説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び半導体装置

【課題】硬化性及び常温保存性の充分に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記硬化促進剤が、1,1',2,2'-テトラキス(4-ヒドロフェニル)エタン系化合物で、2−フェニルイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び該組成物で半導体素子を封止成形して形成される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、シリコンチップ等の半導体素子やリードフレーム等を、封止材料で封止して半導体パッケージを形成することにより得られる。封止材料としては、無機充填材を含むエポキシ樹脂組成物が挙げられる。
【0003】
近年、封止材料で封止する工程において、半導体パッケージの生産効率を向上させるために、封止材料として用いるエポキシ樹脂組成物の硬化時間の短縮化が望まれている。このため、硬化促進剤の添加量を増やしたり、硬化促進剤として反応性の高いイミダゾール系化合物を使用することによって、封止材料であるエポキシ樹脂組成物の硬化性を高めることが検討されてきた。また、半導体装置に用いられる半導体素子の回路の線幅や回路間隔は、ますます微細になってきている。このような微細な回路を有する半導体素子を封止するためには、封止材料に高い流動性等も求められる。また、半導体パッケージの生産効率を向上させるために、金型の複数列のキャビティにスルーゲートを通してプランジャーにより封止材料を充填して成形する多列フレームを形成することが行われている。その際に用いられる封止材料にも、欠陥なく多列フレームを形成するために、高い流動性等が求められる。
【0004】
しかしながら、上記のような硬化性を高めたエポキシ樹脂組成物は、硬化性が高まる一方で、常温での保存性が悪化したり、開封後の可用時間が短くなったりするという問題があった。また、場合によっては、開封前の密封時であってもエポキシ樹脂組成物が経時変化してしまうことがあった。このような経時変化したエポキシ樹脂組成物は、流動性等が低下していることがあり、充填不良が発生するおそれもあった。
【0005】
下記特許文献1及び特許文献2には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材を含み、前記硬化促進剤が、テトラキスフェノール系化合物により包接してなるものである封止用エポキシ樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−1748号公報
【特許文献2】特開2004−307545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2によれば、テトラキスフェノール系化合物により包接してなる硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物は、常温に長時間放置しても硬化性等の劣化の少ない常温保存性に優れたものが得られることが開示されている。しかしながら、このようなエポキシ樹脂組成物は、硬化性及び常温保存性がともに充分に優れたものを得ることが困難であった。
【0008】
本発明は、硬化性及び常温保存性の充分に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物で半導体素子を封止成形して形成される半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記硬化促進剤が、下記一般式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物で、下記一般式(II)で表されるイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を含有することを特徴とするものである。
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式(I)中、R〜R16は、独立して水素又はアルキル基を示す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(上記式(II)中、R17及びR18は、独立して水素、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。)
上記の構成によれば、硬化性及び常温保存性の充分に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られる。すなわち、硬化性と常温保存性との両立が可能な半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られる。このことは、前記テトラキスフェノール系化合物で、前記イミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を硬化促進剤として用いることによって、エポキシ樹脂組成物の硬化時には、反応性の高い前記イミダゾール系化合物が効果的に作用し、常温保存時には、反応性の高い前記イミダゾール系化合物が前記テトラキスフェノール系化合物で包接されて、硬化を促進する作用が抑制されるためであると考えられる。
【0014】
また、得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、常温保存性に優れているので、長期保存後であっても、硬化性や流動性等の低下が抑制されるので、充填不良等の不具合の発生が抑制される。
【0015】
また、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、前記硬化剤が、下記一般式(III)で表されるフェノールノボラック系樹脂であることが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
(上記式(III)中、nは、0〜10を示し、nが0であるものが10質量%以下、nが2であるものが30質量%以上である。)
上記の構成によれば、前記硬化促進剤と前記硬化剤とを組み合わせて用いることによって、硬化性及び常温保存性のより優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られる。
【0018】
また、前記包接化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量に対して、0.5〜5質量%であることが好ましい。このような構成によれば、硬化性をより高め、常温保存性をより優れたものが得られる。
【0019】
また、前記包接化合物中の前記イミダゾール系化合物の含有量が、10〜50質量%であることが好ましい。このような構成によれば、前記イミダゾール系化合物が、前記テトラキスフェノール系化合物と組み合わせて用いることによって、硬化性と常温保存性との両立を達成することができる効果をより発揮することができる。
【0020】
また、前記テトラキスフェノール系化合物としては、1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンであることが好ましい。
【0021】
また、前記イミダゾール系化合物としては、2−フェニルイミダゾールであることが好ましい。
【0022】
また、本発明の半導体装置は、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で半導体素子を封止成形して形成されることを特徴とするものである。硬化性及び常温保存性に優れている半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止成形するので、充填不良等の不具合の発生が抑制された信頼性の高い半導体装置が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、硬化性及び常温保存性の充分に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、該組成物で半導体素子を封止成形して形成される半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記硬化促進剤が、下記一般式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物で、下記一般式(II)で表されるイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を含有することを特徴とするものである。
【0025】
【化4】

【0026】
(上記式(I)中、R〜R16は、独立して水素又はアルキル基を示す。)
【0027】
【化5】

【0028】
(上記式(II)中、R17及びR18は、独立して水素、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。)
前記エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のブロモ含有エポキシ樹脂等を用いることができる。これらの中では、パッケージ強度、成形性及びコストのバランスの点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、前記エポキシ樹脂としては、上記各エポキシ樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、180〜220であることが好ましい。エポキシ当量が小さすぎると、低分子成分が多くなり、成形バリが発生しやすくなる傾向があり、また、大きすぎると、粘度が上昇し、成形性に不具合を生じるおそれがある。また、臭素化エポキシ樹脂を含有させることによって、難燃性が高まるので、難燃性を高くする必要がある場合に含有させると好ましい。
【0029】
前記硬化剤としては、前記エポキシ樹脂を硬化させるためのものであり、公知の硬化剤を使用することができる。具体的には、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノールナフトールアラルキル樹脂等のナフトールアラルキル樹脂等の、各種多価フェノール化合物又はナフトール化合物等が挙げられる。これらの中では、フェノールノボラック樹脂が好ましく、下記一般式(III)で表されるフェノールノボラック系樹脂であることがさらに好ましい。
【0030】
【化6】

【0031】
(上記式(III)中、nは、0〜10を示す。)
また、前記フェノールノボラック系樹脂において、nが大きすぎると、分子量が高くなり、樹脂粘度が高くなる傾向がある。そして、nが調整されたものが好ましい。具体的には、例えば、nが0であるものが10質量%以下、nが2であるものが30質量%以上であるものが、反応性、粘度、保存性、及び低バリ性等の点から、より好ましい。
【0032】
また、前記硬化剤としては、上記各硬化剤を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
前記硬化剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂に対する割合(硬化剤/エポキシ樹脂)が、当量比で、0.5〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることが好ましい。硬化剤の含有量が少なすぎる場合、硬化不足になり、硬化物の形状安定性が不充分となる傾向がある。また、硬化剤の含有量が多すぎる場合、経済的に不利であり、フリーのフェノール等が残存し、得られた半導体装置の信頼性にも悪影響を与える。
【0034】
前記硬化促進剤としては、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の水酸基との反応(硬化反応)を促進するためのものであり、具体的には、前記一般式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物で、前記一般式(II)で表されるイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を少なくとも含有する。また、前記硬化促進剤としては、前記包接化合物を含有していれば、前記包接化合物以外の硬化促進剤を含有してもよい。
【0035】
前記テトラキスフェノール系化合物におけるR〜R16は、上述のように、独立して水素又はアルキル基を示す。前記アルキル基は、炭素数が1〜2であることが好ましい。具体的には、メチル基が好ましい。前記テトラキスフェノール系化合物としては、具体的には、例えば、1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)が好ましい。また、前記イミダゾール系化合物におけるR17及びR18は、上述のように、独立して水素、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。前記アルキル基は、炭素数が1〜2であることが好ましい。具体的には、メチル基が好ましい。また、前記ヒドロキシアルキル基は、炭素数が1〜2であることが好ましい。具体的には、ヒドロキシメチル基が好ましい。前記イミダゾール系化合物としては、具体的には、例えば、2−フェニルイミダゾール(2PZ)が好ましい。そして、前記包接化合物としては、具体的には、例えば、1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンで包接してなる2−フェニルイミダゾールが好ましい。また、前記包接化合物において、前記包接化合物中の前記イミダゾール系化合物の含有量が、前記包接化合物全量に対して、10〜50質量%であることが好ましい。前記イミダゾール系化合物の含有量が少なすぎる場合、硬化性が低く、ハイサイクル化が困難になる傾向があり、また、多すぎる場合、保存性が低下する(硬化が低くなる)傾向がある。
【0036】
前記包接化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量に対して、0.5〜5質量%であることが好ましい。前記包接化合物の含有量が少なすぎる場合、硬化性が低く、ハイサイクル化が困難になる傾向があり、また、前記包接化合物の含有量が多すぎる場合、保存性が低下する(硬化が低くなる)傾向がある。
【0037】
また、前記包接化合物と併用する他の硬化促進剤としては、従来公知の硬化促進剤を用いることができる。具体的には、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン及びベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。硬化促進剤としては、上記各硬化促進剤を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、前記イミダゾール系化合物以外の硬化促進剤を前記テトラキスフェノール系化合物で包接してなるものも、前記包接化合物と併用してもよい。
【0038】
前記無機充填材としては、従来公知の無機充填材を用いることができる。具体的には、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、充填性や流動性の観点から溶融シリカが好ましく、さらに球状のものが好ましく、真球状に近いものほど好ましい。
【0039】
前記無機充填材の含有量は、エポキシ樹脂組成物全量の60〜90質量%であることが好ましい。前記無機充填材の含有量が少なすぎる場合には、強度が低い、線膨張が大きく、応力特性が悪い、リードフレームとのマッチングが悪い等の傾向がある。また、多すぎる場合には、流動性が低下して、未充填ボイドなどが生じてパッケージクラックが発生しやすい傾向がある。
【0040】
前記エポキシ樹脂組成物には、上記以外の組成として、本発明の目的とする所望の特性を阻害しない範囲で従来公知の添加剤、例えば離型剤、シランカップリング剤、難燃剤、着色剤、シリコーン可とう剤、及びイオントラップ剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0041】
前記離型剤としては、例えばカルナバワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボシキル基含有ポリオレフィン等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
前記難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、赤リンや有機リン等のリン系難燃剤等が挙げられる。また、金属水酸化物は、チタネート系カップリング剤で予め表面処理されたものであってもよい。
【0044】
前記着色剤としては、例えば、カーボンブラックや染料等が挙げられる。また、前記シリコーン可とう剤としては、例えば、シリコーンエラストマ、シリコーンオイル、シリコーンゲル、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0045】
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製するにあたっては、まず、前記エポキシ樹脂、前記硬化剤、前記硬化促進剤、前記無機充填材及び必要に応じて前記各添加剤を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーやブレンダー等で均一に混合した後、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、及びプラネタリーミキサー等で加熱しながら混練することによって製造することができる。また混練後に、必要に応じて冷却固化し、粉砕して粉状に形成してもよい。また、混練時の温度としては、硬化反応が生じない温度範囲である必要があり、エポキシ樹脂及び硬化剤の組成にもよるが、80〜120℃程度で溶融混練することが好ましい。
【0046】
半導体装置を構成する半導体素子や基板等の部材を前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止することによって、半導体装置を製造することができる。具体的には、リードフレームや基板等に半導体素子を搭載した後、所定の封止領域を前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止することにより半導体装置が得られる。この封止の手段としては、トランスファー成形(トランスファーモールド)等により、半導体素子を搭載したリードフレームや基板等を金型内のキャビティに配置した後、キャビティに前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を充填し、これを加熱して硬化させる方法が挙げられる。このトランスファー成形を採用した場合の金型の温度は170〜180℃、成形時間は30〜120秒に設定することができるが、金型の温度や成形時間及びその他の成形条件は、従来の封止成形と同様に設定することができ、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の材料の種類や製造される半導体装置の種類によって適宜設定変更できる。この半導体装置は、硬化性及び常温保存性に優れている半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止成形するので、充填不良等の不具合の発生が抑制された信頼性の高いものとなる。
【0047】
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
表1に示す配合割合(質量部)で、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材等の各成分をブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱したニーダーで溶融混練し、冷却後、粉砕機で粉砕して粒状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例及び比較例においては次の原材料を用いた。
【0049】
O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:DIC株式会社製のN665EXP
ブロム化エポキシ樹脂:東都化成株式会社製のYDB−400
フェノールノボラック樹脂1:群栄化学工業株式会社製のPSM6200(上記一般式(III)で表されるフェノールノボラック樹脂、nが0であるものが10質量%を超え、nが2であるものが30質量%未満)
フェノールノボラック樹脂2:明和化成株式会社製のDL92(上記一般式(III)で表されるフェノールノボラック樹脂、nが0であるものが10質量%以下、nが2であるものが30質量%以上)
包接化合物1:1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)で2−フェニルイミダゾール(2PZ)を包接した包接化合物(TEP−2PZ、2PZ濃度:40質量%)
包接化合物2:1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)で2−フェニルイミダゾール(2PZ)を包接した包接化合物(TEP−2PZ、2PZ濃度:60質量%)
包接化合物3:1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)で2−フェニルイミダゾール(2PZ)を包接した包接化合物(TEP−2PZ、2PZ濃度:5質量%)
包接化合物4:1,1’,2,2’−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンで2−フェニルイミダゾール(2PZ)を包接した包接化合物(2PZ濃度:40質量%)
包接化合物5:1,1’,2,2’−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンで2−フェニルイミダゾール(2PZ)を包接した包接化合物(2PZ濃度:40質量%)
カルナバワックス:大日化学工業株式会社製のF1−100
カーボンブラック:三菱化学株式会社製の♯40
溶融シリカ:電気化学工業株式会社製のFB820
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製のKBM403
上記のように調製した各組成物を用いて、以下に示す方法により評価を行った。
【0050】
(スパイラルフロー)
ASTM D3123に準じたスパイラルフロー測定金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、成形時間90秒間、後硬化175℃/6時間の条件でトランスファー成形することにより、流動距離(cm)を測定した。
【0051】
(保持率)
各組成物を25℃の恒温室に保管し、所定期間経過後のスパイラルフローの流動長を測定し、上記スパイラルフロー(初期)の流動長に対する、スパイラルフローの減少率を算出した。
【0052】
(ゲルタイム)
キュラストメーター(JSRキュラストメーターIII PS型)を用い、170℃でのゲルタイム(所定のトルクに達した時点までの時間)を求めた。
【0053】
(ショアD硬度)
得られたエポキシ樹脂組成物を所定の金型を用いて、180℃40秒間、加熱硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物のショアD硬度を測定した。
【0054】
(ミニモールド成形性評価)
各組成物を30℃の恒温室に保管し、所定期間経過後の各組成物を、1.5×2.9×0.8mmtのミニモールド金型に充填させた。そして、実体顕微鏡にて、径が0.1mm以上の未充填ボイドの数を確認し、試験実施数2000個に対する未充填ボイドが発生した試験数の割合(未充填不良率)を算出した。
【0055】
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示した結果から、硬化促進剤として、上記一般式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物で、上記一般式(II)で表されるイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を用いた場合(実施例1〜8)、前記テトラキスフェノール系化合物で包接していない前記イミダゾール系化合物を用いた場合と比較して、保持率が高く、ミニモールド成形性が優れていたことがわかった。このことから、硬化促進剤として、上記一般式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物で、上記一般式(II)で表されるイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を用いることによって、硬化性及び常温保存性がともに充分に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られることがわかった。
【0058】
また、前記包接化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量に対して、0.5〜5質量%である場合(例えば、実施例1,2,4)、前記包接化合物の含有量が、0.5質量%未満である場合(実施例3)と比較して、スパイラルフローが好適な値を示し、適切な流動性を有し、硬化物も充分に硬くなることがわかった。
【0059】
また、前記包接化合物中の前記イミダゾール系化合物の含有量が、10〜50質量%である場合(例えば、実施例1,2,4)、前記イミダゾール系化合物の含有量が、50質量%を超える場合(実施例5)と比較して、保持率がより高かった。そして、前記包接化合物中の前記イミダゾール系化合物の含有量が、10〜50質量%である場合(例えば、実施例1,2,4)、前記イミダゾール系化合物の含有量が、10質量%未満である場合(実施例6)と比較して、ミニモールド成形性が優れていたことがわかった。これらのことから、前記包接化合物中の前記イミダゾール系化合物の含有量が、10〜50質量%であると、硬化性及び常温保存性がともにより優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られることがわかった。
【0060】
また、前記テトラキスフェノール系化合物としてTEPを用いた場合(例えば、実施例1,2,4)、TEP以外のテトラキスフェノール系化合物を用いた場合(実施例7,8)と比較して、保持率がより高く、ミニモールド成形性がより優れていたことがわかった。このことから、硬化促進剤として、TEPで包接した包接化合物を用いることによって、硬化性及び常温保存性がともにより優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、
前記硬化促進剤が、下記一般式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物で、下記一般式(II)で表されるイミダゾール系化合物を包接してなる包接化合物を含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(上記式(I)中、R〜R16は、独立して水素又はアルキル基を示す。)
【化2】


(上記式(II)中、R17及びR18は、独立して水素、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記硬化剤が、下記一般式(III)で表されるフェノールノボラック系樹脂である請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】


(上記式(III)中、nは、0〜10を示し、nが0であるものが10質量%以下、nが2であるものが30質量%以上である。)
【請求項3】
前記包接化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量に対して、0.5〜5質量%である請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記包接化合物中の前記イミダゾール系化合物の含有量が、10〜50質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記テトラキスフェノール系化合物が、1,1’,2,2’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記イミダゾール系化合物が、2−フェニルイミダゾールである請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で半導体素子を封止成形して形成されることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2010−195998(P2010−195998A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45209(P2009−45209)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】