説明

半導体集積回路装置

【課題】クロストークノイズの抑制及びEMCを強化し、且つ、クロストークノイズの抑制等に用いるスペースを縮小して小型化を可能とする半導体集積回路装置を得られるようにする。
【解決手段】半導体集積回路装置は、実装基板10の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップ11と、実装基板10の上に形成され、半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線1と、半導体集積回路と第1の配線6とを接続する第1のボンディングワイヤ6と、実装基板10の上に形成された複数の第2の配線2と、半導体集積回路と複数の第2の配線2のうちのいずれかとをそれぞれ接続する複数の第2のボンディングワイヤ8とを備えている。第2のボンディングワイヤ8は、第1のボンディングワイヤ6の上方で且つ該第1のボンディングワイヤ6と間隔をおくように互いに交差して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置に関し、特に、高周波信号を伝送する配線を備える半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(large scale integration:LSI)の高機能化に伴い、電気信号の周波数が高周波化されており、1GHzを超える高周波信号も多く見られるようになってきている。しかしながら、高周波信号はインピーダンスの変化及びノイズの影響を受けやすく、LSIを実装する基板(半導体集積回路基板)における対策が重要となっている。
【0003】
ノイズ等に対する従来の一般的な対策手段を有する第1の従来例について図8を参照しながら説明する。図8に示すように、実装基板100の上に、信号配線101が形成され、信号配線101の両側に隣接配線102が形成されている。実装基板100の上には、LSI110が実装され、実装されたLSI110と信号配線101とを接続するように信号用ボンディングワイヤ103が設けられている。さらに、LSI110と隣接配線102とをそれぞれ接続するように2本の隣接ボンディングワイヤ104が設けられている。ここで、高周波信号のような、特に電気特性及びノイズの影響に敏感な信号配線101に対し、隣接配線102はグランド配線又は電源配線とする。このようにすると、隣接配線102は、信号配線101に対してシールドとして作用することにより、信号配線101が伝送する信号でない他の信号に対するクロストークを抑制し、信号配線101が伝送する信号の特性を良好にできる。
【0004】
しかしながら、このような構成のみでは不要な電磁波を十分に抑制することができず、高さ方向(z方向)に不要な電磁波が伝播して、クロストークノイズの原因となり、また、電磁両立性(Electro-Magnetic Compatibility:EMC)に影響する。その結果、半導体集積回路装置として要求された特性を満たすことができず、最悪の場合、動作しないという問題が起こる。
【0005】
このような問題を解決するために、高周波信号を伝送するボンディングワイヤに垂直に交差するように周囲のボンディングワイヤをボンディングしたものが、例えば、特許文献1等に提示されている。このような構成を有する第2の従来例について図9を参照しながら説明する。図9に示すように、実装基板200の上に、信号配線201が形成されている。実装基板200の上には、LSI210が実装され、実装されたLSI210には信号用パッド202が形成され、信号用パッド202と信号配線201とを接続するように信号用ボンディングワイヤ203が形成されている。また、実装基板200の上に、信号用ボンディングワイヤ203の上を跨ぐように導波ボンディングワイヤ204が形成されている。これにより、信号用ボンディングワイヤ203から放出される電磁波に対して信号線方向(信号用ボンディングワイヤ203が延びる方向)に指向性をもたせることができるため、実装部における信号損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−321159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、半導体集積回路装置及び実装基板の小型化が要求されることから、実装基板の上で信号用ボンディングワイヤと交差するように導波ボンディングワイヤを設けることは、小型化を妨げることとなる。また、信号用パッドの周辺部のパッドからボンディングワイヤをさらに設ける際に、導波ボンディングワイヤがその進路を妨げることとなる。さらに、導波ボンディングワイヤを設ける位置には、通常、他の配線が設けられているため、製造を行う上で多くの弊害を生むこととなる。
【0008】
本発明は前記の問題に鑑み、その目的は、クロストークノイズの抑制及びEMCを強化し、且つ、クロストークノイズの抑制等に用いるスペースを縮小して小型化を可能とする半導体集積回路装置を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、半導体集積回路装置を第1のボンディングワイヤの周辺に第2のボンディングワイヤを設ける構成とする。
