説明

単一の生細胞におけるウイルス遺伝子発現動態のリアルタイム定量分析のためのツール

単一の生細胞レベルにおける、ウイルス遺伝子の発現動態の定量的なリアルタイムの分析のためのツール。本発明は、バイオルミネッセントレポーター遺伝子及び単一の光子を高い効率で検出し、それらのx、y−横座標及び正確な発生時間(すなわち、時点)を割り当てるための高感度のデジタル光検出装置を用いる、単一の生細胞レベルでのウイルス複製の検出及び定量的なリアルタイムの測定を可能とする方法を提供し、ここで、バイオルミネッセンスの上記空間的及び時間的特徴は、単一の生細胞レベルにおけるウイルス複製の指標である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の方法及びキットは、単一の生細胞レベルにおけるウイルス複製のリアルタイム定量測定のための新しいツールを提供する。本発明によれば、「ウイルスの」という用語は、DNA及びRNAウイルスを区別なく示す。
【背景技術】
【0002】
標的細胞に感染後のウイルス複製の制御に関する研究は、発病に影響する、ウイルスの及び宿主の因子についての重要な情報を提供した。
【0003】
蛍光ウイルスタンパク質コンジュゲートは、単一細胞モデルにおけるHIV感染の研究に用いられてきた(McDonald et al. (2002) J. Cell Biol. 159:441-452)。しかしながら、これらの標識化戦略は、組込み前複合体の形成の時点における、またはその後のウイルスの可視化を支援しない。さらに、HIV遺伝子発現を追跡するための蛍光ベースの方法は、感度及び記録の持続時間が不足している。
【0004】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子を担持するHIVベクターなどのウイルスベクターは、標的宿主細胞中での単一サイクルのウイルス複製を定量するために広く使用されており、ウイルスと宿主細胞の相互作用に関する知識を広げるための安価なツールを構成する(Chen et al. (1994) J. Virol. 68:654-603;Connor et al.(1995) Virology 206:935-44;Liu et al. (1996) Cell 86:367-77, Mariani et al. (2003) Cell 114:21-31)。
【0005】
しかしながら、これまでこれらの研究は、細胞ライセート懸濁液中でのケミルミネッセンス(バイオルミネッセンス)光生成のルミノメーターアッセイに基づく、ウイルス感染レベルの定常状態(エンドポイント)測定に限られてきた。したがって、それらの有用性にもかかわらず、かかる方法は感染の動態をリアルタイムに読み取ることを提供できず、単一細胞での解析を欠き、細胞間の不均一性により生じる機能的な相違を考慮しないものである。
【0006】
したがって、バイオルミネッセンスが、丸ごとの動物、組織、そして単一細胞レベルにおいてさえ、遺伝子発現(及び他の生理学的パラメータ)の長期の変化のリアルタイム分析のための方法論の選択肢となったことは非常に興味深い(Doyle et al. (2004) Cell Microbiol. 6:303-176;Greer et al. (2002) Luminescence 17:43-74;Rutter et al. (1995) Curr. Biol. 5:890-9;Shorte et al. (2002) Endocrinology 143:1126-33)。
【0007】
ケミルミネッセントレポーター遺伝子は、特定の自然の基質が存在しかつ励起光が存在しない状態で可視光の持続的な発光を起こす、天然の酵素を使用することに基づき(Alam et al. (2003) In S.C. Makrides (ed.), Gene transfer and expression in mammalian cells, vol.38. Elsevier Science Publishing, The Netherlands)、光毒性作用を無視できるものとする。特にルシフェラーゼの場合には、その基質であるD-ルシフェリンと反応コファクターであるO2及びATPの存在下で、発光タンパク質が光を発する(Ignowski et al. (2004) Biotechnol. Bioeng. 86:827-34)。細胞膜はD-ルシフェリンに対して透過性であり(それによって、ルシフェラーゼ酵素を発現する細胞又は組織中へのこの基質の送達を容易化する);そして、ルシフェラーゼ発現もその基質であるルシフェリンの存在も生組織に対して毒性でない。酵素反応コファクター(O2及びATP)及び基質の細胞内濃度が無制限であるとすると、得られるバイオルミネッセントシグナルは、遺伝子発現のレベルがこのシグナルの関数として推定されうるので、定量的なものとなる(Rutter et al. (1998) Chem. Biol. 5:R285-90)。
【0008】
これまでウイルス病理学の分野では、ルシフェラーゼイメージング技術は、安定にトランスフェクトされた単一細胞中でのウイルスプロモーターを介する遺伝子発現のリアルタイム分析に限られてきた(White et al. (1995) J. Cell Science 108, 441-455)。このアプローチは、ウイルス遺伝子転写の制御をより理解するためには有用なツールであるが、ウイルス複製のより複雑な現象に関する情報を得ることはできなかった。
【0009】
細胞、特に初代細胞における単一細胞の不均一性がどの程度までウイルス感染、特にHIV感染、動態に影響しうるかに関するより深い知識を得ることのできる方法が必要とされており、インサイチュでのウイルス複製のキネティクスをモニター可能であることはなお非常に必要とされる。
【0010】
本発明が解決しようとする問題は、単一の生細胞レベルにおいて、ウイルス複製の検出及び定量的なリアルタイム測定を可能とする方法を提供することである。
【0011】
本発明の方法は、単一の生細胞内でのウイルス複製を追跡するためのバイオルミネッセントレポーター遺伝子の使用に基づく。
【0012】
本発明の方法は、検出された各光子についてx,y−座標及び時点を割り当てるImaging Photon Detectorを備えた、高感度のデジタル光検出画像装置にも基づく。
【0013】
本発明によれば、バイオルミネッセントレポーター遺伝子が、ウイルスゲノム中に挿入される。ウイルス複製の間、ウイルスゲノムがウイルスタンパク質をコードするmRNAに転写されるとき、バイオルミネッセントレポーター遺伝子が同時に転写される。そして、バイオルミネッセントレポーター遺伝子の転写物はバイオルミネッセントレポータータンパク質に翻訳される。バイオルミネッセントレポータータンパク質による発光が誘導されると、放射光は、バイオルミネッセントレポーター遺伝子のコピー数及びそれらの転写速度に比例する。バイオルミネッセントレポーター分子の数はウイルス複製速度の関数であるため、放射光速度とウイルス複製速度の間に直接的な相関が生じる。検出された各光子にw,y−座標及び時点を割り当てるPhoton Detectorの本発明における使用は、放射光速度と、光がそこから放射される単一細胞である発光源の位置を相関させることを可能とする。したがって、バイオルミネッセントレポーター遺伝子システムを用いる本発明の方法は、放射光の速度、特に放射光子の速度を検出しかつ測定し、そしてウイルス複製キネティクスをモニターすることによって、単一細胞中でのウイルス複製速度を検出しそして測定することを可能とする。
