説明

単一磁束量子論理で量子ビットを制御するための方法および装置

一実施形態では、本開示は、量子ビットを磁束量子論理ゲートに連結することにより、量子ビットを共鳴させたりそれを止めさせたりすることによって、量子ビットのエネルギー状態を制御するための方法および装置に関する。量子ビットは、ポンプ信号と、別の量子ビットと、または何らかの量子論理ゲートと共鳴状態になり得る。別の実施形態では、本開示は、RSFQ論理で、またはRSFQと量子ビットとの間のインターフェースを通して、量子ビットを制御するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2007年1月18日に出願された「Single Flux Quantum Circuits」というタイトルの米国特許出願第11/654,632号、および2007年8月3日に出願された「Arbitrary Quantum Operation with a Common Coupled Resonator」というタイトルの米国特許出願第11/833,902号に関連し、これら両方の全体が背景情報として本明細書に援用される。
【0002】
(1.本発明の分野)
本開示は、概して、超電導体回路、より具体的には、高速単一磁束量子(RSFQ)論理を使用した超電導体回路、ならびにそれを制御するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
古典的なコンピュータは、古典物理学の法則に従って状態を変化させる、情報のバイナリビットを処理することによって動作する。これらの情報ビットは、ANDおよびORゲート等の単純な論理ゲートを使用することによって変更することができる。バイナリビットは、論理1(例えば、高電圧)または論理0(例えば、低電圧)を表すように、論理ゲートの出力時に生じる高または低エネルギー準位によって物理的に作成される。2つの整数を乗算するもの等の古典アルゴリズムは、これらの単純な論理ゲートの長い文字列に分解することができる。一組のこのようなゲートは、全ての可能なアルゴリズムを、その一組のゲートだけから発生させることができる場合に完全であるといわれている。例えば、それ自体による古典的なNANDゲートは、完全セットを形成する。
【0004】
古典的なコンピュータと同様に、量子コンピュータもビットおよびゲートを有する。しかし、論理1および0を使用する代わりに、量子のビット(「量子ビット」)は、同時に両方の可能性を占めるように、量子力学を使用する。この能力は、量子コンピュータが、古典的なコンピュータよりも指数関数的に大きい効率で、広範な問題クラスを解決できることを意味する。
【0005】
単一量子ビット演算と2量子ビット制御NOT(CNOT)ゲートとの組み合わせが、量子計算のための完全セットを形成することは広く知られている。いくつかの単一量子ビット演算は、量子ビットを共振器に連結することによって行うことができることが実証されてきた。この分野の継続中の研究の目的は、任意の量子ビット演算を達成する、より効率的な手段を開発することである。
【0006】
ジョセフソン接合の特徴に基づくデバイスは、高速回路において有用である。ジョセフソン接合は、数ピコ秒という時間で切り替えるように設計することができる。
それらの低い電力消費は、従来のスイッチの適用性を制限する、高密度のコンピュータ回路において有用である。並列ジョセフソン接合は、微小磁場の検出のための超電導量子干渉素子(「SQUID」)の能動素子として使用される。従来のSQUIDは、インダクタによって連結される2つのジョセフソン接合要素を備える。SQUIDは、磁束量子を格納し、SQUIDの磁場は、プランク定数に比例する値に量子化される。
【0007】
高速単一磁束量子(RSFQ)論理は、ジョセフソン接合に基づいた超電導量子ビットの高速、低電力の制御を提供することができる。RSFQは、100GHzのクロック速度で動作する、高度に開発された系統である。超電導回路ループの中での磁束の量子化により、その制御信号を正確かつ反復可能なものにする、一意的なアナログ特性を有する。相互に連結された時、RSFQ回路は、互いの間で磁束量子を移送することができる。磁束量子の有無は、0または1として回路の状態を決定する。
【0008】
従来、ジョセフソン接合にはDCバイアスが供給され、そのような回路の中の電力バジェットは、能動デバイスが切り替えられているかどうかに関わらず生じる静的電力消費が支配的である。そのような回路の中のそのような静的電力損の排除を含む、電力消費の低減が重要である。また、このような回路の動作を制御するための適切な手段を考案することも重要である。
【0009】
