説明

半シェルからなるディファレンシャルケース及びディファレンシャルケースを製造する方法

本発明は、回転軸線Aを有するディファレンシャルケースに関する。回転軸線A周りにディファレンシャルケースは、ディファレンシャルハウジング内で回転可能に支承可能である。ディファレンシャルケースは、第1の半シェル及び第2の半シェルを備える。半シェルは、それぞれ、1つの中央のキャリア区分と、2つの外側のベアリング区分とを備える。両半シェルは、ベアリング区分の領域において互いに結合されている。さらに本発明は、このようなディファレンシャルケースを備えるディファレンシャルアッセンブリに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属薄板部品から製造されているディファレンシャルケース、及びこのようなディファレンシャルケースを製造する方法に関する。上述の形式のディファレンシャルケースは、一般に、ディファレンシャルギヤセットを収容し、ディファレンシャル伝動装置の固定のハウジング内で回転軸線周りに回転可能に支承される。こうして形成されたディファレンシャルアッセンブリは、トルクを1つの入力軸から2つの出力軸へと分配するために役立つ。このとき、出力軸間で差動作用が生じる。例えば、このようなディファレンシャルアッセンブリは、自動車のパワートレーン内で1つの長手方向ドライブシャフトから2つのサイドシャフトにトルクを伝達するために使用される。ディファレンシャルケース内に収容されるディファレンシャルギヤセットは、一般に、ディファレンシャルケース内に回転可能に支承され、ディファレンシャルケースとともに回転軸線周りに公転する複数の差動ギヤと、互いに対向して位置し、回転軸線上に回転可能に支承される、前記差動ギヤと歯列を介して係合する2つのサイドシャフトギヤとを有する。
【0002】
DE4042173A1において、金属薄板からなる2部分構成のディファレンシャルケースを備えるディファレンシャルアッセンブリが公知である。両ケース部分は、互いに対面した外向きのフランジを備える。フランジは、それぞれ、その周囲をわたって共に1つのドライブギヤに当接している。両ケース部分は、中央平面に配置されているドライブギヤに、平行突合せ部が溶接されることによって結合されている。
【0003】
GB1461023Aは、鉢状のケース部分と蓋状のケース部分とを備える2部分構成のディファレンシャルケースを備えるディファレンシャルアッセンブリを開示している。両ケース部分は、互いに溶接されており、接合平面は、差動ギヤの回転軸線により画成される平面に関して外れた位置にある。
【0004】
US4183263において、2つの同一の半ハウジングを備えるディファレンシャルアッセンブリが公知である。両半ハウジングは、それぞれ、1つの中央の区分と、この中央の区分の片側に設けられた1つの半フランジとを備える。両ハウジング相互の結合は、ねじによって両半フランジに結合されるリングギヤを介して、かつ両半ハウジング上に被せ嵌められ、中央の区分に設けられたリング溝内に係合するスナップリングによってなされる。
【0005】
本発明の課題は、コンパクトに形成されており、簡単かつ安価に製造可能な、ディファレンシャル伝動装置、特に自動車のパワートレーン内で使用するためのディファレンシャル伝動装置のためのディファレンシャルケースを提案することである。さらに、本発明の課題は、このようなディファレンシャルケースを備えるディファレンシャルアッセンブリ、及びこのようなディファレンシャルケースを製造する簡単な方法を提案することである。
【0006】
上記課題を解決するための手段は、ディファレンシャルハウジング内で回転可能に支承するための回転軸線Aを有するディファレンシャルケースにおいて、第1の半シェル及び第2の半シェルを備え、半シェルが、それぞれ、1つの中央のキャリア区分と、ディファレンシャルケースを回転可能に支承するための2つの外側のベアリング区分とを備え、第1及び第2の半シェルがベアリング区分の領域において互いに結合されており、両ベアリング区分が回転軸線A周りのディファレンシャルケースの回転可能な支承のために役立つようにすることにある。
【0007】
