説明

卓上切断機

【課題】 加工材を傷つける恐れがなく、良好な集じん効率が得られるスライド式卓上切断機を提供することである。
【解決手段】 切断刃物部14ののこ刃30の後方下部に、排出ロ14aへ切屑を誘導するゴム板状の切屑案内部材21を切断刃物部14の内側にプレート22を介してコの字状に固定し、切屑案内部材21は切断刃物部14を下限位置に押し下げたとき、ターンテーブル4上面と切断刃物30の交点位置からの切断刃物30外周接線より下方に伸びる形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切屑案内部材を備えた卓上切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスライド式卓上切断機においては、前記本体における切断刃物の後方に切屑の排出口を設け、その排出口に集じん袋や集じん機等を連結して、切断刃物の後方へ飛散する切屑を排出口から集じん袋等に回収している。このとき,切屑の集じん効率を向上させるため、例えば実開平3ー108401号公報や実開平3ー112301号公報には、本体の下部にあって排出口へ切屑を誘導する断面コ字状の切屑案内板を回転自在に軸支し、高さのある加工材では前記切屑案内板が加工材と接触して上昇する構造が開示されている。
【0003】
また、特開平8ー323706号公報では、前後方向へ任意に角度変更可能な筒体の切屑案内部材を設けた構造が開示されている。
【0004】
さらに、切断刃物部の切断刃物の後方下部に、排出ロへ切屑を誘導するゴム板状の切屑案内部材を有したものが発明されている。
【0005】
【特許文献1】実開平3ー108401号公報
【特許文献2】実開平3ー112301号公報
【特許文献3】特開平8ー323706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の実開平3ー108401号公報や実開平3ー112301号公報にあっては、硬質の切屑案内板が加工材と接触することから、加工材の上面を傷つける恐れがある。特に本体が前後ヘスライドしながら切断するスライド式卓上切断機では、加工材へ接触する切屑案内板を引きずりながらスライドさせるため、加工材に傷を付けやすい。また、特開平8ー323706号公報にあっては、加工材の高さに応じて切屑案内部材の角度を変え、固定しなければならない、という煩わしさがあった。
【0007】
さらに、長すぎるゴム板状の切屑案内部材を有したものにあっては、高さのある加工材を切断したときに、前記切屑案内部材が切断刃物で切り取られ切損してしまうため、その後の折損した部分から切屑がもれ、集じん機能を低下させる問題があった。
【0008】
また、前記切屑案内部材が長すぎて、高さのある加工材を切断したときに、切断刃物側へ前記切屑案内部材が変形し該切屑案内部材が切断刃物に接触してしまうことがあった。
【0009】
本発明の目的は、ゴム板状の切屑案内部材によって切屑の排出を円滑にするようにした卓上切断機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、ベース上方に前後移動し、かつベース上面に対し上下揺動する切断刃物部を設け、切断刃物部の後方に切屑の排出口を有する卓上切断機において、切断刃物部の後方下部に排出ロへ切屑を誘導するゴム板状の切屑案内部材を切断刃物部の内側にプレートを介してコの字状に固定し、切屑案内部材は切断刃物部を下限位置に押し下げたとき、ターンテーブル上面と切断刃物の交点位置からの切断刃物外周接線より下方に伸びる形状としたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム板状の切屑案内部材を切断刃物部の内側にプレートを介して固定することにより、コの字状に固定することができ、切屑の排出を円滑に行うことができる卓上切断機を提供することができるようになる。また、プレートを介して固定を行うため、切屑案内部材を切断刃物部に固定するための固定部を少なくすることができ、組立性を向上させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図1〜図8を用いて説明する。図1はスライド式卓上切断機の側面図、図2は図1の背面図、図3は切断刃物部が切断位置にあるときの部分側面図、図4は広い加工材の初期切断段階時の部分側面図、図5は広い加工材の切断終了間際時の部分側面図、図6は高さのある加工材切断時の部分側面図、図7は図1のAーA線断面図、図8はBーB線断面図である。
【0013】
図において、ベース1上面に加工材2を支持するフェンス3を固定する。ベース1にはターンテーブル4が嵌合し、ターンテーブル4はベース1に挾持され、水平方向へ回動自在となっている。ターンテーブル4の側面にグリップ23をねじ嵌合し、グリップ23を回すことによりベース1の側面を押圧し、ターンテーブル4の回動を規制する。ターンテーブル4後端にホルダシャフト6を設け、ホルダシャフト6の軸心はターンテーブル4上面とほぼ一致するように位置させている。このホルダシャフト6でターンテーブル4とホルダ7を連結している。ターンテーブル4にはホルダシャフト6を中心とする長穴26が形成され、長穴26にレバー8を挿通し、かつホルダ7にねじ嵌合している。レバー8を緩めると、ホルダ7はホルダシャフト6を支点として、長穴26の範囲内で左右傾斜自在となり、レバー8を締め付けると、ホルダ7を任意位置で固定することができる。
【0014】
直角切断の状態(ホルダ7がターンテーブル4に対し直角に立設した状態)において、ホルダ7上方にターンテーブル4上面に対し平行な貫通孔7aを2ヵ所穿設し、この貫通孔7a内に図示しない摺動保持部材を設け、貫通孔7a内に左右に並列した摺動部材となる2本のガイドバー9をそれぞれ挿通する。ガイドバー9は前記摺動保持部材によりターンテーブル4上面に対し平行に、かつ前後方向に摺動する。ガイドバー9の前端には切断刃物部ホルダ10、後端にガイドバー9の抜け止め用のサポート11が設けられている。ホルダ7と切断刃物部ホルダ10、ホルダ7とサポート11間には各々べローズ12が連結され、ホルダ7前後のガイドバー8を覆っている。ホルダ7側面に設けたノブ13はガイドバー9の摺動を固定するものである。
【0015】
切断刃物部ホルダ10には、切断刃物部14がヒンジシャフト15によりターンテーブル4上面に対し上下揺動自在に軸支され、スプリング25により上方に付勢されている。切断刃物部14には図示しない上・下限位置を規制する各ストッパー、モーター16、切断刃物の1つであるのこ刃30及び切断刃物部14を押し下げるハンドル17を備えている。また、切断刃物部14にはモーター16からのこ刃30へ動力を伝達するため、図示していないが、ベルトやギヤなどの動力伝達機構を有している。なお、切断刃物部ホルダ10の揺動支点とのこ刃30の軸間の距離は、常に一定に保たれている。
【0016】
図5に示すように、ホルダ6の前端部には、ガード18が中央の切屑案内具19を介してノブ20で固定している。切屑案内具19はのこ刃30が最下限位置まで下げたとき、のこ刃30に近接した円弧状となっており、切屑を円滑に上方へ案内する。
【0017】
切断刃物部14ののこ刃30の後方に切屑の排出口14aを有し、切断刃物部14ののこ刃30後方下部に位置する切屑通路14bに、ゴム板でコの字状の切屑案内部材21を内側からプレート22を介し切断刃物部14に固定される。切屑案内部材21はゴム状のため加工材2に接触しても折り曲がるようになっている。プレート22は切屑案内部材21が折り曲った場合、のこ刃30に接触しないように切屑案内部材21の折り曲り量を規制する。切屑案内部材21の切断刃物部14から下部に突出する長さは、切断により発生した切屑は加工材2から露出するのこ刃30から接線上に飛散するから、このときの切屑を受け止める長さとしている。
【0018】
切断刃物部14が下限位置に押し下げられ切断位置(図3)にあるとき、ターンテーブル4上面とのこ刃30の交点位置からののこ刃30外周接線Cより下方に伸び、かつ、切断刃物部14下部の切屑案内部材21がのこ刃30側へ弾性変形してものこ刃30外周に接触しない長さとする。
【0019】
上記構成において、小物の加工材2をフェンス3に対し直角に切断する場合、図1の状態で、ノブ13で切断刃物部ホルダ10の前後摺動を規制し、加工材2をフェンス3面に押しあて固定し、ハンドル17により切断刃物部14を押し下げて直角切りを行なう。
【0020】
次に、フェンス3面に対し水平方向に角度をつけて切断する場合には、グリップ23を緩め、ターンテーブル4を回動させ、フェンス3とのこ刃30の角度を所定位置に合わせグリップ23を締めて、ターンテーブル4の位置を固定する。切断作業は前記直角切りの場合と同じである。
【0021】
また、幅の広い加工材を切断する場合には、フェンス3面に加工材2を押しつけ固定したあと、ノブ13を緩めハンドル17で手前側に引くと、切断刃物部ホルダ10、サポート11、ガイドバー9及び切断刃物部14は一体となって前方に移動する。図4のように、ハンドル17を押し下げ切込みを与えたあと、後方に切断刃物部14を摺動させながら切断を行う。切断後、押し下げていた力を弱くすれば、スプリング25により切断刃物部14が上方に押し上げられる。
【0022】
傾斜切りの場合は、レバー8を緩め、ホルダ7を左右方向へ傾斜回動させ、ターンテーブル4上面とのこ刃30との傾斜角を所定位置に合わせたあと、レバー8を締めホルダ7を固定する。(図1,2参照)次に、前述した直角切り、角度切り等の手順により切断すれば良い。
【0023】
上記したように、スライド、直角、角度、傾斜切り、また、前述した角度切りの切断方法と傾斜切りの方法を組み合わせた複合切断が可能であり、このとき、切断により発生した切屑は加工材2から露出するのこ刃30から接線上に飛散する。
【0024】
次に、加工材2の切断で発生する切屑の流れについて説明する。図4のように、切断刃物部14を前方に移動し、ハンドル17を押し下げ、加工材2に切込みを与えながら、切断刃物部14を後方に移動させながら切断すると、切屑はのこ刃30の回転力で矢印D方向へ流れ、初めに切屑案内部材21で捕捉され、次に、排出口14aまでに誘導され、ダストバック24に蓄積する。切断が進み、図5のように切断終了間際では、切屑案内部材21はガード18に接触して弾性変形してしまい、切屑案内の役目を果たさなくなるが、切屑はのこ刃30からの接線方向に飛散するため、矢印E方向へ流れる。切屑は、まず、切屑案内具19で排出口14aまで誘導され、ダストバック24に蓄積する。なお、切屑案内部材21はターンテーブル4上面とのこ刃30の交点位置からののこ刃30外周接線Cより下方に伸び、かつ、のこ刃30側へ弾性変形してものこ刃30外周に接触しない。
【0025】
また、図6のように高さのある加工材2では軟質の切屑案内部材21が加工材2に接触しても、切屑案内部材21がのこ刃30に接触しないようにプレート22に制限されつつ弾性変形するが、切屑は加工材2から露出するのこ刃30から接線上に流れるため、切屑は効率良く集じん袋に回収される。さらに、のこ刃30で切屑案内部材21を切損させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明卓上切断機の一実施形態を示す側面図。
【図2】図1の背面図。
【図3】切断刃物部が切断位置にあるときの部分側面図。
【図4】幅の広い加工材の初期切断段階時の部分側面図。
【図5】図4の切断終了間際時の部分側面図。
【図6】高さのある加工材切断時の部分側面図である。
【図7】図1のAーA線断面図。
【図8】図1のBーB線断面図。
【符号の説明】
【0027】
2…加工材、10…切断刃物部ホルダ、14…切断刃物部、14a…排出口、18…ガード、19…切屑案内具、21…切屑案内部材、30…のこ刃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上方に前後移動し、かつベース上面に対し上下揺動する切断刃物部を設け、前記切断刃物部の後方に切屑の排出口を有する卓上切断機において、該切断刃物部の後方下部に前記排出ロへ切屑を誘導するゴム板状の切屑案内部材を前記切断刃物部の内側にプレートを介してコの字状に固定し、該切屑案内部材は前記切断刃物部を下限位置に押し下げたとき、前記ターンテーブル上面と前記切断刃物の交点位置からの該切断刃物外周接線より下方に伸びる形状としたことを特徴とする卓上切断機。
【請求項2】
前記切屑案内部材は、前記プレートによって折り曲り量が規制され、前記切断刃物側へ弾性変形しても該切断刃物外周に接触しないことを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の卓上切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−182037(P2006−182037A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99595(P2006−99595)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【分割の表示】特願平9−342513の分割
【原出願日】平成9年12月12日(1997.12.12)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】