説明

半導体部品、その製造方法およびそのために用いられる装置

【目的】 高効率の半導体部品を低コストで、同時に長期間にわたる半導体部品自体の安定性を保証しながら製造する。
【構成】 本発明は、半導体層(21、22)と担体基板(18)との間に配置された種結晶層(20)を有する薄膜太陽電池のような半導体部品に関する。種結晶層(20)に面する担体基板(18)の表面はシールされているか、またはシーリング層(19)が担体基板(18)上に堆積されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、担体と、それぞれ前面および背面の接点を形成する第1および第2の導電性の接点と、これらの接点間の少なくとも1つの半導体膜と、半導体膜と担体との間に配置され好ましくは10μm以下の厚さを有する核形成または種結晶膜とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品に関する。また、本発明は、担体と、それぞれ前面および背面の接点を形成する第1および第2の導電性の接点と、これらの接点間の少なくとも1つの半導体膜または層と、半導体膜と担体との間に配置された核形成または種結晶膜または層とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品を、まずこの核形成または種結晶膜または層を担体上に付着した後溶融し、その後横方向へ結晶化し、その後半導体膜または層をこの核形成または種結晶膜または層の上にエピタキシャル堆積させる製造方法に関する。最後に、本発明は好適な半導体部品を製造するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】大面積の半導体部品、特に太陽電池または薄膜トランジスタアレイを製造するためには、経済的な製造プロセスを確立することによって、コスト低減をめざしている。このことは、半導体物質を薄膜の形態で安価な担体(基板)上に堆積することにおいて試みられている。半導体膜としてのアモルファスシリコンに関しては、かなりの努力がなされているが、その成功にもかかわらず、部品の安定性の問題はまだ不満足にしか解決されていない。
【0003】代わりに、多結晶シリコンを担体上に薄膜の形態で堆積する可能性がある。これはどのような安定性の問題も大幅に取り除くであろうと期待されている。
【0004】従来の太陽電池においては、シリコンウェハの厚みは、背面接点における少数キャリアの再結合を避け、かつ太陽光の効率的な吸収のために、200μm以上である。
【0005】ゲッツベルガー、第15回IEEE光発電特別会議会報(Proc.15thIEEE Photovolt.Spec.Conf.)、1981、キシミー(Kissimee)、フロリダ、USA、p.867は、拡散背面反射板を用い、5〜20μmの膜厚でも効率的な光吸収を得る方法を示している。クノブロック(Knoblock),ボス(Voss)とゲッツベルガー、第15回EC光発電太陽エネルギー会議会報(Proc.15th EC Photovolt.Solar Energy Conf.)、4月15〜19日、1985、ロンドン、p.285は、結晶性の薄膜太陽電池について、25%という理論的に可能な効率を計算している。
【0006】光によって発生した電荷キャリアが、半導体素子(特に太陽電池)の電界に達するためには、ベース材料の拡散長さが十分長くなければならない。
【0007】クノブロック(Knoblock),ボス(Voss)とゲッツベルガー、第15回EC光発電太陽エネルギー会議会報(Proc.15th EC Photovolt.Solar Energy Conf.)、4月15〜19日、1985、ロンドン、p.285の計算では、良好な集光効率を得るためには、20μmの膜厚に対してLD =50μm、10μmの膜厚に対してLD =30μm、5μmの膜厚に対してLD =20μmの拡散長が必要であることが示されている。再結合中心は、多結晶シリコンの表面および粒界に形成されるため、薄膜太陽電池の機能が達成されるためには、2つの条件、第1に境界面の良好なパッシベーション(表面パッシベーション、特に背面パッシベーション)、および第2に粒界パッシベーションまたはG=2〜4・LD (G=グレインサイズ)を有する大きなグレイン、が満たされなければならない。上記のことから、薄膜太陽電池の多結晶シリコンについて100μm〜200μmというグレインサイズ、および有効で安定なパッシベーションという粒界条件に対する要求が得られる。また、粒界は基板表面に対して垂直に並ばなければならない。
【0008】さらに、電池の前面および後面は適当な基準によってパッシベートされなければならない。
【0009】この概念を実用上達成しようとすると、速い核形成速度により、薄い結晶質のシリコン膜の非単結晶基板上への堆積の間に、柱状で微粒状の成長がもたらされるため、根本的な性格を持つ困難にぶつかる。