本発明に係るディファレンシャルケースの利点は、簡単かつ安価に、唯2つのケース部分から製造可能である点にある。両ケース部分は、それぞれ、1つの部品から構成されており、特にシェル形状を有する。製造技術的に特に好ましいのは、例えば深絞り加工による金属薄板変形加工部品からの両半シェルの製造である。さらに、安価な製造にとって、両半シェルが同一に形成されていると有利である。この場合、両半シェルの接合平面あるいは分離平面は、回転軸線に対して略平行に位置しているか、あるいは回転軸線を含む。互いに対向して位置するキャリア区分には、差動ギヤが少なくとも間接的に保持される。その結果、差動ギヤは、ディファレンシャルケースとともに回転軸線周りに公転する。差動ギヤの公転は、例えば、キャリア区分に結合され、差動ギヤが回転可能に支承されているピンによってなされる。
【0008】
両半シェルは、有利には、互いに対向して位置する両キャリア区分間に、組み立てられた状態において組立開口が形成されており、この組立開口を通して、サイドシャフトギヤ及びディファレンシャルギヤがディファレンシャルケース内に装入され得るように構成されている。このために、半シェルは、キャリア区分の領域において半径方向外側に張り出すように形成されている。その際、キャリア区分の周方向延在長さは、ベアリング区分の周方向延在長さに略等しい。半シェルのベアリング区分は、組み立てられた状態において第1及び第2のベアリングスリーブを形成するように構成されている。ベアリングスリーブは、有利には、ディファレンシャルハウジング内でディファレンシャルケースを回転可能に支承するためのそれぞれ1つの軸受を被せ嵌めることができる筒状の外面を有する。
【0009】
有利な形態では、第1及び第2の半シェルが形状結合手段によって互いに結合されている。形状結合手段は、係合手段(Verklinkung)と呼ぶこともできる。形状結合手段は、有利には、アンダカットを備える切欠きを備え、この切欠き内には、対向して位置する半シェルの、真逆に形成された突出部が係合することができる。それぞれ一方の半シェルのウェブ及び突出部は、側面図で見て、互いに同じか、又は不同の輪郭を有していてよい。例えば、輪郭は、蛇行形、燕尾形又はこれらの混合形を有していてよい。形状結合手段を備える両半シェルの構成は、半シェルが簡単に直線状の接合運動によって互いに結合され得るという利点を有する。分離平面は、有利には、ディファレンシャルケースの回転軸線を含むか、又は回転軸線に対して平行に小さな間隔を置いて延びる平面内に位置する。
【0010】
有利な形態では、両ベアリングスリーブ内に、特にプレスばめによって装入されるブシュが設けられている。プレスばめされたブシュによって、ディファレンシャルケースはベアリングスリーブの領域に高い安定性を獲得する。このことは、寿命に関して有利に働く。さらに、このブシュは、サイドシャフトギヤに相対回動不能に結合されるサイドシャフトのための支承部として役立つ。ブシュは、有利には、対応するベアリングスリーブ内に嵌合するスリーブ区分と、このスリーブ区分を外方に拡幅した支持区分とを有する。支持区分は、半シェルに軸方向で支持されている。低摩擦又は長寿命にとって、ブシュが少なくとも部分領域において高い硬さを有していると有利である。例えば、表面硬化された金属薄板又は焼結金属が材料として考えられる。製造精度に対する要求の低い、簡単なディファレンシャルのためには、ブシュの代わりに、半シェルの適当な表面処理、例えば窒化が行われてもよい。
【0011】
さらに、上記課題を解決するための手段は、ディファレンシャルアッセンブリ、特に自動車のパワートレーン内で使用するためのディファレンシャルアッセンブリにおいて、上述の形態のいずれか1つを有していてよい本発明に係るディファレンシャルケースと、このディファレンシャルケース内に回転可能に保持されており、このディファレンシャルケースとともに回転軸線A周りに公転する複数のディファレンシャルギヤと、ディファレンシャルケース内で互いに対向して位置し、回転軸線上に回転可能に保持される、前記差動ギヤと歯列を介して係合する2つのサイドシャフトギヤとを備えるようにすることにある。
【0012】
本発明に係るディファレンシャルアッセンブリの利点は、本発明に係るディファレンシャルケースにより可能となる簡単な製造及び組立にある。2つの半シェルは、組み立てられた状態において、1つ又は2つの組立開口を形成する。この組立開口を通して、サイドシャフトギヤ及びディファレンシャルギヤを装入することができる。必要な構成部品は僅かであり、このことは、製造に関して有利に働く。有利には、両半シェルが、それぞれ、1つの共通の軸線上に位置する孔を備える。孔内には、ピンが差し込まれており、軸方向で保持されている。ピン上には、ディファレンシャルギヤが回転可能に支承されている。
