説明

半導体検査装置

【課題】 半導体検査装置で大きさの異なる試料を検査する場合に、試料外縁付近を検査するときに試料近傍の等電位面の分布が乱れるため一次電子線が曲がってしまい、いわゆる位置ずれが発生する。
【解決手段】 試料の外側で且つ試料下面よりも低い位置に電位補正電極を設け、そこに試料よりも低い電位を印加する。また、検査位置と試料外縁との距離、試料の厚さ、および一次電子線の照射条件に応じて電位補正電極に印加する電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイス製造において用いられる、荷電粒子線を用いた半導体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造においては、ゲート電極や配線層間のコンタクトホールの寸法を測定するために走査電子顕微鏡式測長検査装置(Critical-Dimension Scanning Electron Microscope、以下CD-SEMと記す)など一次電子線を利用した検査装置が荷電粒子線応用装置の1つの形態として用いられている。
【0003】
ここで従来より用いられているSEM式半導体検査装置の電子光学系の概略を図14に示す。
【0004】
引き出し電極2の電圧により電子銃1から出た一次電子線22(破線で示す)は、コンデンサレンズ3、走査偏向器5、絞り6、対物レンズ9等を通過して収束・偏向されて、半導体装置などの試料10の検査位置に照射される。なお、コンデンサレンズ3、走査偏向器5、絞り6、対物レンズ9およびシールド電極16は、光軸18を中心軸とする軸対称形状に形成されている。
【0005】
この試料10には、一次電子線22の減速用にリターディング電源26より減速電圧(以下、リターディング電圧と記す)が印加されている。試料10からは一次電子線22の照射により二次電子線32(破線で示す)が発生し、試料10に印加されたリターディング電圧により加速され上方に移動する。加速された二次電子線24は、このEクロスB偏向器8により偏向され、二次電子検出器14に入射する。この二次電子検出器14では入射した二次電子24が電気信号に変換され、プリアンプ(図示しない)によって増幅されて検査画像の信号用の輝度変調入力となり、検査領域の画像データが得られる。
【0006】
半導体デバイス製造においては、試料10は半導体ウェハであり、複数の矩形のチップが試料10のほぼ全領域に亘って形成されている。そのため検査装置は試料10の中央部のチップだけではなく、外側に形成されたチップの検査も行う場合がある。試料10の外周部以外(例えば中央部)を検査する場合には、試料10近傍の等電位面は光軸18を中心軸とする軸対称分布となるが、試料10の外周部を検査する場合には、図15に示すように試料10近傍の等電位面20(破線で示す)の軸対称性が乱れてしまうという問題があった。このように等電位面20の軸対称性が乱れてしまうと一次電子線22が曲げられ、試料10上の本来検査すべき位置(光軸18と試料11の表面とが交わる位置)から離れた位置30に一次電子線22が当たってしまう、いわゆる位置ずれの問題が生じる。
【0007】
通常CD-SEMにおいては、機械的なステージを用いて粗い位置合わせを行い、その後SEM像を用いた高精度な位置合わせを行うことで、測長すべき位置を検出しているが、大きな位置ずれが起きた場合には、機械的なステージを用いて位置合わせした位置とSEM像を用いて位置合わせした位置とが遠く離れてしまうため、測長すべき位置への移動量が多くなってしまい、スループットの低下をもたらす原因となる。
【0008】
またさらに試料である半導体ウェハは、直径300mmのものや、さらに直径450mmのものといった大口径化がますます進行しようとしている。このように半導体ウェハが大口径化するとその外縁の曲率が小さくなるため、そのウェハに作成される矩形のデバイスチップを、以前よりも半導体ウェハの外縁近くまで作成することが可能になる。それに伴い、半導体デバイス製造においては以前よりも、外縁のより近くまで検査したいという要求が高まっている。前述の位置ずれの量は、検査位置が半導体ウェハの外周であるほど大きくなることが知られており、前述した一次電子線の曲がりが引き起こす位置ずれの問題はより重要なものとなっている。
【0009】
このような試料の外周部での等電位面20の軸対称性の乱れを防止する技術として、試料(ここでは基板)のエッジと、試料である基板の表面と同じ高さに構成された基板ホルダとの間に導体リングを設け、その導体リングに電圧を印加する技術が特許文献1によって開示されている。またこの技術においては、基板エッジと基板ホルダとの間のギャップサイズに応じて、導体リングに印加する電圧を調節している。この技術の適用によって、基板近傍の電位分布の乱れを防止することは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−235149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら基板ホルダの製造においては、ある程度の寸法誤差が避けられず基板ホルダの表面には凹凸やうねりが存在する。また基板ホルダをボルトなどでステージに取り付ける際には、ボルトの締め付け具合で基板ホルダの変形が生じ、同様に表面には凹凸やうねりが発生する可能性がある。これらは基板エッジの観察位置(例えば12時の位置と3時の位置)によって、基板の表面高さと基板ホルダの表面高さとに違いを引き起こす。このような場合は基板エッジと基板ホルダとの間のギャップサイズに応じて導体リングに印加する電圧を調節しても基板近傍の電位分布の乱れを完全に補正することはできない。さらに複数の基板ホルダに関しても、寸法誤差が避けられないため、基板エッジの観察位置による基板の表面高さと基板ホルダの表面高さの違いが、基板ホルダの固体差によって生じる。
【0012】
その結果、複数の検査装置を比較した場合に、基板近傍の電位分布の乱れに違いが生じるため、検査装置の固体差(装置間差)につながる可能性がある。またさらに、半導体製造においては様々な試料、例えば反った半導体基板を試料として検査する場合がある。その場合にも前述したケースと同様に、エッジにおける基板の表面高さが観察位置(例えば12時の位置と3時の位置)によって違いが生じるため、基板エッジと基板ホルダとの間のギャップサイズに応じて導体リングに印加する電圧を調節しても基板近傍の電位分布の乱れを完全に補正することはできない。
【0013】
またさらに、基板を基板ホルダに設置するために搬送する際に、万が一、搬送に失敗した場合には、基板が導体リングに接触する可能性がある。その場合は基板が損傷を受けたり、接触によってパーティクルが発生し基板に付着することによって電子デバイスに欠陥が生じたりする可能性がある。
【0014】
またさらに、特許文献1に記載の検査装置では異なる大きさの試料の観察に対応しにくいという問題がある。半導体デバイスの製造ラインでは半導体ウェハが処理され、それを試料として検査するが、試料の大きさは直径200mm(以下φ200と記す)もしくは直径300mm(以下φ300と記す)や、さらに大口径化した直径450mm(以下φ450と記す)といった大きさの異なるウェハを検査する場合がある。
【0015】
このような場合、特許文献1に記載の装置では、試料の外側に設置した導体リングの表面が、試料である基板の表面と同じ高さに構成されているため、直径の異なる試料の検査に対応しにくい。例えばφ300ウェハ用の導体リングが設置されている試料台にφ450ウェハを載せようとした場合、導体リングの表面がφ300ウェハの表面と同じ高さになるように設置されているため、φ450ウェハが導体リングに干渉して試料台に載せることができなくなる。このような場合には特許文献1に記載の装置では、それぞれの半導体ウェハに適した2種類の導体リングを予め用意しておき交換する必要がある。例えばφ300ウェハを検査した後にφ450ウェハの試料を測定する場合には、φ300ウェハ用の導体リングからφ450ウェハ用の導体リングに交換・設置する必要があり、検査装置の試料搬送機構が複雑になるという欠点がある。
【0016】
本発明は、半導体ウェハ試料の外周部を検査する場合に,外周部に生じる位置ずれを防止できる半導体検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明においては、その上に試料を保持するための試料台と、試料台を移動させる手段と、試料の表面に荷電粒子ビームを照射するためのビーム源と、荷電粒子ビームを試料の表面に走査するビーム走査手段とを備えた半導体検査装置において、試料台が第1の大きさの試料もしくは第1の大きさの試料よりも大きな第2の大きさの試料をその上に保持可能であり、第1の大きさの試料の外縁よりも外側で且つ第2の大きさの試料の外縁よりも内側で且つ試料の下面よりも低い位置にある第1の電極と、第2の大きさの試料の外縁よりも外側にある第2の電極と、第1の電極または第2の電極に電圧を印加するための第1の電圧供給源と、試料の検査位置と試料の厚さと荷電粒子ビームの照射条件に応じてこの電圧供給源の電圧を分析するための分析部と、分析部の分析結果をもとにこの電圧供給源の電圧を制御するための制御部とをさらに有することによって達成される。
【0018】
本発明において、好適には、試料台が試料として、第1の大きさの試料と第1の大きさの試料よりも大きな第2の大きさの試料を保持可能であり、試料台の表面が誘電体で形成されており、誘電体内部で且つ前記第1の大きさの試料の外縁よりも内側の位置に設けられた第1の電極と、誘電体内部で且つ第1の電極の外側で且つその内縁が第1の大きさの試料の外縁よりも内側で且つその外縁が第1の大きさの試料の外縁よりも外側の位置に設けられた第2の電極と、誘電体内部で且つ第2の電極よりも外側で且つ第2の大きさの試料の外縁よりも内側の位置に設けられた第3の電極と、誘電体内部で且つ第3の電極の外側で且つその内縁が第2の大きさの試料の外縁よりも内側で且つその外縁が第2の大きさの試料の外縁よりも外側の位置に設けられた第4の電極と、第1の電極に正の極性の電圧を印加するために設けられた第1の電圧供給源と、第2の電極に負の極性の電圧を印加するために設けられた第2の電圧供給源と、第3の電極に正の極性の電圧を印加するために設けられた第3の電圧供給源と、第4の電極に負の極性の電圧を印加するために設けられた第4の電圧供給源とを有し、第2の電極は、第1の大きさの試料または第2の大きさの試料を試料台に吸着し、更に第1の電位補正電極として機能し、第4の電極は、第2の大きさの試料を試料台に吸着し、更に第2の電位補正電極として機能し、分析部は、第2の電圧供給源または第4の電圧供給源の電圧を分析し、制御部は、分析部の分析結果をもとに第2の電圧供給源または第4の電圧供給源の電圧を制御する構成を有する。
【0019】
本発明において、更に好適には、荷電粒子ビームを試料上に収束する対物レンズと、この対物レンズと試料との間に設けられ、荷電粒子ビームの光軸上に孔を有し、試料と等電位に保持されるシールド電極とを更に備え、第2の電極の外縁と第1の大きさの試料の外縁との間の半径方向の長さの差と、第4の電極の外縁と第2の大きさの試料の外縁との間の半径方向の長さの差との少なくとも一方と、試料の測定位置の中で最も外側を測定するときの測定位置と試料の外縁との間の距離との和が、シールド電極の前記孔の半径以上となるように形成される構成を有する。
【0020】
