説明

半導体ウェーハの製造方法

【課題】 パターニングされた半導体ウェーハの裏面側を研削した後に、当該半導体ウェーハの反りおよび破損を防止して、次工程に搬送することが可能な半導体ウェーハの製造方法を提案する。
【解決手段】 パターニングされた半導体ウェーハ1の表面側のパターン面をキャリアプレート2に貼着し、当該半導体ウェーハ1の裏面1b側を研削して厚さ寸法を50〜120μmにした後に、当該裏面1b側を真空吸着し、半導体ウェーハ1をキャリアプレート2から剥離して、表面1a側のパターン面に表面保護シート6を貼着し、次いで裏面1b側の吸着を外して半導体ウェーハ1を反転し、裏面1b側に裏面保護シート7を貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどに用いられる半導体ウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省電力化に伴い、液晶テレビやパソコン用の液晶ディスプレイのバックライトにLEDが多用されている。また、省エネルギーや節電の観点から、一般の照明においてもLEDが用いられてきている。このため、今後益々LEDの需要が見込まれ、成長産業の一つとなっている。
【0003】
ところで、このLED用の半導体ウェーハには、単結晶サファイア基板が多く使用されている。従来、この単結晶サファイアは、機械的・熱的特性、化学反応特性、光透過性などの特性を生かした一部の用途のみに使用されていた。これは、単結晶サファイア自体が高価であり、また大量に使用される用途自体が少なかったため、生産性と結晶品質とを満足させる技術の開発がなされず、飛躍的な普及も至ったらなかったからである。
【0004】
しかし、この単結晶サファイアは、近年の技術進歩に伴い安価で、かつ安定量産が可能となり、広く工業材料として普及するようになった。その中でも特に、青色・白色LEDを製造するためのGaN(窒化ガリウム)を成長させる基板や、液晶プロジェクタの輝度向上に必須の偏光子保持基板として、大量に使用されるようになったことで、量産技術確立に拍車が掛かったと言える。
【0005】
この単結晶サファイアを用いたサファイアウェーハを製造する方法は、まず、サファイア基板の上にフォトレジストをマスクして、PSSと呼ばれる3μm程度の大きさのドットパタンを形成する。そして、化合物半導体をMOCVDで堆積し、最上部は透明導電膜を付着させて、一部分をメサ状にエッチングし、電極を取り付けて、表面に保護シートを貼着した後に、レザーによってダイシングして、パッケージする。
【0006】
なお、上記化合物半導体は、二つ以上の元素を組み合わせることにより製作されるもので、組み合わせを変えることによって、多くの種類の半導体を作製することが可能となる。この化合物半導体としては、例えば、電子移動度が大きいヒ化ガリウム(GaAs)やバンドギャップの大きい窒化ガリウム(GaN)などが挙げられる。
【0007】
上記サファイアウェーハの製造においては、実装パッケージの小型化に伴い、半導体ウェーハの研削仕上げの厚さ寸法も薄くなってきている。そのため、図2に示すように、パターニングされた半導体ウェーハ10の表面10a側のパターン面をキャリアプレート20に貼着して、当該半導体ウェーハ10の裏面10b側を研削手段90によって、所定の厚さ寸法に研削した後に、キャリアプレート20をホットプレート80上に載置して、110℃の熱で接着剤を溶融させ、作業員が手作業によりホットプレート80から半導体ウェーハ10を取り外していた。
【0008】
しかし、半導体ウェーハ10を、ホットプレート80上において、加熱しながら手作業でキャリアプレート20から取り外す際に、半導体ウェーハ10に無理な力や衝撃が掛かり、半導体ウェーハ10が反って平坦度を保つことができないだけでなく、最悪の場合には、半導体ウェーハ10自体が破損してしまう。このため、品質の向上や生産性の向上が見込めないという問題がある。
【0009】
また、キャリアプレート20から取り外した後に、洗浄槽40において半導体ウェーハ10の表面10aおよび裏面10bを洗浄する際に、当該半導体ウェーハ10が反ってしまい、洗浄後に表面保護シート60を表面面10aに、また裏面保護シート70を裏面10bに貼着する際に、半導体ウェーハ10が破損してしまうという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、パターニングされた半導体ウェーハの裏面側を研削した後に、当該半導体ウェーハの反りおよび破損を防止して、次工程に搬送することが可能な半導体ウェーハの製造方法を提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、パターニングされた半導体ウェーハの表面側のパターン面をキャリアプレートに貼着し、当該半導体ウェーハの裏面側を研削して厚さ寸法を50〜120μmにした後に、当該裏面側を真空吸着し、上記半導体ウェーハを上記キャリアプレートから剥離して、上記表面側のパターン面に表面保護シートを貼着し、次いで上記裏面側の吸着を外して上記半導体ウェーハを反転し、上記裏面側に裏面保護シートを貼着することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記半導体ウェーハの上記裏面側を真空吸着して上記半導体ウェーハを上記キャリアプレートから剥離した後に、上記パターン面を洗浄して当該パターン面に上記表面保護シートを貼着し、次いで上記裏面側の吸着を外した後に上記半導体ウェーハを反転して、上記表面保護シートが貼着された上記パターン面を真空吸着し、上記裏面側を洗浄して当該裏面側に上記裏面保護シートを貼着することを特徴とするものである。
【0013】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記半導体ウェーハが、サファイアウェーハであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3に記載の発明によれば、半導体ウェーハの表面側のパターン面をキャリアプレートに貼着して、当該半導体ウェーハの裏面側を研削した後、当該裏面側を真空吸着して、上記半導体ウェーハを上記キャリアプレートから剥離するため、上記裏面側を研削することにより厚さ寸法が薄くなった上記半導体ウェーハに、無理な力や衝撃を与えることなく剥離することができるとともに、上記半導体ウェーハが反ることがない。これにより、上記半導体ウェーハが破損しやすいサファイアウェーハであっても、効率的に剥離させることができるとともに、平坦度が求められる上記半導体ウェーハの歩留まりを良くして、品質向上に繋げることができる。
【0015】
また、上記半導体ウェーハを反転する前に、上記表面側のパターン面に上記表面保護シートを貼着するため、上記半導体ウェーハを反転した後に、上記表面側の上記パターン面を真空吸着することができる。この結果、上記半導体ウェーハを洗浄および移動する際のハンドリング性を向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、上記半導体ウェーハの上記裏面側を真空吸着して、上記半導体ウェーハを上記キャリアプレートから剥離した後に、上記裏面側を真空吸着した状態のまま、上記表面側を洗浄して当該表面に上記表面保護シートを貼着し、次いで上記裏面側の吸着を外した後に、上記半導体ウェーハを反転して、上記表面保護シートが貼着された上記表面を真空吸着し、上記裏面側を洗浄して当該裏面側に上記裏面保護シートを貼着するため、上記裏面側を研削して、厚さ寸法が薄くなった上記半導体ウェーハを、洗浄槽において上記表面側および上記裏面側を洗浄する際に、上記半導体ウェーハが反ることがなく、上記保護シートを貼着する際の上記半導体ウェーハの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の半導体ウェーハの製造方法の一連の工程を模した工程図である。
【図2】従来の半導体ウェーハの製造方法の一連の工程を模した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の半導体ウェーハ1の製造方法の一実施形態に用いられる装置は、パターニングされた半導体ウェーハ1の表面1a側のパターン面を貼着するキャリアプレート2と、半導体ウェーハ1の裏面1b側を研削する研削手段9と、半導体ウェーハ1の表面1a側および裏面1b側を真空吸着するロボットハンド3と、キャリアプレート2に貼着された半導体ウェーハ1の粘着剤を溶解するホットプレート8と、半導体ウェーハ1の表面1a側のパターン面、および半導体ウェーハ1の裏面1b側を洗浄する洗浄槽4と、半導体ウェーハ1を反転する反転機5とから概略構成されている。
【0019】
ここで、半導体ウェーハ1は、単結晶サファイアを用いたサファイアウェーハ1である。このサファイアウェーハ1に用いられる上記単結晶サファイアは、機械的・熱的特性、化学的安定性、光透過性などの優れた特性を有することから、人工的に育成された不純物の少ない高純度単結晶サファイアが用いられている。また、この単結晶サファイアは、アルミナ(Al22)の結晶体である。
【0020】
また、キャリアプレート2上は、例えば、セラミックスなどの耐熱性の素材から形成されている。このキャリアプレート2の上面には、サファイアウェーハを固定する接着剤が塗布されている。この接着剤は、加熱することにより溶融するタイプの接着剤が使用されている。
【0021】
そして、研削手段9は、例えば、砥石が回転することにより、サファイアウェーハ1の裏面1bを研削する平面研削盤が用いられる。この平面研削盤は、高平坦度研削および低ダメージ研削が可能なものが望ましい。
【0022】
さらに、ホットプレート8は、耐熱性を有するプレートの内部に、通電することにより、110℃以上に加熱可能な電熱線を備えている。また、サファイアウェーハ1を真空吸着するロボットハンド3には、サファイアウェーハ1の表面1aおよび裏面1bを吸着可能な真空吸着パッドが設けられている。この真空吸着パッドには、複数の小孔が形成されているとともに、サファイアウェーハ1の表面1aおよび裏面1bの全面を真空吸着可能な大きさに形成されている。
【0023】
また、サファイアウェーハ1の表面1aおよび裏面1bを洗浄する洗浄槽4には、サファイアウェーハ1に付着したパーティクル、金属不純物、有機不純物を除去するために、例えば、アンモニア過酸化水素水、塩酸過酸化水素水、希フッ酸などからなる薬液が注入されている。
【0024】
そして、反転機5は、回動自在に設けられたテーブル5aが設けられている。このテーブル5aには、サファイアウェーハ1を保持するとともに、テーブル5aを回動させて、サファイアウェーハ1を反転させた後に、サファイアウェーハ1の保持を解除可能な保持手段が設けられている。
【0025】
以上の構成からなる半導体ウェーハ1の製造装置を用いて、サファイアウェーハ1を製造するには、まず、パターニングされたサファイアウェーハ1の表面1a側のパターン面を下にして、キャリアプレート2の上面に載置する。この際に、キャリアプレート2の上面には、接着剤が塗布されているため、サファイアウェーハ1が、キャリアプレート2に貼着される。
【0026】
次いで、サファイアウェーハ1の裏面1b側を、研削手段9、例えば、砥石の回転により研削可能な平面研削盤を用いて、サファイアウェーハ1の厚さ寸法を50〜120μmの厚さ、好ましくは50μmの厚さ寸法に研削する。そして、サファイアウェーハ1の研削した裏面1b側を、ロボットハンド3を用いて真空吸着し、ホットプレート8までキャリアプレート2ごと移動させる。
【0027】
そして、ロボットハンド3にサファイアウェーハ1を吸着した状態のまま、キャリアプレート2をホットプレート8に載置して、ホットプレート8のスイッチをONにし、電熱線を通電させて、キャリアプレート2を加熱する。この際に、ホットプレート8は、110℃まで昇温させる。この加熱により、キャリアプレート2とサファイアウェーハ1を貼着している接着剤が溶融する。そして、サファイアウェーハ1を吸着しているロボットハンド3を横にずらして、キャリアプレート2からサファイアウェーハ1を剥離させる。この際、ロボットハンド3の真空吸着パッドが、サファイアウェーハ1の裏面1bの全面を吸着しているため、サファイアウェーハ1の平坦度を保持したまま剥離することができる。
【0028】
さらに、キャリアプレート2から剥離したサファイアウェーハ1をロボットハンド3により吸着した状態のまま、薬液が入った洗浄槽4に移動して、サファイアウェーハ1の表面1a側を洗浄する。この洗浄により、サファイアウェーハ1に付着したパーティクル、金属不純物、有機不純物が除去される。この際に、サファイアウェーハ1は、平坦度が保持された状態で、ロボットハンド3の上記真空吸着パッドに吸着されているため、サファイアウェーハ1が反ることがない。
【0029】
次に、洗浄槽4からサファイアウェーハ1をロボットハンド3に吸着した状態のまま取り出して、乾燥させる。そして、サファイアウェーハ1をロボットハンド3に吸着した状態のまま反転機5に移動するとともに、この反転機5の回動自在に設けられたテーブル5aに載置して、サファイアウェーハ1の表面1aの上記パターン面に表面保護シート6を貼着させる。この表面保護シート6には、予め接着剤が塗布されているため、容易に貼着することができる。
【0030】
そして、サファイアウェーハ1の裏面1b側を吸着しているロボットハンド3の吸着を外し、反転機5のテーブル5aにサファイアウェーハ1を保持手段により保持して、テーブル5aを回動させる。この回動により、テーブル5aに保持されたサファイアウェーハ1の裏面1b側が下側に位置した状態で反転し、上記保持手段を解除して、反転されたサファイアウェーハ1の表面1aを、ロボットハンド3の真空吸着パッドにより吸着する。
【0031】
さらに、ロボットハンド3により吸着したサファイアウェーハ1を、薬液が入った洗浄槽4に移動して、サファイアウェーハ1の裏面1b側を洗浄する。この洗浄により、サファイアウェーハ1に付着したパーティクル、金属不純物、有機不純物が除去される。この際に、サファイアウェーハ1は、平坦度を保持したまま、ロボットハンド3の上記真空吸着パッドに吸着されているため、サファイアウェーハ1が反ることがない。
【0032】
次に、洗浄槽4からサファイアウェーハ1をロボットハンド3に吸着した状態のまま取り出して、乾燥させる。そして乾燥後、サファイアウェーハ1をロボットハンド3に吸着した状態のまま、サファイアウェーハ1の裏面1bに裏面保護シート7を貼着させる。この裏面保護シート7には、予め接着剤が塗布されているため、容易に貼着することができる。
【0033】
そして、表面1aに表面保護シート6および裏面1bに裏面保護シート7が貼着されたサファイアウェーハ1は、下流工程へと搬送されて、レザーによってダイシングされ、パッケージされる。
【0034】
上述の実施の形態による半導体ウェーハの製造方法によれば、サファイアウェーハ1の表面1a側のパターン面をキャリアプレート2に貼着して、サファイアウェーハ1の裏面1b側を研削した後、当該裏面1b側を真空吸着して、サファイアウェーハ1をキャリアプレート2から剥離するため、裏面1b側を研削することにより厚さ寸法が薄くなったサファイアウェーハ1に、無理な力や衝撃を与えることなく剥離することができるとともに、サファイアウェーハ1が反ることがない。これにより、破損しやすいサファイアウェーハ1であっても、効率的に剥離させることができるとともに、平坦度が求められる上記半導体ウェーハの歩留まりを良くして、品質の向上に繋げることができる。
【0035】
また、サファイアウェーハ1を反転する前に、表面1a側のパターン面に表面保護シート6を貼着するため、サファイアウェーハ1を反転した後に、表面1a側の上記パターン面を真空吸着することができる。この結果、サファイアウェーハ1を洗浄および移動する際のハンドリング性を向上させることができる。
【0036】
そして、サファイアウェーハ1の裏面1b側を真空吸着して、サファイアウェーハ1をキャリアプレート2から剥離した後に、裏面1b側を真空吸着した状態のまま、表面1a側を洗浄して、当該表面1aに表面保護シート6を貼着し、次いで裏面1b側の吸着を外した後に、サファイアウェーハ1を反転して、表面保護シート6が貼着された表面1aを真空吸着し、裏面1b側を洗浄して当該裏面1b側に、裏面保護シート7を貼着するため、裏面1b側を研削して、厚さ寸法が薄くなったサファイアウェーハ1を洗浄槽4において、表面1a側および裏面1b側を洗浄する際に、サファイアウェーハ1が反ることがなく、表面保護シート6および裏面保護シート7を貼着する際のサファイアウェーハ1の破損を防止することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態において、半導体ウェーハ1を単結晶サファイアを用いたサファイアウェーハ1の場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、単結晶SiC(単結晶シリコンカーバイド)を用いたSiCウェーハても対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
LED用のサファイアウェーハを製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 サファイアウェーハ(半導体ウェーハ)
1a 表面
1b 裏面
2 キャリアプレート
3 ロボットハンド
4 洗浄槽
5 反転機
6 表面保護シート
7 裏面保護シート
8 ホットプレート
9 研削手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターニングされた半導体ウェーハの表面側のパターン面をキャリアプレートに貼着し、当該半導体ウェーハの裏面側を研削して厚さ寸法を50〜120μmにした後に、当該裏面側を真空吸着し、上記半導体ウェーハを上記キャリアプレートから剥離して、上記表面側のパターン面に表面保護シートを貼着し、次いで上記裏面側の吸着を外して上記半導体ウェーハを反転し、上記裏面側に裏面保護シートを貼着することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【請求項2】
上記半導体ウェーハの上記裏面側を真空吸着して上記半導体ウェーハを上記キャリアプレートから剥離した後に、上記パターン面を洗浄して当該パターン面に上記表面保護シートを貼着し、次いで上記裏面側の吸着を外した後に上記半導体ウェーハを反転して、上記表面保護シートが貼着された上記パターン面を真空吸着し、上記裏面側を洗浄して当該裏面側に上記裏面保護シートを貼着することを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項3】
上記半導体ウェーハが、サファイアウェーハであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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