説明

半径方向に拡張可能なセンタリング支持部材を有する薬剤送達カテーテル

患者の身体管腔の壁の注射部位に薬剤を送達するカテーテル(10)であって、その内部にニードル(13)をスライド自在に収容しているニードル挿通管腔(12)を有した細長いシャフト(11)と、折り畳まれた状態と半径方向に拡張した状態とを取る、遠位側のシャフト部分上にある拡張可能な部材(15)とを備える。半径方向に拡張した状態においては、前記拡張可能な部材は前記身体管腔の壁から間隔を開けて配置された位置に前記シャフトを支持し、前記ニードルは、延出した状態において、前記拡張可能な部材の一部が前記シャフトのポート部分の位置を前記身体管腔の内部で維持するときに前記身体管腔の壁から間隔を開けて配置されたポート(14)を通り、スライドして前記ニードル挿通管腔を出る。前記拡張可能な部材は、典型的に、開放した壁、螺旋状、あるいは切れ込みのある構造を有し、前記拡張可能な部材に沿って潅流経路をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置の分野に関し、より詳しくは、冠状性あるいは末梢性の血管系への薬剤送達を含む、診断上のあるいは治療上の手技を行うべく患者の身体管腔内に挿入するように構成された、ニードルカテーテルあるいは他の細長い装置のようなカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管系の様々な部分への治療用薬剤の送達は、血管系の疾患を治療する効率的な方法であることが示されてきた。様々な薬剤を送達することができるが、この薬剤には抗増殖性、抗炎症性、抗新生物性、抗血小板性、抗凝固性、抗フィブリン剤、抗血性、細胞分裂阻止性、抗生物質、抗アレルギー性物質および抗酸化性の化合物が含まれる。血管の病んでいる部分を治療するために、これらの薬剤は、病んでいる部分に隣接する血管壁の内部に、および/またはその血管の周囲の空間内に直接送達することができる。間葉系幹細胞の送達といった血管再生療法は、冠状血管を取り囲んでいる組織のような血管系のある部分への生物学的材料ボーラスの送達を必要とする。局所的な送達は、全身系への送達とは対照的に、全身系への投与に比較して全体的なレベルがより低い薬剤を投与するにもかかわらず特定の部位に集中させるという点において好ましい治療方法である。その結果、局所的な送達は、副作用をより少なくしつつ、より有効な結果を達成する。
【0003】
血管系の病んでいる領域への経皮的な薬剤送達のために、様々な方法および装置が提案されてきたが、そのなかには所望の薬剤を組織に送達するためにカテーテルから出て血管壁の内部に向かうように構成されたニードルを有したカテーテルが含まれる。患者の曲がりくねった末端の血管系内に薬剤送達カテーテルの末端を適切に配置するためには、薬剤送達のために必要な構造部品をカテーテルの操作可能な末端に有するにもかかわらず、カテーテルの末端部分は好ましくは小さくかつ柔軟でなければならない。1つの問題点は、血管の内部に配置されたカテーテルから血管の壁への薬剤の有効かつ正確な送達のために、特定の所望位置において血管壁を正確に穿通することにあった。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、患者の身体管腔の壁の注射部位に薬剤を送達するべく構成されるとともに、所望の注射部位への薬剤の送達をきわめて容易にする拡張可能な支持部材を備えたカテーテルに向けられている。
【0005】
本発明のカテーテルは、全般的に、近位端、遠位端、その内部にニードルをスライド自在に収容しているニードル挿通管腔、前記ニードルの横方向の出口のために遠位側シャフト部分の側壁にあって前記ニードルが後退した(格納された)状態と延出した状態を取れるようにする少なくとも一つのニードル挿通ポート、および遠位側シャフト部分上にあって折り畳まれた状態および半径方向に拡張した状態を取る拡張可能部材を有した細長いシャフトを備えている。半径方向に拡張した状態では、拡張可能部材が身体管腔の壁から間隔を開けて配置された状態にシャフトを支持するとともに、この拡張可能部材の一部がシャフトのポート部分(すなわち、ニードルがカテーテルシャフトを出るシャフトの部分)の身体管腔内における位置を維持するので、延出した状態にあるニードルは身体管腔の壁から間隔を開けて配置されたポートを通ってニードル挿通管腔からスライドして出る。好ましい実施形態においては、拡張可能部材は、患者の身体管腔内における流体の灌(かん)流をもたらすように構成される(すなわち、身体管腔の内部の血液が拡張状態にある拡張可能部材を通り越して流れるようにする)。拡張可能部材は、典型的に、開放した壁、螺旋形、あるいは切れ込みのある構造を有して、この拡張可能な部材に沿った灌流経路をもたらす。
【0006】
この拡張可能部材は、通常、ポート側とは反対側のシャフトの側壁においてポートの半径方向位置にあって、拡張すると身体管腔の壁に接触する部分を有している。この拡張可能部材は、好ましくは、シャフトの外側表面の周りの全体にかつそれに沿って延びるとともに拡張した状態においてシャフトのポート部分を身体管腔の内部で実質的にセンタリングする部分を有している。
【0007】
本発明によると、ポートに対して実質的に反対側の位置でシャフトを支持することにより、この拡張可能部材は、好ましくは、薬剤送達手技の間にニードルを血管壁に接触させて押し込むときに、カテーテル本体が注射部位から離れるように押動される傾向を防止しあるいは抑制する。詳細に述べると、ニードルが血管壁に接触するとカテーテル本体にに作用する反作用荷重が生じ、これにより(上記が無い場合には)カテーテルシャフトが血管壁から離れるように動かされ、血管の穿刺(puncture)をより困難なものにする。このような反作用および結果として生じるカテーテルシャフトの移動は、いくつかの問題の原因となる。例えば、それが血管壁の「テント状の張り出し(tenting)」あるいは膨らみを生じさせて、ニードルの不正確な穿通深さおよび軸線方向あるいは半径方向のニードルの位置の不正確さにつながる。さらに、これに対して医師が過剰に対応し、ニードルを必要以上の力で前進させるとパーフォレーション(perforation)を生じさせる可能性がある。したがって、拡張可能部材のうち、ポートの半径方向位置にあってかつシャフトのポート側とは反対にある部分が、ニードルの延出によって生じるこの反力に対抗し、それによって患者の血管内における遠位側シャフト部分の位置を維持する。本発明の一つの態様は、拡張可能な構造の全体にわたって様々なレベルの支持をもたらすが、一つの実施形態においては、実質的に注射部位の反対側に最大の支持をもたらすように構成された拡張可能部材に向けられている。本発明の別の態様は、ニードルが後退したあるいは延出した状態にあるときに、ニードルのシャフトに対する回転方向の整列(位置決め)を維持するように構成された回転方向整列(位置決め)構造を有するカテーテルに向けられている。
【0008】
本発明のカテーテルは、治療部位に薬剤を送達する方法において、患者の身体管腔の内部で所望の治療部位へと経皮的に追従するように構成されている。治療部位に達すると、拡張可能部材は、標的組織へとニードルが前進する間に患者の身体管腔内の所望の位置にカテーテルを支持するように拡張し、本発明のカテーテルが、改良された使いやすさおよび患者の所望の位置への薬剤の有効かつ正確な送達をもたらすようにする。拡張可能部材は、好ましくは、患者の身体管腔内においてカテーテルシャフトを実質的にセンタリングして、ニードルが身体管腔の壁へと所望の迎え角でシャフトおよび傾斜部分を出るようにしつつ、ニードル挿通ポートの反対側の位置でカテーテルを支持して、ニードルが患者の身体管腔の壁に接触して進入するときにカテーテルシャフトが注射部位から押動されて離れることがないようにする。本発明のこれらのおよび他の利点は、以下の詳細な説明および例示的な図面からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】患者の身体管腔内で膨張した状態にある螺旋状に延びる拡張可能バルーン部材を備えた、本発明の特徴を具現化した薬剤送達灌流カテーテルの部分破断立面図。
【図2】破断線2−2に沿った図1の横断面図。
【図3】破断線3−3に沿った図1の横断面図。
【図4】シャフトニードルシース管状部材をスライド自在に受け入れるように構成された管腔を有しているシャフトの管状部材の外側表面に沿ってバルーンが螺旋状となっているカテーテルの遠位側シャフト部分の他の実施形態の一部を破断して示す図。
【図5】一つの実施形態において螺旋状のバルーンを形成する、分割型バルーンの長手方向の断面図。
【図6】螺旋状のバルーンがシャフト上に同軸に取り付けられている他の実施例を示す図。
【図7】拡張可能な部材が、切れ込みのある部分および偏心した部分を有する変化する形状のバルーンである他の実施形態を示す図。
【図8】破断線8−8に沿った図7の横断面図。
【図9】破断線9−9に沿った図7の横断面図。
【図10】拡張可能部材が、自由な遠位端を具備した屈曲支柱と拡張しない溝部分とを有した、半径方向に自己拡張型の開放壁フレームである他の実施形態を示す図。
【図11】図10の破断線11−11に沿った横断面図。
【図12】図10の破断線12−12に沿った横断面図。
【図13】開放壁フレームが近位側スカート部分から遠位側スカート部分へと延びる拡張可能な支柱を有するとともに、開放壁フレームがシャフトのニードルシース管状部材上に取り付けられている他の実施形態を示す図。
【図14】図14は、シャフトニードルシース管状部材をスライド自在に受け入れるように構成された管腔を有するとともに、複数のニードル挿通開口を画成している壁を有しているシャフトの管状部材の外側表面上にフレームのスカート部分が取り付けられている他の実施形態を示す図。
【図15】図14の破断線15−15に沿った横断面図。
【図16】複数のニードル挿通開口を画成している螺旋状の溝付き壁を有したシャフト管状部材の遠位側部分の他の実施形態を示す図。
【図17】フレームの支柱がシャフトのポート側とは反対側のシャフト上においてより厚くなっている他の実施形態を示す図。
【図18A】フレームの支柱が、拡張した状態ではシャフトのポート側とは反対側のシャフト上において互いにより密集した間隔を開けて配置されている他の実施形態を示す図。
【図18B】図18Aのフレームを折り畳まれた状態で示す図。
【図19】フレームの支柱の厚みが遠位側に減少する他の実施形態を示す図 。
【図20】フレームの支柱が、シャフトのポート側においてその作動長さが短い他の実施形態を示す図。
【図21】シャフトが外側管状部材を有するとともに、拡張可能部材が、真直要素あるいはシャフト外側管状部材の遠位側部分にある第2管腔から流体を取り除くと、予め形作られた螺旋状あるいはジグザグ状の状態へと半径方向に拡張するように付勢されている外側管状部材の遠位側部分である他の実施形態を示す図。
【図22】図21の破断線22−22に沿った横断面図。
【図23】その内部にスライド自在に配設されたガイドワイヤによってそのシャフト外側管状部材が真っ直ぐな状態となっている、図21のカテーテルを示す図。
【図24】フレームの支柱が伸縮するように構成された曲線からなる部分を有している、他の実施形態の遠位側シャフト部分の長手方向断面図。
【図25】患者の身体管腔の曲がった部分にある図24のカテーテルを示す図。
【図26】フレームの軸線と実質的に平行な平面内で向きを変えるうねりを曲線からなる部分が有している他の実施形態の側面図。
【図27】伸縮するように構成されたフレーム支柱がシャフトの周りで螺旋状に延びる他の実施形態の遠位側シャフト部分の側面図。
【図28】自由な遠位端を具備した軸線方向に間隔を開けて配置された2つのフレームを有して血管解剖学的構造に適応するように構成された他の実施形態の側面図。
【図29】シャフトとこのシャフトの管腔内にスライド自在に配設されたニードルを備えるとともに、シャフトとニードルの嵌合面によって形成された回転方向整列構造を有し、ニードルの外側表面が溝を有している、本発明の特徴を具現化しているカテーテルを示す図。
【図30】図29の破断線30−30に沿った横断面図。
【図31】ニードルが外側突起を有している回転方向整列構造の他の実施形態の横断面図。
【図32】ニードルがその外周の一部に平坦な外側表面を有しており、シャフトの凹んだ壁によって形成されたシャフト内周の半径減少部分に接触することによってシャフト内におけるニードルの回転を止めるように構成されている回転方向整列構造の他の実施形態の横断面図。
【図33】シャフト内周の半径減少部分がシャフトの内側表面の平坦な部分である実施形態の横断面図。
【図34】シャフト内周の半径減少部分が、シャフトに挿入されてシャフトの内側表面に固着された拘束部材である実施形態の横断面図。
【図35】カテーテルのニードルシース管状部材の溝にニードル上の外側突出部材が拘束されている回転方向整列構造の他の実施形態を示す図。
【図36】外側突出部材のタブが、ニードルの外側表面に向かって半径方向内向きに曲がっている実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1にその要部破断立面図が示されている本発明の特徴を具現化した薬剤送達灌流カテーテル10は、全般的に、近位端と、遠位端と、中空ニードル13をその内部にスライド自在に収容しているニードル挿通管腔12と、ニードル13の横方向の出口のために遠位側シャフト部分の側壁にある少なくとも一つのニードル挿通ポート14と、遠位側シャフト部分上にある拡張可能部材15とを有した細長いカテーテルシャフト11を備えている。図1に示されている、患者の身体管腔30内にあるカテーテル10は、拡張可能部材15が拡張し、かつニードル13が少なくとも部分的に延出した状態となっている。このカテーテル10は、拡張可能部材15を折り畳むとともにニードル13の遠位端をシャフト11の内部に後退させた小さな輪郭形状で(図示せず)、患者の血管の内部に経皮的に導入されて前進し所望の位置にポート14を配置するように構成されている。次いで、この拡張可能部材15は、図1に示したように拡張状態へと拡張し、ニードルの遠位端はポート14からスライドして血管壁へと延出し、薬剤がニードルから組織(例えば、血管壁および/または血管の周囲の空間に)内に送達される。ニードルの先端は、拡張状態にある拡張可能部材の外側輪郭を越えて半径方向に延びるが、このカテーテルは、典型的に、例えば以下により詳しく述べるようにニードルストッパを設けることにより、ニードルがシャフトから限られた距離だけ延出するように構成されている。ニードル13の近位端にある近位側ハンドル17は、薬剤供給源(図示せず)に取り付けられるように構成されて、ニードル13の管腔を通ってニードル13の鋭い遠位側の先端へと薬剤を流すようになっている。このシャフトの近位端に固定された近位側アダプタ18は、ニードル挿通管腔12へのアクセスをもたらすとともに、図1の実施形態においては、サイドアームポート19を具備したY字アームアダプタを有し、膨張用流体供給源(図示せず)を取り付けてシャフトの膨張用管腔16と流体的に連通させ、拡張可能部材15を膨らませるように構成されている。カテーテルから延出したときにニードルの遠位端部分が屈曲しあるいは湾曲した形状を取るように付勢されている実施形態においては、近位側ハンドルは、ニードルをポート14から延出させることの容易さおよび信頼性を改善するべく、ニードル13の回転方向の方向付けを制御するように構成される。例えば、ニードルハンドルの遠位側部分は、アダプタ18と長手方向にスライド自在に接続されて、ハンドル、したがってニードル13の制御されない回転を防止するように構成することができる。加えて、ハンドルおよびアダプタ18は、ニードルシース管状部材21に対するニードル13の近位側および遠位側への移動を制限するとともに、選択的にそれらの分離を防止して、ニードルの延出および後退を制御するように構成することもできる。いくつかの実施形態においては、近位側アダプタ18はニードル挿通管腔12と連通する第2のサイドアームを有し、ニードル13の延出あるいは後退を妨げ得る管腔12内での塞栓および血液凝固を防止するために、溶液、例えばヘパリンで凝血防止された溶液による管腔12の洗浄および排出(すなわち、ニードル13の外径とその周りのシャフトの内径との間の環状空間からの排出)を可能とするように構成される。
【0011】