また、上記の目的を達成するために、試料台の表面が誘電体で形成され、それに電圧を印加することによって第1の大きさの試料または第2の大きさの試料を試料台に吸着するために誘電体内部で且つ第1の大きさの試料の外縁よりも内側の位置に設けられた第3の電極と、それに電圧を印加することによって第1の大きさの試料または第2の大きさの試料を試料台に吸着するために誘電体内部で且つ第1の大きさの試料の外縁よりも内側で且つ第3の電極の外側の位置に設けられた第4の電極と、それに電圧を印加することによって第2の大きさの試料を試料台に吸着するために誘電体内部で且つ第1の大きさの試料の外縁よりも外側で且つ第2の大きさの試料の外縁よりも内側の位置に設けられた第5の電極と、それに電圧を印加することによって第2の大きさの試料を試料台に吸着するために誘電体内部で且つ第5の電極よりも外側で且つ第2の大きさの試料の外縁よりも内側の位置に設けられた第6の電極と、第3の電極と第5の電極の少なくともいずれかに電圧を印加するために設けられた第2の電圧供給源と、第2の電圧供給源と異なる極性の電圧を第4の電極と第6の電極の少なくともいずれかに印加するために設けられた第3の電圧供給源とをさらに有することによって達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の構成を備えることによって、試料外周部を検査する場合に生じる位置ずれを防止できる半導体検査装置を提供できる。更に、試料外周部にパターンを描画する場合に生じる位置ずれを防止できる電子描画装置等の応用装置が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施例に用いられるCD−SEMの構成を示す側断面図である。
【図2】第1実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図である 。
【図3】第1実施例に用いられるCD−SEMの試料台を示す図であり、図2のA-A 断面を示す図である。
【図4】第1実施例に用いられるCD−SEMの対物レンズとシールド電極と試料台 の近傍を拡大した側断面図である。
【図5】第1実施例に用いられるCD−SEMで用いる試料台の電位補正電極に印加 する直流電源の電位と一次電子の曲がり量、及び光軸と試料外縁との距離と試料台の 電位補正電極に印加する直流電源の電圧との関係を示す図である。
【図6】第2実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図である 。
【図7】第2実施例に用いられるCD−SEMの試料台を示す図であり、図6のB- B断面を示す図である。
【図8】第2実施例に用いられるCD−SEMの対物レンズとシールド電極と試料台 の近傍を拡大した側断面図である。
【図9】第3実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図である 。
【図10】第4実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図であ る。
【図11】第5実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図であ る。
【図12】第6実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図であ る。
【図13】第6実施例に用いられるCD−SEMの対物レンズとシールド電極と試料 台の近傍を拡大した側断面図である。
【図14】従来のCD−SEMの構成の一例を示す側断面図である。
【図15】図14に示すCD−SEMの対物レンズとシールド電極と試料台の近傍を 拡大した側断面図である。
【図16】第7実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図であ る。
【図17】第7実施例に用いられるCD−SEMの試料台内部の電極が試料外縁より もはみ出している量と、試料の観察位置と、シールド電極の孔半径と、一次電子線の 曲がり量との関係を示す2つのグラフ図である。
【図18】第7実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図であ る。
【図19】第8実施例に用いられるCD−SEMの試料台の構成を示す側断面図であ る。
【図20】第8実施例に用いられるCD−SEMの試料台を示す図であり、図19の C-C断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の最良の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明を適用した荷電粒子線を用いた半導体検査装置の一例として、CD−SEMに適用した第1の実施例について図1〜図5を用いて詳しく説明する。
【0025】
図1はCD−SEMの電子光学系の概略図である。また、図2は本実施例のCD−SEMで使用する試料台11近傍を拡大した断面図である。そのうち、図2(A)は試料10としてφ300ウェハを試料台11に設置した場合の構成を示すものである。また、図3は本実施例で使用した試料台11の図2におけるA-A断面を示した図である。なお、位置関係をわかりやすくするために、溝50の内縁と、溝50の外縁と、窪み54の内縁を破線で示す。また、図4は、試料10としてφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11とシールド電極16および対物レンズ9の近傍の構成であり、特に試料10の外縁から2mmの位置を検査している場合の構成を示すものとする。
【0026】
なお、以下の説明において、大きさの異なる複数の試料10を扱う場合に、直径が小さなものから第1の大きさ、第2の大きさと記すものとする。また、試料台中の複数の電極や、それらに電圧を印加する電源についても、全体的にあるいはその機能毎に、原則そのように記すものとする。さて、本実施例においては第1の大きさの試料10はφ300ウェハであり、第2の大きさの試料10はφ450ウェハとなる。
【0027】
図1に示すように、引き出し電極2の電圧により電子銃1から出た一次電子線22は、コンデンサレンズ3、走査偏向器5、絞り6、対物レンズ9等を通過して収束・偏向されて、試料台11上に載置された試料10の検査位置に照射される。検査位置を変える場合には、試料台11下に設置されたX−Yステージ15を用いて試料10を移動させる。なお、本実施例においては試料10を円盤形状の半導体ウェハとした。
【0028】
さらに試料10近傍に、リターディング電位と同電位を印加するシールド電極16を設けることにより、試料10近傍の電位分布の乱れが軽減される。なお、対物レンズ9などは、光軸18(一点鎖線で示す)を中心軸とする軸対称形状に構成されている。
【0029】
この試料10には、一次電子線22の減速用にリターディング電源26より減速電圧(以下、リターディング電圧と記す)が印加されている。試料10からは一次電子線22の照射により二次電子24が発生し、上方に移動する。
【0030】
対物レンズ9の電子銃側には隣接してEクロスB偏向器8が設けてある。このEクロスB偏向器8は、一次電子線22に対しては電界と磁界による偏向量が互いに打ち消し合い、二次電子24に対しては、両者の重ね合わせで電子を偏向させる偏向器である。試料10から上方に移動してきた二次電子24は、このEクロスB偏向器8により偏向され、二次電子検出器14に入射する。この二次電子検出器14では入射した二次電子24が電気信号に変換され、プリアンプ(図示しない)によって増幅されて検査画像の信号用の輝度変調入力となり、検査領域の画像データが得られる。
【0031】
また、試料台11の試料10の外側の領域には電位補正電極44−2が形成されており、これには電圧可変式の直流電源48が接続されている。後述するように、この直流電源48の電圧はCD−SEMの検査位置(光軸18と試料10の外縁との距離)に応じて制御される。そのため分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離と一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源48の設定電圧を求め、制御部29は直流電源48をその設定電圧に制御する。
【0032】
図2に示すように、試料10の下面(裏面)には導電体の接触ピン40がばね(図示しない)によって押さえつけられ接触しており、そこにはスイッチ42を介してリターディング電源26が接続されている。またスイッチ42は導電性の試料台11にも接続されており、このスイッチ42をONにすることにより試料10および試料台11にはリターディング電圧(負の電圧)が印加される。また、試料10の外側の領域の試料台11にはリング状の溝50が形成され、その底面は試料10の下面よりも低い位置となっている。そ
の溝50の底面には絶縁体52−1が設置され、その上にリング状の電位補正電極44−1が設置されている。その電位補正電極44−1にはスイッチ46−1を介して電圧可変式の直流電源48が接続されており、このスイッチ46−1をONにすることにより電位補正電極44−1に負の電圧が印加される。そのとき、電位補正電極44−1にはリターディング電源26と直流電源48とが直列に接続されており、また、電位補正電極44−1と試料台11とは絶縁体52−1で電気的に絶縁されているため、電位補正電極44−1を試料10の電位よりも低い電位(絶対値が大きい負の電位)に保持することができる。その結果、試料10の外側に等電位面20−2が盛り上がる。なお、試料10が第1の大きさの試料10であるφ300ウェハの場合は、電位補正電極44−2には電圧を印加する必要が無いため、それに接続されているスイッチ46−2はOFFにしておくことが望ましい。なお、図3から明らかなように、好適にはリング状の電位補正電極44−1、44−2は円形状の試料10、試料台11に対し、ほぼ同心円状の形状を有している。
【0033】
次に試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を図2(B)に示す。試料10の外側の領域の試料台11は試料10の下面よりも低く構成され、窪み54が構成されている。その窪み54には絶縁体52−2が設置され、その上にリング状の電位補正電極44−2が設置されている。その電位補正電極44−2にはスイッチ46−2を介して電圧可変式の直流電源48が接続されており、このスイッチ46−2をONにすることにより電位補正電極44−2に負の電圧が印加される。そのとき、電位補正電極44−2にはリターディング電源26と直流電源48とが直列に接続されており、また、電位補正電極44−2と試料台11とは絶縁体52−2で電気的に絶縁されているため、電位補正電極44−2を試料10の電位よりも低い電位(絶対値が大きい負の電位)に保持することができる。その結果、試料10の外側に等電位面20−2が盛り上がる。なお、試料10が第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの場合は、電位補正電極44−1には電圧を印加する必要が無いため、それに接続されているスイッチ46−1はOFFにしておくことが望ましい。
【0034】
次に図4に示すように、電位補正電極44−2の電位を試料10の電位よりも低く保持すると、試料10と電位補正電極44−2との間の電位差によって等電位面20−2が試料10の外側で盛り上がる。このような作用が無い場合には図15に示すように等電位面20−1が試料10の外側で落ち込むが、本実施例の適用によって図4に示すように等電位面20−2が盛り上がることによって等電位面20−1が上方に押し上げられ、その結果、試料10表面近傍の等電位面20−1が光軸18を中心とする軸対称分布となる。これにより試料10の外周部を検査する場合でも、試料10の表面近傍の等電位面20−1が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。
【0035】
なお、図4では試料10が第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの場合を示したが、図2(A)に示したように試料10が第1の大きさの試料10であるφ300ウェハの場合でも、同様に電位補正電極44−1の電位を試料10の電位(リターディング電位)よりも低い電位(絶対値がより大きな負の電位)にすることによって等電位面20−2を盛り上げ、試料10の外側で等電位面20−1を上方に押し上げることによって、等電位面20−1が光軸18を中心とする軸対称分布となる。これにより試料10の外周部を検査する場合でも、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。
【0036】
なお、試料10には接触ピン40を介してリターディング電圧を印加しているため、電位補正電極44−1や電位補正電極44−2の電位の影響を受けることなく、試料10はリターディング電位に保持される。なお、接触ピン40は、使用する試料10のうち最も小さいもの(本実施例では第1の大きさである直径300mm)に接触できる位置に設置することによって、異なる大きさの試料10にも対応できる。
【0037】
なお、電位補正電極44−1および電位補正電極44−2に負の電圧を印加することによって等電位面20−2を持ち上げるためには、前述したようにそれぞれの電位補正電極の電位を試料10の電位すなわちリターディング電位よりも低い電位(絶対値が大きい負の電位)にする必要があり、そのためそれぞれの電位補正電極と試料10とが接触しないような位置に設置する必要がある。また万が一、試料10を試料台11の上に設置する際に搬送に失敗した場合でも試料10と電位補正電極44−2とが接触しないことが望ましい。そのため本実施例においては、試料台11表面の試料10の外側近傍の位置に溝50および窪54みを設け、そこに電位補正電極44−1および電位補正電極44−2をそれぞれ構成することにより、それぞれの電位補正電極が試料10下面よりも下の位置にあることになる。これにより、大きさの異なる試料10を試料台11に設置した場合でも、また万が一、試料10を試料台11の上に設置する際に搬送に失敗した場合でも、試料10がそれぞれの電位補正電極に接触・干渉する恐れが無く、それぞれの電位補正電極の電位を試料10の電位すなわちリターディング電位よりも低い電位に有効に保持できる。
【0038】
以上の構成により、異なる大きさの試料10を検査する場合でも、外周部を検査する場合の一次電子線22の曲がりを無くし、位置ずれを防止する効果が得られる。
【0039】
なお図15に示したように、電位補正電極44−1もしくは電位補正電極44−2に電圧を印加しない場合の試料10の外側での等電位面20−1の落ち込み方は、CD−SEMの検査位置すなわち光軸18と試料10外縁との距離によって変化する。また、電位補正電極44−1もしくは電位補正電極44−2に印加する電圧の大きさによって、等電位面20−2の持ち上がり方が変わるため、試料10近傍の等電位面20−1の分布も変化する。そのため、一次電子線22の曲がりを無くすために電位補正電極44−1もしくは電位補正電極44−2に印加すべき最適な電圧は、光軸18と試料10外縁との距離によって変化する。また、この最適電圧は、対物レンズ9の構造など検査装置の構造や、リターディング電位などによって変化する。本実施例を適用したCD−SEMでは、リターディング電圧が-2500V、試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを検査する場合で、直流電源48の電圧(電位補正電極44−1の電位はこの電圧にリターディング電圧を加えたものとなる)と一次電子線22の曲がり量との関係が、図5(A)に示すようなグラフで示されることが発明者らの実験により確かめられた。また、このような実験から、一次電子線22の曲がりが問題となる試料10外縁から検査位置(光軸18の位置)までの距離が1〜4mmにおいて、一次電子線22の曲がり量をゼロにするための直流電源48の電圧すなわち最適電圧は図5(B)に示されることがわかった。このようなデータを予め得ておき、検査位置に応じて直流電源48の電圧を変化させることによって、電位補正電極44−1の電位を変化させ、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くすことができる。
【0040】
なお、試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを検査する場合を例にして説明を行ったが、第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを検査する場合でも同様な方法で、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くすことができる。ただし、φ450ウェハとφ300ウェハとは厚さが異なるため、一次電子線22の曲がりをゼロにするための直流電源48の最適電圧は異なる。そのために試料10が第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの場合にも図5(A)および図5(B)で示すようなデータを予め得ておくことが必要である。
【0041】
以上のような、光軸18と試料10の外縁との距離に応じて制御する直流電源48の電圧のデータは、図1に示す分析部27に蓄えられており、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離と試料10の厚さとリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源48の設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源48を制御する。これにより電位補正電極44−1および電位補正電極44−2の電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くすことができる。
【実施例2】
【0042】
次に本発明の第2の実施例に関して、第1の実施例との差異について説明する。本発明の第1実施例においては、試料10を試料台11の上に載置していたが、積極的に試料10を吸着させてはいなかった。それに対し、本実施例では静電チャックを試料台11として用いることにより、試料10を試料台11に吸着し、強固に保持できる。以下、図6〜図8を用いて本実施例の構成について説明する。
【0043】
図6(A)は試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置した場合、図6(B)は試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成をそれぞれ示した図である。また図7は、図6(A)に示した試料台11のB-B断面を示す上方図である。なお、位置関係をわかりやすくするために、溝50の内縁および外縁と、電位補正電極44−1の内縁および外縁と、窪み54の内縁と、電位補正電極44−2の内縁と外縁とを破線で示す。また図8は、試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11とシールド電極16および対物レンズ9の近傍の構成を示した図である。
【0044】
図6に示すように、本実施例で使用する試料台11は、セラミクスからなる誘電体部34と金属ベース35と、誘電体部34の内部に設けられた吸着用電極32−1〜4と、誘電体部34の表面に形成された電位補正電極44−1〜2とから成る。なお、電極32−2の外縁は試料10である第1の大きさの試料10であるφ300ウェハの外縁と同じ径かわずかに小さな径に構成されている。同様に、電極32−4の外縁は試料10である第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの外縁と同じ径かわずかに小さな径に構成されている。
【0045】
図6(A)に示すように、試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置した場合は、電極32−1および電極32−2にそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して直流電源38−1および直流電源38−2が接続されており、これらのスイッチをONにすることにより、電極32−1と電極32−2とにそれぞれ正・負の電圧を印加できる。試料10下面(裏面)にはスイッチ42を介してリターディング電源26に接続された接触ピン40がばね(図示しない)で押しつけられており、このスイッチ42をONにすることによりリターディング電圧が印加される。また、負の電圧を印加する直流電源38−1と正の電圧を印加する直流電源38−2もリターディング電源26と直列に接続されているため、電極32−1と電極32−2にはリターディング電位を基準とする正・負の電圧がそれぞれ印加される。その結果、クーロン力もしくはジョンソン・ラーベック力(Johnson-Rahbeck force)が生じ、試料10が試料台11表面に有効に吸着される。なお、試料台11の表面にある試料10を吸着するための吸着面は、試料10が吸着されたときに試料10が平坦になるように構成されている。また電極32−1と電極32−2とが、試料10のほぼ全領域をカバーするように構成されることにより、試料10の全領域で試料台11への吸着力が発生し、その結果、反りがある試料10でも平坦になるように吸着される。
【0046】
試料10の外側の領域の誘電体部34表面にはリング状の溝50が形成されており、その溝50底面は試料10の下面よりも低い位置となっている。また溝50底面には導電性の膜(例えば金属の膜)をコーティングすることによりリング状の電位補正電極44−1が形成されており、そこにはスイッチ46−1を介して電圧可変式の直流電源48が接続されており、このスイッチ46−1をONにすることにより電位補正電極44−1に負の電圧が印加され、その結果、試料10の外側に等電位面20−2が盛り上がる。これにより第1実施例と同様に、試料10の外周部を検査する場合でも、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なお、試料10が第1の大きさの試料10であるφ300ウェハの場合は、電極32−3および電極32−4および電位補正電極44−2には電圧を印加する必要が無いため、それぞれに接続されているスイッチ36−3とスイッチ36−4とスイッチ46−2とはOFFにしておくことが望ましい。
【0047】
次に試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を図6(B)に示す。この場合は図6(A)で示した第1の大きさの試料10であるφ300ウェハ使用時と同様に電極32−1および電極32−2にそれぞれ電圧を印加するのに加え、電極32−3および電極32−4にも電圧を印加する。これら電極32−3および電極32−4にはスイッチ36−3およびスイッチ36−4を介して直流電源38−1および直流電源38−2にそれぞれ接続されている。そのためこれらスイッチ36−1〜4をONにすることによって、試料10が試料台11に吸着される。このとき、電極32−1〜4が、試料10のほぼ全領域をカバーするように構成されることにより、試料10の全領域で試料台11への吸着力が発生し、その結果、反りがある試料10でも平坦になるように吸着される。
【0048】
試料10の外側の領域の誘電体部34は試料10の下面よりも窪み、低く構成されている。その表面には電位補正電極44−2が形成されており、そこにはスイッチ46−2を介して直流電源48が接続されており、このスイッチ46−2をONにすることにより電位補正電極44−2に負の電圧が印加され、その結果、試料10の外側に等電位面20−2が盛り上がる。これにより図8に示すように、第1実施例と同様に試料10の表面近傍の等電位面20−1が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。また、試料10が第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの場合でも、電位補正電極44−1は溝50の底面に形成されているために試料10と電位補正電極44−1とが干渉もしくは接触することなく試料台11の上に設置・吸着させることができる。なお、試料10が第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの場合は電位補正電極44−1に電圧を印加する必要が無いため、スイッチ46−1はOFFにしておくことが望ましい。
【0049】
なお、試料10には接触ピン40を介してリターディング電圧を印加しているため、電位補正電極44や内側の電極32−1や外側の電極32−2の電位の影響を受けることなく、試料10はリターディング電位に保持される。なお、使用する試料10のうち最も小さいもの(本実施例では第1の大きさである直径300mm)に接触できる位置に設置することによって、異なる大きさの試料10にも対応できる。以上の構成により、異なる大きさの試料10を検査する場合でも、外周部を検査する場合の一次電子線22の曲がりを防止し、位置ずれを無くす効果が得られる。
【0050】
なお、接触ピン40は前述したようにばねによって試料10に押さえつけられているが、もし試料10が試料台11に吸着されていない場合には、接触ピン40によって試料10が押し上げられ、試料台11から浮き上がったり、試料10の接触ピン40で押されている領域が凸にたわんだりする恐れがある。本実施例で用いたCD-SEMのようにナノメートルレベルの精度の測定が必要な場合には、これは測定精度の低下をもたらし望ましくない。それに対し、本実施例においては前述したように試料台11として静電チャックを使用することで試料10が試料台11に強固に吸着されているため、接触ピン40によって試料10が押し上げられ試料台11から浮き上がったり、試料10の接触ピン40で押されている領域がたわんだりする恐れは無く、測定精度の低下を防ぐことができる。
【0051】
なお、第1実施例のように試料台11として静電チャックを用いない場合は、反りがある試料10の場合には試料10の外縁の高さが360度全周に渡って均一とならない。この場合は試料10の外縁付近を検査する場合に、周方向の位置によって試料外縁付近の等電位面20−1の落ち込み方が変化することになる。その場合は直流電源48の最適電圧が、光軸18と試料10外縁との距離および一次電子線22の照射条件の他に検査位置の周方向の位置によって変化することになり、直流電源48の制御が複雑になる。それに対し本実施例においては、試料台11として静電チャックが用いられているため試料10の全面で試料台11に吸着され試料11の反りが無くなり、その結果試料11の外縁での高さが360度全周に渡って均一となる。そのため、直流電源48の最適電圧を決定する因子は光軸18と試料10外縁との距離および試料10の厚さおよび一次電子線22の照射条件だけとなり直流電源48の制御が容易になる。
【0052】
なお、小さな試料10(本実施例では第1の大きさであるφ300ウェハ)を検査する場合に用いる電位補正電極(本実施例では電位補正電極44−1)は必ず試料10の下面よりも低い位置に設置する必要があるが、最も大きな試料10(本実施例では第2の大きさであるφ450ウェハ)を観察する場合に使用する電位補正電極(本実施例では電位補正電極44−2)はその限りではなく、試料10と電位補正電極とが接触しない位置ならば、試料10の下面よりも高い位置に設置しても良い。しかしながら、試料10を試料台11上に設置する際に搬送に失敗した場合、電位補正電極44−2が試料10下面よりも高い位置にある構成では、電位補正電極44−2と試料10とが接触してしまう恐れがある。その場合には接触によって生じたパーティクルが試料10に付着する恐れがあり、これは半導体製造の歩留まり低下の原因となるため望ましくない。そのため、最も大きな試料10を観察する場合に使用する電位補正電極44−2も、試料10の下面よりも低い位置に設置することが望ましい。
【0053】
また、本実施例のように試料台11として静電チャックを使用する場合には、計測処理後にスイッチ36−1〜4をOFFにした後の試料10の試料台11への残留吸着を無くすことが重要である。そのためには正負の各電極の面積が等しいことが望ましく、本実施例においては電極32−1と電極32−2との面積が等しく、また、電極32−3と電極32−4との面積が等しいことが望ましい。
【0054】
更に、図7より明らかな通り、リング状の電位補正電極44−1、44−2と同様、好適には各電極32−2、32−3、32−4は円形状の電極32−1に対し、ほぼ同心円状に形成されることが望ましい。
【0055】
なお、本実施例において、誘電体部34の誘電体としてセラミクスを例示したが、具体的にはアルミナやSICなどを用いる。またポリイミドなどのセラミクス以外の誘電体を用いて良いことは言うまでもない。
【0056】
以上に示した試料台11を図1に示したCD-SEMに適用することにより、第1実施例と同様に、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離とリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源48の設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源48を制御する。これにより電極32−3もしくは電位補正電極44−2の電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くす効果が得られる。またさらに本実施例においては試料台11として静電チャックを使用することで試料10が試料台11に強固に吸着されているため、接触ピン40によって試料10が押し上げられ試料台11から浮き上がったり、試料10の接触ピン40で押されている領域がたわんだりする恐れは無く、測定精度の低下を防ぐことができる。
【実施例3】
【0057】
次に第3の実施例に関して、第2の実施例との差異について説明する。第2実施例においては静電チャックである試料台11の誘電体部分34の表面に溝50もしくは窪み54を設け、その底面に電位補正電極44−1および電位補正電極44−2をそれぞれ設置した。その場合は、通常の静電チャック構造を持つ試料台11を製造する工程に加えて、誘電体部分34に溝50及び窪み54を設ける工程と電位補正電極44−1および電位補正電極44−2を形成する工程とが新たに必要になる。そこで本実施例では、比較的単純な構成で、試料10の外側且つ試料10の下面よりも下の位置に電位補正電極44−1および電位補正電極44−2を設けることによって、試料10の外縁近傍を検査する場合でも一次電子線の曲がりを防止する機構を実現した。以下図9を用いて第3の実施例について説明する。
【0058】
図9(A)は試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図である。
【0059】
吸着用電極32−1および電極32−2にそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して直流電源38−1および直流電源38−2が接続されており、これらのスイッチをONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。試料10の外側の領域の誘電体部34の内部にはリング状の電位補正電極44−1が形成されており、そこにスイッチ46−1を介して電圧可変式の直流電源48が接続されており、このスイッチ46−1をONにすることにより電位補正電極44−1に負の電圧が印加される。電位補正電極44−1は比誘電率が8〜10程度の誘電体(本実施例ではセラミクスとする)からなる誘電体部34で覆われており、この誘電体部34を通して試料10の外側に等電位面20−2が盛り上がる。これにより第1および第2の実施例と同様に、試料10の外周部を検査する場合でも、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なお、試料10が第1の大きさの試料10であるφ300ウェハの場合は、電極32−3および電極32−4および電位補正電極44−2には電圧を印加する必要が無いため、それぞれに接続されているスイッチ36−3やスイッチ36−4やスイッチ46−2はOFFにしておくことが望ましい。
【0060】
次に試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を図9(B)に示す。この場合は図9(A)で示した第1の大きさの試料10であるφ300ウェハ使用時と同様に電極32−1および電極32−2にそれぞれ電圧を印加するのに加え、吸着用電極32−3および電極32−4にも電圧を印加する。これら電極32−3および電極32−4にはスイッチ36−3およびスイッチ36−4を介して直流電源38−1および直流電源38−2にそれぞれ接続されている。そのためこれらスイッチ36−1〜4をONにすることによって、試料10が試料台11に吸着される。このとき、吸着用電極32−1〜4が、試料10のほぼ全領域をカバーするように構成されることにより、試料10の全領域で試料台11への吸着力が発生し、その結果、反りがある試料10でも平坦になるように吸着される。
【0061】
試料10の外側の領域の誘電体部34内部には電位補正電極44−2が形成されており、そこにはスイッチ46−2を介して電圧可変式の直流電源48が接続されており、このスイッチ46−2をONにすることにより電位補正電極44−2に負の電圧が印加され、その結果、試料10の外側に等電位面20−2が盛り上がる。これにより第1実施例と同様に試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なお、試料10がφ450ウェハの場合は電位補正電極44−1に電圧を印加する必要が無いため、スイッチ46−1はOFFにしておくことが望ましい。
【0062】
なお、電位補正電極44−1および電位補正電極44−2は試料10下面よりも低い位置にあり、且つ誘電体部34に覆われているため試料10と干渉もしくは接触する恐れが無い。
【0063】
以上の構成の試料台11を図1に示したCD-SEMに適用することにより、第1実施例と同様に、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離とリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源48の設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源48を制御する。これにより電位補正電極44−1もしくは電位補正電極44−2の電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くす効果が得られる。
【0064】
また、試料台11として静電チャックが用いられているため試料10の全面で試料台11に吸着され試料11の反りが無くなり試料11の外縁での高さが360度全周に渡って均一となる。その結果第2実施例に示したように、直流電源48の最適電圧を決定する因子は光軸18と試料10外縁との距離および試料10の厚さおよび一次電子線22の照射条件だけとなり直流電源48の制御が容易になる。
【0065】
また、本実施例においてはセラミクスから成る誘電体部34の内部に電位補正電極44−1および電位補正電極44−2を形成した。このような構成は、誘電体のグリーンシートに電極32−1〜4および電位補正電極44−1および電位補正電極44−2の形状を、導体(例えばタングステン)を含んだペーストでスクリーン印刷法によって印刷し、そこに誘電体の別のグリーンシートを重ね、加熱加圧により積層して一体化した後に焼成することによって製造できる。そのため、第2実施例で示した構成のように誘電体部34に溝50や窪み54を形成し、そこに電位補正電極44−1および電位補正電極44−2を形成するという煩雑な製造工程を避けることができ、安価に試料台11を製造することが
できる。
【実施例4】
【0066】
次に第4の実施例について説明する。第3実施例においては2種類の大きさの異なる試料10を検査する際にそれぞれ使用する2つの電位補正電極44−1および電位補正電極44−2を、試料台11の誘電体部分34の内部に設けた。それに対し本実施例では、大きな試料10を試料台11に吸着させるために使用する吸着用電極を、小さな試料10を計測する際に電位補正電極として使用することによって、比較的単純な構成で大きさの異なる試料10の計測に対応させる。以下図10を用いて、第4の実施例の第1〜第3の実施例との差について説明する。
【0067】
図10(A)は試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図であり、電極32−1および電極32−2にそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して直流電源38−1および直流電源38−2が接続されており、これらのスイッチをONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。
