説明

半導体レーザ

【課題】ファブリペロー共振器を有し、その端面が、劈開面によって構成される半導体レーザにおける活性層に近接する側の電極の端縁による短絡、リークの発生を効果的に回避する。
【解決手段】第1のクラッド層11と、活性層12と、第2のクラッド層13と、活性層12に近接する位置に形成された電極21と、を有するものとする。そして電極21のファブリペロー共振器長方向の両端縁は、共振器長方向の両端面を形成する半導体端面より、内側に入り込んだ位置に形成され、さらに電極21は、活性層12から1μm〜2μmの位置に形成されている半導体レーザとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファブリペロー共振器を構成する半導体レーザに関し、信頼性および歩留まりの向上を図るものであり、特に大出力半導体レーザに適用して有効な半導体レーザを提供する。
【背景技術】
【0002】
通常、ファブリペロー共振器を有する半導体レーザにおいては、その共振器端面を、半導体結晶の劈開面によって構成する。すなわち、例えば図3Aに、その基本的構造の要部の概略平面図を示し、図3Bに、図3AのB−B線上の概略断面図を示すように、複数の半導体レーザを共通に構成する半導体ウエハ101が用意される。
このウエハ101は、第1の導電型、一般にはn型の基体110上に、同様の導電型のn型の第1のクラッド層111、活性層112、第2の導電型、この例ではp型の第2のクラッド層113が順次エピタキシャル成長されて成る。
【0003】
更に、第2のクラッド層113には、複数本のストライプ状の電流注入領域114が、電流狭窄領域115によって規定されて、半導体ウエハ101の結晶の劈開面と直交する方向に沿い、互いに平行に配列形成される。
電流狭窄領域115は、絶縁層あるいは第1の導電型、この例ではn型の半導体領域によって形成される。
【0004】
この構成において、各ストライプ状の電流注入領域114上には、ストライプ方向に沿って最終的に各半導体レーザの一方の電極、すなわち第1の電極を構成する電極層121Sが各ストライプ毎に連続した帯状に形成される。
この連続帯状とされた電極層121Sは、最終的に半導体レーザチップを構成する部分間に、その両側縁から中心に向かって、このチップ間の位置を示す、くびれ121Nが形成されたパターンとされている。しかしながら、この電極層121Sは、各ストライプ状電流注入領域114上に渡ってそれぞれ上述したように、連続した帯状のパターンとされている。
一方、各半導体レーザに関する他方の電極、すなわち基体110側の電極を構成する第2の電極122は、各半導体レーザに関して独立に分離された電極パターンとして形成される。
【0005】
上述した半導体ウエハ101を、図4Aにその概略断面図を示すように、フレキシブルシート2上に、例えば基体110側において真空吸着、そのほかの方法で被着する。
そして、半導体ウエハ101を、図3A中鎖線aで示すように、各帯状の電極21間において、短冊状に、フレキシブルシートに保持された状態でカットする。
一方、上述した、くびれ121Nを目印として、各半導体レーザの形成部間において、鎖線bで示す劈開面に沿う罫書き23を行う。
【0006】
その後、図4Aで示す矢印方向に、半導体ウエハ101を、その上述した基体110側が湾曲内側となるように、撓曲させる。このとき、各短冊部において、罫書き23に沿って破断がなされる。
このようにして、図4Bに示すように、半導体ウエハ101が、各半導体レーザ毎に破断された、いわゆるペレッタイズがなされる。このようにして、劈開面に沿って破断がなされ、図5Aに概略平面図を示し、図5Bおよび図5Cに、図5AのB−B線上およびC−C線上の断面図を示すように、それぞれ基体110上に、上述した少なくとも第1のクラッド層111、活性層112、第2のクラッド層113とを有し、両面に第1および第2の電極121および122を有する半導体レーザが、同時に多数個得られる。そして、これら半導体レーザにおいては、それぞれ電流狭窄領域115によってストライプ状に規定された電流注入領域114下においてファブリペロー共振器が構成される。そして、このファブリペロー共振器の両端面が劈開面により鏡面な端面として形成される。
【0007】
