説明

半導体装置

【課題】高耐圧、高温動作が可能なデバイスの特性を十分生かした化合物半導体チップを有する半導体装置を提供する。
【解決手段】外部に電気的に接続される接続領域24,25,27と、この接続領域24,25,27に電気的に繋がる電極5,6,7を一面に有する半導体素子20と、その一面の全体に形成され且つ接続領域24,25,27を露出させる開口部24a,25a,27aを有する誘電体膜30と、半導体素子20の他面を底部に接続するとともに半導体素子20及び誘電体膜30と内面との間に空間が形成される素子収容スペース32を有するセラミック製のパッケージ31と、パッケージ31の内部に設けられた電極34〜36と、素子収容スペース32内で電極34〜36と半導体素子20の接続領域24,25,27とを誘電体膜30の開口部24a,25a,27aを通して接続する接続導体とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、より詳しくは、パッケージに収容された化合物半導体チップを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を収容する実装用のパッケージとしては、下記の特許文献1、2に記載されているように、樹脂モールドパッケージやセラミックパッケージ等が広く使用されている。
【0003】
樹脂モールドパッケージは、半導体素子とこれに接続するリード端子の一端部を樹脂でモールドする一方、リード端子の他端を電気的接続のために樹脂モールドの外部に露出した構造を有するものである。
【0004】
また、セラミックパッケージは、内側と外側との導通を取るリード端子を有するセラミック製の筐体内に半導体素子を固定し、半導体素子から筐体内側のリード端子にワイヤボンディング等の手段によって電気的接続を担うワイヤを接続した構造を有している。
【0005】
樹脂モールドパッケージは、半導体素子上の複数の電極や配線間に樹脂が充填されて絶縁されるため、適切な樹脂でモールドすることにより、半導体素子に高電圧が印可された場合にも、電極や配線間の放電を抑制することができる。一方、セラミックパッケージは、高温の環境下に置いても変形せず、耐熱性に優れている。
【0006】
また、パッケージの放熱効果を高める半導体装置としては、特許文献3に記載されているように、セラミックパッケージ内にフェースダウンで取り付けたフリップチップ素子の上側に半田を介して放熱用蓋を熱的に接続し、さらに、フリップチップ素子の下側にバンプを包囲するシリコーン樹脂等の流動性を有するバッファ用樹脂を介在させるとともに、フリップチップ素子の外周側面からセラミックパッケージ内壁に至る領域に耐熱性樹脂を形成して半田とバッファ用樹脂を分離させるといった構造もある。
【0007】
高耐圧が必要とされる半導体素子については、特許文献4に記載されているように、電極間の電気的リークを抑制するためにフィールドプレート電極と言われる構造を設けて、半導体チップ表面に配置されるゲート電極を覆う絶縁膜上にソース電極が張り出すようにした構造もある。
【特許文献1】特開2004−165281号公報
【特許文献2】特開2000−332158号公報
【特許文献3】特開平6−61383号公報
【特許文献4】特開2005−093864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリコン系の半導体素子等では、半導体素子自体に要求される動作環境温度が120℃程度までであったため、樹脂モールドパッケージの耐熱性が問題とされることは少なかった。また、従来のシリコン系の半導体素子等では、素子自体の耐圧の特性が高くないため、電極や配線間の放電が問題となる場合は少なかった。
【0009】
これに対し、近年開発が進められているIII−V族窒化物系化合物半導体は、その材料が本質的に持つ特性から、高温、高耐圧で動作するデバイスとして使用することが期待されており、200℃の環境においても動作し、300V以上の高耐圧特性を有するデバイスが開発されている。
【0010】
このような高温の動作環境において、III−V族窒化物系化合物半導体素子用のパッケージとして、樹脂モールドパッケージを使用すれば電極や配線間の放電を抑制することができる一方、耐熱性が劣って変形し易い。また、セラミックパッケージは、耐熱性に優れているが、高耐圧が要求される半導体素子の表面で放電し易い。
【0011】
また、樹脂モールドを使用した場合、パッケージ自体が変形しやすいという問題のみらならず、樹脂の熱膨張や変形によってデバイスに応力がかかって性能が劣化したり、或いは、デバイスの配線に応力がかかって変形したり、断線したりするといった問題が生じ易くなる。
【0012】
セラミックパッケージ等を使用した場合には、半導体素子に対して300V〜400V程度の電圧が印可される状態で、空中で放電する沿面放電という現象が発生し易いといった問題もある。
【0013】
