説明

半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法及び半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置

【課題】半導体装置用テープキャリアの端末部を含む全長に均一な厚みのめっきを施す。
【解決手段】半導体装置用テープキャリア(1)の両端に絶縁性の案内用テープが接続され
た被めっきテープ材(10)を、めっき槽(2)のめっき液(3)中に浸漬させながら搬送する。めっき槽(2)の被めっきテープ材(10)の搬送経路に沿って陽極(5)を移動可能に設置し、めっき槽(2)のめっき液(3)中に浸漬されている陽極(5)が、めっき槽(2)のめっき液(3)中を搬
送されている半導体装置用テープキャリア(1)の部分に対向し、且つめっき槽(2)のめっき液(3)中に浸漬されている陽極(5)の長さが、めっき槽(2)のめっき液(3)中に浸漬されている半導体装置用テープキャリア(1)の部分の長さに比例するように、陽極(5)を被めっきテープ材(10)の搬送経路に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法及び半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置に関し、特にフレキシブル基板などのフープ状基板材料の電気めっきに好適な半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、半導体装置用テープキャリアに電気めっきを施す従来の電気めっき装置の概略構成を示す。めっき液103で満たされためっき槽102の入口部および出口部には陰極104が設けられ、また、めっき槽102内には陽極105が設けられている。陰極104は電路108を介して直流電源装置106のマイナス端子と接続され、陽極105は電路107を介して直流電源装置106のプラス端子に接続されている。
【0003】
被めっきテープ材10は、図5に示すように、半導体装置用テープキャリア(以下、ワークと呼ぶ)1の先頭部1aには案内用テープ14が、末尾部1bには案内用テープ15がそれぞれ接続されている。案内用テープ14、15は、ワーク1の端末部1a、1bに対しても、めっき槽102内部で安定した張力を付与する目的で設けられる。案内用テープ14,15には、ワーク1と比較して安価な絶縁性テープが使用される。
【0004】
案内用テープ14とワーク1と案内用テープ15とが接続された被めっきテープ材10は、送り出しリール21から送り出され、めっき槽102の入口部と出口部の陰極104と接触しつつ、めっき槽102内のめっき液103中を通過した後、巻き取りリール22に巻き取られる。めっき電流は、直流電源装置106のプラス端子から電路107、陽極105、めっき液103、ワーク1、陰極104、電路108を経て直流電源装置106のマイナス端子へと流れる。このとき、金属がワーク1の導体層に析出し、ワーク1にめっきが施される。
【0005】
従来、電気めっき槽内に、固定の電極(アノード)とフィルム基材との間に、フィルム基材とほぼ同じ速度で並行して遮蔽板を移動して電気めっきを行う方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、絶縁性フィルムからなる遮蔽板に、フィルム基材の配線パターン等に対応した所要の大きさ・形状のスリットを形成し、遮蔽板のスリットによる電流分布制御により、配線パターン等で発生するめっき膜厚ばらつきを削減している。
【特許文献1】特開2002−371399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、電気めっき法においては、めっきの厚みはワーク1の単位面積に流れた電流量に比例する。ところが、上記従来の電気めっきでは、ワーク1の端末部である先頭部1aおよび末尾部1bで、めっきの厚みが厚くなるという不具合が発生する。これは、ワーク1の端末部に電流が集中して流れるからであり、その理由を図6により説明する。
【0007】
図6(a)に示すように、めっき開始前は、めっき槽102のめっき液103中には、まず、案内用テープ14が搬入され、案内用テープ14の搬送に伴って案内用テープ14に接続されたワーク1も搬送方向20にめっき槽102へと搬送される。
【0008】
その後、図6(b)に示すように、ワーク1の先頭部1aがめっき槽102内に搬入さ
れてワーク1へのめっきが始まるが、めっき液103に浸漬されたワーク1の先頭部1a付近には、過大な厚みのめっき層26が形成される。この理由は、めっき槽102にワーク1が進入した段階では、めっき液103に接触している部分のワーク1の面積が、陽極105の面積と比較して圧倒的に小さいので、電流(金属イオン)17がワーク1の先頭部1a付近に過大に流れるためである。
【0009】
ワーク1の先頭部1aがめっき槽102に進入するにつれて、めっき液103中に浸漬するワーク1の長さは次第に増加してゆき、めっき槽102の入口から出口までの全長にわたってワーク1が存在する状態になる(図6(c)参照)。この状態では、陽極105全長に対してワーク1が平行に対向して配置され、陽極5からの電流(金属イオン)17が、めっき槽102内のワーク1全域にほぼ均等に供給されるかたちになり、ワーク1には、めっき液103に浸漬された時間に比例した一定の均一な厚みのめっき層25が形成される。
【0010】
従って、めっき槽102に最初に進入したワーク1の先頭部1a付近では、過大な厚さのめっき層26が形成され、めっき槽102全長にわたってワーク1が存在する状態(図6(c)参照)になった時点から後は、安定した均一な厚さのめっき層25が得られるようになる。すなわち、ワーク1の先頭部1a付近ではめっき層が厚くなり、先頭部1a付近以外では均一な厚さのめっき層25が形成されるといった現象が現れる。
【0011】
また、これと同様の現象が、ワーク1の末尾部1b付近で現れる。すなわち、図6(d)に示すようにワーク1の末尾部1bがめっき槽102に進入し、更に図6(e)に示すように、ワーク1の末尾部1bがめっき槽102から抜け出す段階となったとき、めっき液103中のワーク1の面積が陽極105の面積と比較して圧倒的に小さくなるので、電流(金属イオン)17がワーク1の末尾部1b付近に過大に供給される。したがって、この場合も、ワーク1の末尾部1b付近に過大な厚さのめっき層26が形成される(図6(f))。その後、ワーク1の末尾部1bに接続された案内用テープ15がめっき槽102内を搬送され、めっき処理が終了する。
【0012】
図7は、上記従来の電気めっき方法で形成されたワーク1のめっき厚分布を示す模式図である。図7に示すように、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1b付近を除く中央部に形成されるめっき層25の厚みに比べ、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1b付近に形成されるめっき層26の厚みが過大になり、ワーク1全長に所望の一定厚みを有するめっき層が形成されない。過大な厚さのめっき層26が形成されたワーク1の先頭部1aおよび末尾部1b付近は、製品にはならず、屑となってしまう。
【0013】
この問題を解決するために、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1bに接続される案内用テープとして、ワーク1と同様に導体層が形成されたダミーテープを用い、このダミーテープにもめっき電流を流し、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1bへの電流の集中を回避し、ワーク1全長に均一な厚さのめっき層を形成しようとする方法がある。
【0014】
しかしながら、この方法では、ダミーテープを繰り返し使用するうちに、ダミーテープのめっき厚が増加し、ダミーテープの剛性が強くなりすぎて、使用できなくなる。このため、一つのダミーテープは数回使用の後には廃棄され、新しいダミーテープを用いる必要がある。ダミーテープは製品となるワーク1と同じテープで高価なため、コストアップの原因となる。また、ダミーテープに形成されためっきもダミーテープと一緒に廃棄され、資源の無駄となる。とくに、貴金属めっきを施す場合は、不経済である。
【0015】
また、上記特許文献1の方法では、固定の電極(アノード)とフィルム基材との間に、更に遮蔽板を追加設置して遮蔽板を移動させる構成であり、構造が複雑となる。また、遮
蔽板のスリットによる電流分布制御では、遮蔽板と電極の間隔や遮蔽板とフィルム基材の間隔の設定・調整、或いはスリットの形状・寸法の設定・調整などが煩雑で難しい。
【0016】
本発明は、上記課題を解消し、半導体装置用テープキャリアの端末部を含む全長に均一な厚みのめっきを施すことができる半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法及び半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法は、半導体装置用テープキャリアの両端に絶縁性の案内用テープが接続された被めっきテープ材を、めっき槽のめっき液中に浸漬させながら搬送して前記半導体装置用テープキャリアに電気めっきを施す半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法において、前記めっき槽の前記被めっきテープ材の搬送経路に沿って陽極を移動可能に設置し、前記めっき槽のめっき液中に浸漬されている前記陽極が、前記めっき槽のめっき液中を搬送されている前記半導体装置用テープキャリアの部分に対向し、且つ前記めっき槽のめっき液中に浸漬されている前記陽極の長さが、前記めっき槽のめっき液中に浸漬されている前記半導体装置用テープキャリアの部分の長さに比例するように、前記陽極を前記被めっきテープ材の搬送経路に沿って移動させることを特徴とする。
【0018】
上記電気めっき方法において、前記陽極は、可撓性を有する電極部と絶縁部が環状に接続された構造を有し、当該陽極が二つの給電ローラ間に掛け渡され、前記給電ローラの回転により前記電極部が前記二つの給電ローラ間を循環移動可能に構成されていてもよい。
【0019】
本発明の半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置は、半導体装置用テープキャリアの両端に絶縁性の案内用テープが接続された被めっきテープ材を、めっき槽のめっき液中に浸漬させながら搬送して前記半導体装置用テープキャリアに電気めっきを施す半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置において、前記めっき槽の前記被めっきテープ材の搬送経路に沿って前記被めっきテープ材に対向させつつ移動可能に設けられた陽極と、前記案内用テープが接続された前記半導体装置用テープキャリアの端末部を検出するセンサと、前記案内用テープが接続された前記半導体装置用テープキャリアの端末部を検出するセンサと、前記センサからの検出信号に基づいて、前記めっき槽のめっき液中を搬送される前記半導体装置用テープキャリアの端末部の移動に同期させて前記陽極の端部を移動させると共に、前記めっき槽のめっき液中を搬送される前記被めっきテープ材が前記半導体装置用テープキャリアで占められているときには、前記陽極の移動を停止して陽極を一定の長さに保持するように、前記陽極の移動を制御する移動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
上記電気めっき装置において、前記陽極は、可撓性を有する電極部と絶縁部が環状に接続された構造を有し、当該陽極が二つの給電ローラ間に掛け渡され、前記給電ローラの回転により前記電極部が前記二つの給電ローラ間を循環移動可能に構成され、前記移動制御手段は、前記陽極の前記端部となる前記電極部と前記絶縁部との接続部の移動制御を、前記給電ローラの回転制御により行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体装置用テープキャリアの端末部を含む全長に均一な厚みのめっきを施すことができる。したがって、半導体装置用テープキャリアの端末部のめっき不良を大幅に削減でき、製造コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる半導体装置用テープキャリアの電気めっ
き装置および電気めっき方法の実施形態を説明する。
【0023】
図1に実施形態に係る半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置の概略構成を示す。
可撓性を有する半導体装置用テープキャリア(以下、ワークと呼ぶ)1は、めっき液3を収容するめっき槽2を貫通して搬送される。ワーク1の端末部である先頭部1a及び末尾部1bには、図5に示すように、絶縁性テープからなる案内用テープ14、案内用テープ15がそれぞれ接続されている。案内用テープ14とワーク1と案内用テープ15が連結された被めっきテープ材10は、図4と同様に、送り出しリールから送り出され、めっき槽2を通過した後、巻き取りリールに巻き取られるようになっている。
【0024】
めっき槽2の入口近傍と出口近傍には、それぞれ陰極(カソード)4が設けられている。陰極4は回転自在な金属製のローラからなり、めっき槽2内をテープ面を水平にして搬送される被めっきテープ材10に対して回転しながら接触する。また、めっき槽2の入口近傍には、案内用テープ14、15が接続されたワーク1の端末部1a、1bを検出するセンサ9が設けられている。
【0025】
めっき槽2を搬送される被めっきテープ材10の搬送経路に沿って被めっきテープ材10に対向しつつ移動可能に、陽極5が設けられている。陽極5は、図1及び図2に示すように、可撓性を有する金属テープ(或いは板厚の薄い金属板)などの電極部5aと可撓性を有する絶縁テープなどの絶縁部5bとからなり、電極部5aの両端が絶縁部5bにより環状に接続された環状構造となっている。5c、5dが電極部5aと絶縁部5bとの接続部(電極部5aの端部)である。
【0026】
被めっきテープ材10の搬送経路の上方の、めっき槽2の入口近傍と出口近傍には、陽極5に電流を供給するための給電ローラ16が設けられている。環状構造の陽極5は、給電ローラ16,16間に平行掛けに掛け渡されており、給電ローラ16の回転により陽極15の電極部5aが給電ローラ16,16間をエンドレス方式で循環移動できるようになっている。そして、給電ローラ16,16間に掛け渡された環状構造の陽極5の下側の部分が、めっき槽2内を水平に貫通し、且つめっき槽2を搬送される被めっきテープ材10の搬送経路の近傍に平行に配置されている。陽極15の電極部5aの長さは、めっき槽2の入口から出口までの距離よりも長くなっている。
【0027】
給電ローラ16,16には、これに電流を供給するめっき用の直流電源6が電路7を介して接続されている。また、陰極4,4は、電路8を介して直流電源6に接続されている。給電ローラ16には、給電ローラ16を回転させて陽極15を循環移動させるための駆動モータ等の駆動機構13が連結されている。駆動機構13には、駆動機構13の動作を制御する制御部11が信号線19を介して接続されている。また、制御部11とセンサ9との間には信号線12が設けられ、センサ9が検出したワーク1の端末部1a、1bの検出信号が制御部11に入力されるようになっている。また、制御部11は、信号線18を通じて直流電源6の出力制御ができるよう構成されている。制御部11は、センサ9が検出したワーク1の端末部1a、1bの検出信号等に基づき、駆動機構13の駆動を制御することにより、給電ローラ16の回転を制御して陽極5の移動を制御する。
【0028】
次に、上述した図1の電気めっき装置を用いて、ワーク1に電気めっきを施す実施形態の電気めっき方法を、電気めっき処理の各段階ごとに、図3−1、図3−2により説明する。
【0029】
図3−1(a)は、電気めっき開始前の状態を示す。めっき槽2の中には、ワーク1の先頭部1aに接続された案内用テープ14が搬送されている。案内用テープ14の搬送に
伴ってワーク1も搬送方向20にめっき槽2へと搬送される。
【0030】
ワーク1がめっき槽2に近づき、センサ9がワーク1の先頭部1aを検出すると、検出信号が制御部11に入力される。制御部11では、この検出信号とワーク1の搬送速度(一定速度で既知)とから、ワーク1の先頭部1aがめっき槽2の入口に到達する時刻を算出する。制御部11は、ワーク1の先頭部1aがめっき槽2の入口に到達する時刻に、電極部5aの接続部(電極部5aの先端部)5cがめっき槽2の入口に到達するように、駆動機構13を駆動制御して電極部5aを移動させる。更に、制御部11は、めっき槽2内のワーク1の先頭部1aに追従させて、先頭部1aと同速度で電極部5aの接続部5cが移動するように、駆動機構13を制御する(図3−1(b))。即ち、電極部5aの接続部(先端部)5cとワーク1の先頭部1aとが同期してめっき槽2内を移動する。
【0031】
したがって、めっき液3に浸漬されているワーク1の長さと、めっき液3に浸漬されている電極部5aの長さは、常に一致しながら増加していくので、ワーク1の先頭部1aに電流が集中することはなく、ワーク1の先頭部1a付近全域に安定した一定の電流が流れ、めっき層27が析出成長してゆく。
【0032】
次に、図3−1(c)に示すように、ワーク1の先頭部1aがめっき槽2の出口から搬出されると、制御部11の制御により、陽極5の移動が停止される。具体的には、制御部11は、ワーク1の先頭部1aがめっき槽2の出口へ到達する時刻を算出し、この算出した時刻から所定時間が経過した後に、駆動機構13を停止させ、陽極5の搬送を停止させる。
【0033】
陽極5の搬送が停止された状態では、めっき槽2内のワーク1全長に対して陽極5の電極部5aが平行に対向させて配置され、めっき液3中のワーク1全域に対してほぼ均等に電極部5aから安定した電流(金属イオン)17が供給される。したがって、ワーク1に析出するめっき層27の厚さは一定割合で増加し、ワーク1がめっき槽2を出るときには、めっき槽2を通過する時間に比例した、所望の均一な厚みのめっき層25になる。
【0034】
その後、ワーク1への電気めっき終了が近づき、ワーク1の末尾部1bがめっき槽2内に搬入される段階となる(図3−2(d))。ワーク1の末尾部1bがめっき槽2に搬入される前には、センサ9がワーク1の末尾部1bを検出し、この検出信号より、制御部11は、ワーク1の末尾部1bがめっき槽2の入口に到達する時刻を算出する。そして、ワーク1の末尾部1bがめっき槽2の入口に到達する時刻に、電極部5aの接続部(電極部5aの後端部)5dがめっき槽2の入口に到達するように、駆動機構13を駆動させて陽極5を移動させる。更に、制御部11は、電極部5aの接続部(後端部)5dとワーク1の末尾部1bとが同期してめっき槽2内を移動するように、駆動機構13を制御する(図3−2(d),(e)参照)。
【0035】
従って、めっき液3に浸漬されているワーク1の長さと、めっき液3に浸漬されている電極部5aの長さは、常に一致しつつ減少していくので、ワーク1の末尾部1b付近に電流が集中することはなく、ワーク1の末尾部1b付近の全域に一定の電流が流れる。このため、めっき槽2から搬出されたワーク1の末尾部1b付近には、所望の均一な厚みのめっき層25が形成される。
【0036】
ワーク1の末尾部1bがめっき槽2の出口に到達すると同時に、図3−2(e)に示すように、電極部5aの接続部(電極部5aの後端部)5dもめっき槽2の出口に到達する。その後、ワーク1がめっき槽2を完全に通過し終えると、図3−2(f)に示すように、制御部11の駆動制御により、電極部5aは電気めっき開始前の初期位置(図3−1(a)に示す位置)に戻されて停止する。次のワークにめっきを施す場合には、この初期位
置の電極部5aの状態から、上述しためっき処理が繰り返される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、ワーク1のめっき液3中における長さと、陽極5の電極部5aのめっき液3中における長さとを常に一致させているので、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1b付近への電流17の集中を防止することができる。この結果、本実施形態の電気めっき処理によりワーク1に形成されるめっき厚分布は、図8の模式図に示すように、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1bを含め、ワーク1全長に対して均一な厚みのめっき層25を形成することができる。
したがって、ワーク1のすべてを製品とすることができ、無駄が生じない。このため、製品の製造コストの低減を図ることができる。また、上述した従来方法のダミーテープを使用する必要もなく、ダミーテープの廃棄屑および廃棄屑にめっき処理された金属の損失もない。
【0038】
なお、上記実施形態では、めっき液3中のワーク1の長さと、めっき液3中の電極部5aの長さとを常に一致させたが、めっき液3中のワーク1の長さに比例させてめっき液3中の電極部5aの長さを変化させるようにしてもよい。こうしても、ワーク1の先頭部1aおよび末尾部1b付近への電流17の集中を防止することができ、ワーク1全長に均一な厚みのめっき層25を形成できる。
【0039】
なお、また、上記実施形態の電気めっき装置では、めっき用の電源として直流電源6を用いたが、それに代えて極性の変化するパルス電源を使用してもよい。また、ワーク1のめっきされる導体層の模様に応じて、陽極5の電極部5aを、一定幅の矩形形状のものではなく、ワーク1の模様に対応する所要の形状を有するものとしてもよい。
また、上記実施形態では、陽極5の下側の一部が、めっき槽2内を貫通して設けられているが、上記陽極5と同様な構造の陽極を、めっき槽のめっき液中に全て浸漬させた状態で設置してもよい。また、上記実施形態では、陽極5は環状であって給電ローラ16,16間に掛け渡されたエンドレス構造となっているが、リールトゥリール方式で移動させるようにしてもよい。
更に、上記実施形態では、陽極は可撓性を有するものであったが、リジッドなプレート状の陽極を、めっき液中のワークの長さに対応させて移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態にかかる半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】図1の陽極を示す断面図である。
【図3−1】本発明の実施形態にかかる半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法を説明するための図である。
【図3−2】本発明の実施形態にかかる半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法を説明するための図である。
【図4】従来の一般的な電気めっき装置の概略構成を示す図である。
【図5】被めっきテープ材を示す図である。
【図6】従来の半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法を説明するための図である。
【図7】従来の電気めっき方法で形成された半導体装置用テープキャリアのめっき厚分布を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態の電気めっき方法で形成された半導体装置用テープキャリアのめっき厚分布を示す模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ワーク(半導体装置用テープキャリア)
1a 先頭部(端末部)
1b 末尾部(端末部)
2 めっき槽
3 めっき液
4 陰極(カソード)
5 陽極(アノード)
5a 電極部
5b 絶縁部
5c、5d 接続部
6 直流電源
7,8 電路
9 センサ
10 被めっきテープ材
11 制御部
13 駆動機構
14,15 案内用テープ
16 給電ローラ
17 電流
20 搬送方向
25 均一な厚みのめっき層
26 過大な厚みのめっき層
27 めっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置用テープキャリアの両端に絶縁性の案内用テープが接続された被めっきテープ材を、めっき槽のめっき液中に浸漬させながら搬送して前記半導体装置用テープキャリアに電気めっきを施す半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法において、
前記めっき槽の前記被めっきテープ材の搬送経路に沿って陽極を移動可能に設置し、
前記めっき槽のめっき液中に浸漬されている前記陽極が、前記めっき槽のめっき液中を搬送されている前記半導体装置用テープキャリアの部分に対向し、且つ前記めっき槽のめっき液中に浸漬されている前記陽極の長さが、前記めっき槽のめっき液中に浸漬されている前記半導体装置用テープキャリアの部分の長さに比例するように、前記陽極を前記被めっきテープ材の搬送経路に沿って移動させることを特徴とする半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法。
【請求項2】
前記陽極は、可撓性を有する電極部と絶縁部が環状に接続された構造を有し、当該陽極が二つの給電ローラ間に掛け渡され、前記給電ローラの回転により前記電極部が前記二つの給電ローラ間を循環移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用テープキャリアの電気めっき方法。
【請求項3】
半導体装置用テープキャリアの両端に絶縁性の案内用テープが接続された被めっきテープ材を、めっき槽のめっき液中に浸漬させながら搬送して前記半導体装置用テープキャリアに電気めっきを施す半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置において、
前記めっき槽の前記被めっきテープ材の搬送経路に沿って前記被めっきテープ材に対向させつつ移動可能に設けられた陽極と、
前記案内用テープが接続された前記半導体装置用テープキャリアの端末部を検出するセンサと、
前記センサからの検出信号に基づいて、前記めっき槽のめっき液中を搬送される前記半導体装置用テープキャリアの端末部の移動に同期させて前記陽極の端部を移動させると共に、前記めっき槽のめっき液中を搬送される前記被めっきテープ材が前記半導体装置用テープキャリアで占められているときには、前記陽極の移動を停止して陽極を一定の長さに保持するように、前記陽極の移動を制御する移動制御手段と、を備えたことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置。
【請求項4】
前記陽極は、可撓性を有する電極部と絶縁部が環状に接続された構造を有し、当該陽極が二つの給電ローラ間に掛け渡され、前記給電ローラの回転により前記電極部が前記二つの給電ローラ間を循環移動可能に構成され、
前記移動制御手段は、前記陽極の前記端部となる前記電極部と前記絶縁部との接続部の移動制御を、前記給電ローラの回転制御により行うことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置用テープキャリアの電気めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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