【0010】文献にしばしば記載されるシリコン膜の堆積方法、例えば電子ビーム蒸着、ファン(P.H.Fang)、シューベルト(C.C.Schubert)、キニエル(J.H.Kinnier)、ダウェン・パン(Dawen Pang)、応用物理学会レターズ(Appl.Phys.Lett.)、39(1981)256;チャールズ・フェルドマン(Charles Feldmann)、ブラム(N.A.Blum)、サトキーウィッツ(F.Satkiewicz)、第14回IEEE光発電特別会議会報(Proc.14th IEEE Photovolt.Spec.Conf.)、1980、サン・ディエゴ、p.391;ファン・ゾーリンゲン(R.J.C.van Zolingen)、キッペルマン(A.H.Kippermann)、シン・ソリッド・フィルムズ(Thin Solid Films)、58(1979)、および1100〜1300℃における種々のクロロシラン化合物の水素での還元による熱CVD法は、最大で20〜30μmのグレインの成長をもたらす。
【0011】より高温において長時間焼き入れすると、シリコン膜中でのある程度の再結晶化により、より大きなグレインを形成できる、オーエンス(C.Daey Ouwens)、ハイリガーズ(H.Heijligers)、応用物理学会レターズ(Appl.Phys.Lett.)、26(1975)579。この場合、100μmまでのグレインサイズが得られるが、10時間の焼き入れ時間および1350℃以上の温度でのみである。これらの条件下では、基板からシリコン膜への不純物のかなりの拡散を予想しなければならず、このことは太陽電池の品質に有害である。
【0012】ミリメートル以上のグレインサイズを有する多結晶シリコンウェハ上にエピタキシャリーにシリコン膜を堆積することにより、かなり大きな結晶が得られている、ワラビサコ(T.Warabisako)、サイトウ(T.Saitoh)、イトウ(H.Itoh)、ナカムラ(N.Nakamura)、トクヤマ(T.Tokuyama)、日本物理学会誌、17補遺(Jpn.J.Appl.Phys.,17Supp.)(1978)309;ロビンソン(P.H.Robinson)、ダイエロ(R.V.D´Aiello)、リッチマン(D.Richman)、フォーグナン(B.W.Faughnan)、第13回IEEE光発電特別会議会報(Proc.13th IEEE Photovolt.Spec.Conf.)、1978、ワシントンDC、p.1111。
【0013】ワラビサコ(T.Warabisako)ら、日本物理学会誌、17補遺(Jpn.J.Appl.Phys.,17Suppl.)(1978)309は、冶金学的な純度の多結晶シリコンからつくられ、チョクラルスキー法にしたがって引上げられ、0.4mm厚さのウェハに切り出された基板を用いている。これらのウェハ上に、SiH2 Cl2 をH2 で還元することにより、1100〜1150℃で20〜30μm厚さのp型Si膜を、1000〜1050℃で0.5μm厚さのn+ ドープトSiを堆積している。同様な方法は、ロビンソン(P.H.Robinson)ら、第13回IEEE光発電特別会議会報(Proc.13th IEEE Photovolt.Spec.Conf.)、1978、ワシントンDC、p.1111によって応用されている。しかし、この方法においては、シリコンウェハを個々に製造しなければならないため、経済的な利点が失われる。
【0014】チュー(T.L.Chu)、チュー(S.S.Chu)、デュー(K.Y.Duh)、モレンコフ(H.C.Mollenkopf)、応用物理学会誌(J.Appl.Phys.)、48(1977)3576は、エピタキシャルシリコンの堆積の基台として、グラファイト基板上の約200〜500μm厚さ(pドープト、0.002〜0.004Ω・cm)のシリコン膜を用いている。この膜はSiHCl3 のH2 による還元により生成している。
【0015】大きなグレインをつくるために、第2の方法では、膜を溶融し、結晶化する。ここでの障害はシリコンの大きな表面張力であり、これは基板上の溶融した材料を液滴へと収縮させ、これによって溶融帯域をとぎれさせる。しかし、狭い帯域を溶融することにより、この影響に打ち勝つことができる。その反応器は、水素でフラッシュされ、高周波コイルで加熱された石英管からなっている。Si被覆された基板を、反応器内に設置された、誘導加熱されたSiC被覆のグラファイト棒(ヒーター)の下側を通過させる。熱いグラファイト棒は熱を輻射し、基板の端においてよりも中央において2cm広い溶融帯域を確保する。このようなSi膜を結晶化した後、結晶化された基台上に20〜30μm厚さのp導電型シリコン膜、その後その上に0.2〜0.4μm厚さのn導電型エミッター膜をエピタキシャル堆積することにより、太陽電池を製造する。