上述したように、半導体ウエハ101において、そのペレッタイズに際し、基体110側を内側にする撓曲を行うことから、収縮側となる基体110側の第2の電極122に関しては、これが連続的に形成されていると、ペレッタイズにおいて、各半導体レーザに関して切断がなされないことから、第2の電極122に関しては、各半導体レーザ毎に区分して形成される(例えば特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、活性層112に近接する側の第1の電極121に関しては、図3で示されるように、共通のストライプ状の電流注入領域114の延長方向の半導体レーザ形成部に沿って連続して帯状に形成された電極層121Sによって構成する。
これは、図4Bで示したように、ペレッタイズに際しての撓曲によって引っ張り力が働く側であることから、各半導体レーザに関して破断することができることに基づく。
すなわち、従来一般の劈開面を端面とするファブリペロー共振器を有する半導体レーザにおいては、図5Aにその平面図を示し、図5Bおよび図5Cに図5Aの断面図を示すように、最終的に得た半導体レーザにおいては、その共振器、すなわち活性層112に近接する側の第1の電極121が、共振器全長に渡って延在する。
【0009】
ところが、この構成による半導体レーザにおいては、第1の電極121の形成面と、活性層112の形成面との距離は、例えば1〜2μm程度という近接した位置にあることから、ペレッタイズに際して第1の電極121は、いわば引きちぎられて分断されることから、第1の電極121に、時折、図5Dに示すように、電極121の端縁が引き伸ばされた突出部121aが発生し、これが垂れ下がることによって活性層112に達し、短絡もしくはリークを発生させ、不良品の発生ないしは信頼性の低下をきたす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−205248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明においては、ファブリペロー共振器を有し、その端面が、劈開面によって構成される半導体レーザにおける活性層に近接する側の電極の端縁による短絡、リークの発生を効果的に回避する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による半導体レーザは、第1のクラッド層と、活性層と、第2のクラッド層と、活性層に近接する位置に形成された電極と、を有する。そして、この電極のファブリペロー共振器長方向の両端縁は、共振器長方向の両端面を形成する半導体端面より、内側に入り込んだ位置に形成され、さらに前述の電極は、活性層から1μm〜2μmの位置に形成されている構成とする。
【0013】
また、本発明による半導体レーザは、上述した電極の両端縁の、半導体端面より内側に入り込む距離が、ファブリペロー共振器の共振器長のそれぞれ5%以下とする。
また、本発明による半導体レーザは、その共振器の共振器長方向の両端面を形成する半導体端面が、結晶劈開面である構成とする。
また、本発明による半導体レーザは、上述の活性層がAlGaAs系、AlGaInP系またはInGaAsP系の材料によって構成されるものとする。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明による半導体レーザによれば、共振器長方向の電極の端縁が、共振器端面を構成する半導体端面より内側に位置する構成として、電極の欠如部を形成したことにより、電極端縁が半導体端面に沿って垂れ下がる現象と、これによる短絡やリークの発生を回避できる。したがって、信頼性の向上を図ることができる。
【0015】
そして、本発明による半導体レーザは、特に、大出力半導体レーザにおいて、有益な構成である。
すなわち、半導体レーザにおいては、共振器長の全域に渡って電流注入がなされるように、電極が共振器長方向の半導体の両端面に至る長さに形成することが望ましいとされていた。
これに対して、本発明においては、電極の両端縁が、半導体端面より内側に入り込むようにすることによって、共振器長方向の両端、すなわちレーザ光の出射端面における光の閉じ込めが緩和されることから、光出射端面の光学的損傷を回避できて、大出力化を行ういわゆる窓構造とされるものである。
特に、この欠如部を共振器長方向に関して共振器長の5%以下にとどめるときは、十分な発光効率が得られることを見出したものである。
0016は削除して、段落番号を付け直す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図Aは、本発明による半導体レーザの一例の平面図、図Bおよび図Cは、それぞれ図AのB−B線およびC−C線における概略断面図である。
【図2】図Aは、本発明による半導体レーザの製造方法の一例の説明に供する一工程における半導体ウエハの要部の平面図、図Bは図Aの断面図である。