RSFQ論理では、情報は、小さい磁束量子として超電導体ループの中に格納され、ビットは、ほぼ2.07mVpsの量子化範囲を伴う数ピコ秒幅のスパイクとして移送される。磁束量子の小さく量子化された性質は、CMOSデバイスと比較して、かなりの(複数桁の大きさ)クロストークおよび電力消費を低減する。RSFQ回路は、基本セルまたは時限ゲートを有するものとみなすことができる。各セルは、2つ以上の安定した磁束状態を有する。セルは、1つ以上の信号線およびクロックタイミング線Tから到着させることができる、SFQ入力パルスS、S、...、Sによって給電される。各クロックパルスは、セルをその初期状態にセットすることによって、2つの隣接するクロック期間の間の境界をマークする。新しい期間中に、SFQパルスは、セル入力Sのそれぞれに到着できる、または到着できない。現在のクロック期間中の端子SでのSFQパルスの到着は、信号Sの論理値1を定義し、一方で、この期間中にパルスが無いことは、この信号の論理値0を定義する。
【0010】
RSFQ回路は、適時のSFQパルスの正確な一致を必要とせず、また、必要な種々の入力信号の規定の時間シーケンスでもない。各入力パルスは、セルの内部状態を変化させること、または変化させないことができる。入力パルスは、出力端子Soutで、即時的な反応を生成することができない。クロックパルスTだけが、クロック期間中に到着した入力信号パルスによって予め定められたセルの初期状態に対応する、パルスSoutを打ち消すことができる。同じクロックパルスは、セルをその初期状態にリセットすることによってクロック期間を終了する。RSFQ系統の基本セルは、クロック期間の終わりまでその出力バイトを格納するラッチ(フリップフロップ)と連結される標準的な非同期論理回路とほぼ同等である。量子ビットの論理状態を制御するための方法および装置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(概要)
一実施形態では、本開示は、量子ビットの共鳴周波数を制御するための装置であって、電磁場を生成するための第1の回路と、電磁場を受容するように、第1の回路の近位に位置付けられる第2の回路であって、少なくとも1つの量子ビットを有する、第2の回路と、電磁場を活性化して、それによって、量子ビットの共鳴周波数を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に変化させるためのコントローラとを備える装置に関する。
【0012】
量子ビットの共鳴周波数を制御するための装置であって、電磁場の形態で磁束量子を生成するための第1の回路と、電磁場を受容するように第1の回路の近位に位置付けられる第2の回路であって、少なくとも1つの量子ビットを有する、第2の回路と、電磁場を活性化して、それによって、量子ビットの共鳴周波数を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に変化させるためのコントローラとを備える装置。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、量子ビットの外部制御のための方法であって、外部電磁場を提供するための誘導要素を提供するステップと、少なくとも1つの量子ビットを有するSQUID回路を提供するステップであって、量子ビットは、第1の共鳴周波数および第2の共鳴周波数を有する、ステップと、量子ビットの共鳴周波数を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に変化させるように、外部電磁場をSQUIDと係合させるステップとを含む方法に関する。
【0014】
さらに別の実施形態では、本開示は、量子ビットのエネルギー状態を制御するための方法であって、第1の周波数の放射を量子ビットに連続的に伝送するステップと、量子ビットで連続放射を受容するステップであって、量子ビットは、第1の共鳴周波数に対応する第1のエネルギー状態、および第2の共鳴周波数に対応する第2のエネルギー状態を有する、ステップと、量子ビットのエネルギー状態を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に変化させるための、切替回路を提供するステップとを含む方法に関する。
【0015】
さらに別の実施形態では、本開示は、量子ビットの共鳴周波数を変化させるための装置であって、第1の量子ビットを有する第1の回路と、第2の量子ビットを有する第2の回路であって、第2の量子ビットは、少なくとも1つのキャパシタを通して第1の量子ビットと通信する、第2の回路と、電磁場を第1の回路に提供して、それによって、第1の量子ビットのエネルギー状態を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に切り替えるための源とを備える装置に関する。
【0016】
