医薬組成物
【課題】抗プロピオニバクテリウム属菌種に対する抗菌剤として有用な新規医薬組成物の提供。
【解決手段】新規なストレプトミセス エスピー(Streptomyces sp.) Q34752株並びにQ47152から単離された新規な環状化合物を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、プロピオニバクテリウム属の菌種、特にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)等に対して優れた抗菌活性を有し、抗菌剤として、特に尋常性ざ瘡の治療等に有用である。また、本発明医薬組成物は良好な抗炎症活性を有しており、各種炎症性疾患の予防若しくは治療に有用である。
【解決手段】新規なストレプトミセス エスピー(Streptomyces sp.) Q34752株並びにQ47152から単離された新規な環状化合物を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、プロピオニバクテリウム属の菌種、特にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)等に対して優れた抗菌活性を有し、抗菌剤として、特に尋常性ざ瘡の治療等に有用である。また、本発明医薬組成物は良好な抗炎症活性を有しており、各種炎症性疾患の予防若しくは治療に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプロピオニバクテリウム属菌種に対する抗菌剤として、また抗炎症剤として有用な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
尋常性ざ瘡(にきび)は、主に思春期前後から発症する脂腺性毛包の慢性炎症性疾患である。尋常性ざ瘡は、アンドロゲンの分泌増加、皮脂分泌の亢進、毛包漏斗部の角化異常に起因する毛孔の狭窄による面皰形成、さらにはプロピオニバクテリウム属の菌種,特にプロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)などの毛包内細菌により産生されるリパーゼ等の菌体外酵素や好中球遊走因子などの炎症性物質が関与して発症する。発症後は,面皰、膿皰を形成、色素沈着や小瘢痕を残し消退する。この治療には、毛孔を塞いでいる角質の除去とともに,ピー アクネス(P. acnes)の増殖を抑制するためにイオウ、サリチル酸、レゾルシンやマクロライド系抗生物質などの各種抗菌剤が使用されている。しかしながら、汎用されるマクロライド系抗生物質等に対する耐性菌の出現もあり、今なお、有効な治療薬の開発が切望されている。
抗炎症作用を有する環状の発酵生産物の報告がある(例えば、特許文献1並びに2、及び非特許文献1)。しかしながら、プロピオニバクテリウム属の菌種に優れた抗菌活性を有する化合物の開示はない。
【特許文献1】特開2005-200324
【特許文献2】WO95/22339
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, p11273-11276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロピオニバクテリウム属の菌種,特にプロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)に優れた抗菌活性を有する、新たな尋常性ざ瘡治療剤の創製が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、様々な微生物から得られる生理活性物質について鋭意探索した結果、ストレプトミセス属に属する放線菌より、プロピオニバクテリウム属菌種に優れた抗菌活性を有する新規な環状化合物を単離することに成功し、また、これらの化合物が良好な抗炎症作用を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記式(I)又は(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物、殊に抗菌剤、尋常性ざ瘡の予防若しくは治療剤並びに抗炎症剤に関する。
[化5]
(式中、R1はメチル若しくはエチル基を、R2はメチル若しくはトリフルオロメチル基を、R3はメトキシ基若しくは水素原子を、それぞれ意味する。以下同様。)
[化6]
(式中、R4は水素原子又は水酸基を、R5は水素原子又はクロロ原子を、R6並びにR7は一方が水酸基で、他方がメトキシメチル又はクロロメチル基を意味するか、R6とR7が一体となって、式
【化7】
で示される基を意味する。以下同様。)
また、本発明は、前記式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有する歯周病の予防若しくは治療剤である抗菌医薬組成物を包含する。
【発明の効果】
【0005】
本発明医薬組成物はプロピオニバクテリウム属の菌種、特にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)等に対して優れた抗菌活性を有し、抗菌剤として尋常性ざ瘡の治療に有用である。また、本発明医薬組成物は良好な抗炎症活性を有しており、各種炎症性疾患の予防若しくは治療に有用である。炎症性疾患としては、例えば、敗血症およびそれに起因する疾患、炎症性自己免疫疾患、炎症性血管疾患、炎症性心血管疾患、アレルギー性疾患、炎症性肝臓疾患、炎症性腎臓疾患、炎症性消化器疾患、炎症性心疾患、炎症性循環器疾患、感染症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸疾患症候群(ARDS)、発熱、移植片対宿主病、重症筋無力症、変形性関節症、痛風および火傷等が挙げられる。
プロピオニバクテリウムアクネス等に対する優れた抗菌活性と抗炎症作用を併せ持つ本発明医薬組成物は、尋常性ざ瘡の治療に特に有用である。
更に、式(II)で示される環状化合物又はその塩は、成人性歯周病の起炎菌として知られるポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)や、プリボレラ インターメディア(Prevotella intermedia)に良好な抗菌作用を示すことから、式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有する本発明医薬組成物は、歯周病の予防若しくは治療剤としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の環状化合物は、ストレプトミセス属に属する当該物質生産菌を栄養培地にて培養し、当該物質を蓄積させた培養物から常法によって得られる。当該物質の製造方法において使用する微生物は、ストレプトミセス属に属し当該物質の生産能を有する微生物であればいずれも用いることができる。このような微生物としては、例えば化合物(I)を生産能を有する、茨城県つくば市の土壌より分離されたストレプトミセス属に属する放線菌ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752株、並びに化合物(II)生産能を有する、沖縄県八重山郡竹富町波照間(波照間島)の土壌より分離されたストレプトミセス属に属する放線菌ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q47152株を挙げることができる。
【0007】
ストレプトミセス エスピー(Streptomyces sp.) Q34752株の菌学的性質
1.形態
本菌株は各種有機及び無機培地において良く生育し、基生菌糸の色調は黄味灰〜黄茶色である。気菌糸はオートミール寒天培地、スターチ・無機塩寒天培地上に良く形成され、明るい灰〜茶灰色を呈する。胞子鎖は螺旋状で、50個以上の胞子が連鎖する。電子顕微鏡による観察では、胞子の形状は円筒形、大きさは 0.4〜0.8×1.0〜1.5μmで、その表面は平滑である。液体培養で基生菌糸の断片化は見られない。胞子のう、運動性胞子等の特殊な器官は観察されない。
【0008】
2.各種寒天培地上の性状
各種寒天培地上の性状は以下に示すとおりである。特に記載しない限り、28℃で21日間培養し、常法に従って観察したものである。色調の記載については色の標準(日本色彩研究所)によった。
【表1】
【0009】
3.生理的性質
【表2】
(注)生育温度範囲及び至適生育温度は各温度(5,10,15,20,24,28,32,37,40,45,50℃)で、7〜21日までの観察結果(脱脂牛乳に対する作用は37℃で3〜21日までの観察結果)である。それ以外は、特に指摘のない限り、28℃で2週間後の観察結果を示す
【0010】
4.炭素源の資化性(プリドハム・ゴドリーブ寒天培地、28℃培養)
【表3】
【0011】
5.菌体成分の化学分析
LECHVALIERらの方法(LECHVALIER, MP. et al; PP277-238 in DIETZ, A et al ed., Actinomycete Taxonomy, SIM Special Publication No.6, 1980)に従い本菌株の酸加水分解物の分析を行った結果、LL-ジアミノピメリン酸が検出された。主要な菌体メナキノンはMK-9(H8)であった。
上記諸性状を有する菌種を各種文献(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology vol.4, 1989等)により検索すると、本菌株はストレプトミセス (Streptomyces) 属に属す菌株と判断される。そこで、本菌株をストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752と命名した。なお、本菌株は、〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に受領番号FERM BP-10435号として寄託されている(寄託日2004年12月1日)。また、微生物は人工的に又は自然に変異を起こしやすいので、本発明において用いられるストレプトミセス エスピー Q34752株は、天然から分離された微生物の他に、これに紫外線、X線、化学薬剤などで人工的に変異させたもの及びそれらの天然変異株についても包含する。
【0012】
ストレプトミセス エスピー(Streptomyces sp.) Q47152株の菌学的性質
1.形態
本菌株は各種有機及び無機培地において生育がやや不良で、基生菌糸の色調は灰味茶〜暗い黄茶色である。気菌糸はスターチ・無機塩寒天培地上にもっとも良く形成され、白〜青味灰色を呈する。胞子鎖はコイル状で、50個以上の胞子が連鎖する。電子顕微鏡による観察では、胞子の形状は円筒形、大きさは1.0〜1.5×0.4〜0.8μmで、その表面はとげ状である。液体培養で基生菌糸の断片化は見られない。胞子のう、運動性胞子等の特殊な器官は観察されない。
【0013】
2.各種寒天培地上の性状
各種寒天培地上の性状は以下に示すとおりである。特に記載しない限り、28℃で21日間培養し、常法に従って観察したものである。色調の記載については色の標準(日本色彩研究所)によった。
【表4】
【0014】
3.生理的性質
【表5】
