説明

半導体装置

【課題】絶縁基板と金属基板とを接合する接合部材および絶縁基板と放熱部材とを接合する接合部材の接合性を別々の温度検出素子を用いて評価していたことから、モジュールの大型化という課題が生じていた。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置は、絶縁基体に埋設された、絶縁基体の温度を検出する複数の温度検出素子を備え、複数の温度検出素子が、絶縁基体の上面に第1の接合部材で接合された半導体素子の中心と上下に重なり合う部分に位置する第1の温度検出素子と、半導体素子の外周縁と上下に重なり合う部分に位置する少なくとも1つの第2の温度検出素子とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、特にIGBT、MOS−FETのようなパワー半導体素子が載置された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IGBT、MOS−FETのようなパワー半導体素子が載置された半導体装置としては、たとえば特許文献1に記載のパワーモジュールが知られている。パワー半導体素子には大電流が流されるため、半導体装置における発熱量が増大する傾向にある。半導体素子で生じた熱は、基板に伝わる。また、基板に伝わった熱は基板の下面に接合される放熱フィン、あるいは配線基板のような放熱部材を介して外部に放出される。
【0003】
上述のように、パワー半導体素子が載置された半導体装置においては、パワー半導体素子に大電流が流されるため、半導体素子が載置される基板とを接合する接合部材などに非常に多くの熱が伝わる。そのため、接合部材による接合性が低下して、半導体素子からの放熱が十分でなくなる可能性がある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のパワーモジュールにおいては、半導体素子の表面に温度検出素子として複数のダイオードを固着し、これらのダイオードを用いて半導体素子の温度を測定している。具体的には、接合部材に亀裂が生じて熱伝達が低下した場合に半導体素子の温度勾配が変化することから、複数のダイオードを用いて上記の温度勾配の変化を検出することによって、パワーモジュールの寿命を判断して半導体素子への通電を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−114575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体素子が載置される基板は一般的に放熱フィン、あるいは配線基板のような放熱部材に接合されている。特許文献1に記載のパワーモジュールにおける温度検出素子は半導体素子の表面に固着されることによって半導体素子の温度を測定していることから、基板と放熱部材とを接合する接合部材に亀裂が生じることによって熱伝導性が低下した場合、放熱性の低下を正確に検出することが困難であった。
【0007】
そこで、特許文献1に記載のパワーモジュールにおいては、放熱部材である金属ベース板の表面に別途、温度検出素子を固着することによって基板と放熱部材とを接合する接合部材の接合性を評価している。しかしながら、温度検出素子を別途用いる必要があることから、温度検出素子を固着するためのスペースを確保することによるモジュールの大型化という課題が生じていた。
【0008】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、モジュールを小型化しつつ、半導体素子と基板とを接合する接合部材および基板と放熱部材とを接合する接合部材の接合性を良好に評価することが可能な半導体装置およびこのような半導体装置に用いられる素子載置用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る半導体装置は、上面および下面を有する絶縁基体と、該絶縁基体の上面に下面が第1の接合部材で接合された金属基体と、該金属基体の上面に配設された半導体素子と、前記絶縁基体および前記金属基体を介して前記半導体素子と上下に重なり合うように、前記絶縁基体の下面に上面が第2の接合部材で接合された放熱基板と、前記絶縁基体に埋設された、前記絶縁基体の温度を検出する複数の温度検出素子とを備えている。そして、前記複数の温度検出素子が、前記半導体素子の中心と上下に重なり合う部分に位置する第1の温度検出素子と、前記半導体素子の外周縁と上下に重なり合う部分に位置する少なくとも1つの第2の温度検出素子とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
