説明

半結晶性半芳香族ポリアミド

本発明は、(a)芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の混合物からなるジカルボン酸ならびに(b)長鎖脂肪族ジアミンおよび短鎖脂肪族ジアミンの混合物からなるジアミンから誘導されたA−A−B−B構成単位を含む半結晶性半芳香族ポリアミドであって、(a−i)芳香族ジカルボン酸は、少なくとも80mol%がテレフタル酸から構成され、かつ(a−ii)脂肪族ジカルボン酸は、ジカルボン酸の少なくとも5mol%を構成し、(b−i)短鎖脂肪族ジアミンは、ジアミンの少なくとも10mol%を構成し、かつ(c)芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンは、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量の60〜90mol%を構成する、半芳香族ポリアミドに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、半結晶性半芳香族ポリアミド、より詳細には、脂肪族ジアミンを含むジアミン(A−A構成単位)およびテレフタル酸を含むジカルボン酸(B−B構成単位)から誘導された構成単位を含む半結晶性半芳香族ポリアミドに関する。
【0002】
半結晶性半芳香族ポリアミドは、特に、部品が高温に曝される用途を意図した射出成形部品に用いられている。このような高温に曝される時間はより短い場合もより長い場合もあり、および/またはその間隔が一定していない場合があり、その上、不意に非常に高いピーク温度になる場合もあり、これらはすべてその用途の種類に依存する。ポリアミドはその用途に応じて様々な要件を満たさなければならない。半結晶性半芳香族ポリアミドは、例えば、高温高湿条件下における機械特性および良好な寸法安定性に関する要件が極めて重要となる自動車およびエレクトロニクス用途に用いられている。このポリマーは、例えば、Tgを超えてからTmに至るまでに高い剛直性を維持するなどの良好な機械特性が得られるように十分に高い結晶化度を有していなければならない。この種の用途に好適なポリマーは、融解温度(Tm)が高く、かつニートポリマーの場合は同様にガラス転移温度(Tg)も高いだけでなく、高湿条件に曝した後も特性を維持することも必要である。例えば、成形部品が表面実装技術(SMT)等の方法によって実装されるエレクトロニクス用途の場合は、高湿条件に曝した後でも高い耐ブリスター性を示す材料が必要である(例えば、ポリアミド、プラスチック・ハンドブック(ポリアミド、クンストストッフ・ハンドブーフ(Polyamide,Kunststoff Handbuch))、3/4、ベッカー(Becker)/ブラウン(Braun)編、ハンザー・フェルラーク(Hanser Verlag)(ミュンヘン(Muenchen))、1998年、ISBN 3−446−16486−3、617頁および809頁を参照されたい)。このポリマーは、高融点を有すること以外に、工業規模で経済的に射出成形部品を作製するための溶融加工が可能となるように良好な熱安定性も有していなければならない。
【0003】
半結晶性半芳香族ポリアミドの例としては、ポリアミド6T、すなわちテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミン(1,6−ヘキサンジアミンと同義)から誘導されたポリアミドならびにポリアミド4T、すなわちテレフタル酸および1,4−ブタンジアミンから誘導されたポリアミド等のホモポリアミドが挙げられる。ポリアミド6Tは融点が約370℃の半芳香族半結晶性ポリアミドであるが、ポリアミド4Tの融点は400℃を優に超えている。ポリアミド6Tおよびポリアミド4Tの融点はそれぞれのポリアミドの分解温度よりも高いので、これらのポリアミドは溶融加工することができず、したがって、例えば射出成形によるポリアミド成形品の製造には適していない。この問題を解決することを目的として射出成形用途にエンジニアリングプラスチックとして使用される半芳香族ポリアミドは大部分がコポリアミドである。コポリアミドは、典型的には、対応する半芳香族ホモポリアミドの融点よりも融点が低く、そのため、コポリアミドの溶融加工性は対応する半芳香族ホモポリアミドよりも高くなっている。この種の半芳香族ポリアミドは米国特許第6,747,120号明細書より公知である。米国特許第6,747,120号明細書には、ホモポリアミドであるポリアミド6Tおよびポリアミド4Tのコポリアミドであるポリアミド6T/4Tが記載されている。ポリアミド6T/4Tの問題点は、標準的な加工条件下では、このように様々な用途に用いるために十分に高い分子量および十分に高い粘度を有するポリアミドを調製することが難しいことにある。米国特許第6,747,120号明細書においては、より高い分子量(したがってより高い粘度)は、官能基数が3以上の酸またはアミンモノマーを使用することによって達成され得ると述べられているが、このようなモノマーを使用すると、重合中および/または溶融加工中にポリアミドが架橋およびゲル化する危険性も生じることになる。
【0004】
他の種類の半芳香族ポリアミドがR・J・ゲイマンズ(R.J.Gaymans)およびS・アールト(S.Aalto)によりJ.Pol Sci.A:Pol Chem、第27巻、423〜430頁(1989年)に記載されている。ゲイマンズおよびアールトは、ポリアミド46/4Tすなわちポリアミド46およびポリアミド4Tのコポリアミドの調製および特性について記載している。このコポリアミドには、標準的な加工条件下においては、特にポリアミド4Tの含量が増加した低分子量のポリアミドポリマーが得られるという問題点もある。他には、このコポリアミドの溶融安定性に限界があるという問題点がある。ポリアミド4T成分の含量が中程度〜高い場合、このポリアミドには、より低い主融点以外に350℃以上に第2の溶融ピークがあり、この第2の溶融ピークによって溶融加工が複雑になるかまたはこれが完全な妨げとなる場合さえある。さらなる問題点は、高湿条件下においてはこのコポリアミドの融解温度が大幅に降下し、そのため、温暖多湿な環境に曝された後は、特にポリアミド46成分の含量が高い場合、SMT工程における耐ブリスター性が激しく低下してしまうことにある。
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点を示さないかまたはその程度が低減された、耐熱性を有する溶融加工可能なポリアミドを提供することにある。このポリアミドは、融解温度が高いことに加えて、溶融安定性が高く、機械特性が良好であり、耐ブリスター性が良好であり、かつ高湿条件下における融解温度の降下が限られていることが必要である。より具体的には、本発明は、標準的な加工条件下において調製することができる半芳香族ポリアミドであって、このような条件下で得ることができるポリアミド46/4Tまたはポリアミド6T/4Tよりも高い粘度を達成することができ、融解温度が高く、それと同時に、ポリアミド46含量の高いポリアミド46/4Tと比較して溶融安定性およびブリスター挙動が改善されている半芳香族ポリアミドを提供することを目的とする。