【0014】
特に、本発明の方法は、ウイルスゲノムの組込みに続くレトロウイルス遺伝子発現のインサイチュでの単一細胞レベルにおける定量測定に有用である。
【0015】
本発明の方法が任意のウイルス又はレトロウイルス、並びに任意のバイオルミネッセントレポーター分子に適用可能であることは理解される。したがって、それは、広く多様なウイルス−宿主細胞相互作用についての定量的研究のための好適なツールを構成する。特に、それは、ウイルスの生きている自然の標的細胞又は組織中でのウイルス遺伝子発現の量的動態を追跡することを可能とする。
【0016】
本発明の方法は、ウイルス複製に関与する宿主細胞特異的因子の同定及び新しい抗ウイルス薬の同定を主目的とするスクリーニングアッセイとして非常に大きな可能性を含んでいる。
【0017】
本発明の単一細胞に基づくウイルスアッセイは、細胞タイプに限られるものでは全くない。それが自然の標的細胞の初代培養又はクローン細胞中で等しく上手く機能することが重要である。インビトロ又はインサイチュ感染パラダイムのいずれかを用いて自然の標的細胞が標的化されうる場合には、これは大きな利益を提供する。例えば、単一細胞に基づくHIVアッセイに応用された場合、本発明の方法は、実際の症例研究から単離された血液サンプルに対して使用されてよく、そして、該患者からの単一細胞におけるHIV複製をモニタリングするために使用可能である。
【発明の開示】
【0018】
本発明は、ウイルス複製の単一生細胞レベルでの定量的なリアルタイム検出及び/又は測定のための方法に関し、該方法は以下のステップ:
a)ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクターを提供し、ここで、該バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現がウイルスゲノムの上記部分に含まれるウイルスプロモーターによって制御され;
b)インビトロで、上記構築物又は該組換え構築物を含むベクターで生細胞を感染させ、トランスフェクトし又は形質導入し;
c)場合により、上記系にウイルス複製に必要なウイルス要素を補完し;
d)少なくとも複製が開始したと推定するのに十分な時間、場合により補完された、上記感染した、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞を培養し;そして、
e)検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てる高感度デジタル光検出画像装置を用いて、上記感染された、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞中で上記レポーター遺伝子によって発現された産物のレベルを単一の生細胞レベルで検出し、測定し、そして場合により累積する、
を含み、ここで、上記測定された産物の発現レベルは、単一の生細胞レベルでのウイルス複製の指標である。
【0019】
したがって、本発明の方法は、ウイルス複製キネティクスをモニターすることを可能とする。
【0020】
本発明の方法は、既に知られているか又は開発されている、ウイルスに感染した細胞培養系とともに使用されることができる。
【0021】
本発明の方法を適用することによってその複製が検出及び/又は測定可能であるウイルスは任意のウイルスであることができる。ウイルスは任意のDNAウイルス、RNAウイルス、哺乳動物ウイルス、特にヒトウイルス、又は植物ウイルスであることができる。
【0022】
本発明の方法は、HIV、特にHIV-1、SIV、及び関連するレトロウイルス;インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに優先的に適用されるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明によれば、好ましいレトロウイルスはHIV-1である。
【0024】
該システムは、クレード及びトロピズムとは無関係にすべてのHIV-1菌株又は単離物、そして完全な複製型ウイルスにも適用されることができる。
【0025】
本発明によれば、「ウイルス複製」は、DNA又はRNAウイルスのウイルス複製に及び、そして「ウイルスゲノム」はDNA又はRNAウイルスのゲノムに及ぶ。
【0026】
これによれば、本発明の方法において使用される細胞培養系は、その複製が本発明の方法によって研究される各ウイルスに適合される。当業者は、細胞培養条件を、その複製が研究される特定のウイルスに適合させることについて非常によく知っており、そしてそのことに困難性を有さない。
【0027】
上記方法が適用される生細胞は、任意の生細胞であることができる。その感染及び/又は複製が本発明の方法によって定量的に追跡されなくてはならない自然の標的を構成する細胞が優先される。生細胞は、初代細胞であることがより好ましい。それは、株化細胞からの細胞であることもできる。
【0028】
HIV-1ウイルスの場合、生細胞は、単球由来のマクロファージ及び末梢血からのCD4 Tリンパ球であることが好ましい。
【0029】
本発明によれば、「ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクター」は、バイオルミネッセントレポーター遺伝子がウイルス複製のために必須でない位置において非欠損完全ウイルスゲノム又は部分的に欠損したウイルスゲノムに導入され、かつ該部分的に欠損したウイルスゲノムがウイルス複製のために必須でない位置で欠損しているという条件で、該組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクターが、その中にバイオルミネッセントレポーター遺伝子が導入されている非欠損完全ウイルスゲノム又はその中にバイオルミネッセントレポーター遺伝子が導入されている部分的に欠損したウイルスゲノムを含むことができるということを意味する。
【0030】
場合により、上記組換え構築物又は上記組換え構築物を含むベクターは、除去された遺伝子の発現産物をコードする遺伝子のコトランスフェクションによって補完されることができる。
【0031】
本発明によれば、本発明の方法のステップa)において使用される、ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物は、ウイルス複製のために必須でない少なくとも1つの遺伝子が、慣用の組換え技術を用いてバイオルミネッセントレポーター遺伝子で置換されることが有利である。
【0032】
本発明によれば、好ましい組換え構築物は、バイオルミネッセントレポーター遺伝子で置換されているnef遺伝子を除いたHIV-1ウイルスゲノム全体を含む。
【0033】
場合により、ウイルスゲノムのいくつかの他の遺伝子が修飾されてよく、例えば、得られた欠損ウイルスが、エンベロープをコードする効率的な遺伝子がコトランスフェクトされた場合にのみ標的細胞に感染することができるように、エンベロープをコードする遺伝子中にフレームシフトが導入されることができる。
【0034】
より好ましくは、組換え構築物は、Connor et al. (Virology (1995) 206, 935-944)に記載のプロウイルスpNL-Luc-E-R+から成るか、又は該ベクターに由来する。
