説明

半導体チップ搭載用基板及び前処理液

【課題】無電解ニッケルめっきの異常析出を十分に抑制することにより、絶縁信頼性に優れ、ワイヤボンディング性及びはんだ接続信頼性に十分優れた半導体チップ搭載用基板および前処理液を提供する。
【解決手段】半導体チップ搭載用基板10は、基板20と、基板20の第1の主面上に設けられたワイヤボンディング用接続端子1と、基板の第1の主面とは反対側の第2の主面上に設けられたはんだ接続用端子12と、第1の主面上に設けられワイヤボンディング用接続端子1から延びている接続配線14とを備え、端子1、12は、金属の表面を被覆する無電解ニッケルめっき皮膜を有し、接続配線14は必要に応じて配線の表面を被覆する無電解ニッケルめっき皮膜を有する。端子1、12及び必要に応じて接続配線14は、金属端子及び/又は金属配線の表面を被覆するように0.8μm以上の厚みを有する無電解ニッケルめっき皮膜が選択的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解ニッケルめっき皮膜を備える半導体チップ搭載用基板及びその無電解ニッケルめっき皮膜を形成する前に用いる前処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、無線基地局、光通信装置、サーバ及びルータ等大小問わず、機器の小型化、軽量化、高性能化及び高機能化が進んでいる。また、CPU、DSP及び各種メモリ等のLSIの高速化並びに高機能化と同時に、システムオンチップ(SoC)やシステムインパッケージ(SiP)等の高密度実装技術の開発も行われている。
【0003】
このため、半導体チップ搭載基板やマザーボードに、ビルドアップ方式の多層配線基板が使用されるようになっている。また、パッケージの多ピン狭ピッチ化といった実装技術の進歩で、プリント配線板は、QFP(Quad Flat Package)からBGA(Ball Grid Array)/CSP(Chip Size Package)実装へと進化している。
【0004】
半導体チップと半導体実装基板との接続は、金ワイヤボンディングによるものが一般的であり、この場合、従来は電気めっき法により銅配線にニッケル及び金めっきが施される。しかし、半導体チップの高速化及び高集積化に伴い、基板の配線は微細化し、めっき電力供給用の引き出し線形成が困難となっているため、近年、無電解めっき法に対する必要性が強まっている。
【0005】
銅配線へ無電解ニッケル/金めっきを施す場合、無電解ニッケルめっきの前処理工程として、銅配線上に金属パラジウムを置換析出させる活性化処理を施すのが一般的である。しかし、その場合、銅配線以外の絶縁部である樹脂表面にもニッケルが析出してしまう。この現象は「異常析出」と呼ばれ、短絡による不良が発生する原因となる。
【0006】
無電解ニッケルめっきの異常析出を抑制するために、そのめっきの前処理工程の直前に、銅パターンを形成した基材を、チオ硫酸塩を含んだ溶液に浸漬する前処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3387507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、銅配線の微細化に適応するめっきについて鋭意研究することにより、以下のことを見出した。すなわち、異常析出の発生を抑制するための一手段として、無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚を約0.2μm以上0.8μm未満に調整する方法が考えられる。しかしながら、ニッケルめっき皮膜の膜厚がこのように薄い場合、はんだ接合後のはんだ接続用端子では、150℃程度でニッケルめっき皮膜を介し銅がはんだ側へ溶出し、銅とニッケルめっき皮膜との間に空隙が生じるため、はんだ接合部の強度が著しく低下することが明らかになった。なお、無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚が約0.2μm未満の場合、はんだ接続用端子側では、めっき皮膜中のニッケルがはんだに溶解しやすく、銅スズ合金層が形成されるため接続強度は向上する。ところが、ワイヤボンディング用接続端子側では、金めっき表面への銅の拡散を抑制する効果が低く、ワイヤボンディング不良が発生しやすくなる。したがって、はんだ接合部の強度を十分に高くし、かつワイヤボンディング不良を抑制するためには、0.8μm以上の無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚が必要となる。
【0008】
また、近時、セミアディティブ法などの配線形成方法の利用によって、例えば、配線幅/配線間隔(以下、「L/S」という。)=35μm/35μmレベルの微細配線を有する製品が量産化されており、今後さらに微細化が進むことが予想される。さらには、ワイヤボンディング用接続端子を構成する金属端子同士、金属配線同士、並びに上記金属端子及び金属配線間の距離が短くなる。また、金属端子及び金属配線の基板表面からの高さは、高周波領域における電気特性の確保等の理由により、ある程度の以上の高さが求められ、上記距離が短くなるにつれて、上記高さと上記距離の比(高さ/距離)が3/10以上、より厳しくは2/5以上、更に厳しくは1に近い値まで求められると予想される。ところが、金属端子や金属配線間が上記距離及び高さを有する場合、無電解ニッケルめっき皮膜を0.8μm以上の膜厚で析出させようとすると、特許文献1に記載の処理を施しても、異常析出を抑制できずに短絡による不良が発生してしまう。したがって、上述の金属端子や金属配線間の距離が5μm以上30μm以下で、高さがその距離の3/10以上であっても、短絡不良が十分に抑制されるめっきの形成方法が望まれている。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を改善するためになされたものであり、無電解ニッケルめっきの異常析出を十分に抑制することにより、絶縁信頼性に優れ、ワイヤボンディング性及びはんだ接続信頼性に十分優れた半導体チップ搭載用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板と、その基板の第1の主面上に設けられたワイヤボンディング用接続端子と、基板の第1の主面とは反対側の第2の主面上に設けられたはんだ接続用端子と、第1の主面上に設けられワイヤボンディング用接続端子から延びている接続用配線とを備える半導体チップ搭載用基板であって、ワイヤボンディング用接続端子及びはんだ接続用端子は、金属端子及びその表面を被覆する無電解ニッケルめっき皮膜を有し、接続用配線は金属配線及び必要に応じてその表面を被覆する無電解ニッケルめっき皮膜を有する。さらに、第1の主面上における金属端子同士、金属配線同士、並びに金属端子及び金属配線間の距離の少なくとも一部が30μm以下であり、かつ、上記一部の距離を形成する金属端子及び/又は金属配線の第1の主面からの高さが上述の距離の3/10以上であり、少なくとも上記一部の距離を構成する金属端子及び/又は金属配線の表面を被覆するように0.8μm以上の厚みを有する無電解ニッケルめっき皮膜が選択的に形成されている半導体チップ搭載用基板を提供する。
【0011】
本発明において、無電解ニッケルめっき皮膜は0.8μm以上の厚みを有するにも関わらず、金属端子及び/又は金属配線の表面を選択的に被覆している。これにより、絶縁信頼性に優れ、さらに、ワイヤボンディング性とはんだ接続信頼性に十分優れた半導体チップ搭載用基板を提供でき、半導体チップの高速化及び高集積化に伴う基板配線の微細化が可能となる。
【0012】
また、本発明では、上述の無電解ニッケルめっき皮膜の表面上に、更にパラジウムめっき皮膜及び金めっき皮膜がこの順に形成されている半導体チップ搭載用基板を提供することもできる。これにより、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性をより向上させることができる。
【0013】
さらに、パラジウムめっき皮膜の厚みは0.02〜1.0μmであることが好ましい。これにより、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性が更に向上するとともに、余剰にパラジウムを用いないため、経済性も向上する。
【0014】
金めっき皮膜の厚みは0.04μm以上であることが好ましい。これにより、ワイヤボンディング性を一層向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明は、上述の半導体チップ搭載用基板を形成する際に用いられる無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液であって、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)(以下、単に「(1)〜(4)」と表記する。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の硫黄化合物と、有機溶剤とを含有する前処理液を提供する。
HS−(CH−COOH (1)
HS−(CH−OH (2)
HS−(CH−NH (3)
−(CH−R−S−S−R−(CH−R (4)
ここで、式(1)、(2)及び(3)中、aは1〜23の整数を示し、bは5〜23の整数を示し、cは5〜23までの整数を示す。式(4)中、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、カルボキシル基若しくはアミノ基を有する二価の有機基又は単結合を示し、n及びmはそれぞれ独立に4〜15の整数を示す。
【0016】
このような無電解ニッケルめっき皮膜形成用の前処理液を用いることにより、無電解ニッケルめっき皮膜は十分に異常析出が抑制され、上述のような微細パターンを有する金属端子及び金属配線の表面を、0.8μm以上の厚みで選択的に被覆することができる。これによって、絶縁信頼性、ワイヤボンディング性及びはんだ接続信頼性に十分優れた半導体チップ搭載用基板を提供することができる。
【0017】
無電解ニッケルめっき皮膜が端子や配線を選択的に被覆できる要因については、必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下の通り推察する。配線間隔が狭くなると、配線上に皮膜を形成するためのニッケルが、配線間に残留する触媒等の不純物上だけでなく、配線の周囲にエッチング残渣として残る導体(銅)上にも析出するため、短絡が生じると考えられる。そのため、端子や配線表面のみ選択的に無電解ニッケルめっき皮膜で被覆するためには、皮膜形成の前処理である活性化処理時に、配線のみが選択的に活性化され、残渣として残る導体(銅)は活性化されないことが重要となる。しかしながら、従来の前処理液は配線間に残留する触媒等を不活性化するだけのものであり、上述の選択的な活性化は十分にできなかった。
【0018】