シャフト11は、そのニードル挿通管腔12およびポート14を画成するニードルシース(針鞘)管状部材21を有している。図1の実施形態においては、膨張用管腔16は、図1の破断線2−2に沿った横断面図を示している図2に最も良く示されているように、ニードルシース管状部材21の外側表面およびその内部のニードル挿通管腔12に沿って偏心して延びる外側管状部材22によって画成されている。しかしながら、例えば膨張用管腔16が少なくとも部分的にニードルシース管状部材21の壁の内側にあり若しくはそれよって画成されるときには、膨張用管腔16は、同軸な管腔あるいは共押出しされた2つの管腔の設計を含む様々な適切なシャフト設計によって設けることができる。外側管状部材22は、カテーテルシャフトの遠位端から近位側に離れたある位置へと遠位側に延びるとともに、その遠位端は拡張可能部材15の近位端に密封的に固定されて、膨張用管腔16がバルーンの膨張可能な内側部分20と流体的に連通し(図1のカテーテルの破断線3−3に沿った横断面図を示している図3を参照)、図1の実施形態における拡張可能部材15を膨張/収縮させるようになっている。特に、(膨張用管腔が同軸なチューブ間の環状空間である)同軸な管腔設計は、カテーテルを回転させるときのカテーテルの回転方向の方向付けの制御を容易にするとともに、比較的速い膨張/収縮をもたらす。一つの実施形態においては、拡張可能部材15の近位端の外側表面は、外側管状部材22の内側表面に密封的に固着される。一つの実施形態において、外側管状部材22は、拡張可能部材15の近位端の密封部分から少なくともいくらかの距離だけ(好ましくは約30cm以上)近位側へとニードルシース管状部材21の周りに螺旋状に延びて、患者の曲がりくねった血管解剖学的構造内にある細長いカテーテルシャフト11に改良されたトルク(回転方向の方向付け)の制御をもたらす。
【0012】
ニードルシース管状部材21は、典型的に、閉じた遠位端とコイル状のワイヤチップ23を具備した柔軟な遠位側先端部材25とを有し、カテーテル10の患者の身体管腔30を通しての非外傷的な前進およびカテーテルを位置決めする間における所望の血管分岐の選択を容易にするように構成されている。このように図1の実施形態のカテーテル10は固定ワイヤタイプの装置であるが、これに代えて本発明のカテーテルは以下に詳述するように、患者の血管を通って追従するためにシャフトの管腔内にガイドワイヤをスライド自在に受け入れるように(オーバーザワイヤ)構成することもできる。固定ワイヤの先端部は、様々に適切な従来のガイドワイヤのような構造を用いることができるとともに、固定ワイヤの先端部にはポリマージャケットおよび/またはコーティングを付加することができる。部材25/コイル状先端部23は、カテーテルを回転させて前進させるときに部材25が分岐を選択する能力を助長するために、屈曲させて成形しあるいは挿入する前にユーザによって曲げられ、部材25の曲がった遠位端は所望の血管分岐の管腔壁に係合する。ポート14の遠位側に隣接しているニードルシース管状部材21内の傾斜24は、ニードル挿通管腔を閉塞するとともに、シャフト11の側壁を通してのニードル13の横方向の案内を容易にする。図示された実施形態の傾斜24は、カテーテルの柔軟な遠位側先端コイル23に固定された遠位端を有している柔軟な遠位側先端部材25の近位端によって形成されているが、それに代えて、柔軟な遠位側先端部材25の近位側にある傾斜部材によって設けることもできる。ポート14を通ってシャフト11から延出するニードルの遠位側部分は、好ましくは、シャフト11の軸線に対して垂直な横断平面に対するある角度で方向付けされるが、それに代えて、延出したニードルの遠位側部分の角度が必要に応じてシャフトの軸線に対して実質的に直角をなすようにカテーテルおよびニードルを構成することができる。ニードルの遠位側部分における予め設定された曲げ角、曲率半径、および/または湾曲の角度といったファクターに応じて、カテーテルは、ニードルが身体管腔30の壁に延びるときの設計によってニードルの迎え角の制御を容易にする。目下のところ好ましい一つの実施形態においては、傾斜およびポートの機械的な構造の結果として生じる問題点のために、また90度を超える迎え角で血管の壁を直接的に貫通するのではなく血管の壁に接触してニードルが曲がりあるいは変形しようとする傾向のために、ニードルの迎え角は(シャフトの遠位側の先端部における軸線に対して)90度を超えない。ニードルの始めの迎え角は、主に傾斜24およびポート14の状態によって決まる。ニードルがその遠位端に予め設定された湾曲あるいは屈曲を有していない場合、ニードルが延出する間におけるニードルの迎え角は比較的一定なままである。ニードルがその遠位端に予め設定された屈曲/湾曲を有している場合は、その予め設定された屈曲/湾曲部分が傾斜24およびポート14に係合すると、ニードルのその部分がポート14から出るまでニードルの迎え角は変化する。いくつかの実施形態においては、ニードルがポート14を容易に出ることを保証するために、ニードルの遠位端の少なくとも短い部分に少なくともいくらかの量の湾曲を付けることが望ましい。
【0013】
図4に示した他の実施形態においては、シャフト11が有する内側管状部材40は、シャフトニードルシース管状部材21をスライド自在に受け入れるように構成されるとともに内側管状部材40の遠位端にある遠位側の先端ポート43まで延びる管腔41を具備している。図4においては、その内部のニードルシース管状部材21の図示を容易にするために、内側管状部材40および拡張可能部材15が断面図で示されているが、ニードルシース管状部材21のニードル挿通ポート14を通って少なくとも部分的に延出したニードル13が示されている。ニードルシース管状部材21は、患者の血管内でカテーテル10を前進させるためのガイドワイヤとして用いることができるし、および/または患者の血管内で所望の位置へとカテーテルを追従させるために別個のガイドワイヤ(図示せず)を用いるとともに、このガイドワイヤを内側管状部材管腔41から近位側にスライドさせて取り出し、図4に示したように内側管状部材の内部でニードルシース管状部材21を遠位側に前進させることによってニードルシース管状部材21と交換することもできる。図4の実施形態においては、内側管状部材40は、ニードルシース管状部材21の側壁にあるニードル挿通ポート14からニードルが延出するときにニードル13の横方向の出口となるように構成された、複数の側壁ポート43を有している。図4の実施形態においては、拡張可能部材15と流体的に連通する(図4には示されない)シャフト膨張用管腔は、内側管状部材40の外側で偏心してあるいは同軸に管腔41へと延びる外側管状部材によって、あるいは内側管状部材40の壁の内部に画成される第2の管腔によって設けることができる。内側管状部材40の管腔41は、迅速交換用としておよび/または全長にわたるオーバーザワイヤ管腔として構成することができるが、ニードル13/ニードルシース管状部材21のための別個のガイドワイヤを交換するためには全長にわたる管腔41であることが好ましい。迅速交換設計においては、シャフトの近位端から遠位側に間隔を開けて配置された、内側部材40の側壁にある近位側の迅速交換ワイヤポート(図示せず)は、ガイドワイヤおよび/またはニードルシース管状部材21が、近位側の迅速交換ポートと遠位側ポート42との間の管腔41の比較的短い長さの範囲内で延びるようにし、カテーテルを身体に挿入しあるいは取り除くときに血管内のある位置にガイドワイヤを保持するために患者の体外にあるワイヤの近位側の範囲を医師が掴むことができるようにする。近位側の迅速交換ポートは、それを設ける場合には、好ましくは、拡張可能部材15の近位端から近位側に間隔を開けて配置する。内側管状部材40の遠位端は、非外傷性の遠位側チップとなっている。典型的には、内側管状部材の端部に固定されたより小さいジュロメータ値のポリマー部材、あるいはそれに代えて、内側管状部材40の端部によって一体型の単一片ユニットとして形成された、様々に適切な遠位側の先端部構造を用いることができる。螺旋状のカット、アニーリング工程、その他といった、柔軟性を高める特徴を遠位側先端部分の設計に組み込むこともできる。
【0014】
拡張可能部材15は、シャフト11の外側表面(すなわち、図1の実施形態におけるニードルシース管状部材21の遠位側部分の外側表面、および図4の実施形態における内側管状部材40の遠位側部分の外側表面)の外周の周りにおよびそれに沿って延びていて、拡張した状態ではポート14におけるシャフトを身体管腔30の内部で実質的にセンタリングするとともに、ポート14の半径方向位置であってシャフト11のポート側29(図3を参照)とは反対側の側壁28上に、拡張した状態のときに身体管腔の壁に接触する部分27を有している。拡張した状態にある拡張可能部材15は、ポート14の位置におけるシャフトの外周の周りの身体管腔の壁から間隔を開けた位置にシャフト11を支持し(すなわち、ポート14を画成しているシャフトの部分は、身体管腔の壁から半径方向内側へと間隔を開けて配置される)、かつニードル13は、延出した状態においてはスライドしてポート14を通ってニードル挿通管腔12から出て、拡張可能部材がポート14におけるシャフトを支持しているときに身体管腔壁から間隔を開けて配置される。これにより、ニードル13が延出して身体管腔30の壁の注射部位に接触するときに、シャフトは支持されて注射部位から離れる反対方向に湾曲し、ニードルがニードルシース管状部材21に負荷する反力が最小化されおよび/または制御される。それとは対照的に、ニードルが組織に押圧されたときにニードルの反力が不利なカテーテルの湾曲を生じさせる場合は、医師によるニードルの貫通深さの制御が最適でない精度に帰結しうる。加えて、拡張可能部材15が身体管腔30内においてポート14を実質的にセンタリングすることにより、ポート14が身体管腔の壁の注射部位からある距離、典型的には身体管腔30の直径の半分より短い距離だけ間隔を開けて配置されるので、(例えば、拡張可能部材によるセンタリングなしの設計において必要とされる範囲および長さに対して、満たさなければならないニードルが延出する長さの範囲およびニードルが延長する量を減少させることによって)、ニードル13が身体管腔の壁に向かって延出するときに設計による最適な迎え角をカテーテル10がニードル13にもたらすことを容易にする。患者の血管内にいくらかの不規則さがあることが予想されるので、「実質的にセンタリングされる」という用語は、身体管腔30のその部分における不規則さおよび/または曲がりのために、ポート14におけるシャフト11が血管壁の一方の側より他方の側にいくらか近い位置にあることを含むものと理解されるべきである。しかしながら、ここでは理解されるべきことは、ニードル挿通ポート14を有しているシャフトの部分が、拡張した状態にある拡張可能部材15によってその外周の周りの身体管腔の壁から間隔を開けて配置され、かつ拡張可能部材は、身体管腔30が真っ直ぐな部分においてはポート14におけるシャフトが身体管腔30のほぼ中心に配置されるように構成されるということである。
【0015】
図1の実施形態においては、拡張可能部材15は螺旋状に延びるバルーンであり、シャフトニードル挿通ポート14はこのバルーンの螺旋状の巻き部分の間に配置されている。その結果、この螺旋状のバルーン15は、膨らんで身体管腔の壁に接触している螺旋状バルーン15の外側表面(および、その下側にあるシャフトの部分)に沿って身体管腔30の内部に画成される螺旋状の灌流経路に沿って、身体管腔30の内部の流体が灌流できるようにしている。注射手技の間に血流が灌流するようにしたことにより、本発明のカテーテル10は、治療のために必要な、最適で、かつ潜在的に延長され得る時間の範囲における、一つあるいはより多い治療部位への薬剤の安全かつ有効な送達を容易にする。加えて、この螺旋状バルーンは、好ましくはポート14に対するある位置においてシャフトに取り付けられ、ポート14とはほぼ反対側の位置で拡張して身体管腔壁に接触し、ニードル13が延出した状態でポート14から出て身体管腔30の壁にニードル13を延出させかつ後退させる間に、身体管腔内におけるシャフトの半径方向の位置を維持するようになっている。螺旋状バルーン15の近位端は、例えば熱溶着あるいは接着剤による接合によってシャフトに密封的に固着され、バルーン15の膨張/収縮のために膨張用管腔16と流体的に連通するようになっている。加えて、少なくとも螺旋状バルーンの遠位端が、シャフトニードルシース管状部材21の外側表面に接合される。バルーンの近位側および遠位側の接合された端部の間の、バルーン15の螺旋状に延びる中央部分の範囲の全部または一部は自由であり、あるいはシャフト11のその下側にある部分に同様に接合される。目下のところ好ましい1つの実施形態においては、身体管腔の内部でカテーテルが前進する間にバルーンのシャフト上の位置が移動しないことを確実にするためにその全体が接合されて、バルーンがポートから離れたままであり、かつ延出したニードルによって穴をあけられないようになっており、またバルーンがポートの反対側においてシャフトに所望の支持をもたらすことを確実にするようになっている。他の実施形態においては、バルーンの螺旋状に延びている中央の範囲は、ポート14の反対側でかつバルーンが隣接する位置においてシャフトに接合される。本明細書で用いられる「螺旋状に」という用語は、実質的に真っ直ぐに(例えば、意図的に誘起されてカテーテルの軸線の周りで螺旋を描きあるいは湾曲することなしに)延びる軸線方向に整列された部材とは対照的に、螺旋を描く、コイルあるいはばねに似た状態を概ね指すものと理解されるべきである。他の実施形態においては、バルーンは螺旋状というよりはむしろ波形である。
【0016】
螺旋状バルーン15は、ナイロンのようなポリアミド、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、コポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、その他を含む、カテーテルのバルーン構造に用いられる様々な従来のポリマー材料から形成することができる。一つの実施形態においては、この螺旋状バルーンは、この螺旋状バルーンを製造するための螺旋状バルーン成形型の内部に管状パリソンをブロー成形することによって形成され、その膨張の間にバルーンがシャフトに負荷する力(例えば、柔軟な遠位側のシャフト部分を螺旋状に変形させ得る力)を最小化するようになっている。螺旋状バルーンの成形型は、バルーンの近位側の端部に密封的に固着されるカテーテルのシャフト部分の直径に近い直径をバルーンの近位側の端部にもたらすように構成された近位側テーパ部分を有しており、かつ螺旋状バルーンの遠位側の端部はこの成形型によって同様にテーパ状にされるとともに、バルーンのブロー工程の一部あるいは2次工程において閉じることができる。他の実施形態においては、螺旋状バルーン15は筒状バルーンから形成され、この筒状バルーンは、近位側および遠位側のスカート部分と、概ね一様な円筒状の膨張可能範囲の両端上にある膨張可能なテーパ部分とを有しており、その遠位端がそれ自体に対して一体に閉じられていることを除いてはバルーンカテーテルの膨張バルーンに一般的に用いられるものであり、かつこのバルーンは遠位側シャフト部分に螺旋状に巻きつけられる。一様に円筒状な有効範囲をシャフトに沿って螺旋形とすることによって生じる、バルーンの密着した鋭いねじれまたは折り目を最小化するために、そのようなバルーンは、好ましくは、ウレタンまたはシリコーンを主成分とするポリマーのような比較的柔らかいポリマーから形成される。図5に示されている他の実施形態においては、螺旋状バルーンは、小径な膨張可能部分46とより大径な膨張可能部分47とが交互に連続している分割(セグメント化された)バルーン45によって形成され、より大きい直径の膨張可能部分47は小径な部分より大きい直径へと膨張して患者の身体管腔の壁に接触する。分割バルーン45がシャフト11の周りで螺旋形へと強制されると、バルーン本体の直径の変化は小さい輪郭の領域における歪の緩和に結びつき、一様に円筒状な有効範囲をシャフトの周りで螺旋形へと強制することに伴う問題を回避する。このことはバルーンに沿った鋭い縁部の形成の回避による血管の傷付きリスクを減少させ、かつねじれたバルーンに比較して改良されたより一様なシャフトのセンタリングをもたらす。一つの実施形態においては、より大径な部分47の長さはシャフト周りの1回転、より好ましくはシャフト周りの半回転を越えないものであり、バルーンの螺旋状の360度の回転には少なくとも小径部分46の一部分が含まれて所望の歪の軽減をもたらす。より大径な部分47の長さは、典型的に、小径部分46の長さと同等あるいはそれより長い。図5に示したように、バルーン45の遠位端は、カテーテルシャフト11に沿って螺旋状にバルーンを取り付ける前に、それ自体に対して一体に閉じられている。