(注)生育温度範囲及び至適生育温度は各温度(5,10,15,20,24,28,32,37,40,45,50℃)で、7〜21日までの観察結果(脱脂牛乳に対する作用は37℃で3〜21日までの観察結果)である。それ以外は、特に指摘のない限り、28℃で2週間後の観察結果を示す。
【0015】
4.炭素源の資化性(プリドハム・ゴドリーブ寒天培地、28℃培養)
【表6】
【0016】
5.菌体成分の化学分析
LECHVALIERらの方法(LECHVALIER, MP. et al; PP277-238 in DIETZ, A et al ed., Actinomycete Taxonomy, SIM Special Publication No.6, 1980)に従い本菌株の酸加水分解物の分析を行った結果、LL-ジアミノピメリン酸が検出された。主要な菌体メナキノンはMK-9(H8)であった。
上記諸性状を有する菌種を各種文献(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology vol.4, 1989等)により検索すると、本菌株はストレプトミセス (Streptomyces) 属に属す菌株と判断される。そこで、本菌株をストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q47152と命名した。なお、本菌株は、〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に受領番号FERM BP-10436号として寄託されている(寄託日2004年12月1日)。また、微生物は人工的に又は自然に変異を起こしやすいので、本発明において用いられるストレプトミセス エスピー Q47152株は、天然から分離された微生物の他に、これに紫外線、X線、化学薬剤などで人工的に変異させたもの及びそれらの天然変異株についても包含する。
【0017】
(製造方法)
本発明の有効成分である化合物はストレプトミセス属に属し、これらの化合物の生産能を有する微生物を培養することによって得られる。培養は一般微生物の培養方法に準じて行われる。
培養に用いられる培地としては、ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752等の、化合物生産能を有するストレプトミセス属の微生物が利用する栄養源を含有する培地であればよく、合成培地、半合成培地または天然培地が用いられる。培地に添加する栄養物として公知のものを使用できる。培地の組成は、例えば炭素源としては、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−フラクトース、イノシトール、ラムノース、マンニトール、D−ガラクトース、マルトース、トレハロース、ラクトース、D−マンノース、デンプン、ブドウ糖、デキストリン、グリセリン、植物油、ポテトスターチ等が挙げられる。窒素源としては肉エキス、ペプトン、グルテンミール、綿実粕、大豆粉、落花生粉、魚粉、コーンスチーブリカー、乾燥酵母、酵母エキス、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿酸その他の有機、無機の窒素源が用いられる。また、金属塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、コバルトなどの硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが必要に応じて添加される。さらに、必要に応じてメチオニン、システイン、シスチン、チオ硫酸塩、オレイン酸メチル、ラード油、シリコン油、界面活性剤などの生成促進物質または消泡剤を添加することもできる。また、培地にトリフルオロロイシンを添加することにより、トリフルオロ基が導入された誘導体を得ることもできる。
【0018】
培養条件としては好気的条件下で培養するのが一般的に有利で、培養温度は、ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752の場合は、10〜37℃の範囲、好ましくは20〜28℃付近で、一方、ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q47152の場合は、15〜45℃の範囲、好ましくは20〜40℃付近で行われる。培地のpHは約5〜9、好ましくは約6〜8の範囲に調整すると好結果が得られる。培養期間は培地の組成、温度条件に応じて適宜設定されるが、通常1〜14日程度、好ましくは3〜8日程度である。
(単離法)
本発明の有効成分である化合物の単離は、天然物から生理活性物質を単離する際の通常の抽出、精製の手段を適宜利用して行うことができる。化合物は、メタノールやエタノール、ブタノール等のアルコール類やアセトンに溶け易いことから、これらの溶媒で抽出するのが好ましい。また、化合物は酢酸エチルやクロロホルム等の有機溶剤には溶解するが、水には溶解しにくいことから、水と、酢酸エチルやクロロホルム等による分液操作により、抽出精製することができる。
また、活性成分を含む画分を適当な担体に接触させることにより活性成分を吸着させ、次いで適当な溶媒で溶出することにより活性を有する化合物を精製することができる。好ましくは、セファデックス(登録商標)LH−20、アンバーライト(登録商標)XAD−2、ダイヤイオン(登録商標)HP−20、ダイヤイオン(登録商標)CHP−20、又はダイヤイオン(登録商標)SP−900のような多孔性吸着樹脂に接触・吸着させ、次いでメタノール、エタノール、アセトン、ブタノール、アセトニトリル、クロロホルム等の有機溶媒又は水、或いはそれらの混合液を用いて、化合物を溶出させることができる。このとき有機溶媒と水の混合比率を段階的に又は連続的に変化させることが有利な場合がある。また、化合物含有画分は、シリカゲル、ODS等を用いたカラムクロマトグラフィー、遠心液々分配クロマトグラフィー、ODSを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の当業者に自明の各種精製法によっても精製することができる。これらの各種操作法を適宜組み合わせて行うことが、純粋な化合物を分離精製するうえで有利な場合がある。
【0019】
本発明の有効成分である化合物は、酸付加塩を形成することができる。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、或いは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸等が挙げられる。
また、本発明の有効成分である化合物は不斉炭素原子を有するので、これに基づく立体異性体(ラセミ体、光学異性体、ジアステレオマー等)が存在する。本発明医薬組成物の有効成分としては、これらの立体異性体の混合物もしくは単離されたものを包含する。また、本発明医薬組成物の有効成分としては、これらの化合物の水和物、各種溶媒和物等も包含する。更に、結晶多形などの化合物の結晶をも包含する。
【0020】
本発明医薬組成物は、通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、化合物又はその塩が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0021】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
【0022】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。ここに、口腔用外用剤としては、練歯磨、液状歯磨、泡状歯磨等の歯磨剤、歯肉マッサージクリーム、局所添付剤、洗口剤、マウスウォッシュ、トローチ剤、チューンガム等の様々な剤型が挙げられる。有効成分以外の成分として、口腔用として当業者に常用されている成分を配合することができ、例えば、公知の界面活性剤、研磨剤、香料、増粘剤、保湿剤等を適宜用いることができる。
【0023】
本発明の有効成分である化合物の投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1日当たり経口投与の場合、0.1〜1500 mg、非経口投与の場合、0.01〜500 mg程度が適当であり、これを1日に1回乃至複数回投与する。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。また、外用剤として用いる場合は、化合物を0.001〜20%、好ましくは0.01〜10%を含む外用剤が好ましい。これを1日1〜数回、症状に応じて局所に投与する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明の有効成分である化合物は下記実施例に限定されるものではない。
製造例1
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q34752株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地を50本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間、振盪培養した。
このようにして培養したQ34752株の培養液5Lにアセトン20Lを添加し、充分に攪拌した後、濾過した。濾液、約25Lを減圧濃縮し、pH7.0に調整して、約5Lの酢酸エチルで抽出した。有機溶媒層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10g)に供した。クロロホルム溶液 50mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(9:1)、(7:3)溶液、各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(6g)に供した。50%及び60%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで洗浄した後、70%、80%、90%、及び100%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、約212mgの粗抽出物を得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、55%(v/v)アセトニトリル水溶液で溶出し、UV210nmで検出して目的のピークを分取した。分取した溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで抽出して、化合物A(19.8mg)、及び化合物B(2.4mg)を得た。
【0025】
物理化学的性状
(化合物A)
色および形状:白色粉末
分子式:C44H70N8O11
高分解能ESI-MS: m/z 887.5242 ([M+H]+, Δ 1.8 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 277nm(1,500), 226nm (15,700)
旋光度 [α]D24.7 = -219°(c 0.0192, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図1及び2に示す。
赤外吸収データ:KBrで測定した赤外吸収スペクトラムのチャートを図3に示す.