【0068】
第1の大きさの試料10であるφ300ウェハである試料10の外側の領域の誘電体部34の内部にはリング状の電極32−3および電極32−4が形成されており、スイッチ36−3をONにすることによって、リターディング電源26に直列に接続された電圧可変式の電源38−3によってリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)が電極32−3に印加され、その結果、試料10の外側で、誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。これにより第1〜第3の実施例と同様に、試料10の外周部を検査する場合でも、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なお、前述したように一次電子線22の曲がりを防止するためには試料10の外側の電極に印加する電圧を制御する必要があるため、電源38−3を電圧可変式の直流電源とした。
【0069】
なお、図10(B)に示すように試料10が第2の大きさの試料10であるφ450ウェハの場合は、第3実施例と同様に、スイッチ36−5をONにすることによって、誘電体部34の試料10の外側の領域に設置された電位補正電極44−2にリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)を印加することによって、等電位面20−2が盛り上がり、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なお、前述したように電源38−3は電圧可変式の直流電源としたが、スイッチ38−1〜5をOFFにした後の試料台11に対する試料10の残留吸着を無くすためには、電圧可変式の直流電源38−3と電圧可変式の直流電源38−4の電圧を、正負逆の極性で且つ絶対値を等しくすることが望ましい。
【0070】
以上に示した試料台11を図1に示したCD-SEMに適用することにより、第1〜第3実施例と同様に、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離とリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源38−3もしくは直流電源38−5の設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源38−3もしくは直流電源38−5を制御する。これにより電極32−3もしくは電位補正電極44−2の電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くす効果が得られる。またさらに、大きな試料10を試料台11に吸着させるために使用する電極32−3を、小さな試料10を計測する際に電位補正電極として使用することによって、比較的単純な構成を用いて前述の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0071】
次に第5の実施例に関して、第1〜4実施例との差異について説明する。第3実施例においては2種類の大きさの異なる試料10を検査する際にそれぞれ使用する2つの電位補正電極44−1および電位補正電極44−2を、静電チャックである試料台11の誘電体部分34の内部に設けた。それに対し本実施例では、試料10を試料台11に吸着させるために使用する電極を、試料10の外縁よりもはみ出させることによって、試料10の外周部を検査する場合の位置ずれを防止する効果を得るものである。以下図11を用いて説明する。
【0072】
図11(A)は試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図である。電極32−1および電極32−2にはそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して電圧可変式の直流電源38−1および、同じく電圧可変式の直流電源38−2が接続されており、これらのスイッチをONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。第3実施例においては電極32−2の外縁を第1の大きさの試料10であるφ300ウェハである試料10の外縁と同じ径か、もしくはわずかに小さな径にしていたが、本実施例においては電極32−2の外縁の直径を第1の大きさの試料10であるφ300ウェハである試料10の直径よりも3mm大きくなるように直径306mmに構成した。なお、負の電圧に設定された直流電源38−2にはリターディング電源26が直列に接続されており、その結果、電極32−2にはリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)が印加される。その結果試料10の外側には、試料10からはみ出している部分の電極32−2から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。その結果、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なおこのときの電圧可変式の直流電源38−2は、一次電子線22の曲がりを無くすのに適した電圧に設定されることは言うまでも無い。またさらに、電圧可変式の直流電源38−1は、スイッチ38−1とスイッチ38−2とをOFFにした後の試料台11に対する試料10の残留吸着を無くすために、適した電圧に設定されることが望ましい。また、試料10が第1の大きさの試料10であるφ300ウェハの場合は、電極32−3と電極32−4とに電圧を印加する必要が無いため、スイッチ38−3とスイッチ38−4とをOFFにしておくことが望ましい。
【0073】
次に、図11(B)に試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大して示す。この場合には電極32−1および電極32−2に電圧を印加すると共に、電極32−3および電極32−4にも電圧を印加する。これらの電極にはスイッチ36−3およびスイッチ36−4を介して電圧可変式の直流電源38−3および電圧可変式の直流電源38−4が接続されており、これらのスイッチ36−3およびスイッチ36−4をONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。
【0074】
第3実施例においては電極32−4の外縁を第2の大きさの試料10であるφ450ウェハである試料10の外縁と同じ径か、もしくはわずかに小さな径にしていたが、本実施例においては電極32−4の外縁の直径をφ450ウェハである試料10の直径よりも3mm大きくなるように直径456mmに構成した。なお、負の電圧に設定された直流電源38−4にはリターディング電源26が直列に接続されており、その結果、電極32−4にはリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)が印加される。その結果試料10の外側には、試料10からはみ出している部分の電極32−4から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。その結果、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なおこのときの電圧可変式の直流電源38−4は、一次電子線22の曲がりを無くすのに適した電圧に設定されることは言うまでも無い。またさらに、その他の電圧可変式の直流電源38−1〜3は、スイッチ38−1〜4をOFFにした後の試料台11に対する試料10の残留吸着を無くすために、それぞれ適した電圧に設定されることが望ましい。
【0075】
以上に示した試料台11を図1に示したCD-SEMに適用することにより、第1〜第4実施例と同様に、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離と試料10の厚さとリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源38−2もしくは直流電源38−4の設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源38−2もしくは直流電源38−4を制御する。これにより電極32−2もしくは電極32−4の電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くす効果が得られる。
【0076】
さらに本実施例においては、一次電子線22の曲がりを防止するために試料10を試料台11に吸着させるための電極を用いるために、電位補正電極を新たに設けなくて良く、比較的単純な構成を用いて前述の効果を得ることができる。
【0077】
なお、電極44−1〜4は試料10下面よりも低い位置にあり、且つ誘電体部34に覆われているため試料10と干渉もしくは接触する恐れが無く、その結果試料10を試料台11の上に有効に設置・吸着させると共に、外周部を検査する場合の位置ずれを防止する効果が得られる。
【実施例6】
【0078】
次に第6の実施例に関して、第1〜5実施例との差異について説明する。第3実施例においては2種類の大きさの異なる試料10を検査する際にそれぞれ使用する電位補正電極を、静電チャックである試料台11の誘電体部分34の内部にそれぞれ1つずつ設けた。それに対し本実施例では、2種類の大きさの異なる試料10に対応する電位補正電極を、試料10の外側に同心円状電極を複数設けることによって、電位補正電極44の上に盛り上がる等電位面20−2の分布をきめ細かに制御することを可能にする効果を得るものである。
【0079】
図12(A)は試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置した場合、図12(B)は試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成をそれぞれ示した図である。また図13は、試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11とシールド電極16および対物レンズ9の近傍の構成を示した図である。
【0080】
図12(A)に示すように、電極32−1および電極32−2にはそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して電圧可変式の直流電源38−1および、電圧可変式の直流電源38−2が接続されており、これらのスイッチをONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。第3実施例においては誘電体部34内部で且つ電極32−2の外側に1つのリング状の電位補正電極44−1を設置していたのに対し、本実施例では電極32−2の外側にリング状の電位補正電極44−1aと、その外側にリング状の電位補正電極44−1bを設ける。また、電位補正電極44−1aと電位補正電極44−1bとにはそれぞれスイッチ46−1aとスイッチ46−1bとを介して電圧可変式の直流電源48aと電圧可変式の直流電源48bとが接続されており、これらのスイッチをONにすることにより電位補正電極44−1aと電位補正電極44−1bとに負の電圧が印加される。さらに直流電源48aおよび直流電源48bは、リターディング電源26に直列に接続されているため試料10よりも低い電位(絶対値がより大きい負の電位)に保持される。これにより試料10の外側かつ電位補正電極44−1aと電位補正電極44−1bの近傍に等電位面20−2が盛り上がる。またさらに、直流電源48aよりも直流電源48bをより低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)にすることにより、試料10の外側で盛り上がる等電位面20−2の分布を、図12(A)に示すように外側でより盛り上がる分布とすることができる。また逆に、直流電源48aよりも直流電源48bを高い電圧(絶対値がより小さな負の電圧、もしくは正の電圧)にすることにより、等電位面20−2の分布を、内側でより盛り上がる分布とすることができる。このように直流電源48aと直流電源48bの電圧を制御することにより、等電位面20−2の分布をきめ細かに制御することができる。