【0017】
図6に示されている他の実施形態においては、螺旋状のバルーン15は、シャフト11に沿って円周方向に配置されたチューブであり、シャフトの長手方向の軸線に対して垂直な平面内においてシャフトの外周の周りの全体に延びる連続した壁を有している。このチューブは、密封的にシャフトに固着されている近位側および遠位側のスカート部分の間においては、膨張可能な(すなわち、接合されていない)螺旋状の部分49に隣接する螺旋状の経路48に沿ってその下側にあるシャフト部分に接合され、それによって螺旋状のバルーンが形成されている。図1の実施形態の螺旋状バルーン15の遠位端とは異なり、図6の螺旋状バルーン15の遠位側スカート部分は、シャフト11の外周の周りに同軸に密封的に固着されている。ニードル挿通ポート14は、バルーン15がその下側にあるシャフト部分(すなわち、ニードルシース管状部材21)に接合されている螺旋状の接合経路48に沿った領域で、バルーンおよびシャフトの壁を貫通して形成されている。バルーンの円周構造は、ある種の製造および性能上の利点をもたらす。
【0018】
図7に示されている他の実施形態においては、拡張可能部材15は変化する形状のバルーン50であり、シャフトニードルポート54から長手方向に(例えば、近位側に)間隔を開けて配置されてシャフト11の外周の周りで同軸に半径方向に拡張する第1の(例えば近位側の)部分51と、ニードルシース管状部材21にあるニードル挿通ポート14から離れて横方向に拡張する(図9を参照)偏心部分52と、ポート側29とは反対側(図9を参照)でシャフトの側壁28上にあって(カテーテルのニードル挿通ポートとして部分的に機能する)ポート54と、を有している。これにより、偏心部分52は、ニードル挿通ポート54の半径方向の位置でシャフト11のポート側29とは反対側のシャフトの側壁28上にある拡張可能部材15の一部であり、かつ第1の部分51は、拡張した状態ではポート54におけるシャフトの部分を身体管腔30内で実質的にセンタリングする。第1の部分51をバルーンの近位側の部分とするとともに偏心部分52をバルーンの遠位側の部分として示したが、それに代えて、ポート54における偏心部分を変化する形状のバルーン50の近位側の部分とし得ることはことは理解されるべきである。図6の実施形態と同様に、バルーンはシャフトの周りで円周方向に延びるチューブである(すなわち、シャフトの長手方向の軸線に対して垂直な平面内においてシャフトの外周の周りに完全に延びる連続壁を有している)。バルーン50は、その筒状の壁がシャフトの周りで円周方向に延びているので、カテーテルシャフトのニードル挿通ポート54を通ってニードル13を延出させかつ後退させるための出口を形成できるようにするために、その下側にあるシャフトに密封された部分53を有している。
【0019】
目下のところ好ましい実施形態においては、このバルーン50は、拡張したバルーンの外側表面に沿って一つあるいはより多くの灌流経路をもたらす、半径方向に拡張した構造を有した切れ込みのあるバルーンである。図7のカテーテルの破断線8−8および破断線9−9に沿った横断面図を示している図8および図9に最も良く示されているように、切れ込みあるバルーン50は、3つの出張り部とそれらの間にある3つの小さい外径の壁部分とを有しており、拡張したバルーンの外側表面に沿って円周方向に間隔を開けて配置された3つの灌流経路をもたらしている。この切れ込みのある形は、例えば、切れ込みのある形状の内側チャンバを有した成形型の内部でバルーンのパリソンをブロー成形することによって形成される。切れ込みのあるバルーンにおいて一般的に知られていているように、バルーンが実質的に円筒状の膨張形状となることを防止する、各出張り部の間のより小さい外径の壁部分に沿った補強用の壁のような構造が必要である。例えば、バルーンの壁の剛性を局所的に増加させるとともに膨張の間にバルーンの部分が拡張することを抑えるバンドを用いることができる。同様に、図示してはいないが、出張り部を形成するために、小さい外径の壁部分をその下側にあるシャフト部分に接合することができる。それに代えて、シャフトに沿った外側表面をそれぞれ有している別個の全般的に筒状のバルーン部分を、シャフトの外周の周りに間隔を開けて配置し、これらの別個のバルーン部分がそれぞれ出張り部を形成するようにすることができる。図7の実施形態においては、灌流をもたらすために、切れ込みのある形状は、バルーンの有効範囲の少なくとも近位側(ポート54の近位側)の部分に沿って延びなければならない。より一般的には、バルーンの切れ込みのある形状は、バルーンの膨張可能な範囲の近位側および遠位側の膨張可能なテーパ部分の間に配置された、バルーンの最大膨張直径の有効範囲の全体に延びる。しかしながら、一つの実施形態においては、切れ込みのある形状はバルーン50の膨張可能な長さの全体に沿って延びる。灌流を必要としない、あるいは切れ込みのあるバルーン50の切れ込み灌流経路以外の管腔によって灌流がもたらされる他の実施形態においては、シャフトの周りで円周方向の全体に延びるとともに偏心部分52を有しているバルーンは概ね円筒状の(切れ込みのない)形状に膨張する。
【0020】
図7に示した実施形態においては、カテーテルシャフト11は、その内部に膨張用管腔56を有している外側筒状部材55と、この外側管状部材の少なくとも遠位側部分の内部に延びるとともにニードルシース管状部材21をスライド自在に受け入れるように構成されたワイヤ管腔58をその内部に画成している内側管状部材57と、を備える。このシャフトの外側および内側の管状部材55、56は典型的に同軸に配設されており、膨張用管腔56は、外側管状部材55の内側表面と内側管状部材57の外側表面との間の同軸な空間となっている。しかしながら、一般的に知られているワイヤ管腔および膨張用管腔を全般的にもたらす、様々に適切なカテーテルシャフトの設計を用いることができる。バルーン50は、外側管状部材55の遠位端の外周の周りに密封的に固着された近位側スカート部分59と、内側管状部材57の遠位端の外周の周りに密封的に固着された遠位側スカート部分を反対側の端部に有しており、バルーン50の膨張可能な内側部分が膨張用管腔と流体的に連通するようになっている。近位側スカート部分、遠位側スカート部分および部分53は、その下側にあるるシャフト(すなわち、外側および内側の管状部材55、57)に、典型的に熱溶着および/または接着剤による接合によって密封的に接合される。シャフトの内側管状部材57のワイヤ管腔58内にスライド自在に配設されているニードルシース管状部材21は、患者の血管の内部でカテーテルを前進させるためのガイドワイヤとして用いることができるし、および/または患者の血管の内部の所望の位置へとカテーテルを追従させるために別個のガイドワイヤ(図示せず)を用いるとともに、前述したようにニードルシース管状部材21と交換することができる。図7のバルーン構造は、明らかに、本願明細書において議論するような固定ワイヤタイプのカテーテルシャフトと共に用いることができる。図7のオーバーザワイヤカテーテルのシャフト設計においては、シャフト管状部材は、典型的に近位側の端部で作動的に接続されて、ニードルシース管状部材21の長手方向の移動を可能にするとともに、管状部材21および内側管状部材57の壁にあるニードル挿通ポート14、54の位置合わせを確実なものとしてニードルが所望の通りにポート14、54から延出するようにし、シャフト管状部材/ニードルが互いと正確に位置合わせされていない場合に発生し得るニードルによるバルーン膨張管腔の穿通をそれによって回避する。
【0021】
図10は、本発明の特徴を具現化している他のカテーテル60を示しているが、 拡張可能部材はカテーテルシャフト61上で半径方向に自ら拡張する(自己拡張型の)開放壁(open-walled)フレーム62である。また、このカテーテルは、フレーム62上にスライド自在に配置されてその周囲を取り囲みフレームを折り畳まれた状態に拘束する前進状態とフレーム62が半径方向に自己拡張することを許容する後退状態とを取る、シャフト61上にスライド自在に配設された外シース69を備えている。図10は、外シース69がフレーム62より近位側に後退して、フレーム62が患者の身体管腔30の壁に対して半径方向に拡張した状態を示している。このカテーテルシャフトの構造は、その他の点では上述した実施形態と同様であり、異なる実施形態における類似の要素には同一の参照符号が与えられている。このカテーテルシャフト61は、ニードル挿通管腔12を画成しているニードルシース管状部材21と、上述したようにそれを通るニードル13の延出および後退を可能にするように構成されたポート14とを備えている。図11および図12は、それぞれ図10の破断線11−11および破断線12−12に沿った横断面図を示している。
【0022】
拡張可能部材が膨張可能なバルーンである実施形態と同様に、このフレーム62は、シャフト61の外側表面の周りでそれに沿って延びて拡張状態においてはポート14を身体管腔30の内部で実質的にセンタリングするともに、このポート14の半径方向位置においてシャフト61のポート側29(図12を参照)とは反対側のシャフトの側壁28上に、拡張状態において身体管腔の壁に接触する部分を有している。これにより、拡張状態にある拡張可能なフレーム62は、ポート14の位置におけるシャフト61をその外周の周りの身体管腔の壁から間隔を開けて配置された位置に支持し、かつニードル13は、延出した状態では、拡張可能フレーム62がポート14の位置におけるシャフトを支持していることにより身体管腔の壁から間隔を開けて配置されたポート14を通って、スライドしてニードル挿通管腔12から出る。
【0023】
拡張可能フレーム62は、全般的に、複数の支柱を有している。図10の実施形態においては、フレーム62は長手方向に延びる支柱63を有しており、それらは固定された第1の端部と反対側の自由な第2の端部64を具備するともに、外シース69がフレーム62に沿って近位側に後退したときに半径方向に拡張した形状となり、それによってフレーム62の拡張構造を形成する。さらにフレーム62は、拡張しない溝付き筒状部分65を形成しており、それはニードル13がそこを通って横方向に通過するように構成された1つ若しくはより多くの長手方向に延びる溝66をその側壁に有している(溝66は、それによってカテーテルのニードル挿通ポートとして部分的に機能する)。図12に最も良く示されているように、フレーム62は、拡張して身体管腔30の壁に接触する合計6本の支柱63を有しており、そのうちの2つは、シャフトのポート側29とは反対側にあるシャフトの側壁28上に完全に配置されている。しかしながら、ここで理解されるべきことは、長手方向に延びるより多いあるいはより少ない数の支柱を含む、本発明の様々に適切なフレーム設計を用い得ることである。ニードル挿通ポート14における支持をもたらすために長手方向に延びる支柱を有したフレームが一般的には好ましいが、このフレームは、医療装置の拡張可能なフレームにおいて一般的に知られているような正弦波状の円周方向に延びる支柱を含む、異なる支柱設計をそれに代えてあるいはそれに加えて有することができる。このフレーム62は、このフレーム62をシャフト61上に取り付けるべく構成された環状の近位側スカート部分67および環状の遠位側スカート部分68を有しているが、本発明の半径方向に拡張可能なフレームをカテーテルシャフトに取り付けるために様々に適切な構造を用いることができる。拡張しない筒状部分65は、フレーム62の近位側スカート部分67から遠位側スカート部分68へと延びている。図示の実施形態においては、片持ちにされた支柱63の自由端64がこの支柱63の遠位端となっており、かつ片持ちにされた支柱63の近位端はフレーム62の近位側スカート部分67に固定的に取り付けられている。この構造は、フレーム62を可逆的に半径方向に拡張させかつ折り畳むための、フレーム62に対する外シース69の前進および後退を容易にするが、必要に応じて、片持ちにされた支柱63の自由端を片持ちにされた支柱63の近位端とすることもできる。片持ちにされた支柱63は、カテーテル本体に過剰な応力を負荷することなしに、(その上における外シース69の後退および前進に応答して)半径方向の輪郭を増減させ、輪郭が最小な最初のチューブ寸法からより大きい拡張直径を達成できるようにする。
【0024】
図示の実施形態においては、シャフト61は、ニードルシース管状部材21をその内部に受け入れるように構成された管腔71(図11を参照)を有する内側管状部材70を備えている。図10の実施形態においては、このフレームの近位側スカート部分67は、内側管状部材70の(図10において近位側スカート部分67の下側に一点鎖線で示されている)遠位端72に固定的に(すなわち動かないように)固定されており、かつこのフレーム62の遠位側スカート部分68は、遠位側ポートを具備している筒状の遠位側先端部材73に取り付けられている。他の実施形態においては、このフレーム62は、例えば間隔を開けて配置された部分をレーザによって内側管状部材の壁から切断しかつ成形することにより、内側管状部材70と一体に形成することができる。(フレームによって形成されている)拡張しない溝付き筒状部分65は、内側管状部材70の遠位端から遠位側に延びる管腔をもたらし、それによってシャフトワイヤ管腔71の遠位側の延長部分を形成する。これにより、内側管状部材70のワイヤ管腔71、拡張しない溝付き筒状部分65、および遠位側先端部材73の内部にスライド自在に配設されているニードルシース管状部材21は、患者の血管の内部でカテーテルを前進させるためのガイドワイヤとして用いることができ、および/または別個のガイドワイヤ(図示せず)を患者の血管の内部の所望の位置にカテーテル60を追従させるために用いるとともに、前述したようにニードルシース管状部材21に交換することができる。あるいは、ニードルシース管状部材21を、フレーム62の遠位端に(例えば、フレームの遠位側スカート部分68に、あるいは遠位側先端部材に)固定的に取り付けて、このカテーテルを固定ワイヤカテーテルとする。
【0025】
拡張可能なフレーム62は、典型的に、形状記憶材料であるニチノールのようなニッケルチタン(NiTi)合金から形成されるが、銅−亜鉛−アルミニウム、鉄−マンガン−珪素、および銅−アルミニウム−ニッケルの形状記憶材料、あるいはステンレス鋼、コバルト−クロム、その他のような非形状記憶材料を含む様々に適切な材料を用いることもできる。図10の実施形態の拡張可能なフレーム62は、片持ちにされた支柱63に帰着する溝66および空間を形成するために、例えばレーザカット、ミクロ機械加工、化学エッチング、放電加工、ウォータジェット切削、その他を用いて切断されあるいは修正されるチューブから製作することができる。これにより、支柱63および溝付き部分65は、チューブから一体のユニットとして形成されるが、フレーム62は、これに代えて、複数の接続された支柱から形成することができる。形状記憶材料から形成するときには、チューブの切断された壁は、図10に示されている半径方向に拡張した形状の片持ち支柱63を形成するために熱処理工程の一部として再成形される。ステンレス鋼のような非形状記憶材料は、所望の形状を生じさせるために、冷間加工工程(例えば、曲げ加工)において普通に変形させる。一つの実施形態において、支柱63は、拡張可能なフレーム62が外シース69によって折り畳まれているときに溝66に嵌合するように構成される。ニードルを延出させる間にニードルが支柱63に直面した場合は、ニードルは多くの場合に支柱を押しのけ、それによって血管の壁の内部への妨げられない経路を作り出す。それに代えて、支柱は、シャフトから延出するニードルと整列しないように構成される。筒状部材21に複数のニードル挿通ポート14を有している実施形態においては、その後の注射の間に、支柱を折り畳むことなしに、かつ身体管腔の壁の内部でカテーテルを回転方向にあるいは長手方向に再配置することなしに、身体管腔の壁の複数の異なる注射部位へとニードルを前進させることができる。
【0026】