これに対して、本発明の前処理液によれば、配線間に残留する触媒等の不純物だけでなく、エッチング残渣として残る導体(銅)をも不活性化できるために、端子や配線のみを選択的に置換パラジウムめっき皮膜で被覆できると考えられる。これは、特定数のメチレン基及び極性基を分子内に含む上記硫黄化合物が、エッチング残渣として残る導体(銅)表面に吸着後残留する一方、比較的平滑な配線表面には残留し難くなることに起因していると推察する。このような現象は、上記硫黄化合物と有機溶剤との配合バランスに依存して生じると考えられる。
【0019】
上述の本発明の前処理液によれば、鉛イオンが含まれない無電解ニッケルめっき液を使用する場合であっても、ワイヤボンディング用接続端子及び/又は配線表面のみを選択的に被覆し、かつ0.8μm以上の厚みを有する無電解ニッケルめっき皮膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、無電解ニッケルめっきの異常析出を十分に抑制できることから、絶縁信頼性に優れ、さらに、ワイヤボンディング性及びはんだ接続信頼性に十分優れた半導体チップ搭載用基板を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる半導体チップ搭載用基板の一例を模式的に示す平面図であり、ワイヤボンディング用接続端子側から見た面(以下、第1の主面)の模式平面図である。図2は、半導体チップ搭載用基板が備えるワイヤボンディング用接続端子及びその周辺部と、はんだ接続用端子及びその周辺部とを模式的に示す断面図である。(a)は、図1のa−a線に沿った断面の模式図であり、(b)は、図1のb−b線に沿った断面の模式図である。図1及び図2(a)に示されるように、半導体チップ搭載用基板10は、基板20と、ワイヤボンディング用接続端子1と、それを露出するような開口部2aの設けられた絶縁部材であるソルダーレジスト3aとを備えている。また、半導体チップ搭載用基板10は、第1の主面とは反対側の第2の主面に、図1及び図2(b)に示されるような、はんだ接続用端子12と、それを露出するような開口部2bの設けられた絶縁部材であるソルダーレジスト3bとを備えている。第1の主面及び第2の主面上には、接続配線用の展開配線を構成する銅配線14が広がっている。
【0023】
本実施形態において、複数のワイヤボンディング用接続端子1は、半導体チップ搭載用基板10を半導体チップに電気的に接続するための半導体チップ接続端子として機能し、複数のはんだ接続用端子12は、半導体チップ搭載用基板10を配線板(マザーボード)に電気的に接続するための外部接続端子として機能する。また、ワイヤボンディング用接続端子1とはんだ接続用端子12とは、接続配線用の展開配線を構成する銅配線14及び図示されていないが、基板間を貫くスルーホールによって互いに電気的に接続されている。なお、展開配線を構成する銅配線14の一部又は全体の表面に、上記銅端子4と同様に、めっき層が積層される場合には、それらを端子として用いることができる。
【0024】
ワイヤボンディング用接続端子1及びはんだ接続用端子12は、基板20上に設けられた銅端子4と銅端子4の表面を被覆するめっき層108とを備える。図2(a)に示されるワイヤボンディング用接続端子1の周辺部では、基板20の第1の主面上に設けられた開口部2aを有するソルダーレジスト3aと、第1の主面上に設けられ開口部2a内に配置された複数のワイヤボンディング用接続端子1が備えられている。図2(b)に示されるはんだ接続用端子12の周辺部では、基板20の第2の主面上に設けられた開口部2bを有するソルダーレジスト3bと、第2の主面上に設けられた開口部2b内に配置された複数のはんだ接続用端子12が備えられている。銅端子4の表面にそれぞれ積層されためっき層108は、銅端子4側から順に無電解ニッケルめっき皮膜5、パラジウムめっき皮膜6、置換金めっき皮膜7、無電解金めっき皮膜8が積層された構成を有している。
【0025】
本実施形態の半導体チップ搭載用基板10は、基板20の第1の主面上に設けられたワイヤボンディング用接続端子1と、基板20の第1の主面とは反対側の第2の主面上に設けられたはんだ接続用端子12と、第1の主面上に設けられワイヤボンディング用接続端子1から延びている展開配線を構成する銅配線14とを備える半導体チップ搭載用基板であって、ワイヤボンディング用接続端子1を構成する銅端子4同士、展開配線を構成する銅配線14同士、並びにワイヤボンディング用接続端子1を構成する銅端子4及び上記銅配線14の間の距離の少なくとも一部が30μm以下である。さらに、上記一部の距離を形成する銅端子4及び/又は銅配線14の第1の主面からの高さが上述の距離の3/10以上となっている。
【0026】
上述の銅端子4同士、銅配線14同士、並びに銅端子4及び銅配線14間の距離の少なくとも一部は、5〜30μmであると好ましく、15〜30μmであるとより好ましい。この距離が上記下限値を下回ると、それらの端子や配線間で短絡を生じやすくなる。
【0027】
また、それらの距離を形成する銅端子4及び/又は銅配線14の第1の主面からの高さは、上記距離の3/10〜5/5であると好ましく、2/5〜4/5μmであるとより好ましい。この高さが上記上限値を超えると、それらの端子や配線間で短絡が生じやすくなる。高周波領域における電気特性の確保等の観点から、上記距離が短くなるにつれて、上記距離と上記高さの比率(高さ/距離)は大きい方が好ましい。
【0028】
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係る半導体チップ搭載用基板の製造方法について説明する。本実施形態の半導体チップ搭載用基板10の製造方法は、以下の工程を含んでいる。すなわち、基板20、銅配線14及び銅端子4を有するプリント配線板15を準備する配線板準備工程S1と、このプリント配線板15を構成する基板20表面に残存するエッチング残渣及びその他の異物を除去するための表面処理を施す基板表面除去工程S2と、プリント配線板15の銅端子4及び銅配線14(以下、単に「銅端子4等」という。)へ無電解ニッケルめっきを施すための前処理を行う前処理工程S3と、前処理を施したプリント配線板15における銅端子4等上に無電解ニッケルめっき皮膜を形成する無電解ニッケルめっき処理工程S4と、工程S4の処理後の銅端子4等にパラジウムめっき皮膜を形成するパラジウムめっき処理工程S5と、工程S5の処理後の銅端子4等に置換金めっき処理を施した後、無電解金めっき皮膜を形成する金めっき処理工程S6とを有するものである。これらの各工程のうち、無電解ニッケルめっきを施すための前処理工程S3及び無電解ニッケルめっき皮膜を形成する無電解ニッケルめっき処理工程S4は、本実施形態の無電解ニッケルめっき皮膜の形成方法(以下、「無電解ニッケルめっき法」という。)を構成するものである。なお、本実施形態では、基板20の基板表面除去工程S2の途中に、プリント配線板15上にソルダーレジストを形成するソルダーレジスト形成工程S25を備えている。
【0029】
本実施形態に係る前処理工程S3は、銅端子4等の間に露出した基板20の表面を脱脂するための、第1の脱脂処理工程S31と、第2の脱脂処理工程S32と、プリント配線板15の表面に本発明に係る無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液を接触させる前処理工程S33と、ソフトエッチング処理工程S34と、置換パラジウムめっき処理工程S35とを含む。また、本実施形態の無電解ニッケルめっき工程及びその後のめっき工程は各工程間に、プリント配線板15上に残存する前の工程で用いた液を除去する目的で、プリント配線板15を流水等により洗浄する水洗浄工程S7を有している。
【0030】
以下、上述の各工程について詳述する。
【0031】
まず、配線板準備工程S1に関して詳細に説明する。配線板準備工程S1では、基板20、銅端子4等を備えるプリント配線板15が準備される。プリント配線板15は既に完成されたものを入手してもよく、常法により作製してもよい。プリント配線板15としては、上述の銅端子4等が、エッチングにより形成されたものであることが好ましい。後述する本発明の無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液は、基板20上にエッチング残渣として残存する導体(銅)に活性化処理が施されることを防止できると考えられる。そのため、銅端子4等をエッチングにより形成して無電解ニッケルめっきを施すと、配線が微細化しても不具合が生じ難い。すなわち、上記微細パターンを有する銅端子4等へ選択的に無電解ニッケルめっき皮膜が形成され、銅端子4等の間の短絡を十分抑制できるため、高密度プリント配線基板の製造が可能となる。
【0032】
銅端子4等の作製方法として、基板20上に金属層として金属箔を積層し、金属層の不要な箇所をエッチングで除去して銅端子4等を形成するサブトラクティブ法、基板20上の必要な箇所にのみめっきで銅端子4等を形成するアディティブ法、基板20上に薄い金属層又はシード層を形成し、電解めっき法によって必要な配線を形成した後、薄い金属層をエッチングで除去して銅端子4等を形成するセミアディティブ法が挙げられる。
【0033】
基板20の層構成については特に限定されず、電気絶縁性のコア基板をそのまま採用してもよく、コア基板にビルドアップ層を設けて形成してもよい。コア基板としては、例えば、ガラスクロス等の繊維シートにエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸したものを用いるのが好ましい。コア基板及びビルドアップ層を構成する絶縁材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又はそれらの混合樹脂などの電気絶縁性の樹脂が使用できる。また、ビルドアップ層としては、特に熱硬化性の有機絶縁材料を主成分とするのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。また、絶縁材料には充填材を添加してもよい。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0034】
上記サブトラクティブ法において、基板20上に金属層を形成する方法、並びに、上記セミアディティブ法において、上記表面に金属層又はシード層を形成する方法として、蒸着又はめっきによる方法及び金属を貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0035】
サブトラクティブ法は、金属層の銅端子4等となる箇所にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した箇所に、化学エッチング液をスプレー噴霧して、不要な金属層をエッチング除去することにより銅端子4等を形成する。
【0036】