【図3】図Aは、従来の半導体レーザの製造方法の説明に供する一工程における半導体ウエハの要部の概略平面図、図Bは、同様の概略断面図である。
【図4】AおよびBは、従来の製造方法のペレッタイズ工程の説明に供する各工程の概略断面図である。
【図5】図Aは、従来の半導体レーザの平面図、図Bおよび図Cは、それぞれ図AのB−B線およびC−C線における概略断面図、図Dは、短絡ないしはリーク発生時のC−C線における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による大出力半導体レーザの実施の形態例を、図1を参照して説明するが、本発明による半導体レーザ31は、この例に限定されるものではないことはいうまでもない。
図1Aに概略平面図を示し、図1Bおよび図1Cに、図1AのB−B線上およびC−C線上の断面図を示すように、例えばAlGaAs系半導体レーザにおいては、第1導電型例えばn型のGaAs基体10上に、図示しないが、必要に応じてバッファ層を介して、基体10と同導電型のAlGaAsによる第1のクラッド層11、活性層12、第2導電型、この例ではp型のAlGaAsによる第2のクラッド層13と、図示しないが、クラッド層13と同導電型のp型のGaAsによるコンタクト層が形成される。
そして、共振器の形成部上にストライプ状の電流注入領域14が形成されるように、この電流注入領域14の形成部の両側に、電流狭窄領域15が形成される。この電流狭窄領域15は、例えば、絶縁層によって形成される。
また、この半導体レーザにおいて、電流注入領域14に第1の電極21がオーミックコンタクトされ、基体10の裏面に第2の電極22がオーミックコンタクトされる。
ここで、実際には、第1の電極21は、活性層12から1μm〜2μmという近距離位置に形成されることになる。
【0018】
そして、本発明構成においては、その発光部を構成する活性層12に近接する側の面に形成された第1の電極21は、半導体レーザを構成するファブリペロー共振器の共振器長方向に関する両端縁21aおよび21bが、その全幅に渡って、共振器の共振器長方向の両端面を形成する半導体端面より内側に入り込んだ位置に設定された構成とする。すなわち、すなわち、第1の電極21の、共振器長方向の両端に、それぞれ電極2の欠如部21Dを形成する。
【0019】
この半導体レーザ31の、第1および第2の電極21および22間に通電がなされることによって主として電流注入領域14に電流供給がなされるが、電流の広がりによって、ストライプ状の電流注入領域14下においてファブリペロー共振器が構成される。そして、このファブリペロー共振器の両端面を形成する半導体レーザの共振器長方向の両端面31aおよび31bが、結晶劈開面による鏡面な端面として形成される。
【0020】
半導体レーザ31は、例えばいわゆる超高出力半導体レーザを構成する場合においてはその共振器長Lは、例えば700μm〜1100μmに形成されるが、両端の欠如部21Dの幅LDは、この共振器長の5%以下とするものである。
このように、本発明構成においては、活性層12に近接する側の電極21、ないしは超高出力半導体レーザにおける電極21の、両端の欠如部21Dの幅LDは、それぞれその共振器長Lの5%以下に選定する。このとき、端縁21aおよび21b間に渡るファブリペロー共振器が構成されると共に、その両端には電極21の欠如部21Dが形成されることによって光およびキャリアの閉じ込めが緩和された、いわゆる窓構造が形成される。
【0021】
次に、上述した本発明による半導体レーザ31を製造する本発明による半導体レーザの製造方法の実施の形態例を、図2を参照して説明する。
まず、図2Aに、その基本的構造の要部の概略平面を示し、図2Bに、図2AのA−A線状の概略断面図を示すように、複数の半導体レーザ31を共通に構成する半導体ウエハ101が用意される。
このウエハ101は、上述した例では、GaAsによる単結晶基体10が用意され、その1主面上に、順次例えばGaAsによるバッファ層(図示せず)、n型のAlGaAsによる第1のクラッド層11、活性層12、p型のAlGaAsによる第2のクラッド層13、p型のGaAsによるコンタクト層(図示せず)をエピタキシャル成長して成る。
【0022】
更に、第2のクラッド層13には、複数本のストライプ状の電流注入領域14が、電流狭窄領域15によって規定されて、半導体ウエハ101の結晶の劈開面と直交する方向に沿い、互いに平行に配列形成される。
電流狭窄領域15は、周知の方法、例えばn型の不純物をイオン注入して形成したn型の半導体領域によって形成するとか、電流狭窄領域の形成部に溝をエッチングして形成し、ここに絶縁物を充填するなどの方法によって、形成することができる。
