説明

半導体ウエハの取り扱い方法

【課題】 着用者に接する防塵服の内側では塵埃が多く捕獲され、防塵服の外側では塵埃が付着し難く、かつ、強度にも優れた防塵服を提供することが本発明の目的である。
【解決手段】 防塵服の外表面では内表面に比べて塵埃を捕える空間が少なく、内表面では外表面に比べて塵埃を捕える空間が多くなるように、内表面には曲線状の繊維121乃至123が直線状の繊維111乃至115及び繊維124及び125より多く露出し、外表面には直線状の繊維111乃至115及び繊維124及び125が曲線状の繊維121乃至123より多く露出する構成とした防塵服である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質及び衛生的な観点から種々の塵埃を抑制する必要のあるクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、クリーンルームは、様々な分野において利用されている。このクリーンルーム内で作業に従事する者は、ルーム内のクリーン度を維持する為に通常、防塵服と呼ばれる特殊な作業服を着用して作業を行う。このクリーンルームのクリーン度に対する要求は近年、様々な分野において非常に高まっている。
【0003】
例えば、半導体分野におけるクリーンルームについては、半導体装置の微細化等に伴い米国連邦規格の「クラス1」程度のクリーン度が求められている。この「クラス1」とは、1立方フィート内に0.5μm以下の埃が1個以内しか存在しないことを示す。
【0004】
このような高いレベルのクリーン度を維持する為、クリーンルームに関する提案、防塵服に関する提案等、種々の提案が様々な分野から行われている。例えば、防塵服に関する提案として、日本国特許公開公報である特開平3ー26535号に示されたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに提案された防塵服は、非常に高いレベルのクリーン度を要求されるクリーンルーム内で着用するには満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、着用者に接する防塵服の内側では塵埃が多く捕獲され、防塵服の外側では塵埃が付着し難く、かつ、強度にも優れた防塵服を提供することにある。
【0007】
この目的を達成するために本願に示される種々の発明の内、代表的な発明が以下に示される。
【0008】
本願の代表的な発明は、内表面には曲線状の繊維が直線状の繊維より多く露出し、外表面には直線状の繊維が曲線状の繊維より多く露出する構成とした防塵服である。
【0009】
この構成により外表面では内表面に比べて塵埃を捕える空間が少なく、内表面では外表面に比べて塵埃を捕える空間が多くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防塵服の外表面では内表面に比べて塵埃を捕える空間が少なく、内表面では外表面に比べて塵埃を捕える空間が多くなるので、着用者に接する防塵服の内側では塵埃が多く捕獲され、防塵服の外側では塵埃が付着し難く、かつ、強度にも優れた防塵服を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態が説明される。図1は第1の実施の形態を説明するための平面図であり、図2は第1の実施の形態を説明するための断面図である。図2は、図1中のXーX’線、YーY’線における断面図である。これらの図面は防塵服を構成する生地の要部が拡大されて模式的に表されたものである。図1において図面の手前が防塵服の外側、図面の奥側が防塵服の内側である。図2において図面の上方向が防塵服の外側、図面の下側が防塵服の内側である。防塵服の内側とは、防塵服を着用する着用者の人体の側であり、外側とはその反対側の周囲の雰囲気に接する側である。より具体的には、内側は服の内表面(或は裏面)側であり、外側は服の外表面側である。
【0012】
第1の実施の形態では、防塵服の生地100は、第1の方向に延在する複数の繊維群110とその第1の方向と交わる第2の方向に延在する複数の繊維群120とが互いに織り込まれた構造である。図面の中では便宜的に繊維群と繊維群との間に一様な隙間が設けられているが、実際の生地においてこの隙間が必ずしも一様でないことは理解されるであろう。繊維群と繊維群とが完全に密着していることが理想であるが、ある部分では小さな隙間が存在していることも考えられる。以下の本実施の形態及び他の実施の形態においても一様の隙間が設けられた図を参照しながら説明が示される。
【0013】
ここでは、第1の方向は図面の縦方向を意味し、第2の方向は第1の方向と実質的に直交する横方向を意味する。繊維同士の交わりは紙面上では直交するが、実際の生地の上では繊維同士が必ずしも直交するとは言い難い状況が想定されるので、ここでは第1方向及び第2方向という定義が用いられる。
【0014】
複数の繊維群110は繊維群111乃至115から構成される。複数の繊維群120は繊維群121乃至125から構成される。
【0015】
繊維群111乃至115及び繊維群121乃至125は、それぞれ複数の微小な繊維が束ねられた繊維群である。通常、この繊維群は糸と呼ばれることが多い。
【0016】