本実施形態のように金属層として銅箔を用いる場合、エッチングレジストは、通常の配線板に用いることのできるエッチングレジスト材料から構成されるものであればよく、レジストインクをシルクスクリーン印刷して形成できる。また、エッチングレジスト用ネガ型感光性ドライフィルムを銅箔の上にラミネートして、その上に配線形状に光を透過するフォトマスクを重ね、紫外線で露光し、露光しなかった箇所を現像液で除去して形成することもできる。化学エッチング液としては、塩化第二銅と塩酸との溶液、塩化第二鉄溶液、硫酸と過酸化水素との溶液又は過硫酸アンモニウム溶液等、通常の配線板のエッチングに用いる化学エッチング液を用いることができる。
【0037】
セミアディティブ法において、上記表面に薄い金属層又はシード層を形成する方法として、蒸着又はめっきによる方法及び金属箔を貼り合わせる方法などが挙げられる。蒸着による方法としては、スパッタリングが挙げられる。スパッタリングにより、金属層又はシード層としての下地金属と薄膜銅層とを形成する場合、薄膜銅層を形成するためのスパッタ法は以下のものが挙げられる。すなわち、2極スパッタ、3極スパッタ、4極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ミラートロンスパッタ等が挙げられる。スパッタに用いるターゲットのうち下地金属を形成するためのターゲットとして、薄膜銅層の密着性を確保するために、例えばCr、Ni、Co、Pd、Zr、Ni/Cr、Ni/Cu等の金属が用いられる。そして、下地金属の厚さが5〜50nmとなるようスパッタリングが施される。その後、銅をターゲットにしてスパッタリングを行い、薄膜銅層を200〜500nmの厚さとなるよう蒸着して金属層又はシード層が形成される。また、めっきにより金属層又はシード層を形成する方法としては、上に0.5〜3μmの厚みを有する無電解銅めっきを形成する方法が挙げられる。
【0038】
さらに、基板20の表面に接着機能がある場合は、銅箔などの金属箔をプレス又はラミネートによって貼り合わせることにより金属層又はシード層を形成することができる。なお、金属層が薄い場合、貼り合わせの容易性を考慮して、必要に応じて、厚い金属箔を貼り合わせた後にエッチング等により薄くする方法を採用してもよい。或いは、支持基材に金属箔が積層されてなるキャリア(支持基材)付金属箔をコア基板等に貼り合わせた後に、支持基材のみを剥離する方法を採用してもよい。
【0039】
前者の方法としては、キャリア銅箔、薄膜ニッケル、薄膜銅をこの順に積層してなる三層銅箔を用い、キャリア銅箔をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液でそれぞれ除去する方法が挙げられる。後者の方法としては、アルミ、銅又は絶縁樹脂などをキャリアとしたピーラブル銅箔などを使用することにより、5μm以下のシード層を形成する方法が挙げられる。また、厚み9〜18μmの銅箔を貼り付けた後、この銅箔を厚み5μm以下となるよう、エッチングを行いシード層を形成してもよい。
【0040】
セミアディティブ法では、上述の方法で形成されたシード層上に、めっきレジストを所望のパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層を上述のエッチング等により除去することで銅端子4等を形成することができる。
【0041】
上記アディティブ法において基板20上に銅端子4等を形成する方法としては、通常のめっきによる配線形成技術を用いることができる。すなわち、基板20上に無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、更に無電解めっき液に浸漬する。その後、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ無電解めっきを施し、銅端子4等を形成する。
【0042】
また、本実施形態においては、基板20上に、銅又は銅化合物を含有した導電ペーストを印刷法又はフォトリソグラフィー法等によりパターニング施工し、熱硬化処理又は焼成処理によって銅端子4等を形成したプリント配線板を採用してもよい。
【0043】
次に、基材表面除去工程S2に関して詳細に説明する。基材表面除去工程S2では、上述の配線板準備工程S1で準備したプリント配線板15の銅端子4等の間に存在する残渣を除去するために、銅端子4等の間に露出した基板20の絶縁部分へ表面処理を施す。これによって、基板20の表面等が所望の深さまで除去され、無電解ニッケルめっきの異常共析を防止することができる。
【0044】
この表面処理方法としては、ドライプロセス、ウェットプロセス又は物理的研磨等の方法が挙げられるが、ドライプロセスの異方性エッチングによる方法が好ましい。また、ドライプロセス及びウェットプロセス等の方法を組み合わせて表面を処理することも可能である。ドライプロセス及び/又はウェットプロセス等の方法によって除去する基板20の表面等の深さは、0.005μm〜5μmの範囲であるとより好ましく、0.01μm〜4μmの範囲であると更に好ましく、0.1μm〜2μmの範囲であると特に好ましい。この深さが、0.005μmよりも浅いと、基板20の表面上に存在する金属残渣を取り除くことが困難となり、異常析出の発生量を低減する効果が得られ難くなる傾向にある。一方、この深さが5μmよりも深いと、銅端子4等の下側までエッチングされて銅端子4等の剥離が起こりやすくなる傾向にある。
【0045】
銅端子4等の間に露出した基板20の表面を処理するドライプロセスとしては、プラズマエッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、反応性イオンビームエッチング(RIBE)法及び大気圧プラズマエッチング法が挙げられる。プラズマエッチング法に用いる装置として特に制限はないが、バレル型、平行平板型又はダウンフロー型装置などが挙げられる。反応性イオンエッチング(RIE)法に用いる装置として特に制限はないが、平行平板型、マグネトロン型、2周波型、ECR型、へリコン型又はICP型装置などが挙げられる。反応性イオンビームエッチング(RIBE)法に用いる装置として特に制限はないが、ECR型、カウフマン型又はICP型装置などが挙げられる。いずれもエッチングガスを適宜選択することが可能で、無機ガス、有機化合物蒸気又はこれらの混合物のいずれも用いることができる。無機ガスとしては、例えば、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、NO、NO、CO、CO、NH、SO、Cl、フレオンガス(CF、CH、C、C、CHF、CHFなど)、又はこれらの混合ガス及びこれらのガスへO或いはOの混入した混合ガス等が挙げられる。特にArは安定した樹脂表面を得ることができるので、より好ましい。有機化合物蒸気は特に限定されるものではなく、例えば、有機珪素化合物、アクリル酸等の不飽和化合物、有機窒素化合物、有機フッ素化合物又は一般有機溶媒などの蒸気が挙げられる。また、Arガス中に、適当な蒸気圧になるように適量の有機化合物蒸気を混合してもよい。
【0046】
ドライプロセスにより銅端子4等の間に露出した基板20への表面処理を行った場合、後処理として水若しくは有機溶媒、さらにはそれらの混合溶液による超音波洗浄又はアルカリ性溶液による洗浄を行うことがより好ましい。
【0047】
基板20の表面を処理するウェットプロセスとして、アルカリ性の溶液又は酸化力の大きな酸化剤を含有する溶液、さらにはそれらを組み合わせた溶液により処理する方法が挙げられる。ウェットプロセスによって除去する基板20の表面等の深さは0.002μm以上であることが好ましく、この深さを除去できる方法が好適である。アルカリ性の溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、又はエチレンジアミン、メチルアミン、2−アミノエタノール等のアミノ基を含有した化合物を1種以上含んだ溶液を用いることが好ましく、さらに錯化剤を含む溶液であるとより好ましい。酸化力の大きな酸化剤を含有する溶液としては、過マンガン酸塩、マンガン酸塩、クロム酸、クロム酸塩又は重クロム酸塩のうち1種以上を含む溶液であると好ましい。これらの溶液は常法により調製してもよく、市販品を入手してもよい。かかる溶液の市販品としては、例えば、2−アミノエタノールを含むRESIST STRIPPER 9296(富士化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0048】
基板20の表面を処理する物理的研磨方法としては、例えば、ウェットブラスト処理などが挙げられる。ウェットブラスト処理としては、例えば、ジェットスクラブが挙げられる。
【0049】
次に、ソルダーレジスト形成工程S25に関して詳細に説明する。本実施形態においては、基板表面除去工程S2の後にソルダーレジスト形成工程S25が備えられる。この工程では、無電解ニッケルめっき等を施すべき銅端子4等以外の配線を保護するためのソルダーレジストとして、プリント配線板15上に所定の開口部2a、2bを有する絶縁層を形成する。ソルダーレジスト3a、3bは、公知の感光性樹脂組成物を塗布し、所定の露光・現像を実施することにより形成される。また、所定の開口部2a、2bは、無電解めっきを施すべき銅端子4等の表面を露出し、それ以外の銅配線14を被覆するように設けられる。
【0050】
次に、無電解ニッケルめっき法に関する前処理工程S3について詳細に説明する。まず、第1の脱脂処理工程S31では、基板表面除去工程S2を経て得られるプリント配線板15の表面を清浄化するため、プリント配線板15及びソルダーレジスト3a、3bを備える構造体を水酸化カリウム溶液等のアルカリ性溶液に浸漬する。このアルカリ性溶液は、水酸化カリウム溶液以外に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物又はエチレンジアミン、メチルアミン、2−アミノエタノール等のアミノ基を含有した化合物を1種以上含む溶液を用いてもよい。また、アルカリ性溶液は、さらに錯化剤を含んでもよい。
【0051】
次に、第2の脱脂処理工程S32では、第1の脱脂処理工程S31を経て得られる構造体を脱脂液に浸漬して、主に露出した銅端子4等の表面の清浄化を行う。脱脂液としては特に限定されず、溶剤、酸性の水溶液又は市販の脱脂液を用いることができる。
【0052】
次に、本発明に係る前処理液を用いた前処理工程S33について説明する。この工程S33では、第2の脱脂処理工程S32を経て得られるプリント配線板15の表面に、本発明の無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液を接触させる。接触方法としては、例えば、プリント配線板15及びソルダーレジスト3a、3bを備える構造体を無電解ニッケルめっき用前処理液に浸漬する方法、及び、スプレー等を用いて上記前処理液をプリント配線板15の表面に散布する方法等が挙げられる。これらのうち、処理の均一性の観点から、上記構造体を本発明の前処理液に浸漬する方法が好ましい。また、工程S33は、基板20上の銅端子4等へ無電解ニッケルめっき皮膜を形成するための活性化処理が行われる置換パラジウムめっき処理工程S35よりも前に備えられることが好ましい。
