説明

半田付け装置

【課題】高周波誘導加熱により複数の半田付け部を有するワークに電子部品を半田付けする半田付け装置において効率的に加熱できるとともに温度上昇速度の均一化を図ることができる半田付け装置を提供する。
【解決手段】高周波加熱コイル20は高周波電流を通電可能であり、コア40〜47は、高周波加熱コイル20による高周波誘導加熱によって同時に加熱される複数の錘17に対向配置されるとともに、高周波加熱コイル20への高周波電流の通電によって高周波加熱コイル20の周りに磁路を形成する。各錘17に対応する各コア40〜47を、積層する珪素鋼板の枚数を調整して錘17の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半田付け装置として、高周波誘導加熱で加熱対象物を加熱することで半田を溶融させて電子部品を半田付けする装置が知られている(特許文献1等)。高周波誘導加熱方式の半田付け装置においてはコイルとコアを備え、コイルに高周波電流を流しコアで磁束経路を調整し加熱対象物を加熱する。加熱時の温度上昇の調整は、全体の調整としては電流を調整することによるが、個別の調整に関しては特許文献1においてはコアと加熱対象物とのギャップを変化させて行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−229709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、コアと加熱対象物との距離(ギャップ)Gと加熱の強さの関係を示している。特性線L1は、距離Gの小さい領域Z1においては急峻であり、距離Gの大きな領域Z3においてはなだらかであり、距離Gの中間領域Z2においてはその中間の傾きとなっている。領域Z2においてコアと加熱対象物との距離(ギャップ)Gを変化させることにより温度上昇速度を調整することができる。しかしながら、距離Gが小さい領域Z1で調整しようとすると温度上昇速度の変化が大きくなりすぎて調整が難しい。一方、距離Gが大きい領域Z3で調整しようとすると距離Gの変化による温度上昇速度の変化が小さくなりすぎるため調整不能となってしまう。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、高周波誘導加熱により複数の半田付け部を有するワークに電子部品を半田付けする半田付け装置において効率的に加熱できるとともに温度上昇速度の均一化を図ることができる半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、複数の半田付け部を有するワークの各半田付け部に、高周波誘導加熱で加熱対象物を加熱することで半田を溶融させて電子部品を半田付けするための半田付け装置であって、高周波電流を通電可能な高周波加熱コイルと、前記高周波加熱コイルによる高周波誘導加熱によって同時に加熱される複数の加熱対象物に対向配置されるとともに、高周波加熱コイルへの高周波電流の通電によって該高周波加熱コイルの周りに磁路を形成するコアと、を備え、各加熱対象物に対応する各コアを、加熱対象物の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にしたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、各加熱対象物に対応する各コアは、加熱対象物の温度上昇速度に応じた磁路の断面積になっているので、コアと加熱対象物を接近して配置でき効率的に加熱できるとともに温度上昇速度の均一化を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半田付け装置において、前記コアを前記加熱対象物にエアギャップを設けることなく接近して配置したことを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、コアと加熱対象物をより接近して配置できる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の半田付け装置において、前記コアは珪素鋼板を積層した珪素鋼板コアであり、珪素鋼板の枚数により、加熱対象物の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にしたことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、容易に加熱対象物の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波誘導加熱により複数の半田付け部を有するワークに電子部品を半田付けする半田付け装置において効率的に加熱できるとともに温度上昇速度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の半導体モジュールを示す平面図。