半導体装置の製造時の不良あるいは長期間の半導体装置の使用によって、金属基体の下面を絶縁基体の上面に接合する第1の接合部材および放熱基板の上面を絶縁基体の下面に接合する第2の接合部材が剥離する場合のように、第1の接合部材および第2の接合部材における熱伝達が低下した場合、このような熱伝達の低下は第1の接合部材および第2の接合部材の外周縁部分から生じ易い。そして、このような熱伝達の低下が半導体素子の直下まで進んだ場合に、金属基体から絶縁基体への放熱が阻害され、絶縁基体の温度勾配に変化が生じるようになる。
【0011】
上記の態様に係る半導体装置においては、温度検出素子を半導体素子の表面に固着することによって半導体素子の温度を測定するのではなく、絶縁基体に埋設することによって絶縁基体の温度を測定している。しかも、複数の温度検出素子が単に絶縁基体に埋設されているのではなく、複数の温度検出素子が、半導体素子の中心と上下に重なり合う部分に位置する第1の温度検出素子と、半導体素子の外周縁と上下に重なり合う部分に位置する少なくとも1つの第2の温度検出素子とを有している。
【0012】
そのため、第1の接合部材における熱伝達の低下が半導体素子の直下まで進行することによって絶縁基体の温度勾配に変化が生じた場合および第2の接合部材における熱伝達の低下が半導体素子の直下まで進行することによって絶縁基体の温度勾配に変化が生じた場合のいずれにおいても、複数の温度検出素子によってこれらの温度勾配の変化を即座に検出することが可能となる。
【0013】
このように、第1の接合部材における熱伝達の低下による絶縁基体の温度勾配の変化および第2の接合部材における熱伝達の低下による絶縁基体の温度勾配の変化を別々の温度検出素子によって測定するのではなく、同じ温度検出素子によって測定できる。従って、半導体装置を小型化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の半導体装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す半導体装置の平面透視図である。
【図3】図2に示す半導体装置におけるX−X断面での断面図である。
【図4A】図3に示す半導体装置における平常時の温度検出素子の位置と温度との関係を示す概念図である。
【図4B】図3に示す半導体装置における第1の接合部材の熱伝達が低下した場合の温度検出素子の位置と温度との関係を示す概念図である。
【図4C】図3に示す半導体装置における第2の接合部材の熱伝達が低下した場合の温度検出素子の位置と温度との関係を示す概念図である。
【図5】図2に示す半導体装置の変形例を示す平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態の半導体装置について、図面を用いて詳細に説明する。但し
、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、下記の実施形態の半導体装置は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0016】
図1〜4に示すように、本実施形態の半導体装置1は、上面および下面を有する基体3と、基体3の上面に配設された半導体素子7と、基体3を介して半導体素子7と上下に重なり合うように、基体3の下面に上面が第2の接合性部材9で接合された放熱基板11と、基体3に埋設された、基体3の温度を検出する複数の温度検出素子13とを備えている。基体3は、上面および下面を有する絶縁基体4aと、絶縁基体4aの上面に下面が第1の接合部材で接合された金属基体4bを備えている。複数の温度検出素子13は絶縁基体4aに埋設され、絶縁基体4aの温度を検出する。
【0017】
そして、複数の温度検出素子13が、半導体素子7の中心と上下に重なり合う部分に位置する第1の温度検出素子13aと、半導体素子7の外周縁と上下に重なり合う部分に位置する少なくとも1つの第2の温度検出素子13bとを有している。
【0018】
本実施形態の半導体装置1においては、温度検出素子13を半導体素子7の表面に固着することによって半導体素子7の温度を測定するのではなく、絶縁基体4aに埋設することによって絶縁基体4aの温度を測定している。しかも、複数の温度検出素子13が単に絶縁基体4aに埋設されているのではなく、複数の温度検出素子13が、半導体素子7の中心と上下に重なり合う部分に位置する第1の温度検出素子13aと、半導体素子7の外周縁と上下に重なり合う部分に位置する少なくとも1つの第2の温度検出素子13bとを有している。
【0019】
そのため、例えば、第1の接合部材5の側面に生じた、第1の接合部材5または絶縁基体4aの表面近傍において生じる熱伝達の低下をもたらすクラックや剥離による空隙が半導体素子7の直下まで進行することによって基体3の温度勾配に変化が生じた場合に、第1の温度検出素子13aおよび第2の温度検出素子13bによってこれらの温度勾配の変化を即座に検出することが可能となる。
