説明

半導体装置の製造方法

【課題】ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の歩留り及び品質の向上を図り、半導体装置の製造における製造コストを抑えると共に作業効率を向上させる。
【解決手段】ワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディングが一定条件に到達した場合に、キャピラリ20を用いて、ヒートステージ30に設けられたキャピラリ清掃ツール36上で空ボンディングを行うことで、キャピラリ20に付着した汚れをキャピラリ清掃ツール36に転写させることができる。このように、自動でキャピラリ20の汚れを清掃することで確実なワイヤボンディングを実現し、キャピラリ20の交換回数を減らし、作業者が手作業でキャピラリ20の交換を行う等の手間を軽減する。これにより、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の歩留り及び品質を向上させ、半導体装置の製造における製造コストを抑えると共に作業効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、キャピラリを用いて半導体チップとリードとをワイヤで接続する半導体装置の製造技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャピラリを用いてボンデイングするワイヤボンデイング装置において、キャピラリの先端へのSMD実装工程での汚れの偏った付着及び不均等な磨耗を低減し、ボンデイングの信頼性とキャピラリの耐用ボンデイング回数を向上させるために、清掃パットを予め設け、予め定めたボンデイング回数毎に、キャピラリを清掃パットの上方に移動させて先端表面への汚れを清掃する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−232125号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下に説明する技術は、本発明を研究、完成するのに際して、本発明者によって検討されたものであり、その概要は次のとおりである。
【0004】
半導体装置の製造におけるワイヤボンディング工程では、半導体チップの電極と、リードフレームのリード又はベース基板の配線リード(電極)とを、ボンディングツールであるキャピラリから出される金線等で接続するワイヤボンディングが行われる。
【0005】
このワイヤボンディングでは、最初に一方にワイヤを接続するファーストボンディングと、ファーストボンディングの後で他方にワイヤを接続するセカンドボンディングがある。例えば、ファーストボンディングとして行う半導体チップとワイヤとの接続は、キャピラリ先端から少し出ているワイヤを、トーチにより溶融してボールを形成し、このボールを超音波を用いながら半導体チップの電極に圧着するボールボンディングにより行う。
【0006】
また、セカンドボンディングとして行うリードフレーム(又はベース基板)とワイヤとの接続は、ファーストボンディングでボールボンディングを行った後、引き続きキャピラリからワイヤを引き出しながらワイヤループを作り、リードフレーム(又はベース基板)側においてキャピラリの周囲でワイヤを潰すようにして圧着するステッチボンディングにより行う。
【0007】
ところで、このようなワイヤボンディングにおいて、半導体チップやリードフレーム等のボンディング対象物の本体、メッキ、ソルダレジスト等の影響により、キャピラリの先端には、金(Au)、銀(Ag)、シリコン(Si)、ソルダレジスト(SR)等の異物が汚れとして溜まっていく。そして、異物が溜まった結果、キャピラリの先端形状が大きく変化した場合には、正常なワイヤボンディングを行うことができず、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良の発生要因となる。
【0008】
ここで、先端に異物が溜まったキャピラリを新しいものと交換したり、一旦取り外して薬液等につけて清掃したりすると、コストが掛かる他、キャピラリの取り外しや交換、取り付けによりボンディング条件が変わってしまい、その調整に多大な作業を必要とし、生産効率が落ちるという問題が生じる。
【0009】
そのため、できるだけキャピラリの交換や取り外しを伴う清掃を避けて、キャピラリの先端に付着した汚れを落とす作業を行う必要があり、種々の検討を行った結果、本発明に至った。
【0010】
なお、前記特許文献1(特開2000−232125号公報)の図5に記載されているワイヤボンディング装置は、清掃パットを設けることにより、キャピラリの取り外しを伴わないでキャピラリの清掃を行うことが可能な装置ではある。しかし、前記特許文献1では、清掃パットの表面がダイヤモンドの粉により粗面化されており、このように粗面化された清掃パットの表面でキャピラリを超音波振動させることにより、当該振動によるキャピラリと清掃パッドとの摩擦でキャピラリに付着した汚れを削り落とすようになっている。そのため、キャピラリに傷を付ける場合もあり、逆にキャピラリの寿命を短くしてしまう場合もある。よって、前記した問題は特許文献1によって解消されるものではない。
【0011】
