説明

半導体冷却装置

【課題】 半導体モジュール32の冷却構造の組立て作業の負担を軽減し、冷却能力が高いレベルで安定した冷却装置を量産しやすい冷却装置を実現する
【解決手段】 本発明の半導体冷却装置は、内部に冷却水通路26を形成するケース20aと、内部に半導体モジュールを収容し、その半導体のジュールの発生熱を放熱する放熱面を正面と背面に備えるブロック26bを備えている。そのブロック26bはその冷却水通路26に挿入されることによって冷却水通路26を区画しており、そのブロック26bの正面と背面はブロック26bによって区画された冷却水通路26に面している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を冷却するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、半導体モジュールの冷却構造が示されている。この冷却構造では、内部を冷媒が通過するチューブを用いる。半導体モジュールは正面と背面に放熱する表面を備えており、そのチューブを半導体モジュールの表面に添って配置する。実施例では、チューブを屈曲することによって半導体モジュールの正面側の表面と背面側の表面にチューブを押し付ける。チューブを通過する冷媒によって、半導体モジュールの正面と背面が冷却される。特許文献2〜4に、その他の半導体冷却技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−352023号公報
【特許文献2】特開2002−141164号公報
【特許文献3】特開2001−24125号公報
【特許文献4】特開平10−107194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、半導体モジュールと冷媒チューブの位置関係が、半導体モジュールの冷却度合いに大きな影響を与える。半導体モジュールと冷媒チューブが離反していると、半導体モジュールを効果的に冷却することができない。従来の冷却構造では、半導体モジュールと冷媒チューブを密着させるために、屈曲して折り返されている冷媒チューブによって半導体モジュールを挟み込む。挟み込む力が強すぎれば半導体モジュールが破壊される恐れがあり、弱すぎれば冷却能力が不足する恐れがある。
従来の構造の場合、冷媒チューブによって半導体モジュールを挟み込む力の調整が難しく、半導体モジュールの冷却装置の組立作業の負担が大きいという問題があった。
【0004】
本発明は、半導体冷却装置の組立作業の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体冷却装置は、内部に冷媒通路を形成するケースと、内部に半導体を収容し、その半導体の発生熱を放熱する放熱面を正面と背面に備える区画体とを備えている。本発明の半導体冷却装置では、その区画体はその冷媒通路に挿入されることによって冷媒通路を区画し、区画体の正面と背面は区画体によって区画された冷媒通路に面している。
上記において「冷媒通路を区画する」ことには、「冷媒通路を複数に分流する」ことと、「冷媒通路を分流させることなく屈曲させる」ことの双方を含む。
【0006】
この冷却装置では、内部に半導体を収容している区画体が冷媒通路に挿入され、区画体の正面と背面が区画体によって区画された冷媒通路に面する。従って、区画体の内部に収容されている半導体は、区画体を介して正面と背面の両側から冷却される。
【0007】
この冷却装置によると、冷媒通路と区画体と半導体装置の位置関係を一定の位置関係に調整しやすい。冷却能力がよく調整された冷却装置を量産しやすい。
従来構造では必要とされていた組立て作業、即ち、半導体を冷媒チューブで挟み込みながら位置関係を調整するという難易度の高い組立て作業を実施しなくともよい。本発明の冷却装置によると、組立て作業の負担を軽減することができる。冷却能力が高いレベルによく調整されている冷却装置を量産しやすい。
【0008】
上記の半導体冷却装置は、一つのケースに平面方向に対して一本の冷媒通路を区画する複数個の区画体が挿入されており、その区画された冷媒通路は一の区画体に対して正面と背面を経ており、且つ、すべての区画体を経ていることが好ましい。
一本の連続した冷媒通路には、同じ流量の冷媒が流れる。従って、上記の複数個の区画体は、正面と背面が同一流量の冷媒によって冷却される。この構成によると、複数の半導体に対して、冷却に用いる冷媒流量を均一化することが可能となり、半導体のケース内の配置場所による冷却効率の差を軽減することができる。
【0009】
上記の半導体冷却装置では、複数個の区画体が相互に平行な位置関係に配置されていることが好ましい。このとき、一方の側端がケースに接する区画体と他方の側端がケースに接する区画体が交互に現れる関係で配置されていることが好ましい。