【0016】カーバー(M.Kerber)、ベッティニ(M.Bettini)、ゴーニック(E.Gornick)、第17回IEEE光発電特別会議会報(Proc.15th IEEE Photovolt.Spec.Conf.)、1984、キシミー(Kissimee)、p.275によれば、まず高濃度にドープされたn導電型のSi膜をグラファイト基板上に堆積した後、輻射ヒーターとしてその上を通過するタングステンワイヤを用いることにより、溶融し再結晶する。この膜の最適な厚さは20〜30μmであることが示されている。次に、光発電的に活性な60〜100μm厚さのn導電型の膜をエピタキシャル堆積する。引き続きSnO2 のスプレー熱分解により、9%の効率を有するSIS太陽電池を製造する。
【0017】反応チャンバー内の溶融帯域のためのヒーターが不活性ガス(H2 )下にあるということは、両方の方法に共通である。したがって、溶融中には被覆工程を中断する必要があり、さもなければ反応器中のヒーターがSiで被覆されるであろう。
【0018】両方の方法に記載されているシリコン膜を再結晶化することは、最初に述べた20〜50μm厚さにすぎない多結晶シリコンからの薄膜太陽電池の製造には厚すぎる。また、これらの膜は、光発電的に有用な材料に必要な格子の完全性を有しておらず、要求される光発電特性を有する非常に厚いエピタキシャル膜を堆積しなければならないという結果をもたらす。
【0019】この結果、気相からの堆積に関して原理的に可能な経済的利点は、以下の理由により失われる。
【0020】1.大きな結晶をつくるために厚い膜を用いなければならないが、光発電の目的には格子特性が悪すぎる、2.太陽光を効率的に吸収するための背面反射板がないため、その上に厚い膜を堆積しなければならない。
【0021】さらに、静水圧圧縮された高密度のグラファイト基板(12%の気孔率)に関するわれわれ自身の試験では、グラファイトはシリコンが溶融したときにこれをしみ込ませ、薄いシリコン膜はグラファイト中に消滅し、このため再結晶できないことが示された。したがって、この方法では薄膜太陽電池を製造することができない。
【0022】最後に、DE−B 1 223 951は、少なくとも1つのpn接合を有する半導体部品の製造方法を記載しており、そのなかでは溶融により核形成膜を担体上に堆積している。担体材料および/または不純物が半導体物質中に拡散し得るため、この半導体部品は長い期間で見れば、純粋かつ安定ではない。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】本発明の背景にある問題は、高効率の半導体部品を低コストで、同時に長期間にわたる半導体部品自体の安定性を保証しながら製造することである。
【0024】
【課題を解決するための手段と作用】この問題は、単結晶または多結晶の種結晶または核形成膜または層に面する担体の表面をシールするか、または担体をシールする中間膜または層を核形成または種結晶膜または層と担体との間に配置するという本発明によって解決される。実施態様はサブクレームに示されている。
【0025】担体と、それぞれ前面および背面の接点を形成する第1および第2の導電性の接点と、これらの接点間の少なくとも1つの半導体膜と、この半導体膜と担体との間に配置された種結晶膜とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品を、まず種結晶膜を間接的または直接的に担体上に堆積して横方向へ結晶化し、次に半導体膜を種結晶膜上にエピタキシャル堆積して製造する方法は、担体が単結晶もしくは多結晶の種結晶膜を堆積する前に中間膜でシールされ、中間膜および種結晶膜に用いられる材料が、中間膜とその後付着される種結晶膜との間に、種結晶膜を形成する材料の凝集力よりも大きい付着力が存在するようなものであることを特徴としている。好ましい基準はサブクレームに記載されている。
【0026】最後に、担体と、導電性の前面および背面の接点と、これらの接点間の少なくとも1つの半導体膜と、担体上に間接的または直接的に配置された種結晶膜とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品を製造するための、少なくとも種結晶膜および好ましくは半導体膜をも反応チャンバー内でCVD法を用いて堆積でき、種結晶膜が溶融のための熱源に対して相対的に移動可能であって、熱源が、電磁波を発生し、かつ種結晶膜中において凸形状の固化輪郭線を得るために、少なくとも種結晶膜に面する部分において湾曲した導体ループであることを特徴とする装置が提案されている。
【0027】注目に値する特徴はサブクレームに記載されている。
【0028】本発明のより一層の詳細、利点および特徴は、請求の範囲およびこれらが単独でおよび/または組み合わせにより記載する特徴においてだけでなく、図面に示されるように以下の好ましい実施態様の記載においても示される。
【0029】本発明によって薄膜太陽電池を製造しようとする場合、どのような基板でも(シリコンと同等な熱膨張係数を有することが好ましいが)用いることができる。グラファイトが好適である。
