説明

半導体装置

【課題】保護回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置の保護機能が働く条件の拡大と加熱遮断の向上と誤動作防止と使い勝手の向上を図る。
【解決手段】本発明の絶縁ゲート型半導体装置は、電力用絶縁ゲート型半導体素子(M9)と、該電力用絶縁ゲート型半導体素子を制御する保護回路用MOSFET(M1〜M7)と、定電圧回路用ダイオード(D2a〜D2f)の順方向電圧を利用した定電圧回路と、該定電圧回路の電源電圧の上限を制御する電圧制限用のダイオード(D1とD0a〜D0d)とを具備し、該電圧制限用のダイオードの電力が前記電力用絶縁ゲート型半導体素子の外部ゲート端子から供給されることを特徴とするものである。本発明によれば、保護回路内蔵絶縁ゲート型半導体装置の信頼度を向上と使い勝手の向上を図れるという効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーMOSFETやIGBT(Insulated gate bipolar transistor)等の絶縁ゲート型半導体装置に係り、特に、保護機能をチップ上に具備する絶縁ゲート型半導体装置の信頼性向上を図った電力用絶縁ゲート型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFETと称されている大電力を扱う絶縁ゲート型電界効果トランジスタにおいて、その信頼性向上のために同一チップ上に過熱遮断回路を内蔵した例が、特開昭63−229758号公報に開示されている。この従来例では外部ゲート端子と外部ソース端子との間に抵抗とツェナーダイオードを直列接続し、前記ツェナーダイオードの両端に定電圧を発生させ、この両端の外部ソース端子側に抵抗を接続し、外部ゲート端子側にダイオードを接続し、前記抵抗とダイオードの分圧変動で温度検出を行っている。素子過熱時には前記抵抗の両端にゲートとソースを接続した保護回路用MOSFETがオンし、本体のパワーMOSFETを遮断させる。この従来の過熱遮断回路では、外部ゲート電圧変動に対する前記保護回路用nチャネルMOSFETのゲート・ソース間電圧変動が大きいため、ゲート電圧の変動が過熱遮断温度の変動に結び付きやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−229758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、ゲート電圧の変動に対する遮断温度の変動を低減するため定電圧回路には前記ツェナーダイオードだけを用いていた。しかし、本発明者等の検討により、以下のことが明らかとなった。
【0005】
(課題1)ツェナーダイオードの場合、耐圧が7V程度以下になるとソフトブレークダウンする。このため、外部ゲート電圧が5V前後で使用する場合には遮断温度が外部ゲート電圧の変動を受けやすくなる。したがって、素子のばらつきも考慮すると外部ゲート端子に許容される電圧範囲は4Vから7V程度以下と狭くなる。
【0006】
(課題2)ゲート電圧が負になったときには外部ドレイン端子から外部ゲート端子へ寄生バイポーラトランジスタの動作によるリーク電流が流れるため、ソースフォロア回路には使用できない。
【0007】
(課題3)ドレイン電圧が負になると寄生バイポーラトランジスタの動作により保護回路用のMOSFETのドレインから外部ソース端子に電流が流れる。
【0008】
(課題4)負荷短絡事故のときのように急激にドレイン電流が流れる場合には、ソースパッド部が最も温度が高くなるため温度検出素子の位置はソースパッドとの位置関係で決定する必要がある。
【0009】
本発明は上記の如き検討結果を基になされたものであり、その目的とするところは信頼性が高く使い勝手が良い保護回路機能を備えた絶縁ゲート型半導体装置を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態による絶縁ゲート型半導体装置は、
(手段1) 電力用絶縁ゲート型半導体素子(M9)と、
該電力用絶縁ゲート型半導体素子のゲート電流を制御する保護回路用MOSFET(M1〜M7)と、
第1のダイオード(D2a〜D2f)の順方向電圧を利用した定電圧回路と、
該定電圧回路の電源電圧の上限を制限する電圧制限手段(D1とD0a〜D0d)とを具備し、
該定電圧制限手段の電力が前記電力用絶縁ゲート型半導体素子の外部ゲート端子から供給されることを特徴とするものである(図1)。
【0012】
(手段2) 電力用絶縁ゲート型半導体素子(M9)と、
該電力用絶縁ゲート型半導体素子を制御する保護回路用MOSFET(M1〜M7)と、
上記保護回路用MOSFETのドレイン・ボディ間ダイオードと逆方向に接続された第3のダイオード(D5〜D7)と、
前記電力用半導体素子の外部ゲート端子と外部ソース端子(外部エミッタ端子)の間に接続された第4のダイオード(D0a〜D0d)を具備し、
外部ゲート端子電圧が変化しても上記第3のダイオードが降伏しないように上記第4のダイオードに電流が流れ外部ゲート端子と外部ソース端子の電圧をクランプすることを特徴とするものである(図1)。
【0013】
(手段3) 外部ドレイン電圧が負になったときに前記第1の保護回路用MOSFET(M1)のゲート・ソース間電圧を低減する手段を設けたことを特徴とするものである(図1)。
【0014】
(手段4) 電力用絶縁ゲート型半導体素子と、
温度検出回路と、
規定温度以上に達したときに上記電力用絶縁ゲート型半導体素子の電流を制限するゲート遮断回路とを具備する絶縁ゲート型半導体装置において、
前記温度検出回路に用いる温度検出用素子を前記温度検出素子以外の保護回路領域と前記電力用絶縁ゲート型半導体素子の外部ソース端子用パッドの間の領域(P1〜P7で包含する領域)に形成したことを特徴とするものである(図2)。さらに限定するならば、上記温度検出用素子を上記電力用絶縁ゲート型半導体素子の外部ソース端子用パッドから300μm以内のところに配置したことを特徴とするものである(図2)。
