説明

半導体パッケージ

【課題】 熱変動によって生ずる基板の反り等の影響を減少させることができる半導体パッケージを提供する。
【解決手段】 表面に複数の電極パッドを有する基板10と、基板上に複数の電極パッドに電気的に接続するように設置された半導体チップ13と、基板上に半導体チップの回りを取り囲むように設けられたスティフナー17とを備え、そのスティフナーは、絶縁材料層21と、絶縁材料層中に、基板の表面と実質的に平行になるように配置された剛性板23であって、複数のスルーホール32が設けられ、スルーホールの少なくとも一部に絶縁材料が充填されている剛性板とを含むことを特徴とする半導体パッケージ100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体パッケージに関する。本発明は、より詳細には、耐熱応力性の大きい半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージ用の基板として、比較的硬化なガラスエポキシのような材料からなるコアを含まない、いわゆるコアレス基板が使われるようになってきた。コアレス基板として、例えば、絶縁層とパターン化した導体層を交互に積層したビルドアップ基板(SLC基板)などがある。コアレス基板に半導体チップを搭載して得られるパッケージを一般にコアレス・パッケージと呼ぶ。
【0003】
図1は従来のコアレス・パッケージの断面図である。コアレス基板1上に、基板表面の電極パッド(図示なし)に電気的に接続するように半導体チップ3が設置されている。基板1の表面と半導体チップ3のすき間には、樹脂材料のアンダーフィル5が充填されている。基板1上の半導体チップ3の回りには樹脂材料のスティフナー7が設けられている。コアレス基板1は、硬いコアを有しないので、コアがある基板に比べて、その剛性が低い。樹脂スティフナー7は、この基板の剛性の低さを補完するために設けられる。図1には、さらに基板1を他のベース基板(図示なし)に電気的に接続するためのボールグリッドアレイ(BGA)9が示されている。
【0004】
図1の従来のコアレス・パッケージでは、樹脂スティフナーの効果が十分ではないので、基板、半導体チップ、アンダーフィル、およびスティフナーの熱膨張係数の違いから、ハンダリフロー工程等での熱変動により、熱応力が発生する。その熱応力により、基板全体の反り、半導体チップでのクラックや割れの発生、半導体チップの基板からのはがれ等の欠陥が発生する場合がある。
【0005】
この欠陥発生を防ぐために、スティフナーを構成する樹脂中にフィラーを混入させてスティフナーの剛性を高めたり、あるいは樹脂成分調整によりスティフナーの熱膨張係数を半導体チップを構成するシリコンの熱膨張係数に近づけるという方法がある。しかし、これらの従来の方法は、基板の剛性を補完して熱応力を緩和するためには十分ではない。
【0006】
他の方法として、日本の公開特許公報、特開2003-92376には、樹脂スティフナーの機械的強度を高めるために、樹脂スティフナー中に鉄製の補強材(板)を埋設することが開示されている。しかし、この公報の方法では、樹脂と補強材(板)との界面ではがれが生ずることがあり、その結果、基板の剛性を補完して熱応力を緩和するという効果が発揮されない場合がある。また、この公報の方法では、複数の補強材(金属片)を樹脂中に適切に配置するための位置決め操作が必要であり、製造工程が複雑になるという欠点もある。
【0007】
【特許文献1】公開特許公報、特開2003-92376
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱応力に対して強い半導体パッケージを提供することである。
【0009】
本発明の目的は、耐熱応力性および放熱特性に優れた半導体パッケージを提供することである。
【0010】
本発明の目的は、熱変動によって生ずる基板の反り等の影響を減少させることができる半導体パッケージを提供することである。
【0011】
本発明の目的は、コアレス基板の剛性を向上させることができる半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、表面に複数の電極パッドを有する基板と、基板上に複数の電極パッドに電気的に接続するように設置された半導体チップと、基板上に半導体チップの回りを取り囲むように設けられたスティフナーとを備え、そのスティフナーは、絶縁材料層と、絶縁材料層中に、基板の表面と実質的に平行になるように配置された剛性板であって、複数のスルーホールが設けられ、スルーホールの少なくとも一部に絶縁材料が充填されている剛性板とを含むことを特徴とする半導体パッケージが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体パッケージは、熱応力に対して強い。
【0014】
本発明の半導体パッケージは、耐熱応力性および放熱特性に優れている。
【0015】
本発明の半導体パッケージは、熱変動によって生ずる基板の反り等の影響を減少させることができる。
