説明

半導体装置

【課題】半導体チップに形成するはんだバンプの形成方法を限定することなく、はんだバンプによる複数の接続部の面積をいずれも同程度に保ったままで、接続信頼性が高い実装を可能とする半導体装置を得られるようにする。
【解決手段】半導体装置は、少なくとも1つの素子が形成された素子形成面と該素子形成面に形成された複数の電極パッド2とを有する半導体チップ1と、主面が半導体チップ1の素子形成面と対向し、且つそれぞれが主面の各電極パッド2と対向する位置に形成された複数の接続パッド15を有する配線基板10と、各電極パッド2と各接続パッド15との間にそれぞれ設けられ、それらを電気的に接続する複数のはんだバンプ4とを備えている。各はんだバンプ4における、電極パッド2側の組成と接続パッド15側の組成とは同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特にはんだバンプを用いたフリップチップ実装により形成される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は、高機能化及び小型化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできている。このような電子機器に使用される半導体装置(半導体パッケージ)は、従来にもまして小型化且つ多ピン化が進んできている。
【0003】
従来のようなリードフレームを用いる形態のパッケージでは、小型化に限界がきている。そこで、半導体装置の高密度集積化と高密度実装化とを可能とするために、ワイヤボンディング実装、TAB(Tape Automated Bonding)実装又はフリップチップ実装によって半導体装置が構成されるようになってきている。これらの実装技術のなかでも、フリップチップ実装技術は、半導体装置の大きさを抑えながら半導体装置の最も高密度な実装を可能とする技術として、コンピュータ機器又は高機能モバイル機器等に使用される半導体装置に多く用いられている。
【0004】
フリップチップ実装は、面実装であることから小さい面積で多数の電気的接続を行うことができるものの、半導体装置の小型化且つ多ピン化に伴って接続パッドの狭ピッチ化を招く。接続パッドはそのピッチが狭ピッチ化されるにつれて、はんだバンプの高さも低くなる傾向にある。今後は、このように狭ピッチ化(特に、接続パッドのピッチが200μm以下となる場合)の接続形態を持つ半導体装置が主流になると考えられる。
【0005】
フリップチップ実装において、半導体チップに設けられた電極パッドにはんだバンプを形成するには、電極パッドを構成する銅若しくはアルミニウム又はこれら合金と、はんだバンプを構成するスズとの金属間化合物の形成を抑制するため、半導体チップの電極パッドとはんだバンプとの間に、バリア層としてのアンダーバンプメタル(UBM)層を形成する手法が一般的である。
【0006】
また、半導体チップを実装する配線基板に設けられる接続パッドにおいても、はんだを構成するスズと接続パッドを構成する銅との合金層の形成を抑制するために、ニッケル(Ni)若しくはチタン(Ti)等の金属又はこれらの金属を含む合金からなるバリアメタル層を形成し、接続の信頼性を向上する方法が採用されている。なお、一般には、製造コスト及び加工性の観点から、主にバリアメタル層には、無電解ニッケルめっき法により形成された無電解ニッケル膜が用いられている。
【0007】
半導体チップと配線基板とではそれぞれの熱膨張率が大きく異なる。このため、半導体チップ及び配線基板がフリップチップ実装工程等において大きな温度変化を受けると、半導体チップと配線基板との接続を担うはんだバンプによる接続部に応力が集中して、該接続部又はその近傍にクラックが発生してしまい、接続不良が起きるおそれがある。
【0008】
そこで、接続信頼性を確保するために、フリップチップ実装を行った後に、半導体チップと配線基板との間の隙間にアンダーフィルと呼ばれる絶縁性樹脂材を充填してこれを硬化させることにより、はんだバンプによる接続部を封止する技術も実施されている。ところが、前述したように、半導体装置の小型化且つ多ピン化により、はんだバンプがますます微細化することから、はんだバンプによる接続部への応力負荷は多大となる。このため、アンダーフィル樹脂材による接続部の封止による保護だけでは、クラックの発生は防げなくなることが懸念される。
【0009】
この問題に対して種々の対策が講じられており、例えば特許文献1に記載されているように、半導体基板に外部接続用電極をなすバンプが接合された半導体装置において、厚さの増大を伴わない簡単な構造を備えながら、はんだバンプのうち特に応力が集中する半導体チップの四隅に位置するはんだバンプの体積を大きくすることにより、その位置のはんだバンプの断面積を大きくする方法が開示されている。
【0010】
このように、特許文献1に記載された半導体装置は、半導体チップを配線基板に実装した状態での接続寿命を向上すべく、半導体チップに形成されるはんだバンプのうち、接続バンプへの応力が高くなる半導体チップの四隅にのみ電極パッドの開口径を大きくしている。これにより、半導体チップの四隅には他の部分の電極パッドよりも大きいはんだバンプが形成され、この径が大きいはんだバンプによる接続部によって応力を緩和又は吸収する構成を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-242782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の半導体装置は、半導体チップの電極パッド又は配線基板の接続パッドから受ける内部応力の差によってはんだバンプに印加される応力が、電極パッドが大型化されることにより大きくなることによる影響、又は負荷応力の不釣合いによって発生が懸念されるはんだバンプ内の破壊の対策に関する記載はなされていない。
【0013】
また、前記従来の半導体装置は、半導体チップに形成されるはんだバンプの体積が半導体チップの部位によって異なる。このため、はんだバンプを形成する手法であるペースト印刷法又はペーストディスペンス法では、はんだバンプにボイドが発生し、抵抗の上昇又は接続不良が発生する要因となる。また、はんだバンプの形成法が限られるため、狭ピッチによる接続形態をとることが困難である。
【0014】
ところで、はんだバンプの形成方法としては、前述の通り、作製上の容易さから電解はんだめっきを用いる方法が主流である。
【0015】