【0020】
また、例えば、第2の接合性部材9の側面に生じた、第2の接合性部材9における熱伝達の低下をもたらす剥離などが半導体素子7の直下まで進行することによって基体3の温度勾配に変化が生じた場合にも、第1の温度検出素子13aおよび第2の温度検出素子13bによってこれらの温度勾配の変化を即座に検出することが可能となる。
【0021】
このように、第1の接合部材5および第2の接合性部材9における熱伝達の低下が半導体素子7の直下まで進行することによって絶縁基体4aの温度勾配に変化が生じた場合のいずれにおいても、複数の温度検出素子13によってこれらの温度勾配の変化を即座に検出することが可能となる。
【0022】
すなわち、第1の接合部材5における熱伝達の低下による絶縁基体4aの温度勾配の変化および第2の接合性部材9における熱伝達の低下による絶縁基体4aの温度勾配の変化を別々の温度検出素子13によって測定するのではなく、同じ温度検出素子13によって測定できる。従って、半導体装置1を小型化させることが可能となる。
【0023】
本実施形態の半導体装置1は、上面および下面を有する基体3を備えている。基体3を構成する金属基体4bは、上面に半導体素子7が載置される載置領域3aを有している。本実施形態において載置領域3aとは、基体3を平面視した場合に半導体素子7と重なり
合う領域を意味している。
【0024】
基体3は、上面および下面を有する絶縁基体4aと、絶縁基体4aの上面に下面が第1の接合部材で接合された金属基体4bを備えている。基体3の下面に接合された放熱基板11が後述のように金属材料からなる場合、絶縁性基体4aを構成する材料の熱膨張係数と放熱基板11を構成する熱膨張係数との差によって基体3に大きな反りが生じる可能性がある。しかしながら、基体3として、放熱基板11と同様に金属材料からなる金属基体4bが絶縁基体4aの上面に配設された構成とすることによって、絶縁基体4aが金属基体4bおよび放熱基板11によって上下に挟まれた構成となる。そのため、基体3に大きな反りが生じる可能性を小さくできる。
【0025】
絶縁基体4aとしては、高い絶縁性を有する部材を用いることができる。絶縁性を有する部材としては、例えば、熱伝導率が20〜150[W/m・K]のセラミックス材料を用いることができ、具体的には、各種のガラスセラミック、Al,AlN,SiおよびSiCのようなセラミックス材料を用いることができる。金属基体4bとしては、例えば、熱伝導率が50〜500[W/m・K]の金属材料を用いることができ、具体的には、W,Mo,Ni,Al,AgまたはCuのような金属材料、これらの金属からなる合金または複合材料を用いることができる。
【0026】
このようなセラミック材料を含有する原料粉末、有機溶剤ならびにバインダを混ぜることによって混合部材が作製される。混合部材をシート状に成形することによってグリーンシートが作製される。これらのグリーンシートを複数積層することによって生積層体が作製される。そして、この生積層体を焼成することによって絶縁基体4aが作製される。
【0027】
基体3の形状としては、例えば、略四角板形状とすることができる。基体3が平板形状である場合、その大きさを、例えば一辺5mm以上50mm以下に設定することができる。また、基体3の厚みとしては、例えば、0.2mm以上2mm以下に設定することができる。
【0028】
金属基体4bの下面は、絶縁基体4aの上面に第1の接合部材5で接合されている。半導体装置1の使用時において半導体素子7から放熱基板11への熱伝導性が低下した場合、半導体素子7に過度の熱が溜まることによって、半導体素子7の耐久性が低下する可能性がある。そのため、金属基体4bを絶縁基体4aに接合する第1の接合部材5としては、接合性が良好であると同時に、熱伝導性が良好であることが求められる。第1の接合部材5としては、Agロウのような単一の金属材料からなるロウ材、Ag−Cuロウ、Ag−SnロウまたはAu−Snロウのような合金材料からなるロウ材、或いは、半田を用いることができる。
【0029】
本実施形態の半導体装置1は、基体3の上面に配設された半導体素子7を備えている。本実施形態における半導体素子7は矩形状であって、平面視した場合の形状が四角形である。半導体素子7としては、例えば、IGBT、MOS−FETのようなパワー半導体素子7が用いられる。半導体素子7は半導体装置1の使用時において発熱する。特に、半導体素子7として上記のようなパワー半導体素子7を用いている場合、多くの熱が生じる。半導体素子7で生じた熱は基体3を介して放熱基板11へと伝わり、放熱基板11において外部に放熱される。そのため、半導体装置1には、半導体素子7から放熱基板11への熱伝導が良好であることが求められる。
【0030】
