説明

半導体装置及び電子回路装置

【課題】供給される電源電流の電流値が想定よりも小さい場合に負荷回路による電源電流の引き込みが過剰になって電源電流の電圧が不所望に降下する事態の発生を容易に防止する。
【解決手段】電源入力端子(VBUS)に供給された電源電流に基づいて生成される内部電源電圧(VCC)を動作電源とする電源制御部(21)に、前記電源入力端子に流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限して電源出力端子に与える電流制限回路(30)を設ける。更に、前記電源電流の伝達経路に流入される電流が前記目標電流値に達しないときは、前記電流制限回路による流入電流を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う電流制限値切り換え回路(31)を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標電流を超えないように入力電流を制限する電源制御機能を備えた半導体装置、更にはそのような電源制御機能を備えた電子回路装置に関し、例えばUSB(Universal Serial Bus(登録商標))の追加仕様であるバッテリチャージング規格(Battery Charging Specification, Rev 1.1)を満足するUSB端末装置の電源制御ICに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
当初のUSBの仕様では、小型周辺デバイスに対する給電のみを目的として、接続されたデバイスへの給電には5Vで500mAと5Vで100mAを規定していた。近時、USBの追加仕様であるバッテリチャージング規格(Battery Charging Specification, Rev 1.1, 4/15/2009)が策定され、1500mAを給電可能な電源の規定が行われた。この規格はバッテリ充電の仕様であり、充電のための電力をUSBポートから取得する方法について扱っている。
【0003】
このバッテリチャージング規格では充電のための電源として以下の3種類の電源を定義している。
【0004】
第1はスタンダードダウンストリームポート(Standard downstream port、以降SDPとも称する)である。これはUSB 2.0仕様で定義されているものと同様のポートであり、USBホストやUSBハブが通常備えるポートである。デバイスは、USBデータ端子(D+、D−)の15kΩを介したグランドへの個別の接続を検出することによって、ハードウェアでSDPを認識することができる。このSDPに接続されたPDA(Personal Digital Assistants)やデジタルスチルカメラなどの電子回路装置(以下単にポータブルデバイスとも称する)はSDPから最大500mAの電源電流を引き出すことができる。
【0005】
第2はチャージングダウンストリームポート(Charging downstream port、以降CDPとも称する)である。これは、USBホストやUSBハブにおいてSDPよりも大電流のUSBポートを定義するものであり、USB通信機能を維持し、且つ、チャージング可能なポートを定義する。CDPは1500mAを供給可能である。CDPに接続されたデバイスは、USBデータ端子(D+、D−)に対するハードウェアのハンドシェイクを使用して認識することができる。
【0006】
第3はデディケーテッドチャージングポート(Dedicated charging port、以降DCPとも称する)である。これは、USB通信機能を持たず、チャージング専用とされるポートであり、ACアダプタやカーアダプタなどのエニュメレーションを行わない電源として定義する。DCPは1500mAを供給が可能であり、USBホスト又はUSBハブにおけるUSB端子D+とD−の間の短絡よって識別される。これにより、USBソケットを備えたACアダプタを作ることが可能になる。
【0007】
このようなバッテリチャージング規格に準拠するポータブルデバイスはUSBホストやUSBハブのUSBソケットから受け取った電力を自身の動作やバッテリの充電に使用するのにどれだけの電流を取得するのが適切かを判断しなければならない。給電能力が500mAしかないUSBホストやUSBハブから1000mAを取得しようとすれば、USBポートの過負荷となる。例えばバッテリチャージング規格に準拠するポータブルデバイスは検出したUSBポートの種別に応じ、入力した電源電流に対して図9に例示されるような入力電流制限を行う。
【0008】
特許文献1はUSBコネクタ付のACアダプタを用いてUSB対応の電子機器の充電を行う場合にUSB通信を行うことができないためにその規格電流を知ることができないという課題に着眼している。すなわち、検出手段により他の電子機器との接続が検知されると、制御手段が、充電手段に指示する充電電流値を初期電流値から上昇させながら、測定手段の測定値を監視し、測定値の監視結果に基づいて充電電流値を決定する。そして、制御手段が、決定した充電電流値を充電手段に指示し、二次電池の充電を行わせる。これによって、接続元の他の電子機器からその規格電流等の充電に必要な情報を取得できなくても、監視結果に基づいて決定した充電電流値で充電することで、二次電池の充電を安定に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−154692号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Battery Charging Specification, Rev 1.1, 4/15/2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者はバッテリチャージング規格に準拠したUSBポートの種別がSDP,CDP,又はDCPの何れであるかをUSBデータ端子D+、D−を用いてポータブルデバイスが判別することによって、自身の動作やバッテリの充電に使用するのに適切な電流を取得するための制御について検討した。これによれば、USBポートの種別がSDP,CDP,又はDCPの何れであるかは前記バッテリチャージング規格に準拠してポータブルデバイス側の電源ICで行えばよいが、判別したポートがDCPの場合に、図10に例示されるようにその給電能力が1500mAよりも少ない500mAとされるポートも存在する場合のあることが本発明者によって明らかにされた。これはバッテリチャージング規格の上位規格がUSB2.0規格であることから、DCPであっても500mAという最低の電流供給能力しか満足しないものも提供し得る、とする見解もあり得るからである。
【0012】
しかしながら、接続したUSBポートの種別を電源制御ICが判別することによって、それに最適な目標電源値を取得する制御を行っても、給電側からの電源電流が目標電流値を下まわると、ポータブルデバイス側の負荷によって電源電流が大きく引き込まれて、電源電流によって得られる内部動作電圧が低下し、電源制御IC自体の動作が保証されなくなって、ポータブルデバイスが誤動作を引き起こす虞のあることが本発明者によって見出された。もともと電源制御ICは電源電流が目標電流値を超えないように電流制限を行う回路を備えているが、接続したUSBポートの種別に対する判別結果に応じて電流制限を行う回路の電流制限値を決めるために、給電される電源電流が目標電流よりも少ない場合に、更にこれを制限することはできず、更にその必要性も見出されていなかった。
【0013】
特許文献1の技術は充電手段に指示する充電電流値を初期電流値から上昇させながら測定し、測定値の監視結果に基づいて充電手段の充電電流値を決定するものであり、充電電流の供給基を制御することが必須であり上述の課題の解決に資することはできない。
【0014】
本発明の目的は、供給される電源電流の電流値が想定よりも小さい場合に負荷回路による電源電流の引き込みが過剰になって電源電流の電圧が負所望に降下する事態の発生を容易に防止することができる半導体装置を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、供給される電源電流の電流値が想定よりも小さい場合に負荷回路による電源電流の引き込みが過剰になって電源電流の電圧が負所望に降下して誤動作する事態の発生を容易に防止することができる電子回路装置を提供することにある。
【0016】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0018】
すなわち、電源入力端子に供給された電源電流に基づいて生成される内部電源電圧を動作電源とする電源制御部に、前記電源入力端子に流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限して電源出力端子に与える電流制限回路を設け、前記電源電流の伝達経路に流入される電流が前記目標電流値に達しないときは、前記電流制限回路による流入電流を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0020】
すなわち、供給される電源電流の電流値が想定よりも小さい場合に負荷回路による電源電流の引き込みが過剰になって電源電流の電圧が負所望に降下する事態の発生を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の一実施の形態に係る電源制御ICを適用した電子回路装置を例示するブロック図である。
【図2】図2は電流制限回路に設定した電流制限値と電源ポートからの給電能力との関係に依存する電源電流の電圧波形を例示する特性図である。
【図3】図3は給電ポートの種類に応じて電流制限回路に設定した電流制限値を当該給電ポートの実際の給電能力に応じて変更するときの動作波形を例示する特性図である。
【図4】図4は電流制限回路及び電流制限値の切り換え回路などの具体例を示す回路図である。
【図5】図5は電流制限回路及び電流制限値の切り換え回路などの別の具体例を示す回路図である。
【図6】図6は判定回路による電源電流の入力モードの判別処理手順を例示するフローチャートである。
【図7】図7は図6の判別処理手順におけるSDPとDCP/CDPの判別方法を例示する説明図である。
【図8】図8はDCPとCDPの判別方法を例示する説明図である。
【図9】図9はバッテリチャージング規格に準拠するポータブルデバイスが判別したUSBポートの種別に応じて入力電源電流に対して行う入力電流制限について示した説明図である。
【図10】図10は判別したポートがDCPの場合にその給電能力が1500mAよりも少ない500mAとされるポートも存在する場合のあることを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0023】
〔1〕<外部電源電流の流入が既定に達しないとき流入電流の制限を大きくする>
本発明の代表的な実施の形態に係る半導体装置(10)は、電源電流を入力する電源入力端子(VBUS)と、電源電流を出力する電源出力端子(PSYS)と、前記電源入力端子に供給された電源電流に基づいて内部電源電圧を生成する電圧生成回路(20)と、前記内部電源電圧を動作電源とする電源制御部(21)と、を有する。前記電源制御部は、前記電源入力端子と前記電源出力端子との間の電源電流の伝達経路(22)に配置され、流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限する電流制限回路(30)と、前記電源電流の伝達経路に流入される電流が前記目標電流値に達していないことを当該伝達経路に流れる電流の増加による電圧降下に基づいて検出することにより、前記電流制限回路による流入電流の制限値を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う電流制限値の切り換え回路(31)と、を有する。
【0024】
これにより、目標電流値に達しない電源電流が電源入力端子から供給される場合には、電流制限回路の電流制限値が小さくされて、負荷回路による過大な電流引き込みが阻止され、電源電流による電源電圧が不所望に降下する事態の発生を防止することができる。したがって、目標電流値に達しない小さな電源電流が供給される場合にも半導体装置の電源電圧を維持することができ、電源電圧の低下による半導体装置の誤動作によって、この半導体装置を電源制御ICなどとして利用する電子回路装置の誤動作や動作不能状態の発生の抑止に資することができる。
【0025】
〔2〕<電源電流の入力モードによって決定した電流制限値を実際の流入電流に応じて更に制限>
項1において、前記電源制御部は、前記電源電流の入力モードを判定する判定回路(32)を更に有する。前記電流制限回路は前記判定回路の判定結果にしたがって前記目標電流値が選択可能にされる。
【0026】
これにより、同じ入力モードでも異なる電源電流を供給する電源供給側に対して容易に対処することができる。例えばDCPモードが判定された場合に上記半導体装置を有するポータブルデバイス側ではバッテリチャージング規格に準拠して1500mAの電流制限を設定したとき、実際に接続したホストデバイスが100mAの給電能力しか備えていなくても、ポータブルデバイスの誤動作や動作不能の抑制に資することができる。
【0027】
〔3〕<D+,D−端子による電源電流の入力モード判定>
項2において、一対の入力端子D+,D−を更に有する。前記判定回路は、前記入力端子D+,D−に接続する外部経路の状態によって入力モードを判定する。
【0028】
これにより、バッテリチャージング規格に準拠した、電源電流の入力モードを判別することができる。
【0029】
〔4〕<電流制限値の切り換え回路による入力モードに応じた流入電流の制限値>
項2乃至3の何れかにおいて、前記判定回路で判定された第1モード(DCP)における前記目標電流値は第1電流値であり、前記判定回路で判定された第2モード(SDP)における前記目標電流値は前記第1電流値よりも小さな第2電流値である。前記第1モードにおいて、前記電流制限値の切り換え回路は前記第1電流値よりも小さく制御する流入電流の値を第2電流値に制御する。
【0030】
これにより、第1モードがバッテリチャージング規格におけるDCPでその目標電流である第1電流値が1500mA、第2モードがバッテリチャージング規格のSDPでその目標電流である第2電流値が500mAの場合に、第1モードにおいて500mAの給電能力しかないホストデバイスからの給電に対しても、半導体装置の動作や電源電流の負荷回路の動作を保証することができる。
【0031】
〔5〕<定電流定電圧制御>
項1乃至4の何れかにおいて、バッテリ(12)が接続されるバッテリ端子(PBAT)を更に有する。前記電源制御部は、前記電流制限回路の後段における電源電流の伝達経路から供給される電源電流に対して定電流定電圧制御を行って前記バッテリ端子に供給する充電制御部(33)を更に有する。
【0032】
これにより、バッテリ充電機能を有する半導体装置において、目標より少ない電源電流の供給を受ける場合にも半導体装置の動作が保証される結果、その場合にもバッテリに対する充電機能を保証することができる。
【0033】
〔6〕<入力電流制限アンプの出力をバイアスして電流制限値を切り換える電流制限回路>
項1乃至5の何れかにおいて、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタ(M1)と、前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタ(M2)と、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御して当該入力電流制御トランジスタに流れる前記目標電流値よりも大きな電流を前記目標電流値に制限するための負帰還アンプ回路(OP2,M4)と、を有する。前記電流制限値の切り換え回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下が所定値に達したとき前記負帰還アンプ回路による前記入力電流制御トランジスタの制限電流値を小さくする電流制限切り換えアンプ回路(OP3,M10)から成る。
【0034】
これによれば、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下の度合いを所定値を基準に判別するから、電源電流値の切り換え基準が電源電流の大小などによって影響され難い。
【0035】
〔7〕<入力電流制限アンプの参照電位の切り換えによる電流制限値も切り換え>
請求項1乃至5の何れかにおいて、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタ(M1)と、前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタ(M2)と、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御する負帰還アンプ回路(OP4)と、を有する。前記負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路を兼ねる。前記負帰還アンプ回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて形成される検出電圧(N1)が、一定電圧である第1の参照電圧(VBG)又は前記電源入力端子の電圧を分圧した第2の参照電圧(VN3)を超えることによって、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流を制限する。前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値以上のとき前記第1の電圧が第2の電圧よりも低くされ、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値よりも小さいとき前記第2の電圧が第1の電圧よりも低くされる。
【0036】
これによれば、前記負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路を兼ねるから項6に比べて簡易な構成にされる。ただし、第2の参照電圧は前記電源入力端子の電圧を分圧した電圧であるから電流制限の切り換え基準が電源電流の大小などによって影響されることになり、電流制限幅が狭くなる場合がある。
【0037】
〔8〕<外部電源電流の流入が既定に達しないとき流入電流の制限を大きくする>
本発明の別の実施の形態に係る電子回路装置(1)は、電源電流を入力する電源入力端子と、電源電流を出力する電源出力端子と、前記電源入力端子に供給された電源電流に基づいて内部電源電圧を生成する電圧生成回路と、前記内部電源電圧を動作電源とする電源制御部と、前記電源出力端子に接続された負荷回路と、を有する。前記電源制御部は、前記電源入力端子と前記電源出力端子との間の電源電流の伝達経路に配置され、流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限する電流制限回路と、前記電源電流の伝達経路に流入される電流が前記目標電流値に達していないことを当該伝達経路に流れる電流の増加による電圧降下に基づいて検出することにより、前記電流制限回路による流入電流の制限値を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う電流制限値の切り換え回路と、を有する。
【0038】
これにより、目標電流値に達しない電源電流が電源入力端子から供給される場合には、電流制限回路の電流制限値が小さくされて、負荷回路による過大な電流引き込みが阻止され、電源電流による電源電圧が不所望に降下する事態の発生を防止することができる。したがって、目標電流値に達しない小さな電源電流が供給される場合にも半導体装置の電源電圧を維持することができ、電源電圧の低下による半導体装置の誤動作によって、電子回路装置の誤動作や動作不能状態の発生の抑止に資することができる。
【0039】
〔9〕<電源電流の入力モードによって決定した電流制限値を実際の流入電流に応じて更に制限>
項8において、前記電源制御部は、前記電源電流の入力モードを判定する判定回路を更に有する。前記電流制限回路は前記判定回路の判定結果にしたがって前記目標電流値が選択可能にされる。
【0040】
これにより、同じ入力モードでも異なる電源電流を供給する電源供給側に対して容易に対処することができる。例えばDCPモードが判定された場合に上記半導体装置を有するポータブルデバイス側ではバッテリチャージング規格に準拠して1500mAの電流制限を設定したとき、実際に接続したホストデバイスが100mAの給電能力しか備えていなくても、ポータブルデバイスの誤動作や動作不能の抑制に資することができる。
【0041】
〔10〕<D+,D−端子による電源電流の入力モード判定>
項9において、一対の入力端子D+,D−を更に有する。前記判定回路は、前記入力端子D+,D−に接続する外部経路の状態によって入力モードを判定する。
【0042】
これにより、バッテリチャージング規格に準拠した、電源電流の入力モードを判別することができる。
【0043】
〔11〕<電流制限値の切り換え回路による入力モードに応じた流入電流の制限値>
請求項9において、前記判定回路で判定された第1モードにおける前記目標電流値は第1電流値であり、前記判定回路で判定された第2モードにおける前記目標電流値は前記第1電流値よりも小さな第2電流値である。前記第1モードにおいて、前記電流制限値の切り換え回路は前記第1電流値よりも小さく制御する流入電流の値を第2電流値に制御する。
【0044】
これにより、第1モードがバッテリチャージング規格におけるDCPでその目標電流である第1電流値が1500mA、第2モードがバッテリチャージング規格のSDPでその目標電流である第2電流値が500mAの場合に、第1モードにおいて500mAの給電能力しかないホストデバイスからの給電に対しても、電源電流の負荷回路の動作及び電子回路装置の動作を保証することができる。
【0045】
〔12〕<定電流定電圧制御>
請求項8乃至11の何れかにおいて、バッテリと、前記バッテリが接続されるバッテリ端子と、を更に有する。前記電源制御部は、前記電流制限回路の後段における電源電流の伝達経路から供給される電源電流に対して定電流定電圧制御を行って前記バッテリ端子に供給する充電制御部を更に有する。
【0046】
これにより、バッテリ充電機能を有する電源制御部において、目標より少ない電源電流の供給を受ける場合にも電源制御部の動作が保証される結果、その場合にもバッテリに対する充電機能を保証することができる。
【0047】
〔13〕<入力電流制限アンプの出力をバイアスして電流制限値を切り換える電流制限回路>
項8乃至12の何れかにおいて、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタと、前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタと、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御して当該入力電流制御トランジスタに流れる前記目標電流値よりも大きな電流を前記目標電流値に制限するための負帰還アンプ回路と、を有する。前記電流制限値の切り換え回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下が所定値に達したとき前記負帰還アンプ回路による前記入力電流制御トランジスタの制限電流値を小さくする電流制限切り換えアンプ回路から成る。
【0048】
これによれば、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下の度合いを所定値を基準に判別するから、電源電流値の切り換え基準が電源電流の大小などによって影響され難い。
【0049】
〔14〕<入力電流制限アンプの参照電位の切り換えによる電流制限値も切り換え>
項8乃至12の何れかにおいて、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタと、前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタと、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御する負帰還アンプ回路と、を有する。前記負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路を兼ねる。前記負帰還アンプ回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて形成される検出電圧が、一定電圧であり第1の参照電圧又は前記電源入力端子の電圧を分圧した第2の参照電圧を超えることによって、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流を制限する。前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値以上のとき前記第1の電圧が第2の電圧よりも低くされ、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値よりも小さいとき前記第2の電圧が第1の電圧よりも低くされる。
【0050】
これによれば、前記負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路を兼ねるから項6に比べて簡易な構成にされる。ただし、第2の参照電圧は前記電源入力端子の電圧を分圧した電圧であるから電流制限の切り換え基準が電源電流の大小などによって影響されることになり、電流制限幅が狭くなる場合がある。
【0051】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0052】
図1には本発明に係る電子回路装置が例示される。同図に示される電子回路装置1は例えばバッテリチャージング規格を満足するUSBインタフェース機能を備えたPDAやデジタルスチルカメラなどのポータブルデバイスである。このポータブルデバイス1はUSBホスト2とUSBケーブル3を介して接続される。ポータブルデバイス1はUSBケーブル3とのインタフェース端子として、電源入力端子VBUS、グランド端子GND、差動データ端子D+,D−を有する。
【0053】
ここで、ポータブルデバイス1が備えるUSBインタフェースは例えば図9で説明したようなバッテリチャージング規格におけるSDP,CDP,DCPの何れのポートにも対応するものである。ここでは、USBホスト2がSDP,CDP,DCPの何れであっても当該ポートから供給される電源に対する制御機能を主体に説明し、データのインタフェースについては本発明の要旨ではないのでその説明は省略する。
【0054】
電子回路装置1は、半導体装置としての電源制御IC10を備え、更に、電源IC10で制御された電源を受けて動作する負荷回路としてのシステム回路11と、電源IC10を介して充電されるバッテリ12を有する。電源制御IC10は、特に制限されないが、CMOS又はBI−CMOS集積回路製造技術によって単結晶シリコンのような1個の半導体基板に形成される。
【0055】
電源IC10は、電源電流を入力する電源入力端子VBUS、差動データ端子D+,D−、グランド端子GNDのほかに、代表的に示された、電源電流を出力する電源出力端子PSYSと、前記電源入力端子VBUSに供給された電源電流に基づいて内部電源電圧VCCなどを生成する電圧生成回路(RGL)20と、前記内部電源電圧VCCを動作電源とする電源制御部(VCNT)21とを有する。
【0056】
前記電源制御部21は、電流制限回路30、電流制限値の切り換え回路31、判定回路32、及び充電制御部33を有する。電源制御部21は内部電源電圧VCCを動作電源とするものであるから、電源入力端子VBUSから給電される電源電流がその給電能力を超えて過剰にシステム回路11に引き込まれると、電源電流の電圧が降下し、内部電源電圧VCCに必要な電圧を得ることができなくなる。電流制限回路30は給電能力を超える過剰な電流引き込みを抑制するものである。
【0057】
電流制限回路30は、前記電源入力端子VBUSと前記電源出力端子PSYSとの間の電源電流の伝達経路22に配置され、流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限する。
【0058】
判定回路32は、前記電源電流の入力モード、例えば、USBホスト2のポートがSDP,CDP又はDCPの何れであるかを差動データ端子D+,D−の状態に基づいて判別する。この判別結果34が電流制限回路30に与えられる。電流制限回路30は前記判定回路32の判定結果34にしたがって前記目標電流値、即ち、流入電流の制限値を選択することにより、SDP,CDP又はDCPに応じたUSBポートの給電能力に適した電源電流の負荷回路11への引き込みを可能にする。
【0059】
電流制限値の切り換え回路31は、前記電源電流の伝達経路22に流入される電流が前記目標電流値に達していないことを当該伝達経路22に流れる電流の増加による電圧降下に基づいて検出することにより、前記電流制限回路21による流入電流の制限値を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う。特にここでは、USBホスト2のポートに対してDCPであることを判別したとき、当該ポートの給電能力がバッテリチャージング規格通りの1500mAでなくSDPと同じ500mAの場合に、1500mAの給電能力に見合う電流制限値では給電能力が500mAの電源電流が負荷回路11に過剰に引き込まれてしまうので、その場合には、判定回路32による判定結果がDCPでも電流制限値を給電能力が500mAのときの電流制限値に自動的に変更可能にするものである。
【0060】
これにより、目標電流値に達しない電源電流が電源入力端子VBUSから供給される場合には、電流制限回路30の電流制限値が小さくされて、負荷回路による過大な電流引き込みが阻止され、電源電流による電源電圧が不所望に降下する事態の発生を防止することができる。したがって、目標電流値に達しない小さな電源電流が供給される場合にも電源制御IC10の電源電圧VCCを維持することができ、電源電圧VCCの低下による電源制御IC10の誤動作によって、この電源制御IC10を利用する電子回路装置1の誤動作や動作不能状態の発生を抑止することに資することができる。
【0061】
図2には電流制限回路に設定した電流制限値と電源ポートからの給電能力との関係に依存する電源電流の電圧波形が例示される。電源の給電能力(電流能力)が電源制御IC10の電流制限回路30による電流制限値よりも高い場合には、L1のように電源電流には電圧降下を生じない。これに対して、電源の給電能力(電流能力)が電源制御IC10の電流制限回路30による電流制限値よりも低い場合には、L2のように電源電流には電圧降下を生ずる。
【0062】
図3には給電ポートの種類に応じて電流制限回路に設定した電流制限値を当該給電ポートの実際の給電能力に応じて変更するときの動作波形が例示される。給電ポートから供給される電源電流の電圧が降下することに基づいて電源制御IC10の電流制限回路30による電流制限値を(入力電流制限値)を低くすることにより、電源電流の降下が阻止される。
【0063】
図4には電流制限回路30及び電流制限値の切り換え回路31などの具体例が示される。
【0064】
電圧生成回路20はバンドギャップリファレンス回路(BGR)で生成した基準電圧VBGを基に、抵抗分圧回路の分圧電圧をオペアンプに帰還させて、当該オペアンプの出力をゲートに受けるpMOSトランジスタのドレインと前記抵抗分圧回路との結合ノードに所定の電源電圧VCCを形成する。
【0065】
充電制御部33は電流制限回路30を通過した電源電流の伝達経路と前記バッテリ端子のPBATとの間に配置されたトランスファpMOSトランジスタを有し、このトランスファpMOSトランジスタのゲートを定電流定電圧制御回路(CCCV)で制御してバッテリ端子PBATへ供給する充電電流を定電流化またはバッテリ端子PBATの電圧を定電圧化する。バッテリ12から負荷回路11にはダイオードを介してバッテリ電流が供給可能にされる。電源制御IC10がバッテリ充電機能を有することにより、目標より少ない電源電流の供給を受ける場合にも前述の通り、電源制御IC10の動作が保証される結果、その場合にもバッテリに対する充電機能を保証することができる。
【0066】
前記電流制限回路30は、電源入力端子VBUSに流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタとしてのpチャンネル型のMOSトランジスタ(以下単にpMOSトランジスタと称する)M1と、前記pMOSトランジスタM1に対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタとしてのpMOSトランジスタM2とを有し、pMOSトランジスタM1とpMOSトランジスタM2のゲートは、抵抗素子R1とpMOSトランジスタM4のオン抵抗との比で決まる分圧電圧が印加される。pMOSトランジスタM1とpMOSトランジスタM2とのゲートサイズは例えば1000:1である。pMOSトランジスタM2の電流経路にはオペアンプOP1でコンダクタンス制御されるnチャンネル型のMOSトランジスタ(以下単にnMOSトランジスタと称する)M3が配置され、pMOSトランジスタM2のドレイン電圧がpMOSトランジスタM1のドレイン電圧に一致されるようになっている。これはpMOSトランジスタM1、M2のチャネル長変調効果を考慮したものである。これにより、pMOSトランジスタM2のドレインにはpMOSトランジスタM1のドレイン電流に対してそのトランジスタサイズ比に応じた電流が流れる。nMOSトランジスタM3のソースとグランドGNDの間には代表的に示された抵抗素子R2,R3とnMOSトランジスタM5,M6との直列回路が複数並列配置され、判別信号34に応じて一つの電流経路を選択するようになっている。例えばVBUSに供給される電源電流の大きなCDP,DCPの場合には抵抗値の小さな抵抗素子R2の経路が選択され、電源電流の小さなSDPの場合には抵抗値の大きな抵抗素子R3の経路が選択される。前記pMOSトランジスタM4のゲートには、非反転入力端子(+)にMOSトランジスタM3のソースが接続され、反転入力端子(−)には基準電圧VBGが供給されるオペアンプOP2の出力が結合される。pMOSトランジスタM1に流れる電流が大きくなるとノードN1の電圧が上昇して反転入力端子(−)の基準電圧に近づいていき、ノードN1の電圧と反転入力端子(−)の基準電圧が等しくなると、pMOSトランジスタM1に流れる電流を制限する。
【0067】
前記オペアンプOP2の出力端子はnMOSトランジスタM10を介して電源電圧VCCに接続される。nMOSトランジスタM10のゲート制御を行うオペアンプOP3は非反転入力端子(+)に基準電圧VBGを受け、反転入力端子(−)には電源電流を受ける直列抵抗素子R10,R11による分圧ノードN2の電圧を受ける。負荷回路11による電源電流の過剰な引き込みによって電源電流の電圧が降下すると、それに応じて分圧ノードN2の電圧も降下し、ノードN2の電圧が基準電圧VBG以下になることによってnMOSトランジスタM10のコンダクタンスが大きくなって、pMOSトランジスタM4のオン抵抗を小さくするように作用し、pMOSトランジスタM1に流れる電流を制限する。
【0068】
図4の回路構成においてUSBポートの電流能力が1500mA以上の場合に、電源の電流供給能力が電源制御ICの電流制限値よりも大きいときの動作を説明する。すなわち判定回路32によってDCPモードが判別されて抵抗値の小さな抵抗素子R2の経路が選択された場合である。この場合には、給電能力以上に負荷電流がひかれる場合はなく、ノードN2のレベルは基準よりも下がることはない。一方、電源電流が大きくなると、pMOSトランジスタM1に流れる電流が増えるにしたがってnMOSトランジスタM3に流れる電流も増加し、それにしたがって、ノードN1の電圧が高くなり、オペアンプOP2の非半転入力端子(+)の電圧がオペアンプOP2の反転入力端子(−)の基準電圧VBGに等しくなると、当該オペアンプOP2の負帰還制御によってpMOSトランジスタM1に一定の電流値以上を流すことができなくなる。
【0069】
一方、図4の回路構成においてDCPモードが判別されたにもかかわらずUSBホストの電流能力が1500mA未満の場合、即ち、電源の電流供給能力が電源制御ICの電流制限値よりも小さいときには、ノードN1の電圧は基準値よりも高くなることはない。電源電流がその給電能力以上に負荷回路11によって引かれると、入力電圧が減衰する。これによって、ノードN2の電圧が低下し、オペアンプOP3の反転入力端子(−)の電圧が非反転入力端子(+)の電圧に等しくなると、オペアンプOP3の負帰還制御によって、pMOSトランジスタM1による電流制限が大きくされ、電源電流による電圧は一定の値に制御される。このようにして、pMOSトランジスタM1による電源電流の電流制限はUSBホストの回路の電流供給能力に合わせて自動的に調整される。
【0070】
このように図4においては、負帰還アンプ回路(OP2,M4)は、pMOSトランジスタM2に流れる電流に基づいてpMOSトランジスタM1のゲート電圧を制御して当該pMOSトランジスタM1に流れる前記目標電流値よりも大きな電流を前記目標電流値に制限する。電流制限切り換えアンプ回路(OP3,M10)は、前記pMOSトランジスタM1に流れる電流の増加による電圧降下が所定値に達したとき前記負帰還アンプ回路(OP2,M4)により前記入力電流制御トランジスタM1による電流制限値を小さくする。
【0071】
これによれば、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下の度合いを、所定値である基準電圧を基準にオペアンプOP3を用いて判別するから、電源電流値の切り換え基準が電源電流の大小などによって影響され難い。
【0072】
図5には電流制限回路30及び電流制限値の切り換え回路31などの別の具体例が示される。図5において前記電流制限回路30は図4と基本構成において同じであり、オペアンプOP3に代えて、反転入力端子(−)を2個持つオペアンプOP4を採用する。一方の反転入力端子(−)には基準電圧VBGが供給される。他方の反転入力端子(−)には電源入力端子VBUSに印加される電源電流を直列抵抗R20,R21で分圧して得られる分圧電圧VN3が供給される。当該他方の反転入力端子(−)に係る構成は電流制限値の切り換え回路31を実現するための構成である。要するに、オペアンプOP4とMOSトランジスタM4から成る負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路31を兼ねることになる。その他の構成は図4と同様であり、同一機能を有する回路要素にはそれと同じ参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0073】
前記負帰還アンプ回路(OP4,M4)は、前記電流検出トランジスタM1に流れる電流に基づいて形成される検出電圧が、一定電圧である第1の参照電圧VBG又は前記電源入力端子VBUSの電圧を分圧したノードN3の第2の参照電圧VN3を超えることによって、前記入力電流制御トランジスタM1に流れる電流を制限する。前記入力電流制御トランジスタM1に流れる電流が前記目標電流値以上のとき前記第1の電圧VBGが第2の電圧VN3よりも低くされ、前記入力電流制御トランジスタM1に流れる電流が前記目標電流値よりも小さいとき前記第2の電圧VN3が第1の電圧VBGよりも低くされる。オペアンプPO4は非反転入力端子(+)の電圧が高くなって反転入力端子(−)の電圧に一致したとき出力が反転されることを期待するものであるから、2個の反転入力端子(−)の電圧は低い方の電圧が優先して参照されることになる。
【0074】
図5の回路構成においてUSBホストの電流能力が1500mA以上の場合に、電源の電流供給能力が電源制御ICの電流制限値よりも大きいとき、すなわち判定回路32によってDCPモードが判別されて抵抗値の小さな抵抗素子R2の経路が選択された場合には、図4と同様に作用するから、その詳細な説明は省略する。
【0075】
一方、図5の回路構成においてDCPモードが判別されたにもかかわらずUSBホストの電流能力が1500mA未満の場合、即ち、電源の電流供給能力が電源制御IC10の電流制限値よりも小さい場合には、当初、分圧ノードの電圧VN3に比べて基準電圧VBGのほうが低くされるが、電源電流がその給電能力以上に負荷回路11によってひかれると、入力電圧が減衰する。これによって、電源入力端子VBUSの電圧と共にノードN1の電圧が低下する。これによって分圧電圧VN3が基準電圧VBGよりも低くなって、ノードN1の電圧が分圧電圧VN3に等しくなると、オペアンプOP4の非反転入力端子(+)の電圧が反転入力端子(−)の電圧に等しくなり、オペアンプOP4の負帰還制御によって、pMOSトランジスタM1による電流制限が一層大きくされ、負荷回路11による電源電流の引き込みを更に制限する。このようにして、pMOSトランジスタM1による電源電流の電流制限はUSBホストの回路の電流供給能力に合わせて自動的に調整される。
【0076】
これによれば、前記負帰還アンプ回路(OP4,M4)は電流制限値の切り換え回路を兼ねるから図4に比べて簡易な構成にすることができる。ただし、第2の参照電圧である分圧電圧VN3は前記電源入力端子VBUSの電圧を分圧した電圧であるから電流制限の切り換え基準が電源電流の大小などによって影響されることになり、電流制限幅が狭くなる場合がある。
【0077】
図6には判定回路32による電源電流の入力モードの判別処理手順が例示され、図7には図6の判別処理手順におけるSDPとDCP/CDPの判別方法が例示され、図8にはDCPとCDPの判別方法が例示される。各図に示される方法はバッテリチャージング規格によって示された方法である。図6に示されるステップS1乃至S4の判定処理を行うことによって電源電流の入力モードがSDP,DCP,CDPの何れであるかを判別することができる。基本的にはUSBホスト側の差動データ端子D+,D−の状態を判定することによって行われる。例えばDCPの場合にはUSBホスト側では差動データ端子D+とD−が短絡されており、図7に例示されるようにD+側に電流を供給したときD−側からの入力に対する高低の判定と、図8に例示されるようにD−側に電流を供給したときD+側からの入力に対する高低の判定と、を行うことによってDCPを判別することができる。
【0078】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0079】
例えば、本発明はUSBのバッテリチャージング規格に準拠する電源制御ICに適用される場合に限定されず、種々の電源電流の制御技術に適用することができる。電流制限回路30及び電流制限値の切り換え回路31の構成は図4及び図5に限定されず、その他の回路構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 ポータブルデバイス
2 USBホスト
3 USBケーブル
VBUS 電源入力端子
GND グランド端子
D+,D− 差動データ端子
10半導体装置としての電源制御IC
11 負荷回路としてのシステム回路
12 バッテリ
PSYS 電源出力端子
VCC 内部電源電圧
21 電源制御部(VCNT)
30 電流制限回路
31 電流制限値の切り換え回路
32 判定回路
33 充電制御部
M1 入力電流制御トランジスタとしてのpMOSトランジスタ
M2 電流検出トランジスタとしてのpMOSトランジスタ
OP3 負帰還アンプ回路
OP2 電流制限アンプ回路
OP4、R20,R21 前記電流制限アンプ回路を兼ねる負帰還アンプ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電流を入力する電源入力端子と、
電源電流を出力する電源出力端子と、
前記電源入力端子に供給された電源電流に基づいて内部電源電圧を生成する電圧生成回路と、
前記内部電源電圧を動作電源とする電源制御部と、を有し、
前記電源制御部は、前記電源入力端子と前記電源出力端子との間の電源電流の伝達経路に配置され、流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限する電流制限回路と、
前記電源電流の伝達経路に流入される電流が前記目標電流値に達していないことを当該伝達経路に流れる電流の増加による電圧降下に基づいて検出することにより、前記電流制限回路による流入電流の制限値を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う電流制限値の切り換え回路と、を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記電源制御部は、前記電源電流の入力モードを判定する判定回路を更に有し、
前記電流制限回路は前記判定回路の判定結果にしたがって前記目標電流値が選択可能にされる、半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、一対の入力端子D+,D−を更に有し、
前記判定回路は、前記入力端子D+,D−に接続する外部経路の状態によって入力モードを判定する、半導体装置。
【請求項4】
請求項2において、前記判定回路で判定された第1モードにおける前記目標電流値は第1電流値であり、前記判定回路で判定された第2モードにおける前記目標電流値は前記第1電流値よりも小さな第2電流値であり、
前記第1モードにおいて、前記電流制限値の切り換え回路は前記第1電流値よりも小さく制御する流入電流の値を第2電流値に制御する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、バッテリが接続されるバッテリ端子を更に有し、
前記電源制御部は、前記電流制限回路の後段における電源電流の伝達経路から供給される電源電流に対して定電流定電圧制御を行って前記バッテリ端子に供給する充電制御部を更に有する、半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタと、
前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタと、
前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御して当該入力電流制御トランジスタに流れる前記目標電流値よりも大きな電流を前記目標電流値に制限するための負帰還アンプ回路と、を有し、
前記電流制限値の切り換え回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下が所定値に達したとき前記負帰還アンプ回路による前記入力電流制御トランジスタの制限電流値を小さくする電流制限切り換えアンプ回路から成る、半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタと、
前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタと、
前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御する負帰還アンプ回路と、を有し、
前記負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路を兼ね、
前記負帰還アンプ回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて形成される検出電圧が、一定電圧である第1の参照電圧又は前記電源入力端子の電圧を分圧した第2の参照電圧を超えることによって、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流を制限し、
前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値以上のとき前記第1の電圧が第2の電圧よりも低くされ、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値よりも小さいとき前記第2の電圧が第1の電圧よりも低くされる、半導体装置。
【請求項8】
電源電流を入力する電源入力端子と、
電源電流を出力する電源出力端子と、
前記電源入力端子に供給された電源電流に基づいて内部電源電圧を生成する電圧生成回路と、
前記内部電源電圧を動作電源とする電源制御部と、
前記電源出力端子に接続された負荷回路と、を有し、
前記電源制御部は、前記電源入力端子と前記電源出力端子との間の電源電流の伝達経路に配置され、流入される電流が目標電流値を超えないように電流の流入を制限する電流制限回路と、
前記電源電流の伝達経路に流入される電流が前記目標電流値に達していないことを当該伝達経路に流れる電流の増加による電圧降下に基づいて検出することにより、前記電流制限回路による流入電流の制限値を前記目標電流値よりも小さくする制御を行う電流制限値の切り換え回路と、を有する電子回路装置。
【請求項9】
請求項8において、前記電源制御部は、前記電源電流の入力モードを判定する判定回路を更に有し、
前記電流制限回路は前記判定回路の判定結果にしたがって前記目標電流値が選択可能にされる、電子回路装置。
【請求項10】
請求項9において、一対の入力端子D+,D−を更に有し、
前記判定回路は、前記入力端子D+,D−に接続する外部経路の状態によって入力モードを判定する、電子回路装置。
【請求項11】
請求項9において、前記判定回路で判定された第1モードにおける前記目標電流値は第 1電流値であり、前記判定回路で判定された第2モードにおける前記目標電流値は前記第1電流値よりも小さな第2電流値であり、
前記第1モードにおいて、前記電流制限値の切り換え回路は前記第1電流値よりも小さく制御する流入電流の値を第2電流値に制御する、電子回路装置。
【請求項12】
請求項8において、バッテリと、前記バッテリが接続されるバッテリ端子と、を更に有し、
前記電源制御部は、前記電流制限回路の後段における電源電流の伝達経路から供給される電源電流に対して定電流定電圧制御を行って前記バッテリ端子に供給する充電制御部を更に有する、電子回路装置。
【請求項13】
請求項8において、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタと、
前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタと、
前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御して当該入力電流制御トランジスタに流れる前記目標電流値よりも大きな電流を前記目標電流値に制限するための負帰還アンプ回路と、を有し、
前記電流制限値の切り換え回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流の増加による電圧降下が所定値に達したとき前記負帰還アンプ回路による前記入力電流制御トランジスタの制限電流値を小さくする電流制限切り換えアンプ回路から成る、電子回路装置。
【請求項14】
請求項8において、前記電流制限回路は、電源入力端子に流入される入力電流の制限に用いる入力電流制御トランジスタと、
前記入力制御トランジスタに対して所定の比率で前記入力電流を流そうとする電流検出トランジスタと、
前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて前記入力電流制御トランジスタのゲート電圧を制御する負帰還アンプ回路と、を有し、
前記負帰還アンプ回路は前記電流制限値の切り換え回路を兼ね、
前記負帰還アンプ回路は、前記電流検出トランジスタに流れる電流に基づいて形成される検出電圧が、一定電圧であり第1の参照電圧又は前記電源入力端子の電圧を分圧した第2の参照電圧を超えることによって、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流を制限し、
前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値以上のとき前記第1の電圧が第2の電圧よりも低くされ、前記入力電流制御トランジスタに流れる電流が前記目標電流値よりも小さいとき前記第2の電圧が第1の電圧よりも低くされる、電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−78163(P2013−78163A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214860(P2011−214860)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】