【0081】
なお、試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを試料台11に設置する場合には、電極32−3と電極32−4および電位補正電極44−2aと電位補正電極44−2bとに電圧を印加する必要は無いため、それらに接続されたスイッチ36−3とスイッチ36−4とスイッチ46−2aとスイッチ46−2bとはすべてOFFにすることが望ましい。
【0082】
次に、図12(B)に示すように、試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置する場合には、電極32−1および電極32−2に電圧を印加すると共に、電極32−3および電極32−4にも電圧を印加する。これらの電極にはスイッチ36−3およびスイッチ36−4を介して直流電源38−1および直流電源38−2が接続されており、これらのスイッチ36−3およびスイッチ36−4をONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。
【0083】
第3実施例においては誘電体部34内部で且つ電極32−4の外側に1つのリング状の電位補正電極44−2を設置していたのに対し、本実施例では電極32−4の外側にリング状の電位補正電極44−2aと、その外側にリング状の電位補正電極44−2bを設ける。また、電位補正電極44−2aと電位補正電極44−2bとにはそれぞれスイッチ46−2aとスイッチ46−2bとを介して電圧可変式の直流電源48aと電圧可変式の直流電源48bとが接続されており、これらのスイッチをONにすることにより電位補正電極44−2aと電位補正電極44−2bとに負の電圧が印加される。さらに直流電源48aおよび直流電源48bは、リターディング電源26に直列に接続されているため試料10よりも低い電位(絶対値がより大きい負の電位)に保持される。これにより試料10の外側かつ電位補正電極44−2aと電位補正電極44−2bの近傍に等電位面20−2が盛り上がる。またさらに、直流電源48aよりも直流電源48bを低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)にすることにより、試料10の外側で盛り上がる等電位面20−2の分布を図12(B)に示すように、外側でより盛り上がる分布とすることができる。なお逆に、直流電源48aよりも直流電源48bを高い電圧(絶対値がより小さな負の電圧、もしくは正の電圧)にすることにより、等電位面20−2の分布を、内側でより盛り上がる分布とすることができる。このように直流電源48aと直流電源48bの電圧を制御することにより、試料10の外側で盛り上がる等電位面20−2の分布をきめ細かに制御することができる。
【0084】
本実施例では図13に示すように、直流電源48aよりも直流電源48bをより低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)にすることにより、等電位面20−2の分布が外側でより盛り上がる分布となり、その結果試料10の表面近傍の等電位面20−1が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。
【0085】
以上に示した試料台11を図1に示したCD-SEMに適用することにより、第1〜第5実施例と同様に、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離と試料10の厚さとリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源48aもしくは直流電源48bの設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源48aもしくは直流電源48bを制御する。これにより電位補正電極44−1aや電位補正電極44−1bもしくは電位補正電極44−2aや電位補正電極44−2bの電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くす効果が得られる。
【0086】
また、試料10の外側で盛り上がる等電位面20−2の分布をきめ細かに制御することにより、試料10の表面近傍の等電位面20−1の分布の軸対称性を、より優れたものにすることができる。
【0087】
なお、試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを試料台11に設置する場合には、電位補正電極44−1aと電位補正電極44−1bとに電圧を印加する必要は無いため、それらに接続されたスイッチ46−1aとスイッチ46−1bとはOFFにすることが望ましい。
【0088】
以上の構成により、試料10の外周部を検査する場合でも、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。
【実施例7】
【0089】
次に第7の実施例に関して説明する。第5実施例においては、試料10を試料台11に吸着させるために用いる電極を、試料10の外縁よりもはみ出させることによって、試料10の外周部を検査する場合の位置ずれを防止する効果を得た。しかしながらその電極のはみ出させる長さについては言及していない。本実施例においては、発明者らによる検討結果をもとに、電極の試料10の外縁よりもはみ出させる長さについて説明する。
【0090】
以下、第1〜6実施例との差異について図11および図16〜図18を用いて説明する。
【0091】
図11は第5実施例の説明で用いた図であり、本実施例のCD−SEMで使用する試料台11近傍を拡大した断面図である。また、図16は試料10としてφ300ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11と、試料10と同電位に保持されるシールド電極16、および対物レンズ9の近傍の構成を示す図であり、試料10の外縁から1mm内側の位置を検査している場合の構成を示すものとする。また、図17は、電極32−2の試料10からのはみ出し量と一次電子線22の曲がり量との関係を示したグラフである。また、図18は本実施例のCD−SEMで使用する試料台11近傍を拡大した断面図であり、図11とは直流電源の構成を変えたものである。同図より明らかなように、直流電源38−1は図11の直流電源38−3を兼用し、直流電源38−2は直流電源38−4は兼用している。
【0092】
以下、それぞれの図を用いて説明を行う。先に説明したように図11(A)は第1の大きさの試料10としてφ300ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図である。本実施例においては第5実施例と同様に電極32−2の外縁の直径をφ300ウェハである試料10の直径よりも大きくなるように構成し、そこに接続した直流電源38−2を負の電圧に設定し、さらにリターディング電源26を直列に接続しており、その結果、電極32−2にリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)を印加する。その結果、試料10の外側には、試料10からはみ出している部分の電極32−2から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。その結果、図16に示すように、試料10の表面近傍の等電位面20−1が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。なお、試料10が第1の大きさであるφ300ウェハの場合は、電極32−3と電極32−4とに電圧を印加する必要が無いため、スイッチ36−3とスイッチ36−4とをOFFにしておくことが望ましい。
【0093】
なお図16に示すように、本実施例で示される構成を適用してφ300ウェハである試料10の外周部を検査する場合、測長位置つまり光軸と試料10の外縁との間の距離Xと、電極32−2の外縁が試料10の外縁からはみ出ている長さDR1(つまり、電極32−2の外縁の半径と試料10の半径との差)と、光軸の周りにほぼ同心円状に形成されたシールド電極16の孔の半径R1は、等電位面20−1の分布に影響を与え、その結果、一次電子線22の曲がり量に影響することが発明者らの評価により明らかになった。
【0094】
前述したように、一次電子線22の曲がり量を低減するためにはシールド電極16の孔で落ち込む等電位面20−1を持ち上げるために、電極32−2から等電位面20−2を盛り上げる必要があるが、その場合、DR1を広げるほど等電位面20−2を盛り上げる領域が広くなるため、等電位面20−2を盛り上げる効果が強くなる。しかし、シールド電極16の孔で落ち込む等電位面20−1はシールド電極16の孔よりも外側の領域には無いために、電極32−2の外縁がシールド電極16の孔の縁よりも外側になるようにDR1を長くしたとしても、等電位面20−2を盛り上げる効果の更なる増加にはつながらない。すなわち光軸18から電極32−2の外縁までの距離(X+DR1)がR1以下の場合はDR1を長くするほど一次電子線22の曲がり量を低減できるが、X+DR1がR1以上の場合は、一次電子線22の曲がり量の低減効果は飽和する。
【0095】
次にDR1を変えた場合の一次電子線22の曲がり量を発明者らが評価した結果を図17に示す。図17(A)はリターディング電源26によるリターディング電圧を−2200V、対物レンズ9の電位を+5000Vとし、直流電源38−2によりリターディング電圧に−800Vを加えた電圧、つまり−3000Vの電圧を電極32−2に印加した場合の、電極32−2のはみ出し量DR1と、光軸18と試料10外縁との間の距離Xと、一次電子線22の曲がり量との関係を示したグラフである。このグラフの横軸は、電極32−2のはみ出し量DR1と光軸18と試料10外縁との間の距離Xとの和に対する、シールド電極16の孔半径R1の比、すなわち(DR1+X)/R1であり、縦軸は一次電子線22の曲がり量を示す。この図より、観察位置が試料10外縁から1〜3mm内側のいずれの場合においても、(DR1+X)/R1が大きくなるほど一次電子線22の曲がり量が小さくなるが、(DR1+X)/R1が1以上の領域で、各々ある値で収束していることがわかる。
【0096】
図17(B)は図17(A)と同様に、観察位置が試料10外縁から1〜3mm内側の場合において、電極32−2のはみ出し量DR1と一次電子線22の曲がり量との関係を示したグラフであり、横軸は図17(A)と同じであるが、その縦軸は図17(A)に示した一次電子線22の曲がり量を、それぞれの観察位置における一次電子線22の曲がり量が飽和した値で規格化したものである。
【0097】
この図から、いずれの場合においても(DR1+X)/R1が1以上の領域で、規格化した一次電子線22の曲がり量がほぼ1に収束していることがわかる。これらの結果から、電極32−2のはみ出し量DR1を大きくすることによって一次電子線22の曲がり量を小さくすることが可能であり、そのためには電極32−2のはみ出し量DR1と光軸18と試料10外縁との間の距離Xとの和を、シールド電極16の孔半径R1以上にすることが有効であることが示された。
【0098】
なお、第1実施例で用いた図5のグラフと同様に、本実施例においても直流電源38−2の電圧を下げる(負電圧の絶対値を上げる)ことによって一次電子線22の曲がり量を低減することができる。その場合、(DR1+X)/R1を1以上になるように構成することによって、絶対値がより小さな直流電源38−2の電圧で一次電子線22の曲がり量を低減することができる。直流電源38−2の出力電圧の絶対値が大きい場合には、必要な直流電源のコストが問題となるため、直流電源38−2の電圧の絶対値の低減はコスト削減につながる。そのため(DR1+X)/R1が1以上になるように、はみ出し量DR1を広げることが重要である。