本発明の目的は、キャピラリの汚れを清掃することで確実なワイヤボンディングを実現し、これにより、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の歩留りを向上させることができる技術を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の品質を向上させることができる技術を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、キャピラリの汚れを清掃することでキャピラリの交換回数を減らし、半導体装置の製造における製造コストを抑えることができる技術を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、自動でキャピラリの汚れを清掃することで作業者が手作業でキャピラリの交換を行う等の手間を軽減し、半導体装置の製造における作業効率を向上させることができる技術を提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0017】
すなわち、本発明は、ボンディングツールであるキャピラリを用いて、ヒートステージ上に配置された半導体チップと半導体チップに隣接して配置されたリードとをワイヤで接続するワイヤボンディング工程を有するものである。そして、ワイヤボンディング工程において、一定条件に到達した場合に、キャピラリを用いて、ヒートステージに設けられたキャピラリ清掃ツール上で空ボンディングを行うことで、キャピラリに付着した汚れをキャピラリ清掃ツールに転写させるキャピラリ清掃工程を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0019】
ワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディングが一定条件に到達した場合に、キャピラリを用いて、ヒートステージに設けられたキャピラリ清掃ツール上で空ボンディングを行うことで、キャピラリに付着した汚れをキャピラリ清掃ツールに転写させることができる。その結果、キャピラリの汚れを清掃して確実なワイヤボンディングを実現し、これにより、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の歩留りを向上させることができる。また、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の品質を向上させることができる。また、キャピラリの汚れを清掃することでキャピラリの交換回数を減らし、半導体装置の製造における製造コストを抑えることができる。また、自動でキャピラリの汚れを清掃することで作業者が手作業でキャピラリの交換を行う等の手間を軽減し、半導体装置の製造における作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0021】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0022】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。さらに、実施の形態で用いる図面においては、実施の形態の特徴部分を強調するため、実際の構造を簡略化して表す場合もある。
【0025】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態の半導体装置(QFP)の構造の一例を示す断面図、図2は図1に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示す製造プロセスフロー図である。また、図3は本発明の実施の形態のワイヤボンダの構造の一例を示す斜視図、図4は図3に示すワイヤボンダのヒートステージの構造の一例を示す拡大平面図、図5は図4に示すヒートステージをA−A線に沿って切断した構造の一例を示す拡大断面図である。また、図6は本実施の形態のワイヤボンディング工程の手順の一例を示す製造プロセスフロー図、図7はワイヤボンディング時のヒートステージ等の様子の一例を示す拡大平面図、図8は図7に示すヒートステージ等をB−B線に沿って切断した構造の一例を示す拡大断面図である。また、図9は本発明の実施の形態のキャピラリ清掃工程の手順の一例を示す製造プロセスフロー図、図10は本発明の実施の形態のキャピラリ清掃工程の手順の他の例を示す製造プロセスフロー図である。
【0026】
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態の半導体装置の一例の構成を説明する。本実施の形態の半導体装置1は、樹脂封止形で、面実装形の半導体パッケージであり、例えばQFP(Quad Flat Package)形態の半導体装置である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置1は、封止樹脂部2と、封止樹脂部2によって封止された半導体チップ(半導体素子)3と、導電体によって形成された複数のリード4と、封止樹脂部2によって封止されかつ複数のリード4と半導体チップ3の表面の複数の電極(パッド)3aとを電気的に接続する複数のワイヤ6と、半導体チップ3が搭載されたチップ搭載部であるタブ(ダイパッド)7とを備えている。また、タブ7に接続された複数の吊りリード8(図7に図示)を備えている。
【0028】
封止樹脂部2は、例えば、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料からなる。この封止樹脂部2により、半導体チップ3、リード4、ワイヤ6、タブ7および吊りリード8が封止され、保護される。また、封止樹脂部2の裏面2aが、半導体装置1の実装面である。
【0029】
半導体チップ3は、例えば、単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)に種々の半導体素子または半導体集積回路を形成した後、必要に応じて半導体基板の裏面研削を行ってから、ダイシングなどにより半導体基板を各半導体チップ3に分離したものである。半導体チップ3は、その表面(半導体素子形成側の主面)が上方を向くようにタブ7上に搭載され、半導体チップ3の裏面が導電体からなるタブ7に、例えば銀ペーストまたは絶縁ペーストなどの接合材(図示省略)を介して接合されている。
【0030】
半導体チップ3の表面には、アルミニウムなどからなる複数の電極(パッド)3aが形成されている。電極3aは、半導体チップ3に形成された半導体素子または半導体集積回路に電気的に接続されている。半導体チップ3の表面の各電極3aは、当該半導体チップ3に隣接して配置された各リード4の上面4aに、例えば金(Au)線などの金属細線などからなるワイヤ6を介して電気的に接続されている。
【0031】
リード4はタブ7の周囲に、その一端がタブ7に対向するように配置されている。リード4は、封止樹脂部2に埋め込まれたインナリードと、封止樹脂部2の側面2bに露出するアウタリードとの両者の機能を兼ねている。すなわち、封止樹脂部2によって封止され、リード4のボンディング部として機能し得るリード4の上面4aにワイヤ6が接合され、封止樹脂部2の側面2bに外部接続端子として機能し得るリード4が、例えばガルウイング状に露出している。なお、リード4の上面4aには、ワイヤ6の接続を容易にするためにメッキ層(例えば銀メッキ層)を形成することもできる。
【0032】
リード4と半導体チップ3との間は封止樹脂部2を構成する材料で満たされており、リード4と半導体チップ3とが接触しないようになっている。また、隣り合うリード4間は封止樹脂部2を構成する材料により満たされており、互いに接触しないようになっている。
【0033】
封止樹脂部2の裏面2aに対応する半導体装置1の裏面が、半導体装置1の実装面となり、封止樹脂部2の側面2bから露出した各リード4が、封止樹脂部2の裏面2a(すなわち半導体装置1の裏面)と略面一となるようにガルウイング状に曲げ成形されて外部接続端子を構成する。また、封止樹脂部2から露出するリード4の下面にはメッキ層(例えば半田メッキ層)が形成されているが、理解を簡単にするために、メッキ層の図示を省略している。リード4の下面にメッキ層が形成されていることで、半導体装置1を基板(外部基板、マザーボード)に実装する際に、基板上の端子または導体パターンと半導体装置1の端子(リード4の下面)との間の電気的接続の信頼性を向上することができる。
【0034】
タブ7には、複数(例えば4本)の吊りリード8が接続されている。各吊りリード8は、導電体材料からなり、一端がタブ7に接続され、タブ7の外方に向かって延在している。吊りリード8は、半導体装置1の製造に用いられたリードフレーム5(のフレーム枠)にタブ7を保持または支持するために設けられ、封止樹脂部2の形成後にリードフレーム5から切断され、吊りリード8の切断により生じた側面(すなわちタブ7に接続された側の端部とは逆側の端部)である切断面が封止樹脂部2の側面(切断面)2bで露出している。リード4、タブ7および吊りリード8は、いずれも導電体材料からなり、例えば半導体装置の製造の際にリードフレームに用いられた共通の導電体材料からなる。
【0035】
次に、本実施の形態の半導体装置(QFP)1の製造方法の一例の手順を、図2に示す製造プロセスフロー図を用いて説明する。図2における各製造工程の右側には、本実施の形態の半導体装置1の各製造工程における断面図(要部断面図)を示している。また、図2には、リードフレーム5の一つの半導体パッケージに対応する領域(そこから一つの半導体装置1が製造される領域)を示している。
【0036】
まず、図2のステップS1に示すように、半導体装置1の製造に用いられるリードフレーム5を準備する(フレーム準備工程)。リードフレーム5は、例えば、銅または銅合金、あるいは42−アロイなどの導電体材料からなるプレス加工フレーム(エッチング加工フレームでも良い)で構成されている。また、リードフレーム5は、半導体チップ3を搭載するためのタブ7と、その一端がタブ7と離間して対向するように配置され、他端がリードフレーム5のフレーム枠(図示省略)と接続するリード4とを有している。また、タブ7の四隅に吊りリード8(図7に図示)の一端が接続し、吊りリード8の他端がフレーム枠に接続して、タブ7がリードフレーム5のフレーム枠に保持または支持されている。
【0037】
また、その他、半導体装置1の組み立てに必要な、半導体チップ3、金(Au)線などの金属細線からなるワイヤ6、樹脂封止部2となるシリコン樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料などを準備する。半導体チップ3は、単結晶シリコンなどからなる半導体基板上に形成されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)やマイクロコンピュータなどを有し、この表面上にアルミニウムなどの電極(パッド)3aが形成され、内部に形成されたASICやマイクロコンピュータなどの所定の回路の各端子から表面上の電極3aまで電気的に接続されたものである。また、半導体チップ3は、ウェハの前工程において、酸化・拡散・不純物導入、配線パターン形成、絶縁層形成、配線層形成などのウエハ処理工程を繰り返して所望の回路が形成され、このウェハを切断してチップ毎に個別に切り離されたものである。
【0038】
その後、図2のステップS2に示すように、リードフレーム5のタブ7上に半導体チップ3を銀ペーストまたは絶縁ペーストなどの接合材(図示省略)を介して接合する(ダイボンディング工程)。
【0039】
その後、図2のステップS3に示すように、半導体チップ3の複数の電極3aと、半導体チップ3に隣接して配置されたリードフレーム5の複数のリード4の上面4aとを複数のワイヤ6を介してそれぞれ電気的に接続する(ワイヤボンディング工程)。この際、ファーストボンディングとしてワイヤ6の一端を半導体チップ3の電極3aに接続してから、セカンドボンディングとしてワイヤ6の他端をリード4の上面4aに接続する。なお、このステップS3に示すワイヤボンディング工程については、詳細を後述する。
【0040】
その後、図2のステップS4に示すように、例えばトランスファモールド法により、半導体チップ3、リード4の一部、ワイヤ6およびタブ7を封止樹脂部2によって封止する(モールド工程)。封止樹脂部2は、例えば、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料からなる。また、モールド工程では、封止樹脂部2の側面2bからリード4が露出するように、封止樹脂部2を形成する。
【0041】
その後、必要に応じてリードフレーム5の封止樹脂部2から露出する部分(導電体からなる部分)上にメッキ層(図示省略)を形成した後、図2のステップS5に示すように、封止樹脂部2から突出したリードフレーム5のリード4を所定の長さを残して切断し、このリード4をガルウイング状に成形して外部接続端子とする。これにより、図1に示すようなQFP構造の半導体装置1が完成する(切断・成形工程)。
【0042】
次に、本実施の形態の半導体装置1の製造方法における図2のステップS3に示すワイヤボンディング工程及び当該ワイヤボンディング工程に用いるワイヤボンダについて詳細に説明する。
【0043】
まず、ワイヤボンディング工程に用いるワイヤボンダ10について説明する。ワイヤボンダ10は、リードフレーム5のリード4と、当該リードフレーム5のタブ7にダイボンディングされた半導体チップ3の電極3aとを、ワイヤ6で電気的に接続する装置である。
【0044】
図3に示すように、本実施の形態のワイヤボンダ10は、一定の荷重と熱、さらに超音波振動をワイヤ6に伝えて圧接する超音波併用熱圧着方式のワイヤボンダであり、ワイヤボンディングを行うための主要な装置を搭載したボンディングヘッド11を備えている。このボンディングヘッド11には、振動源となる振動子(図示省略)、振動振幅を増大させるUSホーン12及び圧着子(ボンディングツール)であるキャピラリ20等からなる超音波発振子を有している。前記USホーン12は略水平方向に延在する略円柱状に形成されており、一端側に前記振動子が取り付けられ、他端側に前記キャピラリ20が取り付けられている。
【0045】
前記キャピラリ20は、例えばセラミック等からなり、略円柱状に形成されてその下部先端がテーパ状に細くなるように形成されている。そして、その先端からは、例えば金線等のワイヤ6を繰り出すことができるようになっている。そして、ワイヤボンディング時にキャピラリ20から超音波を発振することにより、繰り出したワイヤ6の塑性変形が補助されて、半導体チップ3の表面に形成される電極3aとワイヤ6及び半導体チップ3に隣接して配置されたリードフレーム5のリード4とワイヤ6との融着が促されるようになっている。印加する超音波の振動周波数としては、例えば60〜125kHzを採用することができる。また、キャピラリ20を電極3aに押しつける際に、押さえ(図示省略)によって押圧荷重を負荷することで、電極3aとワイヤ6及びリード4とワイヤ6との融着が促されるようになっている。荷重としては、例えば5〜100gを採用することができる。
【0046】
また、ボンディングヘッド11におけるキャピラリ20の近くにはワイヤクランパ13を有しており、キャピラリ20に通される前のワイヤ6をクランプすることができるようになっている。また、ボンディングヘッド11はXYテーブル14上に搭載されており、このXYテーブル14によりキャピラリ20がXY方向に移動して、半導体チップ3の各電極3aとリードフレーム5の各リード4とをそれぞれワイヤ6で繋ぐようになっている。また、ボンディングヘッド11にはカメラ15を搭載しており、このカメラ15によりワイヤボンディングを行う半導体チップ3の電極3aやリードフレーム5のリード4の位置を正確に把握するようになっている。また、ボンディングヘッド11には例えばトーチ(図示省略)を有しており、このトーチ等による高圧放電によってワイヤ6の先端が溶融され、後述するボールが形成されるようになっている。
【0047】
また、ワイヤボンダ10は、ボンディングヘッド11外に、半導体チップ3がダイボンディングされたリードフレーム5を搬送するフィーダ16を備えており、当該フィーダ16上におけるキャピラリ20の設置位置付近に、搬送されてきたリードフレーム5を配置し、キャピラリ20を用いたワイヤボンディングを行うヒートステージ30を備えている。本実施の形態のヒートステージ30は、図4に示すように、熱伝導率の良いセラミック、金属等の材質からなる例えば平面視略方形状の部材であり、図5に示すように、リードフレーム5を配置してワイヤボンディングを行う箇所は、他の箇所よりも1段高くなった半導体装置搭載エリア31となっている。この半導体装置搭載エリア31の略中心位置には、リードフレーム5のタブ7にダイボンディングされた半導体チップ3が配置される半導体チップ搭載エリア32を有している。当該半導体チップ搭載エリア32の中心位置は、リードフレーム5の裏面側に突出しているタブ7を収めるタブ逃げ用溝33を備えている。また、タブ逃げ用溝33を中心としてX字状に、リードフレーム5の裏面側にタブ7と同様に突出している吊りリード8を収める吊りリード逃げ用溝34を備えている。なお、タブ逃げ用溝33及び吊りリード逃げ用溝34は、前記した形状に限るものではなく、タブ7及び吊りリード8の大きさ、形状等に合わせて形成されていれば良い。また、半導体チップ搭載エリア32におけるタブ逃げ用溝33及び吊りリード逃げ用溝34以外の箇所(本実施の形態ではX字状のタブ逃げ用溝33同士の間に1箇所ずつで合計4箇所)に、真空吸着装置(図示省略)に接続された吸引口35を備えている。この吸引口35により、配置されたリードフレーム5のタブ7にダイボンディングされた半導体チップ3を真空吸着して固定し、ワイヤボンディング時にワイヤ6を融着しやすくするようになっている。また、ヒートステージ30は、ワイヤが融着しやすくなるように、例えば100〜230℃に加熱されるようになっている。なお、ヒートステージ30は、その全体が加熱されるようになっているが、半導体装置搭載エリア31や後述するキャピラリ清掃ツール36付近は、ワイヤボンディング時のワイヤ6の融着性を良くしたり、キャピラリ20の清掃時に汚れを転写し易くしたりするために、ヒートステージ30の材質を変える等によって、温度が他の箇所と異なる(温度が高い又は低い)ようにしてあっても良い。
【0048】
また、図4及び図5に示すように、ヒートステージ30は、当該ヒートステージ30の表面上における半導体装置搭載エリア31とは異なる位置に、キャピラリ清掃ツール(異物除去シート)36を有している。本実施の形態のキャピラリ清掃ツール36は、ヒートステージ30の表面の一部に形成した凹部37を有している。本実施の形態の凹部37は、平面視略方形状の凹部であり、ヒートステージ30におけるリードフレーム5の搬送方向(例えば、図4及び図5の右から左に向かう方向)Cの前方側の端部付近に形成されている。また、キャピラリ清掃ツール36の凹部37の中には、所定厚みのメッキ層38が形成されている。メッキ層38としては、銀メッキ、パラジウムメッキを施したものでも良いが、金線からなるワイヤ6との接着性の良さ等から、本実施の形態では金メッキを施したメッキ層(金メッキ層)38が形成されている。
【0049】
また、キャピラリ清掃ツール36の凹部37の深さ及び大きさとメッキ層38の厚みは、後述するキャピラリ清掃工程において当該メッキ層38に対して清掃用の空ボンディングが複数回行われても、製品組立ての際のワイヤボンディング時にフィーダ16上を搬送されるリードフレーム5の裏面に、清掃用の空ボンディングの際のワイヤ6が接触しないような深さ、大きさ及び厚みに調整されている。なお、キャピラリ清掃ツール36は、前記したような位置、大きさ及び形状に必ずしも形成されていなくても良い。例えば、本実施の形態より小さめに形成された凹部37が、ヒートステージ30におけるワイヤボンディング時に邪魔にならない複数箇所(例えば、ヒートステージ30の四隅等)に形成されていても良い。また、本発明において空ボンディングとは、製品組立ての際のワイヤボンディング工程以外でキャピラリ清掃用に行うボンディング動作全般を指し、キャピラリ20からワイヤ6を出す出さないに関わらず空ボンディングと称するものとする。
【0050】
次に、前記ワイヤボンダ10を用いて行う図2のステップS3に示すワイヤボンディング工程について詳述する。図6は、本実施の形態のワイヤボンディング工程(半導体チップ3の電極3aとリード4との間をワイヤ6で接続する工程)の手順の一例を示す製造プロセスフロー図、図7はワイヤボンディング時のヒートステージ等の様子の一例を示す拡大平面図、図8は図7に示すヒートステージ等をB−B線に沿って切断した構造の一例を示す拡大断面図である。
【0051】
まず、ワイヤボンダ10のヒートステージ30(少なくとも、半導体装置搭載エリア31)を所定の温度(例えば、100〜230℃)に加熱する。それから、図2のステップS2に示すダイボンディング工程を行ったリードフレーム5を、図7及び図8に示すように、加熱されたヒートステージ30の半導体装置搭載エリア31に配置して加熱する。その際、半導体装置搭載エリア31の略中心位置の半導体チップ搭載エリア32に、リードフレーム5のタブ7にダイボンディングされた半導体チップ3を配置する。また、タブ7及び吊りリード8を、半導体チップ搭載エリア32におけるタブ逃げ用溝33及び吊りリード逃げ用溝34(図4に図示)に収める。また、当該リードフレーム5におけるタブ7にダイボンディングされた半導体チップ3を吸引口35により真空吸着して半導体装置搭載エリア31の半導体チップ搭載エリア32に固定する。また、リードクランパ(リード押さえ)39により所定の荷重を加えて、リードフレーム5のリード4をヒートステージ30の半導体装置搭載エリア31に固定する。
【0052】
また、トーチ等による高圧放電によってその先端を溶融してボール6aを形成した、金(Au)線等からなるワイヤ6を、図6のステップS31に示すように、ワイヤボンダ10のボンディングツールであるキャピラリ20に保持して、半導体チップ3の電極3a上に待機させる(ボール形成工程)。なお、ワイヤ6の直径は例えば25〜30μm程度である。
【0053】
それから、図6のステップS32に示すように、キャピラリ20を下降させ、待機させていたワイヤ6を半導体チップ3の電極3a上に適切な荷重をもって接触させる(ファーストボンディング工程)。そして、ワイヤ6のボール6aが電極3aに接触した後、キャピラリ20を超音波振動させ、このときの荷重や印加された超音波による振動エネルギーでボール6aと電極3aとを接合させる。
【0054】
それから、図6のステップS33に示すように、キャピラリ20からワイヤ6を繰り出しながら、当該キャピラリ20を適切な軌跡を描いて移動させ、リード4の上面4aに移動させる。この軌跡によって、ワイヤ6の適切なループ形状が得られる。そして、キャピラリ20を下降させて当該キャピラリ20に保持されたワイヤ6をリード4の上面4aに対して適切な荷重をもって押し付けると共に、キャピラリ20を超音波振動させ、このときの荷重や印加された超音波による振動エネルギーでワイヤ6とリード4の上面4aとを接合させる(セカンドボンディング工程)。
【0055】
その後、図6のステップS34に示すように、キャピラリ20を上昇させ、その過程でワイヤクランパ13でワイヤ6を保持し、ワイヤ6をセカンドボンディング点(接合部)から切断する(ワイヤ切断工程)。このようにして、半導体チップ3の電極3aとリード4の上面4aとの間をワイヤ6(ボール6aを含むワイヤ6)で電気的に接続する。なお、図6のステップS34に示すリード4の先端部近傍の上面4aには、ワイヤ6の接続を容易にするためにメッキ層(例えば銀メッキ層)が形成されている。
【0056】
これを繰り返すことにより、半導体チップ3の複数の電極3aとリードフレーム5の複数のリード4の上面4aとを複数のワイヤ6を介してそれぞれ電気的に接続することができる。
【0057】
ここで、ワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディング(製品組立ての際のワイヤボンディング)が一定条件に到達した場合には、キャピラリ20に付着した汚れを落とすためのキャピラリ清掃工程を行うようになっている。本実施の形態では、ワイヤボンディングが一定条件に到達した場合とは、キャピラリ20が行ったボンディング回数(ワイヤ6を半導体チップ3の電極3a又はリード4の上面4aに接合させた回数)が所定回数(例えば、ワイヤ6における半導体チップ3の電極3aへの接合とリード4の上面4aへの接合を合わせて100万回)に達した場合となっている。また、本実施の形態におけるキャピラリ清掃工程は、キャピラリ20を用いて、前記ヒートステージ30に設けられた前記キャピラリ清掃ツール36上で空ボンディングを行うことで、キャピラリ20に付着した汚れをキャピラリ清掃ツール36に転写させるものである。
【0058】
以下、キャピラリ清掃工程の詳細について、図6〜図10を用いて説明する。前記したような一連のワイヤボンディングが終了したら、図6のステップS35に示すように、リードフレーム5において必要分のワイヤボンディングが終了したか否か(リードフレーム5において電気的に接続する必要のある半導体チップ3の電極3aとリード4の上面4aとのワイヤボンディングが全て終了したか否か)の判定を行う。ここで、必要分のワイヤボンディングが終了した場合には、次に、図6のステップS36に示すように、キャピラリ20が行ったボンディング回数が所定回数(例えば100万回)を超えているか否かの判定を行う。ここで、ボンディング回数が所定回数を超えていない場合は、次のリードフレーム5のワイヤボンディングを行うが、ボンディング回数が所定回数を超えている場合には、図6のステップS37に示すように、キャピラリ清掃工程を行う。
【0059】
以下、本実施の形態のキャピラリ清掃工程の一例について、図9を用いて説明する。この例は、セカンドボンディング工程の制御を利用してキャピラリ20の清掃を行うものである。このキャピラリ清掃工程では、まず、ヒートステージ30を加熱しておく。
【0060】
また、図9のステップS371に示すように、キャピラリ20をヒートステージ30に設けられたキャピラリ清掃ツール36上に移動させる。そして、図9のステップS372に示すように、キャピラリ20の先端をキャピラリ清掃ツール36の凹部37の中に形成されたメッキ層(本実施の形態では金メッキ層)38に接触させ、その状態で平行移動させてキャピラリ20の先端をメッキ層38に擦り付ける。その際、キャピラリ20から超音波を発振することにより、キャピラリ20の先端に付着した汚れがメッキ層38に転写されるように促す。
【0061】
なお、キャピラリ清掃工程におけるキャピラリ20の超音波出力は、キャピラリ20の先端に付着した汚れを落ち易くするため、製品組立ての際のワイヤボンディング時以上に設定しておく。例えば、製品組立ての際のワイヤボンディング時よりも超音波出力を0〜50%程度大きくしておくのが好ましく(超音波出力を0%大きくするというのは出力を変化させないのと同意)、さらには製品組立ての際のワイヤボンディング時よりも超音波出力を30%程度大きくしておくのがより好ましい。
【0062】
そして、キャピラリ20の先端を、超音波を発振しながら一定距離又は一定時間メッキ層38に擦り付けた後、図9のステップS373に示すように、キャピラリ20をキャピラリ清掃ツール36から離間させる。キャピラリ20のメッキ層38への擦り付け方などは適宜の方法で行われれば良く、直線状に擦り付けたり、円弧状に擦り付けたり、ジグザグに擦り付けたり、ランダムに擦り付けたりする場合が挙げられる。その後、キャピラリ20の先端からボール形成に必要な量のワイヤ6を繰り出し、ワイヤ6の先端に製品組立ての際のワイヤボンディング用のボール6aを形成する等、製品組立てのワイヤボンディングの準備を行い、製品組立てのワイヤボンディングに戻る。このようにして、キャピラリ清掃工程によりキャピラリ20の先端に付着した汚れを落とす(転写させる)清掃を行う。
【0063】
次に、本実施の形態のキャピラリ清掃工程の他の例について、図10を用いて説明する。前記例がセカンドボンディング工程の制御を利用してキャピラリ20の清掃を行うのに対し、この例は、ファーストボンディング工程の制御を利用してキャピラリ20の清掃を行うものである。このキャピラリ清掃工程では、まず、キャピラリ20に保持された、切断後のワイヤ6の先端をトーチ等による高圧放電によって溶融して、製品組立ての際のワイヤボンディングで形成するボール6aよりも小さなボールを形成する。また、ヒートステージ30を加熱しておく。
【0064】
ここで、製品組立ての際のボール6aより小さなボールを形成するのは、以下の理由による。すなわち、製品組立ての際のボール6aを形成するとボール6aが大き過ぎて邪魔になり、キャピラリ清掃ツール36のメッキ層38にキャピラリ20が接触し難くなって、キャピラリ20の汚れを転写する効果が落ちてしまう。また、ボール6aを形成しないと、ワイヤ6がキャピラリ20の中に引っ込んでしまい、キャピラリ清掃工程の作業中にワイヤ6をキャピラリ清掃ツール36のメッキ層38にボンディングすることができなくなる。ワイヤ6のボール6aをメッキ層38にボンディングしていないと、清掃後にキャピラリ20からワイヤ6を繰り出すのに時間が掛かるため、製品組立てのワイヤボンディングを行うのに支障を来す可能性がある。このため、キャピラリ20がキャピラリ清掃ツール36のメッキ層38に接触し易く、かつワイヤ6がキャピラリ20の中に引っ込まないようにするために製品組立ての際のボール6aより小さなボールを形成するのである。
【0065】
その後、図10のステップS381に示すように、小さなボール6aを形成したワイヤ6を保持したキャピラリ20を、キャピラリ清掃ツール36上に移動させる。そして、図10のステップS382に示すように、キャピラリ20の先端をキャピラリ清掃ツール36の凹部37の中に形成されたメッキ層(本実施の形態では金メッキ層)38に接触させ、キャピラリ20から超音波を発振することにより、キャピラリ20の先端に形成されたボール6aをメッキ層38にボンディングする。
【0066】
本実施の形態では、ワイヤ6が金線からなり、メッキ層38が金メッキ層であるため、ボンディングした際の接着性が良いという利点がある。つまり、キャピラリ20の汚れを転写させる目的としては、金メッキ、銀メッキ、パラジウムメッキ等であれば同等の効果を有するが、金線と金メッキのようにワイヤ6とメッキ層38との接着性が良いと、清掃用のボンディングを行った後にワイヤクランパ13でワイヤ6を保持して当該ワイヤ6を切断する際にボンディング箇所が剥がれないため切断し易く、好ましい。また、ボンディングの際に、キャピラリ20の先端のできるだけ多くの部分がメッキ層38に接触するように、キャピラリ20が変形などの支障を来さない程度にキャピラリ20をメッキ層38に押し付けて超音波を発振し、キャピラリ20の先端に付着した汚れがメッキ層38に転写されるように促す。
【0067】
なお、この例においても、前記したセカンドボンディング工程の制御を利用してキャピラリ20の清掃を行う例の場合と同様に、キャピラリ清掃工程におけるキャピラリ20の超音波出力は、製品組立ての際のワイヤボンディング時以上に設定しておく。
【0068】
そして、キャピラリ20の先端を、超音波を発振しながら一定距離又は一定時間メッキ層38に押し付けた後、図10のステップS383に示すように、キャピラリ20をキャピラリ清掃ツール36から離間させる。そして、キャピラリ20の先端からボール形成に必要な量のワイヤ6を繰り出した位置でワイヤ6をワイヤクランパ13で保持し、ワイヤ6を切断する。その後、ワイヤ6の先端に製品組立ての際のワイヤボンディング用のボール6aを形成する等、製品組立てのワイヤボンディングの準備を行い、製品組立てのワイヤボンディングに戻る。このようにして、キャピラリ清掃工程によりキャピラリ20の先端に付着した汚れを落とす(転写させる)清掃を行う。
【0069】
なお、前記したキャピラリ清掃工程の2つの例において、ワイヤボンダ10に、キャピラリ20の先端に付着した汚れがキャピラリ清掃工程によって落ちたか否かを検査するためのカメラ又はセンサ等を設置しておき、キャピラリ清掃工程で空ボンディングを一定量行った後で当該検査を行うようになっていても良い。この場合、汚れが落ちていればキャピラリ清掃工程を終了して製品組立てのワイヤボンディングに戻り、汚れが落ちていなければキャピラリ清掃工程を続行し、汚れが落ちるまで(汚れが落ちたと判断されるまで)繰り返し清掃を行う。これにより、確実にキャピラリ20の清掃を行うことができる。
【0070】
また、本実施の形態では、キャピラリ清掃工程として、ファーストボンディング工程の制御を利用した例と、セカンドボンディング工程の制御を利用した例を記載したが、ファーストボンディング工程とセカンドボンディング工程の双方の制御を利用したキャピラリ清掃工程を行っても良い。すなわち、前記したようなファーストボンディング工程の制御を利用したキャピラリ清掃工程を行った後、そのまま前記したようなセカンドボンディング工程の制御を利用したキャピラリ清掃工程を行うのである。双方のキャピラリ清掃工程を行うことで、より確実なキャピラリの清掃を行うことができる。
【0071】
本実施の形態の半導体装置1の製造方法によれば、ワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディング(製品組立ての際のワイヤボンディング)が一定条件に到達した場合に、キャピラリ20を用いて、ヒートステージに設けられたキャピラリ清掃ツール36上で空ボンディングを行うことで、キャピラリ20に付着した汚れをキャピラリ清掃ツール36に転写させることができる。その結果、キャピラリ20の汚れを清掃して確実なワイヤボンディングを実現することができる。これにより、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の歩留りを向上させることができる。また、ワイヤ剥がれ等のボンディング不良を防止して製品の品質を向上させることができる。また、キャピラリ20の汚れを清掃することでキャピラリ20の交換回数を減らし、半導体装置1の製造における製造コストを抑えることができる。また、自動でキャピラリ20の汚れを清掃することで作業者が手作業でキャピラリ20の交換を行う等の手間を軽減し、半導体装置1の製造における作業効率を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0073】
例えば、前記実施の形態では、半導体装置1としてQFPを用いて説明したが、これに限るものではなく、製造過程でワイヤボンディングを行うものであれば、QFN等の他のリードフレームタイプの半導体装置や、BGA、CSP等の基板タイプの半導体装置であっても良い。なお、基板タイプの半導体装置におけるワイヤボンディングでは、半導体チップとベース基板のリード(配線リード、電極)とをワイヤで電気的に接続することになる。
【0074】
また、前記実施の形態では、キャピラリ清掃工程を行うために到達すべきワイヤボンディング工程における一定条件として、キャピラリ20が行ったボンディング回数が所定回数に達することを挙げていたが、これに限るものではなく、他の条件に応じてキャピラリ清掃工程を行うようになっていても良い。例えば、ワイヤボンダ10を稼働させた時間が所定時間を超えた場合にキャピラリ清掃工程を行うようになっていても良い。また、ワイヤボンダ10に、キャピラリ20の先端の汚れ具合を監視するカメラやセンサ等を設置しておき、当該カメラやセンサの監視に基づき、キャピラリ20の先端の汚れ具合が一定状態を超えたと判断された場合にキャピラリ清掃工程を行うようになっていても良い。当該監視用のカメラやセンサは、例えば前記したようなキャピラリ清掃工程において汚れが落ちたか否かを検査するためのカメラやセンサと兼用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、半導体チップとリードとをワイヤで接続する半導体装置の製造技術に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態の半導体装置(QFP)の構造の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示す製造プロセスフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態のワイヤボンダの構造の一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示すワイヤボンダのヒートステージの構造の一例を示す拡大平面図である。
【図5】図4に示すヒートステージをA−A線に沿って切断した構造の一例を示す拡大断面図である。
【図6】本実施の形態のワイヤボンディング工程の手順の一例を示す製造プロセスフロー図である。
【図7】ワイヤボンディング時のヒートステージ等の様子の一例を示す拡大平面図である。
【図8】図7に示すヒートステージ等をB−B線に沿って切断した構造の一例を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態のキャピラリ清掃工程の手順の一例を示す製造プロセスフロー図である。
【図10】本発明の実施の形態のキャピラリ清掃工程の手順の他の例を示す製造プロセスフロー図である。
【符号の説明】
【0077】
1 半導体装置(QFP)
2 封止樹脂部
2a 裏面
2b 側面
3 半導体チップ
3a 電極(パッド)
4 リード
4a 上面
5 リードフレーム
6 ワイヤ
6a ボール
7 タブ(ダイパッド)
8 吊りリード
10 ワイヤボンダ
11 ボンディングヘッド
12 USホーン
13 ワイヤクランパ
14 XYテーブル
15 カメラ
16 フィーダ
20 キャピラリ(ボンディングツール)
30 ヒートステージ
31 半導体装置搭載エリア
32 半導体チップ搭載エリア
33 タブ逃げ用溝
34 吊りリード逃げ用溝
35 吸引口
36 キャピラリ清掃ツール(異物除去シート)
37 凹部
38 メッキ層(金メッキ層)
39 リードクランパ(リード押さえ)
C リードフレームの搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングツールであるキャピラリを用いて、ヒートステージ上に配置された半導体チップと前記半導体チップに隣接して配置されたリードとをワイヤで接続するワイヤボンディング工程を有し、
前記ワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディングが一定条件に到達した場合に、前記キャピラリを用いて、前記ヒートステージに設けられたキャピラリ清掃ツール上で空ボンディングを行うことで、前記キャピラリに付着した汚れを前記キャピラリ清掃ツールに転写させるキャピラリ清掃工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記ワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディングが一定条件に到達した場合とは、前記キャピラリが行ったボンディング回数が所定回数に達した場合であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記キャピラリ清掃ツールは、前記ヒートステージの一部に設けられた凹部と、当該凹部に施された金メッキ層とで構成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記キャピラリ清掃工程での前記空ボンディングでは、製品組立ての際のワイヤボンディング時よりも超音波出力を大きくしてボンディングを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記キャピラリ清掃工程では、前記空ボンディングを行った後で前記キャピラリの汚れ具合を検査し、当該検査で前記キャピラリの汚れが落ちていないと判断された場合には、汚れが落ちるまで前記空ボンディングを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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