なお区画体の側端とは、区画体の正面および背面に対して側方に存在する端部のことを言い、ケースに挿入された状態でその区画体が面する冷媒通路に沿う方向の区画体の端部のことを言う。
この構成によると、ケースと区画体群によって、ケース内を蛇行する一本の冷媒通路が形成される。ケース内に隔壁等を形成しないでも、蛇行する冷媒通路を形成することができる。半導体冷却装置を小型化し、軽量化することが可能となる。
【0010】
上記の半導体冷却装置では、ケース内に略直方体形状の空間が確保されており、平行に配置されている区画体の側端に対向する面には、区画体の一本おきの側端に相当する位置に更なる空間が確保されていることが好ましい。例えば、区画体の側端に対向する面がA面とB面であり、平行に配置されている区画体を順番に1番、2番・・・としたときに、A面には奇数番の区画体に対応する位置に凹所を設け、B面には偶数番の区画体に対応する位置に凹所を設けるのである。
この構成によると、ケース内を蛇行する一本の冷媒通路が形成される。このような構成とすることによって、半導体冷却装置をさらに小型化することが可能となる。
【0011】
上記の半導体冷却装置の区画体の正面と背面には、冷媒通路に突出する突出部が形成されていることが好ましい。その場合、突出部の先端面が冷媒通路に露出していることが望ましい。
突出部の先端面まで冷媒通路に露出していると、突出部と冷媒との接触面積が十分に確保される。この構成によると、半導体の冷却効率を向上することができる。
【0012】
隣接する区画体の正面側の突出部と背面側の突出部の突出位置が相違しており、隣接する区画体の正面側の突出部と背面側の突出部の先端面がほぼ同一面に整列していることが好ましい。
この構成によると、隣接する区画体同士を近接させても、突出部の先端面を冷媒通路に露出させることができる。突出部群と冷媒との接触面積を確保しながら、半導体冷却装置をさらに小型化することができる。
【0013】
上記の半導体冷却装置では、正面側の突出部と背面側の突出部のそれぞれが冷媒通路に添って伸びる凸条であり、隣接する区画体の正面側の突出部と背面側の突出部の先端面の端部同士がほぼ接していることが好ましい。
この構成によると、正面側の突出部の先端面の端部と背面側の突出部の先端面の端部とがほぼ接していることによって、隣接する区画体の正面側の冷媒通路と背面側の冷媒通路を分離することができる。正面側の冷媒通路と背面側の冷媒通路の冷媒流動方向を反転することができ、流路の蛇行回数を増やすことができる。
【0014】
上記の半導体冷却装置は、ケースと区画体が別部材で形成されており、組合わせることによって構成されていることが望ましい。
この構成によると、区画体の内部に半導体を収容した後に、その区画体をケースに組み付けることによって、半導体冷却装置を組立てることができる。半導体を区画体に収容する作業を、区画体をケースに収容する作業に先立って実施しておくことが可能となり、半導体冷却装置の組立て作業性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、冷却能力が高いレベルで安定した半導体冷却装置を、容易に量産することが可能となる。
また区画体の配置や突出部の位置を改良することによって、半導体冷却装置を小型化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具現化した実施例について図面を参照して説明する。最初に実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) 隣接する区画体の間には隔壁が介在していない。半導体を収容している区画体同士が冷媒通路を介して直接的に隣接する。
(形態2) 区画体は内部に半導体を収容する略直方体形状の空間を備える金属部材であって、正面と背面のそれぞれに突出部が形成されている。
【実施例】
【0017】
(第1実施例)
図1は、第1実施例の半導体モジュールの冷却装置20の断面を示す。図1は、図2のI−I線断面図である。図2は、図1のII−II線断面図を示す。図3は、分解斜視図を示す。図4は、図2のパワー半導体モジュール32が組込まれたブロック20bの拡大断面図を示す。図5は、分解斜視図を示す。
【0018】
図1と図2に示すように、冷却装置20は、ケース20aを備えている。ケース20aの内部には、冷媒(第1実施例の場合は水)が流れる冷却水通路26(冷媒通路の一例)が形成されている。冷却水通路26は、冷却水の注入口22と排出口34を有する。冷却水通路26は、ケース20a内に挿入されている6個のブロック20bによって区画されており、図1に示すように蛇行する冷却水通路26が形成されている。冷却水通路26はつづら折り状、あるいは連続S字状に形成されているともいえる。冷却水は、図1の矢印で示される向きに流れる。ブロック20bは冷却水通路26を区画する区画体であり、2個が直列に配置され、2個で1組のブロック20bが並列に配置されている。1個1個のブロック20bも区画体ということができるが、以下では直列に配置されている2個で1組のブロックを区画体ということにする。冷却水通路26は、ブロック20bによって通路部群26a、26b等に区画されている。通路部群26a、26bは連続しており、一本の蛇行した冷却水通路26を形成している。
