説明

半導体ウェハの検査方法、及び半導体ウェハの検査装置

【課題】欠陥として抽出する画素の明るさの閾値を決めることを容易にして、真の欠陥を検出できる精度の高い検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】半導体ウェハ全体分の欠陥候補の数がわかっている参照画像を予め記憶し、検査画像を取得して画像比較検査により検出された検査画像の欠陥候補の数を記憶し、検査画像の欠陥候補の数より予め記憶された参照画像の欠陥候補の数の方が多い場合は、参照画像を検査画像で置き換え、これを半導体ウェハ全体分について実行して置き換えられた検査画像を参照画像として記憶し、次の半導体ウェハについては、記憶された参照画像と取得した検査画像とを比較して欠陥候補を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハを用いて半導体集積回路を製造する製造工程における検査方法、及び検査装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、設計された回路パターンを半導体ウェハに形成することで製造される。半導体ウェハに形成された回路パターンの形状の不良,異物や傷の付着等の欠陥の存在は、最終製品である半導体集積回路の電気的性能に影響するため、製造工程毎に半導体ウェハの検査を行い、製造工程の歩留まりを向上させる努力がなされている。
【0003】
検査装置には、光学式顕微鏡や電子顕微鏡の特性を応用した装置が開発されている。電子顕微鏡の場合には、真空雰囲気に維持された試料室内に半導体ウェハを搬入し、細く絞られた電子ビームを偏向して走査し、半導体ウェハから発生する二次電子等の二次信号を走査信号と同期させて検出することで、画像化できる。近年はディジタル技術の発達により、検出した二次信号を増幅した後ディジタル化して画像としてディスプレイへ表示することが行われている。検査は、取得した画像と同じ回路パターンの画像との輝度信号の差分をとると、違いのある画素の輝度信号が抽出できるので、この差分を欠陥候補とみなし、この欠陥候補の座標をデータとして出力する(例えば、特許文献1参照)。通常、画像の画素の輝度信号にはノイズ成分が重畳されているので、ノイズ成分を欠陥候補として抽出しないように閾値を設け、比較により得られた差分のうち、閾値を越えた差分の画素を欠陥候補として判定する。そして、検査工程では、欠陥候補が真の欠陥なのかどうかを確認するために、送信された欠陥候補の座標のデータに基づいて高倍率の画像を取得したり、欠陥の種類を分類したりするレビュー装置とよばれる観察装置が用いられる。
【0004】
半導体ウェハに形成される半導体集積回路は、半導体ウェハ1枚につき複数個形成されるので、半導体集積回路同士の画像を比較することで、回路パターンの形状の差を欠陥候補として検出することができる。この比較検査手法を、チップ比較、またはダイ比較とよぶ。また、1個の半導体集積回路には、メモリセルのような同じ回路パターンの繰り返しが存在する場合が多いので、この同じ回路パターン同士の画像を比較して、回路パターンの形状の差を欠陥候補として検出することができる。この比較検査手法をセル比較とよぶ。
【0005】
比較検査の場合、2つの画像の差分をとっただけでは、どちらの画像に欠陥候補が存在するかわからない。しかし、隣接する3個の画像を比較することにより、3個のうちのどれか1個に欠陥候補があった場合には、どれに欠陥候補があったかがわかる。例えば、1番目の画像と2番目の画像間で輝度信号に差があり、2番目の画像と3番目の画像間で輝度信号に差がない場合は、1番目の画像に欠陥候補が存在することがわかる。また、1番目の画像と2番目の画像間で輝度信号に差があり、2番目の画像と3番目の画像間でも輝度信号に差がある場合は、2番目の画像に欠陥候補が存在することがわかる。
【0006】
異物は、たまたまその場所に付着したという理由で、隣接する複数の画像の同じ座標で、欠陥候補として抽出される可能性は低い。したがって、上述の隣接する3個の画像の比較検査により、異物を検出することができる。しかし、例えば、露光時のマスクに欠陥があって、それがそのまま転写されて回路パターンが形成されるシステマティックな欠陥は、隣接する複数の画像の同じ座標に同じ欠陥が存在するので、上述の隣接する3個の画像の比較検査では、隣接する画像の両方に同じ欠陥が現れるため、輝度信号の差分をとっても差として抽出されないので、この欠陥を検出することができない。