【0010】
具体的に、本発明に係る第1の半導体集積回路装置は、基板の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップと、基板の上に形成され、半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線と、半導体集積回路と第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、基板の上に形成された複数の第2の配線と、半導体集積回路と複数の第2の配線のうちのいずれかとをそれぞれ接続する複数の第2のボンディングワイヤとを備え、複数の第2のボンディングワイヤは、第1のボンディングワイヤの上方で且つ該第1のボンディングワイヤと間隔をおくように互いに交差して形成されている。
【0011】
本発明に係る第1の半導体集積回路装置によると、半導体集積回路と第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤの上方で半導体集積回路と第2の配線とを接続する第2のボンディングワイヤ同士が交差している。このため、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。
【0012】
本発明に係る第2の半導体集積回路装置は、基板の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップと、基板の上に形成され、半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線と、半導体集積回路と第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、基板の上に形成された複数の第2の配線と、第1のボンディングワイヤの両側に該第1のボンディングワイヤと間隔をおくように形成され、半導体集積回路と複数の第2の配線のうちのいずれかとをそれぞれ接続する第2のボンディングワイヤとを備え、第2のボンディングワイヤは、第1のボンディングワイヤよりも上方で且つ該第1のボンディングワイヤと並行して形成されている。
【0013】
本発明の第2の半導体集積回路装置によると、半導体集積回路と第2の配線とを接続する第2のボンディングワイヤは、半導体集積回路と第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤよりも上方で且つ該第1のボンディングワイヤと並行して形成されている。このため、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。
【0014】
本発明に係る第2の半導体集積回路装置は、第1のボンディングワイヤの両側に該第1のボンディングワイヤと間隔をおくように形成され、半導体集積回路と複数の第2の配線のうちのいずれかとをそれぞれ接続する第3のボンディングワイヤをさらに備え、第2のボンディングワイヤは、第1のボンディングワイヤと第3のボンディングワイヤとの間に形成され、第3のボンディングワイヤよりも上方で且つ該第3のボンディングワイヤと並行して形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る第3の半導体集積回路装置は、基板の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップと、基板の上に形成され、半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線と、半導体集積回路と第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、半導体集積回路と接続され且つ第1のボンディングワイヤの上を跨ぐように形成された第2のボンディングワイヤとを備えている。
【0016】
本発明に係る第3の半導体集積回路装置によると、半導体集積回路と第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、半導体集積回路と接続され且つ第1のボンディングワイヤの上を跨ぐように形成された第2のボンディングワイヤとを備えている。このため、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。
【0017】
本発明に係る第1の半導体集積回路装置、第2の半導体集積回路装置及び第3の半導体集積回路装置において、第2のボンディングワイヤは、グランド配線であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る第1の半導体集積回路装置、第2の半導体集積回路装置及び第3の半導体集積回路装置において、第2のボンディングワイヤは、電源配線であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る第2の半導体集積回路装置において、第3のボンディングワイヤは、グランド配線であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る第2の半導体集