本実施形態の半導体装置1は、基体3(絶縁基体4a)の下面に上面が第2の接合性部材9で接合された放熱基板11を備えている。なお、本実施形態の半導体装置1においては、放熱基板11の上面が基体3の下面全体に第2の接合性部材9で接合されているが、
特にこれに限られるものではない。放熱基板11は、基体3を介して半導体素子7と上下に重なり合うように位置していることが肝要であり、必ずしも基体3の下面全体に接合される必要はない。
【0031】
本実施形態における放熱基板11は、基体3の下面に接合される平板の形状の部位11aと、この部位11aの下面側に位置する複数のフィン11bとを有している。平板の形状の部位11aと複数のフィン11bとは、別々に作製した後で、平板の形状の部位11aの下面にフィン11bを接合してもよい。また、平板の形状の部位11aと複数のフィン11bとは、一体的に形成してもよい。放熱基板11としては、例えば、W,Mo,Ni,Al,AgまたはCuのような金属材料、これらの金属からなる合金または複合材料を用いることができる。無論、放熱基板11として上記の構成に限定されることはなく、例えば、平板の形状の部位11aのみからなる構成であっても良い。
【0032】
平板の形状の部位11aの厚みとしては、例えば、0.2mm以上2mm以下に設定できる。また、複数のフィン11bの、基体3の上面に垂直な方向の長さとしては、例えば、0.5mm〜20mmに設定できる。このような放熱基板11を備えていることによって、半導体素子7から生じた熱を、放熱基板11を介して外部に効率良く放熱することができる。
【0033】
放熱基板11の上面は、基体3の下面に第2の接合性部材9で接合されている。半導体装置1の使用時において半導体素子7から放熱基板11への熱伝導性が低下した場合、上述の通り、半導体素子7の耐久性が低下する可能性がある。そのため、放熱基板11を基体3に接合する第2の接合性部材9としては、接合性が良好であると同時に、熱伝導性が良好であることが求められる。第2の接合性部材9としては、第1の接合部材5と同様に、Agロウのような単一の金属材料からなるロウ材、Ag−Cuロウ、Ag−SnロウまたはAu−Snロウのような合金材料からなるロウ材、或いは、半田を用いることができる。
【0034】
本実施形態の半導体装置1は、第1の温度検出素子13aおよび少なくとも1つの第2の温度検出素子13bを含む複数の温度検出素子13を備えている。複数の温度検出素子13は、基体3の温度を検出するための部材であり、それぞれ基体3に埋設されている。温度検出素子13としては、例えば、サーミスタ、熱電対または温度特性を備えた抵抗体などを用いることができる。
【0035】
絶縁基体4aに孔部を形成して、この孔部内に温度検出素子13を配設することによって、温度検出素子13を絶縁基体4aに埋設させることができる。また、上述のように、絶縁基体4aがグリーンシートを複数積層するとともに焼成することによって形成される場合、下記のようにして温度検出素子13を絶縁基体4aに埋設させることもできる。
【0036】
温度検出素子13として、複数の金属ペーストを焼成することによって形成される熱電対や抵抗体を用いる場合、グリーンシートを積層する際に、温度検出素子13となる金属ペーストを複数のグリーンシートの間に挟めばよい。具体的には、例えば、タングステンやモリブデンからなる金属ペーストをグリーンシートに印刷すればよい。金属ペーストが間に挟まれたグリーンシートを焼成することによって、温度検出素子13を絶縁基体4aに埋設することができる。
【0037】
第1の温度検出素子13aは、半導体素子7の中心と上下に重なり合う部分に位置している。なお、半導体素子7の中心とは、半導体素子7を平面視した場合における面の中心を意味しており、下記のようにして示すことができる。例えば、平面視した場合の半導体素子7の形状が四角形である場合、対角線の交点が半導体素子7の中心である。また、平
面視した場合の半導体素子7の形状が円形である場合、円心が半導体素子7の中心である。
【0038】
第2の温度検出素子13bは、半導体素子7の外周縁と上下に重なり合う部分に位置している。なお、半導体素子7の外周縁と上下に重なり合うとは、具体的には、下記のようにして示すことができる。図3に示すように、半導体素子7の外周縁を下方に引き伸ばした場合に、この引き伸ばした仮想線上に第2の温度検出素子13bの少なくとも一部が位置していることを意味している。なお、本実施形態の半導体装置1は2つの温度検出素子13を有しており、左右それぞれの仮想線上に第2の温度検出素子13bが位置している。
【0039】
第1の温度検出素子13aおよび第2の温度検出素子13bは、それぞれ絶縁基体4aに埋設されているが、このとき、第1の温度検出素子13aおよび第2の温度検出素子13bが、それぞれ絶縁基体4aの厚み方向の中央に位置していることが好ましい。
【0040】