繊維群111乃至115はそれぞれ直径15〜20μmの直線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜100μm程度の太さを有する。ここではポリエステル繊維が用いられたが、ナイロン等の他の材質の繊維を用いることも可能である。以下に示される繊維に関しても同様に他の材質を適宜選択できることは言うまでもない。
【0017】
繊維群121乃至123はそれぞれ直径5〜10μmの曲線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜80μm程度の太さを有する。ここで曲線状のポリエステル繊維とは、ウェーブ状あるいは波状に加工されたポリエステル繊維のことを示す。
【0018】
この繊維群121乃至123の直径は、繊維群111乃至115の直径より細いことが望ましい。それぞれの繊維及び繊維群のサイズは材質等により異なることが予想されるが、縦方向の繊維群と横方向の繊維群との相対関係は上述のような関係になるように設計者が適宜選択できるであろう。
【0019】
繊維群121と繊維群122との間には繊維群124が、繊維群122と繊維群123との間には繊維群125がそれぞれ配置されている。この繊維群124及び125は、上述の繊維群111乃至115と同様に、それぞれ直径15〜20μmの直線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜100μm程度の太さを有する。
【0020】
次に、図1中のXーX’線、YーY’線における断面図が示される図2を参照しながら、縦方向の繊維群と横方向の繊維群とが互いに織り込まれた構造が具体的に説明される。
【0021】
繊維群121乃至123は防塵服の外側において1本の繊維群111を越えて防塵服の内側へと延在する。さらに、繊維群121乃至123は防塵服の内側において2本の繊維群112及び113を越えて外側へと延在する。さらに、繊維群121乃至123は防塵服の外側において1本の繊維群114を越えて防塵服の内側へと延在する。
【0022】
繊維群124及び125は、防塵服の内側において繊維群111を越えて防塵服の外側へと延在する。さらに、繊維群124乃至125は防塵服の外側において2本の繊維群112及び113を越えて内側へと延在する。さらに、繊維群121乃至123は防塵服の内側において1本の繊維群114を越えて防塵服の外側へと延在する。
【0023】
複数の繊維群110と複数の繊維群120とが以上のようなパターンを繰り返して織り込まれることにより、防塵服の生地100が構成される。
【0024】
図1及び図2より理解できるように、XーX’断面には直線状の繊維群(111乃至115及び124)のみが現われる。
【0025】
この場合、繊維群124が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2(繊維群112及び113上に延在する繊維群124)”であるのに対して、内側は”1(繊維群111上に延在する繊維群124)”である。繊維群111乃至113が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1(繊維群124上に延在する繊維群111)”であるのに対して、内側は”2(繊維群124上に延在する繊維群112及び113)”である。
【0026】
一方、YーY’断面には直線状の繊維群(111乃至115)及び曲線上の繊維群122が現われる。
【0027】
この場合、繊維群122が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1(繊維群111上に延在する繊維群122)”であるのに対して、内側は”2(繊維群112及び113上に延在する繊維群122)”である。繊維群111乃至113が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2(繊維群122上に延在する繊維群112及び113)”であるのに対して、内側は”1(繊維群122上に延在する繊維群111)”である。
【0028】
本実施の形態の生地100は図1及び図2のようなパターンの繰り返しであるので、繊維群110が防塵服の外側と内側に現われる割合は3対3、すなわち、1対1になる。また、防塵服の外側に現われる曲線上の繊維群121乃至123と直線状の繊維群124及び125との割合は2対1であり、防塵服の内側に現われる曲線上の繊維群121乃至123と直線状の繊維群124及び125との割合は1対2である。
【0029】
つまり、防塵服の外側には曲線状の繊維群より直線状の繊維群がより多く露出され、防塵服の内側には直線状の繊維群より曲線状の繊維群がより多く露出される。この実施の形態では、直線状の繊維群は曲線状の繊維群よりも径が大きいので、径の大きな繊維群が外側に多く露出され、径の小さな繊維群が内側に多く露出されると言うこともできる。また、外側に直線状の太い糸が多く露出され、内側に曲線状の細い糸が露出されると言うこともできる。
【0030】
このように構成された生地を用いて防塵服が作成された場合、以下のような効果が期待できる。
【0031】