【0053】
ここで、本発明の無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液の好適な実施形態について説明する。
【0054】
この前処理液は、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される脂肪族チオール化合物、並びに(4)で表されるジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硫黄化合物と有機溶剤とを含むことが好ましい。
【0055】
本実施形態における一般式(1)で表される硫黄化合物は、式中、aが1〜23の整数で示される化合物のうちいずれであってもよいが、aが4〜15の整数で示される化合物であることが好ましい。また、この前処理液は、一般式(1)で表される化合物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。aが23を超える化合物を用いた場合、部分的に無電解ニッケルめっきが析出しないという現象(以下、「スキップ」という。)が生じやすくなる傾向がある。
【0056】
上記一般式(2)で表される硫黄化合物は、式中、bが5〜23の整数で示される化合物のうちいずれであってもよいが、bが8〜15の整数で示される化合物であることが好ましい。また、この前処理液は、一般式(2)で表される化合物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。bが4未満の化合物を用いた場合、異常析出を抑制する効果が得られ難くなる傾向にある。さらに、そのような硫黄化合物は臭気が強く、揮発性も高いため作業環境上好ましくない。一方、bが23を超える化合物を用いた場合、スキップが起こりやすくなる傾向がある。
【0057】
上記一般式(3)で表される硫黄化合物は、式中、cが5〜23の整数で示される化合物のうちいずれであってもよいが、cが8〜15の整数で示される化合物であることが好ましい。また、この前処理液は、一般式(3)で表される化合物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。cが5未満の化合物を用いた場合、異常析出を抑制する効果が得られ難くなる傾向にある。さらに、そのような硫黄化合物は臭気が強く、揮発性も高いため作業環境上好ましくない。一方、cが23を超える化合物を用いた場合、スキップが生じやすくなる傾向がある。
【0058】
上記一般式(4)で表される硫黄化合物は、式中、n及びmがそれぞれ独立に4〜15の整数で示される化合物のうちいずれであってもよいが、n及びmがそれぞれ独立に8〜13の整数で示される化合物であることが好ましい。また、この前処理液は、一般式(4)で表される化合物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。n又はmが4未満の化合物を用いた場合、異常析出を抑制する効果が得られ難くなる傾向にある。さらに、そのような化合物の臭気は強く、揮発性も高いため作業環境上好ましくない。一方、n又はmが15を超える化合物を用いた場合には、スキップが発生しやすくなる傾向がある。なお、式中、R及びRが二価の有機基である場合、それぞれ独立に、−CH(OH)−、−CH(COOH)−、−C2tCH(OH)−若しくは−C2uCH(COOH)−であることが好ましい。ここで、t及びuは、4〜15の整数を示す。
【0059】
上記一般式(4)で表される硫黄化合物は、容易に入手できる点で、R及びRが単結合であるものが好ましい。すなわち、下記一般式(5)で表される硫黄化合物であることが好ましい。
−(CH−S−S−(CH−R (5)
式中、R及びRはそれぞれ独立に、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を示し、r及びsはそれぞれ独立に4〜15の整数を示す。また、この化合物は、r及びsがそれぞれ独立に8〜13の整数で示される化合物であることが好ましい。
【0060】
また、本発明の無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液は、上記一般式(1)〜(4)で表される化合物のうちの1又は2種以上を含むものであってもよい。
【0061】
さら本発明の前処理液には、上記一般式(1)〜(4)で表される硫黄化合物以外に、分子内に硫黄原子を有する複素環式化合物を含有することができる。これにより、式(1)〜(4)で表される硫黄化合物が長鎖の炭化水素基を含むものである場合には、分子同士の凝集をより抑制しつつ前処理液中の有機溶剤含有量を低減させることができ、前処理の作業性が向上する。
【0062】
分子内に硫黄を含む複素環式化合物としては、例えば、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、6−アミノ−2−メルカプトペンゾチアゾール、2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、6−メルカプトプリン、2−メルカプトピリジン、2−メルカプトピリミジン、2−アミノチアゾール、2−アミノ−2−チアゾリン、4−アミノ−2,1,3−ベンゾチアゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンゾイミダゾール、4−アミノ−6−メルカプトピラゾール、2,6−メルカプトプリン、2−メルカプトベンゾオキサゾール等のメルカプト基を有する複素環式化合物が挙げられる。上記前処理液は、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。これらの化合物のうち、特に、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、6−アミノ−2−メルカプトペンゾチアゾール、2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾールが好ましい。
【0063】
上記前処理液に含まれる有機溶剤は、特に限定されない。その具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジアリルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、シクロへキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン等のアミド系溶剤、トルエン、フェノール等の芳香族炭化水素などが挙げられる。上記前処理液は、これらの有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。また、上記有機溶剤は水と混合して使用することが好ましい。更に、本実施形態においては、容易に入手できる点から、上記溶剤のうち、エタノール又はアセトンを用いることが好ましい。
【0064】
さらに、この前処理液は、錯化剤、pH調整剤及び界面活性剤から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
【0065】
錯化剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸のナトリウム(1−、2−、3−及び4−ナトリウム)塩、エチレンジアミントリ酢酸、ニトロテトラ酢酸及びそのアルカリ塩、グリコン酸、酒石酸、グルコネート、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、ピロリン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、トリエタノールアミングルコノ(γ)−ラクトン等が挙げられるが、特に限定はなく、錯化剤として機能するものでものあればよい。また、これらの錯化剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0066】
pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、蟻酸、塩化第二銅、硫酸第二鉄等の鉄化合物、アルカリ金属塩化物、過硫酸アンモニウム等の化合物を1種又は2種以上含む酸性水溶液、又はクロム酸、クロム酸−硫酸、クロム酸−フッ酸、重クロム酸、重クロム酸−ホウフッ酸等の6価クロムを有する化合物の酸性水溶液が挙げられる。また、アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、エチレンジアミン、メチルアミン、2−アミノエタノール等のアミノ基を有する化合物を1種以上含む溶液が挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
本発明に係る前処理液中の上記硫黄化合物の合計含有量は0.0005g/L〜2g/Lであることが好ましく、0.0008g/L〜1g/Lであることがより好ましく、0.001g/L〜0.05g/Lであることが更に好ましい。上記硫黄化合物の合計含有量が0.0008g/L未満であると、異常析出に対する抑制効果が低下し、0.0005g/L未満であると、その効果が更に得られ難くなる傾向にある。そのため、微細配線間の絶縁信頼性を十分に確保することが難しくなる。上記硫黄化合物の合計含有量が2g/Lを超えると、有機溶剤の含有量によっては銅端子4等の表面に残存する硫黄化合物の量が多くなるために、後述するパラジウムへの置換反応が抑制される。その結果、スキップが発生しやすくなる傾向にある。また、銅端子4等の表面へ硫黄化合物が吸着することによって、銅端子4等と無電解ニッケルめっき皮膜との密着は阻害される。それにより、はんだ接続信頼性が低下する傾向にある。
【0069】
また、異常析出をより有効に抑制する観点から、前処理液中の上記有機溶剤の合計含有量X(mL/L)と前処理液中の上記硫黄化合物の合計含有量Y(g/L)との比(X/Y)が80000以下であると好ましく、更に異常析出を抑制する観点から、上記の比が50000以下であることがより好ましく、20000以下であることが更に好ましい。
【0070】
さらに、前処理液がz種類の上記硫黄化合物を含む場合、前処理液中の有機溶剤の合計含有量X(mL/L)と、前処理液中の硫黄化合物に含まれるメチレン基(−CH−)の合計含有量M(mol/L)との比(X/M)が9500以上であることが好ましい。このような条件を満たす場合には、無電解ニッケルめっきにおける異常析出及びスキップの発生をより確実に防止することができる。これにより、ワイヤボンディング性及びはんだ接続信頼性を、より高めることができる。
【0071】
なお、本発明の前処理液中の硫黄化合物に含まれるメチレン基の合計含有量M(mol/L)は、下記一般式(6)で求められる値を意味する。
【0072】
【数1】

