾患に関連する染色体異数性や遺伝子増幅などを容易かつ精度良く判別することが可能となる。
【0153】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、本発明は、Dual CISH染色法により染色された標本に限らず、2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像して、染色画像を表示する場合に広く適用することができる。また、上記実施の形態では、各染色の色素量を推定するために、染色標本を撮像したマルチバンド画像から分光透過率のスペクトル特徴値を推定したが、分光反射率や吸光度等のスペクトル特徴値を推定して、色素量を推定することもできる。さらに、上記実施の形態では、染色標本に対して6バンドのマルチバンド画像を取得するようにしたが、4バンド以上の任意のマルチバンド画像、あるいは、RGBの3バンドの画像を取得して、各染色の特徴量を取得することもできる。
【0154】
また、第5実施の形態では、細胞を強調して抽出してから、標識を強調して抽出するようにしたが、逆に、標識を強調して抽出してから、細胞を強調して抽出してもよいし、細胞の強調および抽出処理と標識の強調および抽出とを同時に並行して実行することも可能である。また、細胞は、染色以外の特徴量を用いて強調することもできるし、その強調の際に、フィルタサイズ設定部603aにおける2つのフィルタサイズの一方を標識と同サイズに、他方を細胞と同サイズに設定することもできる。さらに、第5実施の形態に示した医療診断支援装置を適用して、第4実施の形態で示したようなバーチャル顕微鏡システムを構成することも可能である。
【0155】
また、本発明は、上述した医療診断支援装置やバーチャル顕微鏡システムに限らず、これらの処理を実質的に実行する、画像処理方法、画像処理プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明はこれらも包含するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0156】
110 画像取得部
111 RGBカメラ
112 標本保持部
113 照明部
114 光学系
115 フィルタ部
116 カラーフィルタ
117 フィルタ切り替え部
118a,118b 光学フィルタ
120 入力部
130 表示部
140 演算部
141 画像再構成部
142 染色特徴量取得部
142a スペクトル推定部
142b 色素量推定部
143 標識強調部
143a フィルタサイズ設定部
143b 平滑化処理部
143c 差分特徴量算出部
144 標識抽出部
145 標識状態判定部
145a 標識間特徴量算出部
145b 標識陽性判定部
146 標識状態識別部
146a 識別表示指定部
147 標本陽性判定部
150 記憶部
160 制御部
161 画像取得制御部
200 顕微鏡装置
210 電動ステージ
240 顕微鏡本体
270 対物レンズ
280 光源
290 鏡筒
300 フィルタユニット
303 光学フィルタ
310 双眼部
320 TVカメラ
330 顕微鏡コントローラ
340 TVカメラコントローラ
400 ホストシステム
410 入力部
420 表示部
430 演算部
440 VS画像生成部
500 記憶部
540 制御部
600 演算部
601 画像再構成部
602 染色特徴量取得部
602a スペクトル推定部
602b 色素量推定部
603 対象領域強調部
603a フィルタサイズ設定部
603b 平滑化処理部
603c 差分特徴量算出部
604 対象領域抽出部
605 細胞状態判定部
606 細胞状態識別部
606a 識別表示指定部
607 標本陽性判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する医療診断支援装置であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段と、
該染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する標識強調手段と、
該標識強調手段により標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する標識抽出手段と、
該標識抽出手段により抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する標識状態判定手段と、
該標識状態判定手段による判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示する標識状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とする医療診断支援装置。
【請求項2】
前記標識状態識別表示手段は、
前記標識状態を識別して表示する表示モードを指定する識別表示指定手段を備え、
該識別表示指定手段による指定に基づいて前記標識状態を識別して表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療診断支援装置。
【請求項3】
前記識別表示指定手段は、
陽性な標識状態のみを識別して表示する陽性表示モード、陰性な標識状態のみを識別して表示する陰性表示モード、陽性な標識状態および陰性な標識状態の両方を識別して表示する全表示モードの中から選択される1つの表示モードを指定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の医療診断支援装置。
【請求項4】
前記標識状態識別表示手段は、
前記全表示モードにおいて、陽性な標識状態と陰性な標識状態とを異なる色で表示する、
ことを特徴とする請求項3に記載の医療診断支援装置。
【請求項5】
前記標識状態識別表示手段は、
前記全表示モードにおいて、陰性な標識状態にある各染色の標識の重畳部を異なる色で表示する、
ことを特徴とする請求項3に記載の医療診断支援装置。
【請求項6】
前記染色特徴量取得手段は、
深度の異なる複数枚の画像から再構成された染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項7】
