半導体装置の絶縁欠陥検出装置
【課題】長期的な電圧印加を必要とせずに、短時間で高精度の検出が可能な半導体装置の絶縁欠陥検出装置を得る。
【解決手段】絶縁欠陥の検出対象である試料1に対して電圧を印加する高電圧電源3と、試料1に対してX線5を照射するX線発生部4と、電圧の印加およびX線の照射を行ったときに、試料1の内部の部分放電から発せられる電磁波をアンテナ6a,6bにより検出する部分放電検出器9と、当該検出を行うときに試料1を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射するX線遮蔽筐体7とを備え、部分放電から発せられる当該電磁波の検出の有無に基づいて、試料1の絶縁欠陥の有無を検出する。
【解決手段】絶縁欠陥の検出対象である試料1に対して電圧を印加する高電圧電源3と、試料1に対してX線5を照射するX線発生部4と、電圧の印加およびX線の照射を行ったときに、試料1の内部の部分放電から発せられる電磁波をアンテナ6a,6bにより検出する部分放電検出器9と、当該検出を行うときに試料1を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射するX線遮蔽筐体7とを備え、部分放電から発せられる当該電磁波の検出の有無に基づいて、試料1の絶縁欠陥の有無を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体装置の絶縁欠陥検出装置に関し、特に、パワーモジュール等の高電圧機器の絶縁欠陥の検出を行うための半導体装置の絶縁欠陥検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーの効率的利用のための装置としてパワーモジュールの需要が高まっている。パワーモジュールには高い絶縁信頼性が要求され、出荷前に絶縁検査が実施されるが、長期間の電圧印加により、初期には検出されなかった部分放電が生じることがある。その理由としては、欠陥中に部分放電が発生するには初期電子が必要であるが、微小欠陥の場合、初期電子が供給されにくいため、出荷前の検査では検出されない可能性が高いためである。そのため、製品の長期信頼性を確保するために、初期の検査時に短時間で絶縁検査が実施できることが求められる。
【0003】
従来の検査方法には、X線を照射することで欠陥部に初期電子を供給して短時間に検査する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9‐105766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のような従来の検査方法で用いられる欠陥検査装置は、部分放電測定装置とX線照射装置により構成され、部分放電測定装置の測定系が電源と繋がる回路に組み込まれ、試料に直接接続して電流パルスを検出する方式であるため、欠陥が微小なものである場合には、放電電荷量が小さいので、検出できない場合があり、高感度な測定を行うことができないという問題点があった。
【0006】
また、SiCチップ搭載モジュールなどで、絶縁構造が小型化する試料内部では、問題となる欠陥がより微小なものとなり、さらに放電電荷量が小さく、その結果、より検出されにくくなるため、さらなる高感度な測定が求められるという問題点があった。
【0007】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、電磁波検出による部分放電測定方式により、長期的な電圧印加を必要とせずに、短時間で高精度の検出が可能な半導体装置の絶縁欠陥検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、絶縁欠陥の検出対象である試料に対して電圧を印加する電圧印加手段と、前記試料に対してX線を照射するX線照射手段と、アンテナを有し、前記電圧の印加および前記X線の照射を行ったときに、前記試料内部の部分放電から発せられる電磁波を前記アンテナにより検出する部分放電測定手段と、前記検出を行うときに前記試料を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射することが可能なX線遮蔽筐体とを備え、前記部分放電から発せられる前記電磁波の検出結果に基づいて、前記試料の絶縁欠陥の有無を検出することを特徴とする半導体装置の絶縁欠陥検出装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、絶縁欠陥の検出対象である試料に対して電圧を印加する電圧印加手段と、前記試料に対してX線を照射するX線照射手段と、アンテナを有し、前記電圧の印加および前記X線の照射を行ったときに、前記試料内部の部分放電から発せられる電磁波を前記アンテナにより検出する部分放電測定手段と、前記検出を行うときに前記試料を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射することが可能なX線遮蔽筐体とを備え、前記部分放電から発せられる前記電磁波の検出結果に基づいて、前記試料の絶縁欠陥の有無を検出することを特徴とする半導体装置の絶縁欠陥検出装置であるので、電磁波検出による部分放電測定方式により、長期的な電圧印加を必要とせずに、短時間で高精度の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の装置構成を示す構成図である。
【図2】X線照射時および未照射時の部分放電電荷量と部分放電開始電圧との関係をグラフで示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の実施手順を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における各アンテナの配置の位置関係を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における筐体壁面での電磁波の反射波をアンテナで測定することを示す側断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置におけるX線遮蔽筐体内部の電磁波反射用金属板の配置を示す側断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における装置筐体内部の寸法について示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における共振時のアンテナの配置を示す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態5に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板を追加した装置構成を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板による反射の効果を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板によるX線反射による試料へのX線照射を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板の角度変更によるX線反射による試料へのX線照射を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態7に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の反射板を曲面状にすることによる電磁波の反射波をアンテナで測定することを示す図である。
【図14】この発明の実施の形態8に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の反射板間距離によって電磁波共振周波数が変化することについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に関わる装置構成を示す図である。図1において、1は、絶縁欠陥の検出対象である試料であり、2は、試料1を載置させるための電磁波が透過できる誘電体で形成された試料台である。3は、試料1に電圧が印加するための高電圧電源であり、4は、試料台2の上方に設けられ、試料1に対してX線5を照射するためのX線発生部である。6は、試料1の内部の部分放電から発せられる電磁波信号を検出するためのアンテナである。アンテナ6は、単数設けてもよいが、図1に示すように、複数個(アンテナ6a,6b)設けるようにしてもよい。7は、X線が遮蔽できる鉛板で構成されたX線遮蔽筐体であり、試料1、試料台2、X線発生部4、および、アンテナ6を内部に収納し、X線発生部4からのX線5を外部に放射させないためのものである。また、X線遮蔽筐体7の内壁は電磁波を反射する。8は、X線発生部4の動作を制御するX線制御部、9は、アンテナ6で検出した電磁波信号に基づいて部分放電の発生を検出するための部分放電検出器である。10は、高電圧電源3、X線制御部8、および、部分放電検出器9の動作を制御する測定制御部である。