【0073】
式(6)中、Sは第k番目の硫黄化合物のモル濃度(mol/L)を示し、Cは第k番目の硫黄化合物が有するメチレン基の数を示す。なお、kは1〜zの整数を示し、第k番目の硫黄化合物とは、z種類の硫黄化合物を1番目からz番目まで任意に順番をつけた時のk番目に対応する硫黄化合物を指す。
【0074】
また、めっきの異常析出とスキップの双方を高水準で抑制する観点から、上記の比(X/M)を9600〜1600000の範囲内にすることがより好ましく、9600〜500000の範囲内にすることが更に好ましい。
【0075】
本発明に係る前処理液による前処理工程S33においては、上述のように工程S32までを経て得られるプリント配線板15の表面に、上記無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液を接触させる。その接触時間は特に限定されないが、前処理液中に含まれる硫黄化合物の種類及び濃度に応じて適宜変化させることが好ましい。また、上記前処理液の温度は、本発明による上述の効果をより有効に発揮する観点から、10℃〜50℃であると好ましく、15℃〜40℃であるとより好ましく、20℃〜30℃であると特に好ましい。
【0076】
本発明の無電解ニッケルめっき法によれば、鉛イオンが含まれない無電解ニッケルめっき液を使用する場合であっても、上述のようなめっき皮膜が形成できる。そのため、無電解ニッケルめっき皮膜における鉛の含有量が十分低減でき、環境規制に対応したプリント配線板を製造することが可能となる。
【0077】
続いて、ソフトエッチング処理工程S34では、プリント配線板15上の無電解ニッケルめっきを施すべき銅端子4等の表面を清浄化にするために、プリント配線板15をエッチング液に浸漬してソフトエッチングを行う。
【0078】
エッチング液としては、通常のソフトエッチング処理に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液、硫酸−過酸化水素水溶液又は市販のソフトエッチング液を用いることができる。工程S34では、上記ソフトエッチングに続いて、酸を用いて洗浄する。銅端子4等に形成された酸化膜を除去するために、配線板を希酸へ比較的短時間浸漬して洗浄を行う。希酸としては、特に限定されず、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸等を用いることができる。
【0079】
次に、置換パラジウムめっき処理工程S35では、上述の本発明に係る前処理液を用いた前処理工程S33を経て得られるプリント配線板15を、パラジウム化合物含有水溶液に浸漬する。これにより、銅端子4等の表面上に触媒となる金属パラジウムが選択的に析出する。パラジウム化合物含有水溶液としては、銅端子4等の表面上の銅をパラジウムと置換できるものであれば特に限定されず、従来のニッケルめっきの前処理に用いられるものであってもよい。パラジウム化合物としては、2価のパラジウムイオンを含むものであればよく、例えば、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム等が挙げられる。
【0080】
続いて、無電解ニッケルめっき処理工程S4では、工程S35の後に得られるプリント配線板15を無電解ニッケルめっき液に浸漬する。本発明に係る前処理工程S3を経ることにより、工程S25で形成されるソルダーレジストによって覆われていない銅端子4等にのみ選択的に無電解ニッケルめっき皮膜を形成することができる。なお、本実施形態の無電解ニッケルめっき法における無電解ニッケルめっきは、純ニッケル又はNi−P、Ni−P−Cu、Ni−B、Ni−P−B−W等のニッケル合金からなるめっき皮膜を無電解法によって形成することである。すなわち、このめっき皮膜はニッケルを主成分として含んでいればよく、合金の種類は特に限定されない。ここで、主成分とは合金中にニッケルを85%以上含む状態をいう。
【0081】
なお、無電解ニッケルめっき液は従来から用いられているものを採用することができる。例えば、塩化ニッケル若しくは硫酸ニッケル等のニッケルイオン源となる化合物及び次亜りん酸塩若しくはアミンホウ素化合物等の還元剤に加えて、クエン酸、マロン酸、酒石酸等の有機酸若しくはその塩等の錯化剤又はその他のpH調整剤等、通常用いる各種添加剤を適量含んでもよい。
【0082】
プリント配線板15を浸漬する間の上記めっき液の温度及び浸漬時間は、所望の膜厚を有するニッケルめっき皮膜を得ることができるよう適宜設定することができる。
【0083】
次に、パラジウムめっき処理工程S5では、工程S4を経て得られた銅端子4の表面に無電解ニッケルめっき皮膜5を有するプリント配線板15を、パラジウムめっき液に接触させる。これにより、無電解ニッケルめっき皮膜表面にパラジウムめっき皮膜が無電解法により形成される。このパラジウムめっき皮膜の形成機構は、めっき液中に含まれる還元剤がパラジウムイオンを還元する作用によって、ニッケルめっき皮膜表面上にパラジウムを析出させるものである。還元剤にギ酸化合物を用いると、無電解パラジウムめっき皮膜中のパラジウム純度が99質量%以上になるため、上記はんだ接続用端子12のはんだ接続信頼性が高くなり好ましい。また、還元剤としてリン含有化合物又はホウ素含有化合物を用いる場合、めっき皮膜がPd−P又はPd−B合金として形成されるため、パラジウムの純度は90質量%以上になる。この場合、上記はんだ接続用端子12におけるはんだボール接続信頼性は高いレベルに維持される。すなわち、このパラジウムの純度は90質量%以上であればよい。
【0084】
無電解パラジウムめっき皮膜の膜厚は、0.02μm〜1.0μmの範囲が好ましく、0.03μm〜0.5μmの範囲がより好ましく、0.05μm〜0.2μmの範囲が特に好ましい。この膜厚が1.0μmを超えると、無電解パラジウムめっき皮膜を形成することに基づく効果がそれ以上に向上せず、経済的でなくなる傾向にある。また、この膜厚が0.02μm未満であると、はんだ接続信頼性が低下するとともに、加熱処理後の上記ワイヤボンディング接続用端子1におけるワイヤボンディング性も低下する傾向にある。
【0085】
次に、金めっき処理工程S6では、上述の無電解パラジウムめっき皮膜上に更に金めっき皮膜を形成する。金めっき皮膜の形成方法は、置換析出型(置換型)の金めっき液から金を析出させた後に、還元析出型(還元型)の金めっき液から金を析出させて無電解金めっき皮膜を得る方法が好ましい。置換型の金めっきは、下地皮膜を形成するパラジウムとめっき液中の金イオンとの置換反応によって、パラジウム表面に金皮膜が形成するものである。この金めっき液には、シアン化合物を含むものと含まないものとがあるが、いずれのめっき液でも使用できる。必要に応じて、同一の液で置換と還元が起こる、置換・還元型の無電解金めっき皮膜を形成してもよい。
【0086】
この無電解金めっき皮膜を形成する金の純度は、99質量%以上であることが好ましい。この金の純度が99質量%未満であれば、はんだ接続信頼性が低下する場合がある。さらに、無電解金めっき皮膜中の金純度は、99.5質量%以上であることがより好ましい。金めっき皮膜の膜厚は、0.005〜3μmであることが好ましく、0.005〜1μmであることがより好ましく、0.005〜0.5μmであることが特に好ましい。この膜厚が0.005μm未満では、ワイヤボンディング性が低下する傾向にある。この膜厚が3μmを超えると、無電解金めっき皮膜により得られる効果がそれ以上に向上せず、経済的でなくなる傾向にある。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の無電解ニッケルめっき法において、前処理工程S3は、少なくとも、プリント配線板15の表面に本発明の無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液を接触させる前処理工程S33を含んでいればよい。すなわち、その他の各処理工程に相当する、第1の脱脂処理工程S31、第2の脱脂処理工程S32、ソフトエッチング処理工程S34及び置換パラジウムめっき処理工程S35については省略或いは変更することが可能である。
【0088】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお以下、特に断りが無い限り濃度は質量%である。
【0089】
(実施例1)
【0090】
(工程a:配線形成)
厚さ0.3mmのガラス布―エポキシ樹脂基板と厚さ1μmの銅箔とが積層されたガラス布―エポキシ樹脂銅張積層板の所望の位置にドリルを用いて貫通孔を形成した後、その積層板に無電解銅めっきを施し、両主面の導通を取った。更にその積層板の両主面上に所定パターンのエッチングレジストを形成した後、塩化第二鉄溶液を用いたエッチングによって不要な銅箔を除去した。これにより、図1、2に示すものと同様に、基板20と、その基板の一方の主面に設けられたワイヤボンディング用端子1を形成するための銅端子4と、他方の主面に設けられたはんだ接続用端子12を形成するための銅端子4と、両主面に設けられた展開配線を構成する銅配線14とを備えたプリント配線板15を得た。形成されたワイヤボンディング用接続端子1に用いるための銅端子4は、端子幅:50μm、端子長さ:200μm、端子間距離:20μm、端子の厚み:15μmであった(高さ/距離=3/4)。また、はんだ接続用端子12に用いるための銅端子4は直径:800μm、端子の厚み:15μmであった。
【0091】
(工程b:ソルダーレジスト形成)
次に、図2(a)に示すように、ワイヤボンディング用接続端子1を露出するような開口部2aを有するソルダーレジスト3aを以下の手順で形成した。また、はんだ接続用端子12についても、図2(b)に示すように、直径650μmの開口部2bを有するソルダーレジスト3bを以下の手順で形成した。すなわち、感光性のソルダーレジストであるPSR−4000 AUS5(太陽インキ製造株式会社製、商品名)をロールコータを用いて、硬化後の厚みが40μmとなるよう上記プリント配線板15の両面に塗布した。続いて、そのソルダーレジストに対して露光及び現像を行った。こうして、所望の位置に開口部2a、2bを有するソルダーレジスト3a、3bをプリント配線板15上に形成した。
【0092】
(工程c:前処理1)
上述のようにして得られたプリント配線板15及びソルダーレジスト3a、3bを備えた構造体を、30g/Lの水酸化カリウム溶液に50℃で3分間浸漬し、1分間湯洗した後、5分間水洗した。
【0093】
(工程d:前処理2)
次に、この構造体を、脱脂液、Z−200(株式会社ワールドメタル製、商品名)に50℃で3分間浸漬し、2分間水洗した。
【0094】
(工程e:前処理3(無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液による前処理))
次に、この構造体を、脂肪族チオール化合物であるメルカプト酢酸の濃度が0.02g/Lに相当するよう調整した5mL/Lのエタノール溶液に、25℃で3分間浸漬し、50℃で1分間湯洗した後、1分間水洗した。
【0095】
(工程f:前処理4)