【0007】
したがって、システマティックな欠陥を検出する場合は、参照画像として欠陥のない基準となる画像を用意し、検査装置で撮像した複数の画像とこの参照画像とを順に比較し、輝度信号の差が抽出された画像に欠陥が存在するとみなす手法が考えられている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この手法でも完全ではなく、半導体ウェハの全面を考えると、場所ごとの製造条件の違いによる出来映えのムラがあるため、ひとつの参照画像で半導体ウェハ全面分の画像と比較検査した場合、画像のノイズ成分の除去のために閾値を変えても、出来映えのムラも輝度信号に重畳しているので、欠陥候補に真の欠陥でないものが多く含まれてしまう可能性がある。
【0008】
半導体ウェハの全面にわたって回路パターンが均質に形成されているとは限らないことから、比較検査で得られた欠陥候補の半導体ウェハ全体に対する分布を解析する手法が考えられている(例えば、特許文献3参照)。例えば、欠陥候補が半導体ウェハの一部に集中して分布していたり、周辺部に多く中央部に少なく分布していたりする現象から、欠陥の種類と発生原因を推定するものである。しかし、得られた欠陥候補自体に出来映えのムラなどの真の欠陥ではないものが含まれていると、欠陥候補の分布の解析そのものが意味のないものになってしまう。
【0009】
また、半導体ウェハの回路パターンの形成工程は、成膜,レジスト塗布,露光,エッチング,平坦化加工などが繰り返される。これらの形成工程は、別々の装置で行われる。装置が別々であると、例えば、半導体ウェハを搭載するステージの傾き精度が異なるので、半導体ウェハに形成された膜厚が、半導体ウェハ全体では少しずつ異なってしまう。そうすると、膜厚が厚いところではエッチング不足が生じ、除去したい膜が残ってしまい、残膜の厚さが半導体ウェハ全体では少しずつ異なることになる。このような半導体ウェハを検査装置を用いて、前述の画像比較検査を行った場合、得られた画像の残膜に対応する画素の輝度は画像毎に少しずつ異なり、参照画像の輝度と同じではなくなってしまうため、両画像の比較により得られた差画像の輝度がまちまちになり、欠陥候補がこの輝度に埋もれて検出できなくなってしまう可能性がある。また、真の欠陥が存在する画像でも、真の欠陥の輝度信号にノイズ信号と上述の輝度信号のバラツキが重畳し、前述の欠陥と判定する閾値がひとつに決まらないため、閾値を上げると欠陥が抽出されず、閾値を下げると輝度信号のバラツキが欠陥候補として抽出されてしまう。その結果、数多くの真の欠陥でない欠陥候補の座標がレビュー装置へ送信されることになり、レビュー装置での解析作業に無駄な時間が費やされることになる。このように、半導体ウェハの製造品質が面内分布を持つことから、上述の従来の画像比較検査の手法だけでは、欠陥候補中に真の欠陥でないものが多数含まれることになり、欠陥の解析作業に多大な労力と無駄な時間が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−294345号公報
【特許文献2】特開2002−323307号公報
【特許文献3】特開2003−152045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、画像比較により検出される欠陥候補中の真の候補でないものを減らすことで、欠陥の解析作業の無駄な時間を減らすことができる検査方法,検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、半導体ウェハ全体分の欠陥候補の数がわかっている参照画像を予め記憶し、検査画像を取得して画像比較検査により検出された検査画像の欠陥候補の数を記憶し、検査画像の欠陥候補の数より予め記憶された参照画像の欠陥候補の数の方が多い場合は、参照画像を検査画像で置き換え、これを半導体ウェハ全体分について実行して置き換えられた検査画像を参照画像として記憶し、次の半導体ウェハについては、記憶された参照画像と取得した検査画像とを比較して欠陥候補を検出する構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、本発明によれば、画像比較により検出される欠陥候補中の真の候補でないものを減らすことができ、欠陥の解析作業の無駄な時間を減らした検査方法,検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電子顕微鏡を応用した半導体ウェハの検査装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】検査装置を用いた画像比較検査の手順を示すフローチャートである。