各ブロック20bには、半導体モジュール32が組込まれている。各ブロック20bの正面(例えば図1のブロック20bでは、図中左側の表面)と背面(例えば図1のブロック20bでは、図中右側の表面)は、各ブロック20bの内部に収容されている半導体モジュール32の発生熱を放熱する放熱面である。各ブロック20bの正面と背面は冷却水通路26に面しており、ブロック20bの内部に収容された半導体モジュール32は、ブロック20bを介して正面と背面の両側から冷却される。
【0019】
図1に示すように、ケース20aには複数のブロック20bが挿入されている。冷媒が流れる方向(図1の上下方向)に連続するブロック20bを一つの区画体とすると、ケース20aには3つの区画体が図1の左右方向に並んで挿入されている。左右方向に並んでいる区画体は相互に平行であり、一方の側端(例えば図1の下側の端部)がケース20aに接する区画体と、他方の側端(図1の上側の端部)がケース20aに接する区画体とが交互に現れる関係で配置されている。図1の左右の区画体は下側の端部がケース20aに接しており、図1の中央の区画体は上側の端部がケース20aに接している。
【0020】
ケース20aは、内部に略直方体形状の空間21aを備えている。空間21aの内部には、複数の区画体が並列に配置されている。図1において、区画体の上側の端部に対向するケース20aの上側の面をA面とし、下側の端部に対向するケース20aの下側の面をB面とし、平行に配置されている区画体を左から順番に1番、2番・・・としたときに、A面には1番の区画体と3番の区画体に対応する位置に凹所21bが設けられており、B面には2番の区画体に対応する位置に凹所21bが設けられている。
この構成によって、ケース20a内を蛇行する一本の連続する冷媒通路26が形成されている。
後で説明する冷却装置にみられる隔壁が形成されておらず、冷却装置が小型化されている。特に、図1の左右方向(区画体の積層方向という)の寸法が短縮されている。
【0021】
冷却装置20は、図1と図3に示すように、半導体モジュール32が組込まれたブロック20bを6つ有する。図1に示すように、あるブロック20bに対して通路部26bを挟んで対向する位置に、さらに他のブロック20bが設けられている。そして、前記他のブロック20bにも、半導体モジュール32が組込まれている。このように、この冷却装置は、スペースを有効に活用した冷却効率の高いレイアウトとなっている。
【0022】
冷却装置20は、図1〜図3に示すようなケース20aとブロック20bによって構成されている。ブロック20bは、先に述べた区画体を構成する。以下では、必要に応じて名称を使い分ける。これらのケースおよびブロック20a、20bは、アルミニウム合金を削り出すことによって形成したり、あるいはアルミダイキャストによって形成するとよい。図3に示すように、6つのブロック20bは、ケース20aの空間21aに収容される。なお、図3に示すケース20aの管部23と35はそれぞれ、図1に示す冷却水の注入口22と排出口34につながっている。
【0023】
図2に示すように、区画体を構成するブロック20bには、突出部群30aと突出部群30bが形成されている。突出部群30aと突出部群30bは共に、図2の縦方向に並んで形成されている。これらの突出部群30a、30bは、熱交換フィンとして機能する。図2において、左側のブロック20bから右向きに伸びる突出部群30bと、中央のブロック20bから左向きに伸びる突出部群30aの位置は、縦方向にずれており、突出位置が互いに相違している。
【0024】
図2によく示されているように、突出部群30aと突出部群30bとは、その先端面がほぼ同一面に整列する関係となっている。このようにブロック20bを配列することで、隣接するブロック20b同士の間隔が近接して、冷却装置20は小型化されている。区画体の積層方向の寸法が短縮されている。
【0025】
図4と図5によく示されるように、半導体モジュール32は、板状の基板50と電極56を有する。基板50も実質的には電極と言うことができるが、本明細書では基板50と表現する。基板50の表面にはパワー半導体素子46とダイオード40の裏面が半田付けされている。パワー半導体素子46は、IGBTやMOSFET等で構成されている。図4と図5に示すように、パワー半導体素子46とダイオード40の表面は、電極56の裏面に半田付けされている。基板50の表面には絶縁層52が形成されており、絶縁層52の表面に制御用配線54が配置されている。制御用配線54は、第2の制御用配線58を介してパワー半導体素子46に接続されている。制御用配線54は、銅、リン青銅、真鍮、アルミ等で構成するとよい。第2の制御用配線58は、アルミや金等のボンディングワイヤーで構成するとよい。