【0006】
この目的は、
a.ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の混合物からなり、
i.芳香族ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸の総量に対し少なくとも80mol%がテレフタル酸から構成され、かつ
ii.脂肪族ジカルボン酸のモル量が、ジカルボン酸の総モル量に対し少なくとも5mol%であり、
b.ジアミンが、長鎖脂肪族ジアミン(C6〜C12)および短鎖脂肪族ジアミン(C2〜C5)の混合物からなり、短鎖脂肪族ジアミンのモル量が、ジアミンの総モル量に対し少なくとも10mol%であり、かつ
c.芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計が、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し60〜90mol%である、
本発明による半結晶性半芳香族ポリアミドによって達成された。
【0007】
この手段の効果は、上述の欠点が克服されたことにある。本発明によるポリアミドは、ポリアミド46/4Tおよびポリアミド6T/4Tのどちらよりも容易に、すなわちより温和な加工条件および/またはより短い加工時間で高粘度のものを調製することができ、そしてたとえより官能基数の多い出発成分を使用しなくてもより高粘度のものを調製することもできる。本発明による半芳香族半結晶性ポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミンの複合的な混合物から誘導されているにもかかわらず、依然として高い融点とともに高い結晶化度を示す。より具体的には、結晶化度はポリアミド46/4Tおよびポリアミド6T/4Tのようなコポリアミドの結晶化度と同程度であるが、融点はこれらのコポリアミドと同程度であるかまたはこれらよりもわずかに低いだけである。半結晶性半芳香族ポリアミドの融解温度はコポリマーに変化させることで劇的に降下し得ること自体は公知であるので、このことは全く意外なことである。例えば、ポリアミド、プラスチック・ハンドブック、3/4、ベッカー/ブラウン編、ハンザー・フェルラーク(ミュンヘン)、1998年、ISBN 3−446−16486−3、第6章を参照されたい。この便覧には、通常、半結晶性ポリマーの融点を低下させるためには、より融点の低い異なるポリマーのモノマー構成単位が選択されることと、融点を低下させると、特にコモノマー含量がより高い(30〜70mol%程度)場合は、同形(isomorphic)のモノマー構成単位を使用しない限りは、それに伴いしばしば結晶性がかなり失われるかまたは完全に失われる場合さえあることとが教示されている(これについても、ポリアミド、プラスチック・ハンドブック、3/4、ベッカー/ブラウン編、ハンザー・フェルラーク(ミュンヘン)、1998年、ISBN 3−446−16486−3、8〜9頁を参照されたい)。さらに、本発明によるポリアミドは高湿条件下における融解温度の降下がポリアミド46/4Tよりもはるかに小さく、それどころかポリアミド6T/4Tと比較してさえも小さく、それによって良好な耐ブリスター性が得られる。
【0008】
この利点は、水の拡散挙動にも反映される。一般に、コポリアミドの融解温度が低下するにつれて拡散速度が増大することが観測されている。しかしながら、本発明によるコポリアミドは、同じ融解温度を有するポリアミド46/4Tもしくはポリアミド6T/4Tよりも拡散速度が低いかあるいは拡散速度が同程度であっても融解温度がより低いことも観測されている。本発明によるコポリアミドは、飽和条件下における耐ブリスター性がより優れているだけでなく、はんだ付け工程中に前記ポリアミドにブリスターが発生するようになる前に高湿条件下で保管することができる最長期間が、同程度の融解温度を有するポリアミド46/4Tまたはポリアミド6T/4T製品よりも長いという利点がある。このコポリマーを、2種のポリアミドのコポリアミドの組合せ、例えば、ポリアミド6T/4Tおよびポリアミド46の組合せと見なすことができることを考えれば、この結果が非常に意外であることが特に明白になる。このような組合せを作るためにポリアミド6T/4T中のポリアミド4Tの一部をポリアミド46と置き換えると、融解温度は降下するが拡散は非常に低い水準のままであり、その増加の程度(もしある場合)は、拡散の高いポリアミド46の重量に基づいて説明できるものをはるかに下回る。
【0009】
本発明によるコポリアミドのさらなる利点は、同じ融解温度を有するPA46/4TコポリアミドまたはPA66/6TコポリアミドよりもTgが高いことにある。コポリアミドのTgは融解温度の上昇に伴い上昇することが観測されているが、PA46/4TコポリアミドおよびPA66/6Tコポリアミドと比較すると本発明によるポリアミドの方が大幅に上昇することも観測されている。ポリアミドを溶融加工するためには融解温度が高過ぎないことが好ましいが、高温下における機械特性を維持するためにはTgがより高い方が好ましい。したがって、本発明によるコポリアミドは、PA46/4TコポリアミドおよびPA66/6Tコポリアミドよりも高い温度まで機械特性が維持される(融解温度が等しい場合)かまたは同じ温度まで機械特性が維持される(融解温度がより低い場合)かのいずれかであるという利点を有する。
【0010】
さらに、本発明による半芳香族半結晶性ポリアミドは、同程度の高い融点を有するポリアミド46/4Tと比較すると、溶融安定性が改善されている。
【0011】
本出願の文脈における「半芳香族ポリアミド」とは、芳香族および脂肪族成分の組合せ(脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジアミンまたは芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジアミンまたはこれらの組合せ等)から誘導された構成単位を含むホモ−またはコポリアミドであると理解すべきである。ジアミンおよびジカルボン酸から作られたポリアミドは、例えば、ナイロン・プラスチック・ハンドブック(Nylon Plastic Handbook)、M・I・コーハン(M.I.Kohan)編、ハンサー・パブリッシャーズ(Hanser Publishers)、ミュンヘン、ISBN 1−56990−189−9(1995年)、5頁に記載されているように、AABBポリマーに分類される。半結晶性ポリアミドが非晶質ポリアミドと区別される点は、半結晶性ポリアミドは、固体では、非晶質領域に隣接した結晶領域を含む多相構造を特徴とすることにある。さらに、本明細書に記載されるポリアミドの命名法に関しては、ポリアミドという語の後に、最初の数字または文字がジアミンを指し2番目の数字または文字が二酸を指す数字およびまたは文字の組合せからなる記号が続く標準的な規則が適用されることに留意されたい。異なるホモポリアミドのモノマーを組み合わせたコポリアミドの場合は、ナイロン・プラスチック・ハンドブック、M・I・コーハン編、ハンザー・パブリッシャーズ、ミュンヘン、ISBN 1−56990−189−9(1995年)5頁に記載されているISOの慣例に従い、異なるホモポリアミドの記号がスラッシュで区切られる。
