説明

十字軸式自在継手用ヨーク

【課題】ヨーク12cの基部14cと回転軸の端部とを結合固定する為のボルトが緩む事を防止できる構造を実現する。
【解決手段】前記ボルトの雄ねじ部を螺合させるねじ孔26のうち、第二フランジ部17cの外側面寄り部分にのみ、この雄ねじ部を螺合させる事に対する抵抗となる緩み止め部27を設ける。この緩み止め部27を構成する為に、例えば、前記第二フランジ部17cの外側面の一部で前記ねじ孔26の開口周囲部分を押し潰して凹部28、28を形成する。そして、金属材料の一部を径方向内方に変位させて、前記雄ねじ部を螺合させる事に対する抵抗となる小径ねじ部を形成し、この小径ねじ部を前記緩み止め部27とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用操舵装置を構成する回転軸同士を、トルク伝達可能に接続する為の十字軸式自在継手(カルダンジョイント)を構成するヨークの改良に関する。具体的には、このヨークの基部と回転軸の端部とを結合固定する為のボルトが緩む事を防止して、このボルトに折損等の損傷が発生しにくい構造の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用操舵装置は、図7に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持されている。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、図示の例は、電動モータ10を補助動力源として前記ステアリングホイール1を操作する為に要する力の低減を図る、電動式パワーステアリング装置を組み込んでいる。従って、前記ステアリングシャフト5の前端部を、この電動式パワーステアリング装置の入力側に接続し、この電動式パワーステアリング装置の出力軸と前記中間シャフト8の後端部とを、前記自在継手7により、トルクの伝達を自在に接続している。
【0003】
上述の様な自動車用操舵装置に組み込まれた、互いに同一直線上に存在しない回転軸である、前記ステアリングシャフト5と前記中間シャフト8と前記入力軸3とを接続する、前記両自在継手7、9は、何れも本発明の製造方法の対象となるヨークを組み込んだ、十字軸式自在継手である。この様な自在継手は、例えば特許文献1〜7に記載される等により、従来から各種構造のものが知られている。図8は、このうちの特許文献1に記載された構造の1例を示している。この図8に示した自在継手11は、1対のヨーク12a、12bを1個の十字軸13を介して、トルク伝達自在に結合して成る。図示の例の場合、これら両ヨーク12a、12bは、それぞれが鋼板等の十分な強度及び剛性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造られており、それぞれが基部14a、14bと、これら両ヨーク12a、12b毎に1対ずつの結合腕部15a、15bとを備える。
【0004】
このうちの基部14a、14bはそれぞれ、第一フランジ部16a、16bと第二フランジ部17a、17bとを備える。これら各第一フランジ部16a、16bと第二フランジ部17a、17bとはそれぞれ、前記両基部14a、14bの円周方向1箇所に設けられた不連続部18a、18bを挟んで設けられている。これら両基部14a、14b毎に対となった第一、第二各フランジ部16a、16b、17a、17bの互いに整合する位置に、前記両基部14a、14b毎に1対ずつの取付孔を、それぞれこれら両基部14a、14bの軸方向に対して捩れの位置関係となる方向に形成している。又、前記第一フランジ部16a、16bの外側面でこの第一フランジ部16a、16bに形成された取付孔の開口部を囲む部分に、座面部19a、19bを、この取付孔の中心軸に直交する方向に形成している。
【0005】
又、前記両ヨーク12a、12b毎に1対ずつの結合腕部15a、15bは、それぞれ当該ヨーク12a、12bの基部14a、14bの先端縁のうちで、この基部14a、14bに結合固定する回転軸20a、20bに関する直径方向反対側2箇所位置から、軸方向に延出している。そして、前記各結合腕部15a、15bの先端部にそれぞれ円孔21a、21bを、前記両ヨーク12a、12b毎に1対ずつの結合腕部15a、15b同士の間で、互いに同心に形成している。そして、前記各円孔21a、21bの内側に前記十字軸13に設けた4本の軸部を、それぞれがシェル型ニードル軸受である、ラジアル軸受22a、22bにより、回転自在に支持している。この様な構造により前記両ヨーク12a、12bを、それぞれの基部14a、14bの中心軸同士が傾斜した状態でもトルクの伝達を可能に組み合わせている。
【0006】