【0030】まず、緻密で微結晶で導電性の中間膜(シリコンよりも低い屈折率を有することが好ましいが)を、担体上に1〜100μm好ましくは10〜60μmの膜厚で堆積する。この中間膜はグラファイトのような多孔質の担体をシールするために用いられ、同時に背面接点および拡散反射板の両方となる。意図している堆積条件では、金属はシリコンと反応して合金を形成するため、膜材料として安定な化合物が必要である。本発明においては、種々の金属ホウ化物、金属炭化物または金属窒化物のなかの導電性のセラミック材料が特に好ましく、好ましい化合物は第3主族または第4主族の元素を含み、遷移元素を含まないものである。これは、後者が低濃度であってもシリコン中での拡散の間に太陽電池を劣化させるためである。
【0031】同様に、限定されたピークから谷までの高さを有するドープされた炭化シリコン(p導電型に対してはボロンドープトまたはアルミニウムドープトSiC、n導電型に対しては窒素ドープトまたはリンドープトSiC)は、その表面構造のおかげで拡散的に反射する表面を示すため、シリコンよりも特に有用であることがわかった。SiCの低い屈折率を考慮すれば、Si/SiCの境界面では光線がシリコンから出たときに全反射が起こる。これは、ひいては拡散的に反射するSi/SiC境界面になる。
【0032】ドープされたSiC膜はドープされたシリコンを含んでいてもよい。SiC膜は、加熱された基板およびメチルトリクロロシラン(CH3 SiCl)と水素を用い、CVD法によってつくることができる。また、CH3 SiClの代わりに、Siを含有するクロロシラン(SiHCl3 、SiC4 、SiH2 Cl2 )またはSiH4 およびメタンを用いることができ、組み合わせてもよい。
【0033】p導電型を得るためには、少量のドーパントガス、例えばボロンドープに対してはBCl3 、BBr3 、B2 6 、アルニミニウムドープに対してはAlCl3 、Al(CH3 3 を添加する。
【0034】n導電型を得るためには、NH3 もしくはN2 、またはそれぞれPH3 もしくはPCl3 をドーパントガスとして用いることができる。
【0035】その後、大きな単結晶領域を有する半導体膜を、微結晶の中間膜を有する担体上に堆積するためには、以下の方法が選択される。
【0036】まず、薄い連続的な種結晶膜を、何らかの製造方法、好ましくは熱CVD法(900〜1350℃におけるH2 中でのSiHCl3 またはSiC4 の還元)を用いて堆積する。その後、種結晶膜を少なくとも部分的に溶融し、基板表面に対して平行なまたは担体に集中する温度勾配によりゆっくりと固化する。
【0037】この結果、Si核が基板上のある点で形成され、冷却の間に種結晶膜の上で横方向へ成長するので、このようにして膜厚の薄い大きなグレインを製造できる。
【0038】一旦種結晶膜が完全にまたは部分的に固化すると、光発電的に好適な膜を低温で種結晶膜上にエピタキシャリーに堆積できる。
【0039】シリコンは液滴を形成しやすいので、本発明では溶融した種結晶のSi膜が液滴を形成しないことを保証することが重要である。特に膜厚が厚いと、この問題に直面する。この問題は、Siと中間膜材料との付着力が、Si液滴中の凝集力を上回るほど薄い中間膜を選択することにより解決できる。
【0040】SiC中間膜はシリコンでよく濡れる(磨いたSiC膜上でシリコン液滴をつくっている間、良好なぬれの証拠として4〜6°の接触角が測定された)。
【0041】液体シリコン中の表面張力が持つ液滴形成作用は、液体シリコンに対して毛細管として働く微視的に小さいキャビティまたはくぼみをつくることによる、中間膜表面の好適な構造化によって補償することができる。これは、ぬれやすい中間膜を粗くすることによる特に単純な方法において、例えば1〜2μmの平均のピークから谷までの高さを有するSiC中間膜において達成できる。このような毛細管力により、10μm厚さ以下のシリコン種結晶膜を、液滴を形成することなく中間膜の全表面上で維持できるが、種結晶用としては1〜4μmの膜厚を用いることが好ましい。
【0042】
【実施例】膜は以下に記載するようにして製造される:石英反応管3をCVD反応管として用い(図1)、そのなかで導電性の中間膜1を有する担体をグラファイト製のホルダ2上に置く。この中間膜はSiCからなるものでよい。中間膜を有する担体を、高周波コイル4を用いて約1100℃の温度まで誘導加熱する。次に、H2 およびSiHCl3 またはSiCl4 を、予め排気しガスでフラッシュした管の中に導入し、熱い基板上に種結晶膜として1〜10μm好ましくは4μmのシリコン膜を堆積する。
【0043】種結晶膜の堆積後、膜の温度を1450℃(シリコンの融点以上)まで上げ、膜を溶融する。その後、膜を冷却し、4隅から始めて内側に移動しながら横方向へ固化する(図1:固化膜6、融液5)。