前記再構成された染色標本画像は、
深度の異なる複数枚の画像から各領域で焦点が合っている画素を張り合わせた合焦画像である、
ことを特徴とする請求項6に記載の医療診断支援装置。
【請求項8】
前記再構成された染色標本画像は、
深度の異なる複数枚の画像の平均値画像である、
ことを特徴とする請求項6に記載の医療診断支援装置。
【請求項9】
前記染色特徴量取得手段は、
前記染色標本画像の画素値に基づいて色素量を推定する色素量推定手段を備え、
該色素量推定手段により推定された色素量を前記各染色の特徴量として取得する、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項10】
前記色素量推定手段は、
前記染色標本画像の画素値からスペクトルを推定するスペクトル推定手段を備え、
該スペクトル推定手段により推定されたスペクトルに基づいて色素量を推定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の医療診断支援装置。
【請求項11】
前記染色特徴量取得手段は、
前記各染色の特徴量として、それぞれ任意の波長帯域の照明光で撮像した染色標本画像の画素値を取得する、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項12】
前記染色特徴量取得手段は、
前記染色標本画像の画素値を任意の数式で変換して前記各染色の特徴量を取得する、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項13】
前記標識強調手段は、
着目画素における染色の特徴量と近傍画素における染色の特徴量とに基づいて標識を強調する、
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項14】
前記標識強調手段は、
2つの異なるフィルタサイズを設定するフィルタサイズ設定手段と、
該フィルタサイズ設定手段により設定された2つのフィルタサイズに基づいて前記各染色の特徴量を平滑化処理する平滑化処理手段と、
前記平滑化処理により算出した2つの特徴量の差分を算出する差分特徴量算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項13に記載の医療診断支援装置。
【請求項15】
前記フィルタサイズ設定手段は、
前記2つのフィルタサイズの一方を1に設定する、
ことを特徴とする請求項14に記載の医療診断支援装置。
【請求項16】
前記フィルタサイズ設定手段は、
前記2つのフィルタサイズの他方を標識と同サイズに設定する、
ことを特徴とする請求項15に記載の医療診断支援装置。
【請求項17】
前記フィルタサイズ設定手段は、
前記標本を撮像する倍率に応じて少なくとも一方のフィルタサイズを調整する、
ことを特徴とする請求項14に記載の医療診断支援装置。
【請求項18】
前記平滑化処理手段は、
ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、平均値フィルタ、ローパスフィルタのいずれかを有する、
ことを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項19】
前記標識強調手段は、
前記染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量をエッジ強調処理して標識を強調する、
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項20】
前記エッジ強調処理は、
ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタ、ハイパスフィルタのいずれかを用いて実行する、
ことを特徴とする請求項19に記載の医療診断支援装置。
【請求項21】
前記標識抽出手段は、
前記標識強調手段により標識が強調された特徴量から第1の閾値に基づいて標識を抽出する、
ことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項22】
前記第1の閾値は、
K-means法を用いて算出する、
ことを特徴とする請求項21に記載の医療診断支援装置。
【請求項23】
前記標識抽出手段は、
前記標識強調手段により標識が強調された特徴量から、標識の形態を示す面積をフィルタリングして標識を抽出する、
ことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項24】
前記標識抽出手段は、
前記標識強調手段により標識が強調された特徴量から、標識の形態を示す円形度をフィルタリングして標識を抽出する、
ことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項25】
前記標識状態判定手段は、
前記標識抽出手段により抽出された各染色の標識に基づいて異なる染色の標識間の特徴量を算出する標識間特徴量算出手段を備え、
該標識間特徴量算出手段により算出された標識間の特徴量に基づいて標識状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項26】
前記標識間特徴量算出手段は、
前記標識間の特徴量として、異なる染色の標識の重心間の距離を算出する、
ことを特徴とする請求項25に記載の医療診断支援装置。
【請求項27】
前記標識間特徴量算出手段は、
前記標識間の特徴量として、各染色の標識が他の染色の標識と重畳している面積と重畳していない面積との比率を算出する、
ことを特徴とする請求項25に記載の医療診断支援装置。
【請求項28】
前記標識間特徴量算出手段は、
前記標識間の特徴量として、異なる深度における異なる染色の標識の重心間の距離を算出する、
ことを特徴とする請求項25に記載の医療診断支援装置。
【請求項29】
前記標識状態判定手段は、
前記標識間の特徴量が第2の閾値を満たす標識状態を正常と判定する、
ことを特徴とする請求項25〜27のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項30】