別の実施形態では、本開示は、裁断正弦波信号を発生させるための装置に関する。該装置は、正弦波源と、非破壊読み出し(NDRO)を伴う論理ゲートと、フィルタと、正弦波源と非破壊読み出しのクロックとの間の接続と、非破壊読み出しとフィルタとの間の接続とを備える。
【0017】
さらに別の実施形態では、本開示は、量子ビットのための制御信号を階層的に発生させるための方法に関する。該方法は、複数の論理量子ビットを使用するステップであって、それぞれが複数の物理量子ビットから成り、特定の誤り訂正スキームに従って階層的に配設される、ステップを含む。論理量子ビットの階層的配設を実質的に模倣するように、複数のコントローラも階層的に配設される。さらに、各コントローラは、循環シフトレジスタを備え、かつソフトウェアで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
これらおよび他の本開示の実施形態は、以下の例示的なものであって、限定的なものではない図面を参照して説明し、類似した要素は、類似的に識別される。
【図1】図1は、従来のジョセフソン接合回路の概略図である。
【図2】図2は、図1の回路と関連する波形を示す図である。
【図3】図3は、本開示の一実施形態による、量子ビットの論理状態を制御するための例示的な一実施形態を示す図である。
【図4A】図4Aは、セット信号が印加された時の、図1のジョセフソン接合量子ビットのエネルギー線図である。
【図4B】図4Bは、リセット信号が印加された時の、図1のジョセフソン接合量子ビットのエネルギー線図である。
【図5】図5は、DC電流をセット/リセット磁束信号に変換するための両面DC−SFQ変換器を示す図である。
【図6】図6は、2つの量子ビットの間の結合を制御するための回路を概略的に示す図である。
【図7】図7は、裁断正弦波出力を生成するための従来のRSFQ回路のブロック図である。
【図8】図8は、本開示の一実施形態による、裁断正弦波出力を生成するためのRSFQ回路のブロック図および概略図である。
【図9】図9は、図7および8の動作について、NDROゲートを通した電力伝送を示す図である。
【図10】図10は、量子ビットごとの制御波形で操作される量子ビットのネットワークから成る、従来の量子コンピュータアーキテクチャを示す図である。
【図11】図11は、本開示の一実施形態による、物理量子ビットの制御の複雑さを低減する方法を示す図である。
【図12】図12は、本開示の一実施形態による、レシプロカル量子論理(Reciprocal Quantum Logic)シフトレジスタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
図1では、超電導回路10は、記号「X」で表される単一ジョセフソン接合J1であり、第1および第2の端子JおよびJを有する。本明細書の全体を通して、ジョセフソン接合を表すために同じ表記を用いる。従来のジョセフソン接合は、絶縁体等の非超電導材料の非常に薄い層によって分離される、2層の超電導体から成る。ジョセフソン接合は、超電導温度まで冷却して特定の臨界電流Iを下回るDC電流でバイアスされた時に、電圧降下を生じさせずに、すなわち電気抵抗を伴わずに電流を伝導する。
【0020】
以前の超電導回路から導かれる単一磁束量子パルス(SFQ)と呼ばれる、入力電圧パルスが印加された時に、インダクタL1は、電圧パルスを、臨界電流を達成するのに十分なバイアス電流に変換する。この時点で、ジョセフソン接合は、単一磁束量子入力パルスに応答して、トリガまたは「フリップ」して単一磁束量子出力を発生させる。このような回路は、複数の後続の回路に給電するために使用され得る。
【0021】
図1では、DCバイアス電流は、端子tを介して抵抗Rを通して接地12へのジョセフソン接合J1に供給される。このDCバイアス電流は、図2の波形14で示される。入力パルス16は、入力端子Aに供給されてインダクタLを通り、そして、ジョセフソン接続J1を通して臨界電流Iが達成された時に、出力端子Qで出力パルス18が発生する。
【0022】
一実施形態では、本開示は、ジョセフソン位相量子ビットと連続マイクロ波信号との間の相互作用を制御するためのRSFQ回路の使用に関する。したがって、一実施形態では、RSFQゲートは、量子ビットをマイクロ波信号と共鳴させ、続いて、マイクロ波信号との共鳴を止めさせるように、量子ビットに連結される。
【0023】
図3は、本開示の一実施形態による、量子ビットの論理状態を制御するための例示的な一実施形態である。具体的には、図3の回路100は、ジョセフソン接合102、104、106、および108を含む。回路100はまた、セットポート110と、リセットポート112とを含む。図3の実施形態では、ジョセフソン接合106、108、およびインダクタ105がSQUIDを形成する。
【0024】
回路122はまた、第2のSQUIDを形成するジョセフソン接合124、126、およびインダクタ122を示す。この場合、ジョセフソン接合126は、超電導位相量子ビットとして使用される。インダクタ105および122は、互いに近位に位置付けられた時に、互いに対して相互インダクタンス130を作用させる。外部信号128は、ジョセフソン接合量子ビット126に方向付けることができる。一実施形態では、外部信号128は、連続的に印加される信号である。外部信号128は、例えば、5GHzの周波数を有する、マイクロ波信号を定義することができる。ジョセフソン接合量子ビット126が外部信号128の周波数と共鳴する場合、外部信号は、ジョセフソン接合量子ビット126の状態を変化させる。一方で、ジョセフソン接合量子ビット126が外部信号128と共鳴しない場合、外部信号は、ジョセフソン接合量子ビット126の状態にいかなる影響も及ぼさない。
【0025】
本開示の実施形態によれば、外部回路は、量子ビットの周波数に影響を及ぼし、それによって、量子ビットに、連続的に印加される励起源を受けさせる、または受けさせないように使用することができる。したがって、図3のRSFQセット/リセットゲートは、ジョセフソン接合量子ビット126を制御するために使用することができる。磁束量子は、セットポート110を通して格納ループに入り、インダクタ122および接合126を通って流れる電流を増大させて、そのエネルギー準位を外部励起128との共鳴状態にする。リセットパルスは、ループをクリアして、量子ビットを非共鳴状態に戻す。
【0026】
ジョセフソン接合の内部エネルギー(E)は、接合全体の位相差(φ)に依存する。量子力学の原理に従って、接合の接地および励起状態は、E(φ)関係によって決定される。接合電流の変化は、E(φ)の依存性を変更し、量子ビットの励起スペクトルを変化させる。図4に示されるように、図3の実施形態は、量子ビット126を通る電流を制御して、それをポンプ信号128と共鳴させる、および共鳴を止めさせるために、RSFQセット/リセットフリップフロップ100とすることができる。
【0027】
図3のジョセフソン接合量子ビット126は、5GHzのマイクロ波源エネルギーが印加される例示的な一実施例について図4Aおよび4Bに示される。具体的には、図4Aは、セット信号がポート110(図3)を通して回路100に印加された時の、ジョセフソン接合のエネルギー線図を示す。セット信号は、SQUID100の中に磁束量子を生じさせ、その結果、相互インダクタンス130を介してSQUID122の中に電流を生じさせ、それによって、量子ビット126を外部信号128と共鳴させて量子ビットの励起を開始する。
【0028】
図4Bでは、リセット信号は、ポート112(図3)を通して回路100に印加される。リセット信号は、SQUID100から磁束量子を除去し、そして、相互インダクタンス130を介してSQUID122から電流を除去し、それによって、量子ビット126の外部信号128との共鳴を止めさせる。例えば、リセット信号が印加された後には、量子ビット126を9GHzとすることができる。量子ビット126は、励起信号128と同じ共振周波数を有さないので、1状態と0状態との間のエネルギーの差(図4B)は、図4Aに示されるものよりも実質的に大きい。結果的に、マイクロ波励起源128は、量子ビット126の状態への影響を大幅に減少する。
【0029】
回路100(図3)に印加されるセットパルスとリセットパルスとの間の時間量を変動させることで、量子論理ゲートを実装するように量子ビットを制御することができる。量子ビットの状態を0状態から1状態に変化させるために必要な時間量πパルスは、量子論理ゲートの一例である。その時間の半分であるπ/2パルスで、量子ビットの状態が0状態から半0および半1の状態に変化して、異なる量子論理ゲートを作成する。本実施形態では、0は、最低量子準位を表し、1は、第1の励起状態を表す。
【0030】
図5は、両面DC−SFQ変換器の概略図である。DC−SFQ変換回路310は、インダクタ314に連結される信号源312を伴うCMOS論理を備えることができる。インダクタ314およびインダクタ334は、相互インダクタンス316を介して連結される。回路320は、インダクタ334を伴うSQUID回路を形成するジョセフソン接合326および328も含む。CMOS論理回路等の外部信号源312は、インダクタ314に印加される。DCバイアスが低から高まで推移する時には、セットSFQパルスがポート322で発生する。DCバイアスが高から低まで推移する時には、リセットSFQパルスがポート330で発生する。
【0031】