一方、特許文献3に記載されているように、セラミックパッケージにフリップチップ素子をフェースダウンで搭載し、その下面に流動性を有するバッファ用樹脂を塗布し、さらに側面とセラミックパッケージの間に耐熱性樹脂を埋める構造では、温度上昇時に耐熱性樹脂が膨張して半導体素子に応力が加わり、性能劣化の原因になる。また、耐熱性樹脂とセラミックパッケージの熱膨張係数の違いとセラミックパッケージの脆さによってセラミックパッケージにひびが入りやすくなる。さらに、そのフリップチップの下側のバッファ用樹脂は熱伝導性が低く、フリップチップ素子の替わりにIII−V族窒化物系化合物半導体素子を取り付けた場合には冷却効率が悪くなる。
【0014】
本発明の目的は、半導体素子の高耐圧、高温動作が可能なデバイスの特性を十分生かすためのパッケージを備えた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための本発明の第1の態様は、外部に電気的に接続される接続領域と該接続領域に電気的に繋がる電極を一面に有する半導体素子と、前記一面の全体に形成され且つ前記接続領域を露出させる開口部を有する誘電体膜と、前記半導体素子の他面を底部に接続するとともに前記半導体素子及び誘電体膜と内面との間に空間が形成される素子収容スペースを有するセラミック製のパッケージと、前記パッケージの内部に設けられた電極と、前記素子収容スペース内で前記電極と前記半導体素子の前記接続領域とを前記誘電体膜の開口部を通して接続する接続導体とを有することを特徴とする半導体装置である。
【0016】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る半導体装置において、前記半導体素子は、III−V族窒化物系化合物半導体素子であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る半導体装置において、前記接続導体は前記接続領域と前記パッケージの内部に設けられた前記電極と前記空間にのみ接触していることを特徴とする。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記第1乃至第3の態様のいずれかに係る半導体装置において、前記誘電膜はポリイミド化合物を主成分とする樹脂であることを特徴とする。
【0019】
本発明の第5の態様は、前記第1乃至第4の態様のいずれかに係る半導体装置において、前記接続導体はワイヤであり、前記接続領域は電極パッドであることを特徴とする。
【0020】
本発明の第6の態様は、前記第1乃至第5の態様のいずれかに係る半導体装置において、前記素子収容スペース内の前記電極は、前記パッケージの内部から外部に引き出されるリード端子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体素子のうち電極、パッド等が形成された一面においてワイヤ等の接続導体により電気的に接続される領域を除いて全面を誘電体膜によって被覆するとともに、半導体素子の周囲に空間を形成するセラミック製のパッケージを採用している。
【0022】
これにより、半導体素子の一面側では沿面放電が抑制される。また、接続導体には応力がかからないし、半導体素子とパッケージの間に応力が発生せず半導体素子の性能劣化が防止され、しかも、内部からのパッケージの損傷の発生も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置を構成する半導体電子デバイスの1つのユニットを示す断面図、図2は、半導体電子デバイスのユニットを集積して構成される大素子電界効果トランジスタの平面図、図3は、図2の部分拡大平面図である。
【0025】
図1に示す電界効果トランジスタ(FET)ユニット10は高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)であり、基板1上に成長されたGaN又はAlNよりなるバッファ層2と、バッファ層2上に成長されたアンドープGaNよりなる電子走行層3と、電子走行層3上に成長されたn型のAlGaNよりなる電子供給層4と、電子供給層4にショットキー接触するゲート電極5と、ゲート電極5の一側方に間隔をおいて形成されて電子供給層4にオーミック接触するソース電極6と、ゲート電極5の他側方に間隔をおいて形成されて電子供給層4にオーミック接触するドレイン電極7とから構成されている。
【0026】
バッファ層2から電子供給層4まではMOCVD法などにより成長される。また、基板1としては、例えば、アルミナ基板、SiC基板、Si基板等が使用される。ゲート電極5としては例えばAl/Auが使用され、ソース電極6、ドレイン電極7としては例えばTi/Alが使用される。さらに、ゲート電極5、ソース電極6、ドレイン電極7,電子供給層4は窒化シリコンよりなるパッシベーション膜8により覆われている。
【0027】
FETユニット10は、同一の基板1に集積化されて図2に示すような大素子FET20を構成する。
【0028】