積回路装置において、第3のボンディングワイヤは、電源配線であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る第1の半導体集積回路装置、第2の半導体集積回路装置及び第3の半導体集積回路装置において、半導体集積回路と第1のボンディングワイヤと第1の配線とは電気的に導通し、第1のボンディングワイヤは、第1の配線に半導体集積回路が処理する信号を伝送することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る半導体集積回路装置によると、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の一変形例に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の一変形例に係る半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図8】第1の従来例の半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【図9】第2の従来例の半導体集積回路装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置について図1〜図3を参照しながら説明する。図1に示すように、実装基板10の上に、信号用配線(第1の配線)1が形成され、信号用配線1の両側に該信号用配線1と接触しないようにグランド用配線(第2の配線)2が形成されている。また、実装基板10の主面上には、半導体集積回路が形成された半導体チップ11が実装されている。半導体チップ11には信号用パッド3が形成され、信号用パッド3の周辺には該信号用パッド3と接触しないように第1のグランド用パッド4及び第2のグランド用パッド5がそれぞれ形成されている。また、実装基板10の上には、信号用配線1と信号用パッド3とを接続するように信号用ボンディングワイヤ(第1のボンディングワイヤ)6が形成されている。さらに、第1のグランド用パッド4及び第2のグランド用パッド5とグランド用配線2とをそれぞれ接続するように第1のグランド用ボンディングワイヤ7及び第2のグランド用ボンディングワイヤ(第2のボンディングワイヤ)8がそれぞれ形成されている。ここで、第2のグランド用ボンディングワイヤ8は2本形成され、これらは信号用ボンディングワイヤ6の上で交差するように形成されている。この2本の第2のグランド用ボンディングワイヤ8は互いにショートしても構わない。また、グランド用配線2、第1のグランド用パッド4、第2のグランド用パッド5、第1のグランド用ボンディングワイヤ7及び第2のグランド用ボンディングワイヤ8はそれぞれグランド用でなく電源用であっても構わない。なお、グランド用と電源用との両方が形成されていても構わない。また、グランド用及び電源用のように異なる電位のものを用いる場合は、これらを互いにショートさせてはならない。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。図1に示すグランド線(グランド用配線2、第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7)は、それぞれ信号線(信号用配線1、信号用パッド3及び信号用ボンディングワイヤ6)からのクロストークノイズを抑制するために設けられており、これはクロストークノイズに対する一般的な対策手段となっている。これにより、信号線から放射されるノイズがグランド線において多く吸収されるため、周囲の信号線にノイズが伝播すること(クロストーク)を抑制できる。
【0026】
しかしながら、これだけでは横方向(x、y方向)のクロストークノイズの抑制は可能であるが、高さ方向(z方向)から回り込むクロストークノイズを十分に抑制できない。さらに、半導体集積回路装置から放射されるノイズ及び他の装置から半導体集積回路装置が受けるノイズに対しての抑制も十分ではない(一般に、装置から放射されるノイズ及び装置が受けるノイズに対する耐性をまとめてEMCと呼ぶ。)。
【0027】
そこで、本実施形態では、信号用ボンディングワイヤ6の上方で交差するように第2のグランド用ボンディングワイヤ8が設けられている。これにより、信号用ボンディングワイヤ6から高さ方向(z方向)に放出される不要な電磁波、並びに周辺の信号線及び他の装置から受ける不要な電磁波を第2のグランド用ボンディングワイヤ8が吸収することができる。その結果、クロストークノイズを抑制することができ、EMCを強化することもできる。さらに、信号用ボンディングワイヤ6自身のインピーダンス(自己インピーダンス)を低減する効果もある。また、第1の実施形態では、2本のグランド線を追加するのみであるため、小型化に有利である。
【0028】
次に、本実施形態と図8に示した第1の従来例との特性の差について説明する。まずクロストークノイズを検証するために、本実施形態及び第1の従来例における図1及び図8に示す構成の近辺の同一の箇所にそれぞれ1本の信号線を追加し、該信号線と信号用ボンディングワイヤ6、103との間の干渉量を比較する。第1の従来例において、干渉量は−35.5dB/1GHzであったのに対し、本実施形態においては、−41.6dB/1GHzであった。さらに高周波側で確認すると、第1の従来例において、干渉量は−27.2dB/5GHzであったのに対し、本実施形態においては、−32.9dB/5GHzであった。これより、本実施形態のクロストークノイズの抑制における有効性が確認できる。次に、EMCを検証するために、本実施形態及び第1の従来例における信号用ボンディングワイヤ6、103の直上に、所定の距離を離して信号線を追加し、該信号線と信号用ボンディングワイヤ6、103との間の干渉量を確認する。第1の従来例においては、干渉量は−34.7dB/1GHzであったのに対し、本実施形態においては、−50.7dB/1GHzであった。さらに高周波側で確認すると、第1の従来例において、干渉量は−30.7dB/5GHzであったのに対し、本実施形態においては、−47.0dB/5GHzであった。これより、本実施形態のEMCの強化における有効性が確認できる。
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置によると、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。
【0030】
なお、第1の実施形態では、2本の第2のグランド用ボンディングワイヤ8が設けられているが、効果を増大させるために2本よりも多く設けられてもよい。例えば、第1の実施形態の第1変形例として図2に示すように、4本の第2のグランド用ボンディングワイヤ8が設けられてもよい。信号用ボンディングワイヤ6の上に複数本の第2のグランド用ボンディングワイヤ8を設けることにより、高さ方向(z方向)へ伝播する不要な電磁波を抑制することが可能となる。
【0031】
なお、第1の実施形態では、第2のグランド用パッド5、第2のグランド用ボンディングワイヤ8がそれぞれ2つずつ設けられているが、それぞれ少なくとも1つずつ設ければ効果を発揮する。
【0032】
第1の実施形態では、第1のグランド用パッド4と第2のグランド用パッド5とが別々に設けられているが、第1の実施形態の第2変形例として図3に示すように、それらを第3のグランド用パッド9のように同一のパッドとしても構わない。
【0033】
第1の実施形態では、一般的なクロストークノイズ対策として第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7が設けられているが、高さ方向(z方向)のみの不要な電磁波を抑制したい場合には、第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7を形成しなくても構わない。
【0034】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置について図4及び図5を参照しながら説明する。図4に示すように、実装基板10の上に、信号用配線(第1の配線)1が形成され、信号用配線1の両側に該信号用配線1に接触しないようにグランド用配線(第2の配線)2が形成されている。また、実装基板10の主面上には、半導体集積回路が形成されて半導体チップ11が実装されている。半導体チップ11には、信号用パッド3が形成され、信号用パッド3の周辺には該信号用パッド3と接触しないように第1のグランド用パッド4及び第2のグランド用パッド5が形成されている。また、実装基板10の上には、信号用配線1と信号用パッド3とを接続するように信号用ボンディングワイヤ(第1のボンディングワイヤ)6が形成されている。さらに、第1のグランド用パッド4及び第2のグランド用パッド5とグランド用配線2とをそれぞれ接続するように第1のグランド用ボンディングワイヤ(第3のボンディングワイヤ)7及び第2のグランド用ボンディングワイヤ(第2のボンディングワイヤ)8がそれぞれ形成されている。ここで、第2のグランド用ボンディングワイヤ8は2本設けられており、これらは信号用ボンディングワイヤ6とそれぞれ異なる第1のグランド用ボンディングワイヤ7との間に形成されている。また、第2のグランド用ボンディングワイヤ8は、信号用ボンディングワイヤ6及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7よりも上方で且つこれらと並行するように形成されている。すなわち、第2のグランド用ボンディングワイヤ8、信号用ボンディングワイヤ6及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7において、同一のy座標の位置における高さ(z方向のベクトルの大きさ)を比較すると、第2のグランド用ボンディングワイヤ8が最も高い。なお、グランド用配線2、第1のグランド用パッド4、第2のグランド用パッド5、第1のグランド用ボンディングワイヤ7及び第2のグランド用ボンディングワイヤ8はそれぞれグランド用でなく電源用であっても構わない。なお、グランド用と電源用との両方が形成されていても構わない。また、グランド用及び電源用のように異なる電位のものを用いる場合は、これらを互いにショートさせてはならない。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。横方向(x、y方向)におけるクロストークノイズ等に対する作用については、第1の実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0036】