着用者に接する防塵服の内側には、径が細く曲線状の繊維が直線状の繊維よりも多く露出されているので、着用者から発生する塵埃(着用者が着用している衣類からの塵埃、着用者または衣類に付着している塵埃等)が多く捕獲される。これは繊維と繊維と間の「繊維ポケット」と呼ばれる空間部分に塵埃が取り込まれることによるものである。この繊維ポケットは、繊維と繊維との間、繊維群と繊維群との間に存在している。このような場所に繊維ポケットは存在するので、直線状の繊維間より曲線状の繊維間の方により多くの空間が形成される。すなわち、曲線状の繊維は直線状の繊維より多くの繊維ポケットを有している。さらに、径が細くなれば、その繊維ポケットの数も増えると考えられる。
【0032】
また、防塵服の外側には、径が太く直線状の繊維が曲線状の繊維より多く露出されているので、周囲の塵埃が捕獲される確率は曲線状の繊維に比べて非常に低い。すなわち、塵埃の多い環境に防塵服が晒されたとしても、この直線状の繊維は塵埃を取り込み難い。従って、防塵服に取り込まれた塵埃がクリーンルーム内に放出されることが防止される。このような塵埃の再放出を防止することは、上述したようなクリーン度の高いクリーンルームを実現する上で非常に重要な要素である。上述の塵埃の多い環境とは、着用者が防塵服を脱いだ後に防塵服が保管される環境、防塵服を着用した着用者が作業する環境の内、装置、治具、取り扱い物質等から塵埃を浴びるような環境等である。
【0033】
さらに、曲線状の繊維は直線状の繊維に比べて毛玉を発生し易く、また周囲の装置等に引っ掛かり易いので、防塵服の外側に径が太く直線状の繊維が曲線状の繊維より多く露出されていることにより、装置等の防塵服への引っ掛かりの発生が抑制される。このことは防塵服の破損を防ぐことであり、それは防塵服の耐久性の向上を意味する。
【0034】
このように本発明の第1の実施の形態によれば、着用者からの発塵が捕獲され易く、外部の塵埃は捕獲され難い防塵服が実現できる。
【0035】
次に本発明の第2の実施の形態が説明される。
【0036】
図3は第2の実施の形態を説明するための平面図であり、図4は第2の実施の形態を説明するための断面図である。図4は、図2中のXーX’線、YーY’線、ZーZ’線における断面図である。前出の図面と同様にこれらの図面は防塵服を構成する生地の要部が拡大されて模式的に表されたものである。図3において図面の手前が防塵服の外側、図面の奥側が防塵服の内側である。図4において図面の上方向が防塵服の外側、図面の下側が防塵服の内側である。
【0037】
第2の実施の形態では、防塵服の生地200は、第1の方向に延在する複数の繊維群210とその第1の方向と交わる第2の方向に延在する複数の繊維群220とが互いに織り込まれた構造である。
【0038】
ここでは、第1の方向は図面の縦方向を意味し、第2の方向は第1の方向と実質的に直交する横方向を意味する。繊維同士の交わりは紙面上では直交するが、実際の生地の上では繊維同士が必ずしも直交するとは言い難い状況が想定されるので、ここでは第1方向及び第2方向という定義が用いられる。
【0039】
複数の繊維群210は繊維群211乃至216から構成される。複数の繊維群220は繊維群221乃至227から構成される。
【0040】
繊維群211乃至216及び繊維群221乃至226は、それぞれ複数の微小な繊維が束ねられた繊維群である。通常、この繊維群は糸と呼ばれることが多い。
【0041】
繊維群211乃至216はそれぞれ直径15〜20μmの直線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜100μm程度の太さを有する。ここではポリエステル繊維が用いられたが、上述した通りナイロン等の他の材質の繊維を用いることも可能である。
【0042】
繊維群221乃至225はそれぞれ直径5〜10μmの曲線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜80μm程度の太さを有する。ここで曲線状のポリエステル繊維とは、第1の実施の形態と同様にウェーブ状あるいは波状に加工されたポリエステル繊維のことを示す。
【0043】
この繊維群221乃至225の直径は、繊維群211乃至216の直径より細いことが望ましい。それぞれの繊維及び繊維群のサイズは材質等により異なることが予想されるが、縦方向の繊維群と横方向の繊維群との相対関係は上述のような関係になるように設計者が適宜選択できるであろう。
【0044】
繊維群222と繊維群223との間には繊維群226が、繊維群224と繊維群225との間には繊維群227がそれぞれ配置されている。この繊維群226及び227は、上述の繊維群211乃至216と同様に、それぞれ直径15〜20μmの直線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜100μm程度の太さを有する。
【0045】
次に、図3中のXーX’線、YーY’線、ZーZ’線における断面図が示される図4を参照しながら、縦方向の繊維群と横方向の繊維群とが互いに織り込まれた構造が具体的に説明される。
【0046】
繊維群221乃至225は防塵服の内側において2本の繊維群211及び212を越えて防塵服の外側へと延在する。さらに、繊維群221乃至225は防塵服の外側において1本の繊維群213を越えて内側へと延在する。さらに、繊維群221乃至225は防塵服の内側において2本の繊維群214及び215を越えて防塵服の外側へと延在する。
【0047】