【0013】
さらに、上記課題を解決するための手段は、本発明に係るディファレンシャルケースを製造する方法において、以下の方法ステップ、すなわち、
第1の金属薄板部品を変形加工して、第1の軸線に対して同軸的に配置されている2つの外側のベアリング区分と1つのキャリア区分とを備える第1の半シェルを形成し、
第2の金属薄板部品を変形加工して、第2の軸線に対して同軸的に配置されている2つの外側のベアリング区分と1つのキャリア区分とを備える第2の半シェルを形成し、かつ
第1の半シェルと第2の半シェルとをベアリング区分の領域で接合する、
という方法ステップを有するようにすることにある。
【0014】
この方法は、本発明に係るディファレンシャルケース又は本発明に係るディファレンシャルアッセンブリと同じ、簡単な製造の利点を提供する。第1及び第2の半シェルが同一であるとき、同一部品コンセプトの意味での特に安価な製造可能性が生じる。金属薄板部品は、打抜きによって、コイルからのブランクとして製造され得る。接合は、例えば溶接、特にレーザ溶接によってなされるか、又は互いに係合する形状結合手段によってなされるか、又はこれらの両可能性の組み合わせによってなされることができる。
【0015】
有利な形態では、前記変形加工前のさらなる方法ステップとして、
形状結合手段を金属薄板部品に形成し、
接合を、第1及び第2の軸線を平行に配向した状態で第1及び第2の半シェルを組み合わせるようにスライドさせ、形状結合手段を互いに係合させることによって行う。その際、接合方向は、半シェルの軸線に対して横方向である。横方向でのスライド後、形状結合手段には有利には圧力が加えられ、不都合な解離を防止する。その際、ベアリング区分は、塑性変形しないように、内側からマンドレルによって支持される。
【0016】
方法の有利な形態では、ブシュをベアリングスリーブ内に挿入する。ブシュとベアリングスリーブとの間には、特にプレスばめが形成されている。ブシュは、支承部の領域におけるディファレンシャルケースの強度を高め、ディファレンシャルケースを安定化する。
【0017】
以下に、有利な実施の形態について図面を参照にしながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るディファレンシャルケースの斜視図である。
【図2】図1に係るディファレンシャルケースの一方の半シェルの斜視図である。
【図3】図1に係る半シェルの形状結合手段を詳細に示す側面図である。
【図4】図1に係るディファレンシャルケースのための、燕尾状の輪郭を有する第1の変化例に係る形状結合手段を示す図である。
【図5】図1に係るディファレンシャルケースのための、蛇行状の輪郭を有する第2の変化例に係る形状結合手段を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る、ブシュを備えるディファレンシャルケースの斜視図である。
【図7】図3に係るブシュのa)斜視図であり、b)半割縦断面図である。
【図8】図3に係るディファレンシャルケースを備える本発明に係るディファレンシャルアッセンブリの縦断面図である。
【0019】
図1〜図3について以下にまとめて説明する。図1〜図3は、本発明に係るディファレンシャルケース2を示している。本発明に係るディファレンシャルケース2は、互いに形状結合(formschluessig:形状による束縛)式に結合されている第1の半シェル3と第2の半シェル4とからなる。
【0020】
第1及び第2の半シェル3,4は、ディファレンシャルケース2を通る横断平面に関して略鏡面対称に構成されており、それぞれ、1つの中央のキャリア区分5と、2つの外側のベアリング区分6,7とを備える。両半シェル3,4は、ベアリング区分6,7の領域で互いに結合されている。ベアリング区分6,7は、組み立てられた状態で2つのベアリングスリーブ8,9を形成する。ベアリングスリーブ8,9は、筒状あるいは円筒状であり、ディファレンシャルケース2をディファレンシャルハウジング内で回転軸線A周りに回転可能に支承するために、軸受手段、例えば転がり軸受の形態の軸受手段を受容するために役立つ。