【0015】
本発明の代表的な実施形態では、
(作用1) 第1のダイオード(D2a〜D2f)の順方向電圧により3V程度の定電圧を発生し、外部ゲート電圧が10V程度以上になった場合には逆方向接続ダイオード等(D1とD0a〜D0d)により上記定電圧回路のゲート電圧依存性を抑制できる(図1)。
【0016】
(作用2) D5〜D7、D0a〜D0の耐圧と順方向電圧降下が次式を満足する場合、保護回路用MOSFET(M1からM7)のドレイン・ボディ間ダイオードが順バイアスされることが防止でき、パワーMOSFETのドレインからゲートへ寄生バイポーラトランジスタの動作により電流が流れることを防止できる。
BV(D5)、BV(D6)、BV(D7)
>Vf(D0a)+BV(D0b)+Vf(D0c)+Vf(D0d)(図1)
(作用3) 遮断回路が働いた状態でパワーMOSFETのドレイン電圧が負になると寄生バイポーラトランジスタが動作し、最悪の場合ラッチ情報が消失する。その後、パワーMOSFETのドレイン電圧が正になっても、チップが冷却してない場合には遮断回路を動作させなければならないがM5の追加によりパワーMOSFETのドレイン電圧が負になった場合にM5のドレイン電圧はゼロボルトに向かうため、M1はオフしやすくする。このため、遮断回路が働きやすくなる(図1)。
【0017】
(作用4) 通常のパワーMOSFETの場合、半導体表面には金属電極層が1層だけである。この1層の金属電極層でパワーMOSFETのソース電極層と温度検出用素子等の回路配線を形成する必要がある。温度検出用素子を前記温度検出素子以外の保護回路領域と前記電力用絶縁ゲート型半導体素子の外部ソース端子用パッドの間の領域に形成することにより、負荷短絡事故の場合に半導体チップ内で最も温度が上昇しやすいソースパッド近傍に温度検出用素子を近づけられると同時に、パワーMOSFETのソース電極層が寸断されにくくなるためソース電極層の抵抗増加を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
高信頼で使い勝手の良い保護回路内蔵パワーMOSFETやIGBTのを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の半導体装置の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の半導体装置の平面構造図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の半導体装置の温度検出素子部の平面構造図である。
【図4】図3のc−c’部の断面構造図である。
【図5】図2のa−a’部の断面構造図である。
【図6】図2のb−b’部の断面構造図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の半導体装置の製造工程図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の半導体装置の不純物プロファイルである。
【図9】本発明の第2の実施形態の半導体装置の不純物プロファイルである。
【図10】本発明の第3の実施形態の半導体装置の断面構造図である。
【図11】本発明の半導体装置の遮断温度特性図である。
【図12】本発明の第4の実施形態の半導体装置の平面構造図である。
【図13】本発明の第5の実施形態の半導体装置の平面構造図である。
【図14】本発明の第6の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図15】本発明の第7の実施形態の半導体装置の平面構造図である。
【図16】図15のd−d’部の断面構造図である。
【図17】本発明の第8の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図18】本発明の第9の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図19】本発明の第10の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図20】本発明の第11の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図21】本発明の第12の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図22】本発明の第13の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図23】本発明の第14の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図24】本発明の第15の実施形態の半導体装置の回路図である。
【図25】本発明の第16の実施形態の半導体装置の断面構造図である。
【図26】図24の本発明の半導体装置を用いた3相インバータ回路図である。
【図27】本発明の半導体装置をコントローラにより駆動する回路図である。
【図28】図22の回路の動作特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して、より詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態の半導体装置の回路図である。本発明の半導体装置はパワーMOSFET部(M9)の過熱または過電流による素子破壊を防止するために、M9と同一チップ上に過熱保護ならびに過電流保護回路を内蔵している。
【0024】
本実施の形態の半導体装置は、ゲート保護回路、定電圧回路、温度検出回路、ラッチ回路、ゲート遮断回路、過電流保護回路そしてパワーMOSFETから構成される。
【0025】
温度検出回路は温度検出用素子として多結晶シリコンダイオードD3a〜D3gを用いている。本実施の形態の多結晶シリコンダイオードの順方向電圧Vfは一個当り約−1.5mV/℃の温度特性を有する。このため、チップ温度が上昇すると多結晶シリコン抵抗R1と多結晶シリコンダイオードD3a〜D3gの接続点の電圧が低下し、この電圧がM1のしきい電圧以下に下がるとM1がオフし、遮断回路が動作する。
