説明

半田ごて装置

【課題】半田付け時の加熱時間の管理が可能な半田ごて装置を提供する。
【解決手段】使用者が半田ごて10のグリップ部12に設けられた通知ボタン部18を押下することに対応して、半田ごて装置本体20が予め登録された温度制御情報に示される目標温度となるように半ごてのこて先部14の温度を制御する。さらに、半田ごて装置本体20は、こて先部14の温度が目標温度に達した時点からの経過時間が、温度制御情報に示される加熱許容時間に達した時点で通知部280を介して、加熱許容時間に達した旨を示す加熱終了通知をブザー等の音声で出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ごてのこて先の温度を調整可能に構成した半田ごて装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のプリント基板、リード線等の半田付け作業において、作業者の手で半田ごてを持って半田付けを行う手作業による半田付けを必要とする場合がある。
【0003】
かかる観点から開発された技術として、特許文献1に記載された半田ごて装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された半田ごて装置によれば、こて先部の複数の温度を予め記憶手段に記憶しておき、半田付け作業を開始する場合には、記憶手段に記憶された複数の温度の中から所望の温度を選択して、選択された所望の温度になるようにこて先部の温度を制御する。
【特許文献1】特開2000−52030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような手作業により半田付け作業を行う場合、半田付け品質を高品質に維持するためには、例えば、濡れ角(プリント基板のランドと半田が接触する角度)、半田量、フィレット(半田付けを断面から見たときの輪郭線)、仕上がりの色と光沢等の善し悪しに関して、各種の規格を満足する必要がある。
【0006】
また、プリント基板に取り付ける電子部品には、熱ストレスに対する信頼性を確保するため、半田付けの温度や半田付け時の加熱時間が規定されている場合もあり、そのような規定がされている場合には、規定された温度とともに予め定められた加熱許可時間内に半田付けを行う必要がある。
【0007】
このような各種規格等を満足するためには、半田付け作業の種類(例えば、リード線の細い場合と太い場合)や半田付けされる電子部品に対して許容される加熱時間などに応じて、こて先温度の管理及び半田ごての容量(ワット数)の管理が重要である。
【0008】
ところが、特許文献1に開示されているようなハンダごて装置では、半田ごてのこて先部の温度を所望の温度に保つように管理することはできるだけで、例えば、半田付け時に許容される加熱時間が規定されている電子部品を半田付けする場合に、加熱時間まで管理することは困難である。この結果、上記した手作業による半田付け作業に求められている各種規格等を満足する半田付け作業の種類や半田付けされる電子部品に対して許容される加熱時間などに応じて、こて先温度の管理及び半田ごての容量(ワット数)の管理行うことができず、未だ課題を残した技術であるといえる。
【0009】
本発明は、半田付け時の取付対象の部品の加熱時間の管理が可能な半田ごて装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半田ごて装置は、半田ごてのこて先部の目標温度と、当該目標温度において半田付け対象の部品に対して許容される加熱時間を示す加熱許容時間とを温度制御情報として記憶する温度制御情報記憶部と、前記半田ごてに設けられ、使用者の操作によって半田付け開始通知を出力する通知出力部と、前記通知出力部から半田付け開始通知が出力されたことに対応して、前記温度制御情報記憶部に記憶されている目標温度となるように前記半田ごてのこて先部の温度を調整する温度制御部と、前記こて先部の温度が目標温度に達してから前記温度制御情報記憶部に記憶されている加熱許容時間に達した時点で加熱終了通知を外部に出力する通知部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る半田ごて装置によれば、半田ごてに設けられた通知出力部から半田付け開始通知が出力されたことに対応して、温度制御部が温度制御情報記憶部に記憶されている目標温度となるように半田ごてのこて先部の温度を調整し、通知部が、こて先部の温度が目標温度に達してから加熱許容時間に達した時点で加熱終了通知を外部に出力するので、半田付け時の加熱時間を管理することができる。
【0012】
本発明に係る半田ごて装置では、前記通知出力部は、使用者の押下によって半田付け開始通知を出力するボタンにより構成され、当該ボタンは前記半田ごての一部を構成するグリップ部に設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る半田ごて装置によれば、使用者の押下によって半田付け開始通知を出力するボタンが半田ごての一部を構成するグリップ部に設けられるので、使用者が半田ごてのグリップ部を握り作業を開始する直前に半田付け開始通知の出力操作を容易にすることができる。
【0014】
本発明に係る半田ごて装置の一つの態様では、前記こて先部の温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部において検知した前記こて先部の温度情報を収集して、温度ログとして温度ログ記憶部に記憶する温度ログ収集部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る半田ごて装置の一つの態様によれば、半田付け作業終了後に取り付けた部品に不具合が発生した場合でも、こて先部の温度ログを参照することで、その不具合が取付時の過剰な加熱によるものかどうかの切り分けを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半田ごてに設けられた通知出力部から半田付け開始通知が出力されたことに対応して、温度制御部が温度制御情報記憶部に記憶されている目標温度となるように半田ごてのこて先部の温度を調整し、通知部が、こて先部の温度が目標温度に達してから加熱許容時間に達した時点で加熱終了通知を外部に出力するので、半田付け時の加熱時間を容易に管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と称す)について、以下図面を用いて説明する。