【図3】GUIの概要を示す画面図である。
【図4】参照ウェハ画像構築の概要を示す摸式図。
【図5】半導体ウェハの平面図である。
【図6】データメモリに記憶されたデータの構成を示す構成図である。
【図7】画像の一例における輝度信号を示すグラフである。
【図8】検査装置を用いた画像比較検査の手順を示すフローチャートである。
【図9】画像比較の概念を説明する模式図である。
【図10】検査装置を用いた画像比較検査の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を、電子顕微鏡を用いた半導体ウェハの検査装置を例に図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、電子顕微鏡を応用した半導体ウェハの検査装置の概略構成を示す縦断面図である。真空カラム101内のステージ109上に、半導体ウェハ110が配置され、電子銃102で発生された電子ビーム103が照射される。電子ビーム103は、集束レンズ104,105で集束され、対物レンズ107で細く絞られる。電子ビーム103が照射された半導体ウェハ110からは、2次電子などの2次信号が発生し、検出器106により検出される。
【0017】
電子ビーム103が照射される位置は、検出器106で検出した半導体ウェハの位置決めマーク,回路パターンや、位置センサ108で検出した位置情報に基づいて、マイクロプロセッサを備えた制御部112での演算により求められる。
【0018】
制御部112は、検出器106からの信号を処理して画像化するだけではなく、電子ビーム103の制御や、ステージ109の移動の制御も行う機能を有している。電子ビーム103は細く絞られているので、半導体ウェハ110の画像を取得するには、図示しない偏向器で電子ビーム103を偏向させて半導体ウェハ110の表面を走査する。
【0019】
制御部112の偏向制御部113は、上述の図示しない偏向器の偏向度合いを制御するとともに、偏向信号を画像処理部115へ送る。レンズ制御部114は、集束レンズ104,105,対物レンズ107のレンズ強度を調整する。
【0020】
画像処理部115は、偏向制御部113から送られた偏向信号に同期して、半導体ウェハ110で発生する信号を検出器106で検出する。また、検出した信号から画像を生成したり、画像同士を比較して画素信号の差を抽出する。ステージ制御部116は、ステージ109の移動を制御する。ステージ位置検出部117は、位置センサ108から送られるステージの位置を示す信号に基づいて、検出器106で検出した画像の指定された位置の座標を演算する。
【0021】
電子ビーム103の走査偏向信号に同期して検出器106で信号を取り込むとともに、そのときのステージ位置から、検出器で検出した信号が半導体ウェハ110のどの位置の画像なのかを決めることができるので、検出器106で検出した信号から半導体ウェハ110の画像を生成することができる。
【0022】
図示しない偏向器の偏向幅,偏向方向,偏向速度,レンズ制御値,信号検出タイミング,ステージ制御値は、PC121のインターフェースで指示することができ、生成された画像もPC121のインターフェースのディスプレイへ表示することができる。
【0023】
本実施例では、新たに、参照画像構築部118を設け、制御部112と接続している。参照画像構築部118には、検査画像や付帯データを記憶する記憶部119とインターフェース120とが接続されている。
【0024】
図2は、図1に示す検査装置を用いた参照画像構築の手順を示すフローチャートである。図3は、ユーザーとのインターフェース部であるGUIを示す画面図である。図4は、本発明のコア部分である参照画像構築の概略を示す模式図である。本実施例1では、図4に示した仮想ウェハ407の構築方法の一例を説明する。
【0025】