【0035】
C型肝炎ウイルスの場合、好ましい組換え構築物は、完全長JFH1ゲノムのバイシストロニックなレポーター構築物をコードする、プラスミドpFK-Luc-JFH1(Wakita et al. (2005) Nat. Med. 11: 791-6)から成る。この組換え構築物においては、HCVポリプロテインコード領域は、第二シストロン中に位置し、そして第一シストロンは、JFH-1由来の5’−UTRプロモーターに融合したホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子及びコアの16アミノ末端残基のコーディング領域を含む。
【0036】
本発明によれば、任意のバイオルミネッセントレポーター遺伝子、好ましくはルシフェラーゼ遺伝子が上記方法中で使用されることができる。ルシフェラーゼは、酸素及び基質(ルシフェリン)の存在下で発光し、そして、細胞培養、個々の細胞、生物体全体、及びトランスジェニック生物における、遺伝子発現のリアルタイム低光量イメージングに使用されてきた酵素である。かかるルシフェリン−ルシフェラーゼ系は、中でも、陸生のフォトルハブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescens)及び海生のビブリオ・ハーベイイ(Vibrio harveyi)細菌の細菌lux遺伝子、並びにホタル種(フォチヌス(Photinus))及びウミシイタケ(レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis))それぞれ由来の真核生物ルシフェラーゼluc及びruc遺伝子を含む。ルシフェラーゼの修飾形態、特にルシフェラーゼのスペクトル及び/又は(Pbtによる)リソソームを標的とする修飾形態も、本発明の方法において使用可能である。
【0037】
本発明の方法によれば、ルシフェラーゼ(ホタル又はウミシイタケ)遺伝子が使用されることが好ましい。
【0038】
特別な実施態様においては、組換え構築物はさらに、蛍光レポーター遺伝子を含む。バイオルミネッセント標識は、機能性ウイルス遺伝子の発現を示すが、蛍光は、感染性のウイルス粒子の細胞内局在化を示すであろう。
【0039】
好ましいデジタル光検出画像装置は、最近記載された、非常に低レベルの発光を検出可能な特製顕微鏡画像システムである(Rogers et al. (2005) Eur J Neurosci 21:597-610)。このシステムは、個々の光子事象を識別し、検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てることのできる、感度の高い光子検出システム(イメージングフォトンディテクター(Imaging Photon Detector IPD))を含む(Hooper et al. (1990) J. Biolumin. Chemilumin. 5:123-30)。
【0040】
本発明によれば、生細胞を感染させ、トランスフェクトし、形質導入し、上記系にウイルス複製のために必須のウイルス要素を補完し、そして感染細胞を培養するための任意の知られた及び記載された方法が、上記方法において使用されることができる。
【0041】
本発明の1つの特別な実施態様によれば、上記方法は、細胞の不均一性の考慮並びに一次組織標本及び器官型組織標本の特定の細胞小集団におけるウイルス複製の定量を可能とする蛍光マーカーと組み合わせられることができる。
【0042】
特別には、レポーターウイルスによる形質導入/感染後のウイルス細胞保有宿主(すなわち、抗ウイルス療法中の休止期CD4T細胞又は単球/マクロファージ)中でのHIV複製及びウイルス発現の活性化の研究への応用であることができる。
【0043】
本発明はまた、生細胞のゲノム内でのレトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写の定量的リアルタイム測定のための先に記載された方法の使用にも関し、ここで、上記産物の発現レベルは、感染した、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞のゲノム内での上記レトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写レベルの指標である。
【0044】
本発明はまた、生細胞内でウイルス複製を改変、好ましくは阻害することのできる分子をスクリーニングするための先に記載の方法の使用にも関し、ここで、上記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルの改変、好ましくは減少、は、ウイルス複製を改変、好ましくは阻害することのできる分子の指標である。
【0045】
本発明はまた、生細胞ゲノム内でのウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写を改変、好ましくは阻害することのできる分子のスクリーニングのための先に記載の方法の使用にも関し、ここで、上記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルの改変、好ましくは減少、は、細胞のゲノム内でのウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写を改変、好ましくは阻害することのできる分子の指標である。
【0046】
本発明はまた、先に記載の方法のいずれか1つを実施するために設計されたキットにも関し、該キットは以下の:
a)ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクター、ここで、上記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現が上記ウイルスゲノムの一部に含まれるウイルスプロモーターによって制御され;
b)場合により、上記系を補完するための、ウイルス複製に必要なウイルス要素;
c)上記組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクターで感染された、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞中で検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てる高感度デジタル光検出画像装置によって、上記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルを定量測定するための試薬;及び
d)場合により、標準曲線、又は標準曲線を描くための試薬、
を含む。
【0047】
本発明によるキットの他の実施態様においては、上記組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクターは、さらに蛍光レポーター遺伝子を含む。
【0048】
材料及び方法
ルシフェラーゼ遺伝子を担持するウイルス粒子の産生