基板50の裏面は、第1接着層42によってブロック20bに内面に固定されている。同様に、第2電極56の表面は、第2接着層36によってブロック20bの内面に固定されている。第1接着層42と第2接着層36は、電気に対して絶縁性を持ち、熱に対して伝達性を持っている。第1接着層42と第2接着層36は、A■Nやアルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の熱伝導性のよい材料をフィラーとして配合したエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂等で構成するとよい。ブロック20bの半導体モジュール32の収容空間には、封止材38が充填されている。封止材38は、シリコーンゲルやエポキシ樹脂等で構成するとよい。
図3と図4に示すように、ブロック20bの上方には、蓋62が配置されている。図4と図5に示すように、ブロック20bと蓋62の間には、ガスケット64が配置されている。ガスケット64は、ブロック20bと蓋62、あるいは半導体モジュール32と蓋62の間での水漏れを防ぐためのものであり、固体のシートでも樹脂のようなシール材でもよい。蓋62上には、絶縁カラー48が配置されている。絶縁カラー48は、蓋62との絶縁を確保するためのものであり、絶縁性の樹脂やセラミック材料を成形して使用する。
第1接着層42の外面から第2接着層36の外面までの距離は、半導体モジュール32を組み上げた状態で±0.1〜0.3mm程度の公差をもつ。半導体モジュール32とブロック20bが密着しないと、半導体モジュール32から発する熱が外部へ伝達しにくくなるため、図5に示すようにブロック20bの一部31は第2接着層36の外面と確実に密着するようにセットする。
【0026】
6つのブロック20bの各々に、1組のパワー半導体素子46とダイオード40を含む半導体モジュール32が組込まれている。これらの6組のパワー半導体素子46とダイオード40によって、3相インバータ回路が構成されている。
【0027】
図4のL1(ブロック20bの高さ)は、30〜100mmである。L2(電極56の厚さ)は、1〜5mmである。L3(縦方向に並ぶ突出部30bの間隔)は、1〜10mmである。L4(突出部30bの厚さ)は、1〜10mmである。L5(ブロック20bの壁厚)は、1〜10mmである。L6(突出部30bの長さ)は、5〜20mmである。
【0028】
この冷却装置20の組立て作業の手順を説明する。図3に示すように、6つのブロック20bの各々に、半導体モジュール32を収容する。次に、これらのブロック20bをケース20aの空間21aに収容する。次に、ブロック20b上に蓋62と絶縁カラー48を配置する。この場合、ブロック20bから飛び出ている半導体モジュール32を、蓋62の開口部63と絶縁カラー48の開口部49に通すように配置する。以上により、図1に示すように冷却装置20の内部に冷却水通路26が形成されるとともに、ブロック20bに半導体モジュール32が組込まれた状態となり、組立て作業が終了する。
【0029】
この冷却装置20では、内部に冷却水通路26が形成されたケース20aを備えている。そして、図1に示すように、正面と背面が通路部群26a、26bに面しているブロック20bに、半導体モジュール32が組込まれる構造となっている。よって、半導体モジュール32をブロック20bに組込み、ブロック20bをケース20aに収容することで、半導体モジュール32とケース20a、さらには半導体モジュール32と冷却水通路26が所望の位置関係に配置することができる。このため、従来の構造のように半導体モジュールをチューブ状の冷却部材で挟み込むことで位置関係を調整するという難易度の高い作業を省くことができる。従って、この冷却装置によると、半導体モジュール32の冷却構造の組立て作業の負担を軽減することができる。
【0030】
次に、この冷却装置の動作を説明する。図1に示す冷却装置20の注入口22から冷却水を注入すると、冷却水は冷却水通路26の中を図1の矢印に示すように流れる。一方、3相インバータ回路を動作させるために、パワー半導体素子46やダイオード40へ大電流を流すと、この結果として半導体モジュール32から熱が発生する。この熱は、ブロック20bに形成された突出部群30a、30bに伝達される。図2の領域Aの拡大図である図6には、矢印によってこの熱の伝達の様子が模式的に示されている。突出部群30aと突出部群30bの位置が縦方向にずらされているから、両方の突出部群30a、30bの先端面、側部ともに冷却水に露出されている。この結果、半導体モジュール32が効果的に冷却される。
第2〜5実施例と比較した第1実施例の利点については、第2〜5実施例を説明した後に述べる。
【0031】
(第1実施例の変形例) 図7は、第1実施例の変形例について、図1に対応する断面図を示す。この変形例では、対向するブロック20bの間の冷却水通路26が、互いに逆向きに流れる2つの通路26cと26dに分けられている点で、第1実施例と異なる。これらの通路26c、26dは、図2に示す通路26c、26dとそれぞれ対応している。このように、突出部群30aと突出部群30bの位置が図2に示すように縦方向にずれており、突出部群30aと突出部群30bが、冷却水通路26に沿って伸びる凸条であり、突出部群30aと突出部群30bの先端面の端部同士(角部同士)がほぼ接している構造の場合、対向するブロック20bの間に互いに分離された通路を形成することもできる。このような場合、突出部群30aと突出部群30bとは、先端面の端部同士(角部同士)がわずかに離れていても、通路26cと通路26dの間で出入りする冷却水はわずかであるから、実質的には互いに分離した通路として形成することができる。
【0032】
(第2実施例)
図8は、第2実施例の冷却装置72について、図9のVIII−VIII線断面図を示す。図9は、図8のIX−IX線断面図を示す。第2実施例では、半導体モジュール32が組込まれている一対のブロック72b,72bの間に、隔壁73が設けられている。また、図9に示すように、左側のブロック72bから右向きに伸びる突出部群70bと、中央のブロック72bから左向きに伸びる突出部群70aの位置が、図9の縦方向において一致している点で、第1実施例と異なる。
【0033】
(第3実施例)
図10は、第3実施例の冷却装置の断面図を示す。図11は、図10の領域Bの拡大図を示す。第3実施例は、ブロック72bの突出部70bと隔壁73の間隔が第2実施例に比べて広い。
第3実施例の場合、第2実施例に比べて、空間76に存在する冷却水によって突出部70bの先端面にも直接的に冷却水を当てることができるという利点がある。
【0034】
(第4実施例)
図12は、第4実施例の冷却装置の断面図を示す。図13は、図12の領域Dの拡大図を示す。第4実施例は、半導体モジュール32が組込まれた一対のブロック72bの間に、隔壁が設けられていない点で、第2実施例と異なる。あるいは、対向するブロック72bの突出部群70aと突出部群70bの位置が図9の縦方向において一致している点で、第1実施例と異なる、ともいえる。
第4実施例の場合第2実施例に比べて、隔壁が存在しない分だけ冷却装置の占有スペースを小さくすることができるという利点がある。
【0035】
(第5実施例) 図14は、第5実施例の冷却装置の断面図を示す。図15は、図14の領域Fの拡大図を示す。第5実施例は、対向するブロック72bの突出部群70aと突出部群70bの間隔が第4実施例に比べて広い。
第5実施例の場合、第4実施例に比べて、空間84に存在する冷却水によって突出部の先端面にも直接的に冷却水を当てることができるという利点がある。
【0036】
(第2〜5実施例と比べた第1実施例の利点)
第1実施例の場合、第2及び第3実施例と比べて、隔壁が存在しない分だけ冷却装置の占有スペースを小さくすることができるという利点がある。
また、第2〜5実施例と異なり、第1実施例では、対向するブロック20bの突出部群30aと突出部群30bの位置が図2と図6の縦方向においてずれている。よって、第2及び第4実施例に比べて、突出部群30a、30bに対向する空間に存在する冷却水によって、突出部30a、30bの先端面にも直接的に冷却水を当てることができるという利点がある。
【0037】
また、突出部の頂部に直接的に冷却水を当てるために、第3実施例のように、対向する突出部と隔壁の間隔を広くしなくてもよい。あるいは、第5実施例のように、対抗する突出部の間隔を広くしなくてもよい。このため、第3及び第5実施例と同様に突出部の先端面に直接的に冷却水を当てることができながらも、第3及び第5実施例に比べて、冷却装置の占有スペースを小さくすることができるという利点がある。
【0038】
また、第3実施例では図11の領域Cに位置する冷却水は、突出部70bに対して斜め方向にずれた位置を流れている。この冷却水は、半導体モジュール32の冷却に寄与しにくい。第4実施例における図13の領域E、第5実施例における図15の領域Gの冷却水も同様である。これに対し、第1実施例では、対向するブロック20bの突出部群30aと突出部群30bの位置が図2と図6の縦方向にずれており、突出部30aに対して斜め方向にずれた位置には、他の突出部30bが位置している。よって、第3〜5実施例のような冷却に寄与しにくい領域を大幅に少なくすることができる。この結果、半導体モジュール32を小さなスペースで効率的に冷却することができる。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、この冷却装置では、半導体モジュール32に代えて、半導体チップ等を冷却することもできる。また、半導体モジュール等によって構成される回路としては、3相以外の多相インバータ回路であってもよい。また、ハイブリッド自動車のように、発電用と駆動用のインバータが組合わさっていてもよい。さらに、昇圧回路等の他の電力回路と組合わせてもよい。
【0040】
また、本明細書又は図面で説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合わせに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施例の冷却装置について、図2のI−I線断面図を示す。
【図2】第1実施例の冷却装置について、図1のII−II線断面図を示す。
【図3】図2に示す部分の分解斜視図を示す。
【図4】図2の半導体モジュールが組込まれた区画体の拡大断面図を示す。
【図5】図4に示す部分の分解斜視図を示す。
【図6】図2の領域Aの拡大図を示す。
【図7】第1実施例の変形例について、図1に対応する断面図を示す。
【図8】第2実施例の冷却装置について、図9のVIII−VIII線断面図を示す。
【図9】第2実施例の冷却装置について、図8のIX−IX線断面図を示す。
【図10】第3実施例の冷却装置の断面図を示す。
【図11】図10の領域Bの拡大図を示す。
【図12】第4実施例の冷却装置の断面図を示す。
【図13】図12の領域Dの拡大図を示す。
【図14】第5実施例の冷却装置の断面図を示す。
【図15】図14の領域Fの拡大図を示す。
【符号の説明】
【0042】
20:冷却装置
20a:ケース
20b:ブロック(区画体)
21a:空間
21b:空間
22:注入口
26:冷却水通路(冷媒通路)
26a、26b:通路部
30a:突出部群
30b:突出部群
31:ブロック20bの一部
32:半導体モジュール(半導体)
34:排出口
36:第2接着層
38:封止剤
40:ダイオード
42:第1接着層
46:パワー半導体素子
48:絶縁カラー
49:開口部
50:第1電極
52:絶縁層
54:制御用配線
56:第2電極
62:蓋
72:冷却装置
70a:突出部群
70b:突出部群
72b:ブロック
73:隔壁
76:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を冷却する装置であり、
内部に冷媒通路を形成するケースと、
内部に半導体を収容し、その半導体の発生熱を放熱する放熱面を正面と背面に備える区画体と
を備え、
その区画体はその冷媒通路に挿入されることによって冷媒通路を区画しており、
その区画体の正面と背面は区画体により区画された冷媒通路に面している、
ことを特徴とする半導体冷却装置。
【請求項2】
一つのケースに平面方向に対して一本の冷媒通路を区画する複数個の区画体が挿入されており、
その区画された冷媒通路は一の区画体に対して正面と背面を経ており、且つ、すべての区画体を経ていることを特徴とする請求項1の半導体冷却装置。
【請求項3】
複数個の区画体が、一方の側端がケースに接する区画体と他方の側端がケースに接する区画体が交互に現れる関係で、相互に平行に配置されていることを特徴とする請求項2の半導体冷却装置。
【請求項4】
ケース内に略直方体形状の空間が確保されており、
平行に配置されている区画体の側端に対向する面には、区画体の一本おきの側端に相当する位置に更なる空間が確保されていることを特徴とする請求項3の半導体冷却装置。
【請求項5】
区画体の正面と背面には冷媒通路に突出する突出部が形成されており、突出部の先端面が冷媒通路に露出していることを特徴とする請求項3または4の半導体冷却装置。
【請求項6】
隣接する区画体の正面側の突出部と背面側の突出部の突出位置が相違しており、隣接する区画体の正面側の突出部と背面側の突出部の先端面がほぼ同一面に整列していることを特徴とする請求項5の半導体冷却装置。
【請求項7】
正面側の突出部と背面側の突出部は、冷媒通路に沿って伸びる凸条であって、隣接する区画体の正面側の突出部と背面側の突出部の先端面の端部同士がほぼ接していることを特徴とする請求項6の半導体冷却装置。
【請求項8】
ケースと区画体が別部材で形成されており、組合わせることで構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの半導体冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−202899(P2006−202899A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11632(P2005−11632)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】