【0012】
本発明による半結晶性半芳香族ポリアミドはコポリアミドを含んでおり、その大部分はターポリマーまたはそれさえも超えるコポリアミド、すなわち3種以上のホモポリアミドに対応するモノマー組成物を含むものと見なすことができる。本発明によるこのようなターポリマーの代表的な例としては、ポリアミド6T/4T/46(これは、ポリアミド6T、ポリアミド4T、およびポリアミド46のコポリアミドである)、ポリアミド6T/66/46(ポリアミド6T、ポリアミド66、およびポリアミド46のコポリアミドである)、ポリアミド6T/5T/56(ポリアミド6T、ポリアミド5T、およびポリアミド56のコポリアミドである)、およびポリアミド6T/66/56(すなわち、ポリアミド6T、ポリアミド66、およびポリアミド56のコポリアミドである)が挙げられる。
【0013】
上述の改善された特性を有する本発明による半結晶性半芳香族ポリアミドが得られる本発明の手段の効果は、ホモポリアミドであるポリアミド46およびポリアミド56、特にポリアミド46の溶融安定性が限られていることと、これらのホモポリアミドの製造には、通常、連鎖停止剤として作用する可能性のある環状モノアミン等の副生成物の生成が伴うこととを鑑みれば、特に意外なことである。
【0014】
本発明による半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンおよび短鎖脂肪族ジアミンから誘導されたものを含んでいる。ジアミンから誘導された構成単位は本明細書においてB−B構成単位とも表され、それと同様に、ジカルボン酸から誘導された構成単位も本明細書においてはB−B構成単位と表される。さらに、以下、A−A構成単位およびB−B構成単位を一緒にしてA−A−B−B構成単位とも表す。
【0015】
芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸の総量に対し少なくとも80mol%がテレフタル酸から構成される。テレフタル酸以外に本発明によるポリアミド中に用いてもよい他の好適な芳香族ジカルボン酸は、例えば、イソフタル酸またはナフタレンジカルボン酸である。
【0016】
好適な脂肪族ジカルボン酸は、例えば、6〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、アジピン酸(C6)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(C8)、スベリン酸(C8)、セバシン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、またはこれらの混合物である。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物等のC6〜C10脂肪族ジカルボン酸であり、さらには、この脂肪族ジカルボン酸は、C6〜C8脂肪族ジカルボン酸である。最も好ましくは、この脂肪族ジカルボン酸はアジピン酸である。
【0017】
本明細書における「短鎖ジアミン」とは、2〜5個の炭素原子を有するジアミン、言い換えれば、短鎖脂肪族ジアミンはC2〜C5脂肪族ジアミンであると理解される。本発明によるポリアミド中に好適に用いることができるこの種のジアミンとしては、例えば、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、および1,5−ペンタンジアミン、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、短鎖脂肪族ジアミンは、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1,4−ブタンジアミンである。
【0018】
本明細書においては、長鎖脂肪族ジアミンとは、6〜12個のC原子を有するジアミンであり、言い換えれば、長鎖脂肪族ジアミンとは、C6〜C12脂肪族ジアミンであると理解される。これらのジアミン中の脂肪族鎖は、直鎖、分岐鎖、環式構造、およびこれらの任意の組合せであってもよい。本発明によるポリアミドに使用することができる好適な長鎖脂肪族ジアミンは、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミンとしても公知の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミン、ならびにこれらの混合物である。好ましくは、長鎖脂肪族ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、C8ジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、C10ジアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1,6−ヘキサンジアミンである。この好ましい選択肢、特に、より好ましい選択肢である1,6−ヘキサンジアミンの利点は、本発明によるコポリアミドの高温特性がさらに良好になることにある。
【0019】
ジアミン(AA)およびジカルボン酸(BB)から誘導されたA−A−B−B構成単位以外に、本発明によるポリアミドは、他の成分、例えば、脂肪族アミノカルボン酸(AB構成単位)および対応する環状ラクタムから誘導された構成単位に加えて少量の分岐剤および/または連鎖停止剤を含んでいてもよい。
【0020】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミン以外の成分から誘導された構成単位を、ポリアミドの総質量に対し10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下含む。最も好ましくは、本発明によるポリアミドは、このような他の成分を一切含まず、ジカルボン酸およびジアミンから誘導されたA−A−B−B構成単位のみからなる。その利点は、物流管理がより簡単なことと結晶の性質がより優れていることとにある。