pNL-Luc-E-R+は、(ウイルス遺伝子nefを置換し、そして自然のNef翻訳開始部位を利用する)ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を担持する、プロウイルスHIV-1(NL4.3菌株)プラスミドである。さらに、このプラスミドは、HIV-1エンベロープタンパク質の発現を回避するウイルスenv遺伝子の近くにフレームシフトを含む。この構築物は完全に(Connor et al. (1995) Virology 206:935-44)に記載されている。ルシフェラーゼレポーター遺伝子を担持する、単一サイクルのコンピテントHIV-1粒子が、プロウイルスpNL-Luc-E-R+(7.5μg)、及びHIV-1 BaL菌株のエンベロープたんぱく質をコードするHIV-1 BaL-Env発現ベクター(15μg)、又は遍在性の(汎親和性の)細胞受容体を有し(Aiken (1997) J. Virol. 71:5871-7)そして感染の高効率性を確実にする水泡性口内炎ウイルス由来のGタンパク質をコードするVSV-G発現ベクター(7.5μg)で、5×106個の293T細胞を一過性にコトランスフェクト(SuperFect、Qiagen)することによって産生された。細胞のトランスフェクションの48時間後、培養上清を採取し、濾過し、そして−80℃で保存した。ウイルス粒子の産生を、濾過上清中のウイルスp24のELISA定量化(Beckman Coulter, Paris, France)によって評価した。pNL-Luc-E-R+だけでトランスフェクトした細胞の上清を対照として用いた。
【0049】
単球由来マクロファージ及びCD4細胞の初代細胞培養
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健康な血清反応陰性ドナーのバフィーコート(Centre de Transfusion Sanguine Ile-de-France, Rungis or Hopital de la Pitie-Salpetriere, Paris, France)から、Ficoll-Hypaque(Pharmacia Biotech)密度勾配遠心分離によって単離した。プラスチックへの付着によって単球を単離し、その後、200mMのL-グルタミン、100Uのペニシリン、100μgのストレプトマイシン、10mMのHEPES、10mMのピルビン酸ナトリウム、50μMの2−ME、1%のMEMビタミン及び1%の非必須アミノ酸を補充したRPMI1640培地(MDM培地)中の疎水性Teflon(登録商標)バッグ(Lumox; Dominique Dutscher)中に15%のヒトAB血清の存在下で10日間おいて、先に記載のとおりにマクロファージを分化させた(Perez Bercoff et al. (2003)J. Virol. 77:4081-94)。単球由来のマクロファージ(MDM)をその後採取し、洗浄し、実験のために10%の熱失活したウシ胎児血清(FCS)を含むMDM培地中に再懸濁した。製造者の指定どおり、抗体でコーティングした免疫磁性ビーズ(Miltenyi Biotech, France)を用いる正の選択によってPBMCからCD4細胞を精製した(フローサイトメトリー分析により推定して99%超)。CD4 T細胞は、インターロイキン−2(IL2)(Chiron、France)の存在下(100UI/ml)、200mMのL-グルタミン、100Uのペニシリン、100μgのストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地中で培養した。必要に応じて、感染の前にフィトヘマグルチニン(PHA)(1μg/ml)で3日間、CD4 T細胞を活性化した。
【0050】
感染
ウイルス投入量(それぞれ、140又は450ngのVSV-G又はBal-Env偽型HIV-1のp24)及びインキュベーション時間(感染の5及び3日後、マクロファージ及びリンパ球を、定常状態の単一細胞バイオルミネッセンスについて分析した)を、ルミノメーターにおける慣用の細胞ライセートの測定を用いるパラレル実験中のそれらの最大シグナル生成に基づいて選んだ。異なる細胞濃度についてアッセイして、画像分析のための最適細胞密度を得た。最終的に、105個のMDM又は106個のCD4 T細胞を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を担持するHIV-1粒子に曝露し、ガラス底のディッシュ(MatTek corp, MA, USA)の中心に播き、37℃で2時間インキュベートした。その後、細胞を十分に洗浄し、そして最終的に1mlの適切な完全培地を培養のために各プレートに加えた。
【0051】
場合により、感染を促進するために、ウイルス曝露をスピノキュレーション(spinoculation)プロトコール(室温で、1500×gで1時間遠心分離)(O'Doherty et al. (2000) J. Virol. 74:10074-80)によって実施した。
【0052】
細胞ライセート中での光子定量
感染後の指示された時点で、105個の細胞を収集し、そして100μlのルシフェラーゼ溶解バッファー(Promega)によって溶解した。ルシフェラーゼ活性は、20μlの各ライセート中で、Promega Luciferase Assay System及びルミノメーターLUMAT LB9501(Berthold Technologies)によって定量化した。
【0053】
光子計数システム及び生細胞中での光子定量化の説明
バイオルミネッセンス専用の広域顕微鏡システム(ScienceWares Inc., MA, USA)を用いて細胞のルミネッセンスを先に記載のとおりに測定した(Rogers et al. (2005) Eur. J. Neurosci. 21:597-610)。該システムは、遮光用の暗箱中に収納した完全自動化倒立顕微鏡(200M, Carl Zeiss, Germany)を含む。顕微鏡のベースポートに接続したImaging Photon Detector(IPD 3、Photek Ltd. East Sussex, UK)を用いて低レベルの発光を集めた。この構成において、IPDカメラのバックグラウンドシグナルは極めて低かった(256・256画素領域中1光子/秒未満)。該システムは、単一の光子事象をCCDカメラ(Coolsnap HQ, Roper Scientific)によって得た明視野像と重ね合わせられることのできる画像に変換もするデータ取得ソフトウエアによって完全に制御される。Plan-Neofluar 10X(空気、NA=0.5)、25X(油、NA=0.8)、及び40X(油、NA=1.3)対物レンズ(Carl Zeiss, Germany)を用いて観察を行った。
【0054】
定常状態及び動態分析のための条件
曝露後の所望の時点で、プレート中の培地をPBS+5%FCS(定常状態分析用)又はフェノールレッドを含まない完全培地(動態分析用)で置換した。分析を容易にするために、非付着性CD4 T細胞を(1mg/mlのポリ-L-リジンと15分間インキュベーション後、ポリ-L-リジンコートした固相を洗浄しそして乾燥することによって)ポリ-L-リジンでコーティングした新しいMatTekプレートに移すか又は分析まで単純に30分間静置した。エンドドキシンを含まないカブトムシD-ルシフェリン(Promega)をプレートに加え、これを次に倒立顕微鏡に置いた。細胞のバイアビリティーに影響を及ぼさずに検出可能で持続可能なバイオルミネッセンスシグナルを提供するルシフェリン濃度を見出すために、異なるルシフェリン濃度についてアッセイした。0.001〜1mMの範囲のルシフェリン濃度が、分析を可能とするのに十分に検出可能なシグナルを提供した。最大のシグナルを提供する最適濃度は細胞の種類に依存した(マクロファージについては1mM、そしてCD4 T細胞については0.1mM)。