本実施形態では、第2のグランド用ボンディングワイヤ8が信号用ボンディングワイヤ6と第1のグランド用ボンディングワイヤ7との間に形成され、且つ、信号用ボンディングワイヤ6及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7よりも高さ方向(z方向)に高い位置に形成されている。これにより、信号用ボンディングワイヤ6から高さ方向(z方向)に放出される不要な電磁波、並びに周辺の信号線及び他の装置から受ける不要な電磁波を、信号用ボンディングワイヤ6よりも高い位置にある第2のグランド用ボンディングワイヤ8が吸収することができる。その結果、クロストークノイズを抑制することができ、EMCを強化することもできる。さらに、信号用ボンディングワイヤ6自体のインピーダンス(自己インピーダンス)を低減する効果もある。また、第2実施形態では、2本のグランド線を追加するのみであるため、小型化に有利である。
【0037】
次に、本実施形態と図8に示した第1の従来例との特性の差について説明する。まずクロストークノイズを検証するために、本実施形態及び第1の従来例における図4及び図8に示す構成の近辺の同一の箇所にそれぞれ1本ずつの信号線を追加し、該信号線と信号用ボンディングワイヤ6、103との干渉量を比較する。第1の従来例においては、干渉量は−35.5dB/1GHzであったのに対し、本実施形態においては、−42.0dB/1GHzであった。さらに高周波側で確認すると、第1の従来例において、干渉量は−27.2dB/5GHzであったのに対し、本実施形態においては、−33.2dB/5GHzであった。これより本実施形態のクロストークノイズの抑制における有効性が確認できる。次に、EMCを検証するために、本実施形態及び第1の従来例における信号用ボンディングワイヤ6、103の直上に所定の距離を離してそれぞれ信号線を追加し、該信号線と信号用ボンディングワイヤ6、103との間の干渉量を確認する。第1の従来例において、干渉量は−34.7dB/1GHzであったのに対し、本実施形態においては、−50.4dB/1GHzであった。さらに高周波側で確認すると、第1の従来例において、干渉量は−30.7dB/5GHzであったのに対し、本実施形態においては、−46.0dB/5GHzであった。これより、本実施形態のEMCの強化における有効性が確認できる。
【0038】
本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置によると、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。また、第1の実施形態の結果と比較すると、クロストークノイズの抑制に関しては第2の実施形態の方が効果が大きく、EMCの強化に関しては第1の実施形態の方が効果が大きいことが確認できる。これより、用途に応じての使い分けが可能であり、また、両方の構造を併せて用いてもよい。
【0039】
なお、第2の実施形態では、2本の第2のグランド用ボンディングワイヤ8が設けられているが、効果を増大させるために第2のグランド用ボンディングワイヤ8が2本よりも多く設けられてもよく、それらの高さ方向(z方向)の高さがそれぞれ異なるように設けられてもよい。
【0040】
第2の実施形態では、第1のグランド用ボンディングワイヤ7と第2のグランド用ボンディングワイヤ8とが横方向(x、y方向)に離間して設けられているが、横方向に離間せずに高さ方向(z方向)に重なるように設けられてもよい。
【0041】
第2の実施形態では、第2のグランド用パッド5及び第2のグランド用ボンディングワイヤ8がそれぞれ2つずつ設けられているが、少なくとも1つずつ設けられれば効果を発揮する。
【0042】
第2の実施形態では、第1のグランド用パッド4と第2のグランド用パッド5とが別々に設けられているが、第2の実施形態の一変形例として図5に示すように、それらを第3のグランド用パッド9のように同一のパッドとしても構わない。
【0043】
第2の実施形態では、一般的なクロストークノイズの対策として第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7が設けられているが、高さ方向(z方向)のみの不要な電磁波を抑制したい場合には、第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7は必ずしも必要ではない。