【0012】
当該構成において、試料1は試料台2に載せられ、高電圧電源3により試料1に電圧が印加されて、X線発生部4から試料1に対してX線5が照射される。このとき、試料1内部の部分放電から発せられる電磁波信号をアンテナ6により検出する。電磁波信号が検出されなければ、絶縁欠陥が試料1に無いと判定され、逆に、電磁波信号が検出された場合は、絶縁欠陥が試料1にあると判定される。
【0013】
このとき、アンテナ6は平板アンテナを用いる。平板アンテナの場合、装置内部に設置しやすいことや、指向性があるが、感度が良い利点などがある。アンテナ6は、試料1の方向へ向けるようにし、測定感度を向上させるため、複数箇所に配置する。図1の例では、アンテナ6aを試料台2の下方に設置し、アンテナ6bを試料台2の側方に設置している。当然、アンテナ6は多いほど測定感度は向上するが、試料1とX線発生部4との間に設置すると、試料1へのX線照射の妨げとなるので、試料1とX線発生部4との間に設置することは避けるようにする。また、このとき、試料台2の下に設置する場合、アンテナ6と試料台2とを密着させると表面電界の変動によりうまく測定できなくなるため、図1のように、所定の隙間を開けるようにする。このとき、試料1から電磁波が放射されると、アンテナ6へ向かって放射される電磁波は勿論のこと、アンテナ6のない方向へ放射された電磁波も、X線遮蔽筐体7の壁面での反射により、その反射波もアンテナ6により測定することができ、結果として測定感度を向上させることができる。また、アンテナの検出周波数は、ノイズの影響の受けにくい高周波(数百MHz〜数GHz)となるようにする。また、X線5を照射する方向は、図1のように、試料1の上方からでなくても、下方からや、横からでも良い。
【0014】
試料1内に発生した絶縁欠陥部にX線5が照射されると、欠陥内部に初期電子が誘起されるため、放電が発生しやすくなり、図2に示すように、X線未照射時に比べて部分放電開始電圧が低下する。ただし、X線5を照射しない場合でも、長時間の電圧印加により、欠陥部に電荷が供給され、X線5の照射時と同等の放電開始電圧となり得る。つまり、X線5を照射して測定することで、長時間の電圧印加と同等の効果が得られ、短時間に長期信頼性の評価を行うことができる。よって、この発明の絶縁欠陥検出装置を製造ラインに導入することで検査工程の時間を短縮できる。
【0015】
この発明の測定手順のフローチャートを図3に示す。まず、試料1を試料台2に載せて、高電圧電源3に接続し、試験電圧を印加する(ステップS1)。続いて、X線発生部4によりX線5を試料1に照射する(ステップS2)。次に、当該照射の結果、部分放電がアンテナ6により検出されたか否かを部分放電検出器9により判定する(ステップS3)。部分放電が検出されれば、試料1に絶縁欠陥があると判定されて、NG品(不合格品)となり(ステップS4)、検出されなければ、試料1に絶縁欠陥が無いと判定されて、OK品(合格品)ということになる(ステップS5)。放電の判定後、高電圧電源3による電圧印加を停止する(ステップS6)とともに、X線発生部4によるX線照射を停止する(ステップS7)ことで検査が終了する。この一連の流れを、高電圧電源3とX線制御部8と部分放電検出器9を測定制御部10にて一括して制御することで、検査の自動化が可能となる。
【0016】
この欠陥検出方法によりパワーモジュール等の機器の絶縁信頼性の評価を実施できる。ここでいうパワーモジュールとは、SiおよびSiCチップ等全てのチップを搭載したシリコーンゲル封止の高電圧機種、エポキシ樹脂のトランスファー成型によるモールド型モジュール等全てのモジュールに対応可能であることは言うまでも無い。
【0017】
以上のように、本実施の形態1に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置は、X線照射と部分放電測定によって絶縁欠陥を検出する装置であって、試料1に対して電圧を印加する高電圧電源3から構成される電圧印加手段と、試料1内部の部分放電から発する電磁波を検出するアンテナ6と部分放電検出器9とから構成される部分放電測定手段と、X線5を試料1に照射するX線発生部4から構成されるX線照射手段と、測定時に試料1を内部に収納するX線遮蔽筐体7とを備えるようにしたので、X線照射による初期電子供給によって長期的な電圧印加を必要とせずに絶縁欠陥検査を精度高く実施することができる。また、放電の電磁波をアンテナ6により検出する方式であるため、X線遮蔽筐体7を利用して電磁波の反射波も測定するようにしたことで、アンテナ6が設置されていない方向に放射された電磁波も反射波により検出できることによって測定感度が向上し、検出精度を向上させることができる。
【0018】
実施の形態2.
本実施の形態においては、上述の実施の形態1で説明した構成において、さらに、指向性のあるアンテナ6を、図4に示すように、試料1の下方および側方2ケ所の計3箇所にそれぞれ互いに直交するように置く。また、アンテナ6の向きは、それぞれ、試料1を挟んだ反対側のX線遮蔽筐体7の壁面の正面に向く様に配置する。すなわち、図4の構成は、図1の構成に、さらに、アンテナ6cを追加した構成となる。他の構成については、図1と同じであるため、図1を参照することとし、ここでは、その説明および図示を省略する。
【0019】
当該構成において、部分放電が発生すると、図5に示すように、アンテナ6の無い方向に向かって試料1から放射された電磁波は、X線遮蔽筐体7の壁面(内壁)で反射することによりアンテナ6の正面に戻ってくるので、当該反射波をアンテナ6で検出することから、検出することができる。また、1回の反射では角度的にアンテナ6で検出できなくとも、X線遮蔽筐体7の壁面での反射を繰り返すことで、直交する3箇所のいずれかのアンテナ6で検出でき、アンテナ6を4箇所以上に配置した場合と近い効果が得られる。
【0020】
具体的には、アンテナ6aは、基本的にX線遮蔽筐体7の天井(上内壁)で反射された電磁波の反射波を検出し、アンテナ6b,6cは、基本的にX線遮蔽筐体7の側壁(側内壁)で反射された電磁波の反射波を検出する。但し、これだけでなく、各アンテナ6a〜6cは、上述したように、1回の反射では角度的に検出できなかった反射波についても、X線遮蔽筐体7の壁面で繰り返し反射された反射波についても検出可能なものはすべて検出する。
【0021】
ただし、アンテナ6は平板アンテナでなくとも、指向性の低いロッドアンテナ等でもよいが、その場合、複数箇所に設置する必要性が低い代わりに感度は小さくなる。
【0022】
以上のように、本実施の形態2に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態2においては、指向性のあるアンテナ6を複数個使用し、アンテナ6の方向を試料1を挟んだ反対側のX線遮蔽筐体7の壁面の正面を向くように設置するようにして、壁面に直交する方向へ向けるようにしたので、アンテナ6から見て試料1を挟んだ反対側のX線遮蔽筐体7の壁面へ向かって放射された電磁波の反射波を、効率良く検出することができるという効果が得られる。
【0023】
実施の形態3.
本実施の形態においては、上述の実施の形態1で説明した構成において、さらに、図6に示すように、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に、鉛板よりも導電率の高い銅板から構成された電磁波反射用金属板12(12a〜12d)を電磁波反射板として取り付ける。このとき、銅板の表面は反射率を高めるために、凹凸のない滑らかな状態のものを使用する。これにより、反射波の強度が増加し、測定感度が向上する。すなわち、図6の構成は、図1の構成に、さらに、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に取り付けた金属板12を追加した構成となる。他の構成については、図1と同じであるため、図1を参照することとし、ここでは、その説明および図示を省略する。
【0024】
なお、図6においては、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に電磁波反射用金属板12を4枚取り付けたように示してあるが、これは、図示の関係によるもので、実際には、X線遮蔽筐体7の6つの内側の壁面のすべてに取り付けられている。なお、必ずしも、6面すべてに取り付けなくてもよいが、反射率向上および測定感度向上を考慮すれば、6面すべてに取り付けることが望ましい。また、金属板12は、X線遮蔽筐体7の内側の壁面全面に必ずしも設けなくてもよいが、壁面全面に設けることが望ましい。
【0025】
以上のように、本実施の形態3に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態3においては、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に、電磁波の反射率の高い金属板12を設置するようにしたので、筐体壁面の電磁波の反射率を向上させることで、測定感度が向上するという効果が得られる。
【0026】
実施の形態4.