さらに、他の方法として、露光、現像及び電解めっき法を用いないUBM及びはんだバンプを形成する方法として、半導体チップ上の電極パッドに選択的に形成される無電解ニッケルめっき法を用いてUBMを形成した後、はんだボールを所望の位置に形成してリフローすることにより、はんだバンプを形成するボール搭載法、又はマスクを使用してはんだペーストを所望の位置に印刷することにより、はんだバンプを形成するはんだペースト印刷法等が検討されている。
【0016】
しかしながら、はんだペースト印刷法は、はんだバンプのピッチが200μm以下となると、はんだ印刷時に隣り合うバンプ同士で短絡が発生し、歩留まりを極端に低下させる。従って、狭ピッチのはんだバンプの形成には、はんだボール搭載法が望ましい。
【0017】
しかし、はんだボール搭載法は、無電解めっき法を用いてUBMが形成された電極パッドの上に、はんだバンプを形成する方法として適しているものの、同一寸法のはんだボールを一括で搭載することから、同一面内に形成するはんだバンプの寸法及び組成を変更することができない。従って、前述の特許文献1のように、半導体チップの部位によりはんだバンプの形状(体積)を変更して、接合部に印加される応力を緩和する構造は採ることができない。このため、はんだボール搭載法では、結果的に、実装後の接続信頼性が劣るという問題がある。
【0018】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、半導体チップに形成するはんだバンプの形成方法を限定することなく、また、はんだバンプによる複数の接続部の面積をいずれも同程度に保ったままで、接続信頼性が高い実装を可能とする半導体装置を得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体装置を、はんだバンプにおける半導体チップ側の組成と配線基板側の組成とを同一とする構成とする。
【0020】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、少なくとも1つの素子が形成された素子形成面と該素子形成面に形成された複数の電極パッドとを有する半導体チップと、主面が半導体チップにおける素子形成面と対向し、且つそれぞれが主面の各電極パッドと対向する位置に形成された複数の接続パッドを有する配線基板と、各電極パッドと各接続パッドとの間にそれぞれ設けられ、各電極パッドと各接続パッドとを電気的に接続する複数のはんだバンプとを備え、各はんだバンプにおける電極パッド側の組成と接続パッド側の組成とは同一であることを特徴とする。
【0021】
本発明の半導体装置によると、半導体チップの各電極パッドと配線基板の各接続パッドとを電気的に接続する複数のはんだバンプは、それぞれ電極パッド側の組成と接続パッド側の組成とは同一である。このため、はんだバンプにおける半導体チップ及び配線基板から受ける熱ストレスによる応力が均等となるので、はんだバンプに発生するクラックを生じ難くすることができる。
【0022】
本発明の半導体装置において、はんだバンプにおける電極パッド側部分と接続パッド側部分とは、共に非晶質であってよい。
【0023】
この場合に、はんだバンプにおける電極パッドとの間及び接続パッドとの間には、それぞれ無電解めっき法により形成されたニッケル化合物からなるバリア層が形成されていることが好ましい。
【0024】
また、本発明の半導体装置において、はんだバンプにおける電極パッド側部分と接続パッド側部分とは、共に結晶質であってもよい。
【0025】
この場合に、はんだバンプにおける電極パッドとの間及び接続パッドとの間には、それぞれ電解めっき法により形成されたニッケル化合物からなるバリア層が形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明の半導体装置は、上記のいずれかのバリア層を含む場合に、バリア層は、半導体チップにおける隅部を除く領域に設けられた、電極パッドとはんだバンプとの間及び接続パッドとはんだバンプとの間に形成されていることが好ましい。
【0027】
本発明の半導体装置において、複数のはんだバンプは、その体積が互いに等しいことが好ましい。
【0028】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、少なくとも1つの素子が形成された半導体チップの素子形成面に、複数の電極パッドを選択的に形成する工程(a)と、工程(a)よりも後に、無電解めっき法により、複数の電極パッドの少なくとも一部の上に、金属を主成分とする第1のバリア層を形成する工程(b)と、配線基板の主面に、半導体チップにおける各電極パッドと対向する位置に接続パッドをそれぞれ形成する工程(c)と、工程(c)よりも後に、無電解めっき法により、配線基板における複数の接続パッドの少なくとも一部であって第1のバリア層と対向する接続パッドの上に、第1のバリア層を構成する金属を主成分とする第2のバリア層を形成する工程(d)と、半導体チップの各電極パッドと配線基板の各接続パッドとをそれぞれはんだバンプを介在させて対向させ、各はんだバンプにより半導体チップと配線基板とを固着することにより、半導体チップを配線基板の主面に実装する工程(e)とを備えていることを特徴とする。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法によると、無電解めっき法により、半導体チップにおける複数の電極パッドの少なくとも一部の上に、金属を主成分とする第1のバリア層を形成し、且つ無電解めっき法により、配線基板における複数の接続パッドの少なくとも一部であって、第1のバリア層と対向する接続パッドの上に、第1のバリア層を構成する金属を主成分とする第2のバリア層を形成する。これにより、第1のバリア層及び第2のバリア層と接するはんだバンプにおける電極パッド側の組成と接続パッド側の組成とが同一となる。このため、これらのはんだバンプにおける半導体チップ及び配線基板から受ける熱ストレスによる応力が均等となるので、はんだバンプに発生するクラックを生じ難くすることができる。
【0030】
本発明の半導体装置の製造方法において、第1のバリア層及び第2のバリア層を構成する金属にはニッケルを主成分とする金属を用いることができる。
【0031】
半導体チップに設ける、無電解めっき法によるニッケルを主成分とする第1のバリア層及び配線基板に設ける、バリアメタル層として用いる無電解めっき法によるニッケルを主成分とする第2のバリア層は、両バリア層が同一の組成であれば特に組成及び方法の制限はない。但し、めっきの容易さ及びコストの観点から、次亜リン酸ナトリウムを還元剤に用いる無電解ニッケル−リン(Ni−P)めっき、又はジメチルアミノボランを還元剤に用いる無電解ニッケル−ボロン(Ni−B)めっきが良く、なかでもめっき膜中のリン含有量が6wt%〜10wt%程度の中リンタイプと呼ばれる無電解ニッケル−リンめっきが、めっきの成長速度及びめっきの硬さの観点から好ましい。
【0032】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(b)において、第1のバリア層は、複数の電極パッドのうち半導体チップの隅部を除く電極パッドに形成することが好ましい。
【0033】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、工程(d)において、第2のバリア層は、複数の接続パッドのうち半導体チップの隅部に位置する電極パッドと対向する接続パッドを除いて形成することが好ましい。
【0034】
このようにすると、半導体チップと配線基板とを接続するはんだバンプのうち、接続応力が最も大きく掛かる半導体チップの隅部に形成されたはんだバンプは、電極パッドの上又は接続パッドの上にバリア層を形成しない状態で接続(接合)される。これにより、無電解めっき法により形成したバリア層が持つ内部応力による引っ張り方向の応力負荷が掛かることがない。このため、接続信頼性が高い接合を得ることができる。また、例えば配線基板の接続パッドに用いられる銅とバンプはんだに含まれるスズとが、ニッケル−スズ合金よりも強固な合金を形成する。このため、電極パッド又は接続パッドとの接合強度が向上するので、負荷として半導体チップの隅部に集中的に掛かる応力を効果的に緩和できる。従って、温度サイクル試験等によるクラックの発生を抑制することができる。
【0035】
本発明の半導体装置の製造方法において、各はんだバンプは、その体積が互いに等しいことが好ましい。
【0036】
このようにすると、はんだバンプの形成方法が限定されることがない。
【0037】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(e)よりも後に、半導体チップと配線基板との間に絶縁性樹脂材を充填し、充填された絶縁性樹脂材を硬化させる工程(f)をさらに備えていることが好ましい。
【0038】
このようにすると、半導体チップを配線基板により強固に実装することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、半導体チップに形成するはんだバンプの形成方法を限定することなく、また、はんだバンプによる複数の接続部の面積をいずれも同程度に保ったままで、接続信頼性が高い実装が可能な半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す部分断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す部分断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す部分断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、実装される前の半導体チップを示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、半導体チップ実装用の配線基板のバリアメタル層を形成する前の状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、配線基板のバリアメタル層を選択的に形成した後の状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、半導体チップのはんだバンプにフラックスを塗布した状態の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、半導体チップを配線基板に実装する直前の状態を示す部分断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、半導体チップを配線基板に実装した直後の状態を示す部分断面図である。
【図10】本発明の比較例に係る半導体装置を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に示す実施形態及びその変形例は、本発明に係る最良の実施形態ではあるものの、本発明は、以下の実施形態等には限定されない。
【0042】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1は本発明の第1の実施形態に係るフリップチップ実装型の半導体装置の断面構成を示している。
【0044】
図1に示すように、主面に半導体素子(図示せず)が形成された半導体チップ1には、その主面に複数の電極パッド2が形成されている。各電極パッド2の上には、バリア層としてのアンダーバンプメタル(UBM)層3を介在させたはんだバンプ4がそれぞれ形成されている。半導体チップ1の主面における各電極パッド2を除く領域には、ポリイミド樹脂からなる絶縁保護膜5が形成されている。
【0045】
ここで、電極パッド2は、例えば厚さが5μmのアルミニウム(Al)からなり、径が例えば100μmの平面円形状を持つ。UBM層3は、例えば濃度が5wt%のリン(P)を含み、厚さが5μmの無電解ニッケル−リンめっきからなる。また、UBM層3の表面には、厚さが0.1μmの金めっき層(図示せず)が形成されている。はんだバンプ4は、例えば径が100μmで、組成が96.5wt%のスズ(Sn)、3.0wt%の銀(Ag)及び0.5wt%の銅(Cu)であるはんだボールを各UBM層3の上に形成し、その後、窒素(N)ガス雰囲気でリフロー処理を行うことにより形成されている。
【0046】
UBM層3の形成方法の一例を挙げる。まず、半導体チップ1を固片化する前のウェーハ状態のままで、スズの拡散防止効果を持つニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはニオブ(Nb)等の金属又はこれらの合金をスパッタ法又は真空蒸着法により、ウェーハの全面にシード層として形成する。その後、形成されたシード層の上にフォトレジスト層をスピンコート法等により成膜し、フォトレジスト層におけるはんだバンプ形成領域を露光及び現像によって開口する。続いて、開口されたシード層の上に無電解ニッケルめっき法により所望の厚さとなるまでUBM層3を形成する。その後、フォトレジスト層を除去する。
【0047】