【0021】
好適なラクタムは、例えば、ラウロラクタムおよびイプシロン−カプロラクタムである。好適な分岐剤は、例えば、トリメリット酸等の3官能性カルボン酸およびビスヘキサメチレントリアミン(BHT)等の3官能性アミンである。好適な連鎖停止剤は、安息香酸等の単官能性カルボン酸および単官能性アミンである。分岐剤と同様、連鎖停止剤が少しでも使用される場合は、好ましくは、これらの成分はそれぞれ、ジアミンおよびジカルボン酸の総モル量に対し1mol%以下、より好ましくは0.1mol%以下の量で使用される。
【0022】
好ましくは、本発明による半芳香族ポリアミド中の芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸の総モル量に対し少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%がテレフタル酸から構成される。究極的には、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸のみが使用される。テレフタル酸を唯一の芳香族ジカルボン酸として使用することの利点は、このポリアミドは結晶化度がより高く、耐ブリスター性が改善されており、かつ高温下における特性の保持力がより高いことにある。
【0023】
本発明によるポリアミドにおける脂肪族ジカルボン酸のモル量は、ジカルボン酸の総量に対し少なくとも5mol%であり、短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、ジアミンの総量に対し少なくとも10mol%である。
【0024】
芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンの最小量は明確には記載していないが、これらの量は、芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計がジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し60〜90mol%であるというさらなる要件に暗黙的に従うことになる。暗黙的には、芳香族ジカルボン酸の量は、ジカルボン酸の総量に対し少なくとも30mol%となり、長鎖脂肪族ジアミンの量は、ジアミンの総量に対し少なくとも25mol%となる。
【0025】
言い換えれば、ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸30〜95mol%および脂肪族ジカルボン酸70〜5mol%からなり、脂肪族ジアミンは、長鎖ジアミン25〜90mol%および短鎖ジアミン75〜10mol%からなる。これらの範囲(ジカルボン酸およびジアミンの組成は変化し得る)は、芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計がジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し60〜90mol%であるという要件にさらに制限されることに留意されたい。
【0026】
好ましくは、ジカルボン酸は、少なくとも30mol%、より好ましくは少なくとも35mol%が芳香族ジカルボン酸から構成される。同様に好ましくは、脂肪族ジアミンは、少なくとも15mol%、より好ましくは少なくとも20mol%が短鎖ジアミンから構成される。芳香族ジカルボン酸または短鎖ジアミンの量を増加させることの利点は、温度特性がさらに向上することにある。
【0027】
最も好ましくは、ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸50〜85mol%および脂肪族ジカルボン酸50〜15mol%からなり、脂肪族ジアミンは、長鎖ジアミン40〜80mol%および短鎖ジアミン60〜20mol%からなる。
【0028】
同様に好ましくは、本発明による半芳香族ポリアミド中における短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、脂肪族ジカルボン酸および短鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計に対し少なくとも30mol%であり、より好ましくは、この量は、少なくとも40mol%または少なくとも45mol%であり、少なくとも50mol%であれば尚よく、少なくとも55mol%であってさえよい。短鎖脂肪族ジアミンのモル量が多くなるほどポリアミドの熱安定性は高くなる。
【0029】
本発明による半芳香族ポリアミド中の短鎖脂肪族ジアミンのモル量はまた、短鎖および長鎖ジアミンのモル量に対し75mol%以下である。好ましくは、短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、短鎖および長鎖ジアミンのモル量に対し60mol%以下であり、50mol%、40mol%、または35mol%でさえより好ましい。このように短鎖ジアミンのモル量がより少ないコポリアミドの利点は、所与のTmを有するコポリアミドの場合、水拡散挙動が改善されることにある。
【0030】
芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計は、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し少なくとも65mol%であることがさらに好ましく、好ましくは少なくとも70mol%、より好ましくは少なくとも75mol%である。芳香族ジカルボン酸および長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計がより高いポリアミドの利点は、このポリアミドが、より高い融点およびより高い結晶化度とより高い熱安定性および溶融加工性とを兼ね備えていることにある。好適には、前記合計の範囲は、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し70〜85mol%であるかまたは75〜80mol%の場合さえある。
【0031】
本発明による半芳香族ポリアミドの好ましい実施形態においては、
芳香族ジカルボン酸の少なくとも90mol%がテレフタル酸からなり、
脂肪族ジカルボン酸の少なくとも80mol%がアジピン酸からなり、
長鎖脂肪族ジアミンの少なくとも80mol%がヘキサンジアミン、C8ジアミン、C9ジアミン、C10ジアミン、およびこれらの混合物からなり、かつ
短鎖脂肪族ジアミンの少なくとも80mol%が1,4−ブタンジアミンからなる。
【0032】
より好ましい実施形態においては、
芳香族ジカルボン酸の少なくとも95mol%がテレフタル酸からなり、
脂肪族ジカルボン酸の少なくとも90mol%がアジピン酸からなり、