(化合物B)
色および形状:白色粉末
分子式:C43H68N8O11
高分解能ESI-MS: m/z 873.5086 ([M+H]+, Δ 0.1 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 276nm(2,500), 226nm (18,900)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図4及び5に示す。
【0026】
製造例2
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q34752株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地にトリフルオロロイシンを0.05%となるように添加し、100本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間、振盪培養した。
このようにして培養したQ34752株の培養液10Lにアセトン40Lを添加し、充分に攪拌した後、濾過した。濾液、約50Lを減圧濃縮し、pH7.0に調整して、約10Lの酢酸エチルで抽出した。有機溶媒層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20g)に供した。クロロホルム溶液 100mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(20:1)、(9:1)溶液、各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(12g)に供した。60%(v/v)メタノール水溶液 100mlで洗浄した後、80%及び100%(v/v)メタノール水溶液 各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、約400mgの粗抽出物を得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、アセトニトリル-水(55:45)、5mlで溶出し、UV210nmで検出して目的のピークを分取した。分取した溶液を減圧濃縮し、化合物C(77mg)を得た。
【0027】
物理化学的性状
(化合物C)
色および形状:白色粉末
分子式:C44H67F3N8O11
高分解能ESI-MS: m/z 941.4977 ([M+H]+, Δ 1.7 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 283nm (2,800),277nm (3,300),225nm(32,700)
旋光度 [α]D24.7 = -118°(c 0.04, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図6及び7に示す。
赤外吸収データ:KBrで測定した赤外吸収スペクトラムのチャートを図8に示す.
【0028】
製造例3
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を30mlずつ100ml容の三角フラスコに分注し、121℃で30分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q34752株をかき取って接種し、30℃、250回転/分の条件で3日間振とう培養し、第一段種培養液とした。前記組成の培地が100mlづつ分注された500ml容の三角フラスコに、第一段種培養液2%を植菌し、30℃、250回転/分の条件で3日間振とう培養し、第二段種培養液とした。グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 1%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%、消泡剤0.1%よりなる培地(滅菌前pH7.0)20Lを、30L容ジャーファーメンターに分注し、123℃で30分間滅菌した。この培地に、第二段種培養液5%を植菌、30℃、200〜300回転/分の条件で6日間通気攪拌培養を行った。
このようにして培養したQ34752株の培養液35Lにアセトンを等量添加し、濾過用助剤(ラヂオライト#600、昭和化学工業)を添加し、充分に攪拌・抽出した後、濾過した。濾液、約70Lに水30Lを添加し、あらかじめ20%アセトン水溶液で平衡化しておいたセパビーズSP-850(2L、三菱化学(株))に供した。50%メタノール水溶液5Lで洗浄した後、100%メタノール10Lで溶出した。100%メタノール溶出画分に水と酢酸アンモニウムを添加し、50%メタノール水溶液(0.2%酢酸アンモニウム含有)とした後、ODS(50mmφx 1,000 mmL:ダイソー(株) ダイソーゲル SP-120-15/30-ODS-B)カラムクロマトグラフィーに供した。70%、75%、80%メタノール水溶液(0.2%酢酸アンモニウム含有)各6Lで溶出した。目的化合物を含有したフラクションを濃縮、乾燥し、粉末(約30mg)を得た。その粉末を少量のDMSOに溶解し、ODSカラム(20mmφx250mmL:ダイソーパック SP-120-5-ODS-BP) を用い、50%アセトニトリル水溶液(0.1M リン酸二水素カリウム含有)、10ml/分にてHPLC分取した。目的物質を含んだフラクションを濃縮、水置換後、酢酸エチルで抽出し、化合物D(10.4mg)を得た。
【0029】
物理化学的性状
(化合物D)
色および形状:白色粉末
分子式:C43H68N8O10
高分解能ESI-MS: m/z 857.5131 ([M+H]+, Δ -0.5 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax 末端吸収
旋光度 [α]D24.7 = -114°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図9及び10に示す。
上記製造例1〜3で得られた化合物は、その物理化学的性状より、以下の構造で示される環状化合物であると同定された。
【化8】
化合物A R1:エチル基、R2:メチル基、R3:メトキシ基
化合物B R1:メチル基、R2:メチル基、R3:メトキシ基
化合物C R1:エチル基、R2:トリフルオロメチル基、R3:メトキシ基
化合物D R1:エチル基、R2:メチル基、R3:水素原子
【0030】
製造例4
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q47152株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地を50本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間振盪培養した。
このようにして培養したQ47152株の培養液5Lにアセトン20Lを添加し、充分に攪拌した後、濾過した。濾液、約25Lを減圧濃縮し、pH7.0に調整して、約5Lの酢酸エチルで抽出した。有機溶媒層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20g)に供した。クロロホルム溶液 100mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(9:1)、(7:3)溶液、各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(6g)に供した。50%及び60%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで洗浄した後、70%、80%及び90%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、約455mgの粗抽出物を得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、アセトニトリル-6.5mM酢酸アンモニウム(pH5.5)(55:45)、10mlで溶出し、UV266nmで検出して目的のピークを分取した。分取した溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで抽出して、化合物E(68mg)を得た。
【0031】
物理化学的性状
(化合物E)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H64ClN9O16
高分解能ESIMS: m/z 1106.4232 ([M+H]+, Δ -0.6 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 263nm (ε 9,000)
旋光度 [α]D24.7 = -34.7°(c 0.0144, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図11及び12に示す。
赤外吸収データ:赤外吸収スペクトラムのチャートを図13に示す.