【図2】実施形態の半導体モジュールにおける図1のA−A線における拡大断面図。
【図3】(a)は実施形態の半田付け装置を概略的に示す平面図、(b)は実施形態の半田付け装置を概略的に示す断面図。
【図4】(a)は実施形態の半田付け装置の一部を拡大して示す平面図、(b)は実施形態の半田付け装置の一部を拡大して示す断面図。
【図5】コアとコア支持板を示す分解斜視図。
【図6】(a),(b),(c),(d)はコアの平面図。
【図7】(a),(b),(c)は別例のコアの平面図。
【図8】コアと加熱対象物との距離と、加熱の強さの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1および図2は、車両の走行用モータの駆動装置に使用される電子機器の部品となる半導体モジュール10を示している。
【0014】
図1に示すように、半導体モジュール10は、回路基板11と、回路基板11上に半田付けにより接合された電子部品としての複数の半導体素子12とを備えている。回路基板11は、表面に金属回路13を有する複数(この実施形態では16枚、但し、図1では6枚のみ図示)のセラミック基板14が金属製のヒートシンク15に金属板16を介して一体化された冷却回路基板である。各セラミック基板14上にはそれぞれ4個、回路基板11では全体で64個の半導体素子12が半田付けされている。
【0015】
前記半導体素子12は、金属回路13に接合(半田付け)されている。図2における符号「H」は、半田層を示している。半導体素子12としては、例えば、IGBT、パワーMOSFET、ダイオードが用いられている。また、金属回路13は、例えば、アルミニウムや銅等で形成されている。セラミック基板14は、例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素等により形成されている。金属板16は、セラミック基板14とヒートシンク15とを接合する接合層として機能し、例えば、アルミニウムや銅などで形成されている。
【0016】
ヒートシンク15は平面視矩形状をなし、ヒートシンク15の長辺方向に複数(本実施形態では8枚。図3(b)参照。)のセラミック基板14が一体化され、ヒートシンク15の短辺方向に2枚のセラミック基板14が一体化されている。また、ヒートシンク15は冷却媒体が流れる冷媒流路15aを備えている。ヒートシンク15は、アルミニウム系金属や銅等で形成されている。
【0017】
図3(b)は、半田付けに用いる半田付け装置21の構成を概略的に示している。半田付け装置21は、ワークとしての回路基板11が有する複数の半田付け部としての金属回路13に、高周波誘導加熱で半田を溶融させて半導体素子12を半田付けする装置として構成されている。
【0018】
半田付け装置21は、密閉可能なチャンバ24を備える。半田付け装置21において、チャンバ24内には、四角パイプ状をなす対となる二本の高周波加熱コイル20が二箇所に設置されている。すなわち、図4(b)に示すように、チャンバ24内には合計四本の高周波加熱コイル20が設置されている。そして、対となる二本の高周波加熱コイル20は、ヒートシンク15の長辺方向に沿って一列に並設された複数(この実施形態では8枚)のセラミック基板14群に対応するように各セラミック基板14の上側に配置されている。また、対となる二本の高周波加熱コイル20は高周波電流の流れる方向が異なっている。高周波加熱コイル20は半田付け装置21が備える図示しない高周波発生装置に電気的に接続されている。
【0019】
そして、チャンバ24内に設置された温度センサ(図示せず)の計測結果に基づき、高周波発生装置の出力が制御されるようになっている。また、高周波加熱コイル20は、四角パイプの内部が冷却水を通すための通路を形成し、半田付け装置21が備える図示しない冷却水タンクに接続されている。なお、チャンバ24は、高周波加熱コイル20等のメンテナンスを容易にするため、上側の一部に開放可能な蓋部24aが形成され、蓋部24aは常には閉鎖位置に気密状態で固定されている。
【0020】
また、図3(b)に示すように、半田付け装置21には、チャンバ24内に還元性ガス(この実施形態では水素)を供給するための還元ガス供給部30が接続されている。還元ガス供給部30は、配管30aと、当該配管30aの開閉バルブ30bと、水素タンク30cとを備えている。また、半田付け装置21には、チャンバ24内に不活性ガス(この実施形態では窒素)を供給するための不活性ガス供給部31が接続されている。不活性ガス供給部31は、配管31aと、当該配管31aの開閉バルブ31bと、窒素タンク31cとを備えている。また、半田付け装置21には、チャンバ24内に充満したガスを外部に排出するためのガス排出部32が接続されている。ガス排出部32は、配管32aと、当該配管32aの開閉バルブ32bと、真空ポンプ32cとを備えている。半田付け装置21は、還元ガス供給部30、不活性ガス供給部31およびガス排出部32を備えることにより、チャンバ24内の圧力を調整可能な構成とされており、チャンバ24内の圧力は、圧力調整によって加圧されたり、減圧されたりする。
【0021】
また、半田付け装置21には、半田付け後のチャンバ24内に熱媒体(冷却用ガス)を供給するための熱媒供給部33が接続されている。熱媒供給部33は、配管33aと、当該配管33aの開閉バルブ33bと、ガスタンク33cとを備えている。熱媒供給部33は、チャンバ24内に収容した半導体モジュール10のヒートシンク15に冷却用ガスを供給するように接続されている。なお、熱媒供給部33から供給される熱媒体を冷却液としてもよい。
【0022】
半田付け装置21において、回路基板11の各金属回路13に高周波誘導加熱で加熱対象物しての錘17(図4(b))を加熱することで半田を溶融させて半導体素子12を半田付けする。実施形態では錘17に加えて位置決め用の治具18を使用している。図4(b)に示すように、錘17は、半田付け時において半導体素子12あるいは金属回路13と当接する加圧面17aを有する凸部を備えている。また、錘17は、平面視矩形状に形成されるとともに上面に凹部17bが2箇所形成されている。治具18は、半田付け時においてセラミック基板14上にシート半田19と、半導体素子12と、錘17とを位置決めするために使用される。このため、治具18には、位置決め用の孔18aが形成されている。
【0023】
錘17は、高周波誘導加熱により加熱可能な材料を用いて形成されており、高周波加熱コイル20に高周波電流が供給される際に、錘17を通る磁束の変化により電流が発生し、自身の電気抵抗によって発熱する。この実施形態の錘17は、ステンレスで形成されている。治具18は、例えば、グラファイトやセラミックス等の材料で形成されている。
【0024】
図4(b)に示すように、半田付け装置21において、対となる二本の高周波加熱コイル20の上側にはコア40が配設されている。コアについて、図3(b)に示すように、高周波加熱コイル20の延びる方向において複数のコア40〜47が配設されている。コア40〜47は一つのセラミック基板14、詳細には一つの錘17に一つずつ対向配置されている。コア40〜47は珪素鋼板製であり、薄い珪素鋼の板を複数枚重ねてコアを形成している。即ち、積層鋼板でコアを形成している。
【0025】
各コア40〜47の構成について図4(b)のコア40で説明すると、コア40としてE形コアを用いており、コア40は、I字状の本体部40aと、本体部40aの下面中央部から下方に延びる中央磁脚40bと、本体部40aの下面の両端部からそれぞれ下方に延びる両側磁脚40cとからなる。また、コア40〜47は、図4(a)に示すように平面視が矩形状に形成されている。
【0026】
そして、図4(b)に示すように、コア40〜47における中央磁脚40bと両側磁脚40cとの間の隙間が下方に開口しており、この各隙間に高周波加熱コイル20が収容されている。よって、コア40〜47は、対となる二本の高周波加熱コイル20を跨ぐようにして二本の高周波加熱コイル20上に配設されている。
【0027】
チャンバ24内においてコア支持板50が水平方向に延びるように配置されている。コア支持板50は電気絶縁材料よりなる。コア支持板50には、図5に示すように、貫通孔50a,50b,50cが設けられ、貫通孔50a,50cにコア40の両側磁脚40cが、また、貫通孔50bにコア40の中央磁脚40bが上下動可能に嵌入されている。図4(b)に示すように、錘17の上に、電気絶縁材料よりなる絶縁シート60を介してコア40〜47が載置されている。コア40〜47と錘17との間に介在させた絶縁シート60によりコア40と錘17とは電気的に絶縁されている。このとき、コア40〜47と錘17とはエアギャップを設けることなく接近して配置されているので、図8での領域Z1となっており、加熱が効率的に行なわれることになる(温度上昇速度を大きくすることができる)。