次に、この構造体を、100g/Lの過硫酸アンモニウム溶液に1分間浸漬し、2分間水洗した。続いて、構造体を10%の硫酸に1分間浸漬し、2分間水洗した。
【0096】
(工程g:置換パラジウムめっき処理)
次に、この構造体を、めっき活性化処理液、SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に25℃で5分間浸漬し、2分間水洗した。
【0097】
(工程h:無電解ニッケルめっき処理)
次に、この構造体を、下記に示す組成からなる、鉛を含まない無電解ニッケルめっき液に85℃で4分間浸漬した。これにより、ワイヤボンディング用接続端子1及びはんだ接続用端子12を形成するための銅端子4等上に膜厚約1μmの無電解ニッケルめっき皮膜が形成された。続いて、無電解ニッケルめっき皮膜形成後の構造体を1分間水洗し、第1の配線板とした。(以下、無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚が約1μmのものを「第1の配線板」という。)一方、工程gを経て得られたプリント配線板15を、同様の無電解ニッケルめっき液を用いて85℃で10分間浸漬することにより、銅端子4等上に膜厚約2.5μmの無電解ニッケルめっき皮膜を形成した。続いて、これを1分間水洗し、第2の配線板とした。(以下、無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚が約2.5μmのものを「第2の配線板」という。)
硫酸ニッケル・6水和物 22.5g/L
次亜リン酸ナトリウム 20.0g/L
リンゴ酸 10.0g/L
コハク酸 10.0g/L
グリシン 0.5g/L
チオジグリコール酸 5mg/L
ヘキサアンミンクロム(II)クロリド 50mg/L
pH:4.6(水酸化ナトリウムを用いて調整)
【0098】
上記工程を経て得られた第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、下記の基準に基づいて、ニッケルめっきの異常析出及びスキップの発生を評価した。結果を表9に示す。
【0099】
<めっきの異常析出の評価>
A:異常析出なく銅端子4等上にめっき皮膜が良好に形成されている。(図5を参照)
B:銅端子4等の外周に部分的にめっきがはみ出して析出している。(図6を参照)
C:銅端子4等の外周全体にめっきがはみ出して析出し、端子間の基板表面の一部にもめっきが析出している。(図7を参照)
D:銅端子4等の外周全体にめっきがはみ出して析出し、端子間の基板表面の一部にもめっきが析出し、部分的に短絡している。(図8を参照)
E:銅端子4等の外周全体にめっきがはみ出して析出し、端子間の基板表面の一部にもめっきが析出し、完全に短絡している。(図9を参照)
【0100】
<スキップの評価>
A:350箇所すべての銅端子4等にめっき皮膜が良好に形成されている。
B:めっき皮膜が良好に形成されていない銅端子4等が1箇所以上3個所以内ある。
C:めっき皮膜が良好に形成されていない銅端子4等が4箇所以上34個所以内ある。
D:めっき皮膜が良好に形成されていない銅端子4等が35箇所以上ある。
【0101】
(工程i:無電解パラジウムめっき処理)
次に、第1の配線板及び第2の配線板それぞれを、無電解パラジウムめっき液であるAPP(石原薬品工業株式会社製、商品名)に50℃で5分間浸漬し、2分間水洗した。
【0102】
(工程j:無電解金めっき処理)
さらに、工程iを経た第1の配線板及び第2の配線板それぞれを、置換金めっき液であるHGS−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に85℃で10分間浸漬した後に、無電解金めっき液であるHGS−2000(日立化成工業株式会社製、商品名)に65℃で30分間浸漬し、5分間水洗した。こうして、銅端子4等上にめっき層108を設けた。
【0103】
工程i及びjを経ることによってはんだ接続用端子12及びワイヤボンディング用接続端子1が形成された第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0104】
<はんだ接続信頼性>
100箇所のはんだ接続用端子12に、直径0.76mmのSn−3.0Ag−0.5Cuはんだボールをリフリー炉で接続させ、150℃で1000時間放置した。その後、耐衝撃性ハイスピードボンドテスター 4000HS(デイジ社製、商品名)を用いて、約200mm/秒の条件で上記はんだボールのシェア(剪断)試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:100箇所全てのはんだ接続用端子においてはんだボール内での剪断による破壊が認められた。
B:はんだボール内での剪断による破壊以外のモードによる破壊が1箇所以上5個所以内で認められた。
C:はんだボール内での剪断による破壊以外のモードによる破壊が6箇所以上29個所以内で認められた。
D:はんだボール内での剪断による破壊以外のモードによる破壊が30個所以上で認められた。
【0105】
<ワイヤボンディング性>
第1の配線板及び第2の配線板それぞれを、150℃で50時間加熱放置後、ワイヤ径30μmの金線を用いて350箇所全てにワイヤボンディングを行った。その後、ボンドテスター BT2400PC(デイジ社製、商品名)を用いて、金ワイヤプルテストを実施し、それぞれの配線板についてワイヤボンディング性を評価した。評価基準は以下のとおりである
A:350箇所全てのワイヤボンディング用接続端子において9g以上の密着強度が得られた。
B:9gよりも低い密着強度のワイヤボンディング用接続端子が5箇所以上34箇所以下であった。
C:9gよりも低い密着強度のワイヤボンディング用接続端子が35箇所以上104箇所以下であった。
D:9gよりも低い密着強度のワイヤボンディング用接続端子が105箇所以上であった。
【0106】
また、表9に、前処理液中の有機溶剤の合計含有量X(mL/L)と前処理液中の上記式(1)〜(4)で示される硫黄化合物の合計含有量Y(g/L)との比(X/Y)、及び前処理液中の有機溶剤の合計含有量X(mL/L)と前処理液中の上記式(1)〜(4)で示される硫黄化合物に含まれるメチレン基の合計含有量M(mol/L)との比(X/M)を示す。なお、含有される硫黄化合物の化合物名、その化学式及び分子量、並びに、硫黄化合物に含まれるメチレン基の数を表12に示す。
【0107】
(実施例2〜43)
実施例1の工程eにおける無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液に代えて、表1〜3に示される含有量の硫黄化合物及び溶媒を含む前処理液を実施例2〜43において用いた。その条件以外は実施例1と同様にして、それぞれの実施例について、第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。また、表9中には実施例1と同様に、実施例2〜43におけるX/Y、X/Mを示す。更に、実施例2〜43において含有される硫黄化合物の化合物名、その化学式及び分子量、並びに、硫黄化合物に含まれるメチレン基の数は表12に示す。
【0108】
(実施例44)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として下記のドライプロセス1を実施した以外は実施例1と同様にして、第1の配線板及び第2の配線板を作製した。得られた第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。また、表9中には実施例1〜43と同様に、実施例44〜49におけるX/Y、X/Mを示す。
【0109】
(ドライプロセス1)
反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて、銅端子4等の間に露出した基板20の表面処理を以下に示した条件の下で行った。基板20の絶縁樹脂表面はエッチングにより、0.5μm程度の深さまで除去された。
装置名:プラズマ洗浄装置(三洋ハイテクノロジー製、SPC−100B)
パワー:600W
ガスおよび流量:Ar、5SCCM
処理時間:3min
【0110】
(実施例45)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として下記のウェットプロセス1を実施した以外は実施例1と同様にして、実施例45の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0111】
(ウェットプロセス1)
工程aを経た配線板を、エチレンジアミン1水和物(関東化学株式会社製、商品名)の10mL/L水溶液に50℃で30分間浸漬した後、50℃で5分間湯洗し、3分間水洗した。基板20の絶縁樹脂表面はエッチングにより、0.5μm程度の深さまで除去された。
【0112】
(実施例46)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として下記のウェットプロセス2を実施した以外は実施例1と同様にして、実施例46の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0113】
(ウェットプロセス2)
工程aを経た配線板を、40%メチルアミン水溶液(関東化学株式会社製、商品名)の10mL/L水溶液に50℃で30分間浸漬した後、50℃で5分間湯洗し、3分間水洗した。基板20の絶縁樹脂表面はエッチングにより、0.5μm程度の深さまで除去された。
【0114】
(実施例47)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として下記のウェットプロセス3を実施したこと以外は実施例1と同様にして、実施例47の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0115】
(ウェットプロセス3)
工程aを経た配線板を、RESIST STRIPPER 9296(富士化学工業株式会社製、商品名)の10mL/L水溶液に90℃で3分間浸漬した後、50℃で5分間湯洗し、3分間水洗した。基板20の絶縁樹脂表面はエッチングにより、0.5μm程度の深さまで除去された。
【0116】
(実施例48)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として下記のウェットプロセス4を実施した以外は実施例1と同様にして、実施例48の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0117】
(ウェットプロセス4)