【0044】固化を完了した後、基板を約1100℃まで再び冷却する。この時点で半導体膜を堆積することができる。このようにして、基板表面に対して垂直な粒界および100μm〜300μmのグレインサイズを有する連続的な膜構造(図6参照)を得る。
【0045】原理的には、このような製造は、シリコンでぬれるが材料がシリコンを吸い込まない程度に低い多孔性を有するどのような材料でも可能である。どのような基板材料でも用いることができるが、種結晶膜に面するポアのない表面という境界条件と、高温下および用いられる媒体に対する熱的および化学的な安定性を満足しなければならない。
【0046】しかし、担体に対してこれらの全てを保証しより高価ではない材料を用いるために、本発明は担体表面を微結晶で緻密かつ導電性のSiC膜で被覆することを提供する。このSiC膜は、約1〜2μmという表面でのピークから谷までの高さ(RA 値)を有する長い柱状の微結晶からなることが重要である。膜厚は20〜100μm、ピークからピークまでの距離は約1〜5μmであることが好ましい。
【0047】上記の結果から目的を達成するための2つの可能性があり、これらは以下に個々に記載される。
【0048】ケース1SiC中間膜と担体との間を良好に付着させる。そして、この担体を中間膜の下側に残したまま、本来の担体を形成する。できるかぎりシリコンに近い熱膨張係数(4×10-6-1)を有する材料が用いられるべきである。
【0049】基板の表面は多孔性を有していてもよく、高度な要件は提示されない。高温安定性が必要である。必要とする熱膨張係数は、少なくとも2種の成分、一般的にはn種の成分を混合したものを用い、微粒状の粉体をシリコンからの熱膨張係数の相違を補償する量の物質とともに均一に混合することによって得られる。
【0050】ケース2また、最初に炭化シリコン(4×10-6-1)とは明確に異なる熱膨張係数、好ましくは8〜9×10-6-1を有するある物質(好ましくはグラファイトタイプ)上にSiC膜を堆積するのも、可能な解決法である。
【0051】冷却すると、SiC膜がはがれる。この膜を今度はSi被膜に対する担体物質として用いることができる。グラファイト膜は再度用いることができる。
【0052】SiC中間膜は、通常では多孔質の担体基板材料をシールし、これによって種結晶膜材料(液体シリコン)が溶融したときに多孔質の基板材料中へ浸透するのを防止する。また、粗さによって得られるμmレンジのキャビティ構造は、毛細管力のおかげで担体表面のぬれ性を大幅に改善させる。この膜が十分な導電性を有するならば、絶縁体を基板材料として用いることもでき、このことは多結晶薄膜モジュールの高集積直列接続のための前提条件となる。10μm以下の液体Si膜は、液滴を形成することなしに、平坦に維持できる。これによって、基板の表面粗さと比較して液膜を厚くでき、低欠陥の横方向への結晶成長が薄膜中で得られるという結果をもたらす。
【0053】SiC中間膜をBCl3 /H2 混合物中において高温(1100〜1500℃)で焼き入れすることにより、または堆積の間にSiC中間膜にボロンをドープすることにより、結晶成長をより一層改善できる。このようにしてSiC表面を修正すると、ピークから谷までの高さを顕著に変化させることなく膜の粗さが均等になるので、平方ミリメートルの大きさの単結晶領域の成長も可能になる。
【0054】前述した図1のテスト装置により、すでに数平方ミリメートルの大きさの単結晶領域をつくることができる。
【0055】以下(図2)に記載される装置では、より一層改善できる。
【0056】担体1を、担体上で900〜1350℃の基礎温度をつくる輻射場8、好ましくは2つの輻射場の間に配置する。
【0057】反応器としての石英管3が反応場の内部にあり、その中を反応ガスとしてクロロシラン化合物、好ましくは好適な混合比のSiHCl3 、SiCl4 と水素を通過させる。石英管3を強く空冷すると、石英の壁面が過度に加熱されないので、反応生成物で壁面が被覆されるのが避けられる。担体または基板1の上に、基板1の上方で動くことができる、なるべく湾曲した導体ループ7を設ける。この導体に高周波または中波電流を流すと、基板の狭い帯域をSiの融点より高い温度まで誘導加熱することができる。
【0058】次いで、まず1〜10μm好ましくは4μmの薄いシリコン種結晶膜を、900〜1350℃好ましくは約1100℃で堆積する。その後、コイルを種結晶膜の上方を一定の速度で、狭い溶融帯域が種結晶膜を横切るように動かす。冷却の間にこの材料は結晶化するので、大きなグレインが形成される。この時点で、Si膜のような半導体膜を、基礎温度で、固化した種結晶膜上に、エピタキシャル堆積することができる。