長鎖脂肪族ジアミンの少なくとも90mol%がヘキサンジアミン、C8ジアミン、C9ジアミン、C10ジアミン、およびこれらの混合物からなり、かつ
短鎖脂肪族ジアミンの少なくとも90mol%が1,4−ブタンジアミンからなる。
【0033】
好ましくは、本発明による半芳香族ポリアミドは3種のポリアミドのターポリマーであり、第1のポリアミドは、ポリアミド6T、ポリアミド8T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、およびポリアミド12Tからなる群から選択され、第2のポリマーは、ポリアミド66、ポリアミド86、ポリアミド96、ポリアミド106、およびポリアミド126からなる群から選択され、第3のポリアミドは、ポリアミド4Tおよびポリアミド5Tからなる群から選択される。
【0034】
より好ましくは、半芳香族コポリアミドは、ポリアミド6T、ポリアミド66、およびポリアミド4T;ポリアミド8T、ポリアミド86、およびポリアミド4T;ポリアミド9T、ポリアミド96、およびポリアミド4T;ならびにポリアミドl0T、ポリアミド106、およびポリアミド4Tのターポリマーからなる群から選択されるターポリマーである。ターポリマーは、ポリアミド中に使用される各モノマーの比率に応じた、異なる方式で命名される場合もあることに留意されたい。例えば、ポリアミド6T/66/4T、すなわちポリアミド6T、ポリアミド66、およびポリアミド4Tのコポリアミドは、ポリアミド66の含量がポリアミド4Tよりも高いか低いかに応じてポリアミド6T/6T/46またはポリアミド6T/4T/46として命名する場合もある。
【0035】
本発明はまた、本発明による半芳香族ポリアミドの調製方法であって、テレフタル酸を含むジカルボン酸および脂肪族ジアミンを含むジアミンを共縮合させることによってA−A−B−B構成単位を含むポリアミドを形成する重合ステップを含み、ジカルボン酸およびジアミンが上述の組成を有する、方法に関する。
【0036】
本発明によるコポリアミドは、ポリアミドおよびそのコポリマーを調製するためのそれ自体公知の様々な方法で調製することができる。好適な方法の例は、例えば、ポリアミド、プラスチック・ハンドブック、3/4、ベッカー/ブラウン編、ハンザー・フェルラーク(ミュンヘン)、1998年、ISBN 3−446−16486−3に記載されている。
【0037】
重合は、例えば、溶液相法(solution phase process)または溶融相法(melt phase process)で実施してもよい。好ましくは、ジカルボン酸またはそのエステルもしくはポリエステルおよびジアミンの混合物(この混合物に水および過剰量のジアミンが添加される)が液相で重縮合され、相対粘度(ISO307、第4版の方法に従い96%硫酸中で測定)が例えば1.03〜1.80であるモル質量の小さいコポリアミドを形成する方法を用いる。このような方法は、例えば、S−5550208−A号明細書、EP−0393548−A号明細書、およびEP−0039524−A号明細書より公知である。これに続いて、場合により水蒸気および/またはジアミンを含んでいてもよい不活性ガス中で、コポリアミドが所望の粘度に到達するまで固相での後縮合が行われる。このような方法の利点は、溶融相中のコポリアミドが短時間しか高温にならないため、望ましくない副反応が最小限に抑えられることにある。
【0038】
重合の条件は、適用される方法の種類には依存せず、この方法を用いて得られるポリアミドの相対粘度(ISO307、第4版の方法に従い96%硫酸中で測定)が例えば1.80を超えるように適切に選択される。このようなポリアミドは良好な機械特性を与える。
【0039】
好ましくは,本発明によるコポリアミドは、相対粘度(ISO307、第4版の方法に従い96%硫酸中で測定)が少なくとも1.90であると同時に好ましくは6.0未満であり、より好ましくは2.0〜4.0、よりさらに好ましくは2.1〜3.5の範囲にある。
【0040】
さらに本発明によるポリアミドは、相対粘度が1.80未満の場合さえあり、1.7と低い場合や、それどころか1.6と低い場合もあるが、依然として良好な機械特性を維持していることが見出された。このことは、コポリアミド46/4Tおよび4T/6Tとは対照的である。このように粘度(ISO307、第4版の方法に従い96%硫酸中で測定)が低い、すなわち1.6〜1.8の範囲にあるポリアミドは、成形中の流動性がより良好であるとともに、より薄肉の構成要素を有する成形部品を作製することができるという利点がある。このような成形部品の場合、機械特性を維持することが実に重要である。
【0041】
本発明はまた、本発明による半芳香族ポリアミドおよび少なくとも1種の添加剤を含むポリマー組成物ならびに前記半芳香族ポリアミドおよび前記ポリマー組成物のポリアミド成形部品を作製するための使用に加えて、これから作製されたポリアミド成形部品にも関する。
【0042】
本発明による半芳香族ポリアミドと同様、前記ポリアミドを含むポリアミド組成物は、溶融物から例えば射出成形、押出成形、吹き込み成形、または圧縮成形によって製品を形成するのに抜群に適している。
【0043】
前記ポリアミド組成物中に含まれてもよい添加剤としては、ポリアミド成形用組成物を作製する当業者に公知の通常の添加剤が挙げられる。好適な添加剤は、例えば、安定剤(UV安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等)、着色剤、加工助剤(例えば、離型剤、潤滑剤等)、流動性向上剤(ポリアミドオリゴマー等)、耐衝撃性を改善するための試剤、充填剤、補強材(炭素繊維、ガラス繊維等)、および難燃剤(ハロゲン系難燃剤、非ハロゲン系難燃剤、難燃相乗剤等)である。ポリアミド組成物は、場合により、ポリアミド以外のポリマーも含んでいてもよい。
【0044】
好適には、ポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の総重量に対し20〜99.99重量%の量の半芳香族ポリアミドおよび0.01〜80重量%の量の少なくとも1種の添加剤を含む。好ましくは、少なくとも1種の添加剤の量は、ポリアミド組成物の総重量に対し0.1〜70重量%であり、より好ましくは1.0〜60重量%であり、2〜50重量%さえも好ましい。
【0045】
本発明による半芳香族ポリアミドまたはポリアミド組成物を用いて得ることができる製品は、例えば、自動車エンジン部品、電気および電子部品、フィルムおよび繊維である。
【0046】
好適には、本発明による半芳香族ポリアミドまたはこれを含むポリアミド組成物を含む成型部品は、自動車エンジン部品として、電気もしくは電子部品として、または航空宇宙用途および家庭用途に使用される。
【0047】
本発明は、以下の非限定的な実施例および比較試験を参照することによりさらに明らかになるであろう。
