説明

半導体装置

【目的】 半導体チップおよびリードの先端部が樹脂で封入成形され、リードが細く狭ピッチ化された半導体装置であっても、リードが樹脂から抜けないようにし、半導体装置の信頼性を向上させる。
【構成】 ダイパッドに半導体チップがダイボンディングされ、該半導体チップおよびダイパッドの周囲に配設されるリード12の先端のワイヤボンディング部が樹脂20で封入され、前記リードの樹脂の内部に封入される部分にダイパッドの面と角度をなす方向に屈曲して形成される折曲げ部124 が形成されてなる半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体装置に関する。さらに詳しくは、半導体チップおよびリードの先端部が樹脂で封入成形された半導体装置のリードの抜けを防止した半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置は半導体チップの保護および取扱いの容易さから、樹脂で半導体チップおよび電気接続したリード先端部分を封入成形(以下、モールドという)して製造されている。このリードと樹脂は密着して形成されているが、リードはFe−Ni系の42合金などが用いられ、樹脂とは材料が異なり剥離も生じ易い。
【0003】普通の半導体装置の使用方法ではリード抜けは起らないが、リードの成形または一旦ハンダ付けしたものを外すときなどリードに張力が作用すると、樹脂に封入されたリードが抜けるという事故があり、リードの抜け防止の対策が施されている。たとえば樹脂に封入される部分のリードの一部に孔をあけ、封入用の樹脂がその孔を貫通して固着するようにし、孔を貫通している樹脂でリードの抜けを防止したり、リードの横側に突出部を設けて封入用の樹脂で抜け方向に対して係止されるような構造、またはリードに切り起しを設けて切り起された部分で係止されるような構造などが利用されている。
【0004】このようなリードの横側に突出部を形成して抜け防止を図ったリードフレームの一例を図7に示す。図7においてリードフレーム10は、ダイパッド部11、リード12の樹脂内に封入される部分のインナーリード121 、樹脂より外に延びるアウターリード122 およびインナーリード121 に形成された突出部123 並びにタイバー13とからなっている。Aは樹脂の外形を示している。このリードフレーム10のダイパッド部11に半導体チップ(図示せず)が接着され、ワイヤボンディング後これらが樹脂で封入され、アウターリード122 の連結部であるタイバー13などが切り離され、リード12がフォーミングされることにより、半導体装置が形成されている。この構造でリード12の外部からの引張力に対しても突出部123 が樹脂で係止されることにより、リードの抜けを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、最近の半導体装置の小型化、高集積化ならびに出力端子数を増やすための多リード化に伴なってリードの狭ピッチ化が要求され、最近ではリードの間隔が約0.2mm (たとえばリードのピッチが約0.3mm でリードの幅が約0.1mm )というような状況になってきている。この状況のもとで、狭いリードの間隔に突出部123 を形成して、しかも隣のリードと短絡しないようにするためには、突出部123 を小さくしなければならず、樹脂で係止してリードの抜けを防止するのに充分な幅の突出部を形成することができない。その結果、充分な引張強度をうることができないという問題がある。
【0006】さらにインナーリード121 部に孔を形成したり、切り起しを設けて抜け防止を図るにも、小型化の要請からインナーリード121 やアウターリード122 のリード12自体も細くなっており(たとえば幅が0.1mm 位)、孔をあけると切断したり、電気抵抗が増えて特性上好ましくなく、孔や切り起しの形成ができないという問題がある。
【0007】本発明はこのような状況に鑑み、リードの狭ピッチ化にもかかわらず、リードの引張強度を向上させ、リードの抜けを防止できる半導体装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による半導体装置は、ダイパッドに半導体チップがダイボンディングされ、該半導体チップと前記ダイパッドの周囲に配設されるリードの先端とが電気的接続され、前記半導体チップおよび前記リードの先端部が樹脂で封入成形されてなる半導体装置であって、前記リードの前記樹脂の内部に封入された部分に、各リードで形成された面と角度をなす方向の折曲げ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
【作用】本発明によれば、樹脂封入部分に配設されるリードの一部に各リードで形成された面と角度をなす方向の折曲げ部を形成しているため、折曲げ部の高さを大きく確保でき、広い面積で樹脂に係止されてストッパとして作用する。しかもこの折曲げ部は完全に樹脂で覆われているため、折り曲げられたリードが引張力により延びることがなく、常に樹脂で係止される。その結果、外部からリードに引張力が加えられても、リードの抜けを防止することができる。
【0010】
【実施例】つぎに図面を参照しながら本発明の半導体装置の説明を行う。
【0011】図1は、本発明の半導体装置の一実施例のリード部分を示す平面説明図、図2は図1の実施例のモールドされたリードの折曲げ部の状態を示す断面説明図、図3は本発明の半導体装置のリードの折曲げ部の成形法を示す概略説明図、図4〜6は本発明の他の実施例である半導体装置のリード折曲げ部の構造を示す図である。
【0012】まず図1〜2に基づき本発明の一実施例である半導体装置について説明する。この半導体装置はリードフレーム10のダイパッド11に半導体チップ(図示せず)がダイボンディングされたのち、ダイパッド11の周囲に放射状に配設されたリード12の樹脂で封入される部分であるインナーリード121 の先端と前記半導体チップの電極パッドとが電気的接続され、樹脂20でモールドされ、リード12で樹脂20の外部に延びている部分であるアウターリード122 を連結しているタイバー13などが切断除去され、各リード12が分離されてフォーミングされることにより形成されている。図1においてAは樹脂の外形を示す。
【0013】本実施例における特徴は、リード12のインナーリード121 部分に折曲げ部124が形成されていることである。この折曲げ部124 は図2に樹脂で封入した状態の断面形状を示すように、各リードで形成された平面、すなわちリードフレーム10の面に対し垂直方向に折り曲げられ、リードフレーム10の面に対し直角方向にくさび形の底部が延びた形の突起として形成されている。
【0014】このリード12の折曲げ部124 は図2に示すように、折曲げ部124 の内側Bおよび外側C、Dの両面とも樹脂20で完全に覆われているため、リード12の引張力Fが働いても、折曲げ部124 が樹脂20で係止されてリード12の抜けを防止する。このばあい樹脂20がリード12を係止する力はリードフレーム10に対し垂直方向に折り曲げられているリード部分Cの高さHに主として依存する。このばあい、高さHは1mm以上あれば充分で、前述のようにこのリード12は幅が約0.1mm で、厚さをたとえば0.1 〜0.15mm程度とすれば、非常に成形し易く、リードフレーム10を打抜きで形成するとき、図3に示すように、金型31、32に折曲げ部の形状を形成しておくことにより、容易に形成できる。また、折曲げ部124 のリード方向の長さLは折曲げ部124 の内側Bに樹脂が完全に充填できる長さがあればよい。この寸法はリードフレームの打抜き時の成形加工の容易さをも考慮して決める必要がある。
【0015】前述のようにリードの突起部を樹脂により係止してリード抜けを防止するためには、リード幅が細く(約0.1mm )、狭ピッチ化(たとえばリードのピッチ間隔が約0.3mm でリード同士の間隔は約0.2mm )された半導体装置では、従来のようにリードの横側に突起部を形成したり、リードに切り起し部を形成することができない。すなわち横方向に突起部を形成するためには、リード間の接触を避けるために約0.1mm 以下の突起部しか形成できず、充分なストッパとして寄与しない。またリードに切り起し部を形成するには0.1mm 幅のリードから切り起さねばならず、前述の貫通孔形成よりさらに困難で実現できない。本発明はこのような細いリードの狭ピッチ化された半導体装置でも、リードと周囲の樹脂とのあいだに係止力を発生させて、リード抜け防止を確実に、しかも簡単に達成できるようにしたものである。したがって、本発明では、たとえばリード幅が0.05〜0.2mm 、リード同士の間隔は0.1 〜0.5mm の半導体装置に適用すればとくに有効である。
【0016】前述の実施例ではくさび形折曲げ部の垂直部をアウターリード122 側に形成する例で説明したが、前述のようにくさび形折曲げ部の内部にも樹脂が充填されているため、折曲げ部124 の垂直部がインナーリード121 側に形成された形状でも同様の効果がある。また図4R>4に示すようにアウターリード122 側およびインナーリード121 側共に垂直部を形成したコの字形の折曲げ部にすることもできる。
【0017】さらに、図5に示すようなくの字形の折曲げ部を形成しても、同様に係止力が作用し、折曲げ部の高さを高く形成できればリードフレームの成形加工が容易で同様な効果をうることができる。この形状は成形加工が容易であるため、とくにリードフレームの材質が加工性の低い金属材料のばあいに効果的である。
【0018】さらに、前述の実施例ではいずれのばあいも、折り曲げたリードをまた元のリードフレームの面と一致するように曲げ戻したものであったが、図6に示すように、リードフレームの面と異なった面でそのまま引き出すようにすることもできる。
【0019】なお、以上説明した実施例に限らず、折曲げ部はインナーリード部をリードフレームの面と角度をなすように折り曲げればよく、本発明の精神を逸脱しないで他の形状にも形成できることはいうまでもない。さらに折曲げ部を1個のリードに複数個形成することもできる。そして、前記実施例における各寸法は、それらに限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しないかぎりにおいて適宜選択しうることは当然である。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、半導体装置の高集積化、小型化に伴なって、リードが細く狭ピッチ化された半導体装置であっても、樹脂に対するリードの係止力を確実に確保でき、リードに引張力が働いても確実にリード抜けを防止でき、信頼性の高い半導体装置がえられる。
【0021】また本発明によるリードの折曲げ部はリードフレームの打抜き成形のとき同時に形成でき、とくに工数を要しないと共に、細いリードの折曲げ成形のため、確実に成形できる。その結果、小型化、狭ピッチ化の半導体装置でも、低コストで高信頼度のリード抜け防止を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体装置の一実施例を説明する平面説明図である。
【図2】図1の実施例のモールドされたリードの折曲げ部の状態の断面説明図である。
【図3】本発明の一実施例のリードの折曲げ部の成形法を説明する図である。
【図4】本発明のリードの折曲げ部の他の形状を説明する図である。
【図5】本発明のリードの折曲げ部のさらに他の形状を説明する図である。
【図6】本発明のリードの折曲げ部のさらに他の形状を説明する図である。
【図7】従来のリード抜け防止の例を説明する図である。
【符号の説明】
11 ダイパッド
12 リード
20 樹脂
124 折曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ダイパッドに半導体チップがダイボンディングされ、該半導体チップと前記ダイパッドの周囲に配設されるリードの先端とが電気的接続され、前記半導体チップおよび前記リードの先端部が樹脂で封入成形されてなる半導体装置であって、前記リードの前記樹脂の内部に封入された部分に、各リードで形成された面と角度をなす方向の折曲げ部が形成されてなる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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