【0055】
定常状態分析を(ルシフェラーゼ活性に最適の)室温で実施した。或いは、動態試験のためには温度制御された(37℃)チャンバー中にガラス底のディッシュを置き、D-ルシフェリンは6〜8時間ごとに補充した。CO2も供給する温度制御されたチャンバーによって最適培養条件がさらに達成されることができる。
【0056】
光子放射の検出及び分析
異なる細胞系についての最適の光子集積時間を決定するため、我々は、5〜6時間持続する長時間の間に光子カウントを蓄積することによってバイオルミネッセンスシステムを用いて異なる感染細胞の領域を可視化する実験のセットアップを行った。光子を放射する感染陽性の細胞の明快な同定に導く集積時間を選択した(マクロファージについては90秒、そしてCD4 T細胞については300秒)。
【0057】
単一細胞における光子放射の定量のために、着目の領域を定義するために明視野像中での細胞の輪郭を用い、その領域中で検出された光子のみを考慮に入れた。
【0058】
活性化マーカーのフローサイトメトリー分析
三色フローサイトメトリー分析によってCD4+T細胞集団を活性化マーカーCD25及びCD69の膜発現についてチェックした。細胞を、CD69-PE(BD Bioscience)、CD25-FITC及びCD4-ECD(Beckman Coulter)の混合物とともに室温で30分間インキュベートした。染色後、細胞をPBSで洗浄し、PBS+5%FCSで500μLに調整し、そしてCytomics FC500フローサイトメーター(Beckman Coulter)で分析した。20,000の生細胞事象が、前方散乱及び直角散乱の両方を用いてセットアップした白血球ゲート上に蓄積された。
【実施例】
【0059】
実施例1.生きている初代標的細胞におけるHIV-1感染の検出
我々は、2つの主要な自然のHIV-1標的細胞:ヒト単球由来マクロファージ(MDM)(図1a)及び末梢血由来の活性化CD4 Tリンパ球(図1b)の1ラウンド感染におけるバイオルミネッセンスシステムの性能を試験した。ウイルスnef遺伝子の一部がルシフェラーゼレポーター遺伝子(Connor et al. (1995) Virology 206:935-44)で置換されるように工学処理されたNL4-3-luc HIV-1粒子で標的細胞を感染させた。上記NL4-3-luc HIV-1粒子は、侵入のための受容体として膜リン脂質を用い、HIV-1エンベロープに比べて感染効率が高い水泡性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)で偽型化されている(Aiken (1997) J. Virol. 71:5871-7)。各細胞系についての細胞ライセート中の最大ルシフェラーゼ活性を得た時点である感染の5日及び3日後(示していない)にそれぞれ、バイオルミネッセンス放射をチェックした。バイオルミネッセンスの放射は、ルシフェリンの添加によって容易に感染細胞中で検出された(図1a、b)。予想通り、MDM(図1c)又はCD4 T細胞(示していない)の感染のために使用したエンベロープを欠損したウイルス粒子では、バイオルミネッセントシグナルは観察されなかった。さらに、我々は、R5指向性HIV-1エンベロープで偽型化したNL4,3-luc粒子にマクロファージを感染させた(BaL)。予想通り、VSV-Gで偽型化したウイルスよりも感染細胞数は低かったが、かなりの数の感染細胞が観察され、そして容易に陰性細胞から識別された(図1d)。これらの結果は、我々のイメージングセットアップが、HIV−1感染後にルシフェラーゼを発現する個々の細胞の検出のための効率的な手段を促進したということを証明した。
【0060】
実施例2.単一細胞レベルでのHIV−1感染の定量化
我々のバイオルミネッセントシグナル検出方法が単一細胞感染レベルを定量化するための方法として使用可能であるかを確立するために、われわれは、鎖移転をブロックすることによってHIV-1の組込みを防ぐインテグラーゼ阻害剤であるジケト酸L-731,988の効果を調べた(Hazuda et al. (2000) Science 287:646-50)。VSV-G偽型HIV-1による感染の前及びその間、増加する濃度のL-731,988の存在下でMDM細胞をインキュベートした。感染の5日後、我々はルミノメーターを用いて細胞ライセート中で(Connor et al. (1995) Virology 206:935-44)、及び我々のバイオルミネッセンスイメージングシステムを用いて無傷の単一細胞中で、感染レベルを測定した。予想どおり、インテグラーゼ阻害剤で処理した細胞ライセート中のルシフェラーゼ活性は、用量依存的に減少し、MDM細胞中でのHIV-1複製阻害の指標となった(図2a)。並行して、単一細胞バイオルミネッセンスイメージングアッセイは、全体として平均したバイオルミネッセンス強度も、部分的にはバイオルミネッセンスを放射する細胞数の減少(図2c)によって減少したことを示した(図2b)。したがって、ルミノメーターを用いた細胞ライセートの、及び我々の単一細胞光子イメージングシステムを用いた無傷の生細胞の定量分析の結果は付随するものであり;後者の方法の定量的有用性を強力に示唆した。したがって、我々は、個々の細胞からの光子放射を分析し、そしてバイオルミネッセンスシグナルの平均した減少も、部分的に、個々の細胞当たりで放射される光子数の顕著な減少によることを発見した(図2d)。インテグラーゼ阻害剤L-731,988が、バイオルミネッセンスが検出された細胞の数及び個々の細胞により生成されるバイオルミネッセンスの測定された強度の両方を減少させたことは、HIV-1複製の用量依存的な妨害を引き起こすその予想された作用と完全に一致する。したがって、我々は、HIV-1依存的なバイオルミネッセンスシグナルが単一細胞レベルにおいてさえ、HIV-1感染を定量化するための貴重かつ有用な手段を提供する、と結論した。
【0061】
実施例3.生きている単一の初代細胞中でのHIV-1遺伝子発現動態のモニタリング
インサイチュの正常条件下では、末梢血及びリンパ組織中のCD4 T細胞の大部分が休止(非活性化)状態にあり、HIV-1のための潜在的な貯蔵所となっている(Pierson et al. (2000) Annu Rev Immunol 18:665-708)。この線に沿って、活性化CD4 Tリンパ球は迅速なHIV-1複製を支援するが、休止期CD4 T細胞はウイルス複製の初期のステップの間のいくつかの妨害によって感染を維持することができない(Chiu et al. (2005) Nature 435:108-14、Ganesh et al. (2003) Nature 426:853-7)。実際に、休止期のCD4 T細胞においては、HIV-1 DNAはほとんどが組み込まれないが、(有糸分裂刺激などの)細胞の活性化はこれを克服し、ウイルスの組込み及び複製を可能とする(Pierson et al. (2002) J. Virol. 76:8518-31)。単一細胞におけるバイオルミネッセンスシグナルがその中でのウイルス遺伝子発現効率の直接的な指標であることを示す我々の結果に基づいて、我々は次に、個々の感染細胞中での潜伏状態からのHIV-1の再活性化について研究するためにこの方法を用いた。