工程aを経た配線板に対して、強い酸化力を有する酸化剤である過マンガン酸塩を含有する溶液を用いることにより、銅端子4等の間に露出した基板20の表面処理を以下に示した条件の下で行った。処理には、デスミア処理システム(シプレイ・ファーイースト株式会社製、商品名:サーキュポジット200MLB)を用いた。具体的には、膨潤処理工程としてサーキュポジットMLBコンディショナ211及びサーキュポジットZの混合水溶液(水:70体積%、コンディショナ211:20体積%、サーキュポジットZ:10体積%)に第1の配線板及び第2の配線板それぞれを、70℃で3分間浸漬した。次に、除去処理工程としてサーキュポジットMLBプロモータ213A及びサーキュポジットMLBプロモータ213Bの混合水溶液(水:75体積%、プロモータ213A:10体積%、プロモータ213B:15体積%)にこの配線板を、70℃で3分間浸漬した。次に、中和処理工程としてサーキュポジットMLBニュートラライザ216−4(水:80体積%、ニュートラライザ216−4:20体積%)に配線板を、40℃で5分間浸漬し、更に3分間水洗した。基板20の絶縁樹脂表面はエッチングにより、0.5μm程度の深さまで除去された。
【0118】
(実施例49)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として下記の物理的研磨1を実施した以外は実施例1と同様にして、実施例49の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0119】
(物理的研磨1)
ウェットブラスト処理(ジェットスクラブ等による物理的研磨処理)により、銅端子4等の間に露出した基板20の表面処理を以下に示した条件の下で行った。基板20の絶縁樹脂表面はエッチングにより、0.5μm程度の深さまで除去された。
装置名:PFE−3000T(マコー株式会社製)
圧力:0.2MPa
微粒子:アルミナ♯2000(中心粒径:約6.7μm)
搬送速度:0.5m/min
【0120】
(実施例50)
実施例20における工程aの直後に、工程a’として上記ドライプロセス1を実施した以外は実施例20と同様にして、第1の配線板及び第2の配線板を作製した。得られた第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にしてめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。また、表9中には実施例1〜49と同様に、実施例50〜54におけるX/Y、X/Mを示す。
【0121】
(実施例51)
実施例20における工程aの直後に、工程a’として上記ウェットプロセス1を実施した以外は実施例20と同様にして、実施例51の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0122】
(実施例52)
実施例20における工程aの直後に、工程a’として上記ウェットプロセス2を実施した以外は実施例20と同様にして、実施例52の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0123】
(実施例53)
実施例20における工程aの後に、工程a’として上記ウェットプロセス3を実施した以外は実施例20と同様にして、実施例53の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0124】
(実施例54)
実施例20における工程aの後に、工程a’として上記ウェットプロセス4を実施した以外は実施例20と同様にして、実施例54の第1の配線板及び第2の配線板を作製した。第1の配線板及び第2の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表9に示す。
【0125】
(比較例1)
実施例1に示した工程eにおける無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液による前処理を行なわず、工程hにおける無電解ニッケルめっき処理を行う条件を以下のように変更した。すなわち、プリント配線板15及びソルダーレジスト3a、3bを備えた構造体を、85℃で2分間浸漬し、銅端子4等上へ膜厚約0.5μmの無電解ニッケルめっき皮膜を形成した。これら以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例1の第3の配線板を作製した。(以下、無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚が約0.5μmのものを「第3の配線板」という。)第3の配線板について、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表10に示す。
【0126】
また、表10及び11においても、実施例と同様に、比較例1〜42におけるX/Y、X/Mを示す。ただし、前処理液が上記式(1)〜(4)で示される硫黄化合物を含まない場合には、該当する値がないものとして「−」を記した。
【0127】
(比較例2)
実施例1の工程eにおける上記前処理を行なわず、工程hにおける上記めっき処理を行う条件を以下のように変更した。すなわち、プリント配線板15及びソルダーレジスト3a、3bを備えた構造体を、85℃で約50秒間浸漬し、銅端子4等へ膜厚約0.2μmの無電解ニッケルめっき皮膜を形成した。これら以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例2の第4の配線板を作製した。(以下、無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚が約0.2μmのものを「第4の配線板」という。)第4の配線板について、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表10に示す。
【0128】
(比較例3〜22)
実施例1の工程eにおける無電解ニッケルめっき形成用前処理液に代えて、表6に示される含有量の硫黄化合物及び溶媒を含む前処理液を比較例3〜22に用いた。また、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理を行う条件を比較例1と同様にした。これら以外は実施例1と同様にして、比較例3〜22の第3の配線板を作製した。比較例3〜22の第3の配線板について、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表10に示す。
【0129】
(比較例23〜36)
実施例1の工程eにおける無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液に代えて、表7に示される含有量の硫黄化合物及び溶媒を含む前処理液を比較例23〜36に用いた。また、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理を行う条件を以下のように変更した。すなわち、プリント配線板15及びソルダーレジスト3a、3bを備えた構造体を、85℃で2分間及び4分間浸漬し、銅端子4等上へ膜厚約0.5μm及び1.0μmの無電解ニッケルめっき皮膜を形成した。これら以外は実施例1と同様にして、比較例23〜36の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。比較例23〜36の第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0130】
(比較例37)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として上記のドライプロセス1を実施した後、実施例1の工程eにおける無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液による前処理を行なわず、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理工程を比較例23と同様にして行った。上記工程以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例37の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0131】
(比較例38)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として上記のウェットプロセス1を実施した後、実施例1の工程eにおける前処理を行なわず、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理工程を比較例23と同様にして行った。上記工程以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例38の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0132】
(比較例39)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として上記のウェットプロセス2を実施した後、実施例1の工程eにおける前処理を行なわず、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理工程を比較例23と同様にして行った。上記工程以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例39の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0133】
(比較例40)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として上記のウェットプロセス3を実施した後、実施例1の工程eにおける前処理を行なわず、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理工程を比較例23と同様にして行った。上記工程以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例40の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0134】
(比較例41)
実施例1における工程aの直後に、工程a’として上記のウェットプロセス4を実施した後、実施例1の工程eにおける前処理を行なわず、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理工程を比較例23と同様にして行った。上記工程以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例41の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0135】
(比較例42)
実施例1における工程aの後に、工程a’として上記の物理的研磨1を実施した後、実施例1の工程eにおける前処理を行なわず、工程hに係る無電解ニッケルめっき処理工程を比較例23と同様にして行った。上記工程以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例42の第3の配線板及び第1の配線板を作製した。第3の配線板及び第1の配線板それぞれについて、実施例1と同様にめっきの異常析出、スキップの発生、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性を評価した。結果を表11に示す。
【0136】
【表1】