図2に示した参照画像構築の手順は、チップ比較検査の例を示すもので、以下の手順で開始される。1枚目の半導体ウェハが検査装置に搭載され、図3に示すGUI301の参照画像構築開始ボタン303をオペレータがONにすると、図4に示す1枚目の半導体ウェハ401の検査画像の取得が始まり、半導体ウェハのID,検査画像,その座標データを含む1枚目の検査画像の検出データが、画像処理部115に送られる(ステップ201)。画像処理部115は、検出データを受信し(ステップ202)、セル比較、あるいはチップ比較による欠陥候補の抽出が行われる(ステップ203)。検出データと欠陥候補の抽出の結果は、参照画像構築部118に送られる。
【0026】
記憶部119には、検査画像の座標と対応する座標の検出データ,欠陥候補の数を含む欠陥情報管理データの初期値とその参照画像とが予め記憶されている。簡単のために、初期値や参照画像をゼロのデータとしてもよい。参照画像構築部118では、送られた検出データの半導体ウェハのIDから、検出データが1枚目の半導体ウェハ401のものかどうかを判断する(ステップ204)。そして、1枚目の半導体ウェハ401のものであれば、記憶部119に記憶されている欠陥情報管理データの初期値を上書きして置き換え、検査画像データを記憶して参照画像とする(ステップ205)。以上の手順を検査対象画像のすべてについて行い、1枚目の半導体ウェハ401の、参照画像構築部118での処理が終了する(ステップ206)。
【0027】
2枚目の半導体ウェハ402についても、ステップ201からステップ204までは同様である。ステップ204では、1枚目の半導体ウェハではないと判断されるので、ステップ207へ進む。そして、各画像について、記憶部119に記憶された参照画像の欠陥候補の数より検査画像の欠陥候補の数の方が少ない場合は、ステップ205で記憶部119の欠陥管理情報データを上書きし、2枚目の半導体ウェハ402の検査画像データを新たな参照画像として記憶する。したがって、各参照画像は、欠陥候補の数が少ない方の画像で置き換えられる。参照画像の欠陥候補の数より検査画像の欠陥候補の数の方が多いか同じ場合は、参照画像構築部118での処理が終了する(ステップ206)。
【0028】
図4は、参照画像構築部118での処理を説明するためのもので、1枚目の半導体ウェハ401や2枚目の半導体ウェハ402の各チップの色が濃いチップ403は欠陥候補の数が多いチップ、色が付いていないチップ404は欠陥候補の数が少ないチップである。座標が同じチップ同士の欠陥候補の数を比較して、欠陥候補の数が少ない方のチップの画像だけから、新たな仮想ウェハ406を構築することができる。これを複数枚の半導体ウェハについて行うと、欠陥候補の数が少ないチップのみで構成された仮想ウェハ407を、記憶部119に構築することができる。
【0029】
この仮想ウェハ407の特徴は、半導体ウェハ上の同じ座標の画像の上書き更新を繰り返すことであり、これにより場所が変わることによる検査画像の出来映えの影響を排除できるので、真の欠陥を多く含む欠陥候補を得ることができる。
【0030】
なお、画像上書きの判断基準の例として、図2の例では、画像当りの欠陥候補の数に着目したが、画像のコントラストや分解能を判断基準に加えることで、参照画像として良好な画像を作成することができる。
【0031】
仮想ウェハ407が構築されたら、この各画像を参照画像とし、以降の半導体ウェハの検査では、同じ座標の検査画像と参照画像とを比較する手法を採用することで、半導体ウェハの製造品質の面内分布の影響を排除し、欠陥候補を検出するための輝度信号の閾値の変更を行わずに真の欠陥を抽出することができる。
【0032】
図5は、半導体ウェハの平面図であり、チップ比較検査の場合、半導体ウェハ110のチップ501について、座標を2つの角部で定義して記憶部119へ記憶させ、この座標に基づいてチップ501の画像を記憶させたり更新したりする。セル比較検査の場合も同様に、チップ501中の複数のセル502について、座標を2つの角部で定義して記憶部119へ記憶させ、この座標に基づいてセル502の画像を記憶させたり更新したりする。
【0033】
図6は、記憶部119のデータメモリに記憶された欠陥情報管理データの構成を示す構成図であり、欠陥情報管理データは、画像の領域を示す2つの座標,欠陥判別結果,欠陥候補の数,ウェハID,チップ比較とセル比較の別などの情報と、当該座標に付帯する画像データから構成されている。