前述の様な自動車用操舵装置を組み立てる場合には、上述の様な自在継手11により、同一直線上に存在しない(前記ステアリングシャフト5と前記中間シャフト8と前記入力軸3とのうちの、互いに隣り合って配置される何れか2本であって、それぞれの中心軸が互いに傾斜した)1対の回転軸20a、20bを、トルクの伝達を可能に結合する。この為に、これら両回転軸20a、20bの端部を前記両ヨーク12a、12bの基部14a、14bに内嵌し、更にこれら両基部14a、14bに形成した前記各取付孔を挿通したボルト23a、23bとナット24a、24bとを螺合し、更に締め付ける。そして、前記両基部14a、14bの内面により前記両回転軸20a、20bの端部外周面を強く抑え付ける。この状態で、これら両回転軸20a、20bが、前記自在継手11を介して、トルクの伝達を可能に結合される。
【0007】
尚、図8に示した自在継手11を構成する1対のヨーク12a、12bのうち、一方(図8の左方)のヨーク12bは、前記基部14bの内周面に形成した雌セレーションと前記回転軸20bの端部外周面に形成した雄セレーションとを係合させる事により、これら基部14bと回転軸20bとの間で大きなトルクを伝達可能としている。従って、これら基部14bと回転軸20bとを結合する際には、これら基部14bと回転軸20bとを軸方向に相対変位させる。これに対して、他方(図8の右方)のヨーク12aの基部14aは、側方が開口した、断面U字形若しくは断面コ字形である、所謂横入れヨークとして、前記回転軸20aをこの基部12aに、側方から挿入可能としている。
【0008】
又、図9〜10に示す様に、ヨーク12cに設けた第一、第二両フランジ部16c、17cに互いに整合する状態で形成した1対の取付孔のうち、一方の取付孔をボルト23cを緩く挿通する通孔25とし、他方の取付孔をこのボルト23cを螺合させる為のねじ孔26として、ナットを省略する構造も、例えば特許文献3、5〜7に記載される等により、従来から広く知られている。前記ヨーク12cは、金属板にプレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を順次施して成る、所謂プレスヨークで、基部14cの内周面に、不連続部18c及びその近傍部分を除き、雌セレーションを形成している。尚、第一、第二両フランジ部16c、17cを、前記金属板を折り返す事により、この金属板2枚分の厚さ寸法としている。この様なプレスヨークの構造及び製造方法に就いても、特許文献7に記載される等により従来から知られている。更に、金属材料に鍛造加工を施して成る、所謂鍛造ヨークに関しても、例えば特許文献5、6に記載されている様に、従来から広く知られている。
【0009】
プレスヨークを使用した構造にしても、或は鍛造ヨークを使用した構造にしても、十字軸式自在継手による1対の回転軸同士の結合部の信頼性及び耐久性を確保する設計の自由度を向上させる為には、ボルト23a、23b、23cの緩み止めを図る事が有利である。このボルト23a、23b、23cが緩むと、前記十字軸式自在継手により接続された回転軸の回転方向変化に伴う、このボルト23a、23b、23cに加わる応力変化の絶対値(応力変化の振幅)が大きくなる。即ち、このボルト23a、23b、23cには、前記両回転軸同士の間でのトルク伝達に伴って、曲げ方向の応力が加わる。そして、この応力の作用方向は、このトルク伝達の方向が変わる度に変化する(逆方向になる)。更に、前記両回転軸同士の間で伝達するトルクの大きさを同じと仮定した場合には、前記ボルト23a、23b、23cが緩み、トルク伝達に伴うこのボルト23a、23b、23cの姿勢変化が大きくなる程、このボルト23a、23b、23cに加わる応力(応力変化の振幅)が大きくなる。
【0010】
要するに、このボルト23a、23b、23cが緩むと、前記両回転軸同士の間でのトルク伝達に伴ってこのボルト23a、23b、23cに加わる応力の振幅が大きくなり、このボルト23a、23b、23cの耐久性を確保する面から不利になる。具体的には、このボルト23a、23b、23cが多少緩んだ場合にも必要とする耐久性を確保する為に、このボルト23a、23b、23cを構成する金属材料として、強度が大きな高価なものを使用したり、このボルト23a、23b、23cの直径を大きくしたりする必要があり、コスト低減や軽量化を図る面から不利になる。逆に言えば、前記ボルト23a、23b、23cが緩む事を考慮しなくて済むのであれば、必要とする耐久性を確保しつつ、コスト低減及び軽量化を図る為の設計が容易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ヨークの基部と回転軸の端部とを結合固定する為のボルトが緩む事を防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の十字軸式自在継手用ヨークは、従来から知られている十字軸式自在継手用ヨークと同様に、基部と、1対の結合腕部と、1対の円孔とを備える。