大素子FET20を構成する電子供給層4上では、一方向に延びるストライプ状のゲート引き出し配線21と、ゲート引き出し配線21に直交する方向に延び且つ互いに間隔をおいて配置される複数のストライプ状のソースバスライン22と、ソースバスライン22の両側に間隔をおいて配置される複数のストライプ状のドレインバスライン23と、絶縁層(不図示)を介してゲート引き出し配線21の上をアーチ状に跨ぐソースバスライン22の一端部に電子供給層層4上で接続されるソース接続パッド24と、ドレインバスライン23の他端に接続されるドレイン接続パッド25とが形成されている。
【0029】
また、電子供給層4上では、ソースバスライン22とドレインバスライン23の間であって、ソースバスライン21寄りに間隔をおいてゲートバスライン26が形成され、ゲートバスライン26の一端にはゲート引き出し電極21が接続されている。
【0030】
ドレインバスライン23の両側部には、図3に示すように、これに直交する方向で上記の複数のドレイン電極7が櫛歯状に接続され、さらに、ソースバスライン22の側部には、ドレイン電極7と間隔をおいて平行に配置されるソース電極6が櫛歯状に接続されている。なお、ソース電極6とゲートバスライン26が交差する部分では、ソース電極6がゲートバスライン26上を絶縁層(不図示)を介してアーチ状に跨いでソースバスライン22に接続されている。
【0031】
そのようなソース電極6とドレイン電極7の間の領域には、ソースバスライン22、ドレインバスライン23の長手方向に沿ってS字状に蛇行するチャネル領域があり、そのチャネル領域にはゲート電極5がS字状に蛇行する形状で配置されてゲートバスライン26の側部に接続される。
【0032】
ゲート引き出し配線21は、図2に示すように、ソース接続パッド24に形成された凹状領域の内側に間隔をおいて配置されるゲート接続パッド27に接続されている。ゲート系パターン、即ちゲート引き出し配線21,ゲート電極7、ゲートバスライン26、ゲート接続パッド27は同一金属から形成され、ドレイン系パターン、ソース系パターンもそれぞれ同一金属から形成されている。
【0033】
なお、ソースバスライン22、ドレインバスライン23の間には、それらのライン22,23に沿って、ゲート電極5、ソース電極6及びドレイン電極7からなるFETユニット10が例えば100組形成されている。
【0034】
以上のような構成を有する大素子FET20の上面は、図4に示すように、ゲート接続パッド27、ドレイン接続パッド25及びソース接続パッド24の領域に開口部27a,25a,24aを有するポリイミド等の高耐圧の誘電体膜30によって覆われている。これにより、ソース電極6、ソースバスライン22、ドレイン電極7、ドレインバスライン23、ゲート電極5、ゲートバスライン26及びそれらに挟まれる領域は全て誘電体膜30に覆われることになる。
【0035】
また、ポリイミド等の誘電体膜30は、AlGaN電子供給層4上のゲート接続パッド27、ドレイン接続パッド25及びソース接続パッド24、及び全てのFETユニット10の上に塗布され、これを乾燥した後に、レジスト、ドライエッチングを用いるフォトリソグラフィ法によりパターニングして開口部24a,25a,27aが形成される。誘電体膜30の厚さは1.0〜1.5μm程度である。
【0036】
なお、感光性のポリイミドその他の樹脂材から誘電体膜30を形成しても良く、この場合には、開口部24a,25a,27aの形成のためにレジストを用いる必要はなくなる。また、誘電体膜30をパターニングする際に、パッシベーション膜8も同時にパターニングしてゲート接続パッド27、ドレイン接続パッド25及びソース接続パッド24を露出する開口24a,25a,27aを形成する。
【0037】
その誘電体膜30は、基板1の側面及び底面を覆わないように塗布されることが好ましいが、塗布装置の構造の関係から、基板1の側面、底面まで塗布される場合には、開口部24a,25a,27aを形成する際に基板1の側面及び底面から除去されることになる。
【0038】
以上のようにFETユニット10、ソースバスライン22、ドレインバスライン23及びゲートバスライン26が誘電体膜30により覆われた状態の基板1は、図5に示すようにセラミックパッケージ31に収容される。
【0039】
セラミックパッケージ31は、内部に大素子FET20を収容する凹状の素子収容スペース32を持つ上面開放のセラミック枠体33を有している。セラミック枠体33は、アルミナの骨材とガラス材料の混合物からなるグリーンシートを多層に重ねた後に焼成されたもので、その側面にはグリーンシートに挟まれて取り付けられた第1、第2、第3のリード34,35,36が素子収容スペース内から外方に突出して取り付けられている。素子収容スペース32はその内部に大素子FET20を取り付けた状態で大素子FET20の上面及び側面とセラミック枠体33の内壁との間に空間が形成される大きさ及び形状となっている。セラミック枠体33の下面にはコバールからなる放熱板37がロウ材により接着されている。
【0040】