【0059】曲率を有する高周波導体ループ7(図3)を設計すれば、横方向への結晶化の間における核の選択により、さらに結晶成長を増大させることができる。種結晶膜は、規定の方向を持っていてもよい凸状の固化輪郭線を伴う全体的な工程の間に結晶化する。図3においては、微結晶Si種結晶膜9、狭い溶融帯域10、および結晶化した種結晶膜11が認められる。相の境界(10から11への転移)は形状的に凸状である。このことは、チューら、物理学会誌(J.Appl.Phys.)、48(1977)3576(それによると凸状の溶融帯域のために凹状の固化輪郭線が発生する)との実質的な相違である。凸状の固化輪郭線は、安定な結晶成長に必須である。
【0060】この装置を用いることにより、この時点で太陽電池のような部品または担体/背面接点/p−Si膜/n−Si膜のような半導体構造を製造することができる。まず、石英管を排気してフラッシュする。その後、背面接点材料で被覆された担体を反応器に入れ、輻射型の加熱を用いて900〜1350℃まで加熱する。反応ガスすなわちH2 、SiHCl3 、BCl3 を導入した後、薄い種結晶膜を担体上に堆積する。
【0061】その後、種結晶膜を帯域ベースの溶融操作によって溶融し、凸状の固化輪郭線でゆっくりと結晶化する。厚い多結晶pドープトSi膜を種結晶膜上に堆積する。その後、チャンバーを排気し再びガスを送り、リンドープトn導電型の膜(0.1μm〜数μm厚さ)を堆積する。この半導体膜を規定の方法で冷却する。その後、この試料にスクリーン印刷された前面格子をつける。
【0062】エピタキシャル膜と種結晶膜との間の境界面での電荷キャリアの再結合のパッシベーションのために、種結晶膜をボロンで高濃度ドープすることにより、背面電界をつくる。
【0063】この種結晶膜は基板からの不純物を捕捉するための格子膜としても用いられる。
【0064】少量の単結晶材料を基板中に挿入することにより、種結晶膜の選択的な配向が可能になる(図4R>4)。(100)配向を有する単結晶核13を、その表面が担体表面と同一平面となるように、担体中に挿入する。約1000℃の基礎温度に達した後、Si核を含む担体を薄いSi種結晶膜で被覆する。その後、誘導コイル17を担体上方で移動させ、種結晶膜を溶融する。溶融したSi種結晶膜15はより導電性が高いことから、電気エネルギーがより多く入力されるため、種結晶膜は担体よりも約100℃温度が高い。この工程は、その直径が小さいことを考慮しかつ担体の冷却作用のために核が部分的にのみ溶融するように制御する。
【0065】固化の間に、核の配向が結晶化している種結晶膜にとって効果的になるようにできる。この方法により、多結晶基板12上に単結晶の配向した種結晶膜14を得ることもできる。
【0066】さらに、固化輪郭線16が基板表面に対して垂直ではなく、表面で最初に固化するSi種結晶膜に対して浅い角度となるように、横方向への固化工程を制御することにより、種結晶膜14したがって引き続くエピタキシャル半導体膜の清浄化を達成できる。
【0067】これは、導体ループすなわち図3の7および図4の17を、ある角度をなして配置するかまたは膜の上方の部分でのみ凸形状に設計する(図3)ことにより、達成できる。基板上の欠陥はもはや種結晶膜の表面にいかなる影響ももたらさない。このことは単結晶膜の成長の前提条件である。また、1未満の分配係数を有する不純物は、シリコン/基板境界面(担体)(または背面接点)で濃縮され、膜中には濃縮されない。
【0068】種結晶膜の好適な基準配向を選択することにより(例えば100または111配向)、エピタキシャル膜は太陽電池に好都合な構造を備えることができる。図7は、この種の表面のピラミッド型の成長を示す。これらのピラミッドにおいて、光は良好に捕捉および偏向される。これはひいては光吸収を改善する。
【0069】図5は記載された方法を用いて作製された薄膜太陽電池の構造を示している。この図において、18は担体(グラファイト基板またはセラミック基板)である。この担体上に導電性のSiC中間膜19を堆積する。これは、好ましくは20〜100μm厚さ、p導電型であり、1〜2μmの表面粗さを有し、同時にシーリング膜、拡散反射板および背面接点として作用する。
【0070】薄い種結晶膜20(好ましくは4μm厚さ、p導電型で高濃度ドープされている)を、その上に形成する。その後、光発電的に感応性のエピタキシャル膜21(5μm〜400μm好ましくは10〜30μmの膜厚)を、その上に堆積する。この上には、n型膜22および前面接点23がある。膜22の代わりに、エピタキシャル膜21の上にMIS反転膜太陽電池を作製してもよい。
【0071】以上では本発明による原理を薄膜太陽電池を基にして述べたが、本発明によればフォトダイオードまたは薄膜トランジスタアレイのような半導体部品を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体部品を製造するための装置の原理的な概略図。
【図2】半導体部品を製造するための装置の他の具体例を示す概略図。
【図3】種結晶膜を溶融するための熱源の具体例を示す概略図。
【図4】再結晶化工程を示す原理的な概略図。
【図5】半導体部品の構造を示す断面図。
【図6】種結晶膜および半導体膜からなる膜構造の断面図。