【0021】
キャリア区分5は、略シェル状に構成されており、回転軸線Aに関して半径方向外側に位置する1つの支持区分12と、この支持区分12に続く、長手方向軸線Aに向かって接近する2つの移行区分13,14とを備える。移行区分13,14は、半径方向内側でベアリング区分6,7に結合されている。この形態によって、両半シェル3,4は、組み立てられた状態で2つの組立開口15を形成する。組立開口15を通して、ディファレンシャルギヤセットの、図示されていないギヤが組立可能である。半シェル3,4の形状又は半シェル3,4のキャリア区分5の形状によって、組立開口15は、略六角形の輪郭を有する。しかし、一般には、キャリア区分の形状は任意であって、ディファレンシャルギヤセットの所要スペースに適合される。半径方向外側に位置する区分12において、両半シェル3,4は、それぞれ1つの孔10を有する。孔10は、組み立てられた状態で1つの共通の軸線B上に位置する。互いに対向して位置する両孔10は、図示されていないピンを収容するために役立つ。このピン上には、ディファレンシャルギヤが回転可能に支承される。
【0022】
両半シェル3,4は、図示の実施の形態では同一に構成されている。このことは、同一部品コンセプトの観点で製造にとって好都合である。両半シェル3,4の接合平面あるいは分離平面は、長手方向軸線Aを含むか、あるいは長手方向軸線Aに対して僅かな間隔を置いて延びる長手方向平面内に位置する。第1及び第2の半シェル3,4が形状結合手段16,17によって互いに結合されていることは明らかである。特に図3から看取されるように、形状結合手段16,17は、それぞれ、アンダカットを備える切欠き18,21と、ふくらみを備える突出部19,20とを備える。切欠き18,21及び突出部19,20は、互いに相補的に構成されているので、形状結合式に互いに係合することができる。確実な結合のためには、複数の形状結合手段16,17がベアリング区分6,7の長さにわたって設けられており、切欠き18,21及び突出部19,20が特に長さにわたって交番するようになっていると有利である。図1〜図3に示した本実施の形態では、形状結合手段16,17が側面図で見て非対称的な輪郭を有している。すなわち、切欠き18,21及び突出部19,20は、それぞれ異なる形態に構成されている。
【0023】
しかし、図4及び図5を参照すれば、対称的な輪郭を備える、形状結合手段の別の形態も可能であることは明らかである。図4に示した実施の形態では、形状結合手段16′,17′が、燕尾状あるいは鳩尾状の輪郭を有して構成されている。その際、切欠き18′,21′と、切欠き18′,21′間に位置する突出部19′,20′とは、同一の輪郭を有している。図5に示した実施の形態では、形状結合手段16″,17″が蛇行状の輪郭を形成している。本実施の形態でも、切欠き18″,21″及び突出部19″,20″の輪郭は同一である。
【0024】
以下に、本発明に係るディファレンシャルケース2の製造について説明する。両半シェル3,4の原材料として、有利には金属薄板ブランクが使用される。金属薄板ブランクをまず所望のサイズに打ち抜く。その際、原材料としての金属薄板ブランクの輪郭は、半シェルの形成したい形状に適合されている。その限りでは、ブランクの形状は一般に任意であり、本実施の形態では略長方形の金属薄板ブランクが使用される。打抜き時に、形状結合手段16,17の輪郭、及びピンを収容するための孔10が既にブランク内に形成される。次に、ブランクを変形加工して、ベアリング区分と、ベアリング区分間に位置するキャリア区分とを備える半シェル3,4を形成する。
【0025】
続いて、こうして変形加工により製造された2つの半シェル3,4をベアリング区分6,7の領域で互いに結合する。結合は、第1及び第2のシェル軸線を平行に配向した状態で、第1及び第2の半シェル3,4を互いに組み合わせるようにスライドさせることによってなされる。こうして、一方の半シェル3,4の形状結合手段16,17は、他方の半シェル4,3の形状結合手段17,16に係合するので、両者は接合された状態において接線方向で働く力を受容することができる。この種の力は、ディファレンシャルのトルク伝達時に発生し、両半シェルを互いに逆方向に、半径方向で長手方向軸線Aから離れるように負荷する。半シェル3,4を形状結合手段16,17によって組み合わせるようにスライドさせ得るように、ここでは僅かな遊びを備えるはめあいが設けられていることが好ましい。組み合わせた後に、形状結合手段16,17に圧力を加える。このとき、塑性変形を避けるために、ベアリング区分6,7を内側からマンドレルによって支持する。形状結合手段をプレスにかけることによって、形状結合手段の不都合な解離が防止される。