【0137】
【表2】



【0138】
【表3】

【0139】
【表4】



【0140】
【表5】



【0141】
【表6】



【0142】
【表7】



【0143】
【表8】



【0144】
【表9】


【0145】
【表10】


【0146】
【表11】


【0147】
【表12】



【0148】
実施例1〜54の結果から明らかなように、本発明によれば、無電解ニッケルめっき皮膜を形成する際に、銅端子同士、銅配線同士並びに銅端子と銅配線の間における異常析出の発生を十分に防止することができる。そのため、微細配線を有するプリント配線板において絶縁信頼性に優れ、更に、はんだ接続信頼性及びワイヤボンディング性に優れた半導体チップ搭載基板の提供が可能となる。また、前処理液中の有機溶剤の合計含有量X(mL/L)と前処理液中の硫黄化合物に含まれるメチレン基(−CH−)の合計含有量M(mol/L)との比(X/M)を9500以上とした実施例においては、異常析出の発生を十分防止ながら、スキップをより確実に防止できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る半導体チップ搭載用基板を示す模式平面図である。
【図2】(a)は図1に示す半導体チップ搭載用基板におけるa−a線に沿う模式断面図であり、(b)は図1に示す半導体チップ搭載用基板におけるb−b線に沿う模式断面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態にかかる半導体チップ搭載用基板の製造方法を示す工程図である。
【図4】無電解ニッケルめっきが施されるワイヤボンディング用接続端子の形状を示す模式平面図である。
【図5】ワイヤボンディング用接続端子の外周及び端子間に異常析出が発生せず、無電解ニッケルめっき皮膜が良好に形成された配線板を示す模式平面図である。
【図6】ワイヤボンディング用接続端子の外周及び端子間に異常析出が発生している配線板の一例を示す模式平面図である。
【図7】ワイヤボンディング用接続端子の外周及び端子間に異常析出が発生している配線板の他の例を示す模式平面図である。
【図8】ワイヤボンディング用接続端子の外周及び端子間に異常析出が発生している配線板の更に他の例を示す模式平面図である。
【図9】ワイヤボンディング用接続端子の外周及び端子間に異常析出が発生している配線板のなおも更に他の例を示す模式平面図である。
【符号の説明】
【0150】
1…ワイヤボンディング用接続端子、12…はんだ接続用端子、2a、2b…開口部、3a、3b…ソルダーレジスト、4…銅端子、14…展開配線を構成する銅配線、5…無電解ニッケルめっき皮膜、6…パラジウムめっき皮膜、7…置換金めっき、8…無電解金めっき、108…めっき層、10…半導体チップ搭載用基板、15…プリント配線板、20…基板、40…無電解ニッケルめっきが良好に形成されたワイヤボンディング用接続端子、60…接続端子の外周に析出しためっき、70…端子間の基板上に析出しためっき。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、その基板の第1の主面上に設けられたワイヤボンディング用接続端子と、前記基板の前記第1の主面とは反対側の第2の主面上に設けられたはんだ接続用端子と、前記第1の主面上に設けられ前記ワイヤボンディング用接続端子から延びている接続用配線と、を備える半導体チップ搭載用基板であって、
前記ワイヤボンディング用接続端子及び前記はんだ接続用端子は、金属端子及びその表面を被覆する無電解ニッケルめっき皮膜を有し、前記接続用配線は金属配線及び必要に応じてその表面を被覆する無電解ニッケルめっき皮膜を有し、
前記第1の主面上における前記金属端子同士、前記金属配線同士、並びに前記金属端子及び前記金属配線間の距離の少なくとも一部が30μm以下であり、かつ、前記一部の距離を形成する前記金属端子及び/又は前記金属配線の前記第1の主面からの高さが前記距離の3/10以上であり、少なくとも前記一部の距離を形成する前記金属端子及び/又は前記金属配線の表面を被覆するように0.8μm以上の厚みを有する前記無電解ニッケルめっき皮膜が選択的に形成されている半導体チップ搭載用基板。
【請求項2】
前記無電解ニッケルめっき皮膜の表面上に、更にパラジウムめっき皮膜及び金めっき皮膜がこの順に形成されている、請求項1記載の半導体チップ搭載用基板。
【請求項3】
前記パラジウムめっき皮膜の厚みは0.02〜1.0μmである、請求項2記載の半導体チップ搭載用基板。
【請求項4】
前記金めっき皮膜の厚みは0.04μm以上である、請求項2又は3に記載の半導体チップ搭載用基板。
【請求項5】
請求項1記載の半導体チップ搭載用基板を形成する際に用いられる無電解ニッケルめっき皮膜形成用前処理液であって、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の硫黄化合物と、有機溶剤と、を含有する前処理液。
HS−(CH−COOH (1)
HS−(CH−OH (2)
HS−(CH−NH (3)
−(CH−R−S−S−R−(CH−R (4)
[式(1)、(2)及び(3)中、aは1〜23の整数を示し、bは5〜23の整数を示し、cは5〜23までの整数を示す。式(4)中、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水酸基、カルボキシル基若しくはアミノ基を有する二価の有機基又は単結合を示し、n及びmはそれぞれ独立に4〜15の整数を示す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−109087(P2008−109087A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203525(P2007−203525)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】