【0026】
ラッチ回路の抵抗R4は抵抗R3より約1桁程度高く設定する。このため、半導体チップが高温になっていない場合にはゲート端子に正の電圧が印加されると、ラッチ回路の出力は低電位になりゲート遮断回路は働かない。
【0027】
ゲート遮断回路では、温度検出回路により温度上昇が検出され、ラッチ回路の出力が低電位から高電位になった時、M6がオンし、パワーMOSFETM9をオフする。一旦過熱遮断回路が動作するとラッチ回路の出力が高電位になり遮断状態が保持されるため、チップ温度が低下してもM9のゲート電圧は低電位に保持する。パワーMOSFETM9を再びオンさせるためには一旦外部ゲート端子の電圧をゼロボルト付近まで低下し、ラッチ回路をリセットする必要がある。
【0028】
過電流保護回路はメイン用MOSFETM9の約1000分の1程度以下のゲート幅(例えば900μm)を有するセンス用MOSFETM8のドレイン電流でM9のドレイン電流をモニタし、M9に過電流が流れた場合にはM7がオンし、M9のゲート電圧を下げてM9のドレイン電流を制限する。
【0029】
本実施の形態の第1の特徴は、ゲート端子の正電圧を20V以下に制限するゲート保護用多結晶シリコンダイオードD0a、D0c、D0dの他に多結晶シリコンダイオードD2a〜D2fの順方向電圧を利用した定電圧回路を設け、この電圧Vz1を用いて温度検出回路を動作している点にある。また、本実施の形態では温度検出回路のゲート電圧依存性をさらに低減するために、多結晶シリコンダイオードD1によりVz2を約8V以下に制限している点にある。なお、本実施の形態では定電圧回路用のダイオードD2a〜D2fと温度検出用のダイオードD3a〜D3gが同一方向に配列されているためダイオードの素子ばらつきを相殺するように働くという効果がある。
【0030】
ダイオードの降伏特性は耐圧が6V程度以下ではソフトブレークダウンとなり良好な定電圧回路が得られない。本実施の形態では多結晶シリコンの順方向電圧を利用することによりゲート端子電圧の変化に対するVz1の変化を抑制し、3V程度以下に定電圧化できた。このため、過熱遮断回路が正常動作するゲート端子電圧の下限値を従来の4V程度から3V程度に拡大できるという効果がある。さらに、多結晶シリコンダイオードD1の降伏電圧を利用した定電圧化手段は、Vz1のゲート端子依存性を低減するのみでなく、温度検出回路の出力電源電圧Vz2のゲート端子電圧依存性を抑えることができた。このため、過熱遮断回路が正常動作するゲート端子電圧の上限値は従来の7V程度から18V以上に拡大できるという効果がある。
【0031】
図11に本発明の定電圧回路がある場合と定電圧回路がない従来回路の場合に関して遮断温度のゲート端子電圧依存性を示す。本発明の定電圧回路の内蔵化により外部ゲート端子電圧が変化したときの遮断温度の変動が抑えられるため信頼性向上が図れ、使用可能なゲート電圧範囲が拡大することにより使い勝手が向上するという効果がある。具体的には、従来はゲート電圧を3V変化させただけ遮断温度は20℃程度変化していたが、本発明によればゲート電圧を10V以上変化させるまで同レベルの遮断温度変化はない。すなわち、本発明によれば、製造マージンを考慮したときゲート電圧を10V変化させたときの遮断温度の変化を30℃以下に抑えられる。よって、5V電源用にも12V電源用にも同一素子で使用できるため使い勝手が向上し、信頼性も向上するという効果がある。
【0032】
本実施の形態の第2の特徴は、温度検出回路の入力電源電圧Vz1より温度検出回路の出力電源電圧Vz2を高くするため抵抗R0cを設けている点である。Vz1は外部ゲート端子電圧が3V程度に下がった場合でも過熱遮断回路が正常動作できるように低い値で定電圧化する必要がある。これに対し、Vz2はラッチ回路を高速動作するためにM2のゲートにはVz1より高い電圧を印加しなければならない。
【0033】
本実施の形態の第3の特徴は、温度検出用のMOSFETM1のチャネル長をゲート遮断回路用MOSFETM6のチャネル長より長くしている点である。すなわち、M1のチャネル長はしきい電圧のばらつきが充分小さくなるように長く取り、温度検出精度を向上するのに対し、しきい電圧のばらつきが遮断温度の変動に影響が小さいM6のチャネル長は短くして電流駆動能力を増加する。これにより、遮断温度精度の劣化を防止したまま保護回路部の面積低減が図れるという効果がある。なお、M6のしきい電圧をM1のしきい電圧より低くした場合にも同様の効果が図れる。
【0034】
本実施の形態の第4の特徴は、温度検出用ダイオードD3a〜D3gを温度検出回路MOSFETM1のゲート・ドレイン側でなくゲート・ソース間に配置してある点である。ゲート端子電圧の変動によりVz1が変動した場合、その変動はダイオードD3a〜D3gの両端の電圧変化でなく抵抗R1の両端の電圧変化となる。このため、本実施の形態の場合には従来回路(特開昭63−229758号公報記載)に比べ遮断温度のゲート電圧依存性を低減できる。
【0035】
本実施の形態の第5の特徴は、M9の遮断に使用するゲート遮断回路用MOSFETM6のゲート電圧用電源Vz3を温度検出回路の出力電源電圧Vz2より高くするため抵抗R0bを設けている点である(R0a=0でも良い)。これにより、遮断回路の応答速度を高速化できるという効果がある。
【0036】
本実施の形態の第6の特徴は、ゲート端子電圧が負になっても、保護回路用MOSFETM1〜M7のドレイン・ボディ間にある寄生ダイオードが順バイアスされることを防止するため、多結晶シリコンダイオードD5、D6、D7を設け、さらにこのD5〜D6が降伏することを防止するために、電流経路D0a〜D0dを設けている点である。
【0037】
保護回路用MOSFETのドレイン・ボディ間ダイオード(図5のn型領域13aとp型領域4で構成されるpn接合ダイオード)が順バイアスされると、パワーMOSFETのドレイン(図5のn型領域2)をコレクタとする寄生npnトランジスタが動作し、ドレイン端子からゲート端子に電流が流れるという問題が生じる。ゲート・ソース間に電流が流れることを防止するため多結晶シリコンダイオードD5〜D7を追加しただけではこれらのダイオードの耐圧以上に外部ゲート端子に負の電圧が印加された場合(たとえばVgs=−10V程度以下)には結局上述の寄生npnトランジスタが動作してしまうという問題がある。本実施の形態のポイントは、外部ソース端子から外部ゲート端子に電流が流れるのを防止するのではなく、保護回路用MOSFETの寄生ダイオードが順バイアスされるのを防止するためにこれとは別の電流経路を外部ソース端子と外部ゲート端子の間に設けたことにある(本実施の形態ではゲート保護回路を上記電流経路とした)。これを実現するために、D5〜D7、D0a〜D0dのダイオードの耐圧と順方向電圧は以下の条件を満足するように設定される。
BV(D5),BV(D6),BV(D7)
>Vf(D0a)+BV(D0b)+Vf(D0c)+Vf(D0d)
ここで、
BV(D0b)=4V、
BV(D5)=BV(D6)=BV(D7)=7V、
Vf(D0a)=Vf(D0c)=Vf(D0d)=0.3Vである。
【0038】
なお、D0bの降伏電圧をD5、D6、D7より低くするためには図6の低濃度のp型多結晶シリコン層7bの長さを短くすることにより実現できる。
【0039】
本実施の形態の第7の特徴はラッチ回路の安定化を図るため保護回路用MOSFETM5を設けている点にある。本来M5はなくても本回路は動作するがラッチ回路の負荷が抵抗であるためラッチ状態が不安定化になり易いという問題がある。本実施の形態ではM5を追加することにより、遮断回路が動作しラッチ回路の出力電圧が高電位になりはじめるとM5がオンし遮断動作に正帰還がかかる。すなわち、温度検出回路用MOSFETM1のゲート電圧をさらに下げ、これによりラッチ回路の入力電圧がさらに増加し、ラッチ回路状態が安定しやすくなるという効果がある。また、M5を追加すると次のような効果もある。インダクタンス成分を有する負荷の場合、過熱遮断回路が動作した後に外部ドレイン電圧が外部ソース電圧より一瞬低くなることがある。この時、保護回路用MOSFETM1〜M7のドレイン(図5のn型領域13a)をコレクタ、ボディ(図5のp型領域4)をベース、パワーMOSFETのドレイン(図5のn型領域2)をエミッタとする寄生npnトランジスタが動作し、M1とM4のドレイン電圧の電圧が下がり、最悪の場合ラッチ回路の情報が消失する。その後、外部ドレイン電圧が高くなったとき、チップ温度が遮断温度以上の場合には再び遮断回路が動作しなければならない。本回路ではM5の追加によりパワーMOSFETの外部ドレイン端子が負になったときM5のドレイン電圧も上記寄生npnトランジスタの影響により低下させるためM1を充分深くオフできる。よって、遮断回路が高速に働きやすくなる。なお、本実施の形態ではM5のドレインをD3eとD3fの間に接続した場合を示したが、遮断回路が動作しはじめたときに正帰還が働くならば他の場所に接続しても良い。例えば、M1のゲートや定電圧回路の多結晶シリコンダイオードD2aからD2fの接続点などがある。
【0040】
本発明の第8の特徴は、誤動作防止用のキャパシタCを内蔵させている点である。これにより、ゲート電圧が急速に立ち上がった場合にM2がオンし遮断回路が誤って働くことを防止している。このキャパシタCはM1のドレインに直接接続した方がゲートからの雑音防止には効果が高いがチップが高温になったときの遮断回路の応答速度が低下するという問題があるため、R2aとR2bの中間点に接続し最適化を図っている。
【0041】
図2は本発明の第1の実施の形態の半導体装置の平面構造図である。
【0042】
本実施の形態の第9の特徴は、温度検出用素子がソースパッドの近傍(300μm以内)のところに配置してある点にある。ここで、温度検出用素子とは温度上昇により電圧変動または抵抗値変動または電流変動が顕著であるため温度検出に用いる素子のことである。本実施の形態では多結晶シリコンダイオードD3a〜D3gを使用している。従来、パワーMOSFETの最大温度を示すのはアクティブ領域の中心と考えられていた。しかし、これはチップの温度上昇速度をチップ内の温度伝達速度より充分ゆっくりとさせた場合である。負荷短絡事故等のようにドレイン電流が急増することによる発熱の場合には、ソースパッド近傍で最も温度が上昇することが判明した。このため、温度検出用ダイオードは、M1等(図1参照)の温度検出回路部よりもソースパッド側に近接して配置されている。
【0043】
本実施の形態の第10の特徴は、ソースパッドはチップ周辺から300μm以上離れたところに配置してある点にある。これは、ソース電極に流れる電流密度を低減し局部的な温度上昇を回避するためとソース電極のオン抵抗増加を防止するためである。
【0044】
本実施の形態の第11の特徴は、温度検出用ダイオードを温度検出用ダイオード以外の保護回路部とソースパッドとの間(P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7で囲まれる領域内)に配置している点にある。通常のパワーMOSFETプロセスはチップ表面の電極は1層だけであるため、この1層の金属電極層でパワーMOSFETのソース電極と温度検出用ダイオード等の配線を形成する必要がある。温度検出用ダイオードを温度検出用ダイオード以外の保護回路領域と外部ソース端子用パッドの間の領域に形成することにより、負荷短絡事故の場合に半導体チップ内で最も温度上昇しやすいソースパッド近傍に温度検出用ダイオードを近付けられると同時に、パワーMOSFETのソース電極が寸断されにくくなるためソース抵抗の増加を防止できる。また、ソース電極の増加防止のためゲートフィンガ(ゲート抵抗低減のための金属電極層)はパワーMOSFETのアクティブ領域をおおうように配線しさらにソースパッドに向かって配置する。
【0045】