【0026】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るディファレンシャルケースを示す。第2の実施の形態に係るディファレンシャルケースは、図1〜図3に示した実施の形態に略相当する。その点では、上述の説明の内容を全面的に引用することができ、同じ部材には同じ符号を付した。それゆえ、以下では、本実施の形態の特徴的な点についてのみ説明する。上述の実施の形態を発展させて、本実施の形態では、2つのブシュ22が設けられている。ブシュ22は、半シェル3,4の接合後に、接合により形成されるベアリングスリーブ8,9内に内側から挿入される。図7に単独で示したブシュ22は、ベアリングスリーブ8,9に対して締めしろを有するので、プレスばめによってベアリングスリーブ8,9内に固定されている。ブシュ22は、それぞれ、回転軸線Aに対して同軸的に、対応するベアリングスリーブ8,9内に装入されているスリーブ区分23と、半シェル3,4の対応する移行区分に軸方向で支持されている支持区分24とを備える。ブシュ22によって、ディファレンシャルケース2は、ベアリングスリーブ8,9の領域において、より大きな安定性を獲得する。さらに、ブシュ22は、サイドシャフトギヤに相対回動不能に結合されるサイドシャフト(図示せず)のために支承部として役立つ。ブシュ22は、有利には少なくとも部分領域において硬化されている。このことは、寿命に対して有利な影響を及ぼす。
【0027】
図8には、図6に示した本発明に係るディファレンシャルケース2を備えるディファレンシャルアッセンブリが示されている。その点では、ディファレンシャルケースに関して、上述の説明の内容を全面的に引用することができる。ディファレンシャルアッセンブリ25は、図示されていない固定の伝動装置ハウジング内で回転軸線A周りに回転可能に支承されており、自動車のパワートレーンにおける図示されていないドライブシャフトから、互いに差動作用を有する2つのサイドシャフトにトルクを伝達するために役立つ。トルクを導入するために、ディファレンシャルケース2にはドライブギヤ26が固定、具体的には特に溶接によって固定されている。ドライブギヤ26は、リングギヤの形態で構成されており、図示されていないドライブピニオンによって駆動される。
【0028】
さらに、ディファレンシャルアッセンブリは、互いに対向して位置する両孔10内に挿入され、通常の結合法によってディファレンシャルケース2に結合されているピン27を有する。ピン10上には、2つの差動ギヤ28がピン軸線B上に回転可能に支承されている。差動ギヤ28は、トルク伝達時にディファレンシャルケース2とともに回転軸線A周りに公転して、回転軸線Aに対して同軸的にディファレンシャルケース2内で回転可能に支承されているサイドシャフトギヤ29,30を駆動する。ディファレンシャルがベベルギヤ式ディファレンシャルの形態で構成されていることは明らかである。すなわち、差動ギヤ28と、差動ギヤ28に噛合するサイドシャフトギヤ29,30とは、傘歯車の形態で構成されている。サイドシャフトギヤ29,30は、それぞれ、対応するブシュ22に軸方向で支持されているので、トルク伝達時に作用する拡開力はディファレンシャルケース2によって受容される。サイドシャフトギヤ29,30は、それぞれ、内歯列を備える中央の孔31を備える。孔31内には、サイドシャフト(図示せず)がトルク伝達のために相対回動不能に差込可能である。
【0029】
本発明に係るディファレンシャルアッセンブリ25の利点は、安価に金属薄板変形加工部品からなる2つの半シェルから製造することができる、単純にあるいは簡単に構成されたディファレンシャルケース2にある。まず、予め組み立てられたディファレンシャルケース2内にサイドシャフトギヤ29,30を、組立開口15を通して挿入し、回転軸線Aに対して同軸的に方向付け、ディファレンシャルケース2に当接させる。続いて、サイドシャフトギヤ29,30に歯列を介して係合する差動ギヤ28を組み付ける。その後、両差動ギヤ28を支持するピン27を孔10内に差し込み、ディファレンシャルケース2に対して固定する。全体として、ディファレンシャルアッセンブリ25の製造は、接合前のケース部分の付加的な機械加工が不要であるので、簡単かつ安価である。