本実施の形態においては、上述の実施の形態1で説明した構成において、さらに、アンテナ6の検出周波数が、X線遮蔽筐体7の内部で起こる電磁波11の共振周波数となるように、壁面間の各幅を調整して測定することで、検出感度を向上させるようにした。X線遮蔽筐体7を直方体としたとき、共振周波数fとX線遮蔽筐体7の内部空間の寸法(図7の、高さ:a、幅:b、奥行き:d)との間に以下の式(1)が成り立つように、X線遮蔽筐体7の内部空間の寸法(図7の、高さ:a、幅:b、奥行き:d)を調整する。ここで、cは光速度、m、n、sは0以上の整数である。
【0027】
【数1】
【0028】
このとき、アンテナ6の位置は、定在波の振幅の大きくなる位置に配置するようにする。
【0029】
ここで単純な形として、n=s=0として式(1)を展開すると、電磁波の波長をλとしたとき、a=(λ/2)×mとなり、aは電磁波の半波長の整数倍となる。例えば、周波数を1GHzとすると、λ/2=15cmとなるので、aを15cmの整数倍とすれば、a方向で共振する電磁波を検出することができる。
【0030】
このとき、定在波の位置により電界の振幅が異なるので、アンテナ6は、図8に示すアンテナ6aのように、電界の振幅が0となる定在波の節に設置しないようにし、アンテナ6bのように、電界の振幅が確保できる定在波の腹に設置して測定する。
【0031】
以上のように、本実施の形態4に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態4においては、図7に示すように、アンテナ6の検出周波数が、X線遮蔽筐体7の内部寸法(図7の、高さ:a、幅:b、奥行き:d)に依存して共振する電磁波の共振周波数となるように、X線遮蔽筐体7の内部寸法を調整(すなわち、そのような寸法に設計)して、X線遮蔽筐体7内部の電磁波の共振周波数を測定することで、検出感度を向上させることができるという効果が得られる。また、定在波の節では電界の振幅は0であり、その付近にアンテナを設置すると十分に測定することができないため、本実施の形態4においては、共振する電磁波を測定する際、アンテナは定在波の節付近以外の場所に設置するようにしたので、十分に電磁波の測定を行うことが可能となるという効果が得られる。
【0032】
実施の形態5.
図9は、図1の構成に加えて、位置の移動が可能な可動反射板13を設置した構成を示している。可動反射板13は、一対の可動反射板13a,13bから構成されている。また、図9においては、可動反射板13a,13bの位置を制御するための位置制御部14が設けられている。位置制御部14は、X線遮蔽筐体7の外部に設置されている。また、図1においては、アンテナ6として、アンテナ6a,6bの2つのアンテナが設けられていたが、図9においては、アンテナ6のみの1個のアンテナが設けられている。しかしながら、これに限定されるものではなく、可動反射板13a,13bの移動を妨げない位置であれば、アンテナを複数個設けてもよく、適宜必要な個数を設置するようにすればよい。また、図9の構成においては、アンテナ6の位置移動も可能としている。従って、可動反射板13a,13b、およびアンテナ6の位置は、位置制御部14で筐体外部より制御する。位置制御部14の動作自体は、測定制御部10が制御する。以上が、図1と異なる点である。他の構成および動作については、図1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0033】
可動反射板13a,13bは、試料1の近傍で、かつ、試料1の側方の両側に、対向して設けられている。図9の例では、可動反射板13aがアンテナ6側に設けられている。ここで、可動反射板13a,13bを試料1の寸法に合わせてその近傍に設置することで、反射波のアンテナ6までの伝播距離を短くすることができる。このとき、反射板13a,13bが試料1近傍まで接近できるように、試料台2や配線が妨げにならないような配置・構造にし、アンテナ6と同じ側にある可動反射板13aを移動させる際には、反射板13aの移動の妨げとならないように、アンテナ6も同時に移動させる。可動反射板13a,13bは、位置制御部14により、それぞれ、別個に位置制御される。このとき、図10(a)のように、可動反射板13bが試料1と離れていると、可動反射板13bに対して斜めに入射した電磁波11の反射波がアンテナ6で受けられない場合がある。その場合には、図10(b)のように、可動反射板13bを試料1に接近させることで、同様に放射された電磁波11の反射波がアンテナ6で受けやすくなる。
【0034】
以上のように、本実施の形態5に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態5においては、設置位置の移動が可能な、電磁波を反射するための可動反射板13a,13bを設けて、それらに対して位置制御部14により位置制御を行って、試料1に反射板を近づけることを可能し、試料1近傍での反射板の設置を可能にしたので、当該反射板による反射波によって、アンテナ6の測定感度をより向上することができる。
【0035】
なお、上記の説明においては、可動反射板13a,13bが別個に位置制御される例を説明したが、その場合に限らず、位置制御部14により、2つを連動して同時に位置制御するようにしてもよい。また、別個に位置制御するか、連動させて位置制御するかを、適宜選択できる構成にしてもよい。
【0036】
また、上記の説明においては、可動反射板13を2つ設ける例について説明したが、その場合に限らず、1つだけ設けてもよく、あるいは、3つ以上設けてもよい。また、それら全てを可動にしてもよいが、一部だけを可動にし、他は固定の反射板としてもよい。さらに、固定の反射板を取り外し可能なものに設計しておき、必要に応じて、取りつけて用いるようにしてもよい。
【0037】
実施の形態6.
図11は、本実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の構成を示した部分構成図である。図11においては、可動反射板によるX線反射による試料へのX線照射を示している。なお、図11においては、試料1、試料台2、X線発生部4,可動反射板13a,13bのみが記載されており、他の構成は図示が省略されているが、記載されていない他の構成については、図9と同じ構成であるため、図9を参照することとし、ここではその説明を省略する。
【0038】
本実施の形態においては、図11に示すように、X線発生部4から照射されるX線5が放射状に広がるように、X線発生部4がX線5を放射する構成とし、X線5の照射範囲内に可動反射板13の反射面がちょうど入る位置関係となるよう、X線5の照射角θとX線発生部4のX線源と試料1との距離d2に合わせて、試料1と反射板13a,13bとの距離d1を短くするように、位置制御部14により調整する。望ましくは、可動反射板13の反射面が、可動反射板13が移動しても、常に、X線5の照射範囲内に入るように、可動反射板13の移動範囲を決定して、可動反射板13を設置する。可動反射板13a,13bに入射したX線5は、そのエネルギーに応じて反射板13a,13bを透過するが、その一部は散乱によって試料1の方向へと反射される。一般にX線エネルギーが低いものほど、反射しやすい。この散乱によって照射されるX線は、X線発生部4から直接照射されるX線とは異なる方向から試料1へと照射される。
【0039】
以上のような方法を用いると、例えば試料1内部にX線の照射を妨げる銅などの配線があり、試料1内部に有効にX線が照射されない箇所がある場合でも、別方向からのX線によりその箇所へも照射させることができる。
【0040】
X線の散乱については、入射方向の前方と後方に散乱しやすい性質があり、また、可動反射板13a,13b内部で散乱されたX線は減衰の影響で、可動反射板13a,13bの反射面の法線方向へ出やすい。したがって、図12のように、可動反射板13a,13bの設置角度も可変とし、可動反射板13a,13bへのX線5の入射角φを大きくすれば、より有効に反射X線を試料1に照射することができるため、角度変更によりX線照射の最適状態を調整できる。なお、この角度制御については、位置制御部14が行うこととすればよい。
【0041】
なお、可動反射板13a,13bでのX線の反射成分は、後方散乱によるものである。したがって、後方散乱線の強度を大きくするため、可動反射板13は後方散乱の起こりやすい金属(アルミニウム等)を用い、その金属およびX線エネルギーに応じた飽和後方散乱となる厚み以上となるようにすることで、試料1へより有効にX線照射させることができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態6においては、設置位置および設置角度が可変な可動反射板13a,13bを設けて、可動反射板13a,13bによる散乱によって試料1の方向へとX線5を反射するようにしたので、X線発生部4から直接試料1に照射されるX線とは異なる方向から試料1へとX線を照射できるようになったため、例えば試料1内部にX線の照射を妨げる銅などの配線があり、試料1内部に有効にX線が照射されない箇所がある場合でも、別方向からのX線によりその箇所へも照射させることができる。これにより、試料内の障害物によってX線が照射されにくい箇所へも照射することができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、X線5はX線発生部4より放射状に拡がるように照射するようにし、かつ、移動制御部14の制御により、可動反射板13a,13bを、X線発生部4によるX線照射の範囲内に入る位置関係となるように設置することを可能としたので、可動反射板13a,13bへ当たったX線を試料1に向けて確実に散乱(反射)することができるため、X線発生部4からの照射方向とは別方向から試料1に対して確実に照射することができ、試料1内の障害物によってX線が照射されにくい箇所へも照射することができ、測定感度がより向上し、検出精度をより向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態においては、可動反射板13a,13bは、X線5の後方散乱が大きくなる特性の金属で、かつ、厚みのある板から構成するようにしたので、後方散乱線の強度を大きくでき、試料1へより有効にX線照射させることができるため、X線散乱の効果をより高めることができる。
【0045】
実施の形態7.
図13は、本実施の形態7に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の構成を示した部分構成図である。図13においては、試料1から放射される電磁波11が可動反射板13に対して斜めに入射した場合の反射波を示している。図13(a)が可動反射板13が平面状の場合で、図13(b)が曲面状の場合である。なお、図13においては、試料1、試料台2、アンテナ6、可動反射板13のみが記載されており、他の構成は図示が省略されているが、記載されていない他の構成については、図9と同じ構成であるため、図9を参照することとし、ここではその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態においては、図13(a)に示すように、可動反射板13が平面状の場合、試料1から放射される電磁波11が可動反射板13a,13bに対して斜めに入射する場合が考えられる。その場合には、当該電磁波11が可動反射板13a,13bで反射した反射波を、アンテナ6で有効に受けることができない場合がある。そこで、本実施の形態においては、図13(b)に示すように、可動反射板13を曲面状にして、また、可動反射板13c,13dの位置もそれに合うように位置制御部14で制御して、試料1からの電磁波11がアンテナ6の方向へと有効に反射できるようにすることで、検出感度を向上させることができる。なお、当然ながら、可動反射板13c,13dは、図13(b)に示すように、曲面のうちの凹面の方が試料1に面しており、凸面の方が外側に面している。こうすることにより、電磁波11が可動反射板13で反射した反射波をアンテナ6へ向けて効率よく収束させることができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態7に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態7においては、可動反射板13c,13dを曲面状にして、電磁波の反射波をアンテナ6へ向けて収束できるようにしたので、反射波をアンテナ6方向へ集中させることができ、感度がより向上する。
【0048】
実施の形態8.
図14は、本実施の形態8に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の構成を示した部分構成図である。図14においては、筐体内部でおこる電磁波1の共振周波数を利用した場合を示している。なお、図14においては、試料1、試料台2、アンテナ6、可動反射板13のみが記載されており、他の構成は図示が省略されているが、記載されていない他の構成については、図9と同じ構成であるため、図9を参照することとし、ここではその説明を省略する。
【0049】
上述した実施の形態4のようにして電磁波の共振を利用する場合、その測定周波数はX線遮蔽筐体7の寸法に依存するため、使用可能な周波数は限られる。そこで、本実施の形態においては、図14に示すように、可動反射板13a,13bを移動させ、可動反射板13a,13b間の距離Lを可変のものとした。このようにすることにより、任意の周波数での共振が可能になる。試料1の放電特性により、ある周波数帯の電磁波が強く放出される場合、それに適した周波数感度のアンテナ6にし、その周波数で共振が起こるように、可動反射板13a,13b間の間隔Lを位置制御部14により調整する。例えば、1GHzで共振させたい場合、Lを15cmの倍数となるように調整すればよい。このように、共振させたい周波数に基づいて、Lの長さを予め計算しておき、その距離になるようにLを位置制御部14で調整することにより、電磁波の共振を利用する場合に、その測定周波数として、X線遮蔽筐体7の寸法に依存せずに、任意の周波数を使用可能とすることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態8に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態8においては、次のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施の形態8による方法は、可動反射板13により反射板間距離Lを可変とすることで任意の周波数の共振を起こせるものであり、実施の形態5に記載のような可動反射板13を試料1に近づけることでの反射波の受信効果を向上させるものとは異なる特徴であるが、可動反射板13による位置移動により、これらのいずれの効果も選択的に利用可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1 試料、2 試料台、3 高電圧電源、4 X線発生部、5 X線、6,6a,6b,6c アンテナ、7 X線遮蔽筐体、8 X線制御部、9 部分放電検出器、10 測定制御部、11 電磁波、12,12a,12b,12c,12d 電磁波反射板、13,13a,13b,13c,13d 可動反射板、14 位置制御部。
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体装置の絶縁欠陥検出装置に関し、特に、パワーモジュール等の高電圧機器の絶縁欠陥の検出を行うための半導体装置の絶縁欠陥検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーの効率的利用のための装置としてパワーモジュールの需要が高まっている。パワーモジュールには高い絶縁信頼性が要求され、出荷前に絶縁検査が実施されるが、長期間の電圧印加により、初期には検出されなかった部分放電が生じることがある。その理由としては、欠陥中に部分放電が発生するには初期電子が必要であるが、微小欠陥の場合、初期電子が供給されにくいため、出荷前の検査では検出されない可能性が高いためである。そのため、製品の長期信頼性を確保するために、初期の検査時に短時間で絶縁検査が実施できることが求められる。
【0003】
従来の検査方法には、X線を照射することで欠陥部に初期電子を供給して短時間に検査する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9‐105766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のような従来の検査方法で用いられる欠陥検査装置は、部分放電測定装置とX線照射装置により構成され、部分放電測定装置の測定系が電源と繋がる回路に組み込まれ、試料に直接接続して電流パルスを検出する方式であるため、欠陥が微小なものである場合には、放電電荷量が小さいので、検出できない場合があり、高感度な測定を行うことができないという問題点があった。
【0006】
また、SiCチップ搭載モジュールなどで、絶縁構造が小型化する試料内部では、問題となる欠陥がより微小なものとなり、さらに放電電荷量が小さく、その結果、より検出されにくくなるため、さらなる高感度な測定が求められるという問題点があった。
【0007】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、電磁波検出による部分放電測定方式により、長期的な電圧印加を必要とせずに、短時間で高精度の検出が可能な半導体装置の絶縁欠陥検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、絶縁欠陥の検出対象である試料に対して電圧を印加する電圧印加手段と、前記試料に対してX線を照射するX線照射手段と、アンテナを有し、前記電圧の印加および前記X線の照射を行ったときに、前記試料内部の部分放電から発せられる電磁波を前記アンテナにより検出する部分放電測定手段と、前記検出を行うときに前記試料を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射することが可能なX線遮蔽筐体とを備え、前記部分放電から発せられる前記電磁波の検出結果に基づいて、前記試料の絶縁欠陥の有無を検出することを特徴とする半導体装置の絶縁欠陥検出装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、絶縁欠陥の検出対象である試料に対して電圧を印加する電圧印加手段と、前記試料に対してX線を照射するX線照射手段と、アンテナを有し、前記電圧の印加および前記X線の照射を行ったときに、前記試料内部の部分放電から発せられる電磁波を前記アンテナにより検出する部分放電測定手段と、前記検出を行うときに前記試料を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射することが可能なX線遮蔽筐体とを備え、前記部分放電から発せられる前記電磁波の検出結果に基づいて、前記試料の絶縁欠陥の有無を検出することを特徴とする半導体装置の絶縁欠陥検出装置であるので、電磁波検出による部分放電測定方式により、長期的な電圧印加を必要とせずに、短時間で高精度の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の装置構成を示す構成図である。
【図2】X線照射時および未照射時の部分放電電荷量と部分放電開始電圧との関係をグラフで示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の実施手順を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における各アンテナの配置の位置関係を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における筐体壁面での電磁波の反射波をアンテナで測定することを示す側断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置におけるX線遮蔽筐体内部の電磁波反射用金属板の配置を示す側断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における装置筐体内部の寸法について示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置における共振時のアンテナの配置を示す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態5に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板を追加した装置構成を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板による反射の効果を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板によるX線反射による試料へのX線照射を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の可動反射板の角度変更によるX線反射による試料へのX線照射を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態7に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の反射板を曲面状にすることによる電磁波の反射波をアンテナで測定することを示す図である。
【図14】この発明の実施の形態8に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の反射板間距離によって電磁波共振周波数が変化することについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に関わる装置構成を示す図である。図1において、1は、絶縁欠陥の検出対象である試料であり、2は、試料1を載置させるための電磁波が透過できる誘電体で形成された試料台である。3は、試料1に電圧が印加するための高電圧電源であり、4は、試料台2の上方に設けられ、試料1に対してX線5を照射するためのX線発生部である。6は、試料1の内部の部分放電から発せられる電磁波信号を検出するためのアンテナである。アンテナ6は、単数設けてもよいが、図1に示すように、複数個(アンテナ6a,6b)設けるようにしてもよい。7は、X線が遮蔽できる鉛板で構成されたX線遮蔽筐体であり、試料1、試料台2、X線発生部4、および、アンテナ6を内部に収納し、X線発生部4からのX線5を外部に放射させないためのものである。また、X線遮蔽筐体7の内壁は電磁波を反射する。8は、X線発生部4の動作を制御するX線制御部、9は、アンテナ6で検出した電磁波信号に基づいて部分放電の発生を検出するための部分放電検出器である。10は、高電圧電源3、X線制御部8、および、部分放電検出器9の動作を制御する測定制御部である。
【0012】
当該構成において、試料1は試料台2に載せられ、高電圧電源3により試料1に電圧が印加されて、X線発生部4から試料1に対してX線5が照射される。このとき、試料1内部の部分放電から発せられる電磁波信号をアンテナ6により検出する。電磁波信号が検出されなければ、絶縁欠陥が試料1に無いと判定され、逆に、電磁波信号が検出された場合は、絶縁欠陥が試料1にあると判定される。
【0013】
このとき、アンテナ6は平板アンテナを用いる。平板アンテナの場合、装置内部に設置しやすいことや、指向性があるが、感度が良い利点などがある。アンテナ6は、試料1の方向へ向けるようにし、測定感度を向上させるため、複数箇所に配置する。図1の例では、アンテナ6aを試料台2の下方に設置し、アンテナ6bを試料台2の側方に設置している。当然、アンテナ6は多いほど測定感度は向上するが、試料1とX線発生部4との間に設置すると、試料1へのX線照射の妨げとなるので、試料1とX線発生部4との間に設置することは避けるようにする。また、このとき、試料台2の下に設置する場合、アンテナ6と試料台2とを密着させると表面電界の変動によりうまく測定できなくなるため、図1のように、所定の隙間を開けるようにする。このとき、試料1から電磁波が放射されると、アンテナ6へ向かって放射される電磁波は勿論のこと、アンテナ6のない方向へ放射された電磁波も、X線遮蔽筐体7の壁面での反射により、その反射波もアンテナ6により測定することができ、結果として測定感度を向上させることができる。また、アンテナの検出周波数は、ノイズの影響の受けにくい高周波(数百MHz〜数GHz)となるようにする。また、X線5を照射する方向は、図1のように、試料1の上方からでなくても、下方からや、横からでも良い。
【0014】
試料1内に発生した絶縁欠陥部にX線5が照射されると、欠陥内部に初期電子が誘起されるため、放電が発生しやすくなり、図2に示すように、X線未照射時に比べて部分放電開始電圧が低下する。ただし、X線5を照射しない場合でも、長時間の電圧印加により、欠陥部に電荷が供給され、X線5の照射時と同等の放電開始電圧となり得る。つまり、X線5を照射して測定することで、長時間の電圧印加と同等の効果が得られ、短時間に長期信頼性の評価を行うことができる。よって、この発明の絶縁欠陥検出装置を製造ラインに導入することで検査工程の時間を短縮できる。
【0015】
この発明の測定手順のフローチャートを図3に示す。まず、試料1を試料台2に載せて、高電圧電源3に接続し、試験電圧を印加する(ステップS1)。続いて、X線発生部4によりX線5を試料1に照射する(ステップS2)。次に、当該照射の結果、部分放電がアンテナ6により検出されたか否かを部分放電検出器9により判定する(ステップS3)。部分放電が検出されれば、試料1に絶縁欠陥があると判定されて、NG品(不合格品)となり(ステップS4)、検出されなければ、試料1に絶縁欠陥が無いと判定されて、OK品(合格品)ということになる(ステップS5)。放電の判定後、高電圧電源3による電圧印加を停止する(ステップS6)とともに、X線発生部4によるX線照射を停止する(ステップS7)ことで検査が終了する。この一連の流れを、高電圧電源3とX線制御部8と部分放電検出器9を測定制御部10にて一括して制御することで、検査の自動化が可能となる。
【0016】
この欠陥検出方法によりパワーモジュール等の機器の絶縁信頼性の評価を実施できる。ここでいうパワーモジュールとは、SiおよびSiCチップ等全てのチップを搭載したシリコーンゲル封止の高電圧機種、エポキシ樹脂のトランスファー成型によるモールド型モジュール等全てのモジュールに対応可能であることは言うまでも無い。
【0017】
以上のように、本実施の形態1に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置は、X線照射と部分放電測定によって絶縁欠陥を検出する装置であって、試料1に対して電圧を印加する高電圧電源3から構成される電圧印加手段と、試料1内部の部分放電から発する電磁波を検出するアンテナ6と部分放電検出器9とから構成される部分放電測定手段と、X線5を試料1に照射するX線発生部4から構成されるX線照射手段と、測定時に試料1を内部に収納するX線遮蔽筐体7とを備えるようにしたので、X線照射による初期電子供給によって長期的な電圧印加を必要とせずに絶縁欠陥検査を精度高く実施することができる。また、放電の電磁波をアンテナ6により検出する方式であるため、X線遮蔽筐体7を利用して電磁波の反射波も測定するようにしたことで、アンテナ6が設置されていない方向に放射された電磁波も反射波により検出できることによって測定感度が向上し、検出精度を向上させることができる。
【0018】
実施の形態2.
本実施の形態においては、上述の実施の形態1で説明した構成において、さらに、指向性のあるアンテナ6を、図4に示すように、試料1の下方および側方2ケ所の計3箇所にそれぞれ互いに直交するように置く。また、アンテナ6の向きは、それぞれ、試料1を挟んだ反対側のX線遮蔽筐体7の壁面の正面に向く様に配置する。すなわち、図4の構成は、図1の構成に、さらに、アンテナ6cを追加した構成となる。他の構成については、図1と同じであるため、図1を参照することとし、ここでは、その説明および図示を省略する。
【0019】
当該構成において、部分放電が発生すると、図5に示すように、アンテナ6の無い方向に向かって試料1から放射された電磁波は、X線遮蔽筐体7の壁面(内壁)で反射することによりアンテナ6の正面に戻ってくるので、当該反射波をアンテナ6で検出することから、検出することができる。また、1回の反射では角度的にアンテナ6で検出できなくとも、X線遮蔽筐体7の壁面での反射を繰り返すことで、直交する3箇所のいずれかのアンテナ6で検出でき、アンテナ6を4箇所以上に配置した場合と近い効果が得られる。
【0020】
具体的には、アンテナ6aは、基本的にX線遮蔽筐体7の天井(上内壁)で反射された電磁波の反射波を検出し、アンテナ6b,6cは、基本的にX線遮蔽筐体7の側壁(側内壁)で反射された電磁波の反射波を検出する。但し、これだけでなく、各アンテナ6a〜6cは、上述したように、1回の反射では角度的に検出できなかった反射波についても、X線遮蔽筐体7の壁面で繰り返し反射された反射波についても検出可能なものはすべて検出する。
【0021】
ただし、アンテナ6は平板アンテナでなくとも、指向性の低いロッドアンテナ等でもよいが、その場合、複数箇所に設置する必要性が低い代わりに感度は小さくなる。
【0022】
以上のように、本実施の形態2に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態2においては、指向性のあるアンテナ6を複数個使用し、アンテナ6の方向を試料1を挟んだ反対側のX線遮蔽筐体7の壁面の正面を向くように設置するようにして、壁面に直交する方向へ向けるようにしたので、アンテナ6から見て試料1を挟んだ反対側のX線遮蔽筐体7の壁面へ向かって放射された電磁波の反射波を、効率良く検出することができるという効果が得られる。
【0023】
実施の形態3.
本実施の形態においては、上述の実施の形態1で説明した構成において、さらに、図6に示すように、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に、鉛板よりも導電率の高い銅板から構成された電磁波反射用金属板12(12a〜12d)を電磁波反射板として取り付ける。このとき、銅板の表面は反射率を高めるために、凹凸のない滑らかな状態のものを使用する。これにより、反射波の強度が増加し、測定感度が向上する。すなわち、図6の構成は、図1の構成に、さらに、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に取り付けた金属板12を追加した構成となる。他の構成については、図1と同じであるため、図1を参照することとし、ここでは、その説明および図示を省略する。
【0024】
なお、図6においては、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に電磁波反射用金属板12を4枚取り付けたように示してあるが、これは、図示の関係によるもので、実際には、X線遮蔽筐体7の6つの内側の壁面のすべてに取り付けられている。なお、必ずしも、6面すべてに取り付けなくてもよいが、反射率向上および測定感度向上を考慮すれば、6面すべてに取り付けることが望ましい。また、金属板12は、X線遮蔽筐体7の内側の壁面全面に必ずしも設けなくてもよいが、壁面全面に設けることが望ましい。
【0025】
以上のように、本実施の形態3に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態3においては、X線遮蔽筐体7の内側の壁面に、電磁波の反射率の高い金属板12を設置するようにしたので、筐体壁面の電磁波の反射率を向上させることで、測定感度が向上するという効果が得られる。
【0026】
実施の形態4.
本実施の形態においては、上述の実施の形態1で説明した構成において、さらに、アンテナ6の検出周波数が、X線遮蔽筐体7の内部で起こる電磁波11の共振周波数となるように、壁面間の各幅を調整して測定することで、検出感度を向上させるようにした。X線遮蔽筐体7を直方体としたとき、共振周波数fとX線遮蔽筐体7の内部空間の寸法(図7の、高さ:a、幅:b、奥行き:d)との間に以下の式(1)が成り立つように、X線遮蔽筐体7の内部空間の寸法(図7の、高さ:a、幅:b、奥行き:d)を調整する。ここで、cは光速度、m、n、sは0以上の整数である。
【0027】
【数1】
【0028】
このとき、アンテナ6の位置は、定在波の振幅の大きくなる位置に配置するようにする。
【0029】
ここで単純な形として、n=s=0として式(1)を展開すると、電磁波の波長をλとしたとき、a=(λ/2)×mとなり、aは電磁波の半波長の整数倍となる。例えば、周波数を1GHzとすると、λ/2=15cmとなるので、aを15cmの整数倍とすれば、a方向で共振する電磁波を検出することができる。
【0030】
このとき、定在波の位置により電界の振幅が異なるので、アンテナ6は、図8に示すアンテナ6aのように、電界の振幅が0となる定在波の節に設置しないようにし、アンテナ6bのように、電界の振幅が確保できる定在波の腹に設置して測定する。
【0031】
以上のように、本実施の形態4に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態4においては、図7に示すように、アンテナ6の検出周波数が、X線遮蔽筐体7の内部寸法(図7の、高さ:a、幅:b、奥行き:d)に依存して共振する電磁波の共振周波数となるように、X線遮蔽筐体7の内部寸法を調整(すなわち、そのような寸法に設計)して、X線遮蔽筐体7内部の電磁波の共振周波数を測定することで、検出感度を向上させることができるという効果が得られる。また、定在波の節では電界の振幅は0であり、その付近にアンテナを設置すると十分に測定することができないため、本実施の形態4においては、共振する電磁波を測定する際、アンテナは定在波の節付近以外の場所に設置するようにしたので、十分に電磁波の測定を行うことが可能となるという効果が得られる。
【0032】
実施の形態5.
図9は、図1の構成に加えて、位置の移動が可能な可動反射板13を設置した構成を示している。可動反射板13は、一対の可動反射板13a,13bから構成されている。また、図9においては、可動反射板13a,13bの位置を制御するための位置制御部14が設けられている。位置制御部14は、X線遮蔽筐体7の外部に設置されている。また、図1においては、アンテナ6として、アンテナ6a,6bの2つのアンテナが設けられていたが、図9においては、アンテナ6のみの1個のアンテナが設けられている。しかしながら、これに限定されるものではなく、可動反射板13a,13bの移動を妨げない位置であれば、アンテナを複数個設けてもよく、適宜必要な個数を設置するようにすればよい。また、図9の構成においては、アンテナ6の位置移動も可能としている。従って、可動反射板13a,13b、およびアンテナ6の位置は、位置制御部14で筐体外部より制御する。位置制御部14の動作自体は、測定制御部10が制御する。以上が、図1と異なる点である。他の構成および動作については、図1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0033】
可動反射板13a,13bは、試料1の近傍で、かつ、試料1の側方の両側に、対向して設けられている。図9の例では、可動反射板13aがアンテナ6側に設けられている。ここで、可動反射板13a,13bを試料1の寸法に合わせてその近傍に設置することで、反射波のアンテナ6までの伝播距離を短くすることができる。このとき、反射板13a,13bが試料1近傍まで接近できるように、試料台2や配線が妨げにならないような配置・構造にし、アンテナ6と同じ側にある可動反射板13aを移動させる際には、反射板13aの移動の妨げとならないように、アンテナ6も同時に移動させる。可動反射板13a,13bは、位置制御部14により、それぞれ、別個に位置制御される。このとき、図10(a)のように、可動反射板13bが試料1と離れていると、可動反射板13bに対して斜めに入射した電磁波11の反射波がアンテナ6で受けられない場合がある。その場合には、図10(b)のように、可動反射板13bを試料1に接近させることで、同様に放射された電磁波11の反射波がアンテナ6で受けやすくなる。
【0034】
以上のように、本実施の形態5に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態5においては、設置位置の移動が可能な、電磁波を反射するための可動反射板13a,13bを設けて、それらに対して位置制御部14により位置制御を行って、試料1に反射板を近づけることを可能し、試料1近傍での反射板の設置を可能にしたので、当該反射板による反射波によって、アンテナ6の測定感度をより向上することができる。
【0035】
なお、上記の説明においては、可動反射板13a,13bが別個に位置制御される例を説明したが、その場合に限らず、位置制御部14により、2つを連動して同時に位置制御するようにしてもよい。また、別個に位置制御するか、連動させて位置制御するかを、適宜選択できる構成にしてもよい。
【0036】
また、上記の説明においては、可動反射板13を2つ設ける例について説明したが、その場合に限らず、1つだけ設けてもよく、あるいは、3つ以上設けてもよい。また、それら全てを可動にしてもよいが、一部だけを可動にし、他は固定の反射板としてもよい。さらに、固定の反射板を取り外し可能なものに設計しておき、必要に応じて、取りつけて用いるようにしてもよい。
【0037】
実施の形態6.
図11は、本実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の構成を示した部分構成図である。図11においては、可動反射板によるX線反射による試料へのX線照射を示している。なお、図11においては、試料1、試料台2、X線発生部4,可動反射板13a,13bのみが記載されており、他の構成は図示が省略されているが、記載されていない他の構成については、図9と同じ構成であるため、図9を参照することとし、ここではその説明を省略する。
【0038】
本実施の形態においては、図11に示すように、X線発生部4から照射されるX線5が放射状に広がるように、X線発生部4がX線5を放射する構成とし、X線5の照射範囲内に可動反射板13の反射面がちょうど入る位置関係となるよう、X線5の照射角θとX線発生部4のX線源と試料1との距離d2に合わせて、試料1と反射板13a,13bとの距離d1を短くするように、位置制御部14により調整する。望ましくは、可動反射板13の反射面が、可動反射板13が移動しても、常に、X線5の照射範囲内に入るように、可動反射板13の移動範囲を決定して、可動反射板13を設置する。可動反射板13a,13bに入射したX線5は、そのエネルギーに応じて反射板13a,13bを透過するが、その一部は散乱によって試料1の方向へと反射される。一般にX線エネルギーが低いものほど、反射しやすい。この散乱によって照射されるX線は、X線発生部4から直接照射されるX線とは異なる方向から試料1へと照射される。
【0039】
以上のような方法を用いると、例えば試料1内部にX線の照射を妨げる銅などの配線があり、試料1内部に有効にX線が照射されない箇所がある場合でも、別方向からのX線によりその箇所へも照射させることができる。
【0040】
X線の散乱については、入射方向の前方と後方に散乱しやすい性質があり、また、可動反射板13a,13b内部で散乱されたX線は減衰の影響で、可動反射板13a,13bの反射面の法線方向へ出やすい。したがって、図12のように、可動反射板13a,13bの設置角度も可変とし、可動反射板13a,13bへのX線5の入射角φを大きくすれば、より有効に反射X線を試料1に照射することができるため、角度変更によりX線照射の最適状態を調整できる。なお、この角度制御については、位置制御部14が行うこととすればよい。
【0041】
なお、可動反射板13a,13bでのX線の反射成分は、後方散乱によるものである。したがって、後方散乱線の強度を大きくするため、可動反射板13は後方散乱の起こりやすい金属(アルミニウム等)を用い、その金属およびX線エネルギーに応じた飽和後方散乱となる厚み以上となるようにすることで、試料1へより有効にX線照射させることができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態6に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態6においては、設置位置および設置角度が可変な可動反射板13a,13bを設けて、可動反射板13a,13bによる散乱によって試料1の方向へとX線5を反射するようにしたので、X線発生部4から直接試料1に照射されるX線とは異なる方向から試料1へとX線を照射できるようになったため、例えば試料1内部にX線の照射を妨げる銅などの配線があり、試料1内部に有効にX線が照射されない箇所がある場合でも、別方向からのX線によりその箇所へも照射させることができる。これにより、試料内の障害物によってX線が照射されにくい箇所へも照射することができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、X線5はX線発生部4より放射状に拡がるように照射するようにし、かつ、移動制御部14の制御により、可動反射板13a,13bを、X線発生部4によるX線照射の範囲内に入る位置関係となるように設置することを可能としたので、可動反射板13a,13bへ当たったX線を試料1に向けて確実に散乱(反射)することができるため、X線発生部4からの照射方向とは別方向から試料1に対して確実に照射することができ、試料1内の障害物によってX線が照射されにくい箇所へも照射することができ、測定感度がより向上し、検出精度をより向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態においては、可動反射板13a,13bは、X線5の後方散乱が大きくなる特性の金属で、かつ、厚みのある板から構成するようにしたので、後方散乱線の強度を大きくでき、試料1へより有効にX線照射させることができるため、X線散乱の効果をより高めることができる。
【0045】
実施の形態7.
図13は、本実施の形態7に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の構成を示した部分構成図である。図13においては、試料1から放射される電磁波11が可動反射板13に対して斜めに入射した場合の反射波を示している。図13(a)が可動反射板13が平面状の場合で、図13(b)が曲面状の場合である。なお、図13においては、試料1、試料台2、アンテナ6、可動反射板13のみが記載されており、他の構成は図示が省略されているが、記載されていない他の構成については、図9と同じ構成であるため、図9を参照することとし、ここではその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態においては、図13(a)に示すように、可動反射板13が平面状の場合、試料1から放射される電磁波11が可動反射板13a,13bに対して斜めに入射する場合が考えられる。その場合には、当該電磁波11が可動反射板13a,13bで反射した反射波を、アンテナ6で有効に受けることができない場合がある。そこで、本実施の形態においては、図13(b)に示すように、可動反射板13を曲面状にして、また、可動反射板13c,13dの位置もそれに合うように位置制御部14で制御して、試料1からの電磁波11がアンテナ6の方向へと有効に反射できるようにすることで、検出感度を向上させることができる。なお、当然ながら、可動反射板13c,13dは、図13(b)に示すように、曲面のうちの凹面の方が試料1に面しており、凸面の方が外側に面している。こうすることにより、電磁波11が可動反射板13で反射した反射波をアンテナ6へ向けて効率よく収束させることができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態7に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態7においては、可動反射板13c,13dを曲面状にして、電磁波の反射波をアンテナ6へ向けて収束できるようにしたので、反射波をアンテナ6方向へ集中させることができ、感度がより向上する。
【0048】
実施の形態8.
図14は、本実施の形態8に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置の構成を示した部分構成図である。図14においては、筐体内部でおこる電磁波1の共振周波数を利用した場合を示している。なお、図14においては、試料1、試料台2、アンテナ6、可動反射板13のみが記載されており、他の構成は図示が省略されているが、記載されていない他の構成については、図9と同じ構成であるため、図9を参照することとし、ここではその説明を省略する。
【0049】
上述した実施の形態4のようにして電磁波の共振を利用する場合、その測定周波数はX線遮蔽筐体7の寸法に依存するため、使用可能な周波数は限られる。そこで、本実施の形態においては、図14に示すように、可動反射板13a,13bを移動させ、可動反射板13a,13b間の距離Lを可変のものとした。このようにすることにより、任意の周波数での共振が可能になる。試料1の放電特性により、ある周波数帯の電磁波が強く放出される場合、それに適した周波数感度のアンテナ6にし、その周波数で共振が起こるように、可動反射板13a,13b間の間隔Lを位置制御部14により調整する。例えば、1GHzで共振させたい場合、Lを15cmの倍数となるように調整すればよい。このように、共振させたい周波数に基づいて、Lの長さを予め計算しておき、その距離になるようにLを位置制御部14で調整することにより、電磁波の共振を利用する場合に、その測定周波数として、X線遮蔽筐体7の寸法に依存せずに、任意の周波数を使用可能とすることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態8に係る半導体装置の絶縁欠陥検出装置によれば、上述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態8においては、次のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施の形態8による方法は、可動反射板13により反射板間距離Lを可変とすることで任意の周波数の共振を起こせるものであり、実施の形態5に記載のような可動反射板13を試料1に近づけることでの反射波の受信効果を向上させるものとは異なる特徴であるが、可動反射板13による位置移動により、これらのいずれの効果も選択的に利用可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1 試料、2 試料台、3 高電圧電源、4 X線発生部、5 X線、6,6a,6b,6c アンテナ、7 X線遮蔽筐体、8 X線制御部、9 部分放電検出器、10 測定制御部、11 電磁波、12,12a,12b,12c,12d 電磁波反射板、13,13a,13b,13c,13d 可動反射板、14 位置制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁欠陥の検出対象である試料に対して電圧を印加する電圧印加手段と、
前記試料に対してX線を照射するX線照射手段と、
アンテナを有し、前記電圧の印加および前記X線の照射を行ったときに、前記試料内部の部分放電から発せられる電磁波を前記アンテナにより検出する部分放電測定手段と、
前記検出を行うときに前記試料を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射することが可能なX線遮蔽筐体と
を備え、
前記部分放電から発せられる前記電磁波の検出結果に基づいて、前記試料の絶縁欠陥の有無を検出する
ことを特徴とする半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項2】
前記アンテナとして指向性のあるアンテナを使用し、前記アンテナの向きを、前記試料を挟んで反対側の前記X線遮蔽筐体の内側の壁面の方向に向くように設置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項3】
前記X線遮蔽筐体の内側の壁面に、電磁波の反射率の高い金属板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項4】
前記アンテナの検出周波数が、前記X線遮蔽筐体の内部寸法に依存して共振する電磁波の周波数となるように、前記X線遮蔽筐体の内部寸法を調整することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項5】
前記共振する電磁波を測定する際、前記アンテナは、電磁波の定在波の節付近以外の場所に設置することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項6】
前記X線遮蔽筐体内に移動可能に設置された、電磁波を反射させるための可動反射板と、
前記可動反射板の位置を制御する位置制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項7】
前記X線照射手段は、前記X線が放射状に拡がるように照射し、
前記可動反射板は、前記X線の照射範囲内にその反射面が入る位置関係に設置されている
ことを特徴とする請求項1または6に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項8】
前記可動反射板は、X線の後方散乱が起こりやすい特性の金属から構成されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項9】
前記可動反射板は、反射させた前記電磁波が前記アンテナへ向けて収束するように、曲面状に構成されていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項10】
前記アンテナの検出周波数は任意に変更可能のものとし、
前記可動反射板間の距離を変更して前記電磁波を共振させて測定することを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項1】
絶縁欠陥の検出対象である試料に対して電圧を印加する電圧印加手段と、
前記試料に対してX線を照射するX線照射手段と、
アンテナを有し、前記電圧の印加および前記X線の照射を行ったときに、前記試料内部の部分放電から発せられる電磁波を前記アンテナにより検出する部分放電測定手段と、
前記検出を行うときに前記試料を収納するとともに、内側の壁面が電磁波を反射することが可能なX線遮蔽筐体と
を備え、
前記部分放電から発せられる前記電磁波の検出結果に基づいて、前記試料の絶縁欠陥の有無を検出する
ことを特徴とする半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項2】
前記アンテナとして指向性のあるアンテナを使用し、前記アンテナの向きを、前記試料を挟んで反対側の前記X線遮蔽筐体の内側の壁面の方向に向くように設置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項3】
前記X線遮蔽筐体の内側の壁面に、電磁波の反射率の高い金属板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項4】
前記アンテナの検出周波数が、前記X線遮蔽筐体の内部寸法に依存して共振する電磁波の周波数となるように、前記X線遮蔽筐体の内部寸法を調整することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項5】
前記共振する電磁波を測定する際、前記アンテナは、電磁波の定在波の節付近以外の場所に設置することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項6】
前記X線遮蔽筐体内に移動可能に設置された、電磁波を反射させるための可動反射板と、
前記可動反射板の位置を制御する位置制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項7】
前記X線照射手段は、前記X線が放射状に拡がるように照射し、
前記可動反射板は、前記X線の照射範囲内にその反射面が入る位置関係に設置されている
ことを特徴とする請求項1または6に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項8】
前記可動反射板は、X線の後方散乱が起こりやすい特性の金属から構成されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項9】
前記可動反射板は、反射させた前記電磁波が前記アンテナへ向けて収束するように、曲面状に構成されていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【請求項10】
前記アンテナの検出周波数は任意に変更可能のものとし、
前記可動反射板間の距離を変更して前記電磁波を共振させて測定することを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の絶縁欠陥検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−209266(P2011−209266A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266251(P2010−266251)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]