図5のDC−SFQ変換器は、図3の実施形態とともに用いることができる。DC−SFQ変換回路310は、信号源312のパルス幅によって適時に分離されるセット/リセットパルスを生成するように磁束/SFQ変換器を駆動することができる。信号源312の立ち上がりエッジで、セットパルスが図5のポート322から図3のポート110に通信されて、量子ビット126をマイクロ波信号と共鳴させる。信号源312の立ち下がりエッジで発生したリセットパルスは、図5のポート330を通して図3のポート112に通信され、それによって量子ビット126のマイクロ波信号との共鳴を止めさせる。パルス幅を変動させることで、いわゆるラビ振動、振幅ゲート、およびパルスゲートを含む、様々な効果を生じさせることができる。
【0032】
格納ループは、単一以上の磁束量子を含有することができる。したがって、多数のエネルギー準位間隔が、1つ以上の多重磁束量子ゲートによって共鳴させる、および共鳴を止めさせることが可能になるような方法で、多重磁束量子ゲートを、量子ビットに連結することができる。
【0033】
したがって、本開示の一実施形態によれば、種々の周波数の多数のマイクロ波信号を、一群のジョセフソン接合量子ビットに印加することができる。RSFQゲートは、量子ビットをマイクロ波信号、他の量子ビット、または量子論理ゲートと共鳴させる(およびそれを止めさせる)ことができる。コントローラは、量子ビットの状態を制御するために、所定の命令に従ってRSFQゲートを活性化するようにプログラムすることができる。
【0034】
図6は、2つの量子ビットの間の結合を制御するための回路を概略的に示す。図6では、図3の外部エネルギー源128の入射は、キャパシタCによって連結される第2の量子ビット430に置き換えられる。具体的には、ジョセフソン接合Jq1430は、その最低エネルギー準位が、示されるように5GHzで分離されるようにバイアスされる。ジョセフソン接合Jq2は、その最低エネルギー準位が、リセット時に9GHzで分離されるようにバイアスされる。RSFQゲート410に導入された量子磁束は、相互インダクタMを通してJq2に電流を連結して、準位間隔を5GHzに低減する。この時点で、両方の量子ビット(Jq1、Jq2)は、同じエネルギー間隔を有し、また、2つの量子ビットは、リセット信号がRSFQフリップ/フロップに印加されるまで、キャパシタCを通してエネルギーを連結することによって相互作用する。
【0035】
図7は、以前の最先端の技術を表す、裁断単一トーン出力560を生成するための従来のRSFQ回路500のブロック図である。図5では、正弦波信号505は、DC−SFQ変換回路510に提供され、そこでは、正弦波信号505の周波数に等しい繰り返し率で、正弦波500を一連の単一磁束量子(SFQ)パルスに変換する。回路510のSFQ出力は、非破壊読み出し(NDRO)ゲート530に対する通信のためのジョセフソン伝送線(JTL)520に方向付けられる。従来のJTLは、伝送線を通して磁束を移動させるように構成される、複数のSQUID回路を備える。
【0036】
オン/オフスイッチ535は、クロックまたは別のRSFQ回路とすることができる。スイッチ535は、JTL520からJTL540までのSFQパルスの通路を有効にするように、NDROゲート530を活性化する。その後、JTL540は、SFQパルスを帯域通過フィルタ(BPF)550に伝送し、560で正弦波出力をもたらす。したがって、560での正弦波出力は、スイッチ535を係合または係合解除することによって変調(「裁断」)することができる。
【0037】
NDROゲート530がSFQパルスの通過を遮断している間に、入力の周波数で小さいマイクロ波信号が通過して、560で正弦波を完全にオフにすることを可能にするので、このスキームは不完全である。実験結果は、535のオンとオフとの間に560で生成されるマイクロ波信号に10dBの差だけしかないことを示している。
【0038】
本開示の別の実施形態では、図7の帯域通過フィルタは、入力信号の第2高調波を捕捉するように調整される。本開示のさらに別の実施形態では、図7の従来のNDROは、スイッチオフにする時にいかなる第2高調波出力も生成しない、新規なバランスのよいNDROに置き換えられる。2つの実施形態を組み合わせた時の結果は、60dBを超える分離を有する、向上した裁断正弦波源である。
【0039】
図8は、本開示の一実施形態による、裁断単一トーン出力を生成するためのRSFQ回路の概略図である。図8では、所望の出力信号880の周波数の半分に等しい周波数fを伴う正弦波入力810が、入力ポート820に印加される。ジョセフソン接合830および840、ならびにインダクタ860は、SQUID890を形成する。接合830および840の臨界電流は、正弦波入力810が、SQUID890を刺激してSFQパルスを生成するには不十分な程度になるように選択される。しかしながら、正弦波入力は、接合830および840を振動させる。接合が非調和であるので、元々の正弦波およびその奇数次高調波(f、3f、5f、...)が帯域通過フィルタ870の入力に印加されるが、偶数次高調波(2f、4f、6f、...)は印加されない。