このうちの基部は、回転軸の端部を結合固定する為のもので、円周方向1箇所に不連続部を有する欠円筒状であって、この不連続部を挟んで設けられた第一、第二両フランジ部と、このうちの第一フランジ部に、前記基部の中心軸に対し捩れ位置の関係で形成された通孔と、同じく第二フランジ部の一部でこの通孔に整合する位置に形成された、この通孔を前記第一フランジ部の外側面側から内側面側に挿通したボルトの雄ねじ部を螺合させる為のねじ孔と、前記第一フランジ部の外側面で前記通孔の開口部を囲む部分に形成された座面部とを備える。
又、前記両結合腕部は、前記基部の軸方向一端縁のうちで、この回転軸に関する直径方向反対側2箇所位置から軸方向に延出している。
又、前記両円孔は、前記両結合腕部の先端部に、互いに同心に形成されている。
【0013】
特に、本発明の十字軸式自在継手用ヨークに於いては、前記ねじ孔のうち、このねじ孔の軸方向に関して前記第二フランジ部の外側面(外側面とは、第一、第二両フランジのうちで互いに反対側の面、本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ)寄り部分にのみ、前記ボルトの雄ねじ部を螺合させる事に対する大きな(使用時に加わる振動によってはこのボルトが回転しない程の)抵抗となる緩み止め部を設けている。逆に、前記ねじ孔のうち、このねじ孔の軸方向に関して前記第二フランジ部の内側面(内側面とは、第一、第二両フランジのうちで互いに対向する面、本明細書全体で同じ)寄り部分は、前記ボルトをほぼ(一般的な雄ねじと雌ねじとを螺合させる際に生じる摩擦抵抗を超える様な)抵抗無く螺合可能としている。
【0014】
上述の様な緩み止め部として具体的には、例えば請求項2〜4に記載した発明の様な構造を採用できる。
このうちの請求項2に記載した発明の構造の場合には、前記緩み止め部を、前記第二フランジ部の外側面の一部でねじ孔の開口周囲部分を押し潰す事により、このねじ孔の一部を径方向内方に変位させた小径ねじ部とする。
又、請求項3に記載した発明の構造の場合には、前記緩み止め部を、前記ねじ孔の内周面を構成するねじ山の頂部を押し潰して当該ねじ山に隣接するねじ溝部の幅寸法を小さくした塑性変形部とする。
更に、請求項4に記載した発明の構造の場合には、前記緩み止め部を、前記ねじ孔の内周面に軟質材を被覆した被覆部とする。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に構成する本発明の十字軸式自在継手用ヨークによれば、ヨークの基部と回転軸の端部とを結合固定する為のボルトが緩む事を防止できて、必要とする耐久性を確保しつつ、コスト低減及び軽量化を図る為の設計が容易になる。
即ち、前記ボルトの先端部とねじ孔のうちで外側面寄り部分に設けた緩み止め部との間に作用する大きな摩擦力により、前記ボルトが緩みにくくなる為、このボルトの耐久性を確保する面から、このボルトが緩む事を考慮する必要性が低くなる。この為、ボルトを構成する金属材料として、強度が大きな高価なものを使用したり、このボルトの直径を大きくしたりする必要が低くなり、必要とする耐久性を確保しつつ、コスト低減及び軽量化を図る為の設計が容易になる。
しかも、前記ねじ孔のうちの内側面寄り部分には前記緩み止め部を設けておらず、前記ボルトの先端部を容易に螺合させられる様にしている為、前記ヨークの基部と回転軸の端部とを結合固定するのに先立って、このヨークに対し前記ボルトを仮止めする作業が面倒になる事はない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、ヨークの側面図(A)及び(A)のイ−イ断面図(B)。
【図2】ヨークの基部にボルトを仮止めした状態(A)と回転軸の端部を結合固定した状態(B)とを示す、それぞれ図1の(B)と同様の図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、ヨークの側面図(A)及び(A)のロ−ロ断面図(B)。
【図4】本発明の実施の形態の第3例を示す、図1の(B)と同様の図。
【図5】ねじ孔の内周面を構成するねじ山の頂部を押し潰す為の治具の端面形状の2例を示す図。
【図6】本発明の実施の形態の第4例を示す、図1の(B)と同様の図。
【図7】十字式自在継手を組み込んだ自動車用操舵装置の1例を示す、部分切断側面図。
【図8】従来から知られている十字式自在継手の第1例を示す部分切断側面図。
【図9】同第2例を、ヨークのみを取り出した状態で示す斜視図。
【図10】このヨーク単体で回転軸及びボルトを組み付ける前の状態(A)と、同じく組み付けた後の状態(B)とを示す、図1の(B)と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、第二フランジ部17cに形成したねじ孔26のうちで外側面寄り部分に、ボルト23cが螺合する事に対して大きな抵抗となる緩み止め部27を形成した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図9〜10に示した従来構造の第2例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略し、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0018】