【0044】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態に係る半導体集積回路装置について図6及び図7を参照しながら説明する。図6に示すように、実装基板10の上に、信号用配線(第1の配線)1が形成され、信号用配線1の両側に該信号用配線1と接触しないようにグランド用配線(第2の配線)2が形成されている。また、実装基板10の主面上には、半導体集積回路が形成された半導体チップ11が実装されている。半導体チップ11には、信号用パッド3が形成され、信号用パッド3の周辺には該信号用パッド3と接触しないように第1のグランド用パッド4が形成されている。第1のグランド用パッド4の側方における信号用パッド3と反対側には、第1のグランド用パッド4と接触しないように第2のグランド用パッド5が2つ形成されている。また、実装基板10の上には、信号用配線1と信号用パッド3とを接続するように信号用ボンディングワイヤ(第1のボンディングワイヤ)6が形成されている。さらに、第1のグランド用パッド4とグランド用配線2とを接続するように第1のグランド用ボンディングワイヤ7が形成されている。2つの第2のグランド用パッド5同士を接続するように第2のグランド用ボンディングワイヤ(第2のボンディングワイヤ)8が形成されている。ここで、第2のグランド用ボンディングワイヤ8は、信号用ボンディングワイヤ6及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7の上を跨ぐように形成されている。第2のグランド用ボンディングワイヤ8は、第1のグランド用ボンディングワイヤ7とショートしても構わない。また、グランド用配線2、第1のグランド用パッド4、第2のグランド用パッド5、第1のグランド用ボンディングワイヤ7及び第2のグランド用ボンディングワイヤ8はそれぞれグランド用でなく電源用であっても構わない。なお、グランド用と電源用との両方が形成されていても構わない。また、グランド用及び電源用のように異なる電位のものを用いる場合は、これらを互いにショートさせてはならない。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。横方向(x、y方向)におけるクロストークノイズ等に対する作用については、第1の実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0046】
本実施形態では、第2のグランド用ボンディングワイヤ8が信号用ボンディングワイヤ6及び第1のグランド用ボンディングパッド7の上を跨ぐように形成されている。不要な電磁波はインピーダンスの異なる物質との接合面において多く放射されるため、半導体集積回路11と信号用ボンディングワイヤ6との接合面において不要な電磁波が多く放射される。その不要な電磁波を第2のグランド用ボンディングワイヤ8が吸収することができる。また、第3の実施形態では、1本のグランド線を追加するのみであるため、小型化に有利である。
【0047】
次に、本実施形態と図8に示した第1の従来例との特性の差について説明する。まずクロストークノイズを検証するために、本実施形態及び第1の従来例における図6及び図8に示す構成の近辺の同一の箇所にそれぞれ1本ずつ信号線を追加し、該信号線と信号用ボンディングワイヤ6、103との間の干渉量を比較する。第1の従来例において、干渉量は−35.5dB/1GHzであったのに対し、本実施形態においては、−36.0dB/1GHzであった。さらに高周波側で確認すると、第1の従来例において、干渉量は−27.2dB/5GHzであったのに対し、本実施形態においては、−28.5dB/5GHzであった。これより、本実施形態のクロストークノイズの抑制における有効性が確認できる。次に、EMCを検証するために、本実施形態及び第1の従来例における構成の信号用ボンディングワイヤ6、103の直上に所定の距離を離して信号線を追加し、該信号線と信号用ボンディングワイヤ6、103との間の干渉量を確認する。第1の従来例において、干渉量は−34.7dB/1GHzであったのに対し、本実施形態においては、−35.1dB/1GHzであった。さらに高周波側で確認すると、第1の従来例において、干渉量は−30.7dB/5GHzであったのに対し、本実施形態においては、−31.3dB/5GHzであった。これより、本実施形態のEMCの強化における有効性が確認できる。
【0048】
本発明の第3の実施形態に係る半導体集積回路装置によると、クロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とする。また、本実施形態は第1の実施形態及び第2の実施形態と比較すると効果は小さいが、半導体集積回路装置の設計スペースの問題により、ボンディングワイヤ及び配線を配置するスペースが確保できない場合に用いることが可能である。
【0049】
なお、第3の実施形態では、1本の第2のグランド用ボンディングワイヤ8が設けられているが、効果を増大させるために第2のグランド用ボンディングワイヤ8を2本以上設けてもよく、それらの高さ方向(z方向)の高さをそれぞれ異なるように設けてもよい。
【0050】
第3の実施形態では、第1のグランド用パッド4と第2のグランド用パッド5とが別々に設けられているが、第3の実施形態の一変形例として図7に示すように、それらを第3のグランド用パッド9のように同一のパッドとしても構わない。
【0051】