帯域通過フィルタ870は、2f等の偶数次高調波のうちの1つの周波数だけを通過させるように選択される。インダクタ850は、インダクタ860に磁気的に連結される。DCバイアス電流は、インダクタ850に印加された時に、SQUID890の臨界電流を抑制して、正弦波入力810を、SQUID890を刺激してSFQパルスを生成するために十分なものとする。SQUID890によって発生するSFQパルスは、ほぼ等しい電力準位で全ての高調波(f、2f、3f、4f、...)を含有するので、帯域通過フィルタ880は、周波数2fで正弦波出力を生成する。したがって、出力信号は、インダクタ850にDC電流を供給するか、またはそれを除去することによって変調することができる。SQUID890は、インダクタ850がバイアスされていない時に、周波数2fでいかなる信号も生成しないので、この回路は、60dB以上の出力分離を生成することができる。インダクタ850のDC直流は、外部的に、または別のRSFQ回路によって供給することができる。あるいは、インダクタ850は、RSフリップフロップ等のRSFQ回路の格納インダクタとすることができる。
【0040】
図9は、図8の動作について、NDROゲートを通した電力伝送を示す。図9から分かるように、スイッチがオフの時に、システムは、最先端の設計となり得る、基本周波数(10GHz)で10dBの分離を提供する。一方で、スイッチが第2高調波周波数で係合解除する時には、約170dBの分離が見られる。
【0041】
図10は、量子ビットを制御するための以前の最先端の技術を示す。多重量子ビットの制御は、適切な量子ゲーティング動作を表すビットストリームを使用して実行される。各物理量子ビットは、それ自体のデジタルシーケンスで制御される。しかしながら、このアプローチの不利な点は、有用である十分な大きさの任意のシステムにおいて、多数(数百万)の量子ビットおよび長大(数ギガビット)のシーケンスが、量子ビットあたりの制御シーケンスを全く非実用的なものにしてしまうことである。妥当な時間量で数ペタビットの制御パルスを操作するには、スーパーコンピュータの巨大なアレイが必要になるであろう。
【0042】
本開示の一実施形態では、全ての量子ビットが独立したタスクを行っているというわけではないので、制御シーケンスの中でのデータ整理が可能である。多くの量子ビットは、制御動作の同じシーケンスを共有するので、これらの制御シーケンスを並行して適用することができ、貯蔵、帯域幅、および相互接続に関する制御の複雑さを大幅に低減する。本発明の概念は、制御回路が、量子ビット回路の階層的構造を確実に反映させることによって、低減した複雑さを実現することである。
【0043】
量子コンピュータでは、量子ビットは、図11に示されるように、階層構造で組織される。個々の物理量子システムは、有用な計算を行うために十分な時間にわたってデータを格納することができない。量子誤り訂正は、多数の物理量子ビットを有効または論理量子ビットに組み合わせるための技術であり、個々の物理量子ビットよりも十分長い時間にわたってデータを格納することができる。誤り訂正スキームは、一般的に階層的であり、誤り訂正のために物理量子ビットが論理ユニットにグループ化され、そして、次の準位の誤り訂正での論理ユニットにグループ化される。繰り返して階層を構築することによって、有効なデータ格納時間を任意に大きくすることができる。
【0044】
図11は、論理量子ビットの階層構造を反映した階層構造を使用して、最低準位の物理量子ビットの制御シーケンスを発生させることができることを示す。数百万もの接続を伴うことができる以前の最先端の技術で、新ステムコントローラを全ての物理量子ビットに接続する代わりに、本開示の一実施形態では、システムコントローラは、より少ない数の論理コントローラに接続され、論理コントローラの各々は、相当する数のメタコントローラに接続され、そのチェーンを個々の物理量子ビットコントローラに下げていく。コントローラの各層は、量子誤り訂正を行うために選択される階層の中の準位を反映する。
【0045】
本開示のさらに別の実施形態では、各準位上のブロックは、予め組み込んだ値を伴う短い循環シフトレジスタメモリで構成することができる。これらの値のシーケンスは、対応する準位の誤り訂正で行われる異なるゲーティング動作に対応する。ブロックへの入力は、格納されているシーケンスのうちのどれを次の準位上のブロックに出力のかを決定する。同一のシーケンスを伴う複数の出力を、単一の共有出力に置き換えることができる。
【0046】
この点に対して説明される実施形態は、誤り訂正自体でなく、所望の量子計算を行うために使用することができる。量子誤り訂正はまた、物理量子ビットの測定およびそれらの測定を条件とする一連の制御動作を必要とする。本開示の別の実施形態では、各準位はまた、次の準位上のブロックに対するマルチキャスト制御シーケンス、および誤り訂正動作を行うために必要なデジタル