【0023】
この構成において、各ストライプ状の電流注入領域14上には、ストライプ方向に沿って最終的に各半導体レーザの第1の電極21を形成する。
すなわち、例えば半導体ウエハ101上に全面的に電極21を構成する電極層を、各ストライプ状の電流注入領域14にオーミックコンタクトするように、蒸着、スパッタ等によって形成し、これに対してフォトリソグラフィによるパターンエッチングによって、最終的に各半導体レーザ31となる部分にそれぞれ分離された電極21を形成する。
【0024】
この場合、共通のストライプ状の電流注入領域14上に、分離して形成された電極21は相互の間隔を上述した間隔LDの2倍の2LDとする。
一方、各半導体レーザに関する他方の電極、すなわち基体10側に、第2の電極22を従前におけると同様に、各半導体レーザに関して独立に分離された電極パターンとして形成する。
【0025】
このように、電極21および22が形成された半導体ウエハ101を、図4で説明したと同様の方法によって、図2A中鎖線aで示すように、各帯状の電極21間において、短冊状に、フレキシブルシートに保持された状態でカットし、各半導体レーザの形成部間において、鎖線bで示す劈開面に沿う罫書きがなされ、その後、半導体ウエハ101を撓曲させて、ペレッタイズを行い、多数の半導体レーザ31を、同時に形成する。
このようにして、それぞれファブリペロー共振器を有し、その両端面31aおよび31bが劈開面によって構成され、端面31aおよび31bより距離LDだけ隔てた位置に電極21の端縁21aおよび21bが位置する欠如部21Dが形成なされた、図1で説明した本発明による半導体レーザ31を複数個同時に得る。
【0026】
尚、本発明による半導体レーザ、およびその製造方法は、上述した例に限定されるものではなく、例えば活性層12を多重量子井戸構造とすることもできるし、また、AlGaAs系半導体レーザ以外の例えばAlGaInP系、InGaAsP系半導体レーザに適用することもできることはいうまでもない。
また、半導体レーザ単体構造とする場合に限られるものではなく、複数の半導体レーザ素子が、例えばその共振器が並行配列されたアレイ型構成とする場合に適用することができるなど種々の構成とすることができる。
【符号の説明】
【0027】
2・・・フレキシブルシート、3・・・半導体チップ、101・・・半導体ウエハ、10,110・・・基体、11,111・・・第1のクラッド層、12,112・・・活性層、13,113・・・第2のクラッド層、14,114・・・電流注入領域、15,115・・・電流狭窄領域、21,121・・・第1の電極、121a・・・突出部、121N・・・くびれ、121S・・・第1の電極層、21a,21b・・・端縁、21D・・・欠如部、22,122・・・第2の電極、23・・・罫書き、24,124・・・共振器、31,131・・・半導体レーザ、31a,31b・・・端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクラッド層と、
活性層と、
第2のクラッド層と、
前記活性層に近接する位置に形成された電極と、
を有し、
前記電極のファブリペロー共振器長方向の両端縁は、前記共振器長方向の両端面を形成する半導体端面より、内側に入り込んだ位置に形成され、
前記電極は、前記活性層から1μm〜2μmの位置に形成されている半導体レーザ。
【請求項2】
前記電極の両端縁の、前記半導体端面より内側に入り込む距離が、前記ファブリペロー共振器の共振器長のそれぞれ5%以下とした請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記共振器の共振器長方向の両端面を形成する半導体端面が、結晶劈開面である請求項1または2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記活性層は、AlGaAs系、AlGaInP系またはInGaAsP系である請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−161427(P2010−161427A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100812(P2010−100812)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2003−274901(P2003−274901)の分割
【原出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】