【0018】
本実施形態に係る半田ごて装置は、基板に取り付ける電子部品の特性に応じて製造メーカ等により推奨されている半田付け時の半田ごての目標温度と、その目標温度で許容される加熱時間を示す加熱許容時間とを予め温度制御情報として記憶し、使用者が半田ごてに設けられた通知ボタンを押下することに対応して、設定された目標温度となるように半ごてのこて先部の温度を制御する。さらに、半田ごて装置は、こて先部の温度が目標温度に達した時点からの経過時間が加熱許容時間に達した時点で加熱許容時間に達した旨を示す加熱終了通知をブザー音等の音声で通知する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る半田ごて装置100の外観斜視図を示す。図2は、本実施形態に係る半田ごて装置の機能ブロックを示す。
【0020】
半田ごて装置100は、半田ごて10と、半田ごて10の温度を調整する半田ごて装置本体20とを有する。
【0021】
半田ごて10は、使用者が作業時に掴むグリップ部12と、銅棒等からなるこて先部14と、こて先部14および電熱線等からなるヒータ15を覆うヒータカバー部16と、こて先部14の温度を検出する温度検知部17と、グリップ部12に設けられ、使用者が押下することで、半田ごて装置本体20に対して半田付けの作業の開始あるいは終了を通知する通知ボタン部18とを備える。
【0022】
CPU210は、ROM212に記憶されたBIOSプログラムなどの基本的な制御プログラムをRAM214に展開して、バス290を介して各部を制御し、半田ごて10に対する温度調整などを行う。さらに、CPU210は、記憶装置230に記憶されたプログラム240をRAM214に展開して、各種機能を実現する。
【0023】
操作部260は、使用者からの指示を受け付けるためのユーザインタフェースであり、装置本体20の電源オンオフボタン261、温度制御情報の選択を行う選択ボタン262、こて先部14の目標温度および加熱許容時間の設定を行う設定ボタン263,264を含む。また、表示部270は、こて先部14の現在の温度、目標温度などを表示する。さらに、通知部280は、こて先部の温度が目標温度に達した時点からの経過時間が加熱許容時間に達した時点で加熱許容時間に達した旨を示す加熱終了通知をブザー音等の音声で通知する。
【0024】
温度制御情報記憶部250は、温度制御部242がこて先部14の温度を調整する際に参照される温度制御情報を記憶する。温度制御情報は、半田付け時のこて先部14の目標温度と、こて先部14の温度が当該目標温度に達してから許容される加熱時間を示す加熱許容時間とを含む。
【0025】
なお、温度制御情報記憶部250には、取付対象の電子部品の種類が複数存在し、電子部品の種類によって熱ストレスに対する特性が異なる場合には、各電子部品の特性に応じた目標温度および加熱許容時間が示された複数の温度制御情報を記憶しておく。この場合、使用者は半田付け作業の開始前に、取付対象の各電子部品の規格や仕様に基づいて、予め、操作部260を介して、各目標温度および加熱許容時間を入力して、温度制御情報として温度制御情報記憶部250に登録しておく。あるいは、半田ごて装置本体20にパーソナルコンピュータ等の外部装置と通信を行う通信インタフェースを設けておき、予め外部装置において温度制御情報を生成して、その生成した温度制御情報を外部装置から通信インタフェースを介して装置本体20に送信して、温度制御情報記憶部250に登録しておく。さらに、作業開始時には、取付対象の電子部品に対応する温度制御情報を操作部260を介して使用者に選択させる。
【0026】
温度制御部242は、半田ごて10に設けられた通知ボタン部18を介して使用者から作業の開始通知が入力されたことに対応して、温度制御情報記憶部250に記憶された温度制御情報の中から選択された温度制御情報に基づいて、段階的にヒータ15を加熱する。温度制御部242は、図3に示すように、こて先部14の温度が選択された温度制御情報に示された目標温度となるようにヒータ15の加熱を調整する。さらに、温度制御部242は、こて先部14の温度が目標温度に達した時点から、温度制御情報に示される加熱許容時間が経過した時点で、通知部280を介して、加熱終了通知としてブザー音を出力する。同時に、温度制御部242は、温度制御情報に示される加熱許容時間が経過した時点で、ヒータ15の加熱を終了させ、こて先部14の温度を低下させる。
【0027】
表示制御部244は、温度検知部17で検知したこて先部14の現在の温度や現在設定されている目標温度などの情報を表示部270に表示する。
【0028】
温度ログ収集部246は、温度検知部17を介して周期的にこて先部14の温度を収集して、温度ログとして温度ログ記憶部252に記憶する。
【0029】
以上のように構成された半田付け装置では、半田ごて10に設けられた通知ボタン部18から半田付け開始通知が出力されたことに対応して、温度制御部242が温度制御情報記憶部250に記憶されている目標温度となるように半田ごて10のこて先部14の温度を調整し、通知部280が、こて先部14の温度が目標温度に達してから加熱許容時間に達した時点で加熱終了通知を外部に出力する。
【0030】
図4は、温度制御部242が温度制御情報に基づいてこて先部14の温度を制御する手順を示すフローチャートである。
【0031】
図4において、まず、温度制御部242は、操作部260を介して温度制御情報記憶部250に記憶されている温度制御情報の中から、取付対象の電子部品に対応する温度制御情報の選択を使用者から受け付ける(S100)。次いで、温度制御部242は、半田ごて10に設けられた通知ボタン部18を介して使用者から作業の開始通知を受け付け(S102)、その開始通知に対応して、ステップS100において選択された温度制御情報に基づいてこて先部14の温度を調整する(S104)。つまり、温度制御部242は、こて先部14の温度が温度制御情報に示される目標温度になるようにヒータ15の加熱を制御する。その後、目標温度に達してから、温度制御情報に示される加熱許容時間を経過するまで、温度制御部242は、その温度を保ち、加熱許容時間を経過した時点で(ステップS106の判定結果が肯定「Y」)、通知部280を介して加熱終了通知を示すブザー音を通知部280を介して出力する(S108)。
【0032】
以上、本実施形態では、使用者が半田ごて10のグリップ部12に設けられた通知ボタン部18を押下することに対応して、予め登録された温度制御情報に示される目標温度となるように半ごてのこて先部14の温度を制御する。さらに、半田ごて装置100は、こて先部14の温度が目標温度に達した時点からの経過時間が、温度制御情報に示される加熱許容時間に達した時点で通知部280を介して、加熱許容時間に達した旨を示すブザー等の音声を出力する。
【0033】
例えば、使用者は、グリップ部12を握りながらこて先部14を基板上の電子部品の取付箇所に配置した状態で、グリップ部12に設けられた通知ボタン部18を押下すると、こて先部14の温度調整が開始され、目標温度となる。使用者は例えば表示部270を参照してこて先部14の温度が目標温度に達したことを確認した時点で、半田付け作業を開始する。その後、加熱許容時間に達した時点でブザー音が出力されるので、使用者はその時点までに半田付け作業を完了させ、電子部品の取付箇所からこて先部14を移動させる。
【0034】
このように、使用者が握るグリップ部12に作業の開始を通知する通知ボタン部18を設けることで、半田付けの準備が整った段階で容易に使用者は装置本体20に対して作業の開始を通知することができる。また、作業者の半田付けの準備が整った段階で、こて先部14の温度制御が開始されるため、目標温度に達してから加熱許容時間に達するまで十分に余裕をもって半田付け作業を実行することができる。さらに、加熱許容時間に達した段階で加熱許容時間に達した旨を示す加熱終了通知が音声が出力されるので、万が一半田付けの作業に手間取ったとしても、その音声が出力した時点でこて先部14を半田付け箇所から離せば、取付対象の電子部品が熱ストレスにより不具合が発生することを未然に防ぐことができる。加えて、温度ログ記憶部252にこて先部14の温度の履歴がログとして残されているため、取付作業後に電子部品の不具合が発生した場合、そのログを参照することで、その不具合が取付時の過剰な加熱によるものかどうかの切り分けを容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、半田付け時の加熱時間を容易に管理することができるので、半田ごてのこて先の温度を調整可能に構成した半田ごて装置等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る半田ごて装置の外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る半田ごて装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】温度制御部の制御によるこて先部の温度の時間的な変化を示す図である。
【図4】温度制御部が温度制御情報に基づいてこて先部の温度を制御する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
10 半田ごて
12 グリップ部
14 こて先部
17 温度検知部
18 通知ボタン部
20 半田ごて装置本体
100 半田ごて装置
242 温度制御部
244 表示制御部
246 温度ログ収集部
250 温度制御情報記憶部
252 温度ログ記憶部
260 操作部
270 表示部
280 通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田ごてのこて先部の目標温度と、当該目標温度において半田付け対象の部品に対して許容される加熱時間を示す加熱許容時間とを温度制御情報として記憶する温度制御情報記憶部と、
前記半田ごてに設けられ、使用者の操作によって半田付け開始通知を出力する通知出力部と、
前記通知出力部から半田付け開始通知が出力されたことに対応して、前記温度制御情報記憶部に記憶されている目標温度となるように前記半田ごてのこて先部の温度を調整する温度制御部と、
前記こて先部の温度が目標温度に達してから前記温度制御情報記憶部に記憶されている加熱許容時間に達した時点で加熱終了通知を外部に出力する通知部と、
を備える半田ごて装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半田ごて装置において、
前記通知出力部は、使用者の押下によって半田付け開始通知を出力するボタン部により構成され、当該ボタン部は前記半田ごての一部を構成するグリップ部に設けられることを特徴とする半田ごて装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半田ごて装置において、
前記こて先部の温度を検知する温度検知部と、
前記温度検知部において検知した前記こて先部の温度情報を収集して、温度ログとして温度ログ記憶部に記憶する温度ログ収集部と、
を備えることを特徴とする半田ごて装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−64111(P2010−64111A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233122(P2008−233122)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】