【0016】
本発明の半導体パッケージは、コアレス基板の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について図面を参照しながら以下に詳細に説明する。図2は、半導体パッケージ100の断面図である。コアレス基板10上に、基板表面の電極パッド(図示なし)に、はんだボール15を介して電気的に接続するように半導体チップ13が設置されている。半導体チップ13としては、マイクロプロセッサユニット(MPU)、システムオンチップ(SoC)等のLSIチップ、メモリチップなどのあらゆる種類の半導体チップが含まれる。半導体の種類もシリコン(Si)に限られず、GaAs、InPなどの化合物半導体も含まれる。また、GaAs/Siなどの複数の種類の半導体からなるチップも含む。基板10の表面と半導体チップ13のすき間には、樹脂材料のアンダーフィル15が充填されている。アンダーフィル15は、半導体チップ13と基板10との接合を補強するために用いられる。アンダーフィル15の材料としては、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂を用いる。
【0018】
基板10上の半導体チップ13の回りを取り囲むように、スティフナー17が設けられている。コアレス基板10は、硬いコアを有しないので、コアがある基板に比べて、その剛性が低い。コアレス基板としては、例えば、絶縁層と配線層を交互に積層したビルドアップ配線基板を用いる。スティフナー17は、この基板の剛性の低さを補完するために設けられる。図2には、さらに基板1を他のベース基板(図示なし)に電気的に接続するためのボールグリッドアレイ(BGA)19が示されている。
【0019】
スティフナー17は、絶縁材料層21と、絶縁材料層21中に配置された剛性板23を含む。絶縁材料としては、例えば樹脂材料がある。剛性板23は、特に基板の剛性の低さを補完する働きをする。図3は、基板10上への設置前の剛性板23の上面図である。剛性板23は、半導体チップ13の大きさ(図の破線13)より少し大きめの開口30を有する。剛性板23には、複数のスルーホール32が等間隔で一様(格子状)に設けられている。スルーホールは、必ずしも格子状に設けられる必要は無く、少なくとも複数のスルーホールが剛性板23の表面に散らばって(間隔を空けて)配置されていればよい。スルーホール32の孔径は、任意に決めることができる。ただし、スルーホール32の孔径は、剛性板23を基板10上へ設置した際に、スルーホールの少なくとも一部に、樹脂などの絶縁材料が入り込める(充填される)大きさを有する必要がある。スルーホールの少なくとも一部、あるいは全部に、樹脂などの絶縁材料が充填される結果、剛性板23とその回りの絶縁材料との密着性が向上する。
【0020】
剛性板23は、例えば銅などの金属あるいはそれらの合金からなる。剛性板23は、高熱伝導率、高強度、平坦性および表面加工性に優れた物質が望ましい。高熱伝導率を有することにより、半導体チップ13からの放熱を熱伝導させてパッケージ外へ逃がすことができる。高強度および平坦性を有することにより、熱応力による変形に強くなる。表面加工性に優れていることのより、開口30やスルーホール32の加工がしやすくなる。スルーホール32の加工としては、プレス加工、ドリル加工、あるいは半導体のフォトリソグラフィ技術(エッチング加工)などを用いる。図2では、剛性板23と半導体チップ13の間にアンダーフィル15が存在する。剛性板23の端部を半導体チップ13の側面の少なくとも一部に熱的に接続することにより、半導体チップ13からの放熱の熱伝導効果(特に水平方向での)を向上させることができる。ここで言う熱的に接続するとは、直接に接続すること、および熱伝導性の物質を介して接続の双方の意味を含む。
【0021】
図4を参照しながら、本発明の半導体パッケージの製造方法を説明する。工程(a)で、表面に複数の電極パッドを有する基板10を準備する。基板10の表面には、複数の電極パッドに接続するパターン化された配線も存在する。工程(b)で、基板10の表面の複数の電極パッドに電気的に接続するように、半導体チップ13を設置する。工程(b)では、ハンダボール14を用いて半導体チップ13と複数の電極パッドを接合する(フリップチップ接合)。工程(c)で、基板10の表面と半導体チップ13の間に、アンダーフィルを注入する。アンダーフィルとして、熱硬化性のエポキシ樹脂をデイスペンサーを用いて注入する。その注入後、基板全体を加熱して、エポキシ樹脂を硬化させる。アンダーフィルは、半導体チップ13の側面36にも付着する。ただし、後工程(e)の剛性板23を設ける工程において、剛性板23を直接あるいは導電性の接着剤を介して半導体チップ13の側面36に接合させる場合は、アンダーフィルを半導体チップ13の側面36の下部にのみ付着させる。ここで言う下部とは、剛性板23と半導体チップ13の側面36の接合ポイントよりも少なくとも下側という意味である。
【0022】