近位側アダプタ75は、カテーテルシャフト61の近位端に取り付けられるとともに、ニードルシース管状部材21へのアクセスをもたらすポート76を有している。ハンドル17は、ニードル13を薬剤供給源(図示せず)に流体的に連通させるように構成されている。ニードル13および外シース69の前進および後退はカテーテルの近位端において制御され、カテーテル60の配置、ニードル13の延出、患者の身体管腔30の壁の注射部位への薬剤の送達、ニードル13の後退、身体管腔30の内部からの取り出しあるいは再配置のためのフレームの折り畳みを可能とする。外シース69は、シャフトに沿ってフレームの近位側に同軸に延びるとともに、医師によって操作され得る近位側の端部を有しており、選択的に近位側のハンドル機構を用いて外シース69を前進させあるいは後退させるようになっている。外シース69あるいは別個の復元カテーテル(図示せず)は、フレームを半径方向に折り畳むためにフレーム上で遠位側に前進させることができるので、身体管腔30の内部の注射部位に対する薬剤の送達の後に、カテーテルを再配置しあるいは身体管腔から取り出せるようにする。ニードル先端の支柱63あるいはカテーテルの他の部分との偶然の接触を防止するために、カテーテルの近位側の部分は、典型的に、管状部材70に対する管状部材21の回転方向の方向付けおよび長手方向の制御をもたらすように構成され、支柱の内側におけるポート14/ニードル13の経路が支柱の間に向くようになっている。図1OAは、図10のオーバーザワイヤカテーテルに有用な、近位側アダプタ75の一実施形態を示している。
【0027】
図10Aの実施形態において、サイドアーム200を有した止血弁は、外シース69の近位端において外シース69の外側表面に接合された遠位側の内側表面を有している。内側管状部材70は、外シース69の近位端から近位側に延びるとともに、サイドアーム200を有した止血弁の内径(ID)を通ってその近位側のシールから出ている。他の制約がない場合には、この近位側のシールは、このシールの内側での内側管状部材70の長手方向および回転方向の移動を可能とする。サイドアーム200を有した止血弁は、(外シース69の近位端より近位側における)そのIDおよびそのサイドアームの結合部206に連通する管腔を有している。サイドアームの結合部206は、注射器あるいは他の医療用流体を送達するための装置への接続に適したルアー接続部(Luer connection)とすることができる。流体は、外シース69のIDと内側管状部材70との間の環状管腔を洗浄するために、サイドアームの結合部206に注射することができる。サイドアーム200を有した止血弁の近位端からの流れは、シールによって防げられあるいは制限される。サイドアーム201を有した止血弁は、それが内側管状部材70の近位端に接合されている点、ニードルシース管状部材21がそのシールから近位側に延びている点、かつそのサイドアーム内に注射された流体が内側管状部材70のIDとニードルシース管状部材21の外径(OD)との間の環状の管腔を洗浄するようになっている点を除いて、サイドアーム200を有した止血弁と基礎的な設計が同一である。遠位側のハンドル本体202は、サイドアーム201を有した止血弁の遠位側ハンドル本体202に対するあらゆる実質的な動きが妨げられるように設計されている。しかしながら、遠位側のハンドル本体202は、サイドアーム200を有した止血弁の遠位側ハンドル本体202に対する長手方向の動きは許容しつつ、近位側および遠位側に制限するように、サイドアーム200を有した止血弁の少なくとも一部がその内部で拘束される設計となっている。サイドアーム200を有した止血弁がその近位側の限界に移動すると、外シース69は、内側管状部材70に対し、支柱63の拡張を可能とするのに十分に近位側の位置に移動する。サイドアーム200を有する止血弁がその遠位側の限界に移動すると、外シース69は、内側管状部材70に対し、支柱63の上を移動してそれらを折り畳むのに十分に遠位側の位置に移動するとともに、必要に応じて、環状の遠位側スカート部分68を覆い、部材73のIDと管状部材21のODとの間の環状の隙間を結合206部への注射によって洗浄することができるようになっている。遠位側ハンドル本体202と止血弁200および201は、組み立てられたときに、このように機械的に相互に作用し/干渉するように設計されている。遠位側のハンドル本体202、それが拘束する部品200および201、部品69および70、部品69および70に取付けられたすべての部品が、独立したカテーテル組立体を効果的に構成する。ニードルシース管状部材21は、それによって拘束されることなしに遠位側のハンドル本体202から近位側に延びる。サイドアーム203を有した止血弁は、それがニードルシース管状部材21の近位端に接合されている点、ニードル13がそのシールから近位側に延びる点、そのサイドアームに注射された流体がニードルシース管状部材21のIDとニードル13のODとの間の環状の管腔を洗浄する点を除いて、サイドアーム200を有した止血弁と基礎的な設計が同一である。接続部17は、ニードル13の近位端に取付けられてニードル13のIDと連通し、接続部17に注射された流体がニードル13の管腔を通ってその遠位端から出るようになっている。シャフト205の近位端は、長手方向に拘束された状態で、接続部17の両側に取付けられている。近位側のハンドル本体204は、2つあるいはより多くの部品からなる設計とすることができるとともに、それらの相対的な動きを実質的に防止するようにして、サイドアーム203を有した止血弁の少なくとも一部を囲んでいる。シャフト205の遠位端は、接続部17の近位側ハンドル本体204に対する回転が妨げられるように近位側ハンドル本体204の開口あるいは溝(図示せず)に係合し、これによりポート14に対するニードル13の回転方向の方向付けの制御が達成される。近位側ハンドル本体204の内部におけるシャフト205の遠位端の長手方向の動きは、近位側および遠位側の制限範囲内に拘束されており、これによりポート14からのニードルの延出とポート14およびニードルシース管状部材21の内部への後退の制限が所望の通りに設定される。近位側ハンドル本体204および直接的あるいは間接的に拘束する部品は独立したカテーテル組立体を効果的に構成し、遠位側のハンドル本体202および直接的あるいは間接的に拘束する部品から構成されている独立したカテーテル組立体から完全に取り出すことができる。これは、遠位側のハンドル本体202およびそれが直接的または間接的に拘束する部品から構成されたカテーテル組立体の遠位側部分のオーバーザワイヤ挿入の間における、内側管状部材70(および管状の遠位側先端部材73)のIDへのガイドワイヤの挿入を可能にする。次いで、ガイドワイヤが取り除かれ、近位側のハンドル本体204およびそれが直接的あるいは間接的に拘束する部品から構成されるカテーテル組立体を、図示したように、遠位側ハンドル本体202の近位端に挿入することができる。近位側ハンドル本体204の遠位端(あるいはサイドアーム203を有した止血弁の遠位端)は、便利にかつ係脱自在に長手方向にそれらを互いに係止するとともに回転方向の所望の増加量でそれらが相対的に回転するような仕方で、遠位側ハンドル本体202の近位端と係合するように構成することができる。たとえば、締まり嵌め用の突起および凹部の設計は、突起が凹部に完全に係合したときに、支柱63に対するポート14の軸線方向の位置が(図示したように)所望の通りとなり、かつオペレータのためにその位置に保持されるようになっている。加えて、支柱に対するポート14の回転方向の方向付けが制御されるように、突起および凹みの形状および方向付けを選択することができ、ニードルの経路が常に支柱の間にあり、かつ支柱に対するポートの回転方向の可能な増加制御されるようになっている。例えば、四角い形の突起および凹部は回転方向の増加が180度だけの係合を可能にし、かつ2等辺三角形の形の突起および凹部は回転方向の増加が120度だけの係合を可能にする。しかしながら、様々に適切なハンドル設計を本発明のカテーテルと共に用いることができる。例えば、いくつかの設計においては、外シース69は非常にきつい締まり嵌めであり、かつカテーテルの材料および/またはコーティングは接続部206を必要とせず/環状管腔を洗浄する必要もないようなものであり、これにより200のサイドアームは省略することができ、および/または70に対する69の位置を変えるときにオペレータが握るのに便利な何かに置き換えることができる。他の場合においては、洗浄および/または注射用のルアー連結部は、所望の管腔と連通するようにハンドルあるいはニードルに取付けられるフレキシブルチューブの端部に構成することができる。他の場合においては、201(および/または203)の部分は、ハンドル本体202(および/または204)の部分の設計に組み込むことができる。他の場合においては、ニードルシース管状部材21のIDとニードル13のODの間の環状空間の洗浄が必要とされないので、203のサイドアーム部分は省略することができる。
【0028】
図13は、本発明の特徴を具現化しているカテーテル80を備えたカテーテル装置の他の実施形態の遠位側部分を示しているが、このカテーテル80は、半径方向に拡張可能なフレーム82をカテーテルシャフト81上に有するとともに、フレーム82を折り畳む前進状態(図示せず)と図13に示したようにフレームが半径方向に自己拡張することを許容する後退状態とを取る外シース69を有している。フレームは、フレーム82の近位側スカート部分84から遠位側スカート部分85まで長手方向に延びる、図10の実施形態のフレーム62のように前もって形成されて半径方向に拡張した形状の支柱83を有している。しかしながら、図10の実施形態とは異なり、支柱83の近位側および遠位側の端部は、フレームのスカート部分に固定されている。フレーム82のスカート部分のうちの一つ、典型的に遠位側スカート部分85はシャフト81上にスライド自在に取り付けられており、外シース69がその上をスライドして後退しあるいは前進したときに支柱が可逆的に半径方向に拡張しかつ折り畳まれるようになっている。フレームの第2のスカート部分(すなわち、典型的に近位側スカート部分84)は、シャフト81に固定的に取り付けられている。
【0029】
図13に示した実施形態において、シャフト81のニードルシース管状部材21が有している遠位端部分は、図示された実施形態においては、ニードルシース管状部材21の近位側隣接部分を形成している管状部材87の遠位端の内側表面に取り付けられた管状部材86によって形成されている。しかしながら、ここで理解されるべきことは、ニードルシース管状部材21が、単一の管状部材、または端部と端部が接続されたあるいは積層構造の複数の管状部材から形成することを含む、様々に適切な構造を有し得ることである。図示の実施形態においては、フレームの近位側スカート部分84は、ニードルシース管状部材21の管状部材87の遠位端に(例えば、固定的に)取り付けられている。他の実施形態においては、近位側スカート部分84は管状部材86に固定的に取り付けられ、好ましくは、小さい輪郭のために管状部材87の端部に当接する。管状部材86の遠位端あるいはそれに取り付けられた別個の柔軟なチップ部材は、管状シャフト81の遠位端を形成している。一つの実施形態においては、フレームはシャフト上に取り付けられ、遠位側スカート部分85がより柔軟な遠位側先端部の上でスライドするのに充分な距離で遠位側にスライドしないようになっている。管状部材86の遠位端に取り付けられた柔らかい遠位側先端部材を有する実施形態において、フレームが折り畳まれた状態のときには、管状部材86の遠位端は、典型的に、遠位側スカート部分85の遠位端にある。図13のカテーテル80の近位端は、上述したようにニードル13の管腔との流体的な連通をもたらすコネクタ17と同様のコネクタのようなハンドル/コネクタを有しており、それは典型的に、ハンドルのいくつかの部分への外シース69の組み込みを可能にする。
【0030】
図13の実施形態は、製造の容易さが改良された、きわめて小さい輪郭の装置をもたらす。図示を容易にするために外シース69とシャフト81との間の環状の空間を比較的大きく示しているが、小さい輪郭をもたらすために、外シース69が、典型的に、シャフト81上にぴったりと嵌合するように寸法決めされることはことは理解されるべきである。一つの実施形態において、遠位側管状部材86は、ステンレス鋼あるいはニチノール(NiTi)から形成され、近位側管状部材87は、ステンレス鋼から形成された近位側の部分とニチノールから形成された遠位側の部分を有する。拡張可能なフレーム82およびカテーテルシャフトの部品(すなわち、ニードルシース管状部材21)は、単一の材料から一体的な部分として形成することもできるし、形成しないこともできる。フレームがシャフトと一体である一つの実施形態においては、ニードル挿通ポート14はフレームの近位端にあって長手方向に方向付けられ、かつフレームの遠位端は、固定されたワイヤチップに固定的に取り付けられる。固定されたワイヤチップは、前進した外シース69の内側にフレームが折り畳まれるときに、遠位側に移動するように構成されている。ニードル13は、その遠位端が血管の壁に向かって延びるための湾曲部を必要とし、したがって支柱にぶつかることを回避するために(近位側のハンドルにおける)回転方向の制御を必要とするが、カテーテルの全体にわたって回転することなしに支柱の間の所望の角度間隔で注射することができる。この設計は、比較的小さいニードルの使用を容易にする。
【0031】
ニードルシース管状部材21のワイヤ管腔12内にあるニードルストッパ88は、例えばニードル13のテーパ部分89に接触することによって前進したニードル13と接触するように構成され、ポート14を通って延出するニードル13の延出長さを設定するようになっている。このニードルストッパ88は、ニードルが、オペレータによって遠位側に前進させられたときに、同一の最大注射深さへと繰り返し前進することを確実なものとするが、以下に詳述するように、本発明のカテーテルと共に様々に適切なニードルストッパを用いることができる。ニードルストッパ88は、ニードルシース管状部材21の2つの隣接部分(例えば近位側管状部材87の近位側および遠位側の部分)を互いに接続するために、2つの部分の内側にニードルストッパを圧入しあるいは接合することにより、その接合部にまたがるようにして用いることができる。ニードル13は、比較的長く、柔らかく、鋭いので、81に挿入する間における無菌性、鋭さ、鋭い先端部の88との係合、もつれの損失を回避するために、かつ人体および装置の穿通を回避するために、(典型的に近位側のハンドルによって)シャフト81の内部に拘束し/保持されるべきである。
【0032】
図1および図6の実施形態と同様に、ニードルシース管状部材21の管腔12は閉じた遠位端を有し、ニードルシース管状部材21の内部のポート14の部分には傾斜24があり、かつこの傾斜24は、典型的に、カテーテルの柔軟な遠位側の先端コイル23に取り付けられた遠位端を有する遠位側先端部材によってもたらされ、このカテーテル80を固定ワイヤカテーテルとしている。
【0033】