繊維群226及び227は、防塵服の外側において2本の繊維群211及び212を越えて防塵服の内側へと延在する。さらに、繊維群226及び227は防塵服の内側において1本の繊維群213を越えて外側へと延在する。さらに、繊維群226及び227は防塵服の外側において2本の繊維群214及び215を越えて防塵服の内側へと延在する。
【0048】
複数の繊維群210と複数の繊維群220とが以上のようなパターンを繰り返して織り込まれることにより、防塵服の生地200が構成される。
【0049】
図3及び図4より理解できるように、XーX’断面には直線状の繊維群(211乃至216及び226)のみが現われる。
【0050】
この場合、繊維群226が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2(繊維群211及び212上に延在する繊維群226)”であるのに対して、内側は”1(繊維群213上に延在する繊維群226)である。繊維群211乃至213が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1(繊維群226上に延在する繊維群213)”であるのに対して、内側は”2(繊維群226上に延在する繊維群211及び212)である。
【0051】
YーY’断面には直線状の繊維群(211乃至216)及び曲線上の繊維群223が現われる。
【0052】
この場合、繊維群223が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1(繊維群213上に延在する繊維群223)”であるのに対して、内側は”2(繊維群211及び212上に延在する繊維群223)である。繊維群211乃至213が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2(繊維群223上に延在する繊維群211及び212)”であるのに対して、内側は”1(繊維群223上に延在する繊維群213)”である。
【0053】
ZーZ’断面は、上述のYーY’断面と同様である。従って、繊維群224が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1”であるのに対して、内側は”2”である。繊維群211乃至213が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2”であるのに対して、内側は”1”である。
【0054】
本実施の形態の生地200は図3及び図4のようなパターンの繰り返しであるので、繊維群210が防塵服の外側と内側に現われる割合は5対4になる。また、防塵服の外側に現われる曲線上の繊維群221乃至225と直線状の繊維群226及び227との割合は2対2であり、防塵服の内側に現われる曲線上の繊維群221乃至225と直線状の繊維群226及び227との割合は1対4である。
【0055】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比較すると、防塵服の外側には曲線状の繊維群より直線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、防塵服の内側には直線状の繊維群より曲線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出される。
【0056】
この実施の形態では、第1の実施の形態と同様に直線状の繊維群は曲線状の繊維群よりも径が大きいので、径の大きな繊維群が外側に第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、径の小さな繊維群が内側に第1の実施の形態よりもさらに多く露出されると言うこともできる。また、外側に直線状の太い糸が第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、内側に曲線状の細い糸が第1の実施の形態よりもさらに多く露出されると言うこともできる。
【0057】
このように構成された生地を用いて防塵服が作成された場合、上述の第1の実施の形態による効果に加え以下の効果が期待できる。
【0058】
防塵服の外側には曲線状の繊維群より直線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、防塵服の内側には直線状の繊維群より曲線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出される。従って、防塵服の外側では第1の実施の形態の防塵服よりさらに塵埃が取り込まれ難くなり、防塵服に取り込まれた塵埃がクリーンルーム内に放出されることがより防止される。また、防塵服の内側では第1の実施の形態の防塵服よりさらに多くの塵埃が捕獲される。
【0059】
このように本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の防塵服よりもさらに着用者からの発塵が捕獲され易く、外部の塵埃は捕獲され難い防塵服が実現できる。
【0060】
次に本発明の第3の実施の形態が説明される。
【0061】