例えば、温度検出素子13が第1の接合部材5における熱伝達の低下に起因する絶縁基体4aの温度勾配の変化を検出するためのものである場合、絶縁基体4aと第1の接合部材5との接合面に近い箇所に位置していることが好ましい。また、温度検出素子13が第2の接合性部材9における熱伝達の低下に起因する絶縁基体4aの温度勾配の変化を検出するためのものである場合、絶縁基体4aと第2の接合性部材9との接合面に近い箇所に位置していることが好ましい。
【0041】
しかしながら、本実施形態における温度検出素子13は、第1の接合部材5および第2の接合性部材9における熱伝達の低下に起因する絶縁基体4aの温度勾配の変化を検出している。そのため、第1の接合部材5および第2の接合性部材9における熱伝達の低下に起因する絶縁基体4aの温度勾配の変化をそれぞれ良好に検出するために、第1の温度検出素子13aおよび第2の温度検出素子13bが、それぞれ絶縁基体4aの厚み方向の中央に位置していることが好ましい。
【0042】
本実施形態の半導体装置1は、上記の第1の温度検出素子13aおよび第2の温度検出素子13bを有していることから、第1の接合部材5および第2の接合性部材9における熱伝達の低下が半導体素子7の直下まで進行することによって絶縁基体4aの温度勾配に変化が生じた場合のいずれにおいても、複数の温度検出素子13によってこれらの温度勾配の変化を即座に検出することが可能となる。
【0043】
具体的には、第1の接合部材5によって金属基体4bが良好に絶縁基体4aに接合されるとともに、第2の接合性部材9によって放熱基板11が良好に絶縁基体4aに接合されている場合、平常時として、図4Aに示すような温度分布を示す。
【0044】
第1の接合部材5が金属基体4bから剥離する場合、このような剥離は、第1の接合部材5と金属基体4bとの接合面の周縁部分からこの接合面の中心部分へと進行する。また、第1の接合部材5が絶縁基体4aから剥離する場合、このような剥離は、第1の接合部材5と絶縁基体4aとの接合面の周縁部分からこの接合面の中心部分へと進行する。また、第1の接合部材5の側面にクラックが生じた場合、このクラックは第1の接合部材5の側面から中心へと第1の接合部材5の中を伝播する形態にて進行する。
【0045】
金属基体4bの下面が絶縁基体4aの上面に接合されていることから、これらの剥離またはクラックが半導体素子7と上下に重なり合う位置よりも外側に留まっている場合、半導体素子7から基体3への熱伝導性が受ける影響は小さい。そのため、図4Aに示すように、平常時とほぼ同様の良好な熱伝導性を示す。
【0046】
しかしながら、これらの剥離またはクラックが半導体素子7と上下に重なり合う位置に達した場合、半導体素子7の周縁部分の下面から絶縁基体4aへ伝わる熱の量が少なくなる。そのため、図4Bに示すように、第2の温度検出素子13bの検出する温度が低下する。一方、この半導体素子7の周縁部分の下面から絶縁基体4aへの熱伝導性の低下に伴って、半導体素子7の周縁部分の下面から絶縁基体4aへ伝わる熱の量が多くなる。そのため、図4Bに示すように、第1の温度検出素子13aの検出する温度が上昇する。
【0047】
また、第2の接合性部材9が放熱基板11から剥離する場合、このような剥離は、第2の接合性部材9と放熱基板11との接合面の周縁部分からこの接合面の中心部分へと進行する。また、第2の接合性部材9が基体3から剥離する場合、このような剥離は、第2の接合性部材9と基体3との接合面の周縁部分からこの接合面の中心部分へと進行する。また、第2の接合性部材9の側面にクラックが生じた場合、このクラックは第2の接合性部材9の側面から中心へと進行する。
【0048】
金属基体4bの下面が絶縁基体4aの上面に接合されていることから、第1の接合部材5の場合と同様に、これらの剥離またはクラックが半導体素子7と上下に重なり合う位置よりも外側に留まっている場合、基体3から放熱基板11への熱伝導性が受ける影響は小さい。そのため、図4Aに示すように、平常時とほぼ同様の良好な熱伝導性を示す。
【0049】
しかしながら、これらの剥離またはクラックが半導体素子7と上下に重なり合う位置に達した場合、基体3の下面における半導体素子7の外周縁と上下に重なり合う部分から放熱基板11へ伝わる熱の量が少なくなる。そのため、図4Cに示すように、第2の温度検出素子13bの検出する温度が上昇する。また、この半導体素子7の周縁部分の下面から基体3への熱伝導性の低下に伴って、基体3全体の温度が上昇することから、図4Cに示すように、第1の温度検出素子13aの検出する温度も上昇する。
【0050】
このように、第1の接合部材5における熱伝達の低下および第2の接合性部材9における熱伝達の低下を別々の温度検出素子13を用いて検出するのではなく、本実施形態の半導体装置1においては、同じ温度検出素子13によって測定できる。従って、第1の接合部材5または第2の接合性部材9における熱伝達の低下に起因する絶縁基体4aにおける温度勾配の変化を即座に検出しつつも、半導体装置1を小型化させることが可能となる。