【0034】
図6に示す欠陥情報管理データの1行目は、座標が(x0,y0)から(x1,y1)の領域である。この例では、領域を示すために、図5に示すチップ501の矩形の画像の左下の座標(x0,y0)と右上の座標(x1,y1)を採用している。また、図6の例では、この画像には欠陥候補が抽出されず、欠陥数はゼロ、このウェハIDは「番号110」、検査方法はチップ比較による結果であることがわかる。2行目では、座標が(x2,y2)から(x3,y3)の領域で、この画像には欠陥が1234個抽出され、このウェハIDは「番号110」、検査方法はチップ比較による結果であることがわかる。3行目では、座標が(x4,y4)から(x5,y5)の、図5に示すセル502の領域で、この画像には欠陥候補が抽出されず、このウェハIDは「番号110」、検査方法はセル比較による結果であることがわかる。
【0035】
このように、記憶部119に、検査画像の半導体ウェハ上の座標に対応したアドレスに検査画像データが記憶されるようにすることで、参照画像比較用の参照ウェハ画像の画像データが構築される。参照ウェハ画像の構築の状況は、PC121のディスプレイやインターフェース120により、オペレータへ知らせるようにする。また図3に示したGUI301の参照画像構築状況確認ボタン306を押すことで、半導体ウェハビュー302にチップ毎の欠陥候補の場所が模式的に表示されるので、欠陥候補が減少していく様子や、どのチップが参照画像として定義されたかどうかをオペレータは確認することができる。
【0036】
仮想ウェハの参照画像を良質な画像、すなわち、欠陥数がゼロもしくは少ない画像にするためには、検査画像の上書きのための半導体ウェハの検査枚数を多くすればよいが、すべての参照画像の欠陥をゼロにするのは困難なので、以下に示すように、参照画像の欠陥の有無とその座標の情報を利用して、検査画像の欠陥を検出することができる。
【0037】
図7は、画像の一例における輝度信号を示すグラフであり、図7(a)に示す参照画像701に、欠陥候補702,703が含まれているとする。図7(b)は、図7(a)の断面704を横軸に、輝度信号を縦軸にとったものであり、欠陥候補702は輝度信号705、欠陥候補703は輝度信号706である。図7(c)は、検査画像の一例を示し、輝度信号707は図7(a)に示す参照画像中の欠陥候補702と同じ座標に欠陥候補があったときに生じ、輝度信号708は、図7(a)に示す参照画像中にない欠陥候補があったときに生じる。図7(d)は、参照画像と検査画像の差をとったもので、図7(b)の輝度信号705と図7(c)の輝度信号707は同じ座標で同じ大きさなので、図7(d)に示す差画像には現れない。図7(b)に示す参照画像の輝度信号706を生じさせる欠陥候補は、図7(c)に示す検査画像には存在しないので、図7(d)に示す差画像には、輝度信号709として現れる。図7(c)の検査画像に存在する欠陥候補による輝度信号708は、図7(b)に示す参照画像にはその欠陥候補が存在しないので、図7(d)に示す差画像には、輝度信号710として現れる。
【0038】
したがって、参照画像に存在する欠陥候補702の差画像中の座標に、欠陥候補の存在を示す輝度信号が現れない、あるいは小さい輝度信号の場合は、検査画像にも同じ欠陥候補702が存在するものと判断できる。また、差画像中で、参照画像で存在がわかっている欠陥候補703の座標に欠陥候補の存在を示す輝度信号が現れる場合は、検査画像には欠陥候補が存在しないと判断できる。また、差画像中で、参照画像に欠陥候補がない座標に欠陥候補を示す輝度信号が現れた場合は、検査画像に欠陥候補が存在すると判断できる。
【0039】
このように、参照画像中の欠陥の座標,大きさなどの特徴量は予めわかっているので、参照画像との比較検査で抽出された差画像について、参照画像中の欠陥の画素を除く残りの画素について、欠陥の有無の判定を行い、次に、参照画像中の欠陥の座標の画素について、差が小さい場合は検査画像中に欠陥があるものとして判定する。このようにすれば、参照画像から構成された仮想ウェハの参照画像の欠陥数をゼロにしなくても、参照画像との比較検査を行うことができる。
【実施例2】
【0040】