【0062】
全CD4 T細胞を末梢血単核細胞から単離した。T細胞活性化マーカーCD25とCD69を発現する細胞の比率が非常に低かったことに反映されるとおり、正のCD4選択の後、休止細胞のパーセンテージは90%であった。3日後、感染時に、休止細胞の比率は事実上変化なかった(89%)。明らかに、単一細胞レベルのバイオルミネッセンスイメージングを用いてモニターした細胞は、異なる細胞亜群間のさらなる精製を必要とせずに不均一な細胞混合物における実験を可能とした。感染の3日後、細胞をモニターしたが、これは休止期CD4 T細胞中の完全な逆転写を検出するために必要な期間であって(Pierson et al. (2002) J. Virol. 76:8518-31);活性化された細胞中でのウイルス複製の1ラウンドをモニターするために必要な時間よりも長いからである。図3a(左)に示すとおり、VSV-G偽型HIV-luc粒子に感染した非活性化CD4 T細胞において、我々は休止条件下で(その後プレ活性化(pre-activated)CD4 T細胞と呼ばれる)既に活性化されたT細胞のいくつかの感染によると思われるHIV-1バイオルミネッセンスを観察したこともあった。この予想された結果は、機能的アッセイのための便利な内部対照を提供した。対照的に、CD4 T細胞の全体的な活性化(98%超、示さない)を誘発するために、感染の前に3日間フィトヘマグルチニン(PHA)で処理した、感染した細胞を並行して観察すると、多数の陽性リンパ球が明らかとなった(図3a、右)。この結果に基づいて、我々は次に、PHAによって推進されたウイルス遺伝子発現レスキューのキネティクスを研究した。休止細胞をウイルス複製に対して完全に許容状態とするために、感染した非活性化細胞培養にPHAを加え、そして細胞を経時的にモニターした。これらの条件下で、早くも有糸分裂刺激の8時間後には、以前には陰性であった細胞において光子放射が検出され始めた(図3b)。この放射は、4時間の間に顕著に増加し、同じ培養中に存在するプレ活性化CD4 T細胞(灰色のライン、図3b、c)及び感染前にPHAで活性化した対照CD4 T細胞(示さない)の感染した両細胞で検出されたレベルに匹敵する安定なプラトーレベルに達した(黒いライン(1)、図3c)。PHAにより引き起こされた迅速な応答は予想外のものではなかった。シグナリング及びHIV-1複製にとって決定的な因子の核転位は、T細胞の刺激後数分で起こり(Kinoshita et al. (1997) Immunity 6:235-44, Timmerman et al. (1996) Nature 383:837-40)、そして、未処理のCD4 T細胞の活性化後の遺伝子発現の変化は、刺激の15分後すぐに起こることが報告されている(Hooper et al. (1990) J. Biolumin. Chemilumin. 5:123-30)。したがって、休止細胞において複製妨害を克服するために必要であった変化は、有糸分裂の刺激後急速に発生することができ、感染細胞をHIV複製を許容するものとする。実際に、T細胞及び単球/マクロファージ系の両方においてHIV-1を潜伏状態から再活性化するのに必要とされるのは6時間未満であることが報告されている(Kutsch et al. (2002) J. Virol. 76:8776-86)。
【0063】
最後に、HIV-1遺伝子発現における動態のばらつきを追跡するための手段としての我々の方法の有用性をさらに実証することを目的として、我々は次に、感染した初代マクロファージに対するホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)刺激の効果を測定した。VSV-G偽型HIVに感染したMDMをPMAで刺激し、これは急速にHIV-1転写を促進すると予想され(Kaufman et al. (1987) Mol. Cell. Biol. 7:3759-66)、そして単一細胞による光子放射を数時間の間モニターした。図3dに示すとおり、これらの細胞のバイオルミネッセンスシグナルはPMA刺激のわずか4時間後に増加を始めた。非刺激感染マクロファージにおいては増加が観察されなかったことから(図3d)、この比較的急速な光子放射の変化は、組み込まれたプロウイルスの転写のPMAによる刺激に明らかに関連していた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1a】無傷の生物学的に関連した初代細胞におけるHIV-1感染の検出。MDM細胞を、汎親和性のVSV-Gタンパク質で偽型化したNL4.3-lucベクターに感染させた。感染の5日後、生細胞中のルシフェラーゼ活性を分析した。バイオルミネッセント画像は、90秒の間に蓄積された光子をしめす。示す画像は、少なくとも10の異なる実験の代表である。バイオルミネッセント放射(左)は色わけされる(光子/画素、画像の下部にスケール)。対応する明視野像を右のパネルに示す。画像は×10対物レンズを用いて得られた。
【図1b】無傷の生物学的に関連した初代細胞におけるHIV-1感染の検出。活性化CD4 T細胞を、VSV-G偽型N4.3-lucに感染させた。感染3日後の細胞による光子放射を300秒間集積した。示す画像は、少なくとも10の異なる実験の代表である。バイオルミネッセント放射(左)は色わけされる(光子/画素、画像の下部にスケール)。対応する明視野像を右のパネルに示す。画像は×25対物レンズを用いて得られた。
【図1c】無傷の生物学的に関連した初代細胞におけるHIV-1感染の検出。エンベロープ欠損NL4.3-luc粒子に感染したMDM細胞のバイオルミネッセンスも評価した(集積時間=300秒)。示す画像は、少なくとも10の異なる実験の代表である。バイオルミネッセント放射(左)は色わけされる(光子/画素、画像の下部にスケール)。対応する明視野像を右のパネルに示す。画像は×10対物レンズを用いて得られた。
【図1d】無傷の生物学的に関連した初代細胞におけるHIV-1感染の検出。R5指向性BaL偽型HIV-1粒子によるMDM細胞の感染。バイオルミネッセントシグナルを90秒間蓄積した。示す画像は、少なくとも10の異なる実験の代表である。バイオルミネッセント放射(左)は色わけされる(光子/画素、画像の下部にスケール)。対応する明視野像を右のパネルに示す。画像は、×10対物レンズを用いて得られた。
【図2a】感染細胞中のバイオルミネッセンス放射による、ウイルス複製の定量測定。VSV-G偽型NL4.3-lucに感染させる前にMDM細胞を様々な量のインテグラーゼ阻害剤L-731,988とともにインキュベートした。ライセート中のルシフェラーゼ活性。光の単位で表した結果は、3つの独立した実験の平均として示される。標準偏差を表すエラーバーを各場合について示す。
【図2b】感染細胞中のバイオルミネッセンス放射による、ウイルス複製の定量測定。VSV-G偽型NL4.3-lucに感染させる前にMDM細胞を様々な量のインテグラーゼ阻害剤L-731,988とともにインキュベートした。無傷の細胞の観察視野当たりの1秒当たりの全体的な光子放射のIPDによる定量。値はn=5の視野についての平均±s.d.として示される。
【図2c】感染細胞中のバイオルミネッセンス放射による、ウイルス複製の定量測定。VSV-G偽型NL4.3-lucに感染させる前にMDM細胞を様々な量のインテグラーゼ阻害剤L-731,988とともにインキュベートした。生きている感染MDM細胞のバイオルミネッセンスイメージング(集積時間=90秒)。各条件についての視野当たりの陽性細胞数(平均±s.d.)が画像の上部に示される。各パネルはn=5の異なる視野の代表である。
【図2d】感染細胞中のバイオルミネッセンス放射による、ウイルス複製の定量測定。VSV-G偽型NL4.3-lucに感染させる前にMDM細胞を様々な量のインテグラーゼ阻害剤L-731,988とともにインキュベートした。単一の無傷のMDM細胞における1秒当たりの光子放射の定量(n=25細胞/条件)。ゼロに最も近いボックスの境界は、25%パーセンタイルを示し、ボックス内のラインは中央値(実線)及び平均(長い破線)をマークし、ゼロから最も遠いボックスの境界は75パーセンタイルを示す。ボックスの上及び下の髭は、90及び10パーセンタイルを示す。範囲外のすべての点をプロットする。データセット間の比較は独立標本検定によって実施した。すべての統計学的計算及びグラフはSigma Plotソフトウエア(Science Products)によっておこなった。×10の対物レンズを使用して画像を得た。
【図3a】感染した初代細胞の刺激後のウイルス遺伝子発現のリアルタイムイメージング及び定量化。未処理のCD4 T細胞をVSV-G偽型NL4.3-lucに感染させた。感染の3日後、培養にPHA(1μg/ml)を加え、そして経時的にバイオルミネッセンスを分析した。未処理(左)またはウイルスの添加前に活性化された対照CD4 T細胞(右)の、感染(T=0)の3日後の明視野像と重ね合わせたバイオルミネッセンス画像(300秒間に蓄積した光子)。×25の対物レンズを用いて得た画像。
【図3b】感染した初代細胞の刺激後のウイルス遺伝子発現のリアルタイムイメージング及び定量化。未処理のCD4 T細胞をVSV-G偽型NL4.3-lucに感染させた。感染の3日後、培養にPHA(1μg/ml)を加え、そして経時的にバイオルミネッセンスを分析した。PHA刺激後の様々な時点における、未処理のCD4 T細胞集団からの細胞の画像(×40、対物レンズ)。0時点においてバイオルミネッセンスについて陰性である(白い○で印を付けた)1つの細胞(1)、PHA添加の前に光子を放射する1つの細胞(2)を示す。
【図3c】感染した初代細胞の刺激後のウイルス遺伝子発現のリアルタイムイメージング及び定量化。未処理のCD4 T細胞をVSV-G偽型NL4.3-lucに感染させた。感染の3日後、培養にPHA(1μg/ml)を加え、そして経時的にバイオルミネッセンスを分析した。PHA添加後の時間の関数としてプロットした、パネルBに示す細胞(1、黒;2、灰色)における光子計測数(300秒の間の蓄積)の変化。
【図3d】感染した初代細胞の刺激後のウイルス遺伝子発現のリアルタイムイメージング及び定量化。MDM細胞をVSV-Gタンパク質で偽型化したNL4.3-lucベクターに感染させた。感染の5日後、PMAを培養に加え(最終濃度30ng/ml)、そして生細胞中のルシフェラーゼ活性の経時変化を定量化した(灰色)。対照として、PMA刺激のない場合の感染MDM細胞のルシフェラーゼ活性を分析した(黒)。(90秒間の)細胞当たりの光子放射を、各集団からの1つの代表的な細胞について経時的にプロットした。細胞をモニターするために×25の対物レンズを使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の生細胞レベルにおけるウイルス複製の定量的なリアルタイムの検出及び/又は測定方法であって、以下のステップ:
a)ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクターを提供し、ここで、該バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現がウイルスゲノムの上記部分に含まれるウイルスプロモーターによって制御され;
b)インビトロで、上記構築物又は該組換え構築物を含むベクターで生細胞を感染させ、トランスフェクトし、又は形質導入し;
c)場合により、上記系にウイルス複製に必要なウイルス要素を補完し;
d)少なくとも複製が開始したと推定するのに十分な時間、場合により補完された、前記感染した、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞を培養し;そして、
e)検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てるデジタル光検出画像装置を用いて、前記感染した、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞中で、前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子によって発現された産物のレベルを単一の生細胞レベルで検出し、測定し、そして場合により累積する、
を含み、ここで、前記測定された産物の発現レベルは、単一の生細胞レベルでのウイルス複製の指標である、前記方法。
【請求項2】
その複製が検出及び/又は測定可能である前記ウイルスが、任意のウイルス、特に任意のDNAウイルス、RNAウイルス、哺乳動物ウイルス、特にヒトウイルス、又は植物ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスが、HIV、特にHIV−1、SIV、及び関連するレトロウイルス;インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスから選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスがHIV−1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記生細胞が、任意の生細胞、好ましくは前記ウイルスの自然の標的を構成する細胞から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が初代細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が株化細胞からの細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記組換え構築物が、バイオルミネッセントレポーター遺伝子で置換されたnef遺伝子を除くHIV−1ウイルスゲノム全体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組換え構築物が、プロウイルスpNL-Luc-E-R+であるか、又は該ベクターに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子が、任意のバイオルミネッセントレポーター遺伝子、好ましくは陸生のフォトルハブダス・ルミネセンス及び海生のビブリオ・ハーベイイ細菌の細菌lux遺伝子、並びにホタル種(フォチヌス)及びウミシイタケ(レニラ・レニフォルミス)由来の真核生物ルシフェラーゼluc及びruc遺伝子から選ばれるルシフェラーゼ遺伝子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子が、(ホタル又はウミシイタケの)ルシフェラーゼ遺伝子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組換え構築物又は該組換え構築物を含むベクターが、さらに蛍光レポーター遺伝子を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ウイルス複製キネティクス及び感染性のウイルス粒子の細胞内局在化を同時にモニタリングするための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記デジタル光検出画像装置が、非常に低レベルの発光を検出可能なイメージングフォトンディテクター(Imaging