【0032】
製造例5
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を30mlずつ100ml容の三角フラスコに分注し、121℃で30分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q47152株をかき取って接種し、30℃、250回転/分の条件で3日間振とう培養し、第一段種培養液とした。次に、同じ組成の培地を500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で30分間滅菌した。この培地に第一段種培養液を2%づつ接種し、30℃、250回転/分の条件で3日間振盪培養し、第二段種培養液とした。MS#3600 7%、乾燥酵母 1%、小麦胚芽 2%、硫酸コバルト 10ppm、消泡剤 0.1%(滅菌前pH6.5)を20Lづつ30Lジャーファメンターに分注し、123℃、30分滅菌した。第二段種培養液を2%植菌し、30℃、3日間、通気攪拌培養を行った。
このようにして培養したQ47152株の培養液30Lにアセトンを等量添加し、濾過用助剤(ラヂオライト#600、昭和化学工業(株))を添加して充分に攪拌・抽出した後、濾過した。濾液、約60Lに水30Lを添加し、pH2.5に調整して、あらかじめ20%アセトン水溶液(0.01N HCl含有)で平衡化しておいたセパビーズSP-850(2L:三菱化学(株))に供した。75% メタノール水溶液(0.01N HCl含有)6Lで洗浄後、100%メタノール(0.01N HCl含有)16Lで溶出した。メタノール溶出画分に水を等量添加し、ODS-B(50mm φx 1,000mmL:ダイソー(株)ダイソーゲルSP-120-15/30-ODS-B )カラムクロマトグラフィーに供した。52%アセトニトリル水溶液(0.05%TFA含有)で溶出し、一定時間毎に分画した。目的化合物を含有するフラクションを減圧濃縮・水置換後、酢酸エチル抽出した。酢酸エチル抽出液を減圧濃縮・乾固し、粗抽出物728mgを少量のメタノールに溶解し、ODSカラム(20mmφ250mmL:ダイソーパックSP-120-5-DS-BP)を用い、52%アセトニトリル水溶液(50mMリン酸二水素カリウム含有)で毎分10mlにてHPLC分取した。目的化合物を含んだフラクションを濃縮、水置換後、酢酸エチル抽出し、化合物F(13.5 mg)、並びに化合物G(17.1mg)を得た。また、もうひとつの目的化合物を含有するフラクションに水を等量添加し、ダイアイオンHP-20-SS(1.2L:三菱化学(株))クロマトグラフィーに供し、70%メタノール水溶液(0.5%酢酸アンモニウム含有)で溶出した。減圧濃縮・水置換後、酢酸エチルで抽出し、化合物H(80 mg)を得た。
【0033】
物理化学的性状
(化合物F)
色および形状:白色粉末
分子式:C53H68ClN9O17
高分解能ESIMS: m/z 1138.4500 ([M+H]+, Δ -0.1 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 267nm (ε 26,600)
旋光度 [α]D24.7 = -106.8°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図14及び15に示す。
【0034】
(化合物G)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H64ClN9O15
高分解能ESIMS: m/z 1090.4293 ([M+H]+, Δ 0.1 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 263nm (ε 25,100)
旋光度 [α]D24.7 = -96.8°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図16及び17に示す。
【0035】
(化合物H)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H65Cl2N9O16
高分解能ESIMS: m/z 1142.4001 ([M+H]+, Δ -0.3 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 264nm (ε 22,000)
旋光度 [α]D24.3 = -52.6°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図18及び19に示す。
【0036】
製造例6
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q47152株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地を50本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間振盪培養した。
このようにして培養したQ47152株の培養液10Lを濾過し、pH 7.0に調整した。濾液、約8Lを酢酸エチル10Lで抽出し添加し、シリカゲルクロマトグラフィー(20mmφ100mmL)に供した。クロロホルム溶液 100mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(9:1)、(7:3)溶液、各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(6g)に供した。50%及び60%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで洗浄した後、70%、80%及び90%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、目的化合物を含有するフラクションを得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、55%アセトニトリル水溶液(0.05% TFA含有)で目的ピークを分取し、化合物I(3mg)を得た。
【0037】
物理化学的性状
(化合物I)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H65N9O16
高分解能ESIMS: m/z 1072.4642 ([M+H]+, Δ 0.9 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 267 nm (ε 14,700)
旋光度 [α]D24.0 = -252°(c 0.001, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図20及び21に示す。
【0038】
上記製造例4〜6で得られた環状化合物は、その物理化学的性状より、以下の式で示される構造を有する化合物であると同定された。
【化9】
【0039】
実施例1
プロピオニバクテリウム属の菌種に対する最小発育阻止濃度(MIC)は、GAM寒天培地を用いて嫌気性条件にて37℃, 24h培養後,生育の有無を測定し,判定した。本発明の有効成分である化合物の、プロピオニバクテリウム アクネス(P. acnes) JCM6425及びプロピオニバクテリウム グラヌロサム(P. granulosum) GAI7414に対するMIC(μg/ml)は下表の通りである。
【表7】
【0040】
実施例2 TPA誘発マウス耳浮腫抑制活性
BDF1系雌性マウスの右耳介部の両面にTPA 2μg/ear塗布して皮膚炎を誘発した。薬剤は、TPA誘発の24時間と2時間前に右耳介部の両面に10μLずつ塗布した。TPA誘発の24時間後に右耳介部の厚さを測定し浮腫の指標とした。
(結果)化合物Aは、0.3%,1%, 3%溶液塗布により,コントロールに比べてそれぞれ7.1%, 60%,57%の抑制活性を示した。また、化合物Eは,0.3%、1%、3%溶液塗布により、コントロールに比べてそれぞれ20%、50%並びに63%の抑制活性を示した。よって、本発明の有効成分である化合物は良好な抗炎症作用を有することが確認された。
実施例3
歯周病起炎菌として知られる偏性嫌気性菌種に対する最小発育阻止濃度(MIC)は、GAM寒天培地を用いて嫌気性条件にて37℃, 24h培養後,生育の有無を測定し,判定した。本発明の有効成分である前記式(II)で示される化合物の、ポルフィロモナス ジンジバリス(P. gingivalis) ATCC 33277、プリボレラ インターメディア(P. intermedia) BI-5500に対するMIC(μg/ml)は下表の通りである。
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明医薬組成物はプロピオニバクテリウム属の菌種、特にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)等に対して優れた抗菌活性を有し、抗菌剤として、特に尋常性ざ瘡の治療に有用である。更に歯周病起因菌に対して優れた抗菌活性を有する化合物を有効成分として含有する一部の本発明医薬組成物は、抗菌剤として歯周病の予防若しくは治療にも有用である。
また、本発明医薬組成物は良好な抗炎症活性を有しており、各種炎症性疾患の予防若しくは治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】化合物Aの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】化合物Aの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図3】化合物AのIRスペクトルを示す図である。
【図4】化合物Bの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図5】化合物Bの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】化合物Cの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】化合物Cの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図8】化合物CのIRスペクトルを示す図である。
【図9】化合物Dの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】化合物Dの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】化合物Eの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図12】化合物Eの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図13】化合物Eの赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図14】化合物Fの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図15】化合物Fの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図16】化合物Gの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図17】化合物Gの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図18】化合物Hの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図19】化合物Hの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図20】化合物Iの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図21】化合物Iの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプロピオニバクテリウム属菌種に対する抗菌剤として、また抗炎症剤として有用な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
尋常性ざ瘡(にきび)は、主に思春期前後から発症する脂腺性毛包の慢性炎症性疾患である。尋常性ざ瘡は、アンドロゲンの分泌増加、皮脂分泌の亢進、毛包漏斗部の角化異常に起因する毛孔の狭窄による面皰形成、さらにはプロピオニバクテリウム属の菌種,特にプロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)などの毛包内細菌により産生されるリパーゼ等の菌体外酵素や好中球遊走因子などの炎症性物質が関与して発症する。発症後は,面皰、膿皰を形成、色素沈着や小瘢痕を残し消退する。この治療には、毛孔を塞いでいる角質の除去とともに,ピー アクネス(P. acnes)の増殖を抑制するためにイオウ、サリチル酸、レゾルシンやマクロライド系抗生物質などの各種抗菌剤が使用されている。しかしながら、汎用されるマクロライド系抗生物質等に対する耐性菌の出現もあり、今なお、有効な治療薬の開発が切望されている。
抗炎症作用を有する環状の発酵生産物の報告がある(例えば、特許文献1並びに2、及び非特許文献1)。しかしながら、プロピオニバクテリウム属の菌種に優れた抗菌活性を有する化合物の開示はない。
【特許文献1】特開2005-200324
【特許文献2】WO95/22339
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, p11273-11276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロピオニバクテリウム属の菌種,特にプロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)に優れた抗菌活性を有する、新たな尋常性ざ瘡治療剤の創製が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、様々な微生物から得られる生理活性物質について鋭意探索した結果、ストレプトミセス属に属する放線菌より、プロピオニバクテリウム属菌種に優れた抗菌活性を有する新規な環状化合物を単離することに成功し、また、これらの化合物が良好な抗炎症作用を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記式(I)又は(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物、殊に抗菌剤、尋常性ざ瘡の予防若しくは治療剤並びに抗炎症剤に関する。
[化5]
(式中、R1はメチル若しくはエチル基を、R2はメチル若しくはトリフルオロメチル基を、R3はメトキシ基若しくは水素原子を、それぞれ意味する。以下同様。)
[化6]
(式中、R4は水素原子又は水酸基を、R5は水素原子又はクロロ原子を、R6並びにR7は一方が水酸基で、他方がメトキシメチル又はクロロメチル基を意味するか、R6とR7が一体となって、式
【化7】
で示される基を意味する。以下同様。)
また、本発明は、前記式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有する歯周病の予防若しくは治療剤である抗菌医薬組成物を包含する。
【発明の効果】
【0005】
本発明医薬組成物はプロピオニバクテリウム属の菌種、特にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)等に対して優れた抗菌活性を有し、抗菌剤として尋常性ざ瘡の治療に有用である。また、本発明医薬組成物は良好な抗炎症活性を有しており、各種炎症性疾患の予防若しくは治療に有用である。炎症性疾患としては、例えば、敗血症およびそれに起因する疾患、炎症性自己免疫疾患、炎症性血管疾患、炎症性心血管疾患、アレルギー性疾患、炎症性肝臓疾患、炎症性腎臓疾患、炎症性消化器疾患、炎症性心疾患、炎症性循環器疾患、感染症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸疾患症候群(ARDS)、発熱、移植片対宿主病、重症筋無力症、変形性関節症、痛風および火傷等が挙げられる。
プロピオニバクテリウムアクネス等に対する優れた抗菌活性と抗炎症作用を併せ持つ本発明医薬組成物は、尋常性ざ瘡の治療に特に有用である。
更に、式(II)で示される環状化合物又はその塩は、成人性歯周病の起炎菌として知られるポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)や、プリボレラ インターメディア(Prevotella intermedia)に良好な抗菌作用を示すことから、式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有する本発明医薬組成物は、歯周病の予防若しくは治療剤としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の環状化合物は、ストレプトミセス属に属する当該物質生産菌を栄養培地にて培養し、当該物質を蓄積させた培養物から常法によって得られる。当該物質の製造方法において使用する微生物は、ストレプトミセス属に属し当該物質の生産能を有する微生物であればいずれも用いることができる。このような微生物としては、例えば化合物(I)を生産能を有する、茨城県つくば市の土壌より分離されたストレプトミセス属に属する放線菌ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752株、並びに化合物(II)生産能を有する、沖縄県八重山郡竹富町波照間(波照間島)の土壌より分離されたストレプトミセス属に属する放線菌ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q47152株を挙げることができる。
【0007】
ストレプトミセス エスピー(Streptomyces sp.) Q34752株の菌学的性質
1.形態
本菌株は各種有機及び無機培地において良く生育し、基生菌糸の色調は黄味灰〜黄茶色である。気菌糸はオートミール寒天培地、スターチ・無機塩寒天培地上に良く形成され、明るい灰〜茶灰色を呈する。胞子鎖は螺旋状で、50個以上の胞子が連鎖する。電子顕微鏡による観察では、胞子の形状は円筒形、大きさは 0.4〜0.8×1.0〜1.5μmで、その表面は平滑である。液体培養で基生菌糸の断片化は見られない。胞子のう、運動性胞子等の特殊な器官は観察されない。
【0008】
2.各種寒天培地上の性状
各種寒天培地上の性状は以下に示すとおりである。特に記載しない限り、28℃で21日間培養し、常法に従って観察したものである。色調の記載については色の標準(日本色彩研究所)によった。
【表1】
【0009】
3.生理的性質
【表2】
(注)生育温度範囲及び至適生育温度は各温度(5,10,15,20,24,28,32,37,40,45,50℃)で、7〜21日までの観察結果(脱脂牛乳に対する作用は37℃で3〜21日までの観察結果)である。それ以外は、特に指摘のない限り、28℃で2週間後の観察結果を示す
【0010】
4.炭素源の資化性(プリドハム・ゴドリーブ寒天培地、28℃培養)
【表3】
【0011】
5.菌体成分の化学分析
LECHVALIERらの方法(LECHVALIER, MP. et al; PP277-238 in DIETZ, A et al ed., Actinomycete Taxonomy, SIM Special Publication No.6, 1980)に従い本菌株の酸加水分解物の分析を行った結果、LL-ジアミノピメリン酸が検出された。主要な菌体メナキノンはMK-9(H8)であった。
上記諸性状を有する菌種を各種文献(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology vol.4, 1989等)により検索すると、本菌株はストレプトミセス (Streptomyces) 属に属す菌株と判断される。そこで、本菌株をストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752と命名した。なお、本菌株は、〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に受領番号FERM BP-10435号として寄託されている(寄託日2004年12月1日)。また、微生物は人工的に又は自然に変異を起こしやすいので、本発明において用いられるストレプトミセス エスピー Q34752株は、天然から分離された微生物の他に、これに紫外線、X線、化学薬剤などで人工的に変異させたもの及びそれらの天然変異株についても包含する。
【0012】
ストレプトミセス エスピー(Streptomyces sp.) Q47152株の菌学的性質
1.形態
本菌株は各種有機及び無機培地において生育がやや不良で、基生菌糸の色調は灰味茶〜暗い黄茶色である。気菌糸はスターチ・無機塩寒天培地上にもっとも良く形成され、白〜青味灰色を呈する。胞子鎖はコイル状で、50個以上の胞子が連鎖する。電子顕微鏡による観察では、胞子の形状は円筒形、大きさは1.0〜1.5×0.4〜0.8μmで、その表面はとげ状である。液体培養で基生菌糸の断片化は見られない。胞子のう、運動性胞子等の特殊な器官は観察されない。
【0013】
2.各種寒天培地上の性状
各種寒天培地上の性状は以下に示すとおりである。特に記載しない限り、28℃で21日間培養し、常法に従って観察したものである。色調の記載については色の標準(日本色彩研究所)によった。
【表4】
【0014】
3.生理的性質
【表5】
(注)生育温度範囲及び至適生育温度は各温度(5,10,15,20,24,28,32,37,40,45,50℃)で、7〜21日までの観察結果(脱脂牛乳に対する作用は37℃で3〜21日までの観察結果)である。それ以外は、特に指摘のない限り、28℃で2週間後の観察結果を示す。
【0015】
4.炭素源の資化性(プリドハム・ゴドリーブ寒天培地、28℃培養)
【表6】
【0016】
5.菌体成分の化学分析
LECHVALIERらの方法(LECHVALIER, MP. et al; PP277-238 in DIETZ, A et al ed., Actinomycete Taxonomy, SIM Special Publication No.6, 1980)に従い本菌株の酸加水分解物の分析を行った結果、LL-ジアミノピメリン酸が検出された。主要な菌体メナキノンはMK-9(H8)であった。
上記諸性状を有する菌種を各種文献(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology vol.4, 1989等)により検索すると、本菌株はストレプトミセス (Streptomyces) 属に属す菌株と判断される。そこで、本菌株をストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q47152と命名した。なお、本菌株は、〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に受領番号FERM BP-10436号として寄託されている(寄託日2004年12月1日)。また、微生物は人工的に又は自然に変異を起こしやすいので、本発明において用いられるストレプトミセス エスピー Q47152株は、天然から分離された微生物の他に、これに紫外線、X線、化学薬剤などで人工的に変異させたもの及びそれらの天然変異株についても包含する。
【0017】
(製造方法)
本発明の有効成分である化合物はストレプトミセス属に属し、これらの化合物の生産能を有する微生物を培養することによって得られる。培養は一般微生物の培養方法に準じて行われる。