前記標識状態判定手段は、
一方の染色における任意の標識と、他方の染色における全標識との標識間の特徴量が前記第2の閾値を満たさない場合、前記任意の標識を転座と判定する、
ことを特徴とする請求項29に記載の医療診断支援装置。
【請求項31】
前記標識状態判定手段は、
一方の染色における任意の標識が他方の染色における2以上の標識に対して、前記標識間の特徴量が第3の閾値を満たす場合、前記標識間の特徴量が前記第3の閾値を最大限満たす両標識を正常と判定し、それ以外の標識を転座と判定する、
ことを特徴とする請求項25〜27のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項32】
前記標識状態判定手段は、
一方の染色における任意の標識と、他方の染色における全標識との標識間の特徴量が前記第3の閾値を満たさない場合、前記任意の標識を転座と判定する、
ことを特徴とする請求項31に記載の医療診断支援装置。
【請求項33】
前記標識状態判定手段は、
前記標本を撮像する倍率に応じて前記第2の閾値を調整する、
ことを特徴とする請求項29または30に記載の医療診断支援装置。
【請求項34】
前記標識状態判定手段は、
前記標本を撮像する倍率に応じて前記第3の閾値を調整する、
ことを特徴とする請求項31または32に記載の医療診断支援装置。
【請求項35】
前記標識状態判定手段は、
2つの染色の標識が重畳された標識状態を陰性、1染色の標識のみの標識状態を陽性と判定する標識陽性判定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1〜34のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項36】
前記標識抽出手段により抽出された各染色の標識に基づいて前記標本の陽性を判定する標本陽性判定手段を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1〜35のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項37】
前記標本陽性判定手段は、
前記各染色の全標識の画素のうち、他方の染色の標識の画素と重畳している比率に基づいて前記標本の陽性を判定する、
ことを特徴とする請求項36に記載の医療診断支援装置。
【請求項38】
前記標識状態判定手段による判定結果に基づいて前記標本の陽性を判定する標本陽性判定手段を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1〜35のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項39】
前記標本陽性判定手段は、
2つの染色の標識が重畳された陰性の標識状態と、1染色の標識のみの陽性の標識状態との比率に基づいて前記標本の陽性を判定する、
ことを特徴とする請求項38に記載の医療診断支援装置。
【請求項40】
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理方法であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得するステップと、
取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調するステップと、
標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出するステップと、
抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定するステップと、
判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示するステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項41】
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理プログラムであって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する処理と、
取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する処理と、
標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する処理と、
抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する処理と、
判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示する処理と、
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項42】
2以上の染色方法で染色された標本から医療診断支援情報を取得するバーチャル顕微鏡システムであって、
顕微鏡を用いて前記標本を投過光で撮像して染色標本画像を取得する画像取得手段と、
該画像取得手段により取得された染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段と、
該染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調する標識強調手段と、
該標識強調手段により標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出する標識抽出手段と、
該標識抽出手段により抽出された各染色の標識に基づいて標識状態を判定する標識状態判定手段と、
該標識状態判定手段による判定結果に基づいて前記標識状態を識別して表示する標識状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とするバーチャル顕微鏡システム。
【請求項43】