【0048】
[原料]
以下に説明するポリアミドの調製には工業用の材料を使用した。
【0049】
[実施例I:PA−6T/46(モル比74.4/25.6)の調製]
テトラメチレンジアミン136.25g、ヘキサメチレンジアミン384.29g、水530g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸166.20g、およびテレフタル酸549.27gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに仕込み、加熱しながら蒸留によって水を除去した。この試験および他のすべての試験においては、ポリアミド調製中におけるテトラメチレンジアミンの損失を補うために、ポリアミド組成物の組成の計算値よりもわずかに過剰(約2〜4重量%)のテトラメチレンジアミンを使用したことに留意されたい。27分後、塩の91重量%水溶液が得られた。その間、温度を170℃から212℃に昇温した。次いで、オートクレーブを密閉した。210℃から226℃に昇温しながら25分間重合を実施し、この間、圧力を1.4MPaに上昇させた。その後、オートクレーブの内容物をフラッシュし(flashed)、固体生成物を窒素中でさらに冷却した。次いで、こうして得られたプレポリマーを、乾燥炉において真空引きしながら0.02MPaの窒素気流中で数時間125℃に加熱することによって乾燥させた。乾燥した固体のプレポリマーを、金属製の管状反応器(d=85mm)中で、窒素気流(2400g/h)中200℃で数時間、次いで窒素/水蒸気(重量比3/1、2400g/h))中225℃で2時間および260℃で46時間加熱することによって後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0050】
[実施例II:PA−6T/4T/46(モル比67.5/21.3/11.2)の調製]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン179.8g、ヘキサメチレンジアミン347.25g、水537g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸72.36g、およびテレフタル酸653.38gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の91重量%水溶液を27分後に得た。この工程では温度を169℃から223℃に昇温した。温度を210℃から226℃に昇温しながら21分間重合を実施し、その間、圧力を1.3MPaに上昇させた。次いで、実施例Iと同様にしてプレポリマーを乾燥し、固相で後縮合させた。
【0051】
[実施例III:PA−6T/46/66(モル比67.5/11.2/21.3)の調製]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン57.77g、ヘキサメチレンジアミン454.24g、水498g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸209.21g、およびテレフタル酸493.18gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の91重量%水溶液を17分後に得た。この工程では、温度を168℃から206℃に昇温した。温度を210℃から226℃に昇温しながら25分間重合を実施し、その間、圧力を1.4MPaに上昇させた。次いで、260℃での後縮合の時間を17時間としたことを除いて、実施例Iと同様にして、プレポリマーを乾燥および固相で後縮合させた。
【0052】
[実施例IV:PA−6T/4T/46(モル比60.0/21.3/18.7)の調製]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン218.26g、ヘキサメチレンジアミン312.95g、水540g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸122.33g、およびテレフタル酸606.47gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の90重量%水溶液を22分後に得た。この工程では、温度を170℃から216℃に昇温した。温度を210℃から226℃に昇温しながら25分間重合を実施し、その間、圧力を1.5MPaに上昇させた。次いで、225℃での後縮合の時間を5時間としたことを除いて、実施例Iと同様にして、プレポリマーを乾燥および固相で後縮合させた。
【0053】
[実施例V:PA−6T/46/66(モル比60.0/18.7/21.3)の調製]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン94.91g、ヘキサメチレンジアミン421.58g、水524g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.36g、アジピン酸260.68g、およびテレフタル酸444.43gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の90重量%水溶液を19分後に得た。この工程では、温度を170℃から206℃に昇温した。温度を210℃から226℃に昇温しながら25分間重合を実施し、その間、圧力を1.5MPaに上昇させた。次いで、260℃での後縮合の時間を21時間としたことを除いて、実施例Iと同様にして、プレポリマーを乾燥および固相で後縮合させた。
【0054】
[実施例VI:PA−6T/4T/46(モル比74.5/10.0/15.5)の調製]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン127.09g、ヘキサメチレンジアミン350.05g、水487g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.66g、アジピン酸91.59g、およびテレフタル酸567.48gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の91重量%の水溶液を22分後に得た。この工程では、温度を176℃から212℃に昇温した。温度を220℃から226℃に昇温しながら22分間重合を実施し、この間、圧力を1.4MPaに上昇させた。次いで、このようにして得られたプレポリマーを、乾燥炉において真空引きしながら0.02Mpaの窒素気流中で125℃および180℃で数時間加熱することによって乾燥させた。プレポリマーを金属製の管状反応器(d=85mm)中で、窒素気流(2400g/h)中190℃および230℃で数時間、次いで窒素/水蒸気流(重量比3/1、2400g/h)中251℃で96時間加熱することにより、固相で後縮合させた。次いで、ポリマーを室温に冷却した。