培養に用いられる培地としては、ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752等の、化合物生産能を有するストレプトミセス属の微生物が利用する栄養源を含有する培地であればよく、合成培地、半合成培地または天然培地が用いられる。培地に添加する栄養物として公知のものを使用できる。培地の組成は、例えば炭素源としては、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−フラクトース、イノシトール、ラムノース、マンニトール、D−ガラクトース、マルトース、トレハロース、ラクトース、D−マンノース、デンプン、ブドウ糖、デキストリン、グリセリン、植物油、ポテトスターチ等が挙げられる。窒素源としては肉エキス、ペプトン、グルテンミール、綿実粕、大豆粉、落花生粉、魚粉、コーンスチーブリカー、乾燥酵母、酵母エキス、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿酸その他の有機、無機の窒素源が用いられる。また、金属塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、コバルトなどの硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが必要に応じて添加される。さらに、必要に応じてメチオニン、システイン、シスチン、チオ硫酸塩、オレイン酸メチル、ラード油、シリコン油、界面活性剤などの生成促進物質または消泡剤を添加することもできる。また、培地にトリフルオロロイシンを添加することにより、トリフルオロ基が導入された誘導体を得ることもできる。
【0018】
培養条件としては好気的条件下で培養するのが一般的に有利で、培養温度は、ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q34752の場合は、10〜37℃の範囲、好ましくは20〜28℃付近で、一方、ストレプトミセス エスピー (Streptomyces sp.) Q47152の場合は、15〜45℃の範囲、好ましくは20〜40℃付近で行われる。培地のpHは約5〜9、好ましくは約6〜8の範囲に調整すると好結果が得られる。培養期間は培地の組成、温度条件に応じて適宜設定されるが、通常1〜14日程度、好ましくは3〜8日程度である。
(単離法)
本発明の有効成分である化合物の単離は、天然物から生理活性物質を単離する際の通常の抽出、精製の手段を適宜利用して行うことができる。化合物は、メタノールやエタノール、ブタノール等のアルコール類やアセトンに溶け易いことから、これらの溶媒で抽出するのが好ましい。また、化合物は酢酸エチルやクロロホルム等の有機溶剤には溶解するが、水には溶解しにくいことから、水と、酢酸エチルやクロロホルム等による分液操作により、抽出精製することができる。
また、活性成分を含む画分を適当な担体に接触させることにより活性成分を吸着させ、次いで適当な溶媒で溶出することにより活性を有する化合物を精製することができる。好ましくは、セファデックス(登録商標)LH−20、アンバーライト(登録商標)XAD−2、ダイヤイオン(登録商標)HP−20、ダイヤイオン(登録商標)CHP−20、又はダイヤイオン(登録商標)SP−900のような多孔性吸着樹脂に接触・吸着させ、次いでメタノール、エタノール、アセトン、ブタノール、アセトニトリル、クロロホルム等の有機溶媒又は水、或いはそれらの混合液を用いて、化合物を溶出させることができる。このとき有機溶媒と水の混合比率を段階的に又は連続的に変化させることが有利な場合がある。また、化合物含有画分は、シリカゲル、ODS等を用いたカラムクロマトグラフィー、遠心液々分配クロマトグラフィー、ODSを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の当業者に自明の各種精製法によっても精製することができる。これらの各種操作法を適宜組み合わせて行うことが、純粋な化合物を分離精製するうえで有利な場合がある。
【0019】
本発明の有効成分である化合物は、酸付加塩を形成することができる。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、或いは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸等が挙げられる。
また、本発明の有効成分である化合物は不斉炭素原子を有するので、これに基づく立体異性体(ラセミ体、光学異性体、ジアステレオマー等)が存在する。本発明医薬組成物の有効成分としては、これらの立体異性体の混合物もしくは単離されたものを包含する。また、本発明医薬組成物の有効成分としては、これらの化合物の水和物、各種溶媒和物等も包含する。更に、結晶多形などの化合物の結晶をも包含する。
【0020】
本発明医薬組成物は、通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、化合物又はその塩が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0021】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
【0022】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。ここに、口腔用外用剤としては、練歯磨、液状歯磨、泡状歯磨等の歯磨剤、歯肉マッサージクリーム、局所添付剤、洗口剤、マウスウォッシュ、トローチ剤、チューンガム等の様々な剤型が挙げられる。有効成分以外の成分として、口腔用として当業者に常用されている成分を配合することができ、例えば、公知の界面活性剤、研磨剤、香料、増粘剤、保湿剤等を適宜用いることができる。
【0023】
本発明の有効成分である化合物の投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1日当たり経口投与の場合、0.1〜1500 mg、非経口投与の場合、0.01〜500 mg程度が適当であり、これを1日に1回乃至複数回投与する。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。また、外用剤として用いる場合は、化合物を0.001〜20%、好ましくは0.01〜10%を含む外用剤が好ましい。これを1日1〜数回、症状に応じて局所に投与する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明の有効成分である化合物は下記実施例に限定されるものではない。
製造例1
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q34752株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地を50本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間、振盪培養した。
このようにして培養したQ34752株の培養液5Lにアセトン20Lを添加し、充分に攪拌した後、濾過した。濾液、約25Lを減圧濃縮し、pH7.0に調整して、約5Lの酢酸エチルで抽出した。有機溶媒層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10g)に供した。クロロホルム溶液 50mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(9:1)、(7:3)溶液、各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(6g)に供した。50%及び60%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで洗浄した後、70%、80%、90%、及び100%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、約212mgの粗抽出物を得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、55%(v/v)アセトニトリル水溶液で溶出し、UV210nmで検出して目的のピークを分取した。分取した溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで抽出して、化合物A(19.8mg)、及び化合物B(2.4mg)を得た。
【0025】
物理化学的性状
(化合物A)
色および形状:白色粉末
分子式:C44H70N8O11
高分解能ESI-MS: m/z 887.5242 ([M+H]+, Δ 1.8 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 277nm(1,500), 226nm (15,700)
旋光度 [α]D24.7 = -219°(c 0.0192, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図1及び2に示す。
赤外吸収データ:KBrで測定した赤外吸収スペクトラムのチャートを図3に示す.
(化合物B)
色および形状:白色粉末
分子式:C43H68N8O11
高分解能ESI-MS: m/z 873.5086 ([M+H]+, Δ 0.1 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 276nm(2,500), 226nm (18,900)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図4及び5に示す。
【0026】
製造例2
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q34752株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地にトリフルオロロイシンを0.05%となるように添加し、100本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間、振盪培養した。
このようにして培養したQ34752株の培養液10Lにアセトン40Lを添加し、充分に攪拌した後、濾過した。濾液、約50Lを減圧濃縮し、pH7.0に調整して、約10Lの酢酸エチルで抽出した。有機溶媒層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20g)に供した。クロロホルム溶液 100mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(20:1)、(9:1)溶液、各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(12g)に供した。60%(v/v)メタノール水溶液 100mlで洗浄した後、80%及び100%(v/v)メタノール水溶液 各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、約400mgの粗抽出物を得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、アセトニトリル-水(55:45)、5mlで溶出し、UV210nmで検出して目的のピークを分取した。分取した溶液を減圧濃縮し、化合物C(77mg)を得た。
【0027】
物理化学的性状
(化合物C)
色および形状:白色粉末
分子式:C44H67F3N8O11
高分解能ESI-MS: m/z 941.4977 ([M+H]+, Δ 1.7 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 283nm (2,800),277nm (3,300),225nm(32,700)
旋光度 [α]D24.7 = -118°(c 0.04, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図6及び7に示す。
赤外吸収データ:KBrで測定した赤外吸収スペクトラムのチャートを図8に示す.
