説明

医薬組成物、医薬組成物を含む基質、および医薬組成物の使用

本発明は、感染部位での組織感染症の局所治療または防止のための医薬組成物の使用であって、該医薬組成物が、A群の少なくとも2つの異なる抗生物質もしくは薬学上許容されるその誘導体、またはA群の抗生物質およびB群の少なくとも1つの抗生物質もしくは薬学上許容されるその誘導体を含む使用に関する。A群は、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として、ギラーゼの阻害薬として、または細菌のタンパク質合成の阻害薬として働く細胞内活性型の抗生物質を主に含む。B群は、細菌の細胞壁合成の阻害薬もしくは細菌のタンパク質合成の阻害薬として、または、細菌の細胞壁の直接の不安定化もしくは破壊により働く細胞外活性型の抗生物質を主に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、請求項1のプリアンブル(preamble)による医薬組成物、請求項11のプリアンブルによる医薬組成物、請求項16による微生物に細胞外および/または細胞内感染した細胞の治療用の医薬組成物、ならびに請求項22のプリアンブルによる医薬組成物を含む基質の使用に関する。本発明はさらに、請求項27による表面上の微生物に対する抗付着薬(anti−adhesive)としての抗生物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨および組織の感染症は、整形外科および外科の最も深刻な問題であり、手術の頻度の増加が原因である場合はとりわけ深刻である。骨感染症全体の30%は、治療しても慢性となる。さらに、以前の治療が成功したと思われた後に感染症が再発する多くの症例が知られている。全症例の3%においては、残る選択肢は切断術のみである。抗生物質を用いた全身治療は難しいが、それは、抗生物質は一般に非常にわずかしか骨を透過しないため、感染症を排除するための十分に高い濃度を達成することはほとんど不可能だからである。
【0003】
骨および他の組織の感染症の療法については、抗生物質の全身療法より抗生物質の局所施用の方が適しているが、それは、局所施用では、全身施用の場合より高い濃度の抗生物質が治療部位で達成できるからである。抗生物質による局所療法が成功するための必要条件は、すべての骨または組織の壊死部の病巣清掃術およびすべての異物の除去など、前もって行われる外科的な根治療法である。従来技術から知られる局所用の抗生物質担体は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)で作製された骨セメント、PMMAで作製されたビーズ、コラーゲンフリースおよび骨置換基(substituent)である。このような担体は市販されているが、それらに施用されている抗生物質の数は以下のとおり限られている:ゲンタマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシンおよびテイコプラニン。
【0004】
前述の抗生物質を用いる抗生物質による局所療法には、骨および関節の感染症についての改善された治療法がすでにあるものの、そのような療法は、相当な数の症例(16%に及ぶ)において失敗している。しかし、療法が失敗すると、最終的には切断術が必要になることが多い。
【0005】
療法の失敗の主な理由は、a)特定の抗生物質に対する耐性、b)固着性の細菌に対する抗生物質の無効性、c)細胞内に局在する細菌およびd)小型コロニー変種の誘発である。ここで言う、項目b)による無効性は、バイオフィルムが形成されて排除すべき細菌の増殖が休止することが原因である。さらに、ここで言う細胞内の、とは、宿主の、すなわち治療すべき対象の細胞のことと理解されたい。したがって、細菌が宿主の細胞内部に存在すれば、細胞の内側にあるものに浸透できない抗生物質は、排除すべき細菌に対して作用できない。
【0006】
以前から、ブドウ球菌は白血球内部で生存できることが知られていた。さらに、いわゆる小型コロニー変種表現型を示す黄色ブドウ球菌株は、ケラチン生成細胞および内皮細胞により取り込まれることができ、細胞内に存続できることが知られている。こうした菌株は、細胞内にリソソーム内部でとどまることが実証された。さらに、普通の表現型の黄色ブドウ球菌も、内皮細胞、線維芽細胞およびケラチン生成細胞によって取り込まれることができ、細胞内にリソソーム内部でとどまることができる。
【0007】
黄色ブドウ球菌の単離株は、対立する2つの性質を示すことが実証された。すなわち、細胞毒性株がケラチン生成細胞および線維芽細胞中で生存し、細胞内で分裂することによりその宿主細胞に対し顕著な細胞毒性を引き起こすのに対し、非細胞毒性株はケラチン生成細胞および線維芽細胞の内部で殺されることから、黄色ブドウ球菌の取込みは細胞自律的な宿主防御の重要な機序を表すことが示唆される(Krut, O.ら、Infection and Immunity、2003、71、2716〜2723)。
【0008】
黄色ブドウ球菌は、骨芽細胞によっても取り込まれることがあるが、骨芽細胞は、取り込んだ非細胞毒性のブドウ球菌を殺すことができず、代わりにこうした菌は、数日、数週間にわたり骨芽細胞内部で増殖せずに存続できる。骨芽細胞の溶解後、ブドウ球菌は再度増殖できる。骨芽細胞において、ブドウ球菌および場合によっては他の細菌が細胞内で存続すること、ならびに、細胞内にリソソーム内部で存続するその潜在能力は、骨感染症に注目した場合、格別な役割を果たすと考えられる。これが骨感染症の慢性進行の原因ではないかと考えられる。
【0009】
シュードモナス菌、レンサ球菌および腸球菌が骨芽細胞中で存続できるかどうか依然として正確には知られていないが、これらの細菌が細胞内で存続することは普通に見ることができた。こうした細胞内での存続は、今までは、おそらく他の疾患の慢性進行と関連があると考えられていたにすぎなかったが、シュードモナス菌、レンサ球菌および腸球菌は骨感染症に関する病原である場合が多いことから、それらが細胞内で存続することが、骨感染症の慢性進行の原因である可能性がある。
【0010】
首尾よく治療されたと思われた骨感染症が数年後であっても再発することがある理由は、この仮定に基づいて説明できる。宿主細胞内部では、細菌は、細胞膜を透過できない多数の抗生物質(例えばペニシリン、糖ペプチド)に対して保護される。プランクトン性(planktonic)(浮遊性)の細菌により誘発されている急性感染症は、このような抗生物質で治療できる可能性があるものの、細菌は、細胞内にとどまり、宿主細胞からの放出後に再感染を引き起こすことがある。
【0011】
従来技術では、骨および軟部組織の感染症は、主にアミノグリコシド(ゲンタマイシン、トブラマイシン)で局所治療されるが、このような薬物は宿主細胞の細胞膜を通常は透過できない。一方、アミノグリコシドは線維芽細胞のリソソーム中で蓄積できるが、リソソームが低pHであることから不活性であることが報告された。
【0012】
したがって、骨および他の組織の感染症の局所療法のために従来技術で使用される抗生物質は、このようなすべての感染症を首尾よく治療するには適さない。とりわけ、ゲンタマイシンのみを含有する局所用の抗生物質担体は、小型コロニー変種表現型を示す細菌の感染症に対しては効果がなく、小型コロニー変種表現型の形成を誘発する恐れすらある。感染症の局所療法のために現時点で使用される抗生物質のいずれも、細胞内に局在する細菌を排除できない。
【0013】
WO2006/064517(特許文献1)では、細菌のタンパク質合成を阻害する第1の抗生物質と、細菌のタンパク質合成を阻害しない第2の抗生物質と、を含む抗生物質組成物が開示されている。
【0014】
US5,217,493(特許文献2)では、バイオフィルムの定着を防ぐために、リファンピンおよびノボビオシンで、またはリファンピンおよびミノサイクリンでコーティングした埋込み可能な医療器具が開示されている。
【0015】
一実施形態を考慮すれば、細胞(特に組織細胞)の細胞外および細胞内感染症を治療および防止するための医薬組成物、そのような組成物を担持する基質、ならびにそのような組成物および基質を施用する方法を提供することが可能である。
【0016】
異なる基質表面上での微生物の付着率を低下させることがさらに可能である。
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【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2006/064517号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5217493号明細書
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】MG63骨芽細胞の細胞培養物の上清中の黄色ブドウ球菌ATTC6538PのCFUを示すグラフである。
【図2】MG63骨芽細胞の細胞培養物の上清中の黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図3a】黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させ、次いで、細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置してから細胞培養物の上清にリファンピンを加えた後の、MG63骨芽細胞の代謝活性を示すグラフである。
【図3b】黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させ、次いで、細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置してから細胞培養物の上清にホスホマイシンを加えた後の、MG63骨芽細胞の代謝活性を示すグラフである。
【図3c】黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させ、次いで、細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置してから細胞培養物の上清にホスホマイシン、リファンピンおよびその組合せを加えた後の、MG63骨芽細胞の代謝活性を示すグラフである。
【図3d】黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させ、次いで、細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置してから細胞培養物の上清に10μg/mlのホスホマイシンと0.006〜0.0075μg/mlのリファンピンとを含有する混合物を加えた後の、MG63骨芽細胞の代謝活性を示すグラフである。
【図3e】黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させ、次いで、細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置してから細胞培養物の上清にモキシフロキサシンを加えた後の、MG63骨芽細胞の代謝活性を示すグラフである。 組織感染症の局所治療および防止のための医薬または医療器具を製造するための医薬組成物が、請求項1の主題である。
