説明

半導体素子搬送ヘッド

【課題】圧縮エアーを送り込むことなく、配置スペースが小さくかつ簡単な機構で半導体素子の離脱のための衝撃を発生させ、搬送を円滑にできるようにする。
【解決手段】エアー通路12内に、上側係止部15及び下側係止部16を有する移動空間Hを設け、この移動空間H内にポール18を上下動可能に配置し、上側係止部15には、吸着時に空気の流れを遮断しないように空気流通溝19aを設ける。上記エアー通路12から吸引すると、半導体素子20がヘッド先端面13に吸着されると同時に、ボール18は上昇して上側係止部15の位置に留まり、吸引を停止すると、ボール18が落下して下側係止部16に当たるときの衝撃が先端面13に伝達され、この結果、半導体素子20は先端面13からスムーズに離れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子搬送ヘッド、特に微小半導体素子を吸着搬送し、かつ所定の位置で離脱させるための搬送ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置では、搬送ヘッドの先端に半導体素子を吸着して次の工程等の所定位置まで搬送することが行われるが、目的の位置で半導体素子を搬送ヘッドから離す際には、その離脱を良好にするための工夫がなされている。例えば、搬送ヘッドでの吸着エアー(吸引)を切った後、圧縮エアーをエアー通路からヘッド先端へ送り込んだり、搬送の受取り側が半導体素子を吸着したり、或いは外部から衝撃を与えて振動で半導体素子を離脱させたりすることが行われる。
【0003】
下記の特許文献1では、可動軸をエアシリンダで可動ノズルの先端まで駆動することで、この可動ノズルの先端に吸着した半導体素子を押すようにして離脱させたり、またウェイトをエアシリンダで上下に移動させる構成とし、このウェイトにより上記可動ノズルの後側の固定ノズル側にハンマリングによる衝撃を与えることで、半導体素子を離脱させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−349868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の搬送ヘッドの構成では、搬送される半導体素子が小さくなると、例えば圧縮エアーを送り込んで半導体素子を離す場合、圧縮エアーの流量制御が難しくなり、安定した姿勢で素子を離すことが困難になる。即ち、圧縮エアーの流量が少ないと、半導体素子の離れが悪くなり、離脱に時間もかかり、装置の能力が低下することになり、圧縮エアーの流量が多いと、半導体素子が吹き飛んでしまう等の不都合が生じる。
【0006】
また、半導体製造装置の制約上又は配置スペースの関係上、受取り側で半導体素子を吸着する機構を設けることができない場合や、外部から衝撃を与える機構を設けることが困難な場合も多い。例えば、上記特許文献1の場合も、半導体素子を離脱させるための可動軸、衝撃を与えるためのウェイトやこれら可動軸、ウェイトを駆動するためのエアシリンダが設けられており、これら部材の配置スペースが必要であると共に、構造も複雑になる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮エアーを送り込むことなく、配置スペースが小さくかつ簡単な機構で半導体素子の離脱のための衝撃を発生させ、搬送を円滑にすることができる半導体素子搬送ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、流体通路を介して吸引し、ヘッド先端に半導体素子を吸着する半導体素子搬送ヘッドにおいて、上記流体通路内に上下の係止部及びこの上下の係止部間を移動する移動体を配置し、この移動体を吸引により上昇させ、吸引の停止により落下させる衝撃発生機構を設け、この衝撃発生機構により半導体素子離脱時に上記移動体の落下の衝撃を与えるようにしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、上記流体通路又は上記移動体には、半導体素子吸着時に上記移動体が上昇位置に留まった状態で流体の流れが途切れないようにする流通路を形成したことを特徴とする。
【0009】
上記請求項1の構成によれば、搬送ヘッドの流体通路内に、上下の係止部で挟まれた領域において移動体(例えばボール)が上下動するように配置された衝撃発生機構が設けられており、例えば空気の吸引が行われると、搬送ヘッドの先端に半導体素子が吸着されると同時に、移動体が吸い上げられて上側係止部まで上昇する。その後、上記吸引が停止されると、半導体素子の吸着が解除されると共に、上側係止部に留まっていた移動体が落下し、この移動体が下側係止部に当たることで衝撃が発生する。このようして、衝撃(振動)がヘッド先端へ与えられ、半導体素子の離脱が安定して行われる。
【0010】
上記請求項2の構成によれば、流れ確保の流通路として、例えば上側係止部に空気流通溝(孔)等を設けた場合は、移動体が上側係止部に留まった状態で、上記空気流通溝により空気の流れが確保される。これにより、半導体素子の吸着を妨げることなく、移動体が上側係止部にスムーズに留まることになる。また、移動体として、球に近い多面体や球の表面に凹凸を形成したものを用いることで、上側係止部に係止した移動体側に空気流通路を設けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体素子搬送ヘッドによれば、圧縮エアーを送り込む構成を用いる必要はなく、配置スペースが小さくかつ簡単な機構で、半導体素子の離脱のための衝撃を発生させることで、微小の半導体素子でも搬送を円滑にすることができるというが効果がある。また、搬送の受取り側で吸着する等の機構を設ける必要もなく、省スペース化、低コスト化に貢献することも可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、吸引停止によって自動的に衝撃が発生するので、衝撃を与えるための特別な制御を行う必要がないという利点もある。即ち、上記従来の特許文献1等においては、吸引停止の動作に連動してウェイトを下降させ、衝撃を与えるためのエアシリンダの制御が必要となるが、本発明では、このような制御が不要である。
【0013】
請求項2の構成によれば、移動体の上側係止部への係止、停留、そして半導体素子の吸着が円滑に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例に係る半導体素子搬送ヘッドの構成を示し、図(A)は断面図、図(B)は下面図、図(C)は上側係止部の図である。
【図2】第1実施例の搬送ヘッドでの動作を示し、図(A)は吸着時の図、図(B)は吸着解除時の図である。
【図3】第2実施例の半導体素子搬送ヘッドの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2には、本発明の第1実施例に係る半導体素子搬送ヘッドの構成が示されており、この実施例では、図1(A)のように、先端側が細くなる円柱状のヘッド10の内部中心に円形のエアー通路(流体通路)12が設けられている。このヘッド10の先端面13に、半導体素子が吸着されるが、この先端面13には、図1(B)のように、エアー通路12から外周へ向けて空気流通溝14が4箇所形成されており、この空気流通溝14によって、吸着動作時に空気の所定量の流通を確保しながら(吸着時にも流通が途切れないようにして)半導体素子の吸着が安定して行われるようになっている。
【0016】
そして、エアー通路12の途中には、上側係止部15と下側係止部16とに挟まれた移動空間Hが形成され、この移動空間H内に移動体としてのボール18が上下動可能に配置される。上記上側係止部15は、図1(C)に示されるように、別体のリング部材からなり、ボール18が当接したときにも、空気の流通を確保し、半導体素子吸着時にも空気の流れが途切れないようにする半円状の空気流通溝(孔等でもよい)19aが4箇所に形成された通路19が形成されている。一方、下側係止部16は、上記移動空間Hの径よりも小さくした径のエアー通路12の段差部で構成される。
【0017】
第1実施例は以上の構成からなり、図2(A)に示されるように、搬送開始時に、エアー通路12から吸引をしたとき、半導体素子20がヘッド10の先端面13に吸着され、同時に、ボール18は上昇して上側係止部15で係止され、この位置に留まることになる。このとき、上側係止部15には、空気流通溝19aが設けられているから、空気の流れが遮断されず、ボール18は急激な上昇・係止動作をすることなく、スムーズに上昇して上昇位置で留まることになり、安定した動作が行われる。なお、先端面13でも、空気流通溝14が設けられており、これによって、半導体素子20を吸着する際においても同様に安定した動作が確保される。
【0018】
そして、図2(B)に示されるように、所定の搬送位置でエアー通路12からの吸引を停止すると、ボール18は自重により下側係止部16まで落下し、このボール18が下側係止部16に当たるときの衝撃が先端面13に伝達される。これにより、半導体素子20は先端面13からスムーズに安定した姿勢で離れることになる。
【0019】
図3には、第2実施例の構成が示されており、この第2実施例は、吸着時の空気の流れを確保する流路を移動空間Hの外に配置したものである。図3に示されるように、第1実施例のリング状の上側係止部15を配置せず、ヘッド(本体)21のボール18の移動空間Hの径よりも小さくした径のエアー通路12の上側の段差部を、上側係止部22として形成する。そして、上記移動空間Hの外側を経由するように、小さい径の第2エアー通路23を設けている。
【0020】
このような第2実施例によっても、吸引によって半導体素子20がヘッド10の先端面13に吸着されるとき、同時にボール18は上昇して上側係止部22で係止され、この位置に留まることになるが、このとき、第2エアー通路23によって空気の流れが確保されるので、安定した上昇動作が行われる。そして、吸引を停止した際には、ボール18が下側係止部16まで落下したときの衝撃が先端面13に伝達される。
【0021】
上記実施例では、移動空間Hをエアー通路12の径よりも大きな径としたが、移動空間Hをエアー通路12の径と同一にし、上側係止部15,22と下側係止部16をエアー通路から内側へ突出させる形で設けるようにしてもよい。
【0022】
また、実施例では、吸着時の空気の流れを確保するための流通路をエアー通路12側へ配置したが、移動体側へ設けてもよい。例えば、ボール18を球に近い多面体としたり、球表面に凹凸を形成したボールとしたりすることで、上側係止部への係止時に空気流通の流路が形成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10,21…搬送ヘッド、 12…エアー通路、
13…先端面、 14,19a…空気流通溝、
15,22…上側係止部、 16…下側係止部、
18…ボール、 20…半導体素子、
23…第2エアー通路、 H…移動空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を介して吸引し、ヘッド先端に半導体素子を吸着する半導体素子搬送ヘッドにおいて、
上記流体通路内に上下の係止部及びこの上下の係止部間を移動する移動体を配置し、この移動体を吸引により上昇させ、吸引の停止により落下させる衝撃発生機構を設け、
この衝撃発生機構により半導体素子離脱時に上記移動体の落下の衝撃を与えるようにしたことを特徴とする半導体素子搬送ヘッド。
【請求項2】
上記流体通路又は上記移動体には、半導体素子吸着時に上記移動体が上昇位置に留まった状態で流体の流れが途切れないようにする流通路を形成したことを特徴とする請求項1記載の半導体素子搬送ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−66988(P2013−66988A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209156(P2011−209156)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】