図8は、図1に示す検査装置を用いた画像比較検査の手順を示すフローチャートである。本実施例2では、前述した実施例1にて構築され、記憶部119に記憶された仮想ウェハ407の参照画像を用いた半導体ウェハのチップ比較検査を説明する。図3に示したGUI301の参照画像比較検査開始ボタン304をオペレータがONにすることで、検査が開始される(ステップ801)。図1に示した画像処理部115は、半導体ウェハの検査画像とその座標データを受信すると(ステップ802)、検査画像の座標に対応する座標の参照画像を、参照画像構築部118から呼び出す(ステップ803)。次に、検査画像と参照画像とを比較し、輝度信号に閾値以上の差があれば欠陥候補として抽出する(ステップ804)。その検査結果は、PC121のディスプレイやインターフェース120に出力し、オペレータへ知らせるようにする(ステップ805)。このように、図4に示される仮想ウェハ407の参照画像を用いて欠陥検査を行うことで、前述した半導体ウェハの製造品質の面内分布の影響を排除した欠陥検出を行うことができ、精度の高い画像比較検査が可能になる。
【0041】
図9は、本発明の効果を説明する図で、画像比較の概念を説明する模式図である。図9(a)は、チップ比較検査やセル比較検査を示し、欠陥候補を抽出したい検査対象の検査画像901と、これに隣り合った2つの検査画像902,903のうちの検査画像902とを比較し、輝度信号の閾値を越える差のある画素を抽出する。これが1回目の画像比較である。次に、検査画像901と検査画像903とを比較し、輝度信号の閾値を越える差のある画素を抽出する。これが2回目の画像比較である。そして、検査画像901に欠陥候補があり、検査画像902,903に欠陥候補がない場合は、1回目の比較で差が存在し、2回目の比較でも差が存在するので、検査画像901に差の原因である欠陥候補904が存在することがわかる。このように、比較検査では、3つの検査画像を使用して2回の画像比較を行って、1つの検査画像の欠陥候補の有無がわかる。
【0042】
一方、図9(b)は、参照画像比較を示し、検査画像905と参照画像906とを比較し、参照画像906には欠陥候補がないので、検査画像905に欠陥候補907がある場合は、輝度信号の閾値を越える差のある画素が抽出される。このように、参照画像比較は、1つの検査画像の欠陥候補を抽出するために1回の画像比較を行うだけでよい。
【0043】
このように、参照画像比較は、従来のチップ比較やセル比較に比べて、画像比較回数が半分でよいので、画像データの転送量や画像比較処理量が大幅に減り、検査装置の検査時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0044】
前述の実施例2では、構築された仮想ウェハ407の参照画像を用いた参照画像比較検査について説明した。この参照画像比較検査は、半導体ウェハの面内製造品質のバラツキを考慮して、座標を加味した参照画像を構築しているので、高精度な欠陥検査,高スループットを提供でき、欠陥検査には有効な画像比較検査方法である。
【0045】
しかし、前述の実施例1にて説明したように、検査の最初は仮想ウェハ407を構築するためのチップ比較検査またはセル比較検査が必要であり、何枚の半導体ウェハを検査したら仮想ウェハが構築できるのかがわからない。検査時間の短縮と検査精度の向上をはかるために、できるだけ早く参照画像比較検査に移行することが必要である。
【0046】
本実施例3は、半導体ウェハの欠陥検査を実行するにあたり、チップ比較検査またはセル比較検査と、参照画像比較検査の適した方を選択しながら、欠陥検査を行う例である。本実施例では、出来る限り参照画像比較検査を選択する構成になっており、仮想ウェハ407の参照画像の構築度合いを考慮せずに、従来よりも検査時間が短く、精度の高い検査を実行することができる。
【0047】
図10は、検査装置を用いた画像比較検査の手順を示すフローチャートであり、半導体ウェハ1枚の1つの検査画像についての手順である。図3に示したGUI301の欠陥検査及び参照画像構築開始ボタン305をONにすることで、検査が開始される(ステップ1001)。図1に示した画像処理部115は、1枚目の半導体ウェハの検査画像とその座標データを受信し、この座標データ,ウェハID,検査画像などのデータを、参照画像構築部118に送る(ステップ1002)。画像処理部115と参照画像構築部118では、送られたデータが1枚目の半導体ウェハのものかどうかを、ウェハIDに基づいて判断し(ステップ1003)、1枚目であれば、その検査画像の欠陥検査には、チップ比較検査またはセル比較検査を適用する(ステップ1004)。次に、ウェハID,欠陥検査結果、欠陥候補の数などのデータを、図2で説明したように、欠陥情報管理データの初期値に上書きして置き換え、検査画像を参照画像として記憶する(ステップ1005)。そして、検査結果を、PC121のディスプレイやインターフェース120に出力し、オペレータへ知らせるようにする(ステップ1006)。以上のステップを、1枚目の半導体ウェハの検査対象領域の全てについて行う。
【0048】
1枚目の半導体ウェハの検査が終了したら、2枚目の検査を開始する(ステップ1001)。図1に示した画像処理部115は、1枚目の半導体ウェハの検査画像とその座標データを受信し、ウェハID,検査画像,座標データなどを、参照画像構築部118に送る(ステップ1002)。画像処理部115と参照画像構築部118では、送られたデータが1枚目の半導体ウェハのものかどうかを、ウェハIDに基づいて判断し(ステップ1003)、1枚目でなければ、2枚目の半導体ウェハの検査画像の座標に対応する参照画像に欠陥候補があるかないかを、記憶部119に記憶された欠陥情報管理データより判断する(ステップ1007)。参照画像に欠陥候補がある場合は、当該座標の検査画像の欠陥検査にチップ比較検査またはセル比較検査を適用する(ステップ1008)。そして、比較検査の結果得られた2枚目の半導体ウェハの当該検査画像の欠陥候補の数と、記憶部119に記憶された当該座標に対応する参照画像の欠陥候補の数の比較を行う(ステップ1009)。検査画像の方が参照画像よりも欠陥候補の数が少ない場合は、記憶部119に記憶された欠陥情報管理データの当該座標に対応する欠陥情報管理データを上書きし、検査画像を参照画像とする(ステップ1005)。そして、当該座標の検査結果情報及び参照画像が上書きされたことを示すメッセージをPC121のディスプレイやインターフェース120により、オペレータへ知らせる(ステップ1006)。
【0049】
ステップ1007で、2枚目の半導体ウェハの検査画像の座標に対応する参照画像に欠陥候補がない場合は、画像処理部115は、検査画像と参照画像との比較検査を行い(ステップ1010)、当該座標の検査結果情報及び参照画像が上書きされたことを示すメッセージをPC121のディスプレイやインターフェース120により、オペレータへ知らせる(ステップ1006)。以上のステップを、2枚目の半導体ウェハの検査対象領域の全てについて行う。
【0050】
このように、本実施例3では、1枚目の半導体ウェハの欠陥検査を行いながら検査対象領域における参照画像、及びウェハID,欠陥検査結果,欠陥候補の数などの欠陥情報管理データを構築した後、2枚目以降の半導体ウェハでは、座標毎にチップ比較検査またはセル比較検査と参照画像比較検査の適した方を選択しながら、半導体ウェハの検査を自動的に行うことができるので、オペレータが更新される参照画像に欠陥候補がなくなったかどうかを確認する必要がない。そして、欠陥検査を行えば行うほど、参照画像が欠陥候補の少ない画像に更新されていき、その結果、精度が高く画像比較処理量が少ない参照画像比較検査を行う頻度を高めることができる。
【0051】
図10に示した手順のうちのステップ1004、及びステップ1008は、隣接するチップ同士を比較するチップ比較検査、またはチップ内の隣接するセル同士を比較するセル比較検査を示しているが、予め1つのチップの画像、またはセルの画像を準備し、これらの画像と検査画像の比較検査を行っても、図10に示した実施例3と同じ効果を得ることができる。
【0052】
以上述べたように、本発明の実施態様によれば、画像比較により検出される欠陥候補中の真の欠陥でないものを減らすことができる検査方法、及び検査装置を提供でき、レビュー装置へ送信される欠陥候補の数が少なくなり、レビュー装置での欠陥の解析作業の無駄な時間を減らすことができる。
【符号の説明】
【0053】
110 半導体ウェハ
112 制御部
115 画像処理部
118 参照画像構築部
119 記憶部
120 インターフェース
121 PC
302 半導体ウェハビュー
303 参照画像構築開始ボタン
304 参照画像比較検査開始ボタン
305 欠陥検査及び参照画像構築開始ボタン
306 参照画像構築状況確認ボタン
406,407 仮想ウェハ
501 チップ
502 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハに光または電子ビームを照射して画像を得、該画像中の欠陥候補を検出する半導体ウェハの検査方法において、
前記光または電子ビームの照射により検出した検査画像の座標に対応する座標の参照画像、及び該参照画像のウェハID,欠陥検査結果,欠陥候補の数を含む欠陥情報管理データを予め記憶しておき、
前記検査画像の欠陥候補を検出し、
前記参照画像の欠陥候補の数が前記検査画像の欠陥候補の数より多い場合は、該参照画像を該検査画像に置き換えるとともに、該参照画像の欠陥情報管理データを該検査画像の欠陥情報管理データに置き換えることを特徴とする半導体ウェハの検査方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記検査画像の欠陥候補の検出工程は、前記光または電子ビームの照射により検出した第1画像と、該第1画像の領域に隣接する領域で得られた第2画像とを比較し、画像信号の差を欠陥候補として検出することを特徴とする半導体ウェハの検査方法。
【請求項3】
請求項1の記載において、
前記検査画像の欠陥候補の検出工程は、前記光または電子ビームの照射により検出した第1画像と、予め記憶された第3画像とを比較し、画像信号の差を欠陥候補として検出することを特徴とする半導体ウェハの検査方法。
【請求項4】
請求項3の記載において、
前記第1画像は複数であり、前記第3画像は1つであることを特徴とする半導体ウェハの検査方法。
【請求項5】
請求項1の記載において、
前記参照画像の欠陥候補の数が前記検査画像の欠陥候補の数より少ない場合は、該検査画像の欠陥情報管理データを出力することを特徴とする半導体ウェハの検査方法。
【請求項6】
請求項1の記載において、
前記光または電子ビームの照射により検出した検査画像の座標に対応する座標の参照画像に欠陥候補が存在しない場合は、
該参照画像と前記検査画像とを比較して該検査画像の欠陥候補を検出し、
該検査画像の欠陥情報管理データを出力することを特徴とする半導体ウェハの検査方法。
【請求項7】
半導体ウェハに光または電子ビームを照射して画像を得、該画像中の欠陥候補を検出する半導体ウェハの検査装置において、
前記光または電子ビームの照射により検出した検査画像の座標に対応する座標の参照画像、及び該参照画像のウェハID,欠陥検査結果,欠陥候補の数を含む欠陥情報管理データを予め記憶する記憶部と、
前記検査画像の欠陥候補を検出する画像処理部と、
前記参照画像の欠陥候補の数が前記検査画像の欠陥候補の数より多い場合は、該参照画像を該検査画像に置き換えるとともに、該参照画像の欠陥情報管理データを該検査画像の欠陥情報管理データに置き換える参照画像構築部とを備えたことを特徴とする半導体ウェハの検査装置。
【請求項8】
請求項7の記載において、
前記検査画像の欠陥候補を検出する画像処理部は、前記光または電子ビームの照射により検出した第1画像と、該第1画像の領域に隣接する領域で得られた第2画像とを比較し、画像信号の差を欠陥候補として検出することを特徴とする半導体ウェハの検査装置。
【請求項9】
請求項7の記載において、
前記検査画像の欠陥候補を検出する画像処理部は、前記光または電子ビームの照射により検出した第1画像と、予め記憶された第3画像とを比較し、画像信号の差を欠陥候補として検出することを特徴とする半導体ウェハの検査装置。
【請求項10】
請求項9の記載において、
前記第1画像は複数であり、前記第3画像は1つであることを特徴とする半導体ウェハの検査装置。
【請求項11】
請求項7の記載において、
前記画像処理部は、前記参照画像の欠陥候補の数が前記検査画像の欠陥候補の数より少ない場合は、該検査画像の欠陥情報管理データを出力することを特徴とする半導体ウェハの検査装置。
【請求項12】
請求項7の記載において、
前記光または電子ビームの照射により検出した検査画像の座標に対応する座標の参照画像に欠陥候補が存在しない場合は、
前記画像処理部は、前記参照画像と前記検査画像とを比較して該検査画像の欠陥候補を検出し、該検査画像の欠陥情報管理データを出力することを特徴とする半導体ウェハの検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate