説明

医薬組成物

ドクサート、浸透圧性緩下剤及び安息香酸塩を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物に関し、特に、例えば、直腸鏡、手術又はX線による検査の前に腸を洗浄するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
直腸鏡、手術又はX線による最適な検査の前に腸を十分に洗浄することは、不可欠である。腸を洗浄する従来の方法としては、腸注入、電解質の混合溶液又はマンニトール若しくはリン酸ナトリウム調合液の経口投与、ポリエチレングリコールを含有する経口洗浄溶液、及び伝統的な生薬の使用が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知の方法には、有効性の不足、副作用及び不十分な患者コンプライアンスなどの問題があり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、ドクサート、浸透圧性緩下剤及び安息香酸塩(例えば、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム)を含む医薬組成物が提供される。
【0005】
本組成物は、p−ヒドロキシ安息香酸の(C1〜C6)アルキルエステル、例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチル(4−ヒドロキシ安息香酸メチル)、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル又はパラヒドロキシ安息香酸ブチルをさらに含んでもよい。
【0006】
ドクサートは、陰イオン界面活性剤である。ドクサートは、例えば、塩の形態であってもよく、例えば、ドクサートナトリウム(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)、ドクサートカルシウム(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カルシウム)又はドクサートカリウム(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム)であってもよい。ドクサート(例えば、ドクサートナトリウム)は、人の腸からの水分吸収を阻害し、表面張力を減少させて便への液体浸透及び便の軟化を可能にし得る。ドクサート(例えば、ドクサートナトリウム)は、20〜200mg/用量、例えば50〜150mg/用量、例えば110〜130mg/用量の量で存在してもよい。
【0007】
浸透圧性緩下剤は、浸透圧性緩下剤の作用を有する糖アルコール、例えば、ソルビトール又はラクチトールでもよい。本発明に従って使用するための好ましい糖アルコールは、ソルビトールであり、例えば、固形のソルビトール、水溶液中のソルビトール、例えばソルビトールの70%溶液などである。ソルビトールは、浸透性及び潤滑性を有し、便の軟化及び排便の促進を起こす。浸透圧性緩下剤[例えば、浸透圧性緩下剤の作用を有する糖アルコール(例えば、ソルビトール)]は、1〜70g/用量、例えば20〜50g/用量、例えば25〜45g/用量の量で存在してもよい。
【0008】
好ましくは、本組成物は、リン酸ナトリウムの1種又は複数の塩を含まない。
【0009】
本発明による組成物は、迅速で有効な腸の浄化を実現できる(例えば、本発明による組成物は、1時間未満で腸の排便を起こし得る)ことが示された。
【0010】
ドクサートの量(%w/v)は、0.01%〜1%、例えば0.05%〜0.5%、例えば0.09%〜0.11%の間でもよい。浸透圧性緩下剤(%w/v)の量は、15%〜35%、例えば20%〜30%の間、例えば25%でもよい。安息香酸塩、例えば安息香酸ナトリウムの量は、0.005%〜0.5%、例えば0.01%〜0.025%の間、例えば0.018%でもよい。存在する場合、p−ヒドロキシ安息香酸の(C1〜C6)アルキルエステル、例えばパラヒドロキシ安息香酸メチルの量は、0.01%〜1%、例えば0.05%〜0.5%、例えば0.09%〜0.11%の間でもよい。
【0011】
本出願人らは、ドクサート(例えば、ドクサートナトリウム)及び浸透圧性緩下剤(例えば、ソルビトール)を含む組成物中に、安息香酸塩、例えば、安息香酸ナトリウムを[例えば、p−ヒドロキシ安息香酸の(C1〜C6)アルキルエステル(例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチル)と一緒に]含めることは、安定性に著しい効果を有し得ることも見出した。本発明による組成物は、室温(25℃)で18カ月以上の間保存した場合、安定であることが予想外にも示された(例えば、pH値、並びに/或いはドクサート及び/又は浸透圧性緩下剤(及び他の成分)の組成又は濃度の変化が、微小であることが示され;例えば、pH値、並びに/或いはドクサート及び/又は浸透圧性緩下剤(及び他の成分)の組成又は濃度の変化が保存期限の範囲内及び許容範囲内にあることが示され;例えば、ドクサートの組成若しくは濃度の変化が、10%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満であり、及び/又は浸透圧性緩下剤の組成若しくは濃度の変化が、4%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満であり、及び/又はpH値の変化は、例えば、1未満、例えば0.7未満、例えば0.6以下であることが示された)。さらに、本発明による組成物は、室温(25℃)で22カ月保存した場合、主要な分解生成物であるモノオクチルスルホコハク酸2ナトリウムが、微小(例えば、3%未満、例えば、2%未満)の濃度を有することが示された。
【0012】
本組成物は、液体の形態(例えば、直腸投与のために)を取り得る。液体は、例えば、単回使用量で、例えば、容器の上端にノズル(例えば、事前に潤滑したもの)を装着した、単回使用容器(例えば、単回使用ボトル)中に入れてもよい。本組成物は、浣腸剤として投与するために適切な、例えば、使い捨てチューブに接続した、いわゆる使い捨てバッグ(用語、「使い捨て」にもかかわらず、そのような器具は、通常、著しい劣化がなく何カ月も又は何年も使用できる)、組合せ式エネマシリンジ(Combination Enema Syringe)若しくは「密閉型」シリンジ、又は使い捨て若しくは再使用可能な(例えば、ゴム若しくはビニール)浣腸バッグ、浣腸バルブ若しくは浣腸ボトルを使用する形態であってもよい。本組成物は、溶液の形態(例えば、直腸投与のため)であってもよい。
【0013】
本発明によると、さらなる態様において、ドクサート(例えば、ドクサートナトリウム)、浸透圧性緩下剤[例えば、浸透圧性緩下剤の作用を有する糖アルコール(例えば、ソルビトール)]及び安息香酸塩(例えば、安息香酸ナトリウム)を含む医薬組成物の、単一用量を含む単回使用パッケージが提供される。医薬組成物は、p−ヒドロキシ安息香酸の(C1〜C6)アルキルエステル、例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチルをさらに含んでもよい。ドクサート(例えば、ドクサートナトリウム)は、20〜200mg、例えば50〜150mg、例えば110〜130mgの量(単一用量)で存在してもよい。浸透圧性緩下剤[例えば、浸透圧性緩下剤の作用を有する糖アルコール(例えば、ソルビトール)]は、1〜70g、例えば20〜50g、例えば25〜40gの量(単一用量)で存在してもよい。単回使用パッケージは、容器の上端に装着されるノズル(例えば、事前に潤滑したもの)の付いた単回使用容器(例えば、単回使用ボトル)をさらに含んでもよい。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、医薬製剤の安定性(例えば、室温における安定性)を高めるための安息香酸塩、例えば安息香酸ナトリウム(例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチルと一緒にした)の使用を提供する。「安定性を高める」とは、安息香酸塩を含む製剤中の活性薬剤成分の量、及びpH値などの他の規格が、安息香酸塩を含まなかった製剤におけるそれらの規格よりも、時間とともに変化することが少ないことを意味する。製剤は、液剤、例えば直腸用の液剤でもよい。製剤は、ドクサート(例えば、ドクサートナトリウム)、及び浸透圧性緩下剤[例えば、浸透圧性緩下剤作用を有する糖アルコール(例えば、ソルビトール)]を含み得る。安定性は、製剤を室温(25℃)で18カ月間保存した場合、製剤におけるpH値、並びに/或いはドクサート及び/又は浸透圧性緩下剤(及び他の成分)の組成又は濃度の変化が微小(又は皆無)である、例えば、製剤におけるpH値、並びに/或いはドクサート及び/又は浸透圧性緩下剤(及び他の成分)の組成又は濃度のいずれの変化も、保存期限の範囲内及び許容範囲内にある、即ち、例えば、製剤におけるドクサートの組成若しくは濃度のいずれの変化も、10%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満であり、及び/又は製剤における浸透圧性緩下剤の組成若しくは濃度のいずれの変化も、4%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満であり、及び/又はpH値のいずれの変化も、例えば1未満、例えば0.7未満、例えば0.6以下であるように高め得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施例1]
直腸用の溶液
各ボトルは、
ドクサートナトリウム(120mg)、
ソルビトール(30g)、
安息香酸ナトリウム(21.6mg)、
パラヒドロキシ安息香酸メチル(120mg)を含み、残りは水である。
【0016】
1バッチの溶液は、当技術分野でよく知られた以下の方法により生成し、直腸用の特製の120ml単回用量ボトル(低密度ポリプロピレン製)に詰めた。
【0017】
[実施例2A]
安定性試験
実施例1の120ml溶液の化学安定性は、以下のように試験した。
【0018】
120mlの市販容器中の3バッチの溶液(実施例1による)は、25℃及び40%の相対湿度(RH)(又は同等)で18カ月間保存し、0カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月及び18カ月の時点で試験した。
【0019】
溶液は、各時点において、外観、pH、密度、ソルビトール含有量(屈折率アッセイによる)、ドクサートナトリウム含有量(滴定法による)、パラヒドロキシ安息香酸メチル含有量(UVアッセイによる)、水分損失及び微生物汚染について試験した。試験方法は、当技術分野でよく知られている。
【0020】
試験期間にわたる外観及び密度の有意な変化はなく、許容できるものであった。そのpHは、6.0から5.4と5.6の間に低下した。つまり、保存の18カ月後、pHは、十分に保存期限の範囲内にあった。ソルビトールのアッセイは、長期保存条件の下で、約0.7%の増加を示した。これは、水分の損失によるもので、許容限度範囲内(ソルビトールの最初の重量%の±4%以内)である。ドクサートナトリウムのアッセイは、許容できる増加を示し(ドクサートの最初のw/v%の±10%以内)、これも18カ月にわたる水分の損失によるものであった。
【0021】
パラヒドロキシ安息香酸メチルの含有量は、保存期間及び温度の増加とともに減少する。保存18カ月後の25℃及び40%の相対湿度においては、含有量は0.98mg/mlであり、十分に保存期限限度の範囲内(即ち、最初のw/v%の±10%)である。
【0022】
5つのボトルを水分損失について調べ、18カ月の保存後に、25℃/40%RHにおいて約1.2%であることが分かり、これは、低密度ポリエチレン容器からの透水によるものである。この数値は、5%以下の許容損失範囲内である。
【0023】
微生物限度に有意な変化はなかった。
【0024】
このように、安息香酸ナトリウムで安定化した直腸用溶液3バッチに対する安定性試験は、本製品が、25℃及び40%の相対湿度において、18カ月後まで安定であることを示している。
【0025】
[実施例2B]
安定性試験
不純物及びドクサートナトリウムの分解生成物の分析のために、HPLC法を開発した。主要な分解生成物は、モノオクチルスルホコハク酸2ナトリウムであり、本発明による25℃で22カ月保存した試料で測定したこの生成物の濃度は、約1.7%であった。これは、許容限度範囲内である。したがって、注目すべきことには、本発明による組成物は、22カ月以上の間室温で安定である。
【0026】
[実施例3]
製造方法
ソルビトール溶液、ドクサートナトリウム溶液、安息香酸ナトリウム及びパラヒドロキシ安息香酸メチルを、全ての物質が完全に溶解するまで室温で撹拌する。溶液は、充填及び包装する前に濾過する。溶液を、充填密封機を使用して、直腸用の特製ボトル(これらは、当技術分野で既知である)に充填し、ボトルに蓋をする。本溶液製品は、上述のように室温で顕著な安定性を示す、直腸投与に最適な溶液である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドクサート、浸透圧性緩下剤及び安息香酸塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
ドクサートが、塩の形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ドクサートが、ドクサートナトリウム、ドクサートカルシウム又はドクサートカリウムである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
20〜200mgの量のドクサートを含む、請求項1から3までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
浸透圧性緩下剤が、浸透圧性緩下剤の作用を有する糖アルコールである、請求項1から4までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
浸透圧性緩下剤が、ソルビトール又はラクチトールである、請求項1から5までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
浸透圧性緩下剤が、1〜70gの量で存在する、請求項1から6までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
安息香酸塩が、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムである、請求項1から7までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
p−ヒドロキシ安息香酸の(C1〜C6)アルキルエステルをさらに含む、請求項1から8までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
p−ヒドロキシ安息香酸の(C1〜C6)アルキルエステルが、パラヒドロキシ安息香酸メチルである、請求項1から9までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
液体の形態である、請求項1から10までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
直腸投与のための液体の形態である、請求項1から11までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
溶液の形態である、請求項1から12までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
ドクサート、浸透圧性緩下剤及び安息香酸塩を含む医薬組成物の単一用量を含む、単回使用パッケージ。
【請求項15】
単回使用容器及び容器の上端に装着されるノズルをさらに含む、請求項14に記載の単回使用パッケージ。
【請求項16】
医薬製剤の安定性を高めるための、安息香酸塩の使用。

【公表番号】特表2011−506305(P2011−506305A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536545(P2010−536545)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003677
【国際公開番号】WO2009/071993
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(507372198)
【Fターム(参考)】