【0055】
[実施例VII:PA−6T/4T/66(モル比65/13/22)の調製]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン57.42g、ヘキサメチレンジアミン368.62g、水546.88g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6g、アジピン酸117.22g、およびテレフタル酸472.37gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の91重量%水溶液を22分後に得た。この工程では、温度を176℃から212℃に昇温した。温度を220℃から226℃に昇温しながら22分間重合を実施し、この間、圧力を1.5MPaに上昇させた。次いで、このようにして得られたプレポリマーを、乾燥炉において真空引きしながら0.02Mpaの窒素気流中125℃および180℃で数時間加熱することによって乾燥させた。次いで、このプレポリマーを、260℃での後縮合の時間を48時間としたことを除いて実施例Iと同様にして乾燥および固相で後縮合させた。
【0056】
[比較例A:ポリアミド6T/4T(モル比60/40)]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン209.08g、ヘキサメチレンジアミン282.93g、水500g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.33g、およびテレフタル酸673.99gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の91重量%水溶液を25分後に得た。この工程では、温度を179℃から220℃に昇温した。温度を220℃から226℃に昇温しながら22分間重合を実施し、この間、圧力を1.6MPaに上昇させた。次いで、260℃での後縮合の時間を45分間としたことを除いて、実施例Iと同様にしてプレポリマーを固相で後縮合させた。
【0057】
[比較例B:ポリアミド46]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン430.4g、水500g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.33g、およびアジピン酸686.8gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の90重量%水溶液を25分後に得た。この工程では、温度を110℃から162℃に昇温した。温度を162℃から204℃に昇温しながら重合を実施し、この間、圧力を1.3Mpaに上昇させた。次いで、実施例Iと同様にして、プレポリマーを乾燥および固相で後縮合させた。
【0058】
[比較例C:ポリアミド46/4T(モル比40/60)]
実施例Iと同様にして、テトラメチレンジアミン444.23g、水616g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.33g、テレフタル酸301.66g、およびアジピン酸(アルドリッチ(Aldrich))398.11gの混合物を撹拌しながら2.5リットルのオートクレーブに加熱しながら仕込み、それによって塩の90重量%水溶液を25分後に得た。この工程では、温度を170℃から200℃に昇温した。温度を220℃から226℃に昇温しながら重合を実施し、この間、圧力を1.6Mpaに上昇させた。次いで、このようにして得られたプレポリマーを、乾燥炉において真空引きしながら0.02Mpaの窒素気流中125℃および180℃で数時間加熱することによって乾燥させた。次いで、プレポリマーを、260℃での後縮合の時間を48時間としたことを除いて実施例Iと同様にして乾燥および固相で後縮合させた。
【0059】
[射出成形]
上述したポリアミドを用いて射出成形部品を作製した。射出成形を行うため、以下の条件を適用することによって材料を使用前に予備乾燥した:コポリアミドを0.02Mpaの真空中で80℃に加熱し、窒素気流を通気しながらこの温度および圧力を24時間維持した。予備乾燥した材料を、直径22mmのスクリューおよびキャンパス(Campus)UL 0.8mm射出成形用2ピース型(2 body)金型を備えたアーブルグ(Arburg)5射出成形機にて射出成形した。シリンダの壁面温度を345℃に設定し、金型温度を140℃に設定した。このようにして得られたキャンパスULバーをさらなる試験に用いた。比較例Cの押出成形では大きな差が見られたことに注目されたい。
【0060】
[DSCによる熱的性質(ASTM D3417−97 E793−85/794−85に準拠)]
およびTの測定:2回目の融解温度(the second melting temperature)Tおよびガラス転移温度Tの測定を、メトラー・トレド・スター・システム(Mettler Toledo Star System)(DSC)を用いて、昇温および降温速度を20℃/分としてN雰囲気中で実施した。測定用試料として約5mgの予備乾燥したポリマー粉末を用いた。予備乾燥は、105℃の高真空中すなわち50mbar未満で16時間実施した。ポリアミド試料を20℃から360℃まで20℃/分で加熱し、すぐに40℃まで20℃/分で冷却し、次いで、再び360℃まで20℃/分で加熱した。ガラス転移温度Tについては2回目の昇温サイクルの変曲点を測定した。2回目の融解温度Tは2回目の昇温サイクルの融解ピークのピーク値を測定した。
【0061】
(sat)の測定:飽和時の融解温度T(sat)の測定を、メトラー・トレド・スター・システム(DSC)を用いて、昇温速度を5℃/分として実施した。射出成形試料を予備飽和させてからT(sat)の測定を実施した。予備飽和は、ポリアミドから作製したキャンパスULバーを40℃の水中に14日間で浸漬することによって実施した。次いで、このキャンパスULバーから質量約15mgの円形の試料を切り出し、耐圧DSCカップに水約15mgと一緒に装入した。融解温度T(sat)は、開始温度を20℃、昇温速度を5℃/分とした1回目の昇温時の融解ピークのピーク値を測定した。
【0062】
[等温TGA]
パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)TGA7熱天秤を用いて等温TGAを実施した。予備乾燥(高真空、<50mbar、T=105℃、16時間)した約5mgのポリマー粉末試料を使用した。ヘリウム雰囲気中、40℃/分で20℃から380℃まで昇温した後、380℃で1時間保持することにより測定を実施した。時間t=0分に20℃から昇温を開始した。時間t=15分からt=30分の間のTGA曲線の平均勾配を測定し、初期重量に対する1分間当たりの重量損失として百分率で表した。