本実施の形態の第12の特徴は、ゲートパッドの周辺にゲート保護用ダイオードをゲートパッドを囲むように形成し、保護回路部の角に配置してある点にある。これにより、温度検出用ダイオードとゲート保護回路と以外の保護回路の配線がゲートパッドにより阻害されることを防止できるためチップ面積の増加を抑えることが可能となる。
【0046】
図3は本発明の第1の実施の形態の半導体装置の温度検出素子部の平面構造図、図4は図3のc−c’部の断面構造図である。1は高濃度n型半導体基板、2はn型エピタキシャル層でこれらはパワーMOSFETのドレインである。7aはパワーMOSFETのゲート、12は高濃度n型領域でパワーMOSFETのソース、10はp型領域でパワーMOSFETのチャネルが形成されるボディー、5は高濃度p型領域でパワーMOSFETのソース・ボディ・ドレイン間に存在する寄生npnトランジスタを低減するために形成してある。また、この高濃度p型領域5は温度検出用ダイオード直下にも形成し温度検出用ダイオード直下のp型領域5がn反転し、寄生素子が働くことを防止している。13は高濃度p領域でパワーMOSFETのボディ10を低抵抗でソースと接続するため形成している。
【0047】
本実施の形態の第13の特徴は、温度検出用ダイオードのアノード(p型多結晶シリコン層7d)とカソード(n型多結晶シリコン層7c)がリング状形成している点にある。このため、pn接合の端におけるリーク電流の増加や温度特性のバラツキ増加要因をなくせるという効果がある。なお、図3では接合が四角形の場合を示したが、この4角を円弧または鈍角にすることにより、角における接合電流の増加をさらに低減できるという効果がある。
【0048】
本実施の形態の第14の特徴は、温度検出用ダイオード直下の絶縁層6がパワーMOSFETのゲート酸化膜と同レベルの100nm程度以下の薄い酸化膜上に形成し、さらにp領域多結晶シリコンダイオード7dとn型多結晶シリコンダイオード7cのパターンを多結晶シリコン層7両側部から離れた内側部分のみに形成している点にある。本実施の形態では、p領域多結晶シリコンダイオード7dを形成するためのボロンイオン打ち込み工程を13のボロンイオン打ち込み工程と同時に行い、n型多結晶シリコンダイオード7cを形成する工程を12のヒ素(またはリン)イオン打ち込みと同時に行っている。このため、もしもn型多結晶シリコンダイオード7cのパターンを多結晶シリコン層7の外側までの延ばした場合には上記ヒ素(またはリン)イオン打ち込み工程によって多結晶シリコンダイオードの周辺のp型領域5にフローティングのn型領域が形成されため好ましくない。なお、温度検出用ダイオード直下に薄い絶縁層を用いる理由はパワーMOSFETのドレイン領域2からの熱伝達速度を速くするためである。
【0049】
図5は図2のa−a’部の断面構造図、図6は図2のb−b’部の断面構造図である。図5に示した多結晶シリコンダイオードは図1のD2a〜D2fのように定電圧回路に用いる素子の構造である。
【0050】
本実施の形態の第15の特徴は、順方向電圧降下を用いた定電圧回路用多結晶シリコンダイオードは図3に示した温度検出用多結晶シリコンダイオードと同様に高濃度n型多結晶シリコン層7cと高濃度p型多結晶シリコン層7cを直接接続し、さらにリング状に形成したことである。高濃度領域を直接接続することにより寄生抵抗成分の低下を図り、リング状に形成することによりpn接合の端におけるリーク電流の増加や温度特性のバラツキ増加要因をなくせるという効果がある。なお、接合の形は温度検出用ダイオードの説明でも述べたように4角を円弧または鈍角にした場合には、角における接合電流の増加をさらに低減できるという効果がある。
【0051】
本実施の形態の第16の特徴は、図1のキャパシタは図10に示すようにMOSキャパシタを用いゲート酸化膜直下は保護回路用MOSFETのp型領域4より表面濃度が高いp型領域5を用いている点にある。これにより、MOSキャパシタの多結晶シリコン層7aの電圧が高くなってもp型領域5の表面がn型反転したり、抵抗が高くなることを防止している(図8参照)。さらに、p型領域13をキャパシタ用多結晶シリコン層7aで囲んで形成することにより、p型領域5における寄生抵抗を低減している。
【0052】
図7(a)から図7(b)は本発明の第1の実施の形態の半導体装置の製造工程図で、図5の構造が得られるまでの主要過程の断面構造図である。また、図8は保護回路用MOSFETのp型ウェル4の不純物プロファイルとパワーMOSFETのp型ウェル領域とキャパシタ直下に用いるp型領域5の不純物プロファイルを示す。p型領域5はp型領域4に比べボロンのイオン打ち込み量を約1桁高くすることにより高濃度化している。
【0053】
以下に半導体装置の製造方法の概略を述べる。
【0054】
(1)高濃度n型基板1上にn型エピタキシャル層2を形成した後、絶縁層3を形成し、これをマスクにしてp型領域4と5を形成するためのボロンイオン打ち込みと拡散を行う{図7(a)}。
【0055】
(2)絶縁層3を除去した後、窒化膜を利用した選択酸化とゲート酸化工程により絶縁層6を形成し、次に、多結晶シリコン層7を形成する。その後、多結晶シリコンダイオードと高抵抗の多結晶シリコン抵抗を形成する領域に絶縁層8を形成する{図7(b)}。
【0056】
(3)リン等のn型不純物を多結晶シリコン層7の絶縁層8で保護されない領域にドープし7a領域を形成する。次に、絶縁層8を除去しボロン打ち込みによりp型多結晶シリコン層7bを形成する。次に、多結晶シリコン層7aと7bのパターンニングを行いパワーMOSFETのチャネル領域形成を主目的としたp型領域10形成のため多結晶シリコン層7aと自己整合的に形成して拡散する。そして、保護回路用MOSFETの高耐圧化のため低濃度n型領域11をリン(またはヒ素)のイオン打ち込み工程により形成した後、絶縁層9を形成する。
【0057】