【符号の説明】
【0030】
2 ディファレンシャルケース
3 半シェル
4 半シェル
5 キャリア区分
6 ベアリング区分
7 ベアリング区分
8 ベアリングスリーブ
9 ベアリングスリーブ
10 孔
12 区分
13 移行区分
14 移行区分
15 組立開口
16 形状結合手段
17 形状結合手段
18 切欠き
19 突出部
20 突出部
21 切欠き
22 ブシュ
23 スリーブ区分
24 支持区分
25 ディファレンシャルアッセンブリ
26 ドライブギヤ
27 ピン
28 差動ギヤ
29 サイドシャフトギヤ
30 サイドシャフトギヤ
31 孔
A 回転軸線
B ピン軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線(A)を有するディファレンシャルケースにおいて、
第1の半シェル(3)及び第2の半シェル(4)を備え、該半シェル(3,4)が、変形加工により金属薄板から製造されており、それぞれ、1つの中央のキャリア区分(5)と、2つの外側のベアリング区分(6,7)とを備え、
前記第1及び第2の半シェル(3,4)が前記ベアリング区分(6,7)の領域において直接互いに結合されており、両ベアリング区分(6,7)が前記回転軸線(A)周りの当該ディファレンシャルケース(2)の回転可能な支承のために役立つことを特徴とする、ディファレンシャルケース。
【請求項2】
前記第1及び第2の半シェル(3,4)が形状結合手段(16,17)によって互いに結合されている、請求項1記載のディファレンシャルケース。
【請求項3】
前記第1及び第2の半シェル(3,4)が接合平面内で互いに結合されており、該接合平面が前記回転軸線(A)を含むか、又は該回転軸線(A)に対して平行に延びる、請求項1又は2記載のディファレンシャルケース。
【請求項4】
前記第1の半シェル(3)と前記第2の半シェル(4)とが同一に構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のディファレンシャルケース。
【請求項5】
前記形状結合手段(16,17)が、アンダカットを備える切欠き(18,21)と、該切欠き(18,21)に対して相補的な突出部(19,20)とを備え、該突出部(19,20)が前記切欠き(18)に係合する、請求項2記載のディファレンシャルケース。
【請求項6】
それぞれ一方の半シェル(3,4)の前記切欠き(18,21)及び前記突出部(19,21)の輪郭が互いに不同に構成されている、請求項5記載のディファレンシャルケース。
【請求項7】
それぞれ一方の半シェル(3,4)の前記切欠き(18,21)及び前記突出部(19,21)の輪郭が互いに同じに構成されている、請求項5記載のディファレンシャルケース。
【請求項8】
前記ベアリング区分(6,7)が、結合された状態において、それぞれ1つの軸受を受容するための第1及び第2のベアリングスリーブ(8,9)を形成する、請求項1から7までのいずれか1項記載のディファレンシャルケース。
【請求項9】
前記キャリア区分(5)が、組み立てられた状態において、サイドシャフトギヤ(29,30)及び差動ギヤ(28)を装入するための2つの組立開口(15)を形成する、請求項1から8までのいずれか1項記載のディファレンシャルケース。
【請求項10】
前記第1のベアリングスリーブ(8)内に装入されている第1のブシュ(21)と、前記第2のベアリングスリーブ(9)内に装入されている第2のブシュ(22)とを備える、請求項1から9までのいずれか1項記載のディファレンシャルケース。
【請求項11】
前記ブシュ(22)と前記ベアリングスリーブ(8,9)との間にプレスばめが形成されている、請求項10記載のディファレンシャルケース。
【請求項12】
両ブシュ(22)が、それぞれ、対応するベアリングスリーブ(8,9)内に装入されるスリーブ区分(23)と、前記半シェル(3,4)に軸方向で支持される支持区分(24)とを備える、請求項10又は11記載のディファレンシャルケース。
【請求項13】