【0028】
製造例3
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を30mlずつ100ml容の三角フラスコに分注し、121℃で30分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q34752株をかき取って接種し、30℃、250回転/分の条件で3日間振とう培養し、第一段種培養液とした。前記組成の培地が100mlづつ分注された500ml容の三角フラスコに、第一段種培養液2%を植菌し、30℃、250回転/分の条件で3日間振とう培養し、第二段種培養液とした。グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 1%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%、消泡剤0.1%よりなる培地(滅菌前pH7.0)20Lを、30L容ジャーファーメンターに分注し、123℃で30分間滅菌した。この培地に、第二段種培養液5%を植菌、30℃、200〜300回転/分の条件で6日間通気攪拌培養を行った。
このようにして培養したQ34752株の培養液35Lにアセトンを等量添加し、濾過用助剤(ラヂオライト#600、昭和化学工業)を添加し、充分に攪拌・抽出した後、濾過した。濾液、約70Lに水30Lを添加し、あらかじめ20%アセトン水溶液で平衡化しておいたセパビーズSP-850(2L、三菱化学(株))に供した。50%メタノール水溶液5Lで洗浄した後、100%メタノール10Lで溶出した。100%メタノール溶出画分に水と酢酸アンモニウムを添加し、50%メタノール水溶液(0.2%酢酸アンモニウム含有)とした後、ODS(50mmφx 1,000 mmL:ダイソー(株) ダイソーゲル SP-120-15/30-ODS-B)カラムクロマトグラフィーに供した。70%、75%、80%メタノール水溶液(0.2%酢酸アンモニウム含有)各6Lで溶出した。目的化合物を含有したフラクションを濃縮、乾燥し、粉末(約30mg)を得た。その粉末を少量のDMSOに溶解し、ODSカラム(20mmφx250mmL:ダイソーパック SP-120-5-ODS-BP) を用い、50%アセトニトリル水溶液(0.1M リン酸二水素カリウム含有)、10ml/分にてHPLC分取した。目的物質を含んだフラクションを濃縮、水置換後、酢酸エチルで抽出し、化合物D(10.4mg)を得た。
【0029】
物理化学的性状
(化合物D)
色および形状:白色粉末
分子式:C43H68N8O10
高分解能ESI-MS: m/z 857.5131 ([M+H]+, Δ -0.5 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax 末端吸収
旋光度 [α]D24.7 = -114°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図9及び10に示す。
上記製造例1〜3で得られた化合物は、その物理化学的性状より、以下の構造で示される環状化合物であると同定された。
【化8】
化合物A R1:エチル基、R2:メチル基、R3:メトキシ基
化合物B R1:メチル基、R2:メチル基、R3:メトキシ基
化合物C R1:エチル基、R2:トリフルオロメチル基、R3:メトキシ基
化合物D R1:エチル基、R2:メチル基、R3:水素原子
【0030】
製造例4
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q47152株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地を50本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間振盪培養した。
このようにして培養したQ47152株の培養液5Lにアセトン20Lを添加し、充分に攪拌した後、濾過した。濾液、約25Lを減圧濃縮し、pH7.0に調整して、約5Lの酢酸エチルで抽出した。有機溶媒層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20g)に供した。クロロホルム溶液 100mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(9:1)、(7:3)溶液、各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(6g)に供した。50%及び60%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで洗浄した後、70%、80%及び90%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、約455mgの粗抽出物を得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、アセトニトリル-6.5mM酢酸アンモニウム(pH5.5)(55:45)、10mlで溶出し、UV266nmで検出して目的のピークを分取した。分取した溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで抽出して、化合物E(68mg)を得た。
【0031】
物理化学的性状
(化合物E)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H64ClN9O16
高分解能ESIMS: m/z 1106.4232 ([M+H]+, Δ -0.6 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 263nm (ε 9,000)
旋光度 [α]D24.7 = -34.7°(c 0.0144, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図11及び12に示す。
赤外吸収データ:赤外吸収スペクトラムのチャートを図13に示す.
【0032】
製造例5
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を30mlずつ100ml容の三角フラスコに分注し、121℃で30分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q47152株をかき取って接種し、30℃、250回転/分の条件で3日間振とう培養し、第一段種培養液とした。次に、同じ組成の培地を500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で30分間滅菌した。この培地に第一段種培養液を2%づつ接種し、30℃、250回転/分の条件で3日間振盪培養し、第二段種培養液とした。MS#3600 7%、乾燥酵母 1%、小麦胚芽 2%、硫酸コバルト 10ppm、消泡剤 0.1%(滅菌前pH6.5)を20Lづつ30Lジャーファメンターに分注し、123℃、30分滅菌した。第二段種培養液を2%植菌し、30℃、3日間、通気攪拌培養を行った。
このようにして培養したQ47152株の培養液30Lにアセトンを等量添加し、濾過用助剤(ラヂオライト#600、昭和化学工業(株))を添加して充分に攪拌・抽出した後、濾過した。濾液、約60Lに水30Lを添加し、pH2.5に調整して、あらかじめ20%アセトン水溶液(0.01N HCl含有)で平衡化しておいたセパビーズSP-850(2L:三菱化学(株))に供した。75% メタノール水溶液(0.01N HCl含有)6Lで洗浄後、100%メタノール(0.01N HCl含有)16Lで溶出した。メタノール溶出画分に水を等量添加し、ODS-B(50mm φx 1,000mmL:ダイソー(株)ダイソーゲルSP-120-15/30-ODS-B )カラムクロマトグラフィーに供した。52%アセトニトリル水溶液(0.05%TFA含有)で溶出し、一定時間毎に分画した。目的化合物を含有するフラクションを減圧濃縮・水置換後、酢酸エチル抽出した。酢酸エチル抽出液を減圧濃縮・乾固し、粗抽出物728mgを少量のメタノールに溶解し、ODSカラム(20mmφ250mmL:ダイソーパックSP-120-5-DS-BP)を用い、52%アセトニトリル水溶液(50mMリン酸二水素カリウム含有)で毎分10mlにてHPLC分取した。目的化合物を含んだフラクションを濃縮、水置換後、酢酸エチル抽出し、化合物F(13.5 mg)、並びに化合物G(17.1mg)を得た。また、もうひとつの目的化合物を含有するフラクションに水を等量添加し、ダイアイオンHP-20-SS(1.2L:三菱化学(株))クロマトグラフィーに供し、70%メタノール水溶液(0.5%酢酸アンモニウム含有)で溶出した。減圧濃縮・水置換後、酢酸エチルで抽出し、化合物H(80 mg)を得た。
【0033】
物理化学的性状
(化合物F)
色および形状:白色粉末
分子式:C53H68ClN9O17
高分解能ESIMS: m/z 1138.4500 ([M+H]+, Δ -0.1 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 267nm (ε 26,600)
旋光度 [α]D24.7 = -106.8°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図14及び15に示す。
【0034】
(化合物G)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H64ClN9O15
高分解能ESIMS: m/z 1090.4293 ([M+H]+, Δ 0.1 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 263nm (ε 25,100)
旋光度 [α]D24.7 = -96.8°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図16及び17に示す。
【0035】
(化合物H)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H65Cl2N9O16
高分解能ESIMS: m/z 1142.4001 ([M+H]+, Δ -0.3 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 264nm (ε 22,000)
旋光度 [α]D24.3 = -52.6°(c 0.02, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図18及び19に示す。
【0036】
製造例6
グルコース 1%、ポテトスターチ 2%、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス 0.5%、炭酸カルシウム 0.4%よりなる培地(滅菌前pH7.0)を100mlずつ500ml容の三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地にベネット寒天培地に良く生育させたストレプトミセス エスピー Q47152株をかき取って接種し、28℃、220回転/分の条件で4日間振とう培養し、種培養液とした。次に同じ組成の培地を50本の500ml容の三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で20分間滅菌した。この培地に前記種培養液を2mlずつ接種し、28℃、220回転/分の条件で6日間振盪培養した。