そのようなセラミックパッケージ31内では、放熱板37の上に大素子FET20の下面がロウ材によって接着される。放熱板37上に固定された大素子FET20のソース接続パッド24は放熱板37に第1の導電性ワイヤ41を介して接続され、ドレイン接続パッド25は第1のリード34に第2の導電性ワイヤ42を介して接続され、ゲート接続パッド27は第2のリード35に第3の導電性ワイヤ43を介して接続されている。また、放熱板37は第3のリード36に第4の導電性ワイヤ44を介して接続されている。第1〜第4の導電性ワイヤ41〜44は、金、アルミニウム等の金属から構成される。なお、第1〜第4の導電性ワイヤ41〜44の替わりに他の接続導電を使用してもよい。
【0041】
そのように第1〜第3のリード34〜36が大素子FET20に導電性ワイヤ41〜44により接続された状態で、セラミックパッケージ31上には、セラミック製の蓋38がロウ材により接着されている。
【0042】
以上のような構成を有する半導体装置によれば、セラミックパッケージ31内に大素子FET20を配置し、しかも大素子FET20とリード334〜36を接続するワイヤ41〜44に接触しないように大容量FET20の上面を誘電体膜30で被覆するようにしたので、ゲート電極5とドレイン電極7の間、ドレイン電極7とソース電極6の間に大きな電位差が生じても誘電体膜30によって沿面放電の発生が抑制される。しかも、大素子FET20は下面を除いてセラミックパッケージ31との間に空間が形成されるので、高温環境下でもワイヤ41〜44には応力がかからず、高温環境下でワイヤ41〜44に断線が生じたり、熱膨張率差による圧力がセラミックパッケージ31及び大素子FET20に加わることがない。
【0043】
なお、上記の実施形態では、半導体素子としてHEMTを例に挙げたが、その他のIII−V族窒化物系化合物半導体素子を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置を構成する1つのFETユニットを示す側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る半導体装置を構成する大素子FETを示す平面図である。
【図3】図3は、図2に示す大素子FETの破線で囲まれた領域を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る半導体装置を構成する大素子FETを誘電体膜で覆った状態を示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る半導体装置を示す側部断面図及び上部断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1:基板
3:電子走行層
4:電子供給層
5:ゲート電極
6:ソース電極
7:ドレイン電極
8:パッシベーション膜
10:FETユニット
20:大素子FET
24:ソース電極パッド
25:ドレイン電極パッド
27:ゲート電極パッド
24a,25a,27a:開口部
30:誘電体膜
31:セラミックパッケージ
32:素子収容スペース
33:セラミック枠体
34,35,36:リード
37:放熱板
38:蓋体
41〜44:ワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に電気的に接続される接続領域と該接続領域に電気的に繋がる電極を一面に有する半導体素子と、
前記一面の全体に形成され且つ前記接続領域を露出させる開口部を有する誘電体膜と、
前記半導体素子の他面を底部に接続するとともに前記半導体素子及び誘電体膜と内面との間に空間が形成される素子収容スペースを有するセラミック製のパッケージと、
前記パッケージの内部に設けられた電極と、
前記素子収容スペース内で前記電極と前記半導体素子の前記接続領域とを前記誘電体膜の開口部を通して接続する接続導体と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子は、III−V族窒化物系化合物半導体素子であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記接続導体は前記接続領域と前記パッケージの内部に設けられた前記電極と前記空間にのみ接触していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記誘電膜はポリイミド化合物を主成分とする樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接続導体はワイヤであり、前記接続領域は電極パッドであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記素子収容スペース内の前記電極は、前記パッケージの内部から外部に引き出されるリード端子であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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