カテーテル80を有している図13のカテーテル装置のような本発明のカテーテルを用いて、患者の目標とする解剖学的構造に薬剤を送達する方法においては、冠状血管のような患者の血管にガイドワイヤを通して身体管腔30内の目標部位(好ましくは、複数の目標部位が血管内にある場合には、最初に血管内で最も遠くにある目標部位)へと前進させる。外シース69は、その遠位端が目標部位の遠位側となるまで、ガイドワイヤ上で送達される。次いで、外シース69を所定の位置に残したまま、ガイドワイヤを取り除く。それから、カテーテル80を外シース69の近位端に挿入すると、それはフレーム82を折り畳まれた状態の小さい輪郭に拘束し、フレームが目標部位に隣接するまでカテーテルが外シースを通って追従するようにする。したがって、図13のカテーテル80の一実施形態においては、シャフト81および外シース69は互いに不変に同軸に配設される訳ではなく、これにより、シャフト81は、患者の身体管腔30の内部に外シース69を導入する前に、外シース69から完全に取り除かれるように構成される。フレームの位置は、蛍光透視法の下で確認することができるが、選択的な放射線不透過性のマーカ帯あるいはカテーテル上の他のマーキング機能は視覚化されて、身体管腔30内でのカテーテルの位置決めを容易にする。それに加えて、あるいはそれに代えて、外シース69は、カテーテルを挿入する前にあるいはその後で目標部位に配置される放射線不透過性マーカを有しており、かつ外シース69の近位側のハンドルにおけるカテーテルシャフト81と外シース69の長さおよび係合は、外シース69がその遠位側に前進した状態にあるときに、所望の目標部位においてフレーム82が外シースの標識に対して適切に配置されるようなものとなっている。次いで、外シース69が、その遠位端がフレーム82の近位側となるまで近位側に後退すると、フレーム82はその拡張状態に復元し、それによって身体管腔30の壁に接触してカテーテル80に対してセンタリングおよび支持をもたらす。それから、ニードル13は、身体管腔30の壁の標的組織を貫通するまでニードルシース管状部材21のポート14およびフレーム82の支柱83を通って前進し、薬剤は、カテーテルの近位端に接続された薬剤供給源からニードル管腔を通って流れてニードルの遠位側の先端から出る。薬剤の流れを止めた後、ニードルはニードルシース管状部材21の管腔12の内部へと近位側に後退し、外シース69はフレーム82の少なくとも近位側の部分の遠位側に前進して、フレーム82を折り畳まれた小さい輪郭の状態に拘束する。選択的な追加の注射の後、外シース69およびカテーテル80が患者から取り除かれて、手技が完了する。追加の注射は、外シース69を引き出す前の、外シース69およびカテーテル80の回転および/または近位側への再配置を伴う。追加の注射が外シース69およびカテーテル80の遠位側への前進を必要とする場合には、カテーテル80を外シース69から引き出して、ガイドワイヤに置き換え、外シース69を新しい遠位側の位置に前進させ、上述したように注射のための手技を繰り返す。いくつかの場合には、カテーテル80を外シース69の内部に残すとともに、カテーテル80上の外シース69の組立全体を回転させることにより、解剖学的構造の内部で遠位側へと移動する経路を選択するべく、固定されたワイヤの遠位側先端部を用いる。、他の方法においては、カテーテル80を外シースと共に所望の治療部位へと前進させ、かつ曲がりくねった解剖学的構造を通り抜けるための困難さに直面した場合には、カテーテル80を近位側に引き出してガイドワイヤに交換し、位置決めの後にガイドワイヤをカテーテル80に交換し、配備および注射の手技を先に概説したように進める。
【0034】
本発明のカテーテルが、ガイドワイヤあるいはニードルシース管状部材21をスライド自在に受け入れるように構成されたワイヤ管腔を含む実施形態においては、このカテーテルは、外シース69と一緒にあるいは前もって導入した外シース69の内側で(すなわち、上述したように治療部位へと遠位側に前進させた外シースの内側で)、ガイドワイヤと共にあるいは前もって導入したガイドワイヤ上において所望の治療部位へと前進する。次いで、ガイドワイヤをニードルシース管状部材21に交換し、配備および注射の手技を先に概説したように進める。
【0035】
ニードルシース管状部材21の柔軟な先端コイル23は、好ましくはカテーテルの遠位端によるいくつかの方向制御をもたらすように構成されており、ニードルシース管状部材21は、所望の遠位側の分岐内にカテーテルを向けるべく、ガイドワイヤを再導入させることなしに患者の解剖学的構造の所望する遠位側の分岐を選択するために用いることができるようになっている。固定ワイヤ先端部は、製造の間に曲げられ、あるいは医師が所望の通りに曲げるように設計されている。同様の位置決め、配備および注射手技は、拡張可能部材が膨張可能なバルーンである本発明の実施形態において用いられるが、拡張可能部材は、外シース69を近位側に後退させるのではなく膨張用の流体でバルーンを膨らませることによって配置される。拡張可能部材としての膨張可能なバルーンを有する実施形態は、固定ワイヤカテーテル80について上述した外シース69と同様に前もって導入された支持カテーテルの内側でスライド自在に前進させることによって目標部位に配置することができる。
【0036】
図14に示されている実施形態のフレーム82をシャフト上に取り付けたカテーテル90は、ニードルシース管状部材21をその内部にスライド自在に配設したワイヤ管腔92を具備する内側管状部材91をさらに有している。これにより、フレーム82は、図13の実施形態に関連して上述したように内側管状部材上に取り付けられて、固定された第1の端部(例えば、フレームの近位端)とスライド自在に取り付けられた第2の端部(例えば、フレームの遠位端)とを有しており、外シース69を後退させあるいは前進させたときにフレームを半径方向に拡張させかつ折り畳むことができるようになっている。内側管状部材91は、前述したように非外傷性の遠位側先端部材を有しているが、それは図14の実施形態においては内側管状部材91の遠位端に取り付けられた柔らかい遠位側先端部材93であり、患者の身体管腔30の内部におけるカテーテルの非外傷的な前進を容易にしている。先端部材93と内側管状部材91の間の接合部は、図14においては、フレーム82の遠位側スカート部分85の下側に波線で示されている。
【0037】
図14に示した実施形態においては、内側管状部材は、フレーム82の半径方向に拡張している最大直径部分によって取り囲まれた側壁部分に複数のポート95を有している。これらの複数のポート95は、ランダムに若しくはあるパターンで配置することができ、注射ニードル13が様々な位置においてカテーテルシャフトの内側から外側へと通過できるようにしている。図14の破断線15−15に沿った横断面図を示している図15に最も良く示されているように、ニードルシース管状部材21のニードル挿通ポート14は、ニードル13がシャフト内側管状部材91の遠位側部分から出られるようにするために、内側管状部材のポート95のうちの一つと回転方向および長手方向に芯合わせされなければならない。カテーテルは、ニードル挿通管腔14をポート95のうちの一つと適切に整列させるように構成されつつ、内側管状部材91の内部におけるニードルシース管状部材21の動きの自由度を十分なものとして、ポート95のいずれをも選択されたポートとすることができるようにしている。単一のフレーム82の拡張可能部分に沿ったポート95の配布は様々な形態とすることができ、 複数のポート95は円周方向におよび/または長手方向に間隔を開けて配置されて、所望の注射部位への薬剤の送達を容易にする。加えて、単一の半径方向の位置において外周の周りに間隔を開けて、あるいは比較的短い軸線方向の長さに沿って配置された複数のポート95は、血管の病気にかかった範囲におけるいくつかの角度位置での注射を確実なものとする。例えば、一つの実施形態において、シャフトは、単一のフレーム82の拡張可能な範囲において互いに180度の間隔を開けて配置された2つの注射ポート95を有する。単一の拡張可能フレームの拡張可能な範囲は、一実施形態においては約10mmである。
【0038】
図16は、他の実施形態の内側管状部材91の遠位側部分を示している。複数の側壁ポート95は、螺旋状に延びる開放壁部分で画成された螺旋状の隙間97に置き換えられている。この螺旋状に延びる壁96は、内側管状部材91の壁に螺旋状の隙間97をカットすることにより、あるいは他のらせん状の構造によって形成される。内側管状部材91の壁の螺旋状ターン96によって形成される螺旋状の隙間97は、注射用ニードルの通路をもたらすとともに、その内部にニードルシース管状部材21をスライド自在に受け入れるように構成された内側管状部材91のワイヤ管腔92の延長部分を画成している。図示を容易にするために、図16にはニードルシース管状部材21および拡張可能なフレーム82を示していないが、フレーム82は、その近位側および遠位側のスカート部分84、85が開放壁部分の両方の端部にあるように、内側管状部材91上に取り付けられる。
【0039】
本発明の一つの態様が向けられている拡張可能フレーム100は、フレームの外周の周りで幅、厚み寸法、密度を変化させることにより、カテーテルシャフトにもたらす支持のレベルがその外周の周りで変化するように構成されている。例えば、図17は、一実施形態の(シャフト21からのニードル13の横方向の出口をもたらす)ポート14の位置における横断面図を示しているが、フレームの支柱101の幅はフレーム100の外周の周りで変化している。より具体的には、シャフトのポート側とは反対側のシャフトの側壁上で半径方向に拡張する支柱101は、シャフトのポート側の支柱より大きな幅を有している。図17に示した支柱101は、支柱の全ての範囲に沿って、あるいはそれに代えて支柱のうちシャフトのポート14に沿って延びる部分の範囲に沿って、より大きい幅およびより小さい幅を有している。このフレーム100は、その他の点では、図10および図14のフレーム62、82のような、前述した実施形態に関して説明したものと同じである。図17には示されていないが、このカテーテルシャフトが、前述したように、ニードルシース管状部材21上の内側管状部材91のような内側管状部材を備え得ることは理解されるべきである。
【0040】
図17に示した実施形態においては、ポート側とは反対側のシャフトの側壁の全体が拡張した状態のより幅の広い支柱101を有していて、このシャフト21のニードル挿通ポート14とは反対側のフレーム100によってもたらされる特別な支持を最大にしている。しかしながら、より幅の広い支柱101を、よりまばらに分布させることができ、より一般的には、一つあるいはより多くの幅の広い支柱101を、患者の身体管腔30の壁のうち少なくともニードル13の穿通部位から最も遠い位置に設けることができる。図示の実施形態においては、シャフトのポート側にあるより幅が狭い支柱101の幅は、シャフトの反対側にあるより幅の広い支柱101の幅の約50%である。しかしながら、サイズの違いは所望する支持のレベルに応じて変更することができ、より幅の狭い支柱の幅は、一般的に、より幅の広い支柱の幅の約_%〜_%である。より幅の広い支柱101の幅および数は、より幅の狭い支柱とは対照的に、シャフトに所望のレベルの支持をもたらすとともに、典型的には半径方向の拡張の前および後に可能な限り完全な円形の形状へと折り畳まれるフレームをもたらして、図18Aおよび図18Bの実施形態に関してより詳細に後述するように、折り畳まれた状態におけるトルクおよび曲げが均一に分布するように選択される。図17の幅が変化する支柱101のような支柱を有しているフレームは、完全な円ではない(例えば、いくらか楕円形あるいは支柱間の距離が一様でない)形状へと半径方向に折り畳まれる。
【0041】
図18Aおよび図18Bは他の実施形態のフレーム100の横断面図を示しているが、 このフレームは、少なくともポート14の半径方向の位置において、フレーム100の外周の周りでその密度(すなわち、数)が変化する、実質的に一様な幅の支柱102を備えている。より具体的には、このフレームは、シャフトの側壁上で半径方向に拡張する、シャフトのポート側におけるよりもシャフトのポート側とは反対の側においてより大きな密度を有する支柱102を備えている。図示の実施形態においては、シャフトのポート側は、シャフトの反対側における支柱の1/3の数の支柱を有している。しかしながら、この密度の差は、所望される支持のレベルに応じて変更することができ、シャフトのポート側は、一般的に、シャフトの反対側におけるより少なくとも1本少ない支柱を備える。図示の実施形態においては、支柱102の幅が実質的に一様(すなわち、通常の製作公差の範囲で一様)なので、図18Aのフレームが半径方向に折り畳まれた状態を示している図18Bに示されているように、このフレームは半径方向に折り畳まれて完全な円を形成する。図示を容易にするために、図18Bの隣接して折り畳まれた支柱102の間にいくらかのわずかな空間が示されているが、これらの支柱102は、これらの支柱102を接触させて完全な円形に折り畳み得ることは理解されるべきである。カテーテルの改良された送達性のために、折り畳まれた状態において最適なトルク伝達および柔軟性を維持するべく、各支柱の幅を同じとし、それによって折り畳まれた構造の全体にわたって湾曲およびトルク応力を均一に分布させることが好ましい。
【0042】
図18A、図18Bの実施形態においては、フレームが半径方向に拡張したときに、これらの支柱は外側および下側にお辞儀をする傾向があり、拡張した状態においては、ポート側とは反対側のシャフトの側壁上にそれらがあるようにする。これにより、これらの支柱は、折り畳まれた状態から拡張した状態へと一様な半径方向の経路に従うのではなく、拡張する経路においてある方向に付勢される。いくつかの支柱102によるシャフト/身体管腔壁の一つの側に向かうこの付勢力は、製造工程の間における支柱102の前もった形状付けによってもたらすことができる。例えば、形状記憶材料から形成される支柱102は、所望の記憶形状を与えるための治具および熱処理によって所望の形状に形成することができる。フレーム支柱102のための好適な形状記憶材料には、ニッケルチタン合金のような金属、オリゴ(e−カプロラクトン)ジオールのような生物分解性高分子、ポリノルボルネンのような非生物分解性ポリマーが含まれる。
【0043】
変化する支持をもたらすカテーテルフレームの他の実施形態においては、支柱の幅あるいは厚みが支柱の長手方向に沿って変化する。例えば図19の実施形態においては、フレーム105は、支柱の長手方向に沿って遠位側にその幅が減少する支柱106を備えている。その結果、フレームの拡張可能な部分の近位端に向けたより多くの支持がフレームによってもたらされる。ニードル13は、シャフト(例えば、ニードルシース管状部材21)から横方向に前進するときに、典型的に遠位側に前進する成分を含む経路を進み、反力負荷がニードルに沿ってシャフトに向けられてフレーム105の近位端に向かうようになっている。フレームは、近位側の部分に沿ってより強いので、ニードルが組織に接触して貫通するときに改良された支持をシャフトにもたらす。加えて、フレームの遠位側に増加する柔軟性は、カテーテルを送達する間、患者の解剖学的構造を通してのカテーテルの前進を容易にする。図19には幅が変化するように示されているが、それに代えて、フレームの支柱がそれに沿って変化する厚みを有し得ることは理解されるべきである。この場合、支柱の主な荷重状態が曲げである(すなわち、支柱はニードルの反力負荷に応じて曲げによってシャフトの位置を維持する)であるので、支柱の幅とは対照的に支柱の厚みを変化させることにより、構造的な剛性の大幅な変化を実現できることは理解される。例えば、支柱の厚みの変化は、例えばエッチングプロセスによって達成することができる。しかしながら、例えばレーザカットによって支柱の幅を変化させることは、支柱の厚みを変化させることに比較すると製造上の利点がある。
【0044】
図20は変化する支持をもたらす他の実施形態のカテーテルフレーム108を示しているが、 半径方向の剛性の変化はフレームの支柱109の作動範囲を変化させることによって達成され、円周方向に間隔を開けて配置された支柱が、シャフトのニードル挿通ポート14に対する位置に応じてより長いあるいはより短い作動範囲を有するようになっている。「作動範囲」という用語は、半径方向に拡張して患者の身体管腔の周囲の壁に接触するように構成された、フレームの拡張可能な部分の一部を指す。図20の実施形態においては、シャフトのポート側にあるフレーム支柱の作動範囲110は、シャフト(例えば、ニードルシース管状部材21)の反対側にある支柱の作動範囲111より短い。より長い作動範囲111は、患者の身体管腔内で拡張した状態においてより大きな支持をもたらすことが予想され、したがってシャフトのポート側とは反対側のシャフトの側壁である注射部位の反対側に有利に設けられる。加えて、患者の身体管腔30が湾曲している部分においては、より長い作動範囲111は、より長い湾曲部分により大きな支持をもたらす。
【0045】
支持が変化するフレームは、このように構成されて改良されたカテーテル支持をもたらすが、それは、好ましくは、穿通の間に間違った場所にニードルを配置するリスクを減少させ、それによって所望の注射部位における薬剤の正確な配置を容易にする。医師が血管壁を穿通しようとしてニードルの前進を過度に補償することがないので、血管を穿孔するリスクも好ましくは減少する。
【0046】
図21は、本発明の特徴を具現化している他のカテーテル120を示しているが、 その拡張可能部材はシャフトの遠位側部分となっており、真っ直ぐにするための部品の取り外しあるいはシャフト管腔からの流体によって、予め成形された螺旋形あるいはジグザグ構造へと半径方向に拡張するように付勢されるようになっている。具体的には、図21の実施形態のシャフト121は、ニードル挿通管腔12およびポート14を画成しているニードルシース管状部材21と、その内部にニードルシース管状部材21がスライド自在に配設されている第1の管腔123、およびこの第1の管腔123に対して偏心するとともに第1の管腔の遠位端から遠位側に延びかつその内部に真直要素125(図23を参照)あるいは流体を受け入れるように構成された第2の管腔124とを具備している外側管状部材122と、を備え、拡張可能な部材はシャフト外側管状部材122の予め螺旋状に成形された遠位側部分126となっている。図21に示したカテーテル120は、予め成形された遠位側部分が(シャフト外側管状部材122の遠位側の部分の内側にある第2管腔124から、真直要素を取り出した後で)その半径方向に拡張して螺旋形に弛緩した状態となっている。図22は、図21のカテーテルの破断線22−22に沿った横断面図を示す。弛緩した、半径方向に拡張した状態においては、外側管状部材122の予め成形された遠位側部分126は、身体管腔の壁に接触するように構成されて、患者の身体管腔30の内部で遠位側のシャフト部分をセンタリングして安定させるようになっている。
【0047】
図23は、図21のカテーテル120を示しているが、真直要素125が管腔124内に配設された結果として予め形作られた遠位側部分126が真っ直ぐな状態にあり、かつニードルシース管状部材21がシャフト第1管腔123の内部へと近位側に引き出されている。真直要素125は、典型的に柔軟な遠位側先端部コイルあるいはスタイレットを有するガイドワイヤである。図示の実施形態においては、第2管腔124は、その遠位端にポート127を有しており、かつその内部にガイドワイヤタイプの真直要素125をスライド自在に受け入れるように構成されている。他の実施形態においては、第2管腔124は、出口のない(閉じた端部)管腔であり、かつ第2管腔124を満たす流体が真直要素として作動できるようになっている。この第2管腔124は、カテーテル120の近位側から遠位端まで延びるとともに、カテーテルシャフト121の近位端にある近位側アダプタ(図示せず)と連通している。近位側アダプタは、第1の管腔123へのアクセスをもたらす第1のポートと、カテーテルシャフトの第2の管腔124へのアクセスをもたらす第2のポートとを有している。カテーテル120は、患者の血管の内側を、図23に示されている小さい輪郭の状態で、ガイドワイヤタイプの真直要素125の上を前進することができる。送達の間、第1の管腔の少なくとも遠位側部分123には何もなく(すなわち、ニードルシース管状部材21がそこから近位側に引き出されており)、最大な柔軟性をもたらして、患者の血管の内部におけるカテーテル120のスライドしての前進を容易にする。身体管腔30内の目標部位に達すると、ガイドワイヤタイプの真直要素125を近位側に後退させて、予め形作られた遠位側部分126が半径方向に拡張した状態を取れるようにする。真直要素125は、管腔124から部分的にあるいは完全に引き出すことができる。ニードルシース管状部材21は、第1の管腔123内を前進するとともに外側管状部材122のポート128から出て図21に示した前進位置となり、ニードル挿通ポート14が所望の位置に来ると、ニードル13が、螺旋状の(またはジグザグ状の)遠位側部分126の巻き部分の間で、シャフト(例えば、ニードルシース管状部材21)から横方向に延出できるようにする。他の実施形態においては、ニードルシース管状部材21が、前進位置で外側管状部材122に固定的に取り付けられる。図示してはいないが、ジグザグ状の遠位側部分126は、典型的に、螺旋状の遠位側部分126と同様にシャフトの内部で左右に延びるが、より険しく、鋭い折り返し部分を有している。シャフト外側管状部材122の予め形作られた遠位側部分126は、冷間加工や、あるいは押出成形されたた遠位側部分を加熱してから所望の螺旋状あるいはジグザク状の形を有した成形型の内部で冷却するといった様々に適切な方法を用いることにより、あるいは管腔124内にある2次的な螺旋状/ジグザグ状の要素を用いることによって形成し、付勢されて半径方向に拡張する形状をもたらすことができる。
【0048】
第2の管腔124がガイドワイヤ125をスライド自在に受け入れるように構成された実施形態においては、第2の管腔はガイドワイヤよりわずかに大きく、かつ好ましくはニードルシース管状部材21をスライド自在に受け入れるように構成された第1の管腔123より小さい(例えば、直径が0.014インチのガイドワイヤのための第2の管腔124の直径は約0.016インチであり、かつ第1の管腔123の直径は約0.020インチである)。第2の管腔124が流体の充填によって真っ直ぐとなるように構成されている他の実施形態においては、予め形作られた遠位側部分126を真っ直ぐにするのに十分な圧力に増加するまで、流体(例えば、食塩水、造影剤(contrast)、水)を液密な第2の管腔124内に導入する。この実施形態においては、予め形作られた遠位側部分126の壁は比較的薄く、かつ螺旋状あるいはジグザクの巻き部分は、弛緩して半径方向に拡張した形で実質的に積み重ねられて(接触し、あるいはほとんど接触し)、導入された流体の力が予め形作られた遠位側部分を真っ直ぐにするために最も有効に用いられるようにしている。実質的に積み重ねられた巻き部分は図21に示した実施形態におけるより互いに近いが、少なくとも一対の巻き部分がそれらの間に空間を有していて、ニードル13が拡張した遠位側部分126を通って患者の身体管腔30の壁へと延出できるようになっている。
【0049】
一つの実施形態においては、本発明のカテーテルは、シャフトに沿って長手方向に間隔を開けて配置された複数の拡張可能部材を備える。例えば、縦に並んで配置されたフレーム82のような複数の拡張可能なフレームは、注射ニードル13を前進させるための複数の位置をもたらす。特に、一つの実施形態においては、本発明のカテーテルが、遠位側のシャフト部分上で最初のフレームから長手方向に間隔を開けて配置された1つあるいは追加の拡張可能フレームを備えており、患者の身体管腔30の内部の異なる注射部位にニードル13を配置するために、ニードルシース管状部材21は1つ若しくは複数のフレームへとスライドして前進するように構成される。直列型のフレームは、好ましくは、図10および図14の実施形態において上述したような、シャフト内側管状部材の内部にスライド自在に配設されたニードルシース管状部材21を備える実施形態に用いられて、長手方向に間隔を開けて配置されたフレームの間でのニードル13の動きを容易にする。フレームの間の(すなわち、近位側フレームの遠位端と遠位側に隣接するフレームの近位端との間の)適切な隙間は、一つの実施形態においては約30mmであるが、様々に適切な隙間を用いることができる。縦に並んでいる各フレームは、シャフトの壁にあってニードル13がシャフトから出られるようにする一つあるいはより多くのニードル挿通ポート14を取り囲んでいる。一つの実施形態において、シャフトの壁に長手方向に間隔を開けて配置されて縦に並んでいるポート14は、各フレームの拡張可能な部分によって取り囲まれるとともに、シャフトの外周の周りに計測された配列で円周方向に間隔を開けて配置されている(すなわち、半径方向にずれている)。縦に並んだポートの「計測された」配置により、身体管腔の壁の角度部分が一つだけの場合とは対照的に、身体管腔の壁の外周の周りに間隔を開けて配置された複数の注射部位への薬剤の送達が容易となり、身体管腔の壁の全体にわたる薬剤の分布が改良される。
【0050】
注射は、縦に並んだ拡張可能なフレームが配置されてい各位置においてなすことができ、好ましくは、カテーテルは、注射された薬剤が拡張可能なフレームの間で血管壁を通って広がるように構成される。このことは、治療されていない隙間が注射部位の間で長手方向に存在することなしに、かつフレームを折り畳んで他の長手方向の位置に移動させる必要なしに、血管の所望の範囲が治療されることを確実にする。これにより、縦に並んだ拡張可能部材は送達の容易さを改良するので、医師は最初の注射の後にカテーテルを別の場所に移して配置し直す必要がない。むしろ、縦に並んだフレームの最初の位置での一つあるいは複数の注射の後、カテーテル全体を移動させることなしに、縦に並んで配置されている拡張可能な部材に対してニードルシース管状部材21を前進させあるいは後退させるだけで、縦に並んだフレームの2つめの位置で2回目の注射をすることができる。その結果、手技の全体的な時間が潜在的に減少して手技の安全性が高まる。
【0051】
図24〜図27は、拡張可能な部材のフレームの他の実施形態を示しているが 、このフレームは、シャフトの遠位側の部分およびその上のフレームが患者の身体管腔の湾曲した部分で曲がるときに、少なくとも伸長しあるいは圧縮されるように構成された部分を有している。詳しくは、このフレームは、血管に湾曲部分に沿って配置されたときに、あるいは血管の脈動が血管の幾何学的な変化を生じさせたときに血管解剖学的な構造に適合するように構成されている。図24に示した実施形態においては、拡張可能部材のフレーム130は、このフレームのシャフトに固定的に取り付けられた第1の(例えば、近位側の)端部とこのフレームのシャフト上にスライド自在に取り付けられた第2の(例えば、遠位側の)端部との間で長手方向に延びる支柱から形成されており、かつ長手方向に延びている支柱は、カテーテルの遠位側部分およびその上にあるフレーム130が湾曲部分で曲がったときに伸長しあるいは圧縮されるように構成された、起伏のある曲線部分131を、このフレームの第1および第2の端部の間に有している。図示の実施形態においては、フレーム130は、カテーテルシャフトのニードルシース管状部材21上に取り付けられている。曲線部分131は、半径方向に拡張して患者の身体管腔30の壁と接触するように構成されたフレームの作動範囲部分に沿って、フレームの拡張可能なテーパ部分の間に配置されている。曲線部分131は、ニードル挿通ポート14の近位側にある近位端とニードル挿通ポート14の遠位側にある遠位端を有しているが、様々に適切な範囲の曲線部分131を用いることができる。曲線部分131は、典型的に、フレームの作動範囲の全体あるいはその大部分に沿って長手方向に延びるとともに、半径方向の荷重に応答するよりも軸方向の荷重に対して容易に反応して伸縮し、フレーム130がカテーテルシャフトの十分なセンタリングおよび支持をもたらすようになっている。図25は、患者の身体管腔30の湾曲部分においてフレーム130および遠位側シャフト部分が曲がった状態を示しているが、支柱は、必要な長さの変化に適応するべく独立して伸縮し、身体管腔30の湾曲部分の内側の半径の近傍にある支柱はその長さが短くなり、かつ曲線の外側半径により近い支柱はそれに応じて伸びるようになっている。その結果として、フレーム130は解剖学的構造に適応し、それによって身体管腔の壁における外傷および応力を最小にする。
【0052】
図24および図25の実施形態においては、うねり132が半径方向内の向側に方向付けられている。図26は他の実施形態の側面図を示しているが、曲線部分131は、フレームの長手方向の軸に実質的に平行な平面内で曲がるうねり133を有していて、このうねり133が半径方向の内側にあるいは半径方向の外側に方向付けられないようになっている。その結果、曲線部分はフレーム内部で利用可能な潅流経路の領域を減少させず、かつ血流との構造的な干渉が制限される。ばねと同様に伸縮するように構成された様々に適切なうねりを曲線部分に用いることができるが、フレームの特徴を不利に達成することなしに所望の範囲の伸長および短縮を生じさせるためには、図26の実施形態の正弦波タイプのうねりが典型的に好ましい。
【0053】
図27は、他の実施形態の側面図を示しているが、その拡張可能な部材のフレーム135は、シャフトに固定的に取り付けられた第1の(例えば、近位側の)端部からシャフト上にスライド自在に取り付けられた第2の(例えば、遠位側の)端部へと、シャフトの周りに螺旋を描いて進んで螺旋状に延びる支柱から形成されている。螺旋状に延びている支柱は、ニードル挿通ポート14の近位側から遠位側へと延びており、カテーテルの遠位側部分およびその上にあるフレームが湾曲部分の内部で曲がるときに、身体管腔の湾曲部分の外側半径においては伸長しあるいは湾曲部分の内側半径において短縮する。図24の実施形態と同様に、フレーム135は、シャフトのニードルシース管状部材21上に取り付けられた状態で示されているが、様々なシャフト設計を用いることができる。加えて、フレーム135は、ねじり方向の負荷(すなわち、巻き上げあるいは巻き戻し)に適応することができるので、SFA(表在性大腿動脈)のような脈動の間にかなりのねじり歪がある解剖学的構造に特に有利である。
【0054】
図28にその側面図が示されている他の実施形態は、血管内の湾曲部に沿って配置されたときに、あるいは血管が脈動して血管の幾何学的形状に変化を生じさせるときに、血管解剖学的構造に適応するように構成されており、 その拡張可能部材のフレーム140は、ニードル挿通ポート14の近位側でシャフトに固定的に取り付けられた近位端141と、ニードル挿通ポートの遠位側に配置されるとともに拡張した状態では患者の身体管腔30の壁に対して半径方向に拡張する自由な遠位端142とを有しており、かつシャフトに固定的に取り付けられた近位端146と自由な遠位端147とを有している第2のフレーム145から軸線方向に間隔を開けて配置されている。図示の実施形態においては、第2のフレーム145は、拡張可能部材のフレーム140からシャフト上で遠位側に間隔を開けて配置されているが、それに代えて、フレーム140から近位側に間隔を開けて配置してシャフトのニードル挿通ポートを取り囲まないようにすることもできる。これにより、第2のフレーム145は、ポート14のようなニードル挿通ポートの位置ではシャフトを支持しない。フレーム140の支柱が第2フレーム145の支柱から独立しているので、身体管腔の壁の脈動およびその結果として生じる血管の幾何学的形状の変化は各フレーム140、145に独立して伝わる。したがって、フレーム140、145は互いに独立して反応し、それはカテーテルの全体的な柔軟性および血管に対する順応性を改善する。
【0055】
本発明の一つの態様は、ニードルが後退しあるいは延出した状態にあるときにカテーテルシャフトに対するニードル13の回転方向の整列を維持することに向けられている。ニードル13は典型的に傾斜した鋭い遠位端を有している。その結果、ニードルを前進させる間におけるニードルの角度の方向付けは、組織の穿通を容易にすることの一因となる。回転方向に整列させる本発明の特徴は、一般的に、シャフトとニードルの表面を係合させることによって作り出されるとともに、周囲のシャフトに対してニードルの回転を拘束している間におけるニードルの少なくともいくらかの長手方向の移動を可能とするように構成されている。図29は、回転方向整列機能の一つの実施形態例を示しているが、それは全般的に、対応する凹所181内にスライド自在に受け入れられる突起180を有しており、それによって、後退した状態および延出した状態においてニードルのシャフトに対する回転方向の整列を維持する。図29に示されている実施形態においては、凹所181はニードルの壁を通って部分的に延びているニードル13の外側表面にある溝であり、かつ突起はニードルシース管状部材21の内側表面から半径方向内側に延びている。突起180は、好ましくは、軸線方向に延びている短い長さの丸いワイヤであり、典型的に、ニードルシース管状部材21の壁にある空所の内部でニードルシース管状部材21に接合される。図29は、ニードルシース管状部材21の一部とワイヤ状突起180を、ニードル13の溝付き部分と共に、長手方向の断面として示している。図30は、図29の破断線30−30に沿った横断面図を示している。
【0056】
この回転方向整列構造は、ニードル挿通ポート14の近位側にあるシャフトの長手方向の範囲に沿った任意の部分に設けることができる。図29の実施形態においては、凹所181はニードル13の壁にあるが、この回転方向整列構造は、凹所181をより良好に収容するために、ニードル13より遠位側の部分と比較してニードルの壁の厚みが比較的厚い、ニードル13の近位側の部分に沿って設けられる。それに代えて、ニードル13の外側表面に直接凹所181を形成するのではなく、その外側表面に形成される凹所181を有した案内チューブ部材を、ニードル13の一部分に固定的に取り付けることもできる。加えて、図29の実施形態においてはニードル13の凹所181とシャフト上の突起が示されているが、他の実施形態においては、突起がニードルの外側表面から半径方向外側に延びるとともに、ニードルシース管状部材21の内側表面にある凹所に受け入れられる。例えば、図31に示されている実施形態においては、ニードル13は、外側に延びている突起180を形成するために研削されており、かつニードルシース管状部材21の内側表面に固定的に取り付けられた案内チューブ部材182は突起受け入れ凹部181を形成するスリットを有している。突起180は、好ましくは、ニードル13の外側表面から材料を取り除くことによって、例えばニードル13の部分に沿ったレーザエッチングによって形成される。図31の実施形態における突起180の外径は、回転方向整列構造の近位側および遠位側に隣接するニードル部分の外径に一致している(図31には、ニードルの隣接する部分の外径が、スリット付きの案内チューブ部材182の後ろに破線で示されている)。スリット付きの案内チューブ部材182は、例えば接着剤若しくは熱溶着、あるいはプレス嵌めによって、ニードルシース管状部材21の内側表面に接合される。図31の実施形態においては、案内チューブ部材182は、スリット状の凹部181とは反対側にあるその外周の円弧183の周りが接合されるが、それに代えて、ニードルシース管状部材21の内側表面にその外周の全体を接合することもできる。突起180あるいは案内チューブ182は、ニードルシース管状部材21の2つの部分の間の接合部にまたがって、この接合部における支持と製造の容易さをもたらすことができる。
【0057】
図32〜図34に示されている他の実施形態においては、回転方向の整列機能は、ニードル13の平坦化された外側表面によって部分に形成されている。詳しくは、ニードル13は、円形の横断面形状を有しているが、それに沿った少なくとも一部分における外周の一部に平坦化された外側表面190を有していて、シャフトの内周の半径を減少させた部分に接触することによってそのシャフト内におけるニードルの回転を止めるように構成され、それによって後退した状態および延出した状態におけるシャフトに対する回転方向の整列を維持するようになっている。図32の実施形態においては、シャフトの内周の半径減少部分は、ニードルシース管状部材21の壁の凹みあるいは折り目191である。図示の実施形態においては、カテーテルは、互いに反対方向にある2本の折り目191を有している。これらの折り目191は、ニードルシース管状部材21の外側表面に内向きの力を負荷して、外側および内側表面を内側に落ち込ませて塑性的に変形させることによって形成することができる。ニードル13の平坦化された外側表面190は、研削、切削、さもなければ円筒状のニードルの外側表面から材料を取り除くことを含む様々に適切な方法によって形成することができる。ニードルは、少なくとも1つ、より好ましくは、反対側の位置に配設された2つの平坦化された外側表面190を有する。
【0058】
図33に示した他の実施形態においては、シャフトの内周の半径減少部分は、ニードル挿通管腔12の内周の一部を平坦化させた、ニードルの平坦化された外側表面190と円周方向に位置合わせされた内側表面194である。図34に示されている他の実施形態においては、シャフトの内周の半径減少部分は、シャフトの内側表面から内側に延びる平面を有した突起197である。この突起は、典型的に、ニードルシース管状部材21の内側表面の溝の内側に接合された部材である。図32および図33の実施形態においては、半径減少部分は、ニードルシース管状部材21の内側表面によって形成されているが、それに代えて、所望の半径減少形状をもたらすとともにニードルシース管状部材21の内側表面に接合されるチューブインサートによって設けることができる。図32〜図34の実施形態の回転方向整列構造は、ニードル13およびニードルシース管状部材21の近位側の範囲で延びていて、それらはシャフトニードル挿通管腔12内におけるニードル13の長手方向の前進のためのストッパとはならないが、それに代えて、ニードルシース管状部材21の半径減少部分に当接するように構成されたニードルの外周の周りで連続的に延びる(平坦化されていない)丸い外側表面を有したニードル13の近位側の部分の遠位側に隣接して、ニードルの長手方向のさらなる前進を妨げるストッパとして作用することもできる。
【0059】
図35は、回転方向整列構造の他の実施形態の長手方向断面を示しているが、 ニードル上の外側突出部材が、シャフトの外周部材(例えば、ニードルシース管状部材21)の溝の内部に拘束されていて、シャフトに対するニードルの軸方向の移動は許容するが回転方向の移動を制限している。詳しくは、案内突出チューブ200は、ニードル13の外側表面に取り付けられるとともに、チューブおよびニードルの軸から半径方向外側に延びるタブ204を有している。このタブ204、ニードルシース管状部材21の壁にある溝202の内部に嵌合して、タブ204と溝202を画成している壁の表面との間の干渉接触が、ニードルの軸線方向に遠位側への(長手方向への)前進とシャフトの内部におけるニードルの回転とを制限するようになっている。図36の実施形態においては、溝202を覆うカバー203がニードルシース管状部材21に取り付けられており、それによって、患者の解剖学的構造のようなその外側の周囲にある表面にタブ201が引っかかりさもなければ相互に作用することを防止している。図示の実施形態におけるカバー203は、管状の形状であり、かつシャフトの小さい輪郭および高い柔軟性を維持するべく、十分に小さい輪郭のカバー203をもたらすことを容易にするために、典型的に、ポリイミドあるいはナイロンのようなポリマー材料となっている。このカバー203は、締り嵌めばめ、または追加の若しくはそれに代わる機械的な接合あるいは接着剤のような化学的な接合を用いて、ニードルシース管状部材21に取り付けられる。カバー203は、好ましくは密封的にニードルシース管状部材21に取り付けられて、患者の血管から溝202を通る流体の流れを防止する。溝202を覆うカバー203が図示されているが、図35の突出チューブ200および他の実施形態をカバー203なしで用い得ることは理解されるべきである。図35に示されている他の実施形態においては、 突出案内チューブ200は、ニードルの外側表面に向かって半径方向の内側に曲げられたタブ204を有しており、この突出タブの引っかかるタイプの相互作用を防止しあるいは抑制している(例えば、周囲の解剖学的構造をタブの移動から保護している)が、ニードルシース管状部材21の溝202の内部における干渉接触のために充分な輪郭をもたらし、それによってニードルの回転および軸線方向の移動の距離を促成している。
【0060】
タブ201/204は、好ましくは、例えばレーザ、マイクロマシーニング、あるいは他の微細材料除去技術を用いたチューブ200の壁の切削、およびタブの基部の壁の塑性的な変形(すなわち、曲げ)によって形成され、タブが外側に延びるようになっている。その結果、タブはチューブ200の壁から一体型の、単一片部材として形成されて、その製造を容易にしている。溝202は、典型的に、ニードルシース管状部材21の壁をカットすることによって形成されるとともに、一つの実施形態においては、溝の内部においてタブが移動できるようにするのに最小ではあるが充分な、実質的にタブ201/204の幅に対応した比較的狭い幅を有している。図示の実施形態においては、突出チューブ200は、ニードルの直径がより大きい近位側の部分から遠位側に比較的短い距離を開けて配置された、ニードルの直径がより小さい遠位側部分の上にある。ニードルシース管状部材21の溝202は、ニードル挿通ポート14の近位側にあるが、少なくとも一つの実施形態においては、シャフトの近位端から遠位側に比較的大きい距離を開けて配置される。突出チューブ200および溝202は、ニードルシース管状部材21に沿った様々に適切な位置に配置することができる。
【0061】
この回転方向整列構造は、本発明のカテーテルのスライド自在に配置された他の管状部材の回転方向の整列をもたらすために、例えばニードルシース管状部材21のニードル挿通ポート14とシャフト内側管状部材の側壁ポートとの整列をもたらすために用いるべく適合させることができる。
【0062】
様々に適切な薬剤を、本発明のカテーテルおよび方法を用いて送達することができる。これらの薬剤は、典型的に冠状、神経血管性および/または他の血管系疾患の治療および/または診断を意図したものであり、かつ病気にかかった血管の一次的な治療として、あるいは血管形成術またはステント送達のような他の侵襲的な治療法に関連する二次的な治療として有益である。適切な治療上の薬剤には、血栓溶解薬、抗炎症性薬、抗増殖性薬、薬内皮機能を回復させるおよび/または維持する薬、その他が含まれるが、これらに限定されるものではない。ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、細胞、その他を含む様々な生体活性薬剤を用いることができるが、これらに限定されるものではない。この薬剤は、典型的に再狭窄を治療する薬剤であるが、この薬剤は、病気にかかった血管に対する直接的な薬剤の送達による病気にかかった(閉塞した)血管の治療、(健康な)冠状動脈の1つに対する薬剤の送達による心臓の心筋の治療を含む、様々な治療の手技のために送達することができる。目下のところ好ましい実施形態においては、この薬剤は、ステロイドを含む抗炎症性薬剤、あるいはアポA‐1模倣ペプチド(ApoA1 mimetic peptides)、PPAR−αアゴニスト(PPAR-ALPHA agonists)を含む動脈の壁プラークからのコレステロールの引き抜き(cholesterol efflux)を誘起する薬剤である。一つの実施形態において、このカテーテルは、腎臓、脾臓、肝臓、または胃の組織、あるいは目標治療部位の近傍を通る血管を有した任意の身体臓器のような臓器組織に薬剤を送達するために用いられる。薬剤は、病変に隣接する臓器組織に直接的に送達することができる。適切な薬剤には、抗増殖性剤、消炎剤、抗悪性腫瘍薬、抗血小板物質、抗凝固剤、抗フィブリン剤、抗血栓剤、細胞分裂阻止性物質、抗生物質、抗アレルギー性物質、および抗酸化剤化合物が含まれる。例えば、一つの実施形態においては、このカテーテルは、腎臓組織に治療上の薬剤の微小粒子を送達するために用いられる。異なる臓器血管系の内部で作動する装置を製造するために、カテーテル装置の部品に対する変更、例えば典型的な冠状血管より小さいあるいは大きい身体管腔のために、装置の寸法を減少させあるいは増加させることが必要となり得る。治療上の薬剤に加えて、本発明では様々な診断薬剤を用いることができる。薬剤は、リポソーム、ポリマーソーム(polymerosomes)、ナノ粒子、微小粒子、脂質/ポリマーミセル、脂質および/またはポリマーと薬剤の錯体、その他を含む、様々に適切な処方および担体で提供することができる。
【0063】
カテーテル10、60、80、90、120の寸法は、カテーテルの種類、およびカテーテルが通過しなければならない動脈あるいは他の身体管腔の寸法といったファクターによって決まる。典型的に、冠状動脈については、拡張可能部材は、約3.5〜約4.5mmの最大外径へと半径方向に拡張する。カテーテルの全長は約100〜約130cmの範囲であり、典型的には約143cmである。
【0064】
ニードルシース管状部材21は、好ましくは、ニッケルチタン合金(NiTi)および/またはステンレス鋼のような金属から形成されるが、それに代えてあるいはそれに加えて、ポリアミド、ポリウレタン、シリコン改質ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリオレフィン、ポリイミドのようなカテーテルシャフトの構造に一般的に用いられる適切な樹脂材料から形成することができる。一つの実施形態においては、ニードルシース管状部材21は、ニチノール製の遠位側部分に接続されたステンレス鋼製の近位側部分を有している。一つの実施形態においては、ニードル13は、ステンレス鋼製の近位側部分に接続されたニッケルチタン製の遠位側部分を有するが、それに代えて、ニードルは、単一材料の管状部材から形成することもできる。
【0065】
シャフトの管状部材は、従来技術、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル類、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン類および複合材料のような、すでに血管内カテーテルに有用であることが判っている材料を押出加工およびネッキング加工することによって形成することができる。様々な部品は、溶着あるいは接着剤の使用といった従来の接合方法を用いて接続することができる。カテーテルシャフトの設計において従来知られているような、単一あるいは複数の層または管材料の部分から形成された1つ若しくは複数の管状部材を含む、様々に適切なシャフト構造を用いることができる。
【0066】
ニードルシース管状部材の内側からニードルが延びるカテーテルについて主に述べてきたが、拡張可能な支持部材を備える本発明のカテーテルは、様々に適切なシャフト設計とすることができる。加えて「カテーテル」という用語は、患者の血管を通って経皮的に前進するように構成された全般的に細長い構造を有する様々な装置設計を指すものとして理解されるべきである。ある種の好ましい実施形態に関して本発明を説明したが、その範囲を逸脱することなく様々な変更および改良を本発明になし得ることは当業者にとって明らかである。さらに、本発明の一実施形態における個々の特徴について述べあるいはその一実施形態の図面に示し、他の実施形態についてはそのようにしなかったが、一つの実施形態の個々の特徴を、他の実施形態の一つあるいはより多くの特徴または複数の実施形態における特徴と組み合わせ得ることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体管腔の壁の注射部位に薬剤を送達するべく構成された薬剤送達カテーテルであって、
a) 近位端と、遠位端と、その内部にニードルをスライド自在に収容するニードル挿通管腔と、ニードルの横方向の出口のための遠位側のシャフト部分の側壁にある少なくとも一つのニードル挿通ポートとを有して、前記ニードルが後退した状態および延出した状態とを取るようになっている細長いシャフトと、
b)前記遠位側のシャフト部分上にある拡張可能部材であって、折り畳まれた状態と、シャフトのポート側とは反対側のシャフトの側壁上でポートの半径方向位置にある部分を拡張させて身体管腔の壁に接触させる半径方向に拡張した状態とを有し、拡張した状態においてはシャフトの周囲でシャフトの外側表面に沿って延びて前記ポートの位置にある前記遠位側のシャフト部分を前記身体管腔の内部で実質的にセンタリングして、前記ポートの位置において前記シャフトの外周の周りにある前記身体管腔の壁から間隔を開けた位置に前記シャフトを支持し、かつ前記ポートにおいて前記シャフトを支持しているときに前記身体管腔の壁から間隔を開けて配置された前記ポートを通って前記ニードルが前記ニードル挿通管腔からスライドして出るようになっている前記遠位側のシャフト部分上にある拡張可能部材と、
を備えることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記拡張可能な部材は、拡張した状態において、前記ポートおよび長く延びた状態の前記ニードルに対してほぼ反対側にある位置で前記身体管腔の壁に接触することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記拡張可能な部材は、拡張した状態において、前記身体管腔の内部の流体が、前記拡張可能な部材の表面に沿って前記拡張可能な部材の近位側から遠位側へと潅流できるようにすることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記拡張可能な部材は、螺旋状、開放した壁、あるいは切れ込みのある構造となっていて前記拡張可能な部材に沿った潅流経路をもたらすことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記拡張可能な部材は、螺旋状に延びるバルーンであり、前記シャフトの前記ニードル挿通ポートは、前記バルーンの螺旋状の巻き部分の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記螺旋状のバルーンは、小径部分および大径部分が交互に連続するセグメント化されたバルーンであり、前記大径部分は、前記小径部分より大きい直径へと膨張して患者の身体管腔の壁に接触し、前記大径部分は、それぞれ前記シャフトの周りの1回転を超えずに延びる長さを有していることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記螺旋状のバルーンは、前記シャフト上で円周方向に配置されたチューブであり、
前記チューブは、前記シャフトに密封的に取り付けられた近位側および遠位側のスカート部分を有するとともに、前記スカート部分の間にある範囲を有して、その下側にある前記シャフトの部分に螺旋状の経路に沿って接合されて前記螺旋状のバルーンを形成することを特徴とする請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記拡張可能な部材は、半径方向に自己拡張する開放壁型のフレームであり、
前記カテーテルは、前進した状態においては前記フレームを取り囲んで前記フレームを折り畳んだ状態に拘束するとともに後退した状態においては前記フレームが半径方向に自己拡張することを許容する、前記フレーム上にスライド自在に配設された外シースを有していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記フレームは、固定された第1の端部と自由な反対側の第2の端部とを具備する長手方向に延びる支柱を有していることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記シャフトは、前記フレームの近位側のスカート部分が固定的に取り付けられている遠位端を有した内側管状部材と、前記ニードル挿通管腔を画成しているニードルシース管状部材と、前記シャフト内側管状部材の管腔に配設されたポートとを備えており、
前記フレームは、前記フレームの近位側のスカート部分から遠位側のスカート部分に延びる拡張しない管状部分と、前記ニードルがそこを通って横方向に通過するように構成された前記管状部分の側壁において長手方向に延びる1つ以上の溝とを有していることを特徴とする請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記シャフトは、前記フレームの近位側および遠位側の端部がその上に取り付けられる内側管状部材と、前記ニードル挿通管腔およびポートを画成しつつ前記内側管状部材の管腔内にスライド自在に配設されたニードルシース管状部材と、を備え、
前記内側管状部材のある部分は、前記ニードルがそこを通って横方向に通過できるように構成された1つ以上の開口を側壁に有していることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記内側管状部材は、その内側に前記開口を形成している螺旋状の隙間を具備した開放壁型の螺旋状の遠位側部分を有していることを特徴とする請求項11に記載したカテーテル。
【請求項13】
前記フレームから長手方向に間隔を開けて前記遠位側のシャフト部分上に配置された、1つ以上の追加の拡張可能部材フレームを備えており、前記ニードルシース管状部材は、患者の身体管腔内の異なる注射部位に前記ニードルを配置するために、前記フレームの1つ以上へとスライド自在に前進するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記フレームは複数の支柱から形成されており、前記支柱は、前記ポートの半径方向の位置において、前記フレームの外周の周りに変化する幅、厚み寸法あるいは密度を有しており、これによって前記フレームがその外周の周りでそのレベルが変化する支持を前記カテーテルシャフトにもたらすようになっていることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記シャフトのポート側とは反対側にある前記シャフトの側壁上の支柱のうちの1つ以上の寸法が前記シャフトのポート側にある前記支柱のうち円周方向に隣接する部分より大きく、これによって前記フレームが注射部位の反対側で最大レベルの支持をもたらすようになっていることを特徴とする請求項14に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記支柱は前記フレームの外周の周りで同じ寸法を有していて、前記支柱は、折り畳まれた状態では連続した円形の形状に折り畳まれ、かつ前記ポート側とは反対側のシャフトの側壁の方に向けて前記支柱が半径方向に拡張するように付勢するべく、前記支柱のいくつかが外側にお辞儀をするように予め形作ることにより、変化するレベルの支持がもたらされ、半径方向に拡張した状態において前記支柱の密度が前記ポート側の周りで減少するようになっていることを特徴とする請求項14に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記支柱の1つ以上の寸法が前記支柱の長手方向に沿って変化し、これによって前記フレームが前記カテーテルシャフトにもたらす支持のレベルがその長さに沿って変化するようになっていることを特徴とする請求項14に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記フレームは複数の支柱から形成されており、前記シャフトのポート側にある前記支柱の少なくとも1つが、円周方向に間隔を開けて配置された支柱より短い作動範囲を有していて、これによって前記フレームがその外周の周りで変化するレベルの支持を前記カテーテルシャフトにもたらすようになっていることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記フレームは複数の支柱から形成されており、前記支柱のうちの少なくとも1つが、前記フレームの拡張可能な作動範囲に沿って変化する幅あるいは厚み寸法を有していて、これによって前記フレームがその長さに沿って変化するレベルの支持を前記カテーテルシャフトにもたらすようになっていることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記拡張可能な部材のフレームは、前記シャフトに固定的に取り付けられた前記フレームの第1の端部と前記シャフト上にスライド自在に取り付けられた前記フレームの第2の端部との間で長手方向に延びる支柱から形成されており、前記長手方向に延びる支柱はそれぞれ、前記フレームの前記第1の端部と前記第2の端部との間にうねりを具備した曲線からなる部分を有していて、前記カテーテルの遠位側部分およびその上にある前記フレームが湾曲部分で曲がったときに伸縮するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記うねりは、前記フレームの長手方向の軸線に実質的に平行な平面内でその向きを変えており、前記うねりが、半径方向内側にあるいは半径方向外側に方向付けされないようになっていることを特徴とする請求項21に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記拡張可能な部材のフレームは、前記シャフトに固定的に取り付けられた第1の端部から前記シャフト上にスライド自在に取り付けられた第2の端部へとシャフトの周りで螺旋を描いて螺旋状に延びる支柱から形成されており、前記螺旋状に延びる支柱は、前記ニードル挿通ポートの近位側から遠位側へと延びるとともに、前記カテーテルの遠位側部分およびその上の前記フレームが湾曲部分で曲がったときに伸縮するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記拡張可能部材のフレームは、前記ニードル挿通ポートの近位側において前記シャフトに固定的に取り付けられた近位端と、前記ニードル挿通ポートの遠位側に配置されて拡張した状態においては半径方向に拡張して身体管腔の壁に接触する自由な遠位端とを有しており、 かつ前記シャフトに固定的に取り付けられた近位端と自由な遠位端とを有する第2のフレームを備え、前記第2のフレームは、前記シャフト上で前記拡張可能部材のフレームから近位側にあるいは遠位側に間隔を開けて配置されて、前記シャフトのニードル挿通ポートを取り囲まないようになっていることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記拡張可能な部材は、前記シャフトの外周の周りで同軸に半径方向に拡張する前記ニードルポートに対し間隔を開けて長手方向に配置された第1の部分と、前記ポートの側とは反対側のシャフトの側壁上で前記ポートから離れて横方向へと半径方向に拡張する偏心した第2の長手方向部分とを有する、変化する形のバルーンであり、前記偏心部分が、ポートの半径方向位置において前記シャフトのポート側とは反対側の前記シャフトの側壁上にある前記拡張可能部材の一部であり、前記第1の部分は、拡張した状態において前記ポートを前記身体管腔の内部において実質的にセンタリングするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項25】
前記バルーンの第1の部分は、前記拡張するバルーンの外側表面に沿って一つあるいはより多くの潅流経路をもたらす切れ込みを有して半径方向に拡張した状態を取ることを特徴とする請求項24に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記シャフトは、ニードル挿通用の管腔およびポートを画成するニードルシース管状部材と、前記ニードルシース管状部材をその内部にスライド自在に配設する第1の管腔およびこの第1の管腔に対して偏心するとともに前記第1の管腔の遠位端の遠位側に延びてその内部に真直要素あるいは流体を受け入れるように構成された第2の管腔を有した外側管状部材と、を備えており、前記拡張可能な部材は、前記シャフトの外側管状部材の遠位側部分であり、前記シャフトの外側管状部材の遠位側部分の内部にある第2の管腔から真直要素あるいは流体を取り出したときに予め形作られた螺旋状のあるいはジグザグ状の状態へと付勢されて半径方向に拡張するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項27】
前記シャフトおよび前記ニードルは、前記シャフトおよび前記ニードルの表面を係合させることによって形成される回転方向整列構造を有しており、前記回転方向位置決め構造は、隣接する表面の対応する凹部にスライド自在に受け入れられる突起を有し、それによって前記ニードルを後退した状態および延出した状態において前記シャフトに対して回転方向に位置決めされた状態に維持することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項28】
前記ニードルは、円形の横断面形状を有するととともに、前記シャフトの内周の半径減少部分に接触することによって前記シャフト内における前記ニードルの回転を止めるように構成された平坦な外側表面を、その外周の一部分の周りに有しており、それによって後退した状態および延出した状態における前記ニードルの前記シャフトに対する回転方向の位置決めを維持することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項29】
前記シャフトの内周の半径減少部分は、前記シャフトの壁の折り目であることを特徴とする請求項28に記載したカテーテル。
【請求項30】
前記シャフトの内周の半径減少部分は、前記ニードルの平坦化された外側表面と円周方向に整列した、前記ニードル挿通管腔の外周の一部の周りで平坦化された内側表面であることを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項31】
前記シャフトの内周の半径減少部分が、前記シャフトの内側表面から内側に延びる平面を有した突起であることを特徴とする請求項28に記載したカテーテル。
【請求項32】
前記拡張可能な部材は、その内部にニードル挿通管腔および前記ポートを画成している前記シャフトの一部の外側表面に固定的に取り付けられた第1の端部を少なくとも有していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項33】
前記ニードル挿通管腔内にある傾斜は、前記ニードル挿通ポートの遠位側に隣接して前記ニードル挿通管腔を閉塞するとともに、前記ニードルが前記ポートから出るように案内すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項34】
前記シャフトは、その遠位端にワイヤポートを有していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項35】
前記シャフトは、閉鎖された遠位端を有しており、かつ前記カテーテルは固定ワイヤカテーテルであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項36】
前記シャフトは、前記遠位側のシャフト部分に複数のニードルポートを有していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項37】
患者の身体管腔の壁の注射部位に薬剤を送達するべく構成された薬剤送達カテーテルであって、
a)その近位端からその遠位側部分の側壁にあるニードル挿通ポートへと延びるニードル挿通管腔をその内部に画成している管状部材と、前記ニードル挿通管腔の内部にスライド自在に配設されて後退した状態と延出した状態とを取り前記管状部材から前記ニードル挿通ポートを通って横方向に延びるニードルと、を有する細長いシャフトと、
b)前記シャフトの管状部材の遠位側部分上で半径方向に自己拡張性の開放壁型のフレームであって、前記シャフトの管状部材に固定的に取り付けられたスカート部分と、折り畳まれた状態と、前記ポートの半径方向の位置において前記シャフトのポート側とは反対側の前記シャフトの側壁上にある部分を拡張させて前記身体管腔の壁に接触させる半径方向に拡張した状態と、を有し、前記シャフトの管状部材の周囲で当該管状部材の外側表面に沿って延びて、拡張した状態においては、前記シャフトの管状部材の遠位側部分を前記ポートの位置において前記身体管腔の内部で実質的にセンタリングして、前記拡張可能な部材は、拡張した状態において、前記シャフトの管状部材の外周の周りの前記ポートの位置で、前記身体管腔の壁から間隔を開けて配置された位置に前記シャフトの管状部材を支持し、かつ前記ニードルは、延出した状態において、前記拡張可能な部材が前記ポートにおいて前記シャフト管状部材を支持するときに前記身体管腔壁から離れて間隔を開けて配置された前記ポートを通って、スライドして前記ニードル挿通管腔を出るようになっているフレームと、
を備えることを特徴とするカテーテル。
【請求項38】
前記シャフトの管状部材は金属製であり、
前記カテーテルは、前進した状態において前記フレームを取り囲んで前記フレームを折り畳まれた状態に拘束するとともに、前記フレームが半径方向に自己拡張することを許容する後退した状態を取る、前記フレーム上にスライド自在に配設される外シースを備えていることを特徴とする請求項37に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2011−505918(P2011−505918A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537121(P2010−537121)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/085713
【国際公開番号】WO2009/076224
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591040889)アボット、カーディオバスキュラー、システムズ、インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT CARDIOVASCULAR SYSTEMS INC.
【出願人】(510157384)
【氏名又は名称原語表記】JESUS MAGANA
【Fターム(参考)】