説明

半導体装置の裏面解析用搭載式レンズ及び裏面解析方法

【課題】半導体基板裏面に形成された基板一体型SILの実効半径を大きくすることが可能な裏面解析用搭載型レンズ又は裏面解析方法を提供すること。
【解決手段】半導体装置(2)の基板裏面(2b)に形成した半球状の基板一体型SIL(2c)の上に搭載して使用するための裏面解析用搭載式レンズ(1)である。この裏面解析用搭載式レンズは、中実の球体の一部を1つの平面で切除した残部の形状を含み、該切除面(1b)にさらに半球状の凹み(1c)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の裏面解析用搭載式レンズと、そのレンズを用いた解析方法に関し、特に半導体装置の故障解析において、裏面解析の高分解能化を目的として、半導体装置の基板裏面に形成した半球状の基板一体型SILの上に搭載して使用するための、裏面解析用搭載式レンズとそれを用いる裏面解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の多層配線化に伴い、半導体装置に形成された構造の故障解析は、半導体基板を透過する赤外光を利用して、半導体チップの裏面から故障箇所を特定する、裏面解析手法(裏面エミッション解析、裏面OBIRCH解析等)が主流となっている。ところが、赤外光は、半導体装置の加工に利用される紫外線に比べ、波長が長い為、微細化された半導体装置の裏面解析では、分解能が不足するという問題がある。これに対し、半導体基板の高い屈折率を利用して紫外線並みの分解能を得る、固体浸レンズ(Solid Immersion Lens、SIL)を用いた裏面解析が行われている。
【0003】
裏面解析用の固体浸レンズには、大別して、基板一体型SIL(特許文献1)、基板搭載型SIL(特許文献2)、対物レンズ一体型SIL(特許文献3、特許文献4)の3種類がある。
【0004】
基板一体型SILは、半導体基板に固体浸レンズを作り込むものであり、視野移動が出来ないが、固体浸レンズ/基板界面の問題が発生しない為、確実に高分解能効果が得られる。
【0005】
基板搭載型SILは、基板に載せた固体浸レンズを透して解析を行うもので、搭載位置を調整することで視野移動ができるが、固体浸レンズ/基板界面で分解能が制限される。
【0006】
対物レンズ一体型SILは、対物レンズに固定した固体浸レンズを基板に押し付けて解析するもので、視野移動が容易になる上、対物レンズによる圧着効果で固体浸レンズ/基板界面の密着性を高めることができるが、基板裏面の平坦性や異物の有無等に依存して隙間ができる為、確実に高分解能効果を得ることは難しい。
【0007】
基板搭載型SILや対物レンズ一体型SILでは、固体浸レンズと基板の間に油等の高屈折率液体を充填することにより、固体浸レンズ/基板界面に起因する分解能低下を抑えることもできるが、半導体基板と同等の屈折率を持つ液体が無い為、分解能は基板一体型SILより劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3602465号公報
【特許文献2】特公平7-18806号公報
【特許文献3】国際公開第2004/088386号
【特許文献4】国際公開第2005/043214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
基板一体型SILは、図8に示すように、半導体基板2を半球状に加工して、半導体基板の裏面2bに固体浸レンズ2cを作り込む為、固体浸レンズ2cの半径rは基板厚dで制限される。即ち、図9の半球型SILでは、r<d、図10のワイエルシュトラス(Weierstrass)球型(超半球型)SILでは、半導体基板の屈折率をnとして、(1+1/n)・r<dとなる。ここでは、半球型SILとWeierstrass球型SILを含めて半球状SILという。
【0010】
近年、半導体装置の小型化が進み、半導体チップを薄く研削して実装するパッケージが多くなっていることから、このような半導体装置に基板一体型SILを形成して裏面解析を行う場合、基板厚の制限により、固体浸レンズの半径は少なくとも200μm以下に抑える必要がある。
【0011】
一方、固体浸レンズでは、収差に起因して視野が制限される。これは、光軸周りでは収差が小さく抑えられるが、光軸から離れるに従って、収差が増大する為である。図7は、シリコン(n=3.5)の基板一体型SILについて、この様子をシミュレーションしたものであり、曲線(3)、(4)は、各々、厚さ700〜900μm以上の厚い基板を想定した半球型SILとWeierstrass球型SILの収差特性、曲線(5)、(6)は、各々、厚さ200μm程度の薄い基板を想定した半球型SILとWeierstrass球型SILの収差特性を示している。
【0012】
図7において、縦軸は、対物レンズで検出可能な有効回折角に対する最大収差(単位:μm)を示し、横軸は、観察面上の光軸からの距離(単位:μm)を示している。この最大収差の値が分解能以下であれば、収差は分解能に全く影響しない。最大収差が分解能を越えると、収差が分解能に影響し始めるが、収差が分解能以下の光の寄与が大きい内は、高分解能での解析は可能である。但し、収差は回折角に対し連続的に変化することから、最大収差が大きくなるほど、収差は分解能に大きく影響するようになるので、光軸からの距離が同じ位置で比較した場合、最大収差が大きいほど、高分解能解析が可能な視野は狭くなる。
【0013】
図7の曲線(3)、(4)は、基板一体型SILで高分解能解析が可能な視野が、700〜900μm厚基板の場合、直径50μm前後になることを示しているが、曲線(5)、(6)は、200μm厚基板になると、直径十数μmφまで狭くなることを示している。このような視野の縮小は、視野移動のできない基板一体型SILにとって、致命的となる場合があり、故障箇所を確実に視野内に捉える為、固体浸レンズの加工位置に高い精度が要求されることになる。又、エミッション解析で1箇所のように見える発光でも、固体浸レンズを透して解析すると、その周辺に弱い発光が検出される場合もある為、確実に故障箇所と断定できない段階では、周辺の発光有無も確認できるよう、視野は広いことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の裏面解析用搭載式レンズは、半導体装置の半導体基板裏面に形成された基板一体型SILの上を覆うように設置する搭載式レンズであり、基板一体型SILの実効半径を大きくする、即ち基板一体型のSILの視野を広げることが可能なものである。
【0015】
本発明の解析方法は、半導体装置の半導体基板裏面に形成した基板一体型SIL上に本発明の裏面解析用搭載式レンズを搭載し、視野を拡大することで、より広範囲の高分解能裏面解析を可能にするものである。
【0016】
本発明の第1の視点は、半導体装置の基板裏面に形成した半球状の基板一体型SILの上に搭載して使用するための裏面解析用搭載式レンズである。この裏面解析用搭載式レンズは、中実の球体の一部を1つの平面で切除した残部の形状を含み、該切除面にさらに半球状の凹みを有する。
【0017】
本明細書において、「中実の球体の一部を1つの平面で切除した残部の形状」とは、中実な球体を平面で2つに切断した、そのうちの1つの形状を意味する。また「半球状の凹み」とは、球面体の一部を構成するような形状を有する凹みを意味する。
【0018】
本発明の第2の視点は、半導体装置に形成された構造の故障を裏面から解析する、半導体装置の裏面解析方法である。これは、中実の球体の一部を1つの平面で切除して得られる形状であり、該切除面にさらに半球状の凹みを有する裏面解析用搭載式レンズを、半導体装置の基板裏面に形成した半球状の基板一体型SILの上に搭載して行う。さらに、該基板一体型SILの球面と、該半球状の凹みとが互いに平行な面を成すように配置して行う。
【発明の効果】
【0019】
上記構成を有する裏面解析用搭載型レンズ又は解析方法により、半導体基板裏面に形成された基板一体型SILの実効半径を大きくして観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1つの実施例(実施例1)に係る裏面解析用搭載式レンズを底面から見た斜視図である。
【図2】本発明の1つの実施例(実施例1)に係る裏面解析用搭載式レンズを半導体チップに搭載した場合の縦断面図である。
【図3】本発明の1つの実施例(実施例1)に係る裏面解析用搭載式レンズを半導体チップに搭載したときの光学的効果を説明する縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施例(実施例2)に係る裏面解析用搭載式レンズを底面から見た図である。
【図5】本発明の他の実施例(実施例2)に係る裏面解析用搭載式レンズを半導体チップに搭載した場合の縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施例(実施例2)に係る裏面解析用搭載式レンズを半導体チップに搭載したときの光学的効果を説明する縦断面図である。
【図7】従来技術の問題点、及び本発明の効果を説明する為の、固体浸レンズの収差特性図である。
【図8】従来技術に係る、半導体基板一体型SILの斜視図である。
【図9】従来技術に係る、半球型SILの縦断面図である。
【図10】従来技術に係る、ワイエルシュトラス(Weierstrass)球型SILの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい形態を以下に記載する。
【0022】
第1の視点において、前記切除面に形成された前記半球状の凹みの周囲に、凸状の段差が形成されていることが好ましい。
【0023】
また、前記凸状の段差の外形状は、前記半導体装置の基板の裏面に形成される前記基板一体型SILの周囲に形成される窪み(凹状部)の形状と相補的に対応していることが好ましい。通常は、前記基板一体型SILの周囲に形成される窪みが円柱状に切削されるので、凸状の段差もそれに相補的な形状となるように円柱状に形成する。
【0024】
また、前記裏面解析用搭載式レンズの中心が、前記半導体装置の基板の裏面に形成される前記基板一体型SILの中心上に来るように前記切除面を前記半導体装置の基板裏面に密着させた場合に、前記半球状凹みの球面中心が、該基板一体型SILの半球面の球面中心と一致するように形成されていることが好ましい。即ち、半球状凹みの球面と基板一体型SILの半球面の球面とは互いに平行面を形成する。
【0025】
また、屈折率がn、球面の半径がrである前記裏面解析用搭載式レンズの前記切除面を、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面からr/nの高さにあるように形成されていることが好ましい。
【0026】
また、前記裏面解析用搭載式レンズの前記切除面を、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面の位置にあるように形成されていることが好ましい。
【0027】
また、上記裏面解析用搭載式レンズは、可視光に対して透明である材質を用いることができる。また、シリコン又は酸化亜鉛を用いることができる。またシリコンよりも低い屈折率の材質でもよい。
【0028】
第2の視点において、屈折率がn、球面の半径がrである前記裏面解析用搭載式レンズが、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面からr/nの高さにあるように配置されることが好ましい。
【0029】
また、前記裏面解析用搭載式レンズが、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面の高さにあるように配置されることが好ましい。
【0030】
また、前記裏面解析用搭載式レンズと前記基板一体型SILの間に、高屈折率液体を充填して行うことが好ましい。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る裏面解析用搭載式レンズ1は、図1に示す通り、中実の球体の一部を平面で切除した形状を有する。したがって表面1aが球面、切除面である底面1bが平坦で、半球状(本明細書では中実球体の一部を構成する形状を意味する)を成し、底面1bの中心にはさらに半球状(本明細書では球面の一部を構成する形状を意味する)の凹み1cが設けられている。(観察光の屈折に寄与しない、底面1bに近い表面1aは必ずしも球面でなくともよい。)
【0032】
この裏面解析用搭載式レンズ1は、図8に示すような基板一体型SILの上に搭載して使用し、使用時は、図2の断面図に示す構成となるように設計されている。基板一体型SILは、窪み(凹状部)の底面2eの中心部に形成されている。これは、半導体基板表面2aに形成されている集積回路の解析対象位置3付近を中心とし、半径がrの半導体半球2cとなるように、半導体基板2の裏面2bを削って加工されたものである。nは半導体基板の屈折率であり、nは裏面解析用搭載式レンズ1の半球状凹み1cと半導体半球2cの隙間空間の屈折率である。
【0033】
図2に示すように、裏面解析用搭載式レンズ1の表面1aは半径rの球面で、この裏面解析用搭載式レンズ1を厚さdの半導体基板2の裏面2bに搭載したとき、裏面解析用搭載式レンズ1の材質の屈折率をnとして、その球面中心が、半導体基板表面2aからr/nの高さに来るように設計している。更に、半球状凹み1cは、裏面解析用搭載式レンズ1の中心が基板一体型SILの中心上に来るように搭載されたとき、半導体半球2cの表面と平行な面を成すように設計されている。即ち、半球状凹み1cの半径rは、半導体半球2cの半径rより大きく、半球状凹み1cの球面中心と半導体半球2cの球面中心は一致している。
【0034】
以上のように裏面解析用搭載式レンズ1を搭載すると、図3に示すように、解析対象位置3付近からの回折光は、半導体半球2cと半球状凹み1cの両表面に対し、それぞれほぼ垂直方向に伝搬して行くことになるので、半導体半球2cと半球状凹み1cの間の空間は、分解能に殆ど影響しない。従って、半球状凹み1cを半導体半球2cに密着させることなく、裏面解析用搭載式レンズ1を透して、基板一体型SILと同等の分解能を得ることができる。
【0035】
一方、裏面解析用搭載式レンズ1の表面1aは、解析対象位置3付近に対し、Weierstrass球型SILを構成する為、図3に示すように、低い開口数の対物レンズ4でも、解析対象位置3付近を高い開口数で観察することが可能となる。即ち、この裏面解析用搭載式レンズ1には、基板厚dで制限される半径rの半球型SILを、基板厚dに制限されない半径rのWeierstrass球型SILに変換する効果があり、固体浸レンズの半径が拡張されることにより、視野を拡大することが可能となる。
【0036】
図7は、シリコン(屈折率n=3.5)の基板一体型SILについて、この様子をシミュレーションしたものであり、曲線(5)は、厚さ200μm程度の薄い基板を想定した半球型SILの収差特性、曲線(1)、(2)は、曲線(5)に対応する半球型SILに、半径rが700μmの第1の実施例の裏面解析用搭載式レンズを搭載した場合の収差特性を示している。曲線(3)、(4)は、各々、厚さ700〜900μm以上の厚い基板を想定した半球型SILとWeierstrass球型SILの収差特性を示しており、曲線(1)、(2)は、何れも、曲線(3)、(4)と同等以上の視野が得られることを示している。
【0037】
尚、曲線(1)は、シリコン(屈折率n=3.5)製の裏面解析用搭載式レンズ、曲線(2)は、酸化亜鉛(屈折率n=2)製の裏面解析用搭載式レンズの場合を、各々示しており、シリコン基板と異なる屈折率の裏面解析用搭載式レンズでも、同等の視野拡大効果が得られる。従って、裏面解析用搭載式レンズ1は、必ずしも、半導体基板2と同じ材質である必要はない。
【0038】
なお実際の解析にあたっては、本発明に係る裏面解析用搭載式レンズ1を、あらかじめいくつかのパターンで製造しておき、解析が必要な半導体装置2の裏面2bに、用いる裏面解析用搭載式レンズ1との関係が上記構成となるように基板一体型SILを形成して、その上に裏面解析用搭載式レンズ1を搭載して観察することとなる。
【0039】
裏面解析用搭載式レンズの場合、観察倍率が裏面解析用搭載式レンズの屈折率で決まる為、基板一体型SILでは不可能な、観察倍率の調整が可能となる。即ち、シリコン製のWeierstrass球型SILでは、観察倍率が固体浸レンズを使用しない場合の約12倍にもなる為、対物レンズの倍率や解析対象の広さによっては、観察倍率が高くなり過ぎる場合も起こり得るが、シリコンより低い屈折率の材質を選定すると観察倍率を下げることができる。従って、屈折率の異なる裏面解析用搭載式レンズを複数用意しておけば、最適な観察倍率を選定して解析することも可能になる。
【0040】
実施例1の裏面解析用搭載式レンズを実際の裏面解析に適用する場合、まず解析対象となる半導体チップの裏面を鏡面仕上げ研磨することになるが、半導体チップの基板厚が、裏面解析用搭載式レンズの設計上で予め想定した基板厚と異なっていた場合は、鏡面仕上げ研磨の前に、想定した基板厚になるように研削する必要がある。このとき、半導体チップの基板厚を厚くすることはできない為、裏面解析用搭載式レンズは、想定される最も薄い基板に対応したものを、少なくとも1ヶを用意しておく必要があり、必要に応じて、これより厚い基板に対応したものも用意しておく。
【0041】
鏡面仕上げ研磨後、基板一体型SILの加工を行う位置を決める為、解析対象位置を絞り込む解析を行う。その後、基板裏面を加工して、その解析対象位置を球面中心とする基板一体型SILを形成し、基板一体型SILを透した裏面解析を行って、視野拡大の要否を検討する。基板一体型SILの形成位置のずれや、視野周辺の像の歪み具合から、視野拡大が必要と判断されたら、基板一体型SILの上に裏面解析用搭載式レンズを搭載する。
【0042】
このとき、図2の半導体半球2cと半球状凹み1cの間の空間に、油等の高屈折率液体を充填してもよい。半導体半球2cと半球状凹み1cの間の空間の屈折率nが大きくなれば、観察像が明るくなる上、発光解析の検出率も向上する。その後、最も鮮明な観察像が得られるように、裏面解析用搭載式レンズ1の搭載位置を調整する。観察像は、基板一体型SILの光軸と裏面解析用搭載式レンズ1の光軸が一致したとき、最も鮮明になるので、裏面解析用搭載式レンズ1を可視光に対して透明な材質で作成しておけば、顕微鏡下で直接観察しながら、基板一体型SILの頂部を裏面解析用搭載式レンズ1の中心に合せることができる為、位置合せが容易になる。
【0043】
(実施例2)
本発明の第2の実施例の裏面解析用搭載式レンズは、図4に示す通り、底面1bの中央に、底面1bから突出するように凸状の段差部1dが円柱状に形成されており、半球状の凹み1cは、この凸状段差部1d内に形成されている。
【0044】
基板一体型SILは、上述の通り、図8に示すように、半導体基板2の裏面2bを削って加工されたものである為、基板一体型SILの周辺に段差状の窪み2d(凹状部)が形成される。半導体半球2cと段差状の窪み2dの相対位置は、加工条件によって固定することができる。そのため、裏面解析用搭載式レンズ1の凸状段差部1dの幅(実施例2では直径)を段差状窪み2dの幅(実施例2では直径)よりやや狭く設計しておくことで、凸状段差部1dを、この段差状窪み2d内に確実に嵌るようにすることができる。従って、本発明の第2の実施例の裏面解析用搭載式レンズ1の底面の凸状段差部1dは、図5に示すように、第1の実施例の裏面解析用搭載式レンズ1より、半球状凹み1cを半導体半球2cへ接近させることができる。
【0045】
半球状凹み1cと半導体半球2cの隙間空間は、結像に寄与し得る回折角成分を減少させる為、像が暗くなる、発光検出率が低下するなどの弊害を発生させる。第1の実施例では、この隙間空間に油等の高屈折率液体を充填することで、これらの弊害を抑制したが、隙間空間を狭くすることでも、同様の効果が得られる。無論、隙間空間を狭くした上で、高屈折率液体を充填すれば、更に、弊害を抑制することができる。
【0046】
又、鮮明な観察像を得る為には、基板一体型SILの光軸と裏面解析用搭載式レンズ1の光軸が一致するように、裏面解析用搭載式レンズ1の搭載位置を調整する必要があり、第1の実施例では、可視光に対して透明な材質で作成するなどの工夫が必要であった。しかしながら、裏面解析用搭載式レンズ1の材質を可視光に対して透明な材質に限定することは、設計の自由度を下げることになり、最適設計を行う上で障害となる場合がある。第2の実施例では、裏面解析用搭載式レンズ1の底面1bの凸部を基板一体型SILの段差2dに嵌めて固定する為、両者が位置決めのガイドとして機能し、位置合わせが容易になる。
【0047】
(実施例3)
尚、図2の第1の実施例と、図5の第2の実施例は、裏面解析用搭載式レンズ1を厚さdの半導体基板2の裏面2bに搭載したとき、裏面解析用搭載式レンズ1の材質の屈折率をnとして、その球面中心が、半導体基板表面2aからr/nの高さに来るように設計していた。これは、裏面解析用搭載式レンズ1の表面1aが、解析対象位置3付近に対し、Weierstrass球型SILとして機能するようにしたものである。
【0048】
これを、球面中心が半導体基板表面2aの高さに来るように設計し、半球型SILとして機能させてもよい(図示せず)。この場合も、基板厚dで制限される半径rの半球型SILを、基板厚に制限されない半径rの半球型SILに変換することになるので、固体浸レンズの実効半径が拡張され、同様な視野拡大効果を得ることができる。
【0049】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施例ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1:裏面解析用搭載式レンズ
1a:裏面解析用搭載式レンズ表面
1b:裏面解析用搭載式レンズ裏面(切除面)
1c:半球状凹み
1d:凸状段差部
2:半導体基板
2a:半導体基板表面
2b:半導体基板裏面
2c:半導体半球(SIL)
2d:段差状の窪み(凹状部)
2e:段差状の窪みの底面
3:解析対象位置
4:対物レンズ
:裏面解析用搭載式レンズの半径
:半導体半球の半径
:裏面解析用搭載式レンズの半球状凹み半径
:裏面解析用搭載式レンズの屈折率
:半導体基板の屈折率
:裏面解析用搭載式レンズの球面凹みと半導体半球の隙間空間の屈折率
d:半導体基板の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の基板裏面に形成した半球状の基板一体型SILの上に搭載して使用するための裏面解析用搭載式レンズであって、中実の球体の一部を1つの平面で切除した残部の形状を含み、該切除面にさらに半球状の凹みを有する裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項2】
前記切除面に形成された前記半球状の凹みの周囲に、凸状の段差が形成されている、請求項1に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項3】
前記凸状の段差の外形状は、前記半導体装置の基板の裏面に形成される前記基板一体型SILの周囲に形成される窪みの形状と相補的に対応していることを特徴とする、請求項2に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項4】
前記裏面解析用搭載式レンズの中心が、前記半導体装置の基板の裏面に形成される前記基板一体型SILの中心上に来るように前記切除面を前記半導体装置の基板裏面に密着させた場合に、前記半球状凹みの球面中心が、該基板一体型SILの半球面の球面中心と一致するように形成されている、請求項1〜3のいずれか一に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項5】
屈折率がn、球面の半径がrである前記裏面解析用搭載式レンズの前記切除面を、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面からr/nの高さにあるように形成されている、請求項1〜4のいずれか一に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項6】
前記裏面解析用搭載式レンズの前記切除面を、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面の位置にあるように形成されている、請求項1〜4のいずれか一に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項7】
可視光に対して透明である材質から形成されている、請求項1〜6のいずれか一に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項8】
材質がシリコン又は酸化亜鉛である、請求項1〜6のいずれか一に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項9】
シリコンよりも低い屈折率の材質からなる、請求項1〜6のいずれか一に記載の裏面解析用搭載式レンズ。
【請求項10】
半導体装置に形成された構造の故障を裏面から解析する、半導体装置の裏面解析方法であって、
中実の球体の一部を1つの平面で切除して得られる形状であり、該切除面にさらに半球状の凹みを有する裏面解析用搭載式レンズを、半導体装置の基板裏面に形成した半球状の基板一体型SILの上に搭載し、該基板一体型SILの球面と、該半球状の凹みとが互いに平行な面を成すように配置して行う、裏面解析方法。
【請求項11】
屈折率がn、球面の半径がrである前記裏面解析用搭載式レンズが、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面からr/nの高さにあるように配置される、請求項10に記載の裏面解析方法。
【請求項12】
前記裏面解析用搭載式レンズが、前記半導体基板の裏面に密着させた場合に、該裏面解析用搭載式レンズの球面の球面中心が該半導体基板の表面の高さにあるように配置される、請求項10に記載の裏面解析方法。
【請求項13】
前記裏面解析用搭載式レンズと前記基板一体型SILの間に、高屈折率液体を充填して行う、請求項10〜12のいずれか一に記載の裏面解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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