説明

半導体結晶の製造方法

【課題】フラックス法において、高品質な半導体結晶を低コストで生産すること。
【解決手段】結晶転位密度が成長させる半導体結晶よりも高いGaN基板10を用いて、フラックス法でGaN単結晶20を結晶成長させる。GaN基板10の結晶転位密度は、成長させる半導体結晶よりも高いので、その半導体結晶がフラックスに溶融するよりは、GaN基板10がフラックスに溶融する方が速い。N元素がGaN基板の溶解により供給され、結晶成長速度を高くすることができる。また、半導体単結晶の成長と同時にGaN基板10を溶融させて消滅させることができる。成長工程において、Ga元素とフラックスとの溶液では、Ga元素がGaN基板10から供給されるので、表面側成長に伴うフラックス中のGa濃度の低下を抑制でき、フラックス中のGa元素比を一定にすることができ、NaやLiなどのフラックス構成元素が結晶中に取り込まれるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を、フラックスを用いて結晶成長させるフラックス法に関する。
この方法は、半導体結晶の転位やクラックの発生密度の低減や、半導体結晶の生産コストの削減などに有効なものである。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を、フラックス法によって結晶成長させる従来技術としては、例えば下記の特許文献1〜特許文献5に開示されているものなどが公知である。
これらの従来の製造方法では、通常、種結晶として、サファイア基板上にバッファ層などの半導体層を積層したテンプレートや、GaN単結晶などが専ら用いられている。
【特許文献1】特開平11−060394号公報
【特許文献2】特開2001−058900号公報
【特許文献3】特開2001−064097号公報
【特許文献4】特開2004−292286号公報
【特許文献5】特開2004−300024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、上記の特許文献では、N原子を含むガスを供給しつつ、種子結晶をIII 族元素の溶融したフラックス中に浸漬して、引き上げる方法が用いられている。
したがって、種子結晶として、サファイア基板上にMOCVD法でGaNを成長させたテンプレート基板を用いた場合、 III族窒化物系化合物半導体からなる所望の半導体結晶とサファイア基板との間には大きな熱膨張係数差があるため、所望の半導体結晶を厚く積層すると、反応室から半導体結晶を取り出す際にその結晶中にクラックが多数発生してしまう。このため、基板として上記の様なテンプレートを用いた場合、例えば膜厚400μm以上の高品質な半導体結晶を得ることは困難となる。
【0004】
また、成長中に、III 族原子を供給しない場合には、成長が進行するに伴い、フラックス中のIII 族原子濃度が低下し、結晶成長速度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、フラックス法において、半導体結晶の成長速度を高くすることである。
また、他の目的は、クラックの発生していない良品質のIII 族窒化物半導体結晶を得ることである。
さらに、他の目的は、基板の除去を高速で行えるようにすることである。
これらの目的は、いずれかの発明が達成すれば十分であって、一つの発明がこれらの全ての目的を達成する必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、本発明の第1の手段は、 III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を、フラックスを用いて結晶成長させるフラックス法において、半導体結晶を結晶成長させる基板を、結晶成長させる半導体結晶の転位密度よりも高い転位密度を有したIII 族窒化物系化合物半導体で形成し、基板を、半導体結晶の成長面と反対側の面から、フラックスに溶解させながら、基板の成長面に、半導体結晶を成長させることを特徴とする半導体結晶の製造方法である。
なお、基板上に III族窒化物系化合物半導体の成長を終了した後においても、継続して、基板が裏面側から基板をフラックスに溶融させる場合も本件発明に含まれる。逆に、 III族窒化物系化合物半導体の成長を終了させる前に、基板の全てが溶融しても良い。また、最短には、成長させる半導体結晶の厚さが、 III族窒化物系化合物半導体が安定して成長する厚さに達した時点で、基板の全てが溶融していても良い。
【0007】
また、本発明の第2の手段は、 III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を、フラックスを用いて結晶成長させるフラックス法において、半導体結晶を結晶成長させる基板を、結晶成長させる半導体結晶の転位密度よりも高い転位密度を有したIII 族窒化物系化合物半導体で形成し、基板の成長面に半導体結晶を成長させた後に、基板を、半導体結晶の成長面と反対側の面から、フラックスに溶解させることを特徴とする半導体結晶の製造方法である。
【0008】
第1の手段は、基板上にIII 族窒化物系化合物半導体を結晶成長させつつ、基板を裏面側からフラックスに溶融することが特徴であるのに対して、第2の手段は、基板上にIII 族窒化物系化合物半導体を結晶成長させた後に、基板を裏面側からフラックスに溶融させることが特徴である。
【0009】
上記の第1の手段及び第2の手段において、結晶成長をさせる基板には、2元、3元、又は4元の「Al1-x-y Gay Inx N;0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1」成る一般式で表される任意の混晶比の半導体を用いることができる。更に、このIII 族窒化物系化合物半導体には、p形或いはn形の不純物が添加されていても良い。最も望ましい半導体は、GaNである。また、基板の結晶の転位密度は1×106 〔cm-2〕以上であることが望ましい。さらに、望ましくは、1×107 〔cm-2〕以上、最も望ましくは、1×108 〔cm-2〕以上である。また、基板上に成長させるIII 族窒化物系化合物半導体の結晶性を良好にするためには、転位密度は、1×1010〔cm-2〕以下が望ましい。
【0010】
また、上記の結晶成長させる III族窒化物系化合物半導体には、GaNを用いることが望ましい。
【0011】
また、基板に、結晶成長させる半導体結晶中のキャリヤー濃度を制御する不純物を添加していても良い。この様な不純物としては、n型の不純物を用いても良いしp型の不純物を用いても良いし、両型の不純物を共に有する基板を用いても良い。
【0012】
また、第1の手段において、基板の厚さを、半導体結晶の成長を終了させる時には、基板がフラックスに全て溶解する厚さに設定することが望ましい。このようにすることで、III 族窒化物系化合物半導体の液相成長が完了した時点で、その半導体よりも転位密度が多い基板が消滅しているので、転位密度の低い良質なIII 族窒化物系化合物半導体を得ることができる。
【0013】
また、基板の露出面上、たとえば、結晶成長させる面と反対側の面(裏面)に保護膜を形成し、その保護膜の厚さ又は成膜パターンによって、上記の基板がフラックスに溶解する時期または溶解速度を制御するようにしても良い。この様な保護膜の材料としては、例えば窒化アルミニウム(AlN)やタンタル(Ta)などを用いることができる。これらの保護膜は、結晶成長や真空蒸着やスパッタリングなどの周知の方法によって成膜させることができる。
【0014】
また、上記の成膜パターンは、フォトリソグラフィーやエッチングなどの周知の技法を用いて形成することができる。また、上記の溶解時期は、これらの保護膜の厚さを薄くする程早めることができ、また、上記の溶解速度は、フラックスに対する基板の露出面積を広くするほど高く設定することができる。基板の露出面が高温のフラックスに接触した時点から基板の溶解が開始され、かつ、その溶解速度はその露出面の面積に略比例するので、これらの条件を適当に設定することによって、基板の溶解開始時刻や溶解所要時間や溶解速度などを任意に設定することができる。また、基板の溶解所要時間は、その組成比や厚さやフラックスの温度などによっても任意に調整することができる。また、基板中の不純物を半導体結晶に添加する不純物としても利用する場合には、基板の溶解速度や溶解所要時間などを適当に制御することにより、結晶成長する半導体結晶中の不純物濃度を任意に制御することができる。
以上の本発明の手段により、前記の課題を効果的、或いは合理的に解決することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明の手段によって得られる効果は以下の通りである。
即ち、本発明の第1の手段によれば、 III族窒化物系化合物半導体を結晶成長させる基板を、結晶成長させる半導体結晶の転位密度よりも高い転位密度を有したIII 族窒化物系化合物半導体で形成し、基板を、半導体結晶の成長面と反対側の面から、フラックスに溶解させながら、基板の成長面に、半導体結晶を成長させている。基板溶融により、V族元素である窒素の溶液中の溶解度が増加するため、 III族窒化物半導体の成長速度を高くできる。また、基板の溶解により III族元素の溶解度も増えるため、表面側結晶成長に伴う III族元素の枯渇を低減できる。これによりフラックス中における、Naや添加物に対する III族元素の組成比減少を低減でき、結晶中にNaや添加物が取り込まれるのを防ぐことが可能となる。
【0016】
第2の手段では、 III族窒化物系化合物半導体を結晶成長させる基板を、結晶成長させる半導体結晶の転位密度よりも高い転位密度を有したIII 族窒化物系化合物半導体で形成し、基板の成長面に半導体結晶を成長させた後に、基板を、半導体結晶の成長面と反対側の面から、フラックスに溶解させるようにしている。転位密度が高い結晶の方が、転位密度が低い結晶よりもフラックスへの溶解速度が高いので、結晶成長した半導体を残して、基板を除去することが可能となる。したがって、結晶成長装置から結晶成長した半導体を取り出した後に、基板を除去する必要がなく、製造工程が簡単となる。
【0017】
また、基板の転位密度を1×106/cm3 以上とすることで、基板を容易にフラックス中に溶解させることができる。
また、基板と成長させる半導体結晶を共にGaNとすることで、最も品質の良い結晶を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
なお、フラックスを構成するアルカリ金属としては、特に、ナトリウム(Na)を用いることが望ましい。リチウム(Li)を用いることも可能である。
また、窒素(N)を含有するガスとしては、窒素ガス(N2 )、アンモニアガス(NH3 )、またはこれらのガスの混合ガスを用いることができる。
【0019】
また、上記のp形の不純物(アクセプター)としては、例えばアルカリ土類金属(例:マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)等)などの公知のp形不純物を添加することができる。また、上記のn形の不純物(ドナー)としては、例えば、シリコン(Si)や、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、或いはゲルマニウム(Ge)等の公知のn形不純物を添加することができる。また、これらの不純物(アクセプター又はドナー)は、同時に2元素以上を添加しても良いし、同時に両形(p形とn形)を添加しても良い。これらの不純物は、例えばフラックス中に予め溶融させておいたり、基板に添加しておくこと等により、所望の結晶成長させる半導体結晶中に添加することができる。
【0020】
また、用いる結晶成長装置としては、フラックス法が実施可能なものであれば任意でよく、例えば、特許文献1〜5に記載されているもの等を適用又は応用することができる。ただし、フラックス法に従って結晶成長を実施する際の結晶成長装置の反応室の温度は、1000℃程度にまで任意に昇降温制御できることが望ましい。また、反応室の気圧は、約100気圧(約1.0×107 Pa)程度にまで任意に昇降圧制御できることが望ましい。また、これらの結晶成長装置の電気炉、ステンレス容器(反応容器)、原料ガスタンク、及び配管などは、例えば、ステンレス系(SUS系)材料やアルミナ系材料や銅等によって形成することが望ましい。
【0021】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
ただし、本発明の実施形態は、以下に示す個々の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
1.基板の作成
以下、図1を用いて、フラックス法での結晶成長工程に用いる種子結晶となる基板の作成手順について説明する。
(1)まず、サファイア基板11上に、MOCVD装置により、AlNから成るバッファ層12を35nmの厚さに形成し、その上にGaN層13を200μm厚さに形成する。また、このGaN層13は、HVPE法により形成しても良い。この成長の後、サファイア基板11をレーザリフトオフ法によりGaN層13から剥離させて、GaN層13から成るGaN基板10を得る。このGaN基板10の転位密度は、5×107 /cm3であった。
【0023】
2.結晶成長装置の構成
図2に本実施例1の結晶成長装置の構成図を示す。この結晶成長装置は、窒素ガスを供給するための原料ガスタンク21と、育成雰囲気の圧力を調整するための圧力調整器22と、リーク用バルブ23と、結晶育成を行うための電気炉25を備えており、電気炉25、原料ガスタンク21と電気炉25とをつなぐ配管等は、ステンレス系(SUS系)またはアルミナ系の材料、或いは銅等により形成されている。
【0024】
そして、上記の電気炉25の内部には、ステンレス容器24(反応室)が配置されており、このステンレス容器24には、坩堝26(反応容器)がセットされている。この坩堝26は、例えば、ボロンナイトライド(BN)やアルミナ(Al2 3 )などから形成することができる。
また、電気炉25内の温度は、1000℃以下の範囲内で任意に昇降温制御することができる。また、ステンレス容器24の中の結晶雰囲気圧力は、圧力調整器22によって、1.0×107 Pa以下の範囲内で任意に昇降圧制御することができる。
【0025】
3.結晶成長工程
以下、図3−A〜Cを用いて、図2の結晶成長装置を用いたフラックス法での結晶成長工程について説明する。
(1)まず、反応容器26(坩堝)の中にアルカリ金属であるNa(即ち、フラックス)と III元素であるGaを入れ、その中に上記の方法で製造したGaN基板を入れる。この場合に、基板の上側の結晶成長面はGa面であり、その反対の裏面はN面となるようにGaN基板10を反応容器26の中に配置する。その反応容器26を結晶成長装置の反応室(ステンレス容器24)の中に配置してから、反応室24の中のガスを排気する。ただし、この反応容器26中には必要に応じて、例えばアルカリ土類金属等の前述の任意の添加物を予め投入しておいても良い。また、これらの作業を空気中で行うとNaがすぐに酸化してしまうため、基板や原材料を反応容器にセットする作業は、Arガスなどの不活性ガスで満たされたグローブボックス内で実施する。
【0026】
(2)次に、この反応容器26の温度を850℃以上880℃以下にまで昇温しつつ、この昇温工程と並行して、結晶成長装置の反応室24には、窒素ガス(N2 )を送り込み、この反応室24のガス圧を30〜50気圧(3〜5×106 Pa)程度に維持する。この時、上記のGaN基板10の裏面は、上記の昇温の結果生成されるGaとNaとの融液に浸し、GaN基板10の結晶成長面14は、その融液と窒素ガスとの界面付近に配置するように、高さの調整が可能でGaN基板10の全ての部分がフラックス溶液に接触可能なように、図示しないメッシュ状のサセプタの上に設けられても良い。また、るつぼの底に置かれていても良い。また、反応室24は結晶成長時に揺動運動や回転運動を行うようにして、GaN基板10とフラックス溶液とが十分に均一に接触するようにしても良い。
【0027】
以上の様な条件設定により、フラックス中は、継続的に III族窒化物系化合物半導体の材料原子の過飽和状態となるので、所望のGaN半導体結晶20を基板10の結晶成長面から順調に成長させることができる(図3−A)。
【0028】
4.結晶成長基板の溶解
以上の結晶成長工程中に、GaN基板10は、裏面15側からGaとNaとの融液中に溶解する。GaN基板10の転位密度は、5×107 /cm3で、結晶成長したGaN単結晶20の転位密度は、1×103 /cm3と低い。このために、転位密度の高いGaN基板10の方が、結晶成長したGaN単結晶20よりも高速度で溶解する。この結果、溶液中の窒素溶解度が増加し、結晶成長速度を高くすることができる。さらに、基板溶解に伴いフラックスには、Gaが溶解することにより、表面側成長に伴うGaの消費分を補うことができる。これにより、フラックス中のNa/Ga比の増加を抑制でき、Naや添加物が結晶中へ取り込まれるのを防ぎ、均質な半導体結晶を得ることができる(図3−B)。
【0029】
この時、GaN単結晶20の結晶成長を終了させる時と同時に、GaN基板10の全てが溶解するように溶液の温度、基板の厚さなどを調整しておくことが望ましい。また、GaN単結晶20の結晶成長を終了させる時に、まだ、GaN基板10の全てが溶解していない場合には、その後も、引き続き反応容器26の温度を850℃以上880℃以下に維持して、GaN基板10がフラックス中に全て溶解するのを待つ。これにより、GaN基板10の全てが溶解して、低転位密度のGaN単結晶20だけを得ることができる(図3−C)。その後も、窒素ガス(N2 )のガス圧を30〜50気圧(3〜5×106 Pa)程度に維持したまま、反応室の温度を100℃以下にまで降温する。
【0030】
ただし、GaN基板10をフラックス中に溶解させる工程と上記の降温工程とは、幾らか並行に重ねて実施する様にしても良い。
【0031】
5.フラックスの除去
次に、結晶成長装置の反応室24からGaN単結晶20(所望の半導体結晶)を取り出して、これを30℃以下にまで降温してからその周辺も30℃以下に維持して、GaN単結晶20の周りに付着したフラックス(Na)をエタノールを用いて除去する。
以上の各工程を順次実行することによって、従来よりも大幅にクラックが少なく組成比が化学量論比に等しく均質な高品質の400μm以上の厚さのGaN単結晶20をフラックス法によって製造することができる。
【0032】
〔その他の変形例〕
本発明の実施形態は、上記の形態に限定されるものではなく、その他にも以下に例示される様な変形を行っても良い。この様な変形や応用によっても、本発明の作用に基づいて本発明の効果を得ることができる。
(変形例1)
図4に示すように、基板10の裏面15に、保護膜16を成膜しても良い。この保護膜16は、例えばMOVPE法などに従ってAlN層を積層することによって成膜しても良いし、或いはタンタル(Ta)などの適当な金属をスパッタリング装置又は真空蒸着装置を用いて成膜する様にしても良い。
この保護膜16の厚さによって、基板10が裏面から溶解するタイミングを調整することができる。また、保護膜16を厚くすることで、結晶成長工程の実施中には、基板10がフラックス中に融解しない様にしても良い。
【0033】
また、半導体結晶20の結晶成長が終了した後も、基板10をフラックスに溶解させる場合には、反応容器26の温度を850℃以上880℃以下に維持して、保護膜16及び基板10がフラックス中に全て溶解させても良い。
【0034】
成長させた単結晶20の結晶成長が終了した時に、基板10の全てがフラックスに溶解するような調整は、保護膜16を用いない場合には、基板10の厚さで調整する。保護膜16を用いる場合には、基板10の厚さで、基板10の全てが溶解するタイミングを調整できる他、基板10の厚さを一定として、保護膜16の厚さだけで、そのタイミングを調整することも可能である。
基板を溶解させるための時間を別途設ける必要がなくなるので、生産性の面で有利となる。
また、上記の実施例1では、基板10をフラックス中に溶解させる工程中にも同時に、一旦生成された所望の半導体結晶がフラックス中に幾らか溶け出してしまい無駄になる。しかし、上記の様な設定を行えば、結晶成長工程の実行中に基板10がエッチングされてしまうので、後で、基板10を溶解させる工程を設ける必要がなくなる。このため、上記の様な設定を行えば、それらの無駄の発生を最小限に抑制することもできる。
【0035】
また、保護膜の厚さを適当に調節することによって、結晶成長が開始されてからしばらくの期間は基板10がフラックス中に溶け出ないようにすることができる。
(変形例2)
【0036】
また、基板10の裏面に形成する保護膜15を一様に成膜する他、これらの保護膜を適当なエッチングパターンを用いてエッチングすることにより、基板10の裏面の一部をそのエッチングパターンに従って露出させる様にしても良い。この場合には、基板10の露出部が始めからフラックスに接触し、フラックスと反応して溶解するので、この様な設定によっても、基板10の溶解速度や溶解所要時間などを最適化することができる。この時には、基板10の裏面15の一部を露出させる保護膜16の窓部の大きさや、その窓の配置密度などを調整することによって、上記の基板10の溶解速度などの最適化が可能となる。上記の基板10の裏面15に成膜される保護膜16の窓部は、フォトリソグラフィー工程やドライエッチング工程などを有する一般的な周知のエッチング技法によって形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、 III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を用いた半導体デバイスの製造に有用である。これらの半導体デバイスとしては、例えばLEDやLDなどの発光素子や受光素子等以外にも、例えばFETなどのその他一般の半導体デバイスを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1のGaN基板の製造工程を示した断面図。
【図2】実施例1の結晶成長装置の構成図
【図3−A】実施例1の半導体結晶の結晶成長工程における断面図
【図3−B】実施例1の半導体結晶の結晶成長工程における断面図
【図3−C】実施例1の半導体結晶の結晶成長工程における断面図
【図4】変形例に係る基板を示した断面図。
【符号の説明】
【0039】
10 : 基板
11 : サファイア基板
12 : AlNバッファ層
13 : GaN層
14 : 結晶成長面
15 : 裏面
16 : 保護膜
20 : GaN単結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を、フラックスを用いて結晶成長させるフラックス法において、
前記半導体結晶を結晶成長させる基板を、結晶成長させる半導体結晶の転位密度よりも高い転位密度を有したIII 族窒化物系化合物半導体で形成し、
前記基板を、前記半導体結晶の成長面と反対側の面から、前記フラックスに溶解させながら、前記基板の成長面に、前記半導体結晶を成長させることを特徴とする半導体結晶の製造方法。
【請求項2】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体結晶を、フラックスを用いて結晶成長させるフラックス法において、
前記半導体結晶を結晶成長させる基板を、結晶成長させる半導体結晶の転位密度よりも高い転位密度を有したIII 族窒化物系化合物半導体で形成し、
前記基板の成長面に前記半導体結晶を成長させた後に、前記基板を、前記半導体結晶の成長面と反対側の面から、前記フラックスに溶解させることを特徴とする半導体結晶の製造方法。
【請求項3】
前記基板の結晶の転位密度は、1×106/cm3 以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項4】
前記結晶成長させる前記半導体結晶は、GaNであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の半導体結晶の成長方法。
【請求項5】
前記基板は、GaNであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の半導体結晶の成長方法。
【請求項6】
前記基板の厚さは、前記半導体結晶の成長を終了させる時には、基板は前記フラックスに全て溶解する厚さに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−246368(P2007−246368A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75223(P2006−75223)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】