【0028】
そして、コア40〜47にはコイル20の通電により磁路が形成される。つまり、高周波加熱コイル20に高周波電流が通電されるとコア40〜47と錘17を通るように高周波加熱コイル20の周りに磁路が形成される。
【0029】
ここで、チャンバ24内には、図3(b)に示すようにコア40,41,42,43,44,45,46,47が並んで配置されており、図3(a)には、各コア40,41,42,43,44,45,46,47の平面形状を示す。図3において左端に配置したコア40と右端に配置したコア47とは、珪素鋼板の枚数が最も多く、例えば50枚である。図3においてコア40の右側に配置したコア41とコア47の左側に配置したコア46とは、珪素鋼板の枚数が次に多く、例えば45枚である。図3においてコア41の右側に配置したコア42とコア46の左側に配置したコア45とは、珪素鋼板の枚数が次に多く、例えば38枚である。図3においてコア42の右側に配置したコア43とコア45の左側に配置したコア44とは、珪素鋼板の枚数が最も少なく、例えば35枚である。
【0030】
このようにして本実施形態においては、図6(a)に示すコア、図6(b)に示すコア、図6(c)に示すコア、図6(d)に示すコアの計4種類のコアを用いている。図6(a)に示すコアが図3におけるコア40,47であり、図6(b)に示すコアが図3におけるコア41,46であり、図6(c)に示すコアが図3におけるコア42,45であり、図6(d)に示すコアが図3におけるコア43,44である。図6(a)に示すコア40,47においては最密に板材を重ねて配置している。図6(b)に示すコア41,46においては4箇所に分割して配置している。図6(c)に示すコア42,45においては3箇所に分割して配置している。図6(d)に示すコア43,44においては2箇所に分割して配置している。
【0031】
このようにして錘17の上にコア40〜47が平面視で完全に重なるように配置され、各コア40〜47の鋼板の枚数が図3(a),(b)に示すように異なり、コアの密度(積層密度、占有面積)が異なっている。これにより、各錘17に対応する各コア40〜47を、錘17の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にすることができるようになっている。
【0032】
なお、図6(a)〜(d)において隙間は絶縁物(セラミックや樹脂シート等)で埋められている。
次に、前記のように構成された半田付け装置21を用いて電子機器の部品となる半導体モジュール10の製造方法の一工程である半導体素子12の半田付け方法を説明する。なお、回路基板11にヒートシンク15を接合した物(以下、「半田付け対象物」という)を予め作製しておく。
【0033】
半田付けを行う際には、チャンバ24内に半田付け対象物を置き、位置決めする。次に、半田付け対象物の回路基板11(各セラミック基板14)上に治具18を置き、治具18の各孔18aにシート半田19と半導体素子12を配置する。シート半田19は、回路基板11(金属回路13)と半導体素子12との間に配置する。そして、半導体素子12を配置した回路基板11に錘17を置く。さらに、錘17の上に絶縁シート60を介してコア40〜47を載せる。この状態において、回路基板11(金属回路13)上には、金属回路13側から順にシート半田19、半導体素子12、錘17が積層される。
【0034】
ヒートシンク15の長さ方向に沿って一列に並設された錘17の列において、列の中央に位置する錘17はその両側にも錘17が位置しているため、中央に位置する錘17は、高周波加熱コイル20によって加熱されたとき両側の錘17からの熱を受けて最も温度が高くなる。一方、錘17の列において、列の両端に位置する錘17は、その片側にしか錘17がない。このため、中央に位置する錘17に比して隣の錘17から受ける熱も少なく、かつ、側方へ放熱可能であるため、両端に位置する錘17は、高周波加熱コイル20によって加熱されたとき、中央に位置する錘17よりも温度が低くなる。よって、全ての錘17が同時に加熱されたとき、錘17の列において、中央から両端に向かうに従い錘17の温度上昇速度は遅くなり、錘17の温度も低くなる傾向にある。その結果、高周波加熱コイル20に供給される高周波電流が一定であっても、錘17の温度上昇速度(発熱状態)が異なる状態になる。
【0035】
そして、半田付け装置21においては、錘17の位置による温度上昇速度の差を考慮し、全ての錘17の温度上昇速度を均一化するために積層枚数の異なる各コア40〜47を配置する。本実施形態では、ヒートシンク15の長さ方向に沿って一列に並設されたコア列(コア40〜47)において、中央部が最も枚数が少なく、左右の端にいくほど枚数が多くなっている。
【0036】
次に、ガス排出部32を操作してチャンバ24内を真空引きするとともに、不活性ガス供給部31を操作してチャンバ24内に窒素を供給し、チャンバ24内を不活性ガスで充満させる。この真空引きと窒素の供給を数回繰り返した後、還元ガス供給部30を操作してチャンバ24内に水素を供給し、チャンバ24内を還元ガス雰囲気とする。
【0037】
次に、高周波発生装置を作動させ、高周波加熱コイル20に高周波電流を流す。すると、高周波加熱コイル20の周りにはコア40〜47および錘17を通る高周波の磁束が発生し、錘17には磁束の通過によって渦電流が発生する。コア40〜47が錘17に絶縁シート60を介して接近配置されているため磁束密度の高い磁路が形成される。高周波加熱コイル20の磁束内に置かれた錘(加熱対象物)17は、電磁誘導作用によって加熱され、その熱が錘17の加圧面17aから半導体素子12に伝わる。そして、回路基板11の各金属回路13上に載置されたシート半田19には、錘17に生じた熱が当該錘17の加圧面17aおよび半導体素子12を介して集中的(局所的)に伝わり、加熱される。この結果、シート半田19は、半導体素子12を介して伝わる熱で溶融温度以上の温度になることにより溶融する。
【0038】
半田付け装置21において、錘17一つに対し一つのコアを配置させるとともに、コアにおける積層枚数を調節して高周波誘導加熱により半田付けを行っている。そして、複数並設された錘17の位置に起因した温度上昇速度(発熱状態)のバラツキを考慮してコアの積層枚数が設定されている。このため、高周波加熱コイル20に供給される高周波電流が一定であれば、複数の錘17の温度上昇速度が均一化され、シート半田19が全て同じ温度で加熱される。よって、シート半田19は全て温度が所定範囲内に保持されることで同じタイミングで溶融し、複数の半田付け部で半田の溶融状態が異なる状態となることが防止される。
【0039】
また、半導体素子12は、錘17によって回路基板11側に加圧されているので、溶融した半田の表面張力で動かされることはない。そして、シート半田19が完全に溶融した後、高周波加熱コイル20への高周波電流の供給を停止させる。なお、高周波電流の供給時間は予め試験によって適切な時間に設定されている。また、チャンバ24内の圧力は、はんだ付け作業の進行状況に合わせて加圧および減圧され、雰囲気調整が行われる。
【0040】
高周波加熱コイル20への電流供給を停止後、冷却用の熱媒供給部33を操作してチャンバ24内に冷却用ガスを供給する。冷却用ガスは、ヒートシンク15の冷媒流路15aの入口または出口に向かって吹き込まれるとともに、チャンバ24内に供給された冷却用ガスは、冷媒流路15aおよびヒートシンク15の周囲を流れて、半田付け対象物(半導体モジュール10)を冷却する。この結果、溶融した半田は、溶融温度未満に冷却されることによって凝固し、金属回路13と半導体素子12とを接合する。この状態において半田付けが終了し、半導体モジュール10が完成する。
【0041】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コア40〜47は、高周波加熱コイル20による高周波誘導加熱によって同時に加熱される複数の加熱対象物としての錘17に対向配置されるとともに、高周波加熱コイル20への高周波電流の通電によって該高周波加熱コイル20の周りに磁路を形成する。ここで、各錘17に対応する各コア40〜47を、錘17の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にした。よって、コア40〜47と錘17を接近して配置でき効率的に加熱できるとともに温度上昇速度の均一化を図ることができる。
【0042】
従来方式(ギャップ変更による上昇速度調整方式)と比較しつつ説明する。従来の方法は、図8に示したようにコアと加熱対象物間に常にギャップが必要である。加熱対象物を複数のコアで加熱する際、その面内温度ばらつきは距離(ギャップ)を変化させることにより温度上昇速度を調整し対応するため、必然的に距離(ギャップ)は加熱対象物によりある程度固定されてしまう。これは、ギャップ調整により温度上昇速度が変化する分の範囲で調整できる距離(ギャップ)が決まっているからである。
【0043】
そして、図8の領域Z1において距離(ギャップ)が小さすぎると距離(ギャップ)の変化による温度上昇速度の変化が大となりすぎて調整が困難である。一方、図8の領域Z3において距離(ギャップ)が大きすぎると距離(ギャップ)の変化による温度上昇速度の変化が小となりすぎで調整不可能となる。また、加熱対象物のそり等によるギャップ変化の影響を直接受けてしまうため、そりの影響が十分小さくなる距離(ギャップ)である必要もある。
【0044】
これに対し、本実施形態のようにコアの密度変更による上昇速度調整方式においては、錘17の上に絶縁シート60を介してコア40〜47を搭載しており、温まりにくいワークに対して高効率に加熱することができる。さらに、コアを加熱対象物に十分近づけて加熱することができるため、温度上昇速度を大きくしたいという要求にも応えられる。
【0045】
(2)コア40〜47を錘17にエアギャップを設けることなく接近して配置したので、コア40〜47と錘17をより接近して配置できる。
(3)コア40〜47は珪素鋼板を積層した珪素鋼板コアであり、珪素鋼板の枚数により、錘17の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にしたので、容易に錘17の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にすることができる。即ち、コアでの積層する鋼板の枚数を調整するだけなので温度調整が簡単である。
【0046】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・図6(b),(c),(d)においては4箇所、3箇所、2箇所というように分割して珪素鋼板群を配置したが、これに代わり、図7(b),(c)に示すように一箇所において所定の枚数の珪素鋼板を配置してもよい。つまり、真ん中に集めて配置してもよい。あるいは、図6(d)に示すように両側に集めて配置してもよい。
【0047】
・コア40は珪素鋼板を用いて構成したが(積層鋼板であったが)、この他にも、例えばフェライトを用いて構成(フェライト・コア)してもよい。この場合、分割したコアを用いて、適宜必要な数の分割コアを配置すればよい。
【符号の説明】
【0048】
11…回路基板、12…半導体素子、13…金属回路、17…錘、20…高周波加熱コイル、21…半田付け装置、40…コア、41…コア、42…コア、43…コア、44…コア、45…コア、46…コア、47…コア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半田付け部を有するワークの各半田付け部に、高周波誘導加熱で加熱対象物を加熱することで半田を溶融させて電子部品を半田付けするための半田付け装置であって、
高周波電流を通電可能な高周波加熱コイルと、
前記高周波加熱コイルによる高周波誘導加熱によって同時に加熱される複数の加熱対象物に対向配置されるとともに、高周波加熱コイルへの高周波電流の通電によって該高周波加熱コイルの周りに磁路を形成するコアと、
を備え、
各加熱対象物に対応する各コアを、加熱対象物の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にしたことを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記コアを前記加熱対象物にエアギャップを設けることなく接近して配置したことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項3】
前記コアは珪素鋼板を積層した珪素鋼板コアであり、珪素鋼板の枚数により、加熱対象物の温度上昇速度に応じた磁路の断面積にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−240670(P2010−240670A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89595(P2009−89595)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】