【0099】
次に、図11(B)に示すように、第2の大きさの試料10としてφ450ウェハを試料台11に設置した場合には、電極32−1および電極32−2に、それぞれ直流電源38−1および直流電源38−2によって電圧を印加すると共に、リング状の電極32−3およびリング状の電極32−4にも電圧を印加する。これらの電極にはスイッチ36−3およびスイッチ36−4を介して直流電源38−3および直流電源38−4がそれぞれ接続されており、これらのスイッチ36−3およびスイッチ36−4をONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。この場合においても、電極32−4の外縁の直径をφ450ウェハである試料10の直径よりも大きくなるように構成し、リターディング電源26に直列に接続された直流電源38−4を負の電圧に設定することにより、電極32−4にはリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)が印加される。
【0100】
その結果、試料10の外側には試料10からはみ出している部分の電極32−4から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。その結果、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸18を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが小さくなり位置ずれが防止される。この場合も、試料10がφ300ウェハの場合と同様に、試料10であるφ450ウェハからはみ出ている電極32−4のはみ出し量DR1と光軸18と試料10外縁との間の距離Xとの和を、シールド電極16の孔半径R1以上にする、つまり(DR1+X)/R1を1以上にすることによって、より絶対値が小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がり量を有効に小さくでき、位置ずれを防止できる。
【0101】
なお、以上の構成において直流電源38−2は電圧固定式の直流電源としたが、それに限るものではなく電圧可変式のものでも良い。その場合には、第1の大きさの試料10としてφ300ウェハもしくは第2の大きさの試料10としてφ450ウェハが試料台11に設置されている場合に、それぞれ直流電源38−2もしくは直流電源38−4の電圧を制御することにより等電位面20−2の分布を最適化し、一次電子線22の曲がり量をより有効に小さくすることができる。
【0102】
以上に示した試料台11を図1に示したCD-SEMに適用することにより、第1〜第6実施例と同様に、分析部27は、X−Yステージ15の座標から光軸18と試料10の外縁との距離を求め、その距離と試料10の厚さとリターディング電圧など一次電子線22の照射条件とに応じた直流電源38−2もしくは直流電源38−4の設定電圧を求め、制御部29は、その電圧に直流電源38−2もしくは直流電源38−4を制御する。これにより電極32−2もしくは電位補正電極32−4の電位を制御し、一次電子線22の曲がりを防止することで、試料10の外周部を検査している場合でも位置ずれを無くす効果が得られる。
【0103】
さらに本実施例においては、試料10を試料台11に吸着させるための電極を、一次電子線22の曲がりを防止するために用いるために、電位補正電極を新たに設けなくて良く、比較的単純な構成を用いて前述の効果を得ることができる。また、電極32−1〜4は試料10下面よりも低い位置にあり、且つ誘電体部34に覆われているため試料10と干渉もしくは接触する恐れが無く、その結果、試料10を試料台11の上に有効に設置・吸着させると共に、試料10の外周部を検査する場合の位置ずれを防止する効果が得られる。
【0104】
なお本実施例においては、図11に示すように電極32−1〜4に電圧を印加するための電源として直流電源38−1〜4の4つを使用したが、その個数に限定するものではなく、先に説明したとおり、図18に示すように直流電源38−1〜2の2つを使用しても構わない。図18は図11で示したものと試料台11の構成は同じであるが、電極32−1〜4に電圧を印加する電源の構成を変えている。
【0105】
図18(A)は第1の大きさの試料10としてφ300ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図である。円盤形状の電極32−1およびリング状の電極32−2にはそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して直流電源38−1および直流電源38−2がそれぞれ接続されており、スイッチ36−1およびスイッチ36−2をONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。また、図18(B)は第2の大きさの試料10としてφ450ウェハを試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図である。スイッチ36−1〜4をONにすることにより、正の電圧に設定された直流電源38−1によって電極32−1および電極32−3に、負の電圧に設定された直流電源38−2によって電極32−2および電極32−4に、電圧が印加され、試料10が試料台11に吸着される。
【0106】
これにより、試料10の外側には試料10からはみ出している部分の電極32−2もしくは電極32−4から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がり、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが無くなり位置ずれが防止される。
【0107】
なお、CD-SEMによる測長が終了した後に試料10を速やかに搬出するためには、スイッチ36−1〜4をOFFにした後の、試料10に対する試料台11の残留吸着力を弱くすることが必要である。このためには、正の電極の領域の吸着部と負の電極の領域の吸着部とに蓄えられた電荷量を等しくすることが効果的であることが特開平10−150100号公報に示されている。
【0108】
そのため、本実施例においては、電極32−1を半径104mmの円盤、電極32−2を内半径108mm、外半径159mmのリング、電極32−3を内半径163mm、外半径198mmのリング、電極32−4を内半径202mm、外半径234mmのリングとした。また、シールド電極16の孔半径R1を10mm、最も外側の観察位置を試料10の外縁より1mm内側、つまり光軸18と試料10外縁との間の距離Xを最小で1mmとした。この構成においては、試料10がφ300ウェハの場合は正電圧が印加されている電極の領域の吸着部は半径104mmの円盤、負電圧の電極の領域の吸着部は内半径108mm、外半径150mmのリングとなり、正負の極の吸着部の面積がほぼ等しくなり、それぞれの極の電極に印加される電圧の絶対値を等しくすることにより、試料10に対する試料台11の残留吸着力を弱くすることができる。また、光軸18と試料10外縁との間の距離Xが1mm以上の場合に、Xとシールド電極16の孔半径R1との和と、電極32−2のはみ出し量DR1との比((DR1+X)/R1)が1以上となり、絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。
【0109】
また、試料10がφ450ウェハの場合は、正の電極の領域の吸着部は半径104mmの円盤および内半径163mm、外半径198mmのリングとなり、負電圧の電極の領域の吸着部は内半径108mm、外半径159mmのリングおよび内半径202mm、外半径225mmのリングとなり、正負の極の吸着部の面積がほぼ等しくなり、直流電源38−1〜4の電圧の絶対値をそれぞれ等しくすることにより、試料10に対する試料台11の残留吸着力を弱くすることができる。また、光軸18と試料10外縁との間の距離Xが1mm以上の場合に、Xとシールド電極16の孔半径R1との和と、電極32−2のはみ出し量DR1との比((DR1+X)/R1)が1以上となり、絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。
【0110】
なお本実施例の場合は、シールド電極16の孔半径R1を10mm、試料10の最も外側の観察位置を試料10の外縁より1mm内側、つまり光軸18と試料10外縁との間の距離Xを最小で1mmとした。その場合は、試料10からはみ出ている電極32−2あるいは電極32−4のはみ出し量DR1を9mm以上にすることにより、絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。なお、光軸18と試料10外縁との間の距離Xの極限の最小値は0mmであるため、電極32−2あるいは電極32−4のはみ出し量DR1をシールド電極16の孔半径R1よりも大きくすることにより、試料10の外縁付近を観察する場合でも、絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。
【0111】
なお、本実施例においては、電極32−1〜4を前述のような寸法で構成したが、それに限るものではない。
【0112】
なお、本実施例においては絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくするために(DR1+X)/R1を1以上にするために電極32−2のはみ出し量DR1を広げた。それに対し、(DR1+X)/R1が1以上となるようにはみ出し量DR1を長くしても一次電子線22の曲がり量は変わらないため、はみ出し量DR1の上限は、一次電子線22の曲がり量という観点からは制限されない。しかしな
がら、2種類以上の大きさの試料10に対応するために、はみ出し量DR1は、最大の大きさの試料10の半径と最小の大きさの試料10の半径との差以下にする必要がある。
【実施例8】
【0113】
次に第8の実施例に関して説明する。第7実施例では、試料10を試料台11に吸着させるために使用する電極を、試料10の外縁よりもはみ出させることによって、試料10の外周部を検査する場合の位置ずれを防止する効果を得たが、誘電体部34の内部に電極32−1〜4の4枚の電極を設置していた。それに対し、本実施例においては3枚の電極を用いて、異なる大きさの試料10の検査に対応すると共に、試料10の外周部の検査を行う場合の一次電子線22の曲がりの防止を可能にする。以下、第1〜7実施例との差異について図19と図20を用いて説明する。
【0114】
図19は本実施例のCD−SEMで使用する、移動機構であるステージ15上の試料台11近傍を拡大した断面図である。そのうち図19(A)は試料10として第1の大きさの試料10であるφ300ウェハを、図19(B)は試料10として第2の大きさの試料10であるφ450ウェハを、それぞれ試料台11に設置した場合の試料台11近傍の構成を拡大した図である。また、図20は本実施例で使用した試料台11の図19(A)におけるC-C断面を示した図である。なお、位置関係をわかりやすくするために、試料10であるφ300ウェハもしくはφ450ウェハの外縁を破線で示す。
【0115】
図19(A)に示すように、円盤形状の電極32−1およびリング状の電極32−2にはそれぞれスイッチ36−1およびスイッチ36−2を介して正の電圧に設定された直流電源38−1および、負の電圧に設定された直流電源38−2が接続されており、スイッチ36−1およびスイッチ36−2をONにすることにより、試料10が試料台11に吸着される。このとき、第5実施例および第7実施例と同様に、電極32−2の外縁を第1の大きさの試料10であるφ300ウェハである試料10の外縁よりもはみ出すように構成した。負の電圧に設定された直流電源38−2にはリターディング電源26が直列に接続されており、その結果、電極32−2にはリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)が印加される。その結果、試料10の外側には、試料10からはみ出している部分の電極32−2から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。
【0116】
なお、第7実施例で説明した通り、光軸18と試料10外縁との間の距離をX、シールド電極16の孔半径をR1、電極32−2のはみ出し量DR1としたとき、(DR1+X)/R1が1以上となるように構成することが重要である。以上の結果、試料10の外周部を検査している場合でも、試料10の表面近傍の等電位面20−1(図示しない)が光軸を中心とする軸対称分布となり、一次電子線22の曲がりが抑えられ位置ずれが防止される。
【0117】
次に図19(B)を用いて、第2の大きさの試料10としてφ450ウェハを試料台11に設置した場合の構成を説明する。この場合は、リターディング電源26に直列に接続された直流電源38−1および直流電源38−2の極性を図19(A)の場合と反転させ、直流電源38−1を負、直流電源38−2を正の電圧に設定する。これらそれぞれの電源に接続されたスイッチ36−1およびスイッチ36−2をONにすることによって電極32−1および電極32−2にそれぞれ電圧を印加すると共に、直流電源38−1に接続されたスイッチ36−3をONにすることによってリング状の電極32−3に電圧を印加する。このとき、負の電圧に設定された直流電源38−1はリターディング電源26と直列に接続されているため、電極32−3にはリターディング電圧よりも低い電圧(絶対値がより大きな負の電圧)が印加される。その結果、試料10の外側には、試料10からはみ出している部分の電極32−3から誘電体部34を通して等電位面20−2が盛り上がる。なおこの場合も前述した通り、(DR1+X)/R1が1以上となるように構成することが重要であり、その場合に絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。
【0118】
さらに本実施例においては、誘電体部34の内部に設けた電極の枚数を3枚に抑えることができ、第7実施例よりもさらに単純な構成を用いて前述の効果を得ることができる。なお、検査処理後にスイッチ36−1〜3をOFFにした後の試料10の試料台11への残留吸着を無くすことが重要であり、そのためには試料10と対向している正負の各電極の面積が等しいことが望ましい。そのため本実施例においては、試料10としてφ300ウェハを検査している場合は電極32−1に正、電極32−2に負の電圧を印加するのに対し、試料10としてφ450ウェハを検査している場合は電極32−1と電極32−3とに負、電極32−2に正の電圧を印加した。これにより、それぞれの大きさの試料10を検査する場合に試料10と対向している正負の各電極の面積が等しくなり、検査処理後にスイッチ36−1〜3をOFFにした後の試料10の試料台11への残留吸着を無くすことが可能となる。
【0119】
具体的には、シールド電極16の孔半径R1を10mm、電極32−1を半径104mmの円盤、電極32−2を内半径108mm、外半径189.2mmのリング、電極32−3を内半径193.2mm、外半径234mmのリングとした。この構成においては、試料10がφ300ウェハの場合は正の電極の領域の吸着部は半径104mmの円盤、負の電極の領域の吸着部は内半径108mm、外半径150mmのリングとなり、正負の極の吸着部の面積がほぼ等しくなり、直流電源38−1と直流電源38−2の電圧の絶対値を等しくすることにより、試料10に対する試料台11の残留吸着力を弱くすることができる。また、例えば光軸18と試料10外縁との間の距離Xが1mmの時に、(DR1+X)/R1は1以上となり、絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。
【0120】
また、試料10がφ450ウェハの場合は、正電圧の電極の領域の吸着部は内半径108mm、外半径189.2mmのリングとなり、一方、負電圧の電極の領域の吸着部は半径104mmの円盤および内半径193.2mm、外半径225mmのリングとなる。その結果、正負の極の吸着部の面積がほぼ等しくなり、直流電源38−1および直流電源38−2の電圧の絶対値をそれぞれ等しくすることにより、試料10に対する試料台11の残留吸着力を弱くすることができる。また、例えば光軸18と試料10外縁との間の距離Xが1mmの時に、(DR1+X)/R1は1以上となり、絶対値がより小さな直流電源38−2の負電圧で一次電子線22の曲がりを小さくできる。
【0121】
なお、本実施例においては、電極32−1〜3を前述のような寸法で構成したが、それに限るものではない。
【0122】
また本実施例においては、電極32−1〜3は試料10下面よりも低い位置にあり、且つ誘電体部34に覆われているため試料10と干渉もしくは接触する恐れが無く、その結果試料10を試料台11の上に有効に設置・吸着させると共に、外周部を検査する場合の位置ずれを防止する効果が得られる。
【0123】
なお、第1〜第8の実施例においては、大きさの異なる試料10としてφ300ウェハとφ450ウェハとを試料台11に設置したがそれに限るものではなく、φ200ウェハとφ300ウェハとでも構わない。
【0124】
また、第1〜第8の実施例においては、一次電子線を利用した検査装置としてCD−SEMを例に取り説明したが、それに限るものではない。一次電子線を利用した他の検査装置に対しても本発明を適用することにより、本発明と同様に一次電子線の曲がりを防止し、いわゆる位置ずれを無くす効果が得られる。
【0125】
更に、第1〜第8の実施例においては、荷電粒子として一次電子線を利用した検査装置を例に取り説明したが、それに限るものではない。例えばヘリウムやリチウムなどのイオンなどを利用した顕微鏡に対しても本発明は適用できる。その場合には本発明の第1〜第6とは異なり、荷電粒子が正の電位を持つため、試料に印加するリターディング電位や電位補正電極の電位を計測に適した極性および値にすることにより、本発明と同様に荷電粒子の曲がりを防止し、いわゆる位置ずれを無くす効果が得られる。
【0126】
また更に、第1〜第8の実施例においては、荷電粒子線応用装置の一例として検査装置を例に取り説明したが、それに限るものではない。例えば同じ一次電子線を利用した装置として、感光性材料を塗布したウェハ上に一次電子線を照射することによって電子回路パターンを形成する一次電子線描画装置にも本発明を適用することにより、本発明と同様に荷電粒子の曲がりを防止し、いわゆる位置ずれを無くす効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように本発明によれば、試料の外縁付近を検査する場合においても一次電子線など荷電粒子ビームの曲がりを防止することができ、位置ずれを無くすことができる。また、異なる大きさの試料を検査する場合においても同様な効果が得られるため、半導体検査装置などで有用である。
【符号の説明】
【0128】
1…電子銃、2…引き出し電極、3…コンデンサレンズ、5…走査偏向器、6…絞り、8…EクロスB偏向器、9…対物レンズ、10…試料、11…試料台、14…二次電子検出器、15…X−Yステージ、16…シールド電極、18…光軸、22…一次電子線、24…二次電子、26…リターディング電源、27…分析部、29…制御部、32…電極、34…誘電体部分、35…金属ベース、38…直流電源、40…接触ピン、42…スイッチ、44…電位補正電極、46…スイッチ、48…直流電源、50…溝、52…絶縁体、54…窪み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が保持される試料台と、
前記試料台を移動させる移動手段と、
前記試料に照射する荷電粒子線を発生させる荷電粒子源と、
前記試料に対して前記荷電粒子線を走査させる走査部と、
前記試料台において前記試料を保持する面よりも低い位置に設けられ、かつ前記試料の外縁よりも外側に設けられた第1の電位補正電極と、
前記第1の電位補正電極に電圧を印加する第1の電圧源と、
前記試料に対する前記荷電粒子線の照射位置に基づき、前記用電圧源からの印加電圧を制御する制御部と、を有する
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体検査装置であって、
更に、
前記試料台へリターディング電圧を印加させるリターディング電源を有し、
前記第1の電圧源は前記リターディング電源と電気的に直列に接続されることを有する
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体検査装置であって、
更に、前記試料台における前記試料を保持する面よりも低い位置に設けられ、かつ前記第1の電位補正電極の外縁よりも外側に設けられた第2の電位補正電極と、
前記第2の電位補正電極に電圧を印加する第2の電圧源とを有し、
前記制御部は、前記試料に対する前記荷電粒子線の照射位置に基づき前記第2の電圧源の印加電圧を制御する
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体検査装置であって、
更に、前記試料台の内部に設けられ、前記試料を前記試料台へ吸着させる電位を生じさせる第1及び第2の電極を有する
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体検査装置であって、
前記第1の補正用電極はリング状である
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項6】
試料を保持する試料台と、
前記試料台を移動させる移動手段と、
前記試料に照射する荷電粒子線を発生させる荷電粒子源と、
前記試料に前記荷電粒子線を走査する走査部と、
前記試料台の内部に設けられ、前記試料を前記試料台へ吸着させる電位を生じさせる第1及び第2の電極とを有し
前記第1の電極は、前記第2の電極よりも内側に設けられ、かつ第1の直流電圧が印加され、
前記第2の電極の外縁は、前記試料の外縁よりも外側に設けられ、かつ前記第1の直流電圧と異なる極性である第2の直流電圧が印加される
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体検査装置であって、
更に、前記試料台へリターディング電圧を印加させるリターディング電源を有し、
前記第2の直流電圧を印加する電圧源は、前記リターディング電源と電気的に直列に接続されることを有する
ことを特徴とする半導体検査装置。
導体検査装置。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体検査装置であって、
更に、前記試料に対し前記荷電粒子線を集束させる対物レンズと、
前記対物レンズよりも上方に設けられ、前記試料から生じた2次荷電粒子を偏向する偏向器と、
前記対物レンズよりも上方に設けられ、前記偏向器により偏向された前記2次荷電粒子を検出する検出器とを有する
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体検査装置であって、
更に、前記試料台と前記対物レンズとの間に設けられ、前記荷電粒子線を通過させる孔を有する電極板を有する
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体検査装置であって、
前記試料の検査位置の中で、前記試料の外縁からみた距離が最小となる距離を第1の距離とし、
前記第2の電極の外縁において前記試料の外縁よりも外側に設けた距離と前記第1の距離との和は、前記電極板の孔の半径よりも大きい
ことを特徴とする半導体検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−101974(P2013−101974A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24723(P2013−24723)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2010−517757(P2010−517757)の分割
【原出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】