【図7】半導体部品のエピタキシー膜の構造を示す概略図。
【符号の説明】
1…中間膜、2…ホルダ、3…反応管、4…高周波コイル、5…融液、6…固化膜、7…導体ループ、8…輻射場、9…Si種結晶膜、10…溶融帯域、11…結晶化した種結晶膜、12…多結晶基板、13…単結晶核、14…種結晶膜、15…溶融したSi種結晶膜、16…固化輪郭線、17…誘導コイル、18…担体、19…SiC中間膜、20…種結晶膜、21…エピタキシャル膜、22…n型膜、23…前面接点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 担体と、それぞれ前面および背面の接点を形成する第1および第2の導電性の接点と、前記2つの接点間の少なくとも1つの半導体膜と、前記半導体膜と前記担体との間に設けられ好ましくは10μm以下の厚さを有する種結晶膜とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品において、単結晶または多結晶の種結晶膜に面する前記担体の表面がシールされているか、または前記担体をシールする中間膜が前記種結晶膜と前記担体との間に配置されていることを特徴とする半導体部品。
【請求項2】 前記シールされた担体または前記中間膜が、前記種結晶膜が堆積されたときにこれと前記担体または前記中間膜との間の付着力が種結晶膜材料の凝集力よりも大きくなるように、粗くなっていることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項3】 前記中間膜が導電性の接点の1つであることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項4】 前記中間膜が多結晶SiCであることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項5】 多結晶SiCが多結晶シリコンを含有することを特徴とする請求項4記載の半導体部品。
【請求項6】 ホウ素、アルミニウム、窒素、および/またはリンをドープした中間膜が前記担体上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項7】 前記中間膜が前記半導体膜よりも低い屈折率を有することを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項8】 中間膜としての前記SiC膜が100Ω・cm以下の固有抵抗を有することを特徴とする請求項4記載の半導体部品。
【請求項9】 中間膜としての前記SiC膜が0.01Ω・cm以下の固有抵抗を有することを特徴とする請求項4記載の半導体部品。
【請求項10】 前記導電性のSiC膜が、中間膜としての導電性の金属ホウ化物、金属炭化物または金属窒化物で置き換えられていることを特徴とする請求項4記載の半導体部品。
【請求項11】 前記導電性のSiC膜が、導電性の金属ホウ化物、金属炭化物または金属窒化物によって補われていることを特徴とする請求項4記載の半導体部品。
【請求項12】 前記中間層の金属が、周期律系列の第3または第4族のうちの元素であることを特徴とする請求項11記載の半導体部品。
【請求項13】 前記担体がシリコンのそれに近い熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項14】 前記担体が、50μm<D<5mmの厚さDを有する高純度の静水圧圧縮されたグラファイトからなることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項15】 前記担体が、200μm<D<500μmの厚さDを有する高純度の静水圧圧縮されたグラファイトからなることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項16】 前記担体が、セラミック成分からなる材料であることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項17】 前記担体が、少なくとも2種の成分を有する均一で等方的なセラミック材料であり、これらの材料は互いにおよびシリコンと異なる熱膨張係数を有し、得られる全体の熱膨張係数がシリコンのそれとほぼ等しくなるような割合で前記成分が混合され焼結されていることを特徴とする請求項1記載の半導体部品。
【請求項18】 担体と、それぞれ前面および背面の接点を形成する第1および第2の導電性の接点と、前記2つの接点間の少なくとも1つの半導体膜と、前記半導体膜と前記担体との間に配置された種結晶膜とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品を、まず前記種結晶膜を間接的または直接的に前記担体上に堆積して横方向へ結晶化した後、前記半導体膜を前記種結晶膜上にエピタキシャル堆積して製造する方法において、前記担体がシールされたタイプであるかまたは単結晶もしくは多結晶の種結晶膜を堆積する前に中間膜でシールされ、中間膜および種結晶膜に用いられる材料が、前記中間膜とその後付着される前記種結晶膜との間に、前記種結晶膜を形成する材料の凝集力よりも大きい付着力が存在するようなものであることを特徴とする半導体部品の製造方法。