前記緩み止め部27を構成する為に本例の場合には、前記第二フランジ部17cの外側面の一部で、前記ねじ孔26の開口部の周囲部分の円周方向複数箇所(図示の例では4箇所)に、ポンチ等の押し付け治具を強く押し付けて当該部分を押し潰し、円形の凹部28、28を形成している。そして、これら各凹部28、28部分に存在していた金属材料の一部を前記ねじ孔26の内周面側に移動させ、当該部分の内径を縮めて、前記緩み止め部27としている。前記ねじ孔26のうちでこの緩み止め部27の内径(ピッチ円直径)は、前記ボルト23cの雄ねじ部29のピッチ円直径よりも小さくなっている。従って、前記緩み止め部27は、この雄ねじ部29を螺合させる事に対する大きな抵抗となり、この雄ねじ部29を、前記ねじ孔26のうちで前記緩み止め部27部分まで螺入した状態では、これら雄ねじ部29とねじ孔26とが、使用時に加わる振動によって回転する事は無くなる。これに対して、このねじ孔26のうちで、前記緩み止め部27から軸方向に外れた内側面寄り部分の内径(ピッチ円直径)は、前記ボルト23cの雄ねじ部29のピッチ円直径と同じか僅かに大きくしている。従って、前記ねじ孔26のうちの内側面寄り部分に関しては、前記ボルト23cの雄ねじ部29を、一般的な雄ねじと雌ねじとを螺合させる際に生じる摩擦抵抗程度の、小さな摩擦抵抗のみで、容易に螺合可能である。
【0019】
上述の様な緩み止め部27を設けたヨーク12cによれば、図2の(B)に示す様に、このヨーク12cの基部14cと回転軸20cの端部とを結合固定すべく、前記ボルト23cを前記ねじ孔26に螺合し更に締め付けた状態では、このボルト23cに設けた雄ねじ部29のうちの先端寄り部分が、前記ねじ孔26のうちで外側面寄り部分に設けた緩み止め部27の内側に入り込む。そして、この状態では、この緩み止め部27と前記雄ねじ部29との間に作用する大きな摩擦力により、前記ボルト23cが緩みにくくなる。この為、このボルト23cの耐久性を確保する面から、このボルト23cが緩む事を考慮する必要性が低くなる。この結果、このボルト23cを構成する金属材料として、強度が大きな高価なものを使用したり、このボルト23cの直径を大きくしたりする必要が低くなって、必要とする耐久性を確保しつつ、コスト低減及び軽量化を図る為の設計が容易になる。しかも、前記ねじ孔26のうちの内側面寄り部分には前記緩み止め部27を設けていない為、このねじ孔26のうちの内側面寄り部分に前記ボルト23cの先端部を容易に螺合させる事ができる。従って、図2の(A)に示す様に、前記ヨーク12cの基部14cと前記回転軸20cの端部とを結合固定するのに先立って(例えば、回転軸を挿入する以前の輸送時や、挿入後の位置調節の際等)、前記ヨーク12cに対して前記ボルト23cを仮止めする作業を容易に行える。
【0020】
[実施の形態の第2例]
図3も、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、ねじ孔26の開口部の周囲部分の円周方向複数箇所(図示の例では4箇所)に、くさび状の押し付け治具を強く押し付けて当該部分を押し潰し、矩形の凹部28a、28aを形成している。そして、これら各凹部28a、28a部分に存在していた金属材料の一部を前記ねじ孔26の内周面側に移動させ、当該部分の内径を縮めて、緩み止め部27aとしている。押し付け治具の先端形状の相違に伴って前記各凹部28a、28aの形状が異なった点以外は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0021】
[実施の形態の第3例]
図4〜5は、請求項1、3に対応する、本発明に実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、ねじ孔26のうちの外側面寄り部分に、図5の(A)又は(B)に示す様な押し込み治具30a、30bを押し込んで、前記ねじ孔26の内周面を構成するねじ山の頂部を押し潰している。そして、この様にねじ山の頂部を押し潰す事で余剰となった金属材料を、この押し潰したねじ山に隣接するねじ溝部に移動させて(前記ねじ孔26のうちの外側面寄り部分で前記押し込み治具30a、30bを押し込んだ部分を塑性変形部31として)、当該ねじ溝部の幅寸法を小さくしている。即ち、このねじ溝部の幅寸法を、ボルト23cの雄ねじ部29(図2参照)のうちでこのねじ溝部に進入する部分に存在するねじ山の幅寸法よりも小さくしている。そして、前記雄ねじ部29を前記ねじ溝部に進入させる事に対し大きな抵抗が働く様にして、前記塑性変形部31を緩み止め部27bとしている。その他の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例及び上述した実施の形態の第2例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【0022】