(4)その後は、n型多結晶シリコンダイオード7cを形成する工程をn型領域12のヒ素(またはリン)イオン打ち込みと同時に行い、p領域多結晶シリコンダイオード7dを形成するためのボロンイオン打ち込みはp領域領域13のボロンイオン打ち込み工程と同時に行う。その後、絶縁層14(絶縁層9を含む、他の図においても同様)を形成し、コンタクト形成、金属電極層15の形成、絶縁層16の形成、裏面エッチング、裏面電極17の形成を行い、図5に至る。
【0058】
図9は本発明の第2の実施の形態の半導体装置の不純物プロファイルである。本実施の形態の特徴は、保護回路用MOSFETのボディ領域であるp型領域4を表面濃度に比べシリコン内部の方が不純物濃度が約1桁高くなるレトログレード型プロファイルした点である。ここで、4aはp型拡散層のプロファイル〔5〕の4aの表面濃度を低減するためのn型拡散層のプロファイルである。これにより、保護回路用MOSFETのしきい電圧は第1の実施の形態と同様に1.5V程度以下に抑えられ、外部ゲート電圧が3V程度まで下がっても遮断回路が働く。また、保護回路用MOSFETのドレインとボディとパワーMOSFETのドレインにより構成される寄生npnトランジスタの効果を抑えられるという効果がある。
【0059】
図10は本発明の第3の実施の形態の半導体装置の断面構造図である。本実施の形態の特徴はp型領域4をp型領域5より深く形成した点にある。これにより、保護回路用MOSFETのしきい電圧は第1の実施の形態と同様に1.5V程度以下に抑えたまま、保護回路用MOSFETのドレインとボディとパワーMOSFETのドレインにより構成される寄生npnトランジスタの効果を抑えることができる。
【0060】
図12は本発明の第4の実施の形態の半導体装置の平面図である。本実施の形態でも第1の実施の形態の場合と同様に温度検出用素子を温度検出用素子以外の保護回路領域とソースパッドの間(P7、P8、P9、P10、P11、P12、P13、P14、P15、P16で囲まれる領域内)に配置している。また、本実施の形態ではソース電極抵抗を抑えたまま温度検出用素子をチップ温度が最高になる領域に近づけるため、温度検出用素子以外の保護回路領域の角が4つ以上の多角形にしている。
【0061】
図13は本発明の第5の実施の形態の半導体装置の平面図である。本実施の形態ではソースパッドが複数個ある場合の温度検出用素子の配置例を示す。本実施の形態でも第1の実施の形態の場合と同様に温度検出用素子を温度検出用素子以外の保護回路領域とソースパッドの間(P17、P18、P19、P20、P21、P22、P23、P24で囲まれる領域内)に配置している。また、温度検出用素子は1個所に置いてもよいが温度検出精度を増加するために本実施の形態では温度検出用素子は2個所に設けた。例えば、図1の回路の場合にはD3a、D3b、D3c、D3gとD3d、D3e、D3fに分割し2個所に配置すればよい。
【0062】
図14は本発明の第6の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態では図13のように温度検出素子を2個所以上離れた場所に配置する場合の回路を示す。もちろん、本実施の形態では温度検出用ダイオードを並列に配列することにより温度検出精度を向上した場合の実施の形態である。
【0063】
図15は本発明の第7の実施の形態の半導体装置の平面図である。本実施の形態の特徴は負荷短絡事故においてチップ温度が最も高くなるソースパッド直下に温度検出用ダイオードを配置させた点にある。
【0064】
図16は図15のd−d’部の断面構造を示す。本実施の形態では保護回路の上に絶縁層16を介して第2の金属電極層18を設けていることが特徴である。このため、図15のようにソースパッドの直下に温度検出回路を配置可能となる。また、本実施の形態のように第2の金属電極層18を温度検出素子上に、すなわち温度検出用ダイオード部を覆うように形成した場合には第2の金属電極層18で発生した熱も絶縁層16を伝わって来るため温度検出の応答速度が速くなるという効果がある。このため、温度検出用素子はソースパッド直下に配置しない場合にも、第2の金属電極層18を追加することにより熱応答速度が良くなる。
【0065】
図17は本発明の第8の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態と図1との相違はM5のゲート端子の接続点が異なっているだけである。本実施の形態の場合には図1のようにラッチ回路に正帰還はかからないが、前述のようにM5を追加することによる第2の効果、すなわち、本回路ではM5の追加によりパワーMOSFETのドレイン端子が負になったときM5のドレイン電圧も上記寄生npnトランジスタの影響により低下するためM1を充分深くオフできる。このため、遮断回路が高速に働きやすくなる。
【0066】
図18は本発明の第9の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態では図17のM5の働きをM10で実現していることが特徴である。また、M10は定電圧回路の多結晶シリコンダイオードD1の働きも同時に果たしている。
【0067】
図19は本発明の第10の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態ではパワーMOSFETのドレイン端子が負になり、ラッチ回路の情報が消失しても多結晶シリコンダイオードD8により、M6のゲート電圧が保持されやすくした場合の実施の形態である。本実施の形態では遮断回路のリセットが完全に終了するのはダイオードD8のリーク電流によりVxの電圧が下がる必要がある。
【0068】