図5は第3の実施の形態を説明するための平面図であり、図6は第3の実施の形態を説明するための断面図である。図6は、図5中のXーX’線、YーY’線、ZーZ’線における断面図である。前出の図面と同様にこれらの図面は防塵服を構成する生地の要部が拡大されて模式的に表されたものである。図5において図面の手前が防塵服の外側、図面の奥側が防塵服の内側である。図6において図面の上方向が防塵服の外側、図面の下側が防塵服の内側である。
【0062】
第3の実施の形態では、防塵服の生地300は、第1の方向に延在する複数の繊維群310とその第1の方向と交わる第2の方向に延在する複数の繊維群320とが互いに織り込まれた構造である。
【0063】
ここでは、第1の方向は図面の縦方向を意味し、第2の方向は第1の方向と実質的に直交する横方向を意味する。繊維同士の交わりは紙面上では直交するが、実際の生地の上では繊維同士が必ずしも直交するとは言い難い状況が想定されるので、ここでは第1方向及び第2方向という定義が用いられる。
【0064】
複数の繊維群310は繊維群311乃至316から構成される。複数の繊維群320は繊維群321乃至327から構成される。
【0065】
繊維群311乃至316及び繊維群321乃至326は、それぞれ複数の微小な繊維が束ねられた繊維群である。通常、この繊維群は糸と呼ばれることが多い。
【0066】
繊維群311乃至316はそれぞれ直径15〜20μmの直線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜100μm程度の太さを有する。ここではポリエステル繊維が用いられたが、上述した通りナイロン等の他の材質の繊維を用いることも可能である。
【0067】
繊維群321乃至325はそれぞれ直径5〜10μmの曲線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜80μm程度の太さを有する。ここで曲線状のポリエステル繊維とは、第2の実施の形態と同様にウェーブ状あるいは波状に加工されたポリエステル繊維のことを示す。
【0068】
この繊維群321乃至325の直径は、繊維群311乃至316の直径より細いことが望ましい。それぞれの繊維及び繊維群のサイズは材質等により異なることが予想されるが、縦方向の繊維群と横方向の繊維群との相対関係は上述のような関係になるように設計者が適宜選択できるであろう。
【0069】
繊維群322と繊維群323との間には繊維群326が、繊維群324と繊維群325との間には繊維群327がそれぞれ配置されている。この繊維群326及び327は、上述の繊維群311乃至316と同様に、それぞれ直径15〜20μmの直線状のポリエステル繊維が数本束ねられた集合体であり、各繊維群は直径50〜100μm程度の太さを有する。
【0070】
次に、図5中のXーX’線、YーY’線、ZーZ’線における断面図が示される図6を参照しながら、縦方向の繊維群と横方向の繊維群とが互いに織り込まれた構造が具体的に説明される。
【0071】
繊維群321は防塵服の内側において1本の繊維群311を越えて防塵服の外側へと延在する。さらに、繊維群321は防塵服の外側において1本の繊維群312を越えて内側へと延在する。さらに、繊維群321は防塵服の内側において2本の繊維群313及び314を越えて防塵服の外側へと延在する。
【0072】
この繊維群321に隣接する繊維群322は防塵服の内側において2本の繊維群311及び312を越えて防塵服の外側へと延在する。さらに、繊維群322は防塵服の外側において1本の繊維群313を越えて内側へと延在する。さらに、繊維群322は防塵服の内側において2本の繊維群314及び315を越えて防塵服の外側へと延在する。この2つの繊維群321及び322の繊維群の対と繊維群311乃至316との関係と同様に、他の繊維群対(323及び324、325及び図示されていない325に隣接する繊維群)も配置される。
【0073】
繊維群326及び327は、防塵服の外側において1本の繊維群311を越えて防塵服の内側へと延在する。さらに、繊維群326及び327は防塵服の内側において1本の繊維群312を越えて外側へと延在する。さらに、繊維群326及び327は防塵服の外側において2本の繊維群313及び314を越えて防塵服の内側へと延在する。
【0074】
複数の繊維群310と複数の繊維群320とが以上のようなパターンを繰り返して織り込まれることにより、防塵服の生地300が構成される。
【0075】
図5及び図6より理解できるように、XーX’断面には直線状の繊維群(311乃至316及び326)のみが現われる。
【0076】
この場合、繊維群326が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2(繊維群313及び214上に延在する繊維群326)”であるのに対して、内側は”1(繊維群312上に延在する繊維群326)である。繊維群311乃至316が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1(繊維群326上に延在する繊維群312)”であるのに対して、内側は”2(繊維群326上に延在する繊維群313及び314)である。
【0077】
YーY’断面には直線状の繊維群(311乃至316)及び曲線上の繊維群323が現われる。
【0078】