【0051】
上述のように、本実施形態の半導体装置1においては、半導体素子7が矩形状である。また、第2の温度検出素子13bを2つ以上備え、図2に示すように、半導体素子7の外周縁をなす四辺における対向する二辺のそれぞれにおいて上下に重なり合う位置に第2の温度検出素子13bが位置している。
【0052】
このような場合、図3に示すように、左右それぞれに位置する半導体素子7の外周縁を下方に引き伸ばした仮想線上にそれぞれ第2の温度検出素子13bを位置させることができる。そのため、第1の接合部材5および第2の接合性部材9における熱伝達の低下がそれぞれの右側端部または左側端部のいずれから生じて半導体素子7の直下まで進行した場合であっても、2つの第2の温度検出素子13bによって温度勾配の変化を即座に検出することが可能となる。
【0053】
具体的には、第1の接合部材5の金属基体4bからの剥離、第1の接合部材5の絶縁基体4aからの剥離、または第1の接合部材5の側面におけるクラック、或いは、第2の接合性部材9の放熱基板11からの剥離、第2の接合性部材9の基体3からの剥離、または第2の接合性部材9の側面におけるクラックが半導体素子7の右側方および左側方のいずれから起きた場合であっても、2つの第2の温度検出素子13bによって精度良く検出す
ることができる。
【0054】
さらには、図5に示すように、半導体装置1が第2の温度検出素子13bを4つ以上備え、半導体素子7の外周縁をなす四辺のそれぞれにおいて上下に重なり合う位置に第2の温度検出素子13bが位置していることが好ましい。
【0055】
このような場合、図5に示すように、半導体素子7の外周縁を成す上下左右に位置する四辺のそれぞれと重なり合う位置に第2の温度検出素子13bが位置していることから、第1の接合部材5および第2の接合性部材9における熱伝達の低下がそれぞれの平面視した場合の上下左右のいずれの端部から生じて半導体素子7の直下まで進行した場合であっても、4つの第2の温度検出素子13bによって温度勾配の変化を精度良く検出することが可能となる。
【0056】
上述の通り、本実施形態の半導体装置1について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0057】
1・・・半導体装置
3・・・基体
3a・・・載置領域
4a・・・絶縁基体
4b・・・金属基体
5・・・第1の接合部材
7・・・半導体素子
9・・・第2の接合部材
11・・・放熱基板
11a・・・平板の形状の部位
11b・・・フィン
13・・・温度検出素子
13a・・・第1の温度検出素子
13b・・・第2の温度検出素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する絶縁基体と、
該絶縁基体の上面に下面が第1の接合部材で接合された金属基体と、
該金属基体の上面に配設された半導体素子と、
前記絶縁基体および前記金属基体を介して前記半導体素子と上下に重なり合うように、前記絶縁基体の下面に上面が第2の接合部材で接合された放熱基板と、
前記絶縁基体に埋設された、前記絶縁基体の温度を検出する複数の温度検出素子とを備えた半導体装置であって、
前記複数の温度検出素子は、前記半導体素子の中心と上下に重なり合う部分に位置する第1の温度検出素子と、前記半導体素子の外周縁と上下に重なり合う部分に位置する少なくとも1つの第2の温度検出素子とを有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子が矩形状であって、
前記第2の温度検出素子を2つ以上備え、
前記半導体素子の外周縁をなす四辺における対向する二辺のそれぞれにおいて上下に重なり合う位置に前記第2の温度検出素子が位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の温度検出素子を4つ以上備え、
前記半導体素子の外周縁をなす四辺のそれぞれにおいて上下に重なり合う位置に前記第2の温度検出素子が位置していることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の温度検出素子が、それぞれ前記絶縁基体の厚み方向の中央に位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30628(P2013−30628A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165822(P2011−165822)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】