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する医療診断支援装置であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて標識および細胞をそれぞれ強調する対象領域強調手段と、
該対象領域強調手段により強調された標識および細胞を抽出する対象領域抽出手段と、
該対象領域抽出手段により抽出された標識に基づいて、当該対象領域抽出手段により抽出された細胞の細胞状態を判定する細胞状態判定手段と、
該細胞状態判定手段による判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示する細胞状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とする医療診断支援装置。
【請求項44】
前記対象領域強調手段は、
着目画素における染色の特徴量と近傍画素における染色の特徴量とに基づいて細胞を強調する、
ことを特徴とする請求項43に記載の医療診断支援装置。
【請求項45】
前記対象領域強調手段は、
2つの異なるフィルタサイズを設定するフィルタサイズ設定手段と、
該フィルタサイズ設定手段により設定された2つのフィルタサイズに基づいて前記各染色の特徴量を平滑化処理する平滑化処理手段と、
前記平滑化処理により算出した2つの特徴量の差分を算出する差分特徴量算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項44に記載の医療診断支援装置。
【請求項46】
前記フィルタサイズ設定手段は、
前記2つのフィルタサイズの一方を標識と同サイズに、他方を細胞と同サイズに設定する、
ことを特徴とする請求項45に記載の医療診断支援装置。
【請求項47】
前記細胞状態判定手段は、
細胞内に含まれる異なる染色の標識数に基づいて細胞状態を判定する、
ことを特徴とする請求項43〜46のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項48】
前記細胞状態判定手段は、
異なる染色の標識数が一致する場合を陰性と判定する、
ことを特徴とする請求項47に記載の医療診断支援装置。
【請求項49】
前記細胞状態判定手段は、
異なる染色の標識数が一致しない場合を陽性と判定する、
ことを特徴とする請求項47または48に記載の医療診断支援装置。
【請求項50】
前記細胞状態判定手段は、
異なる染色の各標識数が1である場合を陰性と判定する、
ことを特徴とする請求項47に記載の医療診断支援装置。
【請求項51】
前記細胞状態判定手段は、
異なる染色の各標識数が1でない場合を陽性と判定する、
ことを特徴とする請求項47または50に記載の医療診断支援装置。
【請求項52】
前記細胞状態識別表示手段は、
前記細胞状態を識別して表示する表示モードを指定する識別表示指定手段を備え、
該識別表示指定手段による指定に基づいて前記細胞状態を識別して表示する、
ことを特徴とする請求項43〜51のいずれか一項に記載の医療診断支援装置。
【請求項53】
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理方法であって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得するステップと、
取得された各染色の特徴量に基づいて細胞を強調するステップと、
細胞が強調された特徴量に基づいて細胞を抽出するステップと、
前記取得された各染色の特徴量に基づいて標識を強調するステップと、
標識が強調された特徴量に基づいて各染色の標識を抽出するステップと、
抽出された標識に基づいて抽出された細胞の細胞状態を判定するステップと、
判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示するステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項54】
2以上の染色方法で染色された標本を透過光で撮像した染色標本画像から医療診断支援情報を取得する画像処理プログラムであって、
前記染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する処理と、
取得された各染色の特徴量に基づいて標識および細胞をそれぞれ強調する処理と、
強調された標識および細胞のそれぞれの特徴量に基づいて標識および細胞を抽出する処理と、
抽出された標識に基づいて抽出された細胞の細胞状態を判定する処理と、
判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示する処理と、
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項55】
2以上の染色方法で染色された標本から医療診断支援情報を取得するバーチャル顕微鏡システムであって、
顕微鏡を用いて前記標本を投過光で撮像して染色標本画像を取得する画像取得手段と、
該画像取得手段により取得された染色標本画像の画素値に基づいて各染色の特徴量を取得する染色特徴量取得手段と、
該染色特徴量取得手段により取得された各染色の特徴量に基づいて標識および細胞をそれぞれ強調する対象領域強調手段と、
該対象領域強調手段により強調された標識および細胞のそれぞれの特徴量に基づいて標識および細胞を抽出する対象領域抽出手段と、
該対象領域抽出手段により抽出された標識に基づいて、当該対象領域抽出手段により抽出された細胞の細胞状態を判定する細胞状態判定手段と、
該細胞状態判定手段による判定結果に基づいて前記細胞状態を識別して表示する細胞状態識別表示手段と、
を備えることを特徴とするバーチャル顕微鏡システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2011−22131(P2011−22131A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105977(P2010−105977)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(000173588)財団法人癌研究会 (34)
【Fターム(参考)】