[実施の形態の第4例]
図6は、請求項1、4に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、ねじ孔26のうちの外側面寄り部分に、合成樹脂や接着剤等の高分子材料を被覆し、この部分に被覆部32を設けている。この被覆部32の内径(ピッチ円直径)は、ボルト23cの雄ねじ部29(図2参照)の外径(ピッチ円直径)よりも小さくしている。そして、この雄ねじ部29を前記被覆部32部分に進入させる事に対し大きな抵抗が働く様にして、この被覆部32を緩み止め部27cとしている。その他の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1〜2例及び上述した実施の形態の第3例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、図示の様なプレスヨークに限らず、鍛造ヨークに関して実施する事もできる。即ち、一般的に鍛造ヨークはプレスヨークに比べて剛性が高い為、基部の直径を縮める為のボルトが緩みにくく、仮に緩んだ場合でもこのボルトに加わる曲げ方向の応力が低く抑えられる為、本発明の様な構造の必要性が、プレスヨークの場合に比べて低い。但し、鍛造ヨークの場合でも、本発明を適用する事で、薄肉による軽量化と、ボルトの耐久性確保との両立を図る為の設計の自由度が向上する。
【符号の説明】
【0024】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5 ステアリングシャフト
6 ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10 電動モータ
11 自在継手
12a、12b、12c ヨーク
13 十字軸
14a、14b、14c 基部
15a、15b 結合腕部
16a、16b、16c 第一フランジ部
17a、17b、17c 第二フランジ部
18a、18b、18c 不連続部
19a、19b、19c 座面部
20a、20b、20c 回転軸
21a、21b 円孔
22a、22b ラジアル軸受
23a、23b、23c ボルト
24a、24b ナット
25 通孔
26 ねじ孔
27、27a、27b、27c 緩み止め部
28、28a 凹部
29 雄ねじ部
30a、30b 押し込み治具
31 塑性変形部
32 被覆部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平8−284968号公報
【特許文献2】特開平10−2343号公報
【特許文献3】特開2000−320564号公報
【特許文献4】特開2004−223616号公報
【特許文献5】特開2008−298267号公報
【特許文献6】特開2009−8174号公報
【特許文献7】特公平7−88859号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の端部を結合固定する為の基部と、この基部の軸方向一端縁のうちで、この回転軸に関する直径方向反対側2箇所位置から軸方向に延出した1対の結合腕部と、これら両結合腕部の先端部に互いに同心に形成された1対の円孔とを備え、前記基部は、円周方向1箇所に不連続部を有する欠円筒状であって、この不連続部を挟んで設けられた第一、第二両フランジ部と、このうちの第一フランジ部に、前記基部の中心軸に対し捩れ位置の関係で形成された通孔と、同じく第二フランジ部の一部でこの通孔に整合する位置に形成された、この通孔を前記第一フランジ部の外側面側から内側面側に挿通したボルトの雄ねじ部を螺合させる為のねじ孔と、前記第一フランジ部の外側面で前記通孔の開口部を囲む部分に形成された座面部とを備えたものである十字軸式自在継手用ヨークに於いて、前記ねじ孔のうち、このねじ孔の軸方向に関して前記第二フランジ部の外側面寄り部分にのみ、前記ボルトの雄ねじ部を螺合させる事に対する抵抗となる緩み止め部を設けた事を特徴とする十字軸式自在継手用ヨーク。
【請求項2】
緩み止め部が、第二フランジ部の外側面の一部でねじ孔の開口周囲部分を押し潰す事によりこのねじ孔の一部を径方向内方に変位させた小径ねじ部である、請求項1に記載した十字軸式自在継手用ヨーク。
【請求項3】
緩み止め部が、ねじ孔の内周面を構成するねじ山の頂部を押し潰して当該ねじ山に隣接するねじ溝部の幅寸法を小さくした塑性変形部である、請求項1に記載した十字式自在継手用ヨーク。
【請求項4】
緩み止め部が、ねじ孔の内周面に軟質材を被覆した被覆部である、請求項1に記載した十字式自在継手用ヨーク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−220417(P2011−220417A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88878(P2010−88878)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】