工程(d)で、基板10上の半導体チップ13の回りに第1の絶縁材料層26を設ける。第1の絶縁材料層26として、樹脂を基板10の表面に付着させる。樹脂としては、エポキシ樹脂などの封止用樹脂であればよい。硬化タイプは、熱硬化型あるいは光硬化型のいずれでもよい。工程(e)では、第1の絶縁材料層26の上に、別に予め準備された剛性板23を置く。剛性板23は、既に説明したように、複数のスルーホールを有する金属板などからなる。剛性板23の準備において、金属板からなる剛性板23をプレス加工で穴開けする場合、同時に位置あわせ用の突起を作ることが望ましい。
【0023】
図5にその位置あわせ用の突起34の例を示す。図5は、突起34を含む剛性板の一部の断面図である。突起34は、スルーホール32の間の金属をプレスすることにより形成される。この場合、スルーホール32と突起34を同時に形成することができる。工程(e)で、位置あわせ用の突起34が、基板10表面に予め形成された位置あわせマーク(図示なし)に合うように、剛性板23を第1の絶縁材料層26の上に置く。この場合、第1の絶縁材料は透明かあるいは少なくとも基板表面が透けて見える材料である必要がある。なお、基板10の表面の位置あわせマークは、基板10の表面の配線パターン(電極パッド)形成と同時に作ることができる。
【0024】
工程(f)で、第1の絶縁材料層26上に、剛性板23を覆うように第2の絶縁材料層28を設ける。第2の絶縁材料層は、第1の絶縁材料層と同じ材料、あるいは異なる種類の材料であってもよい。ただし、第2の絶縁材料は、第1の絶縁材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する必要がある。また、第2の絶縁材料は、樹脂などのある程度粘性が低い材料である必要がある。工程(f)で、剛性板23の複数のスルーホール32の少なくとも一部に絶縁材料が充填される。その充填は、全てのスルーホール32におこなわれることが理想であるが、必ずしもその全てが充填されていなくてもよい。その後、基板全体を加熱あるいは基板上面から光を照射して、第1および第2の絶縁材料を硬化させる。
【0025】
図6を参照しながら、本発明の半導体パッケージの他の製造方法を説明する。図6の製法は、図4の第1の絶縁材料層26および第2の絶縁材料層28を設ける代わりに、剛性板23を覆う絶縁層を1回の工程で1層として設ける点に特徴がある。複数のスルーホールを有する剛性板を用いるという本発明の特徴をより生かした製法である。図6の(a)から(c)までは、図4の(a)から(c)の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0026】
工程(d)で、位置あわせおよび裁置用の突起40が、基板10表面に予め形成された位置あわせマーク(図示なし)に合うように、剛性板23を基板10の表面上に置く。突起40は、剛性板23が基板10の表面上で安定して裁置できるだけの数だけ剛性板23に設けられる。図7にその突起40の拡大図を示す。図7は、突起40を含む剛性板の一部(半分)の断面図である。突起40は、図5の場合と同様に、スルーホール32の間の金属をプレスすることにより形成される。この場合、スルーホール32と突起34を同時に形成することができる。なお、突起は図7に示される形状に限定されない。突起は少なくとも基板10の表面と剛性板23の間に隙間が確保できれば、いかなる形状であってもよい。
【0027】
工程(e)で、基板10上に、剛性板23を覆うように絶縁材料層42を設ける。絶縁材料42は、樹脂などのある程度粘性が低い材料である必要がある。工程(e)で、剛性板23の周辺部および複数のスルーホール32を通って、絶縁材料が基板10の表面と剛性板23の間(隙間)および剛性板23表面上にも充填される。工程(e)では、剛性板23を覆う絶縁材料層を1回の工程で1層として設けることができる。その結果、製造工程数を削減できる。その後、基板全体を加熱あるいは基板上面から光を照射して、絶縁材料42を硬化させる。
【0028】
本発明について、図1−図7を例にとり説明をした。しかし、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲でいかなる変形も可能であることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のコアレス・パッケージの断面図である。
【図2】本発明の半導体パッケージの断面図である。
【図3】基板上への設置前の剛性板の上面図である。
【図4】本発明の半導体パッケージの製造フローを示す図である。
【図5】剛性板の断面の一部拡大図である。
【図6】本発明の半導体パッケージの製造フローを示す図である。
【図7】剛性板の断面の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
1、10 基板
3、13 半導体チップ
5、15 アンダーフィル
7、17 スティフナー
14 はんだボール(FCB)