【請求項19】 前記担体と平行に延びる平面内において、結晶化した種結晶膜と前記種結晶膜の溶融部分との間に凸形状の固化輪郭線が得られるように、前記種結晶膜を横方向へ結晶化することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】 前記種結晶膜の溶融を、投影領域において始めることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】 前記種結晶膜の溶融を、前記種結晶膜の隅部において始めることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】 配向した核が前記担体中に挿入され、前記結晶化された種結晶膜の配向した横方向への結晶成長が起こるように、種結晶膜の堆積および溶融の間に前記核を部分的にのみ溶融させることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項23】 前記担体をシールする前記中間膜を、前記種結晶膜の堆積に先立って粗くすることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項24】 前記種結晶膜を、前記担体の方向に傾いた温度勾配で横方向へ固化することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項25】 前記種結晶膜を、結晶膜中の不純物が前記種結晶膜と前記担体との間で濃縮するように、横方向へ固化することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項26】 前記種結晶膜を、その後エピタキシャル堆積される前記半導体膜が構造化された表面を伴って成長するように、配向させることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項27】 SiCの形態の前記中間膜を、前記種結晶膜の堆積に先立って、水素および少なくとも1種の揮発性のホウ素化合物との混合ガス中で焼き入れすることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項28】 SiCの形態の前記中間膜を、前記種結晶膜の堆積に先立って、水素およびBBr3 、B2 6 またはBCl3 の形態の少なくとも1種の揮発性のホウ素化合物との混合ガス中で焼き入れすることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項29】 温度T1 である材料上に前記材料と異なる熱膨張係数を有するSiCのような膜を堆積し、前記膜の堆積の後これを前記材料とともにT2<T1 の温度まで冷却し、工程中にはがれる膜材料を前記半導体部品の担体として用いることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項30】 担体と、それぞれ前面および背面の接点を形成する第1および第2の導電性の接点と、前記2つの接点間の少なくとも1つの半導体膜と、間接的または直接的に前記担体上に配置された種結晶膜とを有する半導体部品特に薄膜太陽電池のような薄膜半導体部品を製造するための、少なくとも前記種結晶膜および好ましくは半導体膜をも反応チャンバー内でCVD法を用いて堆積でき、前記種結晶膜が溶融のための熱源に対して相対的に移動可能である装置において、前記熱源が、電磁波を発生し、かつ前記種結晶膜中において凸形状の固化輪郭線を得るために、少なくとも前記種結晶膜に面する部分において湾曲した導体ループであることを特徴とする半導体部品の製造装置。
【請求項31】 前記種結晶膜の上および下に延びる導体ループ部分を、前記種結晶膜の下側を通過する部分を、前記固化輪郭線と前記担体表面との間で先細の融液が得られるように、上部の部分に対して配置するように、配置したことを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項32】 前記担体に基礎温度に達するための温度輻射場を供給し、前記種結晶膜を溶融するために導体ループのような導体を用いて加えられる電磁波を発生できることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項33】 前記担体および前記種結晶膜を、前記反応チャンバーの外部に配置された熱源で加熱することを特徴とする請求項30記載の装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate