半導体装置の製造方法及びボンディング装置
【課題】
本発明は、ボンディングをするときにキャピラリによる荷重を低減することが可能なボンディング装置及びその装置を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
半導体チップ31の電極33の露出面に、前記電極33に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射する照射工程と、前記照射工程の後、かつ、前記電極33の露出面に酸化膜が形成される前に前記電極33の露出面に接続部材20をボンディングするボンディング工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
本発明は、ボンディングをするときにキャピラリによる荷重を低減することが可能なボンディング装置及びその装置を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
半導体チップ31の電極33の露出面に、前記電極33に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射する照射工程と、前記照射工程の後、かつ、前記電極33の露出面に酸化膜が形成される前に前記電極33の露出面に接続部材20をボンディングするボンディング工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造工程において、半導体チップの電極は、一般に、アルミニウムで形成されているため、容易に大気中の酸素と反応し、その電極表面には酸化アルミ膜が形成される。
【0003】
そのため、例えば、半導体チップの電極表面に金線のワイヤを接続するボンディング工程では、ワイヤの先端部に金属ボールを形成した後、加熱された電極の表面に、キャピラリによって金属ボールを押圧すると共に、超音波振動させて電極表面上の酸化アルミ膜を除去、または破壊して電極とワイヤとを良好に接合する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来のボンディング方法では、電極表面上の酸化アルミ膜を除去、または破壊するために、キャピラリの押し付ける荷重を大きくする必要がある。このため、半導体チップに大きな負荷がかかり、半導体チップにクラックや破損が発生する恐れがあった。
【0005】
そのため、近年では、ボンディングを行う際に、キャピラリによる荷重を低減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、ボンディングの際のキャピラリによる荷重を低減することが可能な半導体装置の製造方法及びボンディング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、半導体チップの電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射する照射工程と、前記照射工程の後、かつ、前記電極の露出面に酸化膜が形成される前に前記電極の露出面に接続部材をボンディングするボンディング工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様のボンディング装置は、架台と、前記架台上に取り付けられ、かつ、電極を備えた半導体チップが載置されるボンディングステージと、前記半導体チップの前記電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射するレーザー照射部と、前記レーザー照射された前記電極の露出面に接続部材を接合するためのキャピラリと、前記キャピラリに荷重を与える荷重供給部とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボンディングの際のキャピラリによる荷重を低減することが可能な半導体装置の製造方法及びボンディング装置を提供することをできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す正面図。
【図3】レーザー照射装置のレーザー光の照射領域を示す平面図。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置によるMCP型半導体装置の製造工程を説明するための模式図。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置によるMCP型半導体装置の製造工程を説明するための模式図。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置によるMCP型半導体装置の製造工程を説明するための模式図。
【図7】は本発明の第1の実施形態におけるMCP型半導体装置の製造工程を示すフローチャート図。
【図8】は本発明の第1の実施形態におけるMCP型半導体装置の製造工程の変形例を示すフローチャート図。
【図9】電極下にlow−k膜を備えた半導体装置の電極周辺の拡大断面図。
【図10】電極下にエアギャップを備えた半導体装置の電極周辺の拡大断面図。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるボンディング装置の概略図。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるボンディング装置の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置について、図1及び図2を参照して説明する。図1は第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す側面図である。図2は、第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す正面図である。
【0014】
図1に示すように、ボンディング装置は、架台11と、ボンディングステージ12と、キャピラリ13と、ボンディングアーム14と、トーチ15と、レーザー照射装置16と、カットクランパー17と、カメラ18とを備えている。
【0015】
ボンディングステージ12は、架台11上に設けられている。ボンディングステージ12は、ボンディング対象物30である半導体チップ、支持基板またはリードフレム等を載置するためのもので、駆動装置(図示略)によりX、Y方向に可動できるように構成されている。
【0016】
キャピラリ13は、ボンディングアーム14の先端部に取り付けられている。キャピラリ13は、その中心部に貫通孔を有し、貫通孔には、例えば金製のワイヤ19が挿通されている。キャピラリ13の先端部から突出したワイヤ19の先端には、トーチ15とワイヤ19と間に電圧が印加されることで生じるスパークによって、キャピラリ13の先端から突出したワイヤ19が溶融されてボール20が形成される。
【0017】
なお、ワイヤ19は、金製ワイヤを用いるのが一般的であるが、銀や銅製のワイヤを使用してもよい。
【0018】
ボンディングアーム14は、キャピラリ13をボンディングステージ12上に載置されるボンディング対象物30に対して接離方向であるZ方向、即ちボンディングステージ12に対して上昇、下降できるように構成されている。またボンディングアーム14には、荷重供給機構(図示略)により荷重が与えられるように構成されている。
【0019】
また、ボンディングアーム14には、さらに超音波発振機構(図示略)により超音波エネルギーが与えられるが、ボンディングアーム14自体を、超音波振動させる機能を有する超音波トランスデューサとしてもよい。なお、超音波の発振を入切する制御装置(図示略)が付加されたボンディングアーム14としてもよい。
【0020】
レーザー照射装置16は、ボンディング対象物30の電極表面にレーザーを照射し、電極金属の結合を分解することにより、電極表面の酸化膜を除去するためのものである。レーザー照射装置16は、具体的には照射ノズルからなり、キャピラリ13の近傍に配置され、ここでは、キャピラリ13と一体に動作できるように、ボンディングアーム14に取り付けられている。レーザー照射装置16である照射ノズルには、誘導路(図示略)により、レーザー源(図示略)からレーザー光が導かれる。好ましくは、レーザー照射装置16は、キャピラリ13の側に配置されることが好ましい。
【0021】
なお、ここで、「キャピラリ13の近傍」とは、レーザー照射による電極表面の清浄化(酸化膜の除去)後で、かつ電極表面(露出面)に再度の酸化膜の形成がされる前に、ボンディングを行うことができればよいため、レーザー照射装置16とキャピラリ13との距離が、清浄化された電極の表面に再度の酸化膜の形成がされない時間の範囲でボンディングステージ12が移動できる距離であることをいう。従って、キャピラリ13の近傍であれば、レーザー照射装置16の設置場所を問わない。例えば、レーザー照射装置16をボンディングアーム14に固定しないで、別の位置に設置してもよい。
【0022】
また、レーザー照射装置16におけるレーザー光は、ボンディング対象物30の電極に使用される金属の結合を分解するのに必要なエネルギーを有すればよい。例えば、ボンディング対象物30が、半導体チップ31の電極(以下、第1の電極と言う)33と支持基板32の外部取り出し電極(以下、第2の電極と言う)34のように複数の電極33、34を有する場合には、上述の必要なエネルギーは、第1の電極33や第2の電極34に使用される金属の原子間結合を算出することにより求められる。
【0023】
第1の電極33や第2の電極34に使用される金属の例として、アルミニウムや銅、プラチナなどがある。例えば、第1の電極33としてアルミニウムが使用された場合、レーザー光として波長がKrFの248nm以下のエキシマレーザー光や固体レーザー光を使用すればよい。
【0024】
次に、レーザー光の照射範囲について説明する。図3は、レーザー照射装置のレーザー光の照射領域を示す平面図である。
【0025】
レーザー光の照射は、ボンディング対象物30、例えば半導体チップ31の第1の電極33の周辺にレーザーが照射されても損傷の虞がない場合には、図3の破線で示す、電極表面を含む範囲41となるように設定すればよい。
【0026】
しかし、例えば、半導体チップ31のように電極33の周辺に保護膜等があり、レーザー照射によって保護膜が損傷を受けて半導体チップの信頼性が損なわれる虞がある場合には、レーザー光の照射範囲は、図3の一点鎖線で示すように、半導体チップ31の第1の電極33の表面内の範囲42となるように設定すること好ましい。さらに、後述するように、レーザー照射による電極の清浄化とボンディングとを複数の電極を単位として行う場合には、図3の二点差線に示すように、レーザー光の照射範囲は、第1の電極33表面内であって、かつ、ワイヤ19の先端に形成されたボール(接続部材)20を第1の電極33表面に射影したときに生じる射影領域44の外部の範囲43となるように設定することがより好ましい。このようにすることにより、1つの電極表面の清浄化の時間が短縮されるので、複数の電極を清浄化した後、ボンディングしても電極表面に再度の酸化膜が形成される虞がない。
【0027】
カットクランパー17は、ボンディング対象物30にワイヤ19をボンディングした後、ワイヤ19を切断する際に、ワイヤをクランプするためのものである。
【0028】
カメラ18は、キャピラリ13及びレーザー照射装置16等とボンディング対象物とを位置合わせする際の視認等に用いられる。
【0029】
また、ボンディング装置には、各要素を一体として制御する制御部、例えばCPUを備えており、この制御部により、ボンディング時の荷重、超音波振動の大きさ、レーザー照射の範囲等が制御される。
【0030】
次に、上記構成のボンディング装置によってボンディング対象物の電極表面にワイヤを接続するボンディング方法について、図4乃至図7を参照して説明する。ここでは、複数の半導体チップ31a、31b、31cを半導体チップ31a、31b、31cより小面積のスペーサーチップ35a、35bを介して支持基板32上に積層したMCP(Multi Chip Package)型半導体装置30aにおけるボンディング工程を例に説明する。なお、例えば第1の半導体チップ31aの電極が設けられる辺と第2の半導体チップ31bの電極が設けられる辺とが交差する関係にある場合もあるが、説明を簡単にするため、半導体チップ31a、31b、31cにおける電極が設けられた辺が同一方向にある場合を例に説明する。
【0031】
図4乃至図6は、第1の実施形態に係わるMCP型半導体装置におけるボンディング工程を説明するための模式図である。図7は第1の実施形態におけるMCP型半導体装置の製造方法の工程を示すフローチャート図である。
【0032】
まず、図1に示すボンディング装置のボンディングステージ12上に、第1の半導体チップ31aが支持基板32に固着されたMCP型半導体装置30aを載置する。第1の半導体チップ31aの端部には、第1の電極33aが、また支持基板32の端部には、第2の電極34aがそれぞれ複数形成されている。
【0033】
次に、図4(a)に示すように、キャピラリ13の先端から所定量のワイヤ19を突出させる。そして、トーチ15とワイヤ19との間に電圧を印加し、ボール20を形成する。そして、ボンディングステージ12をXY方向に移動させ、ボール20が形成されたキャピラリ13を第1の半導体チップ31aの第1の電極33aの真上に移動させる。そして、ボンディングアーム14をボンディングステージ12の方向(Z方向のうち負の向き)に下動させ、キャピラリ13の先端のボール20を第1の電極33aの表面に押圧すると共に、超音波振動させて第1の電極33a表面の酸化膜を破壊して、ワイヤ19を第1の電極33aの表面に接合、つまりボンディングする。
【0034】
その後、図4(b)に示すように、ボンディングステージ12をXY方向に移動させ、ワイヤ19をキャピラリ13の先端から引き出しながら、キャピラリ13を支持基板32の第2の電極34aの真上に移動させる。ボンディングアーム14をボンディングステージ12の方向(Z方向のうち負の向き)に下動させ、ワイヤ19を加熱された第2の電極34aの表面に対して、キャピラリ13に形成されたボール20を押圧すると共に、超音波振動させて第2の電極34a表面の酸化膜を破壊して、ワイヤ19を支持基板32の第2の電極34aの表面に接合させると同時に、カットクランパー17により、ワイヤ19を切断する。
【0035】
上記第1の半導体チップ31aの第1の電極33a及び支持基板32の第2の電極34aに対するボンディングにおいては、電極33a、34aの表面の酸化膜を除去せずにボンディングするため、従来と同様の大きさの荷重、超音波振動を与えられる。しかし、第1の半導体チップ31a及び第2の電極34aは、支持基板32に支持されているため、半導体チップ31及び第2の電極34aは、クラック、破損等の虞はない。
【0036】
上記の一連のボンディング工程を複数回行うことにより、第1の半導体チップ31aの複数の第1の電極33と支持基板32の複数の第2の電極34をワイヤ19により電気的に接続することができる。
【0037】
次に、第1の半導体チップ31aに設けられた全ての第1の電極33aと支持基板32の第2の電極34aに対してボンディングを行った後に、図4(c)に示しように、第1の半導体チップ31a上に、第1及び第2の半導体チップ31a、31bよりも小面積のスペーサーチップ35aを接着する。スペーサーチップ35aは、絶縁性のシート状部材の両面に接着層を有する。そして、上記スペーサーチップ35a上に、第2の半導体チップ31bを接着させ、ボンディングステージ12上に載置する。
【0038】
そして、ボンディングステージ12上に載置された第2の半導体チップ31bの第1の電極33bの真上にレーザー照射装置16が位置するように、ボンディングステージ12を図1と図2に示すXY方向に移動させ、レーザー照射装置16より第1の電極33bの表面にレーザー光を照射する(図7のS1)。
【0039】
このレーザー光の照射により、照射された第1の電極33bの表面部分における金属の原子間結合が切断され、電極の表面の酸化膜が蒸発する。その結果、清浄な電極金属の表面が露出する。
【0040】
次に、レーザー照射装置16により清浄な電極金属の表面を露出させた後に、図5(a)に示すように、ボンディングステージ12をXY方向に移動させ、ボール20が形成されたキャピラリ13を第2の半導体チップ31bの第1の電極33bの真上に移動させる。
【0041】
そして、ボンディングアーム14をボンディングステージ12の方向(Z方向のうち負の向き)に下動させ、キャピラリ13の先端のボール20を第1の電極33bの表面に押圧すると共に、超音波振動させて、ワイヤ19を第1の電極33bの表面にボンディングする(図7のS2)。
【0042】
第1の電極33bが形成されている第2の半導体チップ31bの端部は、スペーサーチップ35aの面積が第2の半導体チップ31bの面積より小面積であるため、支持基板32との間に空隙を有している。
【0043】
しかし、この第2の半導体チップ31bの第1の電極33b表面へのボンディングにおいては、電極33b表面の酸化膜が除去されているので、キャピラリ13には、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さい荷重及び超音波振動が与えられるので、第2の半導体チップ31bは、クラックや破損の虞は少ない。
【0044】
次に、支持基板32の第2の電極34aに対するボンディング方法と同様に、図5(b)に示すように、第2の電極34b表面にキャピラリ13によりワイヤ19を押圧すると共に、超音波振動させて第2の電極34b表面の酸化膜を破壊して、支持基板32の第2の電極34bに対するボンディングを行う。
【0045】
次に、図6に示すように、第2の半導体チップ31bの場合と同様に、この第2の半導体チップ31b上に、第2及び第3の半導体チップ31b、31cよりも小面積のスペーサーチップ35bを介して第3の半導体チップ31cを接着する。
【0046】
そして、ボンディングステージ12上に、第2の半導体チップ31bが接着されたMCP型半導体装置を載置し、第2の半導体チップ31bの第1の電極33b及び支持基板32の第2の電極34bに対するボンディング方法と同様に、第1の電極33cに対してレーザー照射による電極表面の清浄化を行った後(図7のS3)、第3の半導体チップ31cの第1の電極33cに対するボンディングを行う(図7のS4)。その後、支持基板32の第2の電極34cに対するボンディングを行う。
【0047】
第2の半導体チップ31bの場合と同様に、第3の半導体チップ31cの端部は、スペーサーチップ35bの面積が第3の半導体チップ31cの面積より小面積であるため、第2の半導体チップ31bとの間に空隙を有しているが、第1の電極33c表面の酸化膜が除去されているので、キャピラリ13には、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さい荷重及び超音波振動が与えられる。従って、この第3の半導体チップ31cの第1の電極33c表面へのボンディングにおいては、第3の半導体チップ31cのクラックや破損の虞は少ない。
【0048】
このように第1の半導体チップ31aの第1の電極33aにはレーザー光を照射せずにボンディングする方法を適用し、第2の半導体チップ31bの第1の電極33bにはレーザー光を照射しボンディングする方法を適用することで、第1の半導体チップ31aのボンディング工程にかかる時間を短縮することができる。
【0049】
以上により、MCP型半導体装置30aの第1の電極31と支持基板32の第2の電極34とのボンディングが行われる。
【0050】
上記実施形態のボンディング装置及び半導体装置の製造方法では、レーザー照射により、電極表面の酸化膜を除去した後に、ボンディングを行う。そのため、ボンディングをするときにキャピラリ13による荷重及び超音波振動を低減することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態において、レーザー照射装置16をキャピラリ13の近傍に配置し、レーザー照射装置16とキャピラリ13との相対的な距離を短くしている。そのため、レーザー照射装置16によるレーザー光を照射した後、即座にボンディングをすることができる。言い換えれば、レーザー光を照射する照射工程とボンディング工程との時間差を小さくすることができる。この時間差を小さくすることによって、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成されにくくなる。
【0052】
また、電極表面へのレーザー光の照射工程において、レーザー光の照射範囲を、図3に示すように、電極の表面領域内の範囲42に制限すると、電極表面以外にはレーザー光が照射されないため、電極周辺部分の保護膜に対するレーザー光によるストレスを軽減できる。
【0053】
さらに、複数の電極の表面に形成された酸化膜を一括して除去した後、順次、電極表面にボンディングすると、酸化膜を除去してからボンディングまでの時間が長い電極の表面に再度の酸化膜が形成されるが、本実施形態では、ボンディングをする電極の表面のみに対して、ボンディングの直前にレーザー光を照射し、酸化膜の除去をする。これにより、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成されにくくなる。
【0054】
また、従来のワイヤボンディング工程では、MCP型半導体装置30aにおいて、第2の半導体チップ31bの第1の電極33b及び第3の半導体チップ31cの第1の電極33cがスペーサーチップ35a及び35bから、それぞれはみ出して宙に浮いた状態にあり、ボンディング時に第2及び第3の半導体チップ31b、31cが撓むことになる。このため、キャピラリ13による荷重が第2の半導体チップ31bの第1の電極33bや第3の半導体チップ31cの第1の電極33cに伝導しにくく、大きな荷重を供給する必要があった。従って、キャピラリ13による大きな荷重により半導体チップにクラックや、破損が発生する可能性が著しく高い。
【0055】
これに対して、本実施形態では、レーザー照射により、電極表面の酸化膜を除去した後に、ボンディングを行うため、ボンディングをするときのキャピラリ13による荷重を低減することができ、半導体チップにクラックや破損が発生する可能性を著しく低下できる。
【0056】
なお、上記実施形態では、図7に示すように、半導体チップ31の複数の電極33において、レーザー照射工程とボンディング工程とを周期的に繰り返す、即ち交互に繰り返すようにしているが、図3中の43で示すように、レーザー光の照射範囲を制限することにより、図8に示すように、複数の電極を単位としてレーザー照射工程を行った後、その複数の電極に対してボンディング工程を行うこともできる。この場合にも、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成される虞は極めて少ない。
【0057】
「周期的に繰り返す」とは、図7に示すようにレーザー照射工程とボンディング工程を交互に行う場合だけでなく、複数のレーザー照射工程後に複数のボンディング工程を行う場合も含むことを意味する。例えば、上述した第1の電極と第2の電極がそれぞれ2個ある場合、図7に示すように、半導体チップ31の第1の電極にレーザー光を照射し(S1)、酸化膜が除去された第1の電極に対してボンディングを行った後に、支持基板32の第2の電極に対してボンディングを行う(S2)。次に、半導体チップ31の次の第1の電極に対してレーザー光を照射し(S3)、酸化膜が除去された第1の電極に対してボンディングを行った後に、支持基板32の第2の電極に対してボンディングを行う(S4)。
【0058】
また、図8に示すように、半導体チップ31の第1の電極にレーザー光を照射し(S1)、続いて次の第1の電極にレーザー光を照射した(S2)後に、酸化膜が除去された最初の第1の電極に対してボンディングを行い、次に支持基板32の第2の電極に対してボンディングを行い(S3)、その後に次の第1の電極に対してボンディングを行い、次に第2の電極に対してボンディングを行う(S4)。
【0059】
また、第1の半導体チップ31aの第1の電極33a、支持基板32の第2の電極34に対するボンディングにおいては、電極表面の酸化膜を除去せずにボンディングするため、従来と同様の大きさの荷重、超音波振動を与えているが、レーザー照射装置16によりレーザー光を照射して、第1の電極33a及び第2の電極34の表面の酸化膜を除去した後にそれぞれボンディングを行ってもよい。
【0060】
上記実施形態では、電極の表面に形成された酸化膜を除去する工程と酸化膜が除去された電極にボンディングをする工程とを同じ装置内で行う。このため、電極の表面に形成された酸化膜を除去する工程を行う装置とボンディングをする装置とが別々の装置である場合と比べて、電極表面に形成された酸化膜を除去した後、ボンディングを行う別の装置に半導体装置を入れる必要がない。これにより、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成されにくくなる。また、本実施形態では半導体装置の入れ出しが省略できる。
【0061】
次に、図9及び図10を参照して、半導体チップの電極下の層間絶縁膜に例えば、多孔質のlow−k膜を使用した半導体装置30b及びエアギャップを有する半導体装置30cにおけるボンディング工程を説明する。図9及び図10は、いずれも半導体チップの電極周辺部分の拡大断面図である。
【0062】
上記low−k膜を有する半導体チップは、図9に示すように、半導体基板の上に第1の層間絶縁膜50aが積層されており、第1の層間絶縁膜50aの上に金属膜51aが、金属膜51aの上にボンディング時の荷重に耐えられない第2の層間絶縁膜52aであるlow−k膜が積層されており、第2の層間絶縁膜52aの上に金属膜51bが、金属膜51bの上に第2の層間絶縁膜52bが、第2の層間絶縁膜52bの上に金属膜51cが、金属膜51cの上に第1の層間絶縁膜50bが設けられている。この第1の層間絶縁膜50bの上に第1の電極53が設けられ、保護絶縁膜54が第1の電極53の表面の一部を露出するように第1の層間絶縁膜50bの上に形成されている。
【0063】
また、エアギャップを有する半導体チップは、図10に示すように、半導体基板の上に第1の層間絶縁膜50aが積層されており、第1の層間絶縁膜50aの上に金属膜51aが、金属膜51aの上に第2の層間絶縁膜52aが、第2の層間絶縁膜52aの上に金属膜51bが、金属膜51bの上に第2の層間絶縁膜52bが、第2の層間絶縁膜52bの上に金属膜51cが、金属膜51cの上に第1の層間絶縁膜50bが設けられている。この第1の層間絶縁膜50bの上に第1の電極53、保護絶縁膜54が形成されており、第2の層間絶縁膜52a、52b部分に空隙部分(エアギャップ)55を備えている。
【0064】
上述のlow−k膜52a、52bを有する半導体装置30bやエアギャップ55を有する半導体装置30cの製造工程におけるボンディング工程は、上述した実施形態のボンディング工程と同様であるため、詳細説明を省略する。
【0065】
即ち、いずれの半導体装置の場合においても、レーザー照射装置16により、第1の電極53表面の酸化膜を除去して清浄化した後、キャピラリ13に対する荷重及び超音波振動を従来の荷重よりも小さくして第1の電極53にワイヤ19をボンディングする。
【0066】
即ち、いずれの半導体装置の場合においても、レーザー照射装置16により、第1の電極53表面の酸化膜を除去し、第1の電極53表面の清浄化を行う。そして、清浄化された第1の電極53表面にボンディングを行う。このためボンディング時には、キャピラリ13には、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さい荷重及び超音波振動が与えられる。これにより、半導体チップの電極下のlow−k膜51や電極53に対するストレスが緩和され、low−k膜51や電極53のクラックや破損等の発生を低減することが可能となる。
【0067】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るボンディング装置について図11を参照して説明する。図11は第2の実施形態に係るボンディング装置の概略構成図である。なお、第2の実施形態に係るボンディング装置は、第1の実施形態のボンディング装置とは、酸化防止部を構成する封止ケースを設けた点で異なり、その他の構成部分については、同一構成を有している。従って、図11ではボンディング装置の主要構成部分以外の構成部分については省略する。また、以下の説明においても、第1の実施形態と同様の構成部分については、詳細説明を省略し、異なる構成部分について説明する。
【0068】
図11に示すように、本実施形態のボンディング装置は、酸化防止部を構成する封止ケース60(酸化防止部)を備えている。
【0069】
この封止ケース60は、半導体チップ31の第1の電極33と支持基板32に設けられた第2の電極34表面の酸化を防止するためのものである。この封止ケース60は、ボンディング装置の主要構成部品架台11、ボンディングステージ12、キャピラリ13、トーチ15と、レーザー照射装置16、ボンディングアーム14、カットクランパー17、ワイヤ19、カメラ18等)の各要素の一部分または全体を内蔵する構造となっている。なお、封止ケース60により、ボンディング工程が視認できない場合、封止ケース60に内蔵されているカメラ18によりボンディング工程を確認するようにすればよい。
【0070】
また、封止ケース60の内部は、半導体チップ31の第1の電極や支持基板32の第2の電極表面の酸化を防止するための気体(以下、酸化防止気体という)で満たされている。例えば、酸化防止気体としては、不活性ガスやN2ガスであればよい。
【0071】
また、レーザー光として紫外線(固体レーザー光)を用いる場合は、この封止ケース60を紫外線が漏れないような材質にすることにより、紫外線漏れ防止と第2の電極34表面の酸化を防止する効果を有することができる。
【0072】
このボンディング装置による半導体装置の製造方法については、上述の第1の実施形態の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0073】
上記第2の実施形態のボンディング装置及び半導体装置の製造方法では、第1の実施形態による効果の他に、酸化防止気体が満たされた封止ケース60内において、レーザー照射による電極表面の酸化膜の除去と、酸化膜の除去された電極表面へのボンディングとを行うため、酸化膜が除去された電極表面には、再度、酸化膜が形成されることが殆どない。
【0074】
従って、ボンディング時、キャピラリに対する荷重を、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さくすることが可能である。
【0075】
図12は、本発明の第2の実施形態におけるボンディング装置の変形例を示す概略構成図である。
【0076】
変形例のボンディング装置では、図12のように、封止ケース60に代えて、酸化防止気体を吹付ける気体吹付機構(酸化防止部)70をキャピラリ13の近傍に設置したものである。この気体吹付機構70は、具体的にはノズルが用いられ、電極の表面全体に酸化防止気体が吹き付けられるように構成することが好ましい。
【0077】
そして、レーザー照射装置16により電極表面の酸化膜を除去した後、酸化膜が除去された電極表面にキャピラリ13によりワイヤ19がボンディングを行われるまでの期間、この気体吹付機構70によって、酸化膜が除去された電極表面には、酸化防止気体が照射されるので、再度、酸化膜が形成されることが殆どない。
【0078】
上記変形例のボンディング装置及び半導体装置の製造方法においても、レーザー照射による電極表面の酸化膜の除去し、酸化膜の除去された電極表面へのボンディングを行うまでの期間、酸化膜が除去された電極表面には、酸化防止気体が照射されるので、再度、酸化膜が形成されることが殆どない。
【0079】
従って、上記第2の実施形態と同様に、ボンディング時、キャピラリに対する荷重を、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さくすることが可能である。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態においては、半導体チップの電極と支持基板の電極とを接続するワイヤボンディング装置及び半導体装置の製造方法についてのみ説明を記載したが、本発明は、半導体チップの電極にワイヤのボールをボンディングすることにより、バンプを形成するワイヤレスボンディング装置及び半導体装置の製造方法に対しても適用できる。
【0081】
また、上述の実施形態においては、ボンディング時に荷重と超音波によるワイヤボンディング装置及び半導体装置の製造方法についてのみ説明を記載したが、本発明は、超音波を使用しないで、荷重によるボンディング装置及び半導体装置の製造方法に対しても適用できる。
【0082】
なお、本発明は以下の付記に記載されているような構成を考えられる。
【0083】
(付記1)
架台と、前記架台上に取り付けられ、かつ、電極を備えた半導体チップが載置されるボンディングステージと、前記半導体チップの前記電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射するレーザー照射部と、前記レーザー照射された前記電極の露出面に接続部材を接合するためのキャピラリと、前記キャピラリに荷重を与える荷重供給部とを少なくとも備えることを特徴とするボンディング装置。
【0084】
(付記2)
前記レーザー光のエネルギーが、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギーまたは前記電極の露出面に形成された酸化膜の結合を分解するエネルギーであることを特徴とする付記1記載のボンディング装置。
【0085】
(付記3)
さらに、前記レーザー照射部に前記レーザー光の照射領域を制御する制御部とを備え、
前記制御部により、前記レーザー照射の照射領域を、前記電極の露出面の領域より狭くかつ、前記接続部材を前記電極に射影した射影領域よりも広く設定することを特徴とする付記1又は付記2記載のボンディング装置。
【0086】
(付記4)
さらに、前記電極の露出面を酸化防止気体で覆う酸化防止部とを備えることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項記載のボンディング装置。
【符号の説明】
【0087】
11…架台
12…ボンディングステージ
13…キャピラリ
14…ボンディングアーム
15…トーチ
16…レーザー照射装置
17…カットクランパー
18…カメラ
19…ワイヤ
20…ボール
30…ボンディング対象物(半導体装置)
31…半導体チップ
32…支持基板
33…第1の電極
34…第2の電極
41、42、43…レーザー光の照射範囲
44…射影領域
50a、50b…第1の層間絶縁膜
51a、51b、51c…金属膜
52a、52b…第2の層間絶縁膜
53…第1電極(又は第2の電極)
54…保護絶縁膜
55…エアギャップ
60…封止ケース
70…気体吹付機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造工程において、半導体チップの電極は、一般に、アルミニウムで形成されているため、容易に大気中の酸素と反応し、その電極表面には酸化アルミ膜が形成される。
【0003】
そのため、例えば、半導体チップの電極表面に金線のワイヤを接続するボンディング工程では、ワイヤの先端部に金属ボールを形成した後、加熱された電極の表面に、キャピラリによって金属ボールを押圧すると共に、超音波振動させて電極表面上の酸化アルミ膜を除去、または破壊して電極とワイヤとを良好に接合する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来のボンディング方法では、電極表面上の酸化アルミ膜を除去、または破壊するために、キャピラリの押し付ける荷重を大きくする必要がある。このため、半導体チップに大きな負荷がかかり、半導体チップにクラックや破損が発生する恐れがあった。
【0005】
そのため、近年では、ボンディングを行う際に、キャピラリによる荷重を低減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、ボンディングの際のキャピラリによる荷重を低減することが可能な半導体装置の製造方法及びボンディング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、半導体チップの電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射する照射工程と、前記照射工程の後、かつ、前記電極の露出面に酸化膜が形成される前に前記電極の露出面に接続部材をボンディングするボンディング工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様のボンディング装置は、架台と、前記架台上に取り付けられ、かつ、電極を備えた半導体チップが載置されるボンディングステージと、前記半導体チップの前記電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射するレーザー照射部と、前記レーザー照射された前記電極の露出面に接続部材を接合するためのキャピラリと、前記キャピラリに荷重を与える荷重供給部とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボンディングの際のキャピラリによる荷重を低減することが可能な半導体装置の製造方法及びボンディング装置を提供することをできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す正面図。
【図3】レーザー照射装置のレーザー光の照射領域を示す平面図。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置によるMCP型半導体装置の製造工程を説明するための模式図。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置によるMCP型半導体装置の製造工程を説明するための模式図。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置によるMCP型半導体装置の製造工程を説明するための模式図。
【図7】は本発明の第1の実施形態におけるMCP型半導体装置の製造工程を示すフローチャート図。
【図8】は本発明の第1の実施形態におけるMCP型半導体装置の製造工程の変形例を示すフローチャート図。
【図9】電極下にlow−k膜を備えた半導体装置の電極周辺の拡大断面図。
【図10】電極下にエアギャップを備えた半導体装置の電極周辺の拡大断面図。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるボンディング装置の概略図。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるボンディング装置の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかるボンディング装置について、図1及び図2を参照して説明する。図1は第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す側面図である。図2は、第1の実施形態にかかるボンディング装置の概略を示す正面図である。
【0014】
図1に示すように、ボンディング装置は、架台11と、ボンディングステージ12と、キャピラリ13と、ボンディングアーム14と、トーチ15と、レーザー照射装置16と、カットクランパー17と、カメラ18とを備えている。
【0015】
ボンディングステージ12は、架台11上に設けられている。ボンディングステージ12は、ボンディング対象物30である半導体チップ、支持基板またはリードフレム等を載置するためのもので、駆動装置(図示略)によりX、Y方向に可動できるように構成されている。
【0016】
キャピラリ13は、ボンディングアーム14の先端部に取り付けられている。キャピラリ13は、その中心部に貫通孔を有し、貫通孔には、例えば金製のワイヤ19が挿通されている。キャピラリ13の先端部から突出したワイヤ19の先端には、トーチ15とワイヤ19と間に電圧が印加されることで生じるスパークによって、キャピラリ13の先端から突出したワイヤ19が溶融されてボール20が形成される。
【0017】
なお、ワイヤ19は、金製ワイヤを用いるのが一般的であるが、銀や銅製のワイヤを使用してもよい。
【0018】
ボンディングアーム14は、キャピラリ13をボンディングステージ12上に載置されるボンディング対象物30に対して接離方向であるZ方向、即ちボンディングステージ12に対して上昇、下降できるように構成されている。またボンディングアーム14には、荷重供給機構(図示略)により荷重が与えられるように構成されている。
【0019】
また、ボンディングアーム14には、さらに超音波発振機構(図示略)により超音波エネルギーが与えられるが、ボンディングアーム14自体を、超音波振動させる機能を有する超音波トランスデューサとしてもよい。なお、超音波の発振を入切する制御装置(図示略)が付加されたボンディングアーム14としてもよい。
【0020】
レーザー照射装置16は、ボンディング対象物30の電極表面にレーザーを照射し、電極金属の結合を分解することにより、電極表面の酸化膜を除去するためのものである。レーザー照射装置16は、具体的には照射ノズルからなり、キャピラリ13の近傍に配置され、ここでは、キャピラリ13と一体に動作できるように、ボンディングアーム14に取り付けられている。レーザー照射装置16である照射ノズルには、誘導路(図示略)により、レーザー源(図示略)からレーザー光が導かれる。好ましくは、レーザー照射装置16は、キャピラリ13の側に配置されることが好ましい。
【0021】
なお、ここで、「キャピラリ13の近傍」とは、レーザー照射による電極表面の清浄化(酸化膜の除去)後で、かつ電極表面(露出面)に再度の酸化膜の形成がされる前に、ボンディングを行うことができればよいため、レーザー照射装置16とキャピラリ13との距離が、清浄化された電極の表面に再度の酸化膜の形成がされない時間の範囲でボンディングステージ12が移動できる距離であることをいう。従って、キャピラリ13の近傍であれば、レーザー照射装置16の設置場所を問わない。例えば、レーザー照射装置16をボンディングアーム14に固定しないで、別の位置に設置してもよい。
【0022】
また、レーザー照射装置16におけるレーザー光は、ボンディング対象物30の電極に使用される金属の結合を分解するのに必要なエネルギーを有すればよい。例えば、ボンディング対象物30が、半導体チップ31の電極(以下、第1の電極と言う)33と支持基板32の外部取り出し電極(以下、第2の電極と言う)34のように複数の電極33、34を有する場合には、上述の必要なエネルギーは、第1の電極33や第2の電極34に使用される金属の原子間結合を算出することにより求められる。
【0023】
第1の電極33や第2の電極34に使用される金属の例として、アルミニウムや銅、プラチナなどがある。例えば、第1の電極33としてアルミニウムが使用された場合、レーザー光として波長がKrFの248nm以下のエキシマレーザー光や固体レーザー光を使用すればよい。
【0024】
次に、レーザー光の照射範囲について説明する。図3は、レーザー照射装置のレーザー光の照射領域を示す平面図である。
【0025】
レーザー光の照射は、ボンディング対象物30、例えば半導体チップ31の第1の電極33の周辺にレーザーが照射されても損傷の虞がない場合には、図3の破線で示す、電極表面を含む範囲41となるように設定すればよい。
【0026】
しかし、例えば、半導体チップ31のように電極33の周辺に保護膜等があり、レーザー照射によって保護膜が損傷を受けて半導体チップの信頼性が損なわれる虞がある場合には、レーザー光の照射範囲は、図3の一点鎖線で示すように、半導体チップ31の第1の電極33の表面内の範囲42となるように設定すること好ましい。さらに、後述するように、レーザー照射による電極の清浄化とボンディングとを複数の電極を単位として行う場合には、図3の二点差線に示すように、レーザー光の照射範囲は、第1の電極33表面内であって、かつ、ワイヤ19の先端に形成されたボール(接続部材)20を第1の電極33表面に射影したときに生じる射影領域44の外部の範囲43となるように設定することがより好ましい。このようにすることにより、1つの電極表面の清浄化の時間が短縮されるので、複数の電極を清浄化した後、ボンディングしても電極表面に再度の酸化膜が形成される虞がない。
【0027】
カットクランパー17は、ボンディング対象物30にワイヤ19をボンディングした後、ワイヤ19を切断する際に、ワイヤをクランプするためのものである。
【0028】
カメラ18は、キャピラリ13及びレーザー照射装置16等とボンディング対象物とを位置合わせする際の視認等に用いられる。
【0029】
また、ボンディング装置には、各要素を一体として制御する制御部、例えばCPUを備えており、この制御部により、ボンディング時の荷重、超音波振動の大きさ、レーザー照射の範囲等が制御される。
【0030】
次に、上記構成のボンディング装置によってボンディング対象物の電極表面にワイヤを接続するボンディング方法について、図4乃至図7を参照して説明する。ここでは、複数の半導体チップ31a、31b、31cを半導体チップ31a、31b、31cより小面積のスペーサーチップ35a、35bを介して支持基板32上に積層したMCP(Multi Chip Package)型半導体装置30aにおけるボンディング工程を例に説明する。なお、例えば第1の半導体チップ31aの電極が設けられる辺と第2の半導体チップ31bの電極が設けられる辺とが交差する関係にある場合もあるが、説明を簡単にするため、半導体チップ31a、31b、31cにおける電極が設けられた辺が同一方向にある場合を例に説明する。
【0031】
図4乃至図6は、第1の実施形態に係わるMCP型半導体装置におけるボンディング工程を説明するための模式図である。図7は第1の実施形態におけるMCP型半導体装置の製造方法の工程を示すフローチャート図である。
【0032】
まず、図1に示すボンディング装置のボンディングステージ12上に、第1の半導体チップ31aが支持基板32に固着されたMCP型半導体装置30aを載置する。第1の半導体チップ31aの端部には、第1の電極33aが、また支持基板32の端部には、第2の電極34aがそれぞれ複数形成されている。
【0033】
次に、図4(a)に示すように、キャピラリ13の先端から所定量のワイヤ19を突出させる。そして、トーチ15とワイヤ19との間に電圧を印加し、ボール20を形成する。そして、ボンディングステージ12をXY方向に移動させ、ボール20が形成されたキャピラリ13を第1の半導体チップ31aの第1の電極33aの真上に移動させる。そして、ボンディングアーム14をボンディングステージ12の方向(Z方向のうち負の向き)に下動させ、キャピラリ13の先端のボール20を第1の電極33aの表面に押圧すると共に、超音波振動させて第1の電極33a表面の酸化膜を破壊して、ワイヤ19を第1の電極33aの表面に接合、つまりボンディングする。
【0034】
その後、図4(b)に示すように、ボンディングステージ12をXY方向に移動させ、ワイヤ19をキャピラリ13の先端から引き出しながら、キャピラリ13を支持基板32の第2の電極34aの真上に移動させる。ボンディングアーム14をボンディングステージ12の方向(Z方向のうち負の向き)に下動させ、ワイヤ19を加熱された第2の電極34aの表面に対して、キャピラリ13に形成されたボール20を押圧すると共に、超音波振動させて第2の電極34a表面の酸化膜を破壊して、ワイヤ19を支持基板32の第2の電極34aの表面に接合させると同時に、カットクランパー17により、ワイヤ19を切断する。
【0035】
上記第1の半導体チップ31aの第1の電極33a及び支持基板32の第2の電極34aに対するボンディングにおいては、電極33a、34aの表面の酸化膜を除去せずにボンディングするため、従来と同様の大きさの荷重、超音波振動を与えられる。しかし、第1の半導体チップ31a及び第2の電極34aは、支持基板32に支持されているため、半導体チップ31及び第2の電極34aは、クラック、破損等の虞はない。
【0036】
上記の一連のボンディング工程を複数回行うことにより、第1の半導体チップ31aの複数の第1の電極33と支持基板32の複数の第2の電極34をワイヤ19により電気的に接続することができる。
【0037】
次に、第1の半導体チップ31aに設けられた全ての第1の電極33aと支持基板32の第2の電極34aに対してボンディングを行った後に、図4(c)に示しように、第1の半導体チップ31a上に、第1及び第2の半導体チップ31a、31bよりも小面積のスペーサーチップ35aを接着する。スペーサーチップ35aは、絶縁性のシート状部材の両面に接着層を有する。そして、上記スペーサーチップ35a上に、第2の半導体チップ31bを接着させ、ボンディングステージ12上に載置する。
【0038】
そして、ボンディングステージ12上に載置された第2の半導体チップ31bの第1の電極33bの真上にレーザー照射装置16が位置するように、ボンディングステージ12を図1と図2に示すXY方向に移動させ、レーザー照射装置16より第1の電極33bの表面にレーザー光を照射する(図7のS1)。
【0039】
このレーザー光の照射により、照射された第1の電極33bの表面部分における金属の原子間結合が切断され、電極の表面の酸化膜が蒸発する。その結果、清浄な電極金属の表面が露出する。
【0040】
次に、レーザー照射装置16により清浄な電極金属の表面を露出させた後に、図5(a)に示すように、ボンディングステージ12をXY方向に移動させ、ボール20が形成されたキャピラリ13を第2の半導体チップ31bの第1の電極33bの真上に移動させる。
【0041】
そして、ボンディングアーム14をボンディングステージ12の方向(Z方向のうち負の向き)に下動させ、キャピラリ13の先端のボール20を第1の電極33bの表面に押圧すると共に、超音波振動させて、ワイヤ19を第1の電極33bの表面にボンディングする(図7のS2)。
【0042】
第1の電極33bが形成されている第2の半導体チップ31bの端部は、スペーサーチップ35aの面積が第2の半導体チップ31bの面積より小面積であるため、支持基板32との間に空隙を有している。
【0043】
しかし、この第2の半導体チップ31bの第1の電極33b表面へのボンディングにおいては、電極33b表面の酸化膜が除去されているので、キャピラリ13には、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さい荷重及び超音波振動が与えられるので、第2の半導体チップ31bは、クラックや破損の虞は少ない。
【0044】
次に、支持基板32の第2の電極34aに対するボンディング方法と同様に、図5(b)に示すように、第2の電極34b表面にキャピラリ13によりワイヤ19を押圧すると共に、超音波振動させて第2の電極34b表面の酸化膜を破壊して、支持基板32の第2の電極34bに対するボンディングを行う。
【0045】
次に、図6に示すように、第2の半導体チップ31bの場合と同様に、この第2の半導体チップ31b上に、第2及び第3の半導体チップ31b、31cよりも小面積のスペーサーチップ35bを介して第3の半導体チップ31cを接着する。
【0046】
そして、ボンディングステージ12上に、第2の半導体チップ31bが接着されたMCP型半導体装置を載置し、第2の半導体チップ31bの第1の電極33b及び支持基板32の第2の電極34bに対するボンディング方法と同様に、第1の電極33cに対してレーザー照射による電極表面の清浄化を行った後(図7のS3)、第3の半導体チップ31cの第1の電極33cに対するボンディングを行う(図7のS4)。その後、支持基板32の第2の電極34cに対するボンディングを行う。
【0047】
第2の半導体チップ31bの場合と同様に、第3の半導体チップ31cの端部は、スペーサーチップ35bの面積が第3の半導体チップ31cの面積より小面積であるため、第2の半導体チップ31bとの間に空隙を有しているが、第1の電極33c表面の酸化膜が除去されているので、キャピラリ13には、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さい荷重及び超音波振動が与えられる。従って、この第3の半導体チップ31cの第1の電極33c表面へのボンディングにおいては、第3の半導体チップ31cのクラックや破損の虞は少ない。
【0048】
このように第1の半導体チップ31aの第1の電極33aにはレーザー光を照射せずにボンディングする方法を適用し、第2の半導体チップ31bの第1の電極33bにはレーザー光を照射しボンディングする方法を適用することで、第1の半導体チップ31aのボンディング工程にかかる時間を短縮することができる。
【0049】
以上により、MCP型半導体装置30aの第1の電極31と支持基板32の第2の電極34とのボンディングが行われる。
【0050】
上記実施形態のボンディング装置及び半導体装置の製造方法では、レーザー照射により、電極表面の酸化膜を除去した後に、ボンディングを行う。そのため、ボンディングをするときにキャピラリ13による荷重及び超音波振動を低減することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態において、レーザー照射装置16をキャピラリ13の近傍に配置し、レーザー照射装置16とキャピラリ13との相対的な距離を短くしている。そのため、レーザー照射装置16によるレーザー光を照射した後、即座にボンディングをすることができる。言い換えれば、レーザー光を照射する照射工程とボンディング工程との時間差を小さくすることができる。この時間差を小さくすることによって、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成されにくくなる。
【0052】
また、電極表面へのレーザー光の照射工程において、レーザー光の照射範囲を、図3に示すように、電極の表面領域内の範囲42に制限すると、電極表面以外にはレーザー光が照射されないため、電極周辺部分の保護膜に対するレーザー光によるストレスを軽減できる。
【0053】
さらに、複数の電極の表面に形成された酸化膜を一括して除去した後、順次、電極表面にボンディングすると、酸化膜を除去してからボンディングまでの時間が長い電極の表面に再度の酸化膜が形成されるが、本実施形態では、ボンディングをする電極の表面のみに対して、ボンディングの直前にレーザー光を照射し、酸化膜の除去をする。これにより、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成されにくくなる。
【0054】
また、従来のワイヤボンディング工程では、MCP型半導体装置30aにおいて、第2の半導体チップ31bの第1の電極33b及び第3の半導体チップ31cの第1の電極33cがスペーサーチップ35a及び35bから、それぞれはみ出して宙に浮いた状態にあり、ボンディング時に第2及び第3の半導体チップ31b、31cが撓むことになる。このため、キャピラリ13による荷重が第2の半導体チップ31bの第1の電極33bや第3の半導体チップ31cの第1の電極33cに伝導しにくく、大きな荷重を供給する必要があった。従って、キャピラリ13による大きな荷重により半導体チップにクラックや、破損が発生する可能性が著しく高い。
【0055】
これに対して、本実施形態では、レーザー照射により、電極表面の酸化膜を除去した後に、ボンディングを行うため、ボンディングをするときのキャピラリ13による荷重を低減することができ、半導体チップにクラックや破損が発生する可能性を著しく低下できる。
【0056】
なお、上記実施形態では、図7に示すように、半導体チップ31の複数の電極33において、レーザー照射工程とボンディング工程とを周期的に繰り返す、即ち交互に繰り返すようにしているが、図3中の43で示すように、レーザー光の照射範囲を制限することにより、図8に示すように、複数の電極を単位としてレーザー照射工程を行った後、その複数の電極に対してボンディング工程を行うこともできる。この場合にも、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成される虞は極めて少ない。
【0057】
「周期的に繰り返す」とは、図7に示すようにレーザー照射工程とボンディング工程を交互に行う場合だけでなく、複数のレーザー照射工程後に複数のボンディング工程を行う場合も含むことを意味する。例えば、上述した第1の電極と第2の電極がそれぞれ2個ある場合、図7に示すように、半導体チップ31の第1の電極にレーザー光を照射し(S1)、酸化膜が除去された第1の電極に対してボンディングを行った後に、支持基板32の第2の電極に対してボンディングを行う(S2)。次に、半導体チップ31の次の第1の電極に対してレーザー光を照射し(S3)、酸化膜が除去された第1の電極に対してボンディングを行った後に、支持基板32の第2の電極に対してボンディングを行う(S4)。
【0058】
また、図8に示すように、半導体チップ31の第1の電極にレーザー光を照射し(S1)、続いて次の第1の電極にレーザー光を照射した(S2)後に、酸化膜が除去された最初の第1の電極に対してボンディングを行い、次に支持基板32の第2の電極に対してボンディングを行い(S3)、その後に次の第1の電極に対してボンディングを行い、次に第2の電極に対してボンディングを行う(S4)。
【0059】
また、第1の半導体チップ31aの第1の電極33a、支持基板32の第2の電極34に対するボンディングにおいては、電極表面の酸化膜を除去せずにボンディングするため、従来と同様の大きさの荷重、超音波振動を与えているが、レーザー照射装置16によりレーザー光を照射して、第1の電極33a及び第2の電極34の表面の酸化膜を除去した後にそれぞれボンディングを行ってもよい。
【0060】
上記実施形態では、電極の表面に形成された酸化膜を除去する工程と酸化膜が除去された電極にボンディングをする工程とを同じ装置内で行う。このため、電極の表面に形成された酸化膜を除去する工程を行う装置とボンディングをする装置とが別々の装置である場合と比べて、電極表面に形成された酸化膜を除去した後、ボンディングを行う別の装置に半導体装置を入れる必要がない。これにより、レーザー光の照射によって酸化膜が除去された電極の表面に再度酸化膜が形成されにくくなる。また、本実施形態では半導体装置の入れ出しが省略できる。
【0061】
次に、図9及び図10を参照して、半導体チップの電極下の層間絶縁膜に例えば、多孔質のlow−k膜を使用した半導体装置30b及びエアギャップを有する半導体装置30cにおけるボンディング工程を説明する。図9及び図10は、いずれも半導体チップの電極周辺部分の拡大断面図である。
【0062】
上記low−k膜を有する半導体チップは、図9に示すように、半導体基板の上に第1の層間絶縁膜50aが積層されており、第1の層間絶縁膜50aの上に金属膜51aが、金属膜51aの上にボンディング時の荷重に耐えられない第2の層間絶縁膜52aであるlow−k膜が積層されており、第2の層間絶縁膜52aの上に金属膜51bが、金属膜51bの上に第2の層間絶縁膜52bが、第2の層間絶縁膜52bの上に金属膜51cが、金属膜51cの上に第1の層間絶縁膜50bが設けられている。この第1の層間絶縁膜50bの上に第1の電極53が設けられ、保護絶縁膜54が第1の電極53の表面の一部を露出するように第1の層間絶縁膜50bの上に形成されている。
【0063】
また、エアギャップを有する半導体チップは、図10に示すように、半導体基板の上に第1の層間絶縁膜50aが積層されており、第1の層間絶縁膜50aの上に金属膜51aが、金属膜51aの上に第2の層間絶縁膜52aが、第2の層間絶縁膜52aの上に金属膜51bが、金属膜51bの上に第2の層間絶縁膜52bが、第2の層間絶縁膜52bの上に金属膜51cが、金属膜51cの上に第1の層間絶縁膜50bが設けられている。この第1の層間絶縁膜50bの上に第1の電極53、保護絶縁膜54が形成されており、第2の層間絶縁膜52a、52b部分に空隙部分(エアギャップ)55を備えている。
【0064】
上述のlow−k膜52a、52bを有する半導体装置30bやエアギャップ55を有する半導体装置30cの製造工程におけるボンディング工程は、上述した実施形態のボンディング工程と同様であるため、詳細説明を省略する。
【0065】
即ち、いずれの半導体装置の場合においても、レーザー照射装置16により、第1の電極53表面の酸化膜を除去して清浄化した後、キャピラリ13に対する荷重及び超音波振動を従来の荷重よりも小さくして第1の電極53にワイヤ19をボンディングする。
【0066】
即ち、いずれの半導体装置の場合においても、レーザー照射装置16により、第1の電極53表面の酸化膜を除去し、第1の電極53表面の清浄化を行う。そして、清浄化された第1の電極53表面にボンディングを行う。このためボンディング時には、キャピラリ13には、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さい荷重及び超音波振動が与えられる。これにより、半導体チップの電極下のlow−k膜51や電極53に対するストレスが緩和され、low−k膜51や電極53のクラックや破損等の発生を低減することが可能となる。
【0067】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るボンディング装置について図11を参照して説明する。図11は第2の実施形態に係るボンディング装置の概略構成図である。なお、第2の実施形態に係るボンディング装置は、第1の実施形態のボンディング装置とは、酸化防止部を構成する封止ケースを設けた点で異なり、その他の構成部分については、同一構成を有している。従って、図11ではボンディング装置の主要構成部分以外の構成部分については省略する。また、以下の説明においても、第1の実施形態と同様の構成部分については、詳細説明を省略し、異なる構成部分について説明する。
【0068】
図11に示すように、本実施形態のボンディング装置は、酸化防止部を構成する封止ケース60(酸化防止部)を備えている。
【0069】
この封止ケース60は、半導体チップ31の第1の電極33と支持基板32に設けられた第2の電極34表面の酸化を防止するためのものである。この封止ケース60は、ボンディング装置の主要構成部品架台11、ボンディングステージ12、キャピラリ13、トーチ15と、レーザー照射装置16、ボンディングアーム14、カットクランパー17、ワイヤ19、カメラ18等)の各要素の一部分または全体を内蔵する構造となっている。なお、封止ケース60により、ボンディング工程が視認できない場合、封止ケース60に内蔵されているカメラ18によりボンディング工程を確認するようにすればよい。
【0070】
また、封止ケース60の内部は、半導体チップ31の第1の電極や支持基板32の第2の電極表面の酸化を防止するための気体(以下、酸化防止気体という)で満たされている。例えば、酸化防止気体としては、不活性ガスやN2ガスであればよい。
【0071】
また、レーザー光として紫外線(固体レーザー光)を用いる場合は、この封止ケース60を紫外線が漏れないような材質にすることにより、紫外線漏れ防止と第2の電極34表面の酸化を防止する効果を有することができる。
【0072】
このボンディング装置による半導体装置の製造方法については、上述の第1の実施形態の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0073】
上記第2の実施形態のボンディング装置及び半導体装置の製造方法では、第1の実施形態による効果の他に、酸化防止気体が満たされた封止ケース60内において、レーザー照射による電極表面の酸化膜の除去と、酸化膜の除去された電極表面へのボンディングとを行うため、酸化膜が除去された電極表面には、再度、酸化膜が形成されることが殆どない。
【0074】
従って、ボンディング時、キャピラリに対する荷重を、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さくすることが可能である。
【0075】
図12は、本発明の第2の実施形態におけるボンディング装置の変形例を示す概略構成図である。
【0076】
変形例のボンディング装置では、図12のように、封止ケース60に代えて、酸化防止気体を吹付ける気体吹付機構(酸化防止部)70をキャピラリ13の近傍に設置したものである。この気体吹付機構70は、具体的にはノズルが用いられ、電極の表面全体に酸化防止気体が吹き付けられるように構成することが好ましい。
【0077】
そして、レーザー照射装置16により電極表面の酸化膜を除去した後、酸化膜が除去された電極表面にキャピラリ13によりワイヤ19がボンディングを行われるまでの期間、この気体吹付機構70によって、酸化膜が除去された電極表面には、酸化防止気体が照射されるので、再度、酸化膜が形成されることが殆どない。
【0078】
上記変形例のボンディング装置及び半導体装置の製造方法においても、レーザー照射による電極表面の酸化膜の除去し、酸化膜の除去された電極表面へのボンディングを行うまでの期間、酸化膜が除去された電極表面には、酸化防止気体が照射されるので、再度、酸化膜が形成されることが殆どない。
【0079】
従って、上記第2の実施形態と同様に、ボンディング時、キャピラリに対する荷重を、従来の電極表面に酸化膜を有する場合に比べて、極めて小さくすることが可能である。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態においては、半導体チップの電極と支持基板の電極とを接続するワイヤボンディング装置及び半導体装置の製造方法についてのみ説明を記載したが、本発明は、半導体チップの電極にワイヤのボールをボンディングすることにより、バンプを形成するワイヤレスボンディング装置及び半導体装置の製造方法に対しても適用できる。
【0081】
また、上述の実施形態においては、ボンディング時に荷重と超音波によるワイヤボンディング装置及び半導体装置の製造方法についてのみ説明を記載したが、本発明は、超音波を使用しないで、荷重によるボンディング装置及び半導体装置の製造方法に対しても適用できる。
【0082】
なお、本発明は以下の付記に記載されているような構成を考えられる。
【0083】
(付記1)
架台と、前記架台上に取り付けられ、かつ、電極を備えた半導体チップが載置されるボンディングステージと、前記半導体チップの前記電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射するレーザー照射部と、前記レーザー照射された前記電極の露出面に接続部材を接合するためのキャピラリと、前記キャピラリに荷重を与える荷重供給部とを少なくとも備えることを特徴とするボンディング装置。
【0084】
(付記2)
前記レーザー光のエネルギーが、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギーまたは前記電極の露出面に形成された酸化膜の結合を分解するエネルギーであることを特徴とする付記1記載のボンディング装置。
【0085】
(付記3)
さらに、前記レーザー照射部に前記レーザー光の照射領域を制御する制御部とを備え、
前記制御部により、前記レーザー照射の照射領域を、前記電極の露出面の領域より狭くかつ、前記接続部材を前記電極に射影した射影領域よりも広く設定することを特徴とする付記1又は付記2記載のボンディング装置。
【0086】
(付記4)
さらに、前記電極の露出面を酸化防止気体で覆う酸化防止部とを備えることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項記載のボンディング装置。
【符号の説明】
【0087】
11…架台
12…ボンディングステージ
13…キャピラリ
14…ボンディングアーム
15…トーチ
16…レーザー照射装置
17…カットクランパー
18…カメラ
19…ワイヤ
20…ボール
30…ボンディング対象物(半導体装置)
31…半導体チップ
32…支持基板
33…第1の電極
34…第2の電極
41、42、43…レーザー光の照射範囲
44…射影領域
50a、50b…第1の層間絶縁膜
51a、51b、51c…金属膜
52a、52b…第2の層間絶縁膜
53…第1電極(又は第2の電極)
54…保護絶縁膜
55…エアギャップ
60…封止ケース
70…気体吹付機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射する照射工程と、
前記照射工程の後、かつ、前記電極の露出面に酸化膜が形成される前に前記電極の露出面に接続部材をボンディングするボンディング工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光のエネルギーが、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギーまたは前記電極の露出面に形成された酸化膜の結合を分解するエネルギーであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体チップに複数の前記電極が形成されており、前記照射工程と、前記ボンディング工程とを周期的に繰り返すことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記照射工程において、前記レーザー光の照射領域は、前記電極の露出面の領域より狭く、かつ、前記接続部材を前記電極に射影した射影領域よりも広いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
架台と、
前記架台上に取り付けられ、かつ、電極を備えた半導体チップが載置されるボンディングステージと、
前記半導体チップの前記電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射するレーザー照射部と、
前記レーザー照射された前記電極の露出面に接続部材を接合するためのキャピラリと、
前記キャピラリに荷重を与える荷重供給部と
を少なくとも備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項1】
半導体チップの電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射する照射工程と、
前記照射工程の後、かつ、前記電極の露出面に酸化膜が形成される前に前記電極の露出面に接続部材をボンディングするボンディング工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光のエネルギーが、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギーまたは前記電極の露出面に形成された酸化膜の結合を分解するエネルギーであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体チップに複数の前記電極が形成されており、前記照射工程と、前記ボンディング工程とを周期的に繰り返すことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記照射工程において、前記レーザー光の照射領域は、前記電極の露出面の領域より狭く、かつ、前記接続部材を前記電極に射影した射影領域よりも広いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
架台と、
前記架台上に取り付けられ、かつ、電極を備えた半導体チップが載置されるボンディングステージと、
前記半導体チップの前記電極の露出面に、前記電極に使用されている金属の結合を分解するエネルギー以上のエネルギーを有するレーザー光を照射するレーザー照射部と、
前記レーザー照射された前記電極の露出面に接続部材を接合するためのキャピラリと、
前記キャピラリに荷重を与える荷重供給部と
を少なくとも備えることを特徴とするボンディング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−66256(P2011−66256A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216418(P2009−216418)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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