【0063】
[水の取り込みおよび拡散定数D]
厚さI=0.8mm、初期重量(w0)のキャンパスULポリマー射出成形部品を脱塩水にT=40℃で浸漬することによって水の取り込みを測定した。一定間隔の異なる時間に重量(wt)を測定し、重量増加ΔW(t)=(wt−w0)を、水の取り込みが平衡に到達(w∞)して重量増加ΔW∞=(w∞−w0)となるまで測定した。状態調整時間の平方根t1/2に対する相対的な重量増加の傾きからフィック(Fick)の法則に従い拡散定数Dを決定した。
傾き=ΔW(t)/t1/2=(4/I)・(D/π)1/2・ΔW∞
ここで、ΔW(t)/ΔW∞=0.7までの測定データから傾きをとった。
【0064】
[相対粘度]
後縮合により得られたポリマーの相対粘度を測定した。ISO307、第4版に従い相対粘度の測定を実施した。予備乾燥したポリマー試料を用いて測定を実施した。乾燥は、80℃の高真空中(すなわち50mbar未満)で24時間実施した。相対粘度の測定を硫酸(96.00±0.15%、m/m)100ml中にポリマー1グラムを加えた濃度で25.00±0.05℃で実施した。ショット(Schott)(参照番号53020)からのDIN−ウベローデ(DIN−Ubbelohde)を用いて溶液(t)および溶媒(to)の流動時間を25℃で測定した。相対粘度はt/t0として定義される。
【0065】
実施例I〜VIIおよび比較試験A〜Cの組成および試験結果を表1にまとめた。
【0066】
この結果は、実施例においては比較試験の半芳香族ポリアミドよりも短時間でより高粘度のポリアミドを得ることができることを表している。これに次いで、実施例のポリアミドは一定量のポリアミド46成分を含んでおり、水で飽和することによりTmがかなり降下するが、実施例のポリアミドの降下の方がはるかに小さく、これは比較試験Aの半芳香族ポリアミドと比較してさえも小さい。さらに、実施例のポリアミドは溶融物の重量損失率が小さく、比較試験Aの半芳香族ポリアミドに近いかまたはそれを上回るものさえある。この結果は、ポリアミド46の溶融物の重量損失率が高いことと、実施例のポリアミドのポリアミド46の含量に基づき予測され得るものを上回っていることを考慮すれば、意外なことである。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジアミンを含むジアミンから誘導された構成単位(A−A構成単位)およびテレフタル酸を含むジカルボン酸から誘導された構成単位(B−B構成単位)を含む半結晶性半芳香族ポリアミドであって、
a.前記ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の混合物からなり、
i.前記芳香族ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸の総量に対し少なくとも80mol%がテレフタル酸から構成され、かつ
ii.前記脂肪族ジカルボン酸のモル量が、ジカルボン酸の総量に対し少なくとも5mol%であり、
b.前記ジアミンが、長鎖脂肪族ジアミンおよび短鎖脂肪族ジアミンの混合物からなり、前記短鎖脂肪族ジアミンのモル量が、ジアミンの総量に対し少なくとも10mol%であり、かつ
c.前記芳香族ジカルボン酸および前記長鎖脂肪族ジアミンのモル量の合計が、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対し60〜90mol%である
ことを特徴とする、半芳香族ポリアミド。
【請求項2】
前記脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸(C6)、スベリン酸(C8)、セバシン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の半芳香族ポリアミド。
【請求項3】
前記短鎖脂肪族ジアミンが、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、および1,5−ペンタンジアミン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド。
【請求項4】
前記長鎖脂肪族ジアミンが、ヘキサンジアミン、2−メチル−,1,5−ペンタンジアミン、C8ジアミン、C9ジアミン、2−メチル−,1,8−オクタンジアミン、C10ジアミン、C11ジアミン、C12ジアミン、およびこれらの混合物から、好ましくは、ヘキサンジアミン、C8ジアミン、C9ジアミン、C10ジアミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド。
【請求項5】
前記ポリアミドが、A−AおよびB−B構成単位以外の構成単位を、ポリアミドの総モル質量に対し10質量%以下の量で含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド。
【請求項6】
テレフタル酸を含むジカルボン酸および脂肪族ジアミンを含むジアミンを共縮合することによってA−A構成単位およびB−B構成単位を含むポリアミドを形成する(溶融または溶液)重合ステップを含み、前記ジカルボン酸およびジアミンが請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成を有する、半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミドおよび少なくとも1種の添加剤を含むポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミドまたは前記半芳香族ポリアミドおよび少なくとも1種の添加剤を含むポリマー組成物の、成形部品を製造するための使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミドを含む成形部品。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形部品の、自動車エンジン部品として、電気もしくは電子部品として、または航空宇宙および家庭用途における使用。

【公表番号】特表2009−524711(P2009−524711A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551709(P2008−551709)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000529
【国際公開番号】WO2007/085406
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】