この場合、繊維群323が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1(繊維群312上に延在する繊維群323)”であるのに対して、内側は”2(繊維群313及び314上に延在する繊維群323)である。繊維群311乃至216が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2(繊維群323上に延在する繊維群313及び314)”であるのに対して、内側は”1(繊維群323上に延在する繊維群312)”である。
【0079】
ZーZ’断面は、上述のYーY’断面を横方向に繊維群1列分だけシフトしたものと同様である。従って、繊維群324が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”1”であるのに対して、内側は”2”である。繊維群311乃至316が防塵服の外側と内側に現われる割合は、外側が”2”であるのに対して、内側は”1”である。
【0080】
本実施の形態の生地300は図5及び図6のようなパターンの繰り返しであるので、繊維群310が防塵服の外側と内側に現われる割合は5対4になる。また、防塵服の外側に現われる曲線上の繊維群321乃至325と直線状の繊維群326及び327との割合は2対2であり、防塵服の内側に現われる曲線上の繊維群321乃至325と直線状の繊維群326及び327との割合は1対4である。
【0081】
本実施の形態では、第1の実施の形態と比較すると、防塵服の外側には曲線状の繊維群より直線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、防塵服の内側には直線状の繊維群より曲線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出される。
【0082】
この実施の形態では、第1の実施の形態と同様に直線状の繊維群は曲線状の繊維群よりも径が大きいので、径の大きな繊維群が外側に第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、径の小さな繊維群が内側に第1の実施の形態よりもさらに多く露出されると言うこともできる。また、外側に直線状の太い糸が第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、内側に曲線状の細い糸が第1の実施の形態よりもさらに多く露出されると言うこともできる。
【0083】
このように構成された生地を用いて防塵服が作成された場合、上述の第1の実施の形態による効果に加え以下の効果が期待できる。
【0084】
防塵服の外側には曲線状の繊維群より直線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出され、防塵服の内側には直線状の繊維群より曲線状の繊維群が第1の実施の形態よりもさらに多く露出される。従って、防塵服の外側では第1の実施の形態の防塵服よりさらに塵埃が取り込まれ難くなり、防塵服に取り込まれた塵埃がクリーンルーム内に放出されることがより防止される。また、防塵服の内側では第1の実施の形態の防塵服よりさらに多くの塵埃が捕獲される。
【0085】
このように本発明の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の防塵服よりもさらに着用者からの発塵が捕獲され易く、外部の塵埃は捕獲され難い防塵服が実現できる。
【0086】
以上のように本発明によれば、防塵服の外表面では内表面に比べて塵埃を捕える空間が少なく、内表面では外表面に比べて塵埃を捕える空間が多くなるので、着用者に接する防塵服の内側では塵埃が多く捕獲され、防塵服の外側では塵埃が付着し難く、かつ、強度にも優れた防塵服を提供することができる。
【0087】
本発明は、品質及び衛生的な観点から種々の塵埃を抑制する必要のあるクリーンルーム内で着用される防塵服、特に半導体分野、精密機器分野、医療・薬品分野、食品加工分野等のクリーンルームで着用される防塵服に適用される。
【0088】
例えば、図7に示されるような半導体分野におけるクリーンルーム700内では、作業者701は上述の防塵服を着用して作業に従事する。作業者701は、半導体ウエハを処理する装置702及び703の内部及び周囲で半導体ウエハを取り扱う。また、作業者701は装置702及び703を制御する。
【0089】
このような場所では、あるレベル以上の塵埃による半導体ウエハに与える影響は非常に大きい。塵埃が存在することにより、半導体ウエハに形成される予定の微細なパターンが予定通りに形成できなくなる場合等が想定される。このようなことは、不良品の増加、すなわち、歩留り(良品が得られる割合)の低下を意味する。また、製品の信頼性の観点からも予期せぬ事象を齎らすような塵埃は極力排除されることが望ましい。
【0090】
上述の実施の形態では、縦方向の繊維群と横方向の繊維群とが織り込まれた単層の生地が示されたが、本発明を多層構造の生地に適用することも可能である。例えば、防塵服の内表面が上述のような曲線状の繊維のみにより形成され、外表面が上述のような直線状の繊維のみにより形成され、内表面と外表面とが張り合わされたような多層構造にも適用できる。この場合、着用した際の動き易さ、通気性、着心地、コスト等を考慮して、単層または多層構造のいずれかが採用されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す部分拡大平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す部分拡大平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す部分拡大平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【図7】クリーンルームの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0092】
100 防塵服の生地
110、120 繊維群
111、124 直線状の繊維群
121、122 曲線状の繊維群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する複数の第1の繊維群と、前記第1の方向と交わる第2の方向に延在する複数の第2の繊維群と、前記第2の繊維群に挟まれ前記第2の方向に延在する第3の繊維群とが互いに織り込まれて形成された生地の構造であって、
前記第1の繊維群は直線状の繊維により、前記第2の繊維群は曲線状の繊維により、前記第3の繊維群は直線状の繊維によりそれぞれ構成されてなり、前記第2の繊維群は前記防塵服の着用者に接する側である前記生地の内側に前記生地の内側と反対側の外側よりも多く露出し、前記第3の繊維群は前記生地の外側に前記生地の内側よりも多く露出する前記生地の構造を有するクリーンルーム用防塵服を着用してクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱うことを特徴とする半導体ウエハの取り扱い方法。
【請求項2】
前記生地の構造における前記第2の繊維群の各繊維は前記外側において前記第1の繊維群の1つを越えて前記内側に延在し前記内側において前記第1の繊維群の2つを越えて前記外側へ延在し、前記第3の繊維群の各繊維は前記外側において前記第1の繊維群の2つを越えて前記内側へ延在し前記内側において前記第1の繊維群の1つを越えて前記外側へ延在することを特徴とする前記生地の構造を有するクリーンルーム用防塵服を着用してクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱うことを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハの取り扱い方法。
【請求項3】
前記生地の構造における前記複数の第2の繊維群は隣接する2つの繊維群により繊維群対を構成し、前記第3の繊維群はそれぞれの前記繊維群対間にそれぞれ配置され、前記繊維群対は前記外側において前記第1の繊維群の1つを越えて前記内側へ延在し前記内側において前記第1の繊維群の2つを越えて前記外側へ延在し、前記第3の繊維群の各繊維は前記外側において前記第1の繊維群の2つを越えて前記内側へ延在し前記内側において前記第1の繊維群の1つを越えて前記外側へ延在する前記生地の構造を有するクリーンルーム用防塵服を着用してクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱うことを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハの取り扱い方法。
【請求項4】
前記生地の構造における前記第1の繊維群の1つに対し前記繊維群対の一方が前記外側に露出し、他方が前記内側に露出する前記生地の構造を有するクリーンルーム用防塵服を着用してクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱うことを特徴とする請求項3記載の半導体ウエハの取り扱い方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の半導体ウエハの取り扱い方法において、
前記第1の繊維群の径が前記第2の繊維群の径より大きい前記生地の構造を有するクリーンルーム用防塵服を着用してクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱うことを特徴とする半導体ウエハの取り扱い方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載のいずれかに記載の半導体ウエハの取り扱い方法において、
前記第1の繊維群の径が50μm乃至100μmであり、前記第2の繊維群の径が50μm乃至80μmである前記生地の構造を有するクリーンルーム用防塵服を着用してクリーンルーム内で半導体ウエハを取り扱うことを特徴とする半導体ウエハの取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−70427(P2006−70427A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257328(P2005−257328)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【分割の表示】特願平10−110620の分割
【原出願日】平成10年4月21日(1998.4.21)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】