図20は本発明の第11の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態ではラッチ回路の電流が抵抗R0aを流れないようにした場合の実施の形態である。これにより遮断回路が働き始めた時、R0aの電流が増加することによりVz2やVz1の電圧が変動し遮断条件が不安定となることを防止できるという効果がある。図21は本発明の第12の実施の形態の半導体装置の回路図である。これまでの実施の形態の回路図はラッチ型の過熱保護回路内蔵パワーMOSFETに関するものであった。これに対し、本実施の形態ではチップが高温になって遮断回路が動作してもチップ温度がたとえば100℃程度低下すると自動的に遮断状態が解除されるヒステリシス型の過熱保護内蔵パワーMOSFETの場合の回路図である。本実施の形態の特徴は図1とM3の結線が異なることとM5がいらないことである(M3がM5と同じ働きをするようになる)。本実施の形態は遮断回路が動作した後のふるまいがラッチ型回路と異なるだけであり、本回路の特徴は第1の実施の形態で記述したことと同様の効果がある。
【0069】
図22は本発明の第13の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態ではヒステリシス回路とラッチ回路を内蔵させ、さらにヒステリシス回路の方がラッチ回路より低い温度で動作するようにしてある。これにより、緩慢な温度上昇に対してはヒステリシス回路が働きチップ冷却後には自動的に遮断回路が解除されるが、急激なチップ温度の増加にたいしてはヒステリシス回路が動作して温度検出回路に帰還がかかる前にラッチ回路も動作するためチップが冷却した後にも遮断状態が保持される。すなわち、負荷短絡のように負荷の異常時にはラッチ回路が働き、周囲温度の緩慢な上昇によりチップ温度が上昇するような場合にはヒステリシス回路が働くというように状況により異なった動作をさせることが可能である。
【0070】
図23は本発明の第14の実施の形態の半導体装置の回路図である。本実施の形態では過電流保護回路にM11を追加しヒステリシス回路に接続してあることが特徴である。比較的レベルの低い過電流が流れる場合にはこれまでの実施の形態のようにM7によりパワーMOSFETのゲート電圧を下げて過電流を制限するが、負荷短絡時のように比較的レベルの高い過電流が流れた場合にはM11によりヒステリシス回路を動作させてチップ温度が低下するまで完全に遮断するようにした。これにより、温度検出回路の応答が間にあわないような急激なチップ温度上昇に対しても保護することが可能となる。なお、本実施の形態のM11を図22の回路に追加し、M11のドレインをM4’のゲートに接続するとラッチ型の過熱遮断特性とヒステリシス型の過電流遮断回路を内蔵化することも可能である。
【0071】
図24は本発明の第15の実施の形態の半導体装置の回路図で、図25はその断構造図である。高濃度のP型半導体基板19はコレクタ、高濃度n型領域20はコレクタからの少数キャリヤ注入防止のためのn型バッファ層、n型エピタキシャル層2はnベース、p領域10はp型ベース、高濃度n型領域12はエミッタである。本実施の形態ではパワーMOSFETの代わりにIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) を用い、過電流保護回路を内蔵させた場合の回路図である。M9がメイン用のIGBT、M8がセンス用のIGBTである。本実施の形態の特徴は、ゲートが負になった場合にコレクタからゲートへの寄生電流を防止するために、図1の説明で述べたと同様、多結晶シリコンダイオードD7a〜D7c,D0e〜D0hを設けてある点である。IGBTの場合にはゲート電圧が負になり保護回路用MOSFETM7のドレイン・ボディ間ダイオードが順バイアスされると、n領域13a、p領域4、n型領域2と20、p領域19で構成される寄生サイリスタが動作するためパワーMOSFETの場合に比べ状況がさらに深刻である。この寄生サイリスタの動作防止のためには、図1の場合と同様の考え方により、次の関係となるように多結晶シリコンダイオードの耐圧と順方向電圧を設定すれば良い。
【0072】
BV(D7a)+BV8(D7b)+BV(D7c)〉
Vf(D0e)+BV(D0f)+Vf(D0g)+BV(D0h)
ここで、BV(D7a)=BV8(D7b)=BV(D7c)=BV(D0f)=BV(D0h)=7V、Vf(D0e)=BV(D0f)=Vf(D0g)=0.4V
なお、ゲートが負になった場合の耐圧が必要ない場合には多結晶シリコンダイオードはD7aとD0eだけでも構わない。この場合には、
BV(D7a)〉Vf(D0e)
の関係式が成立すれば上記寄生サイリスタ動作を防止できる。なお、本素子をエミッタフォロア回路(コレクタを電源に接続し、エミッタを負荷に接続する回路)で高速に遮断動作させる場合にはエミッタ端子からゲート端子に電流が流れるが、この電流が大きくなると上記不等式の右辺が大きくなる。このため、エミッタ端子からゲート端子への許容電流を高くする必要がある場合にはD0e、D0f、D0g、D0hで構成されるゲート保護回路は外づけダイオードにして上述の不等式を満足させてD7a、D7b、D7cの降伏を防止する必要がある。
【0073】
図26は図24の過電流保護回路内蔵IGBTを用いた3層インバータ回路である。図24の回路の場合、上述のようにゲートに負電圧が印加されてもIGBTのコレクタからゲートにリーク電流が生じないため、本実施の形態のように過電流保護回路内蔵IGBTをエミッタフォロアで使用することが可能である。
【0074】
図27は本発明で述べた保護回路内蔵パワーMOSFET遮断回路が働くとゲート電流が急増する。このため、ゲート電流検出回路を用いてこのゲート電流をモニタし、過熱保護回路内蔵パワーMOSFETで遮断動作が働いた場合はコントローラであるマイコンの出力Voutを低電位にし、異常の有無を検査した後に再びVoutを高電位にするという高信頼システムを構築することが可能である。
【0075】
図28は図22の動作の補足説明図である。T1はヒステリシス型の過熱遮断回路が動作し始めるチップ温度、T2は上記ヒステリシス型の遮断動作が解除される温度、T3はラッチ型の過熱遮断回路が動作するチップ温度である。チップ温度がT1以下の場合にはドレイン電流Idが流れる。もしもチップ温度の上昇が緩慢だとチップ温度がT1に達すると遮断回路が働きチップ温度が下がり、T2になると自動的に電流が流れるようになる。ところが、チップ温度の上昇速度が急激な場合にはシステリシス回路が働き始めた後もチップ温度が増加し、ラッチ回路の動作温度T3に達する。この場合にはパワーMOSFETが遮断しチップ温度が下がった後にもドレイン電流の自動復帰は行なわれず、外部ゲート端子を一旦ゼロボルトまで下げてリセットする必要がある。
【0076】
上記した本発明の種々の実施の形態(半導体装置の平面構造:チップレイアウト)において、定電圧回路用ダイオードD2a〜D2f(図1参照)は、温度検出用ダイオードD3a〜D3gと同様に温度特性を有したものであるため、抵抗R1も含めてD3a〜D3gと同一場所(図2参照)に配列できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、電力用絶縁ゲート型半導体装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
M1〜M7、M10、M11、M2’〜M6’ 保護回路用MOSFET
M8 パワーMOSFET(IGBT)のセンス素子部
M9 パワーMOSFET(IGBT)のメイン素子部
D1 〜D9 ダイオード
D0a〜D0h ゲート保護回路用ダイオード
D1、D2a〜D2f 定電圧回路用ダイオード
D3a〜D3f 温度検出用ダイオード
D4aD4b、D4c 過電流保護回路用ダイオード
D5、D6、D6’、D7 負電圧保護用ダイオード
C キャパシタ
R0a〜R0c、R1、R2、R2a、R2b、R3、R3’、R4、R4’、Rg、Rg1、Rg2、Rs 抵抗
1、2、11、12、20 n型領域
3、6、8、9、14、16 絶縁層
4、5、10、13、19 p型領域
7 多結晶シリコン層
7a、7c、7c n型多結晶シリコン層
7b、7d p型多結晶シリコン層
15、17、18 金属電極層
M1〜M9 保護回路用MOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを含み第1外部端子、第2外部端子および第3外部端子を備える半導体装置であって、
前記第1絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのそれぞれのコレクタ同士は接続され、
前記第1絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのそれぞれのゲート同士は接続され、
前記各コレクタは前記第1外部端子へ接続され、
前記第1絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのエミッタは前記第2外部端子へ接続され、
前記各ゲートは前記第3外部端子へ接続されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1MOSFETを備え、
前記第1MOSFETのドレインは前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートに接続され、
前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのエミッタは前記第1MOSFETのゲートに接続され、
前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのエミッタと前記第2外部端子との間には電流電圧変換手段が接続されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流電圧変換手段はアノードを前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのエミッタに接続し、カソードを前記第2外部端子に接続した第1ダイオードであることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートにアノードを接続し、前記第1MOSFETのドレインにカソードを接続した第2ダイオードを備えることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1外部端子と前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのベースとの間に抵抗素子を備えることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
第3ダイオードと第4ダイオードを備え、
前記第3ダイオードのカソードは前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートに接続され、
前記第3ダイオードのアノードは前記第2外部端子に接続されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
第3ダイオードと第4ダイオードを備え、
前記第3ダイオードのカソードは前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートに接続され、
前記第4ダイオードのアノードは前記第2絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートと接続され、
前記第4ダイオードのカソードは前記第2外部端子に接続されることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−103571(P2010−103571A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25001(P2010−25001)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願2004−367397(P2004−367397)の分割
【原出願日】平成5年8月18日(1993.8.18)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000233169)株式会社日立超エル・エス・アイ・システムズ (327)