前記ブシュ(22)が少なくとも一部区分で硬化されている、請求項10から12までのいずれか1項記載のディファレンシャルケース。
【請求項14】
ディファレンシャルアッセンブリにおいて、
請求項1から13までのいずれか1項記載のディファレンシャルケース(2)と、
該ディファレンシャルケース(2)内に回転可能に保持されており、該ディファレンシャルケース(2)とともに回転軸線(A)周りに公転する複数の差動ギヤ(28)と、
前記ディファレンシャルケース(2)内で互いに対向して位置し、前記回転軸線(A)上に回転可能に保持される、前記差動ギヤ(28)と歯列を介して係合する2つのサイドシャフトギヤ(29,30)と、
を備えることを特徴とする、ディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項15】
第1の半シェル(3)及び第2の半シェル(4)が、1つの共通の軸線(B)上に位置するそれぞれ1つの孔(10)を有しており、該孔(10)内にピン(27)が保持されており、該ピン(27)上に前記差動ギヤ(28)が回転可能に支承されている、請求項14記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項記載のディファレンシャルケースを製造する方法において、以下の方法ステップ、すなわち、
第1の金属薄板部品を変形加工して、第1の軸線に対して同軸的に配置されている2つの外側のベアリング区分(6,7)と1つのキャリア区分(5)とを備える第1の半シェル(3)を形成し、
第2の金属薄板部品を変形加工して、第2の軸線に対して同軸的に配置されている2つの外側のベアリング区分(6,7)と1つのキャリア区分(5)とを備える第2の半シェル(4)を形成し、かつ
前記第1の半シェル(3)と前記第2の半シェル(4)とを前記ベアリング区分(6,7)の領域で接合して、前記第1及び第2の半シェル(3,4)を直接互いに結合する、
という方法ステップを有することを特徴とする、ディファレンシャルケースを製造する方法。
【請求項17】
前記変形加工前のさらなる方法ステップとして、
形状結合手段(16,17)を前記金属薄板部品に形成し、
前記接合を、前記第1及び第2の軸線を平行に配向した状態で前記第1及び第2の半シェル(3,4)を組み合わせるようにスライドさせ、前記形状結合手段(16,17)を互いに係合させることによって行う、請求項16記載の方法。
【請求項18】
横方向での前記スライド後のさらなる方法ステップとして、
前記ベアリング区分(6,7)を内側からマンドレルによって支持しながら、前記形状結合手段(16,17)に圧力を加える、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
横方向での前記スライド後のさらなる方法ステップとして、
第1のブシュ(21)を第1のベアリングスリーブ(8)内に装入し、第2のブシュ(22)を第2のベアリングスリーブ(9)内に装入する、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a)】
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【図7b)】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−511221(P2011−511221A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544589(P2010−544589)
【出願日】平成20年12月6日(2008.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010362
【国際公開番号】WO2009/095056
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(504467521)ゲー カー エヌ ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】GKN Driveline International GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 130, D−53797 Lohmar, Germany
【Fターム(参考)】