Photon Detector)を備えた特製顕微鏡画像システムである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記システムが、単一の光子事象を識別し、検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てることのできる高感度の光子検出システムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生細胞のゲノム内でのレトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写の定量的なリアルタイムの測定のための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記産物の発現レベルが、前記感染した、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞のゲノム内での前記レトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写レベルの指標である、前記方法。
【請求項17】
生細胞内でのウイルス複製を改変、好ましくは阻害することのできる分子をスクリーニングするための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルの改変、好ましくは減少が、ウイルス複製を改変、好ましくは阻害することのできる分子の指標である、前記方法。
【請求項18】
生細胞ゲノム内でのレトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写を改変、好ましくは阻害することのできる分子のスクリーニングのための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルの改変、好ましくは減少が、前記細胞ゲノム内でのレトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写を改変、好ましくは阻害することのできる分子の指標である、前記方法。
【請求項19】
単一の生細胞レベルにおけるウイルス複製の定量的なリアルタイムの測定のためのキットであって、以下の:
a)ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物または該組換え構築物を含むベクター、ここで、上記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現が上記ウイルスゲノムの一部に含まれるウイルスプロモーターによって制御され;
b)場合により、上記系を補完するための、ウイルス複製に必要なウイルス要素;
c)前記組換え構築物又は前記組換え構築物を含むベクターで感染された、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞中で検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てるデジタル光検出画像装置によって、前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルを定量測定するための試薬;及び
d)場合により、標準曲線又は標準曲線を描くための試薬、
を含む、前記キット。
【請求項20】
細胞のゲノム内でのレトロウイルスゲノムの一部の組込み及び/又は転写の、定量的なリアルタイムの測定のための、請求項19に記載のキットであって、以下の:
a)ウイルスゲノムの少なくとも一部及びバイオルミネッセントレポーター遺伝子を含む組換え構築物または該組換え構築物を含むベクター、ここで、上記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現が上記ウイルスゲノムの一部に含まれるウイルスプロモーターによって制御され;
b)場合により、上記系を補完するための、ウイルス複製に必要なウイルス要素;
c)前記組換え構築物又は前記組換え構築物を含むベクターで感染された、トランスフェクトされた、又は形質導入された生細胞中で検出された各光子にx,y−座標及び時点を割り当てるデジタル光検出画像装置によって、前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子の発現レベルを定量測定するための試薬;及び
d)場合により、標準曲線又は標準曲線を描くための試薬、
を含む、前記キット。
【請求項21】
前記ウイルスゲノムが、以下の:HIV、特にHIV−1のゲノム、SIVゲノム、及び関連するレトロウイルスのゲノム;インフルエンザウイルスゲノム、肝炎ウイルス、特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのゲノムからなる群から選ばれる、請求項19又は20に記載のキット。
【請求項22】
前記バイオルミネッセントレポーター遺伝子が、以下の:ルシフェラーゼ、特にホタル又はウミシイタケルシフェラーゼ、及びルシフェラーゼの修飾形態、特に(Pbtによる)ルシフェラーゼのスペクトル及び/又はリソソームを標的とする修飾形態などのバイオルミネッセンスを誘導する任意の分子から成る群から選ばれる、請求項19〜21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
前記生細胞が、任意の生細胞、好ましくはウイルスの自然の標的を構成する細胞、初代細胞、又は株化細胞からの細胞から選ばれる、請求項19〜22のいずれか1項に記載のキット。
【請求項24】
前記組換え構築物、又は該組換え構築物を含むベクターが、蛍光レポーター遺伝子をさらに含む、請求項19〜23のいずれか1項に記載のキット。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2009−516510(P2009−516510A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540721(P2008−540721)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003966
【国際公開番号】WO2007/057787
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(591282984)アンスティテュ パストゥール (17)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】