【図4a】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清にホスホマイシンを加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図4b】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清にリファンピンを加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図4c】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清に、50μg/mlのホスホマイシンと2.5〜40μg/mlのリファンピンとを含有する混合物を加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図4d】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清に、25〜400μg/mlのホスホマイシンと2.5μg/mlのリファンピンとを含有する混合物を加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図4e】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清に、ホスホマイシン、リファンピン、および、50μg/mlのホスホマイシンと10μg/mlのリファンピンとを含有する混合物を加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図4f】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清に、ホスホマイシン、リファンピン、および、25μg/mlのホスホマイシンと2.5μg/mlのリファンピンとを含有する混合物を加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図4g】細胞外の細菌を除去するためにリゾスタフィンで処置した後のMG63骨芽細胞の細胞培養物の上清に、ホスホマイシン、リファンピン、および、50μg/mlのホスホマイシンと20μg/mlのリファンピンとを含有する混合物を加えた後に、MG63骨芽細胞中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図5a】バンコマイシンまたはリファンピン/ホスホマイシンでコーティングしたチタンディスク(ディスクは、インキュベーション前に1回または3回のいずれかの回数、洗浄した)上で黄色ブドウ球菌を1.5時間インキュベーションした後の、チタンディスク1枚当たりの黄色ブドウ球菌ATTC6538PのCFUを示すグラフである。
【図5b】リファンピン/ホスホマイシンでコーティングしたチタンディスク(ディスクは、インキュベーション前に2回洗浄した)上でS.エピデルミス(S.epidermis)と共に2時間インキュベーションした後の、チタンディスク1枚当たりの表皮ブドウ球菌ATTC35984のCFUを示すグラフである。
【図5c】バンコマイシンまたはリファンピン/ホスホマイシンでコーティングしたチタンディスク(ディスクは、インキュベーション前に1回または2回のいずれかの回数、洗浄した)上で黄色ブドウ球菌を1.5時間インキュベーションした後の、チタンディスク1枚当たりの黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図5d】最少培地中に入れた、バンコマイシンまたはリファンピン/ホスホマイシンでコーティングしたチタンディスクと共に黄色ブドウ球菌を一晩インキュベーションした後の、チタンディスク上または上清中の黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【図6】最少培地中に入れた、バンコマイシンまたはリファンピン/ホスホマイシンでコーティングしたチタンディスクと共に黄色ブドウ球菌を一晩インキュベーションした後の、チタンディスク上または上清中の黄色ブドウ球菌BAA44のCFUを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態では、局所治療および防止は感染部位で行われる。治療対象となる組織は、例えば軟部組織および/または骨組織(一般に「骨」と表されるものを含む)であってもよい。請求項1の特徴によれば、この医薬組成物は、A群の少なくとも2つの異なる抗生物質もしくは薬学上許容されるその誘導体、またはA群の1つの抗生物質およびB群の少なくとも1つの抗生物質もしくは薬学上許容されるそのそれぞれの誘導体を含む。A群は、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として、ギラーゼの阻害薬として、または細菌のタンパク質合成の阻害薬として働く細胞内活性型の抗生物質を主に含む。B群は、細菌の細胞壁合成の阻害薬として、もしくは細菌のタンパク質合成の阻害薬として働くか、または細菌の細胞壁を直接不安定化もしくは破壊する、細胞外活性型の抗生物質を主に含む。
【0020】
本説明に関する場合、組織感染症は、微生物が原因で生じる組織細胞の細胞外および細胞内の感染症として理解される。
【0021】
使用される抗生物質に対する耐性をとりわけ長期治療において回避するために、少なくとも2つの抗生物質の組合せを選択できる。そのような組合せは、結果としてより高い有効性ももたらす。細胞内活性型の抗生物質のみを使用することが一般に考慮できるが、細胞内活性型の抗生物質(A群)と細胞外活性型の抗生物質(B群)との組合せを選択してもよい。B群の抗生物質は、細胞内で活性をもたなくても耐性の形成を阻害できるが、その理由は、B群の抗生物質は細胞外の細菌に対して殺菌の形で作用し、耐性は、細菌のうちプランクトン性の増殖性の個体群において形成されるだけだからである。B群の細胞外活性型の抗生物質はA群の抗生物質とは異なる作用機序を示すため、似たような耐性が生じる可能性はほとんどない。
【0022】
使用対象となる医薬組成物は、それ自体が公知の添加物、分散剤、溶媒または担体物質などをさらに含んでもよい。
【0023】
骨および他の組織の感染症を治療する上で良好な結果に到達するために、一実施形態では、選択される抗生物質の少なくとも1つは以下の基準の少なくとも1つを満たすべきである:
a)宿主細胞(すなわち、排除すべき細菌が内部に位置する、治療すべき対象の細胞)の細胞膜を透過すべきである
b)宿主細胞のリソソーム内部に到達可能であるべきである
c)低pHで(とりわけ、リソソーム中の実際の低pH、すなわちおよそpH4からpH5で)活性をもつべきである
d)殺菌活性をもつべきである
e)非増殖性の細菌に対してもその殺菌活性を示すべきである。
【0024】
一実施形態では、選択される抗生物質の少なくとも1つは前述の複数の基準を満たす。別の実施形態では、これらの基準のすべての実現が達成される。さらに別の実施形態では、選択されるすべての抗生物質がすべての基準の実現を達成する。
【0025】
一実施形態では、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として働くA群の前記抗生物質は、アンサマイシン、とりわけリファマイシンを含む。とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシン(rifamixin)を選択してもよい。リファンピンを含有する医薬組成物は、細胞内のブドウ球菌を排除する上でとりわけ適しており、この菌は当該医薬組成物の局所投与後3日以内に排除されることが示された。
【0026】
さらなる一実施形態では、ギラーゼの阻害薬として働くA群の前記抗生物質は、フルオロキノロンを含む。フルオロキノロンであるモキシフロキサシンがとりわけ選択される。
【0027】
一実施形態では、細菌のタンパク質合成の阻害薬として働くA群の前記抗生物質は、例えばキヌプリスチンまたはダルフォプリスチンのようなストレプトグラミンを含む。一実施形態では、キヌプリスチンとダルフォプリスチンとの組合せが使用される。使用対象となる医薬組成物は、各群の1つを超える抗生物質(およびB群の抗生物質が使用されない場合はA群の2つを超える抗生物質)を、したがって合計で2つを超える抗生物質を含有してもよいことに注目されたい。
【0028】
一実施形態では、細菌の細胞壁合成の阻害薬として働くか、またはその細胞壁を直接不安定化および破壊するB群の前記抗生物質は、糖ペプチド、ホスホマイシンおよびポリペプチドを含む。一実施形態では、選択される糖ペプチドは、バンコマイシンおよびテイコプラニンである。同じまたは別の実施形態では、選択されるポリペプチドは、バシトラシン、ポリミキシンB、ならびに他のポリミキシンおよびダプトマイシンである。
【0029】
一実施形態では、細菌のタンパク質合成の阻害薬として働くB群の前記抗生物質はアミノグリコシドを含む。この場合は、とりわけアルベカシンを選択してもよい。
【0030】
使用対象となる例示的な医薬組成物は、リファマイシンおよびアミノグリコシドを含む。別の例示的な医薬組成物は、リファンピンおよびアルベカシンを含み、そのような組成物は、排除すべき病原菌の全範囲を本質的にカバーし、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)のような問題のある細菌に対して有効である。いずれの抗生物質も、非増殖性(静止している)細菌に対しても有効であり、温度に耐性がある(熱安定性である)ことから、このような抗生物質は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)製の骨セメントに、PMMAビーズチェーンに、および修正(revision)手術用のスペーサーに加えることができる。
【0031】
使用対象となる別の医薬組成物はリファマイシンおよびホスホマイシンを含む。さらに別の医薬組成物は、リファンピンおよびホスホマイシンを含み、そのような組成物も排除すべき病原菌の全範囲を本質的にカバーし、MRSAおよびMRSEのような問題のある細菌に対しても有効である。ホスホマイシンは、ヒドロキシルアパタイトに可逆的に結合することにより、担体から放出された後でも他の抗生物質より長く骨中にとどまるというさらなる特性を有する。さらに、ホスホマイシンは、公知のものとしては最小の抗生物質であり、骨組織を通ってまたは骨組織中へ非常によく拡散または透過する。
【0032】
使用対象となるさらなる医薬組成物は、リファマイシンおよびフルオロキノロンを含む。別の医薬組成物はリファンピンおよびモキシフロキサシンを含む。
【0033】
1つの目的は、請求項11による医薬組成物を提供することによっても取り組まれる。そのような医薬組成物は、感染部位での組織感染症の局所治療および防止のために使用できることにより、そのような使用のさらなる実施形態は、上で説明したものに、および本明細書により全体が参照されるものと同様である。
【0034】
そのような医薬組成物は、A’群の少なくとも2つの異なる抗生物質もしくは薬学上許容されるその誘導体、またはA’群の1つの抗生物質およびB’群の抗生物質もしくは薬学上許容されるその誘導体を含む。この場合、A’群は、主に細胞内活性型の抗生物質であるアンサマイシン、とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシンなどのリファマイシン;フルオロキノロン、とりわけモキシフロキサシン;ストレプトグラミン、とりわけキヌプリスチンおよび/またはダルフォプリスチンを含む。B’群は、主に細胞外活性型の抗生物質である糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン;ホスホマイシン;ポリペプチド、とりわけバシトラシン、ダプトマイシンまたはポリミキシンB;およびアミノグリコシド、とりわけアルベカシンを含む。糖ペプチドは、2つのみの抗生物質を含み第1の抗生物質としてアンサマイシンを含む医薬組成物の第2の抗生物質であることはできないことに留意されたい。
【0035】
一実施形態では、この医薬組成物は、可能性のあるB’群の抗生物質として糖ペプチド、ポリペプチドまたはホスホマイシンのみを含むが、B’群の抗生物質としてアミノグリコシドは使用されない。別の実施形態では、A’群の抗生物質としてストレプトグラミンは使用されない。
【0036】
一実施形態では、抗生物質は、この医薬組成物中の抗生物質が、タンパク質合成の阻害薬としてはそのすべてが働かないか、またはそのすべてが働くかいずれかである。すなわち、a)異なるストレプトグラミンのみ、もしくはストレプトグラミンおよびアミノグリコシドを使用してもよいか、またはb)ストレプトグラミンおよびアミノグリコシドは一切使用できないかのいずれかであるような方式で選択される。
【0037】
代替的な一実施形態では、この医薬組成物は、リファマイシンおよびアミノグリコシド、とりわけリファンピンおよびアルベカシンを含む。
【0038】
別の実施形態では、この医薬組成物は、リファマイシンおよびホスホマイシン、とりわけリファンピンおよびホスホマイシンを含む。
【0039】
そのような組成物は、リファマイシンおよびホスマイシン(fosmycin)を、リファマイシンが治療対象部位で0.005から100μg/ml、好ましくは0.006から80μg/ml、最も好ましくは0.0075から20μg/mlの濃度に達するような濃度で含む。ホスホマイシンは、治療対象部位で1から1000μg/ml、好ましくは5から800μg/ml、最も好ましくは10から200μg/mlの濃度に達する。
【0040】
さらに別の実施形態では、この医薬組成物は、リファマイシンおよびポリペプチド、とりわけリファンピンおよびダプトマイシンを含む。
【0041】
そのような組成物は、リファマイシンおよびダプトマイシンを、リファマイシンが治療対象部位で0.005から100μg/ml、好ましくは0.006から80μg/ml、最も好ましくは0.0075から20μg/mlの濃度に達するような濃度で含む。ダプトマイシンは、治療対象部位で0.1から100μg/ml、好ましくは0.5から80μg/ml、最も好ましくは1から20μg/mlの濃度に達する。
【0042】
さらに別の実施形態では、この医薬組成物は、リファマイシンおよびフルオロキノロン、とりわけリファンピンおよびモキシフロキサシンを含む。
【0043】
1つの目的は、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として作用する少なくとも1つの抗生物質、細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす少なくとも1つの抗生物質、および/またはギラーゼ阻害薬として作用する少なくとも1つの抗生物質を含む、微生物に細胞外および/または細胞内感染した細胞の治療のための、および/または細胞の微生物感染症防止のための請求項15による医薬組成物によっても達成される。
【0044】
この治療は、局所的または全身に好ましくは行われる。
【0045】
有利には、アンサマイシン、とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシンなどのリファマイシンは、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として使用される。細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす抗生物質としては、糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン、ホスホマイシン、およびポリペプチド、とりわけバシトラシンおよびダプトマイシンが選択される。ギラーゼ阻害薬としては、フルオロキノロン、とりわけモキシフロキサシンが施用される。
【0046】
リファマイシンは、0.005から100μg/ml、好ましくは0.006から80μg/ml、最も好ましくは0.0075から20μg/mlの間の濃度で使用される。ホスホマイシンは、1から1000μg/ml、好ましくは5から800μg/ml、最も好ましくは10から200μg/mlの濃度で使用される。モキシフロキサシンは、0.1から500μg/ml、好ましくは0.5から200μg/ml、最も好ましくは1から100μg/mlの間の濃度で施用される。ダプトマイシンは、0.1から100μg/ml、好ましくは0.5から80μg/ml、最も好ましくは1から20μg/mlの濃度で使用される。リファマイシン、ホスホマイシン、ダプトマイシンおよび/またはモキシフロキサシンの組合せにおいては、同じ濃度が好ましくは用いられる。
【0047】
この医薬組成物は、骨芽細胞、白血球、赤血球、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、筋細胞および/または内皮細胞などの感染細胞の場合に特に有効である。
【0048】
さらに、この医薬組成物は、グラム陰性菌および/またはグラム陽性菌、好ましくはスタフィロッコシ(Staphyloccoci)型、最も好ましくは黄色ブドウ球菌が原因で生じる微生物感染症に対して有効である。
【0049】
一実施形態では、使用対象となる医薬組成物はバイオフィルム形成阻害薬をさらに含む。病原菌(特に表面上の細菌)の付着、または病原菌が表面上に蓄積して当該表面上にバイオフィルムを形成する能力を少なくとも部分的に低下させるかまたは阻害する物質はすべて、バイオフィルム形成阻害薬とみなされる。
【0050】
一実施形態では、バイオフィルム形成阻害薬として、サリチル酸または薬学的活性をもつその誘導体または塩が使用される。とりわけサリチル酸とアミノグリコシドとの組合せを使用してもよい。サリチル酸は、細菌に対する、特に大腸菌および肺炎桿菌に対するアミノグリコシドの微生物活性を高める。すなわち、サリチル酸はプロトン化された形態で細胞に入り込むことにより細胞の膜電位を高める。これにより今度は細胞の内部中へのアミノグリコシドの取込みが容易になる。
【0051】
さらにはサリチル酸自体も細菌に対する効果を示す。サリチル酸の存在下で被包性の肺炎桿菌を成長させると、結果として莢膜多糖類の合成が減少する。莢膜の材料が失われることにより肺炎桿菌の細胞表面が宿主の防御機序にさらされることで、感染排除に必要な時間が短縮される。サリチル酸は細菌が表面上に付着してバイオフィルムを形成する能力を低下させる。サリチル酸は、バイオフィルム形成に対して100%の防御は提供しないものの抗生物質の効果を支持する。
【0052】
アセチルサリチル酸および/またはその主な代謝産物であるサリチル酸は、微生物の病原性表現型に対しin vitroおよびin vivoの両方において限定的な影響を呈する。細菌の病原性因子は宿主生物において細菌による感染の媒介を助長する。以下の効果が認められている:関連のバイオマトリックスへの付着の減少、莢膜産生の減少、バイオフィルム形成の低減、および疣(vegetation)の成長、疣内の細菌増殖の減退、および実験的な感染性心内膜炎における血行性播種。また、サリチル酸は、複数の抗生物質に耐性を有する遺伝子座など特定の遺伝子座の翻訳を正に調節する。さらに、サリチル酸は細胞質のタンパク質を誘導し、キノロン耐性を高める。
【0053】
サリチル酸の存在下で成長させた後では、大腸菌におけるいくつかの型の線毛(例えば、定着因子抗原、P線毛および1型線毛)の合成が減少する。線毛は、大腸菌が上皮の表面に付着する上で決定的に重要な役割を果たすので、サリチル酸による治療は、線毛を有する(fimbriated)大腸菌の何らかの菌株が原因で生じる感染症を防止する可能性がある。サリチル酸はシラスティックカテーテルへの大腸菌の付着も制限する。
【0054】
細菌における走化性は鞭毛の旋回の規則により調節される。この旋回が反時計回りのときは直線軌道に沿って泳ぐことになり、時計回りのときは回転することになる。サリチル酸は大腸菌tsr遺伝子産物によりケモリペラント(chemorepellant)として認識される。この認識により、運動性大腸菌は持続的に回転することとなり、その結果最終的に細胞はサリチル酸から遊走して逃れる。大腸菌が群れる行動も濃度に依存する形でサリチル酸により阻害される。大腸菌における鞭毛自体の産生は、サリチル酸の存在下での成長により阻害される。これには、鞭毛を構成するタンパク質モノマーであるフラゲリンの産生の阻害が介在する。サリチル酸による大腸菌における鞭毛合成および運動性の阻害は、鞭毛の構築に必要と考えられるOmpF合成における合成が減少することによるものであるとも推測されている。
【0055】
バイオフィルムは、微生物由来の多糖マトリックス中に封じ込められた微生物および他の物質からなる。サリチル酸の存在下で緑膿菌および表皮ブドウ球菌を成長させると、バイオフィルム形成に必要な細胞外多糖の産生が減少する。バイオフィルム形成が減少すると、これらの生物がコンタクトレンズおよび医療用ポリマーに付着する能力が低下する。表皮ブドウ球菌におけるバイオフィルム産物の成分は、多糖類、タイコ酸およびタンパク質の複合混合物で構成される細胞外粘液である。粘液に関連するタンパク質およびタイコ酸の産生は、表皮ブドウ球菌の場合はサリチル酸により阻害される。
【0056】
黄色ブドウ球菌の場合は、サリチル酸は、マトリックス結合(すなわちフィブリノーゲンおよびフィブロネクチンへの)およびαヘモリシン活性にとって重大な関連のある2つの異なる病原性表現型を軽減する。こうした効果は、それぞれの構造遺伝子、すなわちfnbA、fnbBおよびhlaの発現がサリチル酸の媒介により減少することと特異的に関連する。マトリックスタンパク質結合および細胞溶解のプロファイルの抑制に加え、サリチル酸の存在下では細胞外酵素およびプロテインAの産生強化が生じる。これらの知見から、サリチル酸は、全体的な遺伝子転写の抑制ではなく、1つまたは複数のグローバル制御網(global regulatory network)によりその抗微生物効果を果たしたという可能性が高まる。グローバルレギュロン(global regulon)sarAおよびグローバルレギュロンagrは、サリチル酸により軽減され、このことは、in vitroでのhlaおよびfnbA遺伝子の発現低下と合致する。黄色ブドウ球菌の病原性パラメーターは、サリチル酸により完全に抑制されたわけではないが、薬物濃度に依存する形で最大およそ50%低下したことには注目すべきである。
【0057】
一実施形態では、治療対象となる感染組織は急性的または慢性的に感染したものである。急性感染症と慢性感染症との組合せ(すなわち急性感染症が起きてから慢性感染症になる)も治療できると考えられる。
【0058】
今回の目的は、請求項21による医療目的用の基質を提供することによっても達成される。この基質は、組織感染症を局所治療および防止する場合に医薬組成物の担体として好ましくは使用される。さらなる実施形態では、この基質は、外科的な病巣清掃術における補助剤として感染組織の除去後に局所的にも使用される。
【0059】
一実施形態では、この基質は使用対象となる医薬組成物と共に浸漬できる。別の実施形態では、医薬組成物は基質の基材中で分散させることができる。さらに別の実施形態では、医薬組成物を基材と共に重合させることができる。したがって、基質を医薬組成物でコーティングしおよび/または医薬組成物を基質中に組み込むことが可能である。
【0060】
好ましい一実施形態では、この基質には医薬組成物を施用する前に特別な処理(例えばサンドブラスト加工またはヒドロキシルアパタイトコーティング)を施した。
【0061】
本説明の範囲内では、コーティングも医薬組成物がその中に存在する(例えば分散形態で)支持材料で作製される。そのような支持材料としてはポリラクチドを挙げることができる。次に、分散された医薬組成物が含まれている支持材料を、基質上に(後者の表面上に直接、またはその表面上にすでに存在している層もしくは別の層の上、そのいずれかに)コーティングとして施用する。
【0062】
一実施形態では、この基質は、フリース、織物、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとのコポリマー、再吸収可能なポリマー、ポリエチレン、金属または金属合金(例えば、Ti6AI4V合金または別のチタン合金)、セラミック、骨セメント、とりわけポリマー材料またはリン酸カルシウムで作製されているもの、および/または代用骨を含む。したがって、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとのコポリマーおよびグリシンから主になるPMMAビーズチェーン、ならびに局所用の抗生物質担体として投与される特定の医薬組成物は、可能性のある基質である。さらに、骨セメントはスペーサー用および修正手術用に使用することを意図してもよい。
【0063】
PMMAビーズチェーンの場合は以下の使用様式が可能である:まず、PMMA基材内に医薬組成物を分散させる。この粉末を180℃に加熱してから、射出成型により型の中に充填する。医薬組成物は、基材全体にわたって分布しており、PMMAビーズの内側部分から表面に向かって拡散でき、そこでPMMAビーズチェーンの周囲に存在している細菌と相互作用できる。PMMAビーズチェーンは、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、最も好ましくは1〜5質量%の(1つまたは複数の)抗生物質を含んでもよい。
【0064】
別の実施形態では、とりわけ修正手術の場合、基質は埋込み可能な人工器官であり、この場合、人工関節、および、とりわけ膝、股関節、肩、肘用の人工器官、ならびに椎骨インプラントはそれぞれの例である。さらに、スクリュー、プレートなどのような外傷の外科手術用のインプラントはすべて基質として使用してもよい。基質のコーティングは、基質の表面積1cm2当たり、10〜1000μg/cm2、好ましくは20〜500μg/cm2、最も好ましくは50〜300μg/cm2の(1つまたは複数の)抗生物質を含んでもよい。
【0065】
一実施形態では,フリースまたは織物は天然または合成の繊維(生分解性のものであってもよい)を含み、この場合ポリラクチド(ポリ乳酸)が例示的な材料である。別の実施形態では、フリースまたは織物はコラーゲンを含み、この場合、フリースはコラーゲンから本質的になるものであってもよい。後者の場合、コラーゲンフリースもまた、完全に生分解性である。フリースは、フリース1cm2当たり0.01〜10mg/cm2、好ましくは0.1〜8mg/cm2、最も好ましくは0.5〜5mg/cm2の(1つまたは複数の)抗生物質を含んでもよい。
【0066】
さらに、医薬組成物で対象を局所治療する方法であって、該医薬組成物が、
− A群の少なくとも2つの異なる抗生物質または薬学上許容されるその誘導体、または
− A群の1つの抗生物質およびB群の少なくとも1つの抗生物質または薬学上許容されるその誘導体を含み、
A群が
− 細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬、
− ギラーゼの阻害薬、または
− 細菌のタンパク質合成の阻害薬
として働く細胞内活性型の抗生物質を含み、
B群が
− 細菌の細胞壁合成の阻害薬として、
− 細菌のタンパク質合成の阻害薬として、または
− 細菌の細胞壁の直接的な不安定化または破壊により
働く細胞外活性型の抗生物質を含む方法を記載する。
【0067】
この方法は、とりわけ、前記対象の組織感染症を治療するために使用でき、この場合の組織とは、例えば軟部組織および/または骨組織および/または骨であってもよい。これらの感染症は、外科手術が原因で、とりわけヒトまたはヒト以外の体内へのインプラントの埋込みに関する手術が原因で生じることがあると考えられる。したがって、この治療はヒトまたはヒト以外の体に施してもよいと考えられる。
【0068】
本態様のさらなる実施形態に関しては、前記方法(とりわけ使用対象となる基質および選択対象となる抗生物質に関する)に同様に適用可能である前述の説明が参照によりなされる。
【0069】
第2の目的は、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として作用する少なくとも抗生物質と、表面上の微生物に対する抗付着薬として細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす少なくとも1つの抗生物質との組合せを使用することにより達成される。
【0070】
細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬は、アンサマイシン、とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシンなどのリファマイシンを含む群から好ましくは選択される。
【0071】
細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす抗生物質は、糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン、ホスホマイシン、およびポリペプチド、とりわけバシトラシンまたはダプトマイシンを含む群から好ましくは選択される。好ましい組合せは、リファマイシンおよびホスホマイシンを含む。
【0072】
さらなる実施形態では、微生物は、グラム陰性菌および/またはグラム陽性菌、好ましくはスタフィロッコシ型のもの、最も好ましくは黄色ブドウ球菌である。
【0073】
細菌のRNAポリメラーゼの少なくとも1つの阻害薬と細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす少なくとも1つの抗生物質との組合せは、金属、好ましくはチタン、鋼または金属合金、セラミックス、および骨セメントまたはヒドロキシルアパタイトで作製された表面上に、好ましくは付加またはコーティングされる。
【0074】
基質上にコーティングする場合、この組合せは、リファマイシンおよびホスホマイシンを、それぞれ10から1000μg/cm2、好ましくは20から500μg/cm2、最も好ましくは50〜200μg/cm2の間の濃度で含んでもよい。
【0075】
有利には、抗付着効果は、コーティングされた表面を取り囲む組織に対する殺菌効果を伴う。
【0076】
実施形態の例を、以下の図および例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0077】
1.細胞外感染症の治療のためのリファンピンおよびホスホマイシンまたはその組合せの使用
1.1.黄色ブドウ球菌亜種アウレウス・ローゼンバッハ(Rosenbach)(ATTC6538P)に感染したMG63骨芽細胞の細胞外感染症の治療のためのリファンピンおよびホスホマイシンまたはその組合せの使用
細胞剥離用媒体のAccutaseを用いて、感染の24時間前にMG63骨芽細胞を剥離した。Neubauer計数盤を用いて細胞数を定量した。コーティングされていない24ウェルのプレート上に、1.5×104細胞/cm2の細胞密度で、10%FCS(ウシ胎仔血清)、1%Glutamax−Iおよび1%Natrium Pyruvatを添加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)1ml中に細胞を播種し、37℃および5%CO2の条件でインキュベートした。
【0078】
Caso−Bouillon培地5mlを黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させることにより、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pの一晩培養物を調製した。この培養物を、37℃で一晩、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。感染に先立ち、一晩培養物100μlをCaso Boulillon培地5ml中に移し、37℃で2時間、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。
【0079】
MG63骨芽細胞の細胞培養物の上清を、ピペットを用いてウェルから除去した。1×106の黄色ブドウ球菌ATTC6538P細胞を含有する1mlを各ウェルに加えた。24ウェルのプレートを2つ、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pと共にインキュベートした。骨芽細胞と細菌とを合わせたものを、5%CO2雰囲気下で37℃にて1.5時間インキュベートした。顕微鏡を用いて細菌の存在を定量した。
【0080】
1.5時間後、上清を除去し、添加物の入っていない37℃の温DMEMで、ウェルを慎重に2回洗浄した。洗浄手順中に細胞が多く剥離されすぎなかったかどうか、顕微鏡でチェックした。洗浄中にはプランクトン性の細胞のみが除去されており、細胞および細胞培養プラスチックに付着した細菌が多数目視できた。その後、細胞培養完全培地1mlを、以下の抗生物質を含有する各ウェルに加えた:
− 100μg/mlのゲンタマイシン
− 1μg/mlのリファンピン
− 100μg/mlのホスホマイシン二ナトリウム
− 1μg/mlのリファンピン+100μg/mlのホスホマイシン二ナトリウム
− 1μg/mlのリファンピン+100μg/mlのゲンタマイシン。
【0081】
抗生物質の入っていない陰性対照は使用しなかったが、これは抗生物質の不在下での細菌の急激な成長は骨芽細胞に損傷を与えると考えられたためである。
【0082】
24時間のインキュベーション後、細胞培養物の上清100μlをCaso寒天プレート(カゼインペプトン・大豆かすペプトンのブロス)上に直接(例えば、リファンピン、ホスホマイシン、リファンピン/ホスホマイシン、およびリフムピシン(rifmpicin)/ゲンタマイシンの場合)、または適切な希釈(例えば、ゲンタマイシンの場合は1:100)の後で、筋状に播種し、37℃で一晩インキュベートした。1群当たり2つのウェルの上清を筋状に播種した。
【0083】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0084】
上清のCFU(コロニー形成単位)を測定し、結果を図1に示す。
【0085】
図1は、MG63骨芽細胞培養物の上清中に位置する黄色ブドウ球菌ATTC6538Pのゲンタマイシンを除く異なる抗生物質に対する感受性を明確に示す。用いた濃度は、この黄色ブドウ球菌株について定量されたMIC値(最小発育阻止濃度)と比較して高かったが、この抗生物質治療では細菌を完全には除去できなかった。このことは、細菌が細胞または細胞培養プラスチックの表面上に定着し、その結果抗生物質に対する感受性が低下した事実によるものである。これにより、ブドウ球菌が細胞外マトリックスおよび異物に容易に結合するin vivoでの状況が模擬的に再現される。リファンピン、ホスホマイシン、およびリファンピン/ゲンタマイシンの組合せの効果は中程度であるが、リファンピン/ホスホマイシンの組合せは強力で相乗的な効果を示す。
【0086】
1.2.黄色ブドウ球菌亜種アウレウス(BAA44)に感染したMG63骨芽細胞の細胞外感染症の治療のためのリファンピンおよびホスホマイシンまたはその組合せの使用
黄色ブドウ球菌BAA44、複数の抗生物質に対する追加的な耐性を有するMRSA株に感染したMG63骨芽細胞の感染についての実験手順は、前述のものと基本的に同じであった。
【0087】
以下の抗生物質を使用した:
− 100μg/mlのバンコマイシン
− 10μg/mlのリファンピン
− 100μg/mlのホスホマイシン
− 10μg/mlのリファンピン+100μg/mlのホスホマイシン
− 10μg/mlのリファンピン+100μg/mlのバンコマイシン。
【0088】
24時間のインキュベーション後、細胞培養物100μlをCaso寒天プレート(カゼインペプトン・大豆かすペプトンのブロス)上に、直接(例えば、バンコマイシン、リファンピン/ホスホマイシン、およびリファンピン/バンコマイシンの場合)、または適切な希釈(例えば、リファンピンおよびホスホマイシンの場合は1:100)の後で、筋状に播種し、37℃で一晩インキュベートした。1群当たり2つのウェルの上清を筋状に播種した。
【0089】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0090】
上清のCFU(コロニー形成単位)を測定し、結果を図2に示す。
【0091】
図2は、MG63骨芽細胞培養物の上清中に位置する黄色ブドウ球菌BAA44の、異なる抗生物質に対する感受性を明確に示す。CFU値を対数値に変える必要があったことが注目される。
【0092】
用いた濃度でのリファンピンは、予想どおりほとんど有効性を示さないが、これは黄色ブドウ球菌BAA44がリファンピン耐性株であるためである。ホスホマイシンの抗生物質効果も比較的小さい。しかし、リファンピン/ホスホマイシンの組合せは、細胞外の黄色ブドウ球菌BAA44に対する強力で相乗的な効果を示し、このことは単一の化合物の効果が弱いことから、驚きであり、予想外であった。
【0093】
リファンピン/ホスホマイシンの組合せの効果は、MRSA感染症の治療にとって最も重要な抗生物質の1つであるバンコマイシンの効果よりわずかに良好ですらある。バンコマイシンとリファンピンとの組合せもわずかな相乗効果を示す。この実験において用いたバンコマイシンの濃度は非常に高かったため、そうしなければ弱いバンコマイシンの殺菌効果が高まったことに留意すべきである。100μg/mlというバンコマイシンの濃度は、静脈内施用では達成できない。
【0094】
2.細胞内感染症の治療のための、異なる抗生物質、すなわちリファンピンおよびホスホマイシンまたはその組合せの使用
2.1.黄色ブドウ球菌亜種アウレウス・ローゼンバッハ(ATTC6538P)に感染した骨芽細胞MG63の細胞内感染症の治療のための、異なる抗生物質、すなわちリファンピンおよびホスホマイシンまたはその組合せの使用
黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染したMG63骨芽細胞の細胞内感染の定量についての実験手順は、前述のものと本質的に同じであった。
【0095】
ただし、細胞外の黄色ブドウ球菌ATTC6538Pを排除するために、感染後、抗生物質を加える前に、各細胞培養物をリゾスタフィンで処理した。
【0096】
この目的のため、各ウェルから細菌懸濁液を除去し、10%FCSを含有する温DMEMで細胞を1回洗浄した。25μg/mlのリゾスタフィン溶液250μlを各ウェルに加えた。細胞を37℃で10分間インキュベートした。その後、細胞外の細菌は顕微鏡で一切観察できなかった。リゾスタフィン溶液を完全に除去してから、細胞を温DMEM1mlで1回洗浄した。その後、以下の組成を有する抗生物質溶液を加えた:
− 100μg/mlのバンコマイシン
− 100μg/mlのゲンタマイシン
− 0.01〜100μg/mlのリファンピン
− 10〜1000μg/mlのホスホマイシン
− 1μg/mlのリファンピン+100μg/mlのホスホマイシン
− 1μg/mlのリファンピン+100μg/mlのゲンタマイシン
− 1〜100μg/mlのモキシフロキサシン。
【0097】
感染細胞を、CO2雰囲気下で37℃にて24時間インキュベートした。
【0098】
感染後のMG63骨芽細胞の代謝活性を定量するために、細胞の上清を除去してから、細胞培養用の新鮮な温培地1mlを各ウェルに加えた。その後、200μlのMTT溶液(3[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェナル(diphenal)テトラゾリウムブロミド)を各ウェルに加えた。この培養物を5%CO2雰囲気下で37℃にて2時間インキュベートした。細胞培養物の上清を除去してから、ホルマザン(代謝活性により形成された)をイソプロパノール1mlで可溶化した。各懸濁液200μlを96ウェルのマイクロタイタープレートに移して、ELISAリーダー(Tecan)を用いて540nmでの吸光度を測定した。
【0099】
540nmでの吸光度はMG63骨芽細胞の代謝活性の指標である。MG63骨芽細胞中の細胞毒性黄色ブドウ球菌株ATTC6538Pが細胞内で繁殖すると、結果として感染細胞は死ぬ。吸光度が低いほど細胞の代謝活性が低く、したがって細胞の黄色ブドウ球菌ATTC6538Pへの感染が強い。
【0100】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0101】
図3a〜dは、異なる抗生物質がMG63骨芽細胞の代謝活性に及ぼす影響を示すものである。
【0102】
バンコマイシンは、細胞中に透過できないため、骨芽細胞内部の黄色ブドウ球菌の細胞内繁殖に影響を及ぼさない。したがって、骨芽細胞の代謝活性は黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染することにより強力に低下する(図3a〜d)。同じことがゲンタマイシンにも当てはまる。それにもかかわらず、ゲンタマイシンとリファンピンとの組合せにおいては、代謝活性はリファンピン単独の場合より高かった(データは示していない)。
【0103】
これに対し、リファンピンは黄色ブドウ球菌ATTC6538Pが原因で生じる細胞死を大幅に減らすことができる(図3a)。低濃度(0.006μg/ml)でもすでに代謝活性を高める上で十分である。
【0104】
ホスホマイシンも、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pの細胞内繁殖、ひいては感染した骨芽細胞の代謝活性に影響を及ぼす(図3b)。10μg/mlのホスホマイシンは代謝活性をわずかに高めるのみであり、それにより100μg/mlは最大限の効果を有し、代謝活性はほぼ2倍となった。この結果は驚くべきものであるが、それはホスホマイシンが細胞中に透過できることはこれまで知られていなかったからである。ホスホマイシンは好中球中に透過できることが知られているにすぎない。
【0105】
リファンピンとホスホマイシンとの組合せも代謝活性の向上をもたらし(図3d)、相乗効果すら示す(図3c)。
【0106】
1から100μg/mlのモキシフロキサシンの施用も、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pの細胞内成長を阻害し、それにより代謝活性を2倍を超えるまで高めることができる(図3e)。
【0107】
2.2.黄色ブドウ球菌亜種アウレウス(BAA44)に感染した骨芽細胞MG63の細胞内感染症の治療のための、リファンピン、ホスホマイシンまたはその組合せの使用
黄色ブドウ球菌BAA44に感染したMG63骨芽細胞の細胞内感染の定量についての実験手順は、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pについて前述したものと本質的に同じであった。
【0108】
非細胞毒性黄色ブドウ球菌BAA44は骨芽細胞中で存続し、細胞毒性株の黄色ブドウ球菌ATTC6538Pとは異なり細胞内で分裂しないので、黄色ブドウ球菌BAA44が細胞内に局在しても骨芽細胞の細胞死を招く結果にならない。したがって、MG63骨芽細胞の、黄色ブドウ球菌BAA44への細胞内感染を細胞の代謝活性に基づいて定量することはできず、代わりに細胞溶解および細胞内CFUの計数により定量した。
【0109】
以下の組成を有する抗生物質溶液を加えた:
− 100μg/mlのバンコマイシン
− 2.5〜40μg/mlのリファンピン
− 25〜400μg/mlのホスホマイシン
− および、追って記載の異なる比率でのその混合物。
【0110】
感染細胞を、抗生物質(antiobiotics)と共に5%CO2雰囲気下で37℃にて24時間インキュベートした。
【0111】
その後、この細胞をpH7.4のPBS(リン酸緩衝液)で1回洗浄してから、リンゲル液中の0.1% Triton X100 1mlで溶解させる。この溶菌液を5分間超音波処理した。溶菌液はピペットを用いて徹底的に再懸濁させる。24ウェルのプレート1つのみを扱い、他のプレートは溶菌液中での細菌の成長を最小限にするために4℃で保管した。溶菌液100μlを希釈せずにCaso寒天プレート上に筋状に播種し、37℃で一晩インキュベートしてからコロニーを計数した。
【0112】
図4a〜4gは、MG63骨芽細胞の黄色ブドウ球菌BAA44への細胞内感染の程度についての指標としての、1ウェル当たりのCFU値を示すものである。CFU値が低いほど、骨芽細胞の黄色ブドウ球菌BAA44への感染率が低い。このことは、添加した抗生物質の有効性と相関する。黄色ブドウ球菌BAA44の細胞内成長力が弱いため、抗生物質の殺菌(bactericidial)効果によりCFUは減少する。
【0113】
50〜400μg/mlの間の濃度のホスホマイシンは、細胞内に位置する黄色ブドウ球菌BAA44への感染率に対する良好な有効性を示す(図4a)。驚くべきことに、ホスホマイシンの効果は静脈内施用が可能な濃度(血清中で100〜400μg/ml、好ましくは132〜297μg/ml)で達成できる。そのすぐれた組織浸透性から、高いホスホマイシン濃度は骨中でも達成される。したがって、ホスホマイシンは骨髄炎の治療において首尾よく施用される。
【0114】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0115】
黄色ブドウ球菌BAA44はリファンピン耐性株であるが(Athough)、リファンピンは良好な細胞内効力を示す(図4b)。
【0116】
リファンピンおよびホスホマイシンは、さまざまな濃度比率において相乗効果を明確に示す(図4c〜g)。
【0117】
リファンピン耐性黄色ブドウ球菌BAA44の場合においてさえ、施用された濃度は骨感染症の全身治療を可能にするために十分満足なものであった。したがって、リファマイシンとホスホマイシンとの組合せは、骨髄炎の治療に適しており、全身施用することもできる。
【0118】
3.医療用基質の表面上での抗付着薬としての、リファンピンとホスホマイシンとの組合せの使用
3.1.リファンピンおよびホスホマイシンでコーティングしたチタン基質上での黄色ブドウ球菌亜種アウレウス・ローゼンバッハ(ATTC6538P)の付着
Caso−Bouillon培地5mlを黄色ブドウ球菌ATTC6538Pに感染させることにより、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pの一晩培養物を調製した。この培養物を、37℃で一晩、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。一晩培養物100μlをCaso Boulillon培地5ml中に移し、37℃で2時間、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。細菌密度を測光法で定量した。測定に先立ち、細菌懸濁液をCaso Bouillon中で1:2で希釈した。付着実験用に、10%FCSを添加したCaso Boullion中の1×105CFU/mlの密度の細菌懸濁液を使用した。
【0119】
異なる方式でコーティングした2cmのチタンディスクを試料として使用した:
− 陰性対照として、サンドブラスト加工したチタンディスク、
− サンドブラスト加工の上200μg/cm2のバンコマイシンでコーティングしたチタンディスク、
− 50μg/cm2のリファンピンおよび200μg/cm2のホスホマイシンカルシウムで同時にコーティングしたチタンディスク、
− 第1のステップでは50μg/cm2のリファンピンで、第2のステップでは200μg/cm2のホスホマイシンカルシウムでコーティングしたチタンディスク、および
− 第1のステップでは200μg/cm2のホスホマイシンカルシウムで、第2のステップでは50μg/cm2のリファンピンでコーティングしたチタンディスク。
【0120】
コーティング後、チタンディスクをPBSで1回または3回洗浄した。コーティングした、およびコーティングしていないチタンディスクを、PBS5mlと共に室温で5分間インキュベートした。これをさらに2回繰り返した。3回目のサークルではチタンディスクを室温で1時間インキュベートした。抗生物質の剥離量を増やすため、PBS溶液を除去する前にチタンディスクを裏返すかまたは回転させた。その後、滅菌済みの12ウェルのプレート中にチタンディスクを移した。
【0121】
異なるチタン試料を、細菌懸濁液2mlと共に37℃で1.5時間、振盪せずにインキュベートした。
【0122】
その後、細菌懸濁液を除去し、PBS2.5mlでディスクを3回洗浄した。最後の洗浄サイクルの後、滅菌済みのリンゲル液10ml中に各ディスクを入れた。各群の1枚のみのディスクを同時に試験し、他のディスクは4℃で保管した。付着した細菌を剥離するためにリンゲル液中のチタンディスクに超音波を10分間あてた。剥離された細菌を含む懸濁液を希釈し(1:10、1:100)、Caso寒天プレート上に筋状に播種した。寒天プレートを37℃で一晩インキュベートし、翌日コロニーを計数した。
【0123】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0124】
図5aは、細菌と共に1.5時間インキュベーションした後のチタンディスク1枚当たりの黄色ブドウ球菌ATTC6538PのCFUを示すものである。バンコマイシンは、1回の洗浄ステップ後には抗付着効果のみを有したが、3回の洗浄ステップ後には抗付着効果は一切明らかにならなかった。事実、バンコマイシンでコーティングしたディスクに付着した黄色ブドウ球菌細胞の数は、コーティングされていないディスクと同等であった。しかしながら、リファンピンとホスホマイシンとの組合せは、強力な抗付着効果を示した。この効果は洗浄ステップの数にほんのわずか依存した。リファンピン/ホスホマイシンでのコーティングは、バンコマイシンと比較した場合、数回の洗浄ステップによりチタン表面から完全には除去されにくいことが明らかであった。
【0125】
リファンピンおよびホスホマイシンでディスクをコーティングする順序(一緒に、最初にリファンピン、次にホスホマイシン;最初にホスホマイシン、次にリファンピン)は、この効果に影響しないようである(図5a)。
【0126】
3.2.リファンピンとホスホマイシンとの組合せでコーティングしたチタン基質上でのスタフィロコックス・エピデルミス(Staphylococcus epidermis)ATTC35984の付着
実験手順は、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pについて前述したものと本質的に同じであった。
【0127】
異なる方式でコーティングした2cmのチタンディスクを試料として使用した:
− 陰性対照としてのチタンディスク(サンドブラスト加工してある)、
− 第1のステップでは50μg/cm2のリファンピンで、第2のステップでは200μg/cm2のホスホマイシンカルシウムでコーティングしたチタンディスク、および
− 第1のステップでは200μg/cm2のホスホマイシンカルシウムで、第2のステップでは50μg/cm2のリファンピンでコーティングしたチタンディスク。
【0128】
コーティングしたチタンディスクを、S.エピデルミスと共にインキュベーションする前にPBS5mlで3回洗浄した。
【0129】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0130】
S.エピデルミスについての実験結果(図5b)は、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pの場合において見出された結果を支持する。コーティングされていないチタン上へのS.エピデルミスATTC35984の付着量は、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pの付着量より少なかった。このことは、S.エピデルミスは、プラスチックまたはヒドロキシアパタイトに好んで付着するが、チタンへの付着量はそれより少ないという事実に関連する可能性がある。チタンディスクは細菌と共にインキュベーションする前に3回洗浄したが、リファンピンとホスホマイシンとの組合せは強力な抗付着効果を示す。
【0131】
3.3.リファンピンとホスホマイシンとの組合せでコーティングしたチタン基質上での黄色ブドウ球菌BAA44の付着
実験手順は、黄色ブドウ球菌ATTC6538Pについて前述したものと本質的に同じであった。
【0132】
以下のコーティングした2cmのチタンディスクを、試料として使用した:
− 陰性対照としてのサンドブラスト加工したチタンディスク、
− 200μg/cm2のバンコマイシンでコーティングしたチタンディスク、
− サンドブラスト加工の上、第1のステップでは50μg/cm2のリファンピンで、第2のステップでは200μg/cm2のホスホマイシンカルシウムでコーティングしたチタンディスク。
【0133】
コーティングしたチタンディスクを、黄色ブドウ球菌BAA44と共に1.5時間インキュベーションする前に、PBS5mlで1回または2回洗浄した。
【0134】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0135】
図5cは、黄色ブドウ球菌BAA44と共にインキュベーションした後のディスク上のCFUを示すものである。バンコマイシンは、ディスクを1回洗浄した場合にのみ黄色ブドウ球菌BAA44の付着を減少させた。すなわち、2回の洗浄ステップ後はすべてのバンコマイシンが除去されたようであり、細菌の付着の減少は観察できなかった。黄色ブドウ球菌BAA44のリファンピン耐性にもかかわらず、リファンピン/ホスホマイシンの組合せは強力な抗付着薬効果を有したが、この効果は細菌と共にインキュベーションする前にディスクを1回ではなく2回洗浄した場合にはほんのわずか低下した。
【0136】
3.4.リファンピンおよびホスホマイシンでコーティングしたチタン基質の、黄色ブドウ球菌BAA44に対する殺菌活性
Caso―Bouillon培地5mlを黄色ブドウ球菌BAA44に感染させることにより、黄色ブドウ球菌BAA44の一晩培養物を調製した。この培養物を、37℃で一晩、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。チタンディスクと共にインキュベーションする前に、一晩培養物100μlをCaso Boulillon培地5ml中に移し、37℃で2時間、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。細菌密度を測光法で定量した。
【0137】
付着アッセイでは、最少培地(PBS、0.2%塩化アンモニウム、0.2%硫酸ナトリウム、0.25%グルコース、1%Caso Bouillon、50μg/mlのグルコース−6−ホスホネート)中の密度が1×104CFU/mlの細菌懸濁液を使用した。最少培地は、細菌の成長を最小限にするため、Caso Bouillonの代わりに使用した。
【0138】
異なる方式でコーティングした2cmのチタンディスクを試料として使用した:
− 陰性対照としてのチタンディスク(サンドブラスト加工してある)、
− 200μg/cm2のバンコマイシンでコーティングしたチタンディスク(サンドブラスト加工してある)、
− 第1のステップでは300μg/cm2のホスホマイシンカルシウムで、第2のステップでは70μg/cm2のリファンピンでコーティングしたチタンディスク。
【0139】
コーティング後、室温のPBS2.5mlでチタンディスクを3回洗浄した。
【0140】
異なるチタン試料を、細菌懸濁液2mlと共に37℃で15.5時間、振盪せずにインキュベートした。
【0141】
その後、上清中のCFU、ならびにチタンディスク上の付着細菌を分析した。上清はPBS中で1:10で希釈し、この希釈液100μlをCaso寒天プレート上に筋状に播種した。ディスクをPBS2.5mlで4回洗浄して、付着していない(not adherent)細菌を除去した。最後の洗浄サイクルの後、滅菌済みのリンゲル液10ml中に各ディスクを入れた。各群の1枚のみのディスクを同時に試験し、他のディスクは4℃で保管した。付着細菌を剥離するために、リンゲル液中のチタンディスクに10分間超音波をあてた。剥離した細菌を含む懸濁液を希釈し(1:10、1:100、1:1000)、Caso寒天プレート上に筋状に播種した。寒天プレートを37℃で一晩インキュベートし、翌日コロニーを計数した。
【0142】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0143】
結果を図5dに示す。陰性対照中での細菌の成長は、最少培地を使用することにより減ったが、それにもかかわらず、上清中の細菌のCFUはインキュベーション期間中に10倍増加した。驚くべきことに、コーティングされていないディスクに付着した分のCFUは上清中より高いことを見出すことができた。
【0144】
バンコマイシンは、コーティングされていない対照と比較して、細胞培養物の上清中での細菌の成長をわずかに低下させたが、細菌の付着はそれよりさらに大きく減少した。しかしながら、バンコマイシンは、殺菌効果を一切呈することができず、バンコマイシンでコーティングしたチタン試料上では50,000を超えるCFUを見出すことができた。
【0145】
チタンディスクは付着アッセイ前に3回洗浄したが、ホスホマイシン/リファンピンの組合せは、リファンピン耐性株BAA44に対し明らかな殺菌活性を示した。上清中ではCFUは検出できず、チタン表面に付着したのは100CFU未満であった。これは、コーティングされていないチタンと比較した場合の細菌の付着量では86,000倍の減少、およびバンコマイシンでのコーティングと比較した場合の470倍の減少に相当する。
【0146】
担体マトリックス(例えばポリマーマトリックス)を有さない可溶性の抗生物質コーティングは、埋込み後に組織液中に溶解させることによりその有効性が発揮されるようになることが期待された。溶解した抗生物質の有効性により定着して細菌の繁殖が減る前にプランクトン性の細菌を殺すことにより、この場合は、インプラントまたは人工器官への定着が妨げられる。数回の洗浄ステップ後にディスク上に残った、したがって上清中で入手できるリファンピンおよびホスホマイシンの量は、上清中で抗細菌の有効性を示すには依然として十分多かった。したがって、リファンピン/ホスホマイシンでのコーティングは十分安定であるため、埋込み中に組織液および血液と接触させることができ、インプラント表面および周囲組織への細菌の付着を防止する上で依然として有効である。この特性は、ブドウ球菌感染症にとって特に重要であるが、その理由は、ブドウ球菌はインプラントに専ら付着するのではなく、組織の細胞外マトリックスにも付着するからである。
【0147】
4.黄色ブドウ球菌亜種アウレウス(BAA44)への骨芽細胞MG63細胞の急性感染症の治療のためのリファンピンおよびダプトマイシンまたはその組合せの使用
感染の24時間前に、細胞剥離用媒体のAccutaseを用いてMG63骨芽細胞を剥離した。Neubauer計算盤を用いて細胞数を定量した。コーティングされていない24ウェルのプレート上に、1.5×104細胞/cm2の細胞密度で、10%FCS(ウシ胎仔血清)、1%Glutamax−Iおよび1%Natrium Pyruvatを添加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)1ml中に細胞を播種し、37℃および5%CO2の条件でインキュベートした。
【0148】
Caso−Bouillon培地5mlを黄色ブドウ球菌BAA44に感染させることにより、黄色ブドウ球菌BAA44の一晩培養物を調製した。この培養物を、37℃で一晩、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。感染に先立ち、一晩培養物100μlをCaso Boulillon培地5ml中に移し、37℃で2時間、振盪(450U/分)しながらインキュベートした。
【0149】
MG63骨芽細胞の細胞培養物の上清を、ピペットを用いてウェルから除去した。1×106の黄色ブドウ球菌BAA44CFUを含有する1mlを、以下の組成を有する抗生物質も含有する各ウェルに加えた。
【0150】
− 50μg/mlのバンコマイシン
− 2.5μg/mlのリファンピン
− 1.25〜10μg/mlのダプトマイシン
− および、追って記載の異なる比率でのその混合物。
【0151】
骨芽細胞、細菌および抗生物質組成物を合わせたものを、5%CO2雰囲気下で37℃にて18時間インキュベートした。
【0152】
その後、この細胞をpH7.4のPBS(リン酸緩衝液)で1回洗浄してから、リンゲル液中の0.1% Triton X100 1mlで溶解させる。この溶菌液を、ピペットを用いて徹底的に再懸濁させた。24ウェルのプレート1つのみを扱い、他のプレートは溶菌液中での細菌の成長を最小限にするために4℃で保管した。溶菌液をPBS中で1:10で希釈し、希釈した溶菌液100μlをCaso寒天プレート上に筋状に播種し、37℃で一晩インキュベートしてから、コロニーを計数した。
【0153】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0154】
細胞は感染後にリゾスタフィンで処理しなかったので、1ウェル当たりのCFU値(図6)は、MG63骨芽細胞の、黄色ブドウ球菌BAA44への細胞内感染の程度についての、ならびにMG63骨芽細胞に細胞外付着した黄色ブドウ球菌BAA44についての指標である。CFU値が低いほど、骨芽細胞の、黄色ブドウ球菌BAA44への感染率が低い。このことは添加した抗生物質の有効性と相関する。
【0155】
菌株はリファンピン耐性であるため、リファンピン2.5μgの効果はバンコマイシンおよびダプトマイシンの場合より低かったが、プランクトン性の黄色ブドウ球菌BAA44に感染したMG63細胞の過成長は有効に防止された(データには示していない)。
【0156】
ダプトマイシン単独は、1.25μg/mlおよび2.5μg/mlの濃度ですでに良好な有効性を示したが、5μg/mlおよび10μg/mlでは感染症を完全に根絶できた。
【0157】
リファンピン単独の無効性にもかかわらず、2.5μg/mlのリファンピンと1.25μg/mlまたは2.5μg/mlのダプトマイシンとの組合せは、細胞内および細胞外に付着したすべての細菌の排除においてそれぞれ相乗的であった。
【0158】
バンコマイシンは弱い殺菌性しかもたないことから、その有効性を高めるためにこの実験では非常に高濃度のバンコマイシンを使用した。この濃度は、バンコマイシンの静脈内施用によっては絶対に達成できない。ところが、数百の黄色ブドウ球菌が、骨芽細胞に侵入することによりバンコイミシン(vancoymicin)を逃れることができたが、これは、in vivoでの(特に骨感染症の治療において)関連性を有する現象である。
【0159】
ダプトマイシンは、バンコマイシンのような糖ペプチドとは対照的に殺菌速度が速く、この殺菌活性は濃度依存性である。したがって、より高い5および10μg/mlの濃度は、細菌が骨芽細胞に侵入できる前にすべての細菌を排除できた。
【0160】
リファンピンおよびダプトマイシンの局所施用は、急性の骨感染症にとっての効率的な治療である可能性があると考えられる。ダプトマイシンは、高濃度で非常に効率的にすべての細胞外の細菌を排除することにより新しい骨芽細胞の感染を防止するが、リファンピンは、細胞内感染した骨芽細胞を根絶することが可能である。
【0161】
5.医療目的用の、コーティングまたは浸透加工を施した基質
30〜40mg/mlの濃度のメタノール中でリファンピンを希釈した。100〜140μg/mlの濃度の超純水中でホスホマイシンカルシウムを懸濁させた。さらなる添加物は用いなかった。異なる表面改変(サンドブラスト加工した、多孔質でコーティングが施された、またはヒドロキシアパタイトでコーティングした)が施されたチタン製の内部人工器官を、インクジェット式またはスプレー式のコーティング過程を用いて、抗生物質溶液で直接コーティングした。表面を最初にリファンピンで、次いでホスホマイシンカルシウムで、その逆で、または両方の抗生物質を同時に、コーティングしてもよい。その結果得られる被覆密度は、リファンピンが50〜70μg/cm2、ホスホマイシンが300〜350μg/cm2であった。
【0162】
リファンピン、ホスホマイシン二ナトリウムおよびホスホマイシンカルシウムを、コラーゲンフリース中にフリースの作製過程の間に組み込んだ。リファンピンおよびホスホマイシン二ナトリウムは、酸性化した緩衝液中に加えて溶解させ、ホスホマイシンカルシウムは薄い懸濁液中に加えた。最終濃度は、コラーゲンフリース1cm2当たりリファンピンが0.1〜0.2mg、コラーゲンフリース1cm2当たりホスホマイシンが0.5mg〜2mgであり、これに対しホスホマイシン二ナトリウムおよびホスホマイシンカルシウムは、さまざまな比率で、ホスホマイシンの最終濃度に寄与できた。
【0163】
リファンピンおよびホスホマイシン二ナトリウムを、PMMAベースの2つの異なるポリマー、ジルコニウムジオキシド(zirconium dioxid)およびグリシンと混合した。リファンピンは総重量の0.5〜1.5%の量で加え、ホスホマイシン二ナトリウムは総重量の2.5〜7.5%の量で加えた。このポリマー/抗生物質混合物を160〜180℃に加熱し、射出成型により、金属ワイヤー上で直接PMMAビーズを製造した。
【0164】
当業者であれば前述の説明は多くの選択肢のうちの1つの可能な形にすぎないことがわかるであろう。
【0165】
本発明の実践の多数の改変および変形は、前述の教示に照らせば可能であることから、以下の特許請求の範囲に記載の範囲内に属すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織感染症の局所治療および防止のための医薬品または医療器具を製造するための医薬組成物の使用であって、該医薬組成物が、
A群の少なくとも2つの異なる抗生物質または薬学上許容されるその誘導体もしくは塩、あるいは
A群の1つの抗生物質およびB群の少なくとも1つの抗生物質または薬学上許容されるその誘導体もしくは塩を含み、
A群が、
細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬、
ギラーゼの阻害薬、または
細菌のタンパク質合成の阻害薬
として働く細胞内活性型の抗生物質を主に含み、
B群が、
細菌の細胞壁合成の阻害薬として、
細菌のタンパク質合成の阻害薬として、または
細菌の細胞壁の直接の不安定化もしくは破壊により
働く細胞外活性型の抗生物質を主に含む使用。
【請求項2】
細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬としてのA群の前記抗生物質が、アンサマイシン、とりわけ、リファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシン(rifamixin)などのリファマイシンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼすB群の前記抗生物質が、糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン、ホスホマイシン、ならびに、ポリペプチド、とりわけバシトラシンおよびダプトマイシンを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
リファマイシンおよびホスホマイシン、とりわけリファンピンおよびホスホマイシンを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記医薬組成物が、バイオフィルム形成阻害薬、とりわけサリチル酸または薬学上許容されるその誘導体もしくは塩をさらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
治療対象となる感染組織が、急性的または慢性的に感染したものであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記医薬組成物の担体として基質が使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記基質が、フリース、織物、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとのコポリマー、生分解性ポリマー、ポリエチレン、金属、セラミック、骨セメントおよび/または代用骨を含むことを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記フリースまたは前記織物が、天然または合成の繊維、とりわけポリラクチドおよび/またはコラーゲンを含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記基質が、埋込み可能な人工器官、とりわけ人工股関節、人工肩関節、人工肘関節、人工膝関節もしくは椎骨インプラント、または外傷の外科手術用インプラントを含むことを特徴とする、請求項7から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
A’群の少なくとも2つの異なる抗生物質または薬学上許容されるその誘導体もしくは塩、あるいは
A’群の1つの抗生物質およびB’群の少なくとも1つの抗生物質または薬学上許容されるその誘導体もしくは塩を含み、
A’群が、
アンサマイシン、とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシンなどのリファマイシン、
フルオロキノロン、とりわけモキシフロキサシン、
ストレプトグラミン、とりわけキヌプリスチンおよび/またはダルフォプリスチンを含み、
B’群が、
糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン、
ホスホマイシン、
ポリペプチド、とりわけバシトラシン、ポリミキシンB、他のポリミキシンおよびダプトマイシン、
アミノグリコシド、とりわけアルベカシン
を含み、
糖ペプチドが、2つのみの抗生物質を含み第1の抗生物質としてアンサマイシンを含む組成物の第2の抗生物質であることはできない医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのリファマイシンおよびホスホマイシンを含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
リファマイシンが治療対象部位で0.005から100μg/ml、好ましくは0.006から80μg/ml、最も好ましくは0.0075から10μg/mlの濃度に達し、ホスホマイシンが治療対象部位で1から1000μg/ml、好ましくは5から800μg/ml、最も好ましくは10から200μg/mlのホスホマイシンの濃度に達するような濃度でリファマイシンおよびホスホマイシンを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのリファマイシンおよびダプトマイシンを含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
リファマイシンが治療対象部位で0.005から100μg/ml、好ましくは0.006から80μg/ml、最も好ましくは0.0075から20μg/mlの濃度に達し、ダプトマイシンが治療対象部位で0.1から100μg/ml、好ましくは0.5から80μg/ml、最も好ましくは1から20μg/mlの濃度に達するような濃度でリファマイシンおよびダプトマイシンを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として作用する少なくとも1つの抗生物質、細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす少なくとも1つの抗生物質および/またはギラーゼ阻害薬として作用する少なくとも1つの抗生物質を含む、微生物に細胞外および/または細胞内感染した細胞の治療のための、および/または細胞の微生物感染症防止のための医薬組成物。
【請求項17】
細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として、アンサマイシン、とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシンなどのリファマイシンを含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす抗生物質として、糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン、ホスホマイシン、ならびに、ポリペプチド、とりわけバシトラシンおよびダプトマイシンを含む、請求項16および17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ギラーゼ阻害薬として、フルオロキノロン、とりわけモキシフロキサシンを含む、請求項16から18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記感染した細胞が、骨芽細胞、白血球、赤血球、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、筋細胞および/または内皮細胞であることを特徴とする、請求項16から19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記微生物感染症が、グラム陰性菌および/またはグラム陽性菌、好ましくはスタフィロッコシ(Staphyloccoci)型、最も好ましくは黄色ブドウ球菌が原因で生じることを特徴とする、請求項16から20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項11から21のいずれか一項(anyone)に記載の医薬組成物を含む、医療目的のための基質。
【請求項23】
対象の組織の急性または慢性の感染症の、抗生物質による局所療法のための医薬組成物用担体として使用されるように計画および供給されることを特徴とする、請求項22に記載の基質。
【請求項24】
フリース、織物、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとのコポリマー、生分解性ポリマー、ポリエチレン、金属、セラミック、骨セメントおよび/または代用骨を含むことを特徴とする、請求項22または23に記載の基質。
【請求項25】
前記フリースまたは前記織物が、天然または合成の繊維、とりわけポリラクチドおよび/またはコラーゲンを含むことを特徴とする、請求項24に記載の基質。
【請求項26】
埋込み可能な人工器官、とりわけ人工股関節、人工肩関節、人工肘関節、人工膝関節もしくは椎骨インプラント、または外傷の外科手術用インプラントを含むことを特徴とする、請求項22から25のいずれかに記載の基質。
【請求項27】
請求項11から21のいずれかに記載の医薬組成物でコーティングされたインプラント。
【請求項28】
表面上の微生物に対する抗付着薬としての、細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬として作用する少なくとも1つの抗生物質と、細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす少なくとも1つの抗生物質との組合せの使用。
【請求項29】
前記細菌のRNAポリメラーゼの阻害薬が、アンサマイシン、とりわけリファンピン、リファブチン、リファペンチンまたはリファミキシンなどのリファマイシンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記細菌の細胞壁またはその合成に影響を及ぼす抗生物質が、糖ペプチド、とりわけバンコマイシンまたはテイコプラニン、ホスホマイシン、ならびに、ポリペプチド、とりわけバシトラシンおよびダプトマイシンを含有する群から選択されることを特徴とする、請求項28または29に記載の使用。
【請求項31】
前記微生物が、グラム陰性菌および/またはグラム陽性菌、好ましくはスタフィロッコシ型のもの、最も好ましくは黄色ブドウ球菌またはスタフィロコックス・エピデルミスであることを特徴とする、請求項28から30に記載の使用。
【請求項32】
前記表面が、金属、好ましくはチタン、鋼または金属合金、セラミックス、骨セメントまたはヒドロキシルアパタイトで作製されることを特徴とする、請求項28から31のいずれかに記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−534213(P2010−534213A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517315(P2010−517315)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006046
【国際公開番号】WO2009/012986
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(504367818)バイオメット ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (2)
【氏名又は名称原語表記】BIOMET DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】