半導体チップ1が実装される配線基板(多層配線基板)10には、配線の高密度化、軽量化、薄型化、さらには低コスト化の観点から、一般にシーケンシャルビルドアップ製造工法と呼ばれる工法により作製されたビルドアップ基板が用いられる。ビルドアップ基板は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板(コア基板)11の上に回路パターン12と絶縁層とを交互に形成していき、表面には半導体チップとの電気的な接続を行うための複数の接続パッド15が形成されている。絶縁層には、熱硬化性を有する絶縁性樹脂が用いられ、回路パターン12及び接続パッド15には、電気伝導性、加工性及び製造コストの観点から主に電解めっき法による銅(Cu)が用いられる。
【0048】
具体的には、配線基板10は、コア基板11の上に形成された層間絶縁樹脂層14に回路パターン12と接続されるビア13が形成され、該ビア13の上には接続パッド15がそれぞれ形成されている。ここで、接続パッド15は径が例えば100μmの平面円形状である。接続パッド15の上には、バリアメタル層17がそれぞれ形成されている。バリアメタル層17は、半導体チップ1のUBM層3と同様に、例えばリン(P)の濃度が5wt%で、厚さが5μmの無電解ニッケル−リンめっきにより構成されている。また、バリアメタル層17の表面には、厚さが0.1μmの金めっき層(図示せず)が形成されている。層間絶縁樹脂層14における各接続パッド15を除く領域には、ソルダレジスト層16が形成されている。
【0049】
また、半導体チップ1と配線基板10との間には、アンダーフィル樹脂6が充填されており、充填されたアンダーフィル樹脂6によって半導体チップ1が配線基板10に固着されている。
【0050】
第1の実施形態においては、半導体チップ1の電極パッド2の上に形成されたUBM層3と、配線基板10の接続パッド15の上に形成されたバリアメタル層17とが、いずれもリンの濃度が5wt%で、厚さが5μmの無電解ニッケル−リンめっきにより形成されている。さらに、UBM層3及びバリアメタル層17の表面には、いずれも厚さが0.1μmの金めっき層が形成されている。
【0051】
これにより、各はんだバンプ4における電極パッド2側の組成と接続パッド15側の組成とが同一となる。さらに、無電解めっき法により、UBM層3及びバリアメタル層17はいずれも非晶質となるため、はんだバンプ4における半導体チップ1及び配線基板10から受ける熱ストレスによる応力が均等となる。これにより、はんだバンプ4に発生するクラックを抑制することができる。
【0052】
このように、本発明においては、はんだバンプ4における電極パッド2側の組成と接続パッド15側の組成とが同一であるとは、材料組成及び結晶構造だけでなく、該はんだバンプ4と接合する部材(UBM層3及びバリアメタル層17)の厚さ、すなわち体積が等しくなることが好ましい。
【0053】
第1の実施形態に係る半導体装置を製造後の状態において、"JEDEC STANDARD TEST METHOD A113-A LEVEL3"により規定される条件下で吸湿保存の前処理を行い、その後、温度が260℃の条件ではんだリフロー試験を3回行う、前処理を行った。その後、半導体チップ1と配線基板2との間に形成されたはんだバンプ4を含む配線部分の接続抵抗値の変化を、気相での温度サイクル試験(−55℃と125℃とで30分ずつの処理を1サイクルとする)により確認した。その結果、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後においても、接続抵抗値の変化率は初期抵抗値に対して+10%以下であった。また、1500サイクル後においても、接続抵抗値の変化率は初期抵抗値に対して+10%以下であり、繰り返しの温度変化に対して良好な温度サイクル試験耐性を持つことを確認している。
【0054】
(第1の実施形態の第1変形例)
なお、第1の実施形態の一変形例として、半導体チップ1の電極パッド2の上に形成されるUBM層3と、配線基板10の接続パッド15の上に形成されるバリアメタル層17とを、いずれもリンの濃度が5wt%で、厚さが5μmの電解ニッケル−リンめっきによって形成してもよい。このようにすると、UBM層3及びバリアメタル層17はいずれも電解めっき法により結晶質となるため、はんだバンプ4における半導体チップ1及び配線基板10から受ける熱ストレスによる応力が均等となる。従って、はんだバンプ4に発生するクラックを抑制することができる。
【0055】
(第1の実施形態の第2変形例)
第2変形例として、半導体チップ1の電極パッド2の上に形成されるUBM層3を構成する無電解ニッケル−リンめっきの厚さと、配線基板10の接続パッド15の上に形成されるバリアメタル層17を構成する無電解ニッケル−リンめっきの厚さとを、いずれも5μmに代えて10μmとする。
【0056】
第2変形例においても、第1及び第2の実施形態と同様の温度サイクル試験の結果、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後における接続抵抗値の変化率が初期抵抗値に対して+10%以下であり、また1500サイクル後における接続抵抗値の変化率も初期抵抗値に対して+10%以下であり、繰り返しの温度変化に対して良好な耐性を持つことを確認している。
【0057】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0058】
図2は本発明の第1の実施形態に係るフリップチップ実装型の半導体装置の断面構成を示している。図2において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0059】
図2に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置は、配線基板10に設けられる複数の接続パッド15のうち、半導体チップ1の4つの隅部に配置されたはんだバンプ4と接続される接続パッド15にはバリアメタル層17が形成されていない。
【0060】
このように、複数のはんだバンプ4のうち、接続応力が最も大きく掛かる半導体チップ1の隅部に形成されるはんだバンプ4が、配線基板10の接続パッド15の上にバリアメタル層17と接合部を形成しない。これにより、無電解めっき法により形成されたニッケルを含む化合物膜が持つ内部応力による引っ張り方向の応力負荷が掛かることがなくなるため、はんだバンプ4による接続の信頼性が高い接合を得ることができる。
【0061】
さらに、配線基板10の接続パッド15を構成する銅と、はんだバンプ4に含まれるスズとが、ニッケル−スズ合金と比べてより強固な銅−スズ合金を形成する。このため、はんだバンプ4の接続パッド15との接合強度が向上して、負荷として半導体チップ1の隅部に集中的に掛かる応力が効果的に緩和される。これにより、例えば温度サイクル試験によるクラックの発生を抑制しながら、半導体チップ1におけるチップ全体の接合強度が高い半導体装置を得ることが可能となる。
【0062】
なお、図3の第1変形例に示すように、半導体チップ1の複数の電極パッド2の上に形成されるUMB層3のうち、隅部に形成されるUBM層3を形成しない構成としてもよい。この場合には、電極パッド2を構成する金属をアルミニウムに代えて、銅とすれば、半導体チップ1の4つの隅部に配置されたはんだバンプ4の半導体チップ1側部分にも、銅−スズ合金が形成される。これにより、半導体チップ1の全体の接合強度をより一層高めることができる。
【0063】
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4〜図9は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
【0064】
まず、図4に示すように、はんだバンプ4が形成された半導体チップ1を用意する。ここでは、半導体チップ1の構成は、第1の実施形態と同等である。
【0065】
次に、図5に示す配線基板10を用意する。図5に示す配線基板10は、各接続パッド15の上にバリアメタル層17を形成する前の状態である。
【0066】
配線基板10の製造には、前述したビルドアップ基板を用い、ガラスクロスを含むコア基板11の上に層間絶縁樹脂層14と回路パターン12とが順次積層され、該層間絶縁樹脂層14にバイアホールを形成し、該バイアホールに形成されたビアを介して電気的な接続が図られる。
【0067】
より具体的には、例えば、厚さが0.4mmでガラスクロスを含むコア基板11の両面に、厚さが15μmの金属箔を貼り合わせて熱圧着する。その後、コア基板11の表面と裏面との配線層を電気的に接続するために、炭酸ガスレーザを用いて、貼り合わせた金属箔を含むコア基板を貫通する孔部を形成する。続いて、形成した孔部を無電解銅めっきと電解銅めっきとによって充填して、コンタクトプラグ18を形成する。続いて、金属箔をエッチングによりパターニングすることにより、コア基板11の上に回路パターン12を形成する。
【0068】
コア基板11には、ガラスクロスと熱硬化性樹脂とを用い、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。なお、エポキシ樹脂に代えて、例えばビスマレイミドトリアジン又は熱硬化性ポリフェニレンエーテル等の耐熱性が高い熱硬化性樹脂を1つ又は2つ以上含む組成としてもよい。また、ここでは金属箔には、電解めっきによる銅箔を用いている。
【0069】
次に、回路パターン12が形成されたコア基板11の上に、予めフィルム状に成形されたエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂と、無機フィラーとして平均粒径が5μmの球状シリカを50体積%配合した層間絶縁樹脂層14とを熱圧着により貼り合わせて硬化する。層間絶縁樹脂層14に使用する熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂の他にビスマレイミドトリアジン又は熱硬化性ポリフェニレンエーテル等の耐熱性が高い樹脂を使用できる。また、その形成方法にも、未硬化で液状のワニスをスクリーン印刷法によって塗布する方法、又はスピンコート法によって塗布する方法を用いることができる。無機フィラーは、層間絶縁樹脂層14の絶縁性を保った状態で熱膨張率の低下と弾性率の向上とを図るために添加している。無機フィラーには、シリカに代えて、アルミナ、水酸化アルミニウム又はチタン酸バリウム等からなる球状フィラー若しくは破砕フィラーを用いることができる。
【0070】
次に、炭酸ガスレーザ光により、層間絶縁樹脂層14の縦方向(深さ方向)に、下層の回路パターン12に達する有底バイアホールを形成する。レーザ光による有底バイアホールの形成は、炭酸ガスレーザに代えて、第三高調波ネオジム−イットリウムアルミニウムガーネット(Nd−YAG)レーザ光又は波長が300nmよりも短い深紫外エキシマレーザ光等を用いるレーザ加工装置により加工してもよい。
【0071】
次に、層間絶縁樹脂層14に形成された有底バイアホールに厚さが0.5μmの無電解銅めっき膜を形成し、さらに電解めっきを施すことにより、有底バイアホールに厚さが15μmのめっき膜を形成する。その後、形成しためっき膜の表面に感光性のドライフィルムレジストを熱圧着によって貼り合わせる。続いて、所望の回路パターンのネガイメージが描画されたガラスマスクを位置合わせする。その後、露光及び現像を行って、めっき膜における回路パターンを除く部分が露出したエッチングレジストを形成する。続いて、エッチングレジストをマスクとしてエッチングを行い、さらにエッチングレジストを剥離する。これにより、層間絶縁樹脂層14の上に所望の回路パターン12が形成される。その後図示はしていないが、層間絶縁樹脂層14の上に、他の層間絶縁樹脂層14及び回路パターン12とを複数回繰り返して形成する。従って、最上層の回路パターンが接続パッド15として形成される。
【0072】
次に、フリップチップ実装によるはんだ接合時に、隣り合うはんだバンプ同士のショートを避けるために、配線基板10の上面及び下面の両面に感光性エポキシ樹脂からなるソルダレジスト樹脂を塗布する。続いて、塗布されたソルダレジスト樹脂に露光及び現像を行って、ソルダレジスト層16を形成する。但し、ソルダレジスト層16は感光性材料に限られず、所望の形状を得られるのであれば、他の工法を用いてもよい。例えば、炭酸ガスレーザ、第三高調波Nd−YAGレーザ又は波長が300nmよりも短い深紫外エキシマレーザ等のレーザ光を用いてもよい。ここで、ソルダレジスト層16の厚さ20μmとし、接続パッド15上のはんだバンプ形成部の開口径は100μmとしている。
【0073】
次に、図6に示すように、複数の接続パッド15のうち、半導体チップ1の4つの隅部と対向する接続パッド15を除いた他の接続パッド15の上にそれぞれバリアメタル層17を形成する。
【0074】
具体的には、まず、配線基板10に形成された接続パッド15のうち、半導体チップ1の隅部に配置されたはんだバンプ4と対向する接続パッド15をドライフィルムレジストによって覆う。その後、ソルダレジスト層16の開口部からそれぞれ露出する他の接続パッド15の上に、バリアメタル層17として、含有リン濃度が5wt%となるように無電解ニッケル−リンめっきを施す。続いて、金めっき処理を行うことにより、半導体チップ1の各隅部の電極パッド2と対向しない接続パッド15の上に、厚さが5μmの無電解ニッケル−リンめっきと、厚さが0.1μmの金めっきとからなるバリアメタル層17が形成される。その後、ドライフィルムレジストを除去する。ここで、複数の接続パッド15のうちの半導体チップの4つの隅部と対向する接続パッド15の個数は、各隅部ごとに1個に限られず、複数個であってもよい。
【0075】
次に、図7に示すように、半導体チップ1の各電極パッド2の上にUBM層3を介在させて形成されたはんだバンプ4の表面にフラックス7を付着させる。フラックス7の付着方法は、各はんだバンプ4の表面の全体にフラックス7が濡れ広がり、且つ半導体チップ1に形成されている絶縁保護膜5にフラックス7が付着しなければ、特に方法は問われない。例えば、平坦な面に均一で且つはんだバンプ4高さよりも薄い膜厚に塗布されたフラックス7に、半導体チップ1に形成されたはんだバンプ4を浸漬することによって行うことができる。本実施形態においては、膜厚が50μmのフラックス膜に半導体チップ1に形成されたはんだバンプ4を浸漬させることによって、フラックス7を付着した。このようにすると、フラックス7のはんだバンプ4に対する濡れ性の作用により、フラックス7は浸漬されていないはんだバンプ4の表面に濡れ広がるため、はんだバンプ4の表面をフラックス7により均一に覆うことができる。
【0076】
次に、図8に示すように、配線基板10の所定の位置に半導体チップ1を位置合わせし、位置合わせされた半導体チップ1を配線基板10に搭載する。この搭載段階では、配線基板10の各接続パッド15又はバリアメタル層17には、フラックス7を介して半導体チップ1のはんだバンプ4が接触しており、はんだによる接合はなされていない。
【0077】
次に、図9に示すように、はんだリフロー装置により、半導体チップ1が搭載された配線基板10を、はんだバンプ4に使用した、組成が96.5wt%スズ−3.0wt%銀−0.5wt%である銅はんだが溶融する温度(融点217℃)よりも30℃以上高い温度を窒素雰囲気下で保持して、20秒間以上加熱する。これにより、半導体チップ1と配線基板10との間の接続部に、はんだバンプ4が形成された実装体を得る。
【0078】
その後、はんだバンプ4の周辺部に残るフラックスを除去するため、フラックス洗浄を行う。フラックス洗浄は、図9に示すような配線基板10に半導体チップ1が実装された実装体を洗浄液に完全に浸漬し、周波数が100kHzで、出力が100Wの超音波による洗浄を5分間行う。その後、洗浄液から取り出した実装体を速やかに純水を用いて5分間のリンス処理を行う。このように、洗浄液中で超音波処理を行うことにより、実装体における半導体チップ1と配線基板10との間の隙間部分に洗浄液が効果的に進入し、該隙間部分に残るフラックス7を効率良く除去することができる。実装後にダミーサンプルである半導体チップ1を剥がしてはんだバンプ4の周辺部を観察したところ、はんだバンプ4の周辺部にはフラックス7の残渣はみられなかった。
【0079】
フラックス洗浄の効果を高めるため、洗浄中の超音波条件の出力を1000Wよりも高くすると、はんだバンプ4の内部、はんだバンプ4における接続パッド15又は電極パッド2との界面にクラックが発生した。また、出力を50Wよりも低くするとフラックス残渣は全く除去されなかった。また、超音波の発信周波数を600kHzよりも高くした場合と、50kHzよりも低くした場合には、いずれもフラックス残渣は除去されなかった。洗浄時間とリンス処理時間とは、1分間を越える条件であればフラックス残渣の除去性に差は見られないが、長時間の超音波処理は配線基板10が吸湿してしまい、以降の熱処理工程で配線基板10の膨れやデラミネーションを引き起こすため、洗浄時間は10分以下が好ましい。
【0080】
次に、フラックス洗浄が終了した実装体を、温度が115℃〜125℃の窒素雰囲気で1時間のべーク処理を行う。ベーク時間が1時間よりも短い場合又はベーク温度が115℃を下回った場合は、配線基板10の表面に付着した表面吸着水が十分に除去されない。このため、次のアンダーフィル充填工程において、アンダーフィル樹脂6のソルダレジスト層16に対する濡れ性が低下して、アンダーフィル樹脂6が十分に充填されなくなる。また、3時間以上のベークを行った場合又は温度が125℃を超える場合は、ソルダレジスト層16の表面が変色する。
【0081】
次に、アンダーフィル塗布装置により、実装体における半導体チップ1と配線基板10との隙間部分に、未硬化のアンダーフィル樹脂6を塗布する。アンダーフィル樹脂6の塗布は、半導体チップ1の外形をなす4つの辺のうち、最も長い辺に沿って所定量を塗布し、塗布されたアンダーフィル樹脂6の粘度を下げて隙間部分への浸透性を高める。このため、図9に示す半導体チップ1が実装された配線基板10を65℃程度の温度に過熱した状態で塗布し、塗布後も10分間、65℃の温度で放置する。このように、アンダーフィル樹脂6の浸透性を利用して、半導体チップ1と配線基板10との隙間部分にアンダーフィル樹脂6を浸透させる。
【0082】
次に、アンダーフィル樹脂6が塗布された実装体をオーブンへ入れ、温度が145℃から155℃の窒素雰囲気で1時間の硬化処理を行うことにより、図2に示す半導体装置を得ることができる。この熱処理工程により、未硬化のアンダーフィル樹脂が硬化することから、各はんだバンプ4が封止されるため、外部からの水分の浸入、並びに外的なストレス、熱変形若しくは内部残留応力によって発生する圧縮又はせん断応力からはんだバンプ4による接合部を保護することができる。
【0083】
ここで、アンダーフィル樹脂6に対する硬化温度が130℃に満たない場合、又は硬化時間が1時間に満たない場合は、アンダーフィル樹脂6が十分に硬化しなくなる。このため、水分の浸入による電気絶縁性が低下する等の封止効果が不十分となる。従って、振動又は熱変形による局所的な応力負荷が発生した場合に、はんだバンプ4による接続部が破壊される。また、アンダーフィル樹脂6の硬化温度が170℃を超えた場合、又は硬化時間が3時間を越える場合には、アンダーフィル樹脂6の過剰な硬化反応により配線基板10が変形する。さらには、はんだバンプ4の接合部又は配線基板10の内部が破壊したり、剥離が発生したりする。
【0084】
以上説明したように、第2の実施形態に係る半導体装置は、半導体チップ1と配線基板10とを接続する複数のはんだバンプ4のうち、接続応力が最も大きく掛かる半導体チップ1の隅部に配置されたはんだバンプ4が、配線基板10に形成された接続パッド15とバリアメタル層17を介在させることなく接合する。これにより、無電解めっき法により形成されたニッケルを含む化合物膜(バリアメタル層17)の持つ内部応力による引っ張り方向の応力負荷が掛かることがない。このため、半導体チップ1の各隅部に形成されるはんだバンプ4による接合部の接続信頼性はより一層向上する。
【0085】
さらに、前述したように、配線基板10の接続パッド15を構成する銅と、はんだバンプ4を構成するスズがニッケル−スズ合金と比べてより強固な銅−スズ合金を形成する。このため、半導体チップ1の隅部に配置されたはんだバンプ4の、配線基板10の接続パッド15に対する接合強度が向上する。従って、負荷として半導体チップ1の各隅部に集中する応力が効果的に緩和されて、温度サイクル試験等によるクラックの発生を抑制しながら、半導体チップ1全体の接合強度をより高めることが可能となる。
【0086】
第2の実施形態に係る半導体装置を製造後の状態において、第1の実施形態と同様の検査を行ったところ、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後においても、接続抵抗値の変化率は、初期抵抗値に対して+10%以下であった。また、1500サイクル後においても、接続抵抗値の変化率は、初期抵抗値に対して+10%以下であり、良好な温度サイクル試験耐性を持つことを確認している。
【0087】
(第2の実施形態の第1変形例)
第1変形例として、半導体チップ1の電極パッド2の上に形成されるUBM層3を構成する無電解ニッケル−リンめっきの厚さと、配線基板10の接続パッド15の上に形成されるバリアメタル層17を構成する無電解ニッケル−リンめっきの厚さとを、いずれも5μmに代えて10μmとする。
【0088】
第2変形例においても、第1及び第2の実施形態と同様の温度サイクル試験の結果、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後における接続抵抗値の変化率が初期抵抗値に対して+10%以下であり、また1500サイクル後における接続抵抗値の変化率も初期抵抗値に対して+10%以下であり、繰り返しの温度変化に対して良好な耐性を持つことを確認している。
【0089】
(第2の実施形態の第2変形例)
第2変形例として、半導体チップ1の電極パッド2の上に形成されるUBM層3を構成する無電解ニッケル−リンめっきと、配線基板10の接続パッド15の上に形成されるバリアメタル層17を構成する無電解ニッケル−リンめっきに代えて、いずれも無電解ニッケル−ボロンめっきとしている。無電解ニッケル−ボロンめっきの厚さは共に5μmである。
【0090】
第2変形例においては、第1及び第2の実施形態と同様の温度サイクル試験の結果、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後における接続抵抗値の変化率が初期抵抗値に対して+10%以下であった。なお、1500サイクル後における接続抵抗値の変化率は初期抵抗値に対して+10%を超える不良が発生した。抵抗変化の発生原因を確認するため、温度サイクル試験後の半導体装置に対して不良モードの解析を行った結果、抵抗の上昇が発生した箇所のはんだバンプ4と接合された、配線基板10のバリアメタル層17である無電解ニッケル−ボロンめっきにクラックが観察された。
【0091】
このように、UBM層3及びバリアメタル層17の組成を無電解ニッケル−リンめっきに代えて、無電解ニッケル−ボロンめっきを用いた場合でも、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後の接続抵抗値の変化率は初期抵抗値に対して+10%以下であり、信頼性評価の判断基準に達している。
【0092】
(第2の実施形態の第3変形例)
第3変形例として、配線基板10の接続パッド15の上に形成されるバリアメタル層17を構成する無電解ニッケル−リンめっきの厚さを5μmに代えて10μmとする。一方、半導体チップ1の電極パッド2の上に形成されるUBM層3の厚さは、5μmのままとしている。
【0093】
第3変形例においては、第1及び第2の実施形態と同様の温度サイクル試験の結果、信頼性評価の判断基準である1000サイクル後における接続抵抗値の変化率が初期抵抗値に対して+10%以下であった。しかしながら、1250サイクル後では接続抵抗値の変化率が初期抵抗値に対して+10%を超え、1500サイクル後には断線に至る不良が発生した。
【0094】
断線不良の発生原因を確認するため、温度サイクル試験後の半導体装置に対して不良モードの解析を行った結果、抵抗上昇が発生した箇所は、半導体チップ1の隅部に形成されたはんだバンプ4ではなく、それ以外のはんだバンプ4で且つ配線基板10のバリアメタル層15に近い部分のはんだバンプ4の内部に生じたクラックであることが確認された。
【0095】
以上により、はんだバンプ4とそれぞれ接合されるバリア膜である、半導体チップ1のUBM層3及び配線基板10のバリアメタル層15は、膜厚が互いに等しい、すなわち接合部の組成が互いに等しいことが重要である。
【0096】
以上説明したように、第2の実施形態及びその変形例に係る半導体装置によると、半導体チップ1と配線基板10とを接続するはんだバンプ4のうち、接続応力が最も大きく掛かる半導体チップ1の隅部に形成されたはんだバンプ4が配線基板10の接続パッド上にバリアメタル層17を形成しない部位と接合する。これにより、配線基板10の銅からなる接続パッド15は、バリアメタル層17を介さずに直接にはんだバンプ4と接続される。このため、バリアメタル層17の主成分であるニッケルと、はんだバンプの主成分であるスズとが温度サイクル試験により負荷を受ける接合面に対して配線基板10の主面と平行な方向からの擦り応力に対して脆弱なニッケル−スズ合金が接合部に形成されることがなくなる。この脆弱なニッケル−スズ合金の代わりに、擦り応力に対して高い耐性を持つ銅−スズ合金による接合が形成される。その上、無電解ニッケル系めっき膜が持つ内部応力による引っ張り方向の応力負荷が掛かることがなくなる。このため、配線基板10の接続パッド15との界面部分の接合強度が向上するので、負荷として半導体チップ1の隅部に集中的に掛かる応力が効果的に緩和される。
【0097】
また、複数のはんだバンプ4のうち、半導体チップ1の隅部を除くはんだバンプ4は、半導体チップ1の配線基板10への実装時のはんだ濡れ性の向上と、配線基板10の製造後から実装までの経時変化による表面の酸化防止との観点から、配線基板10にバリアメタル層17を設ける必要がある。そこで、はんだバンプ4における接続パッド15と反対側に位置する半導体チップ1のUBM層3には、バリアメタル層17と同一の組成及び同一の厚さ(体積)を持つ無電解ニッケル系めっきを用いることが好ましい。この構成により、半導体チップ1の隅部を除く各はんだバンプ4が受けるバリアメタル層17及びUBM層3からの引っ張り応力が同方向で同程度となる。
【0098】
これにより、はんだバンプ4の接合面における応力の方向による偏りが発生し難くなるため、実装工程時及び温度サイクル試験時等に発生が懸念されるはんだバンプ4の内部に生じるクラックを抑制できる。従って、半導体チップ1側に形成されるはんだバンプ4の大きさを特異的に変更することなく、クラック耐性が高い接合形態を形成することができる。
【0099】
(比較例)
以下、本発明の比較例について図面を参照しながら説明する。
【0100】
図10は本発明の比較例に係る半導体装置の部分的な断面構成を示している。
【0101】
比較例に係る配線基板10Aは、半導体チップ1の電極パッド11とはんだバンプ4を介して接続する全ての接続パッド15の上に、バリアメタル層が形成されない構造を採る。
【0102】
本比較例に係る配線基板10Aを製造するには、ソルダレジスト層16を形成するまでは、第1の及び第2の実施形態と同様であり、その後、バリアメタル層17を形成せずにそのまま配線基板10Aとしている。また、半導体チップ1と配線基板10Aの実装は、第1の実施形態と同様の条件としている
本比較例においては、半導体チップ1と配線基板10Aがはんだバンプ4を介して接続される場合に、全てのはんだバンプ4における半導体チップ1側に形成される接合界面が、水平方向からの擦り応力に対して脆弱なニッケル−スズ(NiSn)合金となる。
【0103】
一方、全てのはんだバンプ4における配線基板10A側に形成される接合界面が接続パッド15を構成する銅と、はんだバンプ4の組成に含まれるスズとにより、ニッケル−スズ合金と比較して強固な銅−スズ合金が形成される。従って、全てのはんだバンプ4の上下の接合界面に異なる組成の接合部が形成されることにより、半導体装置に熱ストレスが印加された際に、接合強度が高い配線基板10A側に引っ張り方向の応力が全ての接合部に均一に掛かる。その結果、接合強度が低い半導体チップ1側のニッケル−スズ合金部の、半導体チップ1の各隅部に掛かる応力を緩和することができない。
【0104】
このため、温度サイクル試験によって半導体チップ1の各隅部に形成されるはんだバンプ4による接合部の半導体チップ1側にクラックが発生するおそれがある。
【0105】
本比較例に係る半導体装置は、温度サイクル試験の結果、750サイクル後に接続抵抗値の変化率が初期抵抗値に対して+10%を越え、1250サイクル後に断線不良が発生し、温度変化に対する耐性が劣ることが確認された。
【0106】
断線不良の発生原因を確認するため、温度サイクル試験1250サイクル後の半導体装置に対して不良モード解析を行った結果、半導体チップ1の隅部に配置された電極パッド2の上のUBM層3とはんだバンプ4との接合部の界面部分にクラックが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、半導体チップに形成するはんだバンプの形成方法を限定することなく、また、はんだバンプによる複数の接続部の面積をいずれも同程度に保ったままで、接続信頼性が高い実装が可能な半導体装置を得ることができ、はんだバンプを用いたフリップチップ実装により形成される種々の電子機器分野に有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 半導体チップ
2 電極パッド
3 アンダーバンプメタル(UBM)層
4 はんだバンプ
5 絶縁保護膜
6 アンダーフィル樹脂
7 フラックス
10 配線基板
10A 配線基板
11 コア基板
12 回路パターン
13 ビア
14 層間絶縁樹脂層
15 接続パッド
16 ソルダレジスト層
17 バリアメタル層
18 コンタクトプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの素子が形成された素子形成面と該素子形成面に形成された複数の電極パッドとを有する半導体チップと、
主面が前記半導体チップの素子形成面と対向し、且つそれぞれが前記主面の前記各電極パッドと対向する位置に形成された複数の接続パッドを有する配線基板と、
前記各電極パッドと前記各接続パッドとの間にそれぞれ設けられ、前記各電極パッドと前記各接続パッドとを電気的に接続する複数のはんだバンプとを備え、
前記はんだバンプにおける、前記電極パッド側の組成と前記接続パッド側の組成とは同一であり、
前記半導体チップにおける隅部を除く領域であって、前記電極パッドと前記はんだバンプとの間及び前記接続パッドと前記はんだバンプとの間には、それぞれバリア層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記はんだバンプにおける前記電極パッド側部分と前記接続パッド側部分とは、共に非晶質であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バリア層は、無電解めっき法により形成されたニッケル化合物からなることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記はんだバンプにおける前記電極パッド側部分と前記接続パッド側部分とは、共に結晶質であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バリア層は、電解めっき法により形成されたニッケル化合物からなることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数のはんだバンプは、その体積が互いに等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−48285(P2013−48285A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242398(P2012−242398)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2009−1444(P2009−1444)の分割
【原出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】