21、26、28、42 絶縁材料層
23 剛性板
30 開口
32 スルーホール
34 位置あわせ用突起
36 半導体チップの側面
40 位置あわせおよび裁置用の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の電極パッドを有する基板と、
前記基板上に、前記複数の電極パッドに電気的に接続するように設置された半導体チップと、
前記基板上に、前記半導体チップの回りを取り囲むように設けられたスティフナーとを備え、前記スティフナーは、
絶縁材料層と、
前記絶縁材料層中に、前記基板の表面と実質的に平行になるように配置された剛性板であって、複数のスルーホールが設けられ、当該スルーホールの少なくとも一部に前記絶縁材料が充填されている剛性板と、を含むことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項2】
さらに、前記基板の表面と前記半導体チップの間に設けられたアンダーフィルを有する、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項3】
前記剛性板は熱伝導性板からなる、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項4】
前記熱伝導性板は前記半導体チップの側面の少なくとも一部と熱的に接続する、請求項3の半導体パッケージ。
【請求項5】
前記剛性板は金属からなる、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項6】
前記絶縁材料層は樹脂材料からなる、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項7】
前記複数のスルーホールは、前記剛性板の表面に格子状に配置されている、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項8】
前記スティフナーと前記アンダーフィルは、前記半導体チップの周辺部において接触している、請求項2の半導体パッケージ。
【請求項9】
前記基板はコアレス基板からなる、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項10】
前記基板はビルドアップ配線基板からなる、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項11】
前記半導体チップは、前記基板の複数の電極パッドにはんだ接合している、請求項1の半導体パッケージ。
【請求項12】
請求項1の半導体チップが、前記基板の複数の電極パッドがある表面の裏側の表面において、一つの印刷回路基板にはんだ接合している、半導体装置。
【請求項13】
半導体パッケージの製造方法であって、
表面に複数の電極パッドを有する基板を準備するステップと、
前記基板上に、前記複数の電極パッドに電気的に接続するように、半導体チップを設置するステップと、
前記基板の表面と前記半導体チップの間にアンダーフィルを設けるステップと、
前記基板上に、前記半導体チップの回りを取り囲むように、スティフナーを設けるステップとを含み、当該スティフナーを設けるステップは、
前記基板上の前記半導体チップの回りに第1の絶縁材料層を設けるステップと、
前記第1の絶縁材料層上に、複数のスルーホールが設けられた剛性板を設置するステップと、
前記第1の絶縁材料層上に、前記剛性板を覆うように第2の絶縁材料層を設けるステップであって、同時に前記剛性板の複数のスルーホールの少なくとも一部に前記絶縁材料が充填されるステップとを含む、製造方法。
【請求項14】
半導体パッケージの製造方法であって、
表面に複数の電極パッドを有する基板を準備するステップと、
前記基板上に、前記複数の電極パッドに電気的に接続するように、半導体チップを設置するステップと、
前記基板の表面と前記半導体チップの間にアンダーフィルを設けるステップと、
前記基板上に、前記半導体チップの回りを取り囲むように、スティフナーを設けるステップとを含み、当該スティフナーを設けるステップは、
前記基板の表面上に、隙間を空けて、複数のスルーホールが設けられた剛性板を設置するステップと、
前記基板上に絶縁材料層を設けるステップであって、前記基板の表面と前記剛性板との間を充填しかつ前記剛性板の表面を覆うように、絶縁材料を設けるステップとを含む、製造方法。
【請求項15】
前記剛性板は、前記基板の表面に対向する表面に、前記隙間を確保するための複数の突起部を有する、請求項14の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−147596(P2008−147596A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336256(P2006−336256)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】