このようにして培養したQ47152株の培養液10Lを濾過し、pH 7.0に調整した。濾液、約8Lを酢酸エチル10Lで抽出し添加し、シリカゲルクロマトグラフィー(20mmφ100mmL)に供した。クロロホルム溶液 100mlで洗浄した後、クロロホルム-メタノール(9:1)、(7:3)溶液、各100mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、ODSカラムクロマトグラフィー(6g)に供した。50%及び60%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで洗浄した後、70%、80%及び90%(v/v)メタノール水溶液 各50mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮し、目的化合物を含有するフラクションを得た。粗抽出物をODS HPLC(L-column, 20 x 250mm, 化学物質評価研究機構)に供し、55%アセトニトリル水溶液(0.05% TFA含有)で目的ピークを分取し、化合物I(3mg)を得た。
【0037】
物理化学的性状
(化合物I)
色および形状:白色粉末
分子式:C52H65N9O16
高分解能ESIMS: m/z 1072.4642 ([M+H]+, Δ 0.9 mmu)
UV吸収(MeOH):λmax(ε) 267 nm (ε 14,700)
旋光度 [α]D24.0 = -252°(c 0.001, MeOH)
NMRデータ:CDCl3中で測定した1H NMR、及び13C NMRの一次元のチャートを図20及び21に示す。
【0038】
上記製造例4〜6で得られた環状化合物は、その物理化学的性状より、以下の式で示される構造を有する化合物であると同定された。
【化9】
【0039】
実施例1
プロピオニバクテリウム属の菌種に対する最小発育阻止濃度(MIC)は、GAM寒天培地を用いて嫌気性条件にて37℃, 24h培養後,生育の有無を測定し,判定した。本発明の有効成分である化合物の、プロピオニバクテリウム アクネス(P. acnes) JCM6425及びプロピオニバクテリウム グラヌロサム(P. granulosum) GAI7414に対するMIC(μg/ml)は下表の通りである。
【表7】
【0040】
実施例2 TPA誘発マウス耳浮腫抑制活性
BDF1系雌性マウスの右耳介部の両面にTPA 2μg/ear塗布して皮膚炎を誘発した。薬剤は、TPA誘発の24時間と2時間前に右耳介部の両面に10μLずつ塗布した。TPA誘発の24時間後に右耳介部の厚さを測定し浮腫の指標とした。
(結果)化合物Aは、0.3%,1%, 3%溶液塗布により,コントロールに比べてそれぞれ7.1%, 60%,57%の抑制活性を示した。また、化合物Eは,0.3%、1%、3%溶液塗布により、コントロールに比べてそれぞれ20%、50%並びに63%の抑制活性を示した。よって、本発明の有効成分である化合物は良好な抗炎症作用を有することが確認された。
実施例3
歯周病起炎菌として知られる偏性嫌気性菌種に対する最小発育阻止濃度(MIC)は、GAM寒天培地を用いて嫌気性条件にて37℃, 24h培養後,生育の有無を測定し,判定した。本発明の有効成分である前記式(II)で示される化合物の、ポルフィロモナス ジンジバリス(P. gingivalis) ATCC 33277、プリボレラ インターメディア(P. intermedia) BI-5500に対するMIC(μg/ml)は下表の通りである。
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明医薬組成物はプロピオニバクテリウム属の菌種、特にプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)等に対して優れた抗菌活性を有し、抗菌剤として、特に尋常性ざ瘡の治療に有用である。更に歯周病起因菌に対して優れた抗菌活性を有する化合物を有効成分として含有する一部の本発明医薬組成物は、抗菌剤として歯周病の予防若しくは治療にも有用である。
また、本発明医薬組成物は良好な抗炎症活性を有しており、各種炎症性疾患の予防若しくは治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】化合物Aの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】化合物Aの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図3】化合物AのIRスペクトルを示す図である。
【図4】化合物Bの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図5】化合物Bの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】化合物Cの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】化合物Cの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図8】化合物CのIRスペクトルを示す図である。
【図9】化合物Dの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】化合物Dの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】化合物Eの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図12】化合物Eの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図13】化合物Eの赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図14】化合物Fの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図15】化合物Fの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図16】化合物Gの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図17】化合物Gの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図18】化合物Hの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図19】化合物Hの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図20】化合物Iの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図21】化合物Iの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)又は(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
【化1】
(式中、R1はメチル若しくはエチル基を、R2はメチル若しくはトリフルオロメチル基を、R3はメトキシ基若しくは水素原子をそれぞれ意味する。)
【化2】
(式中、R4は水素原子又は水酸基を、R5は水素原子又はクロロ原子を、R6並びにR7は一方が水酸基で、他方がメトキシメチル又はクロロメチル基を意味するか、R6とR7が一体となって、式
【化3】
で示される基を意味する。)
【請求項2】
請求項1に記載される式(I)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物であって、該環状化合物が
(1)R1がエチル基、R2がメチル基、且つR3がメトキシ基である化合物、
(2)R1がメチル基、R2がメチル基、且つR3がメトキシ基である化合物、
(3)R1がエチル基、R2がトリフルオロメチル基、且つR3がメトキシ基である化合物、又は、
(4)R1がエチル基、R2がメチル基、且つR3が水素原子である化合物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載される式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物であって、該環状化合物が
【化4】
請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗菌剤である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗炎症剤である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
尋常性ざ瘡の予防若しくは治療剤である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1の式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする歯周病予防若しくは治療剤である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項1】
下記式(I)又は(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
【化1】
(式中、R1はメチル若しくはエチル基を、R2はメチル若しくはトリフルオロメチル基を、R3はメトキシ基若しくは水素原子をそれぞれ意味する。)
【化2】
(式中、R4は水素原子又は水酸基を、R5は水素原子又はクロロ原子を、R6並びにR7は一方が水酸基で、他方がメトキシメチル又はクロロメチル基を意味するか、R6とR7が一体となって、式
【化3】
で示される基を意味する。)
【請求項2】
請求項1に記載される式(I)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物であって、該環状化合物が
(1)R1がエチル基、R2がメチル基、且つR3がメトキシ基である化合物、
(2)R1がメチル基、R2がメチル基、且つR3がメトキシ基である化合物、
(3)R1がエチル基、R2がトリフルオロメチル基、且つR3がメトキシ基である化合物、又は、
(4)R1がエチル基、R2がメチル基、且つR3が水素原子である化合物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載される式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物であって、該環状化合物が
【化4】
請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗菌剤である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗炎症剤である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
尋常性ざ瘡の予防若しくは治療剤である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1の式(II)で示される環状化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする歯周病予防若しくは治療剤である請求項4記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−7454(P2008−7454A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178759(P2006−178759)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】
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