第3の実施形態では、一般的なクロストークノイズの対策としての第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7が設けられているが、半導体集積回路11と信号用ボンディングワイヤ6との接合面からの不要な電磁波の放射のみを抑制したい場合には、第1のグランド用パッド4及び第1のグランド用ボンディングワイヤ7は必ずしも必要ではない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明はクロストークノイズの抑制及びEMCの強化ができ、且つ、クロストークノイズの抑制等に必要なスペースを縮小して装置の小型化を可能とし、特に、高周波信号を伝送する配線を備える半導体集積回路装置等に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 信号用配線(第1の配線)
2 グランド用配線(第2の配線)
3 信号用パッド
4 第1のグランド用パッド
5 第2のグランド用パッド
6 信号用ボンディングワイヤ(第1のボンディングワイヤ)
7 第1のグランド用ボンディングワイヤ
8 第2のグランド用ボンディングワイヤ(第2のボンディングワイヤ)
9 第3のグランド用パッド
10 実装基板
11 半導体チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップと、
前記基板の上に形成され、前記半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線と、
前記半導体集積回路と前記第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、
前記基板の上に形成された複数の第2の配線と、
前記半導体集積回路と前記複数の第2の配線のうちのいずれかとをそれぞれ接続する複数の第2のボンディングワイヤとを備え、
前記複数の第2のボンディングワイヤは、前記第1のボンディングワイヤの上方で且つ該第1のボンディングワイヤと間隔をおくように互いに交差して形成されていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
基板の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップと、
前記基板の上に形成され、前記半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線と、
前記半導体集積回路と前記第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、
前記基板の上に形成された複数の第2の配線と、
前記第1のボンディングワイヤの両側に該第1のボンディングワイヤと間隔をおくように形成され、前記半導体集積回路と前記複数の第2の配線のうちのいずれかとをそれぞれ接続する第2のボンディングワイヤとを備え、
前記第2のボンディングワイヤは、前記第1のボンディングワイヤよりも上方で且つ該第1のボンディングワイヤと並行して形成されていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記第1のボンディングワイヤの両側に該第1のボンディングワイヤと間隔をおくように形成され、前記半導体集積回路と前記複数の第2の配線のうちのいずれかとをそれぞれ接続する第3のボンディングワイヤをさらに備え、
前記第2のボンディングワイヤは、前記第1のボンディングワイヤと前記第3のボンディングワイヤとの間に形成され、前記第3のボンディングワイヤよりも上方で且つ該第3のボンディングワイヤと並行して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
基板の上に保持され、半導体集積回路を含む半導体チップと、
前記基板の上に形成され、前記半導体集積回路が処理する信号を伝送する第1の配線と、
前記半導体集積回路と前記第1の配線とを接続する第1のボンディングワイヤと、
前記半導体集積回路と接続され且つ前記第1のボンディングワイヤの上を跨ぐように形成された第2のボンディングワイヤとを備えていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記第2のボンディングワイヤは、グランド配線であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記第2のボンディングワイヤは、電源配線であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
前記第3のボンディングワイヤは、グランド配線であることを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項8】
前記第3のボンディングワイヤは、電源配線であることを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項9】
前記半導体集積回路と前記第1のボンディングワイヤと前記第1の配線とは電気的に導通し、
前記第1のボンディングワイヤは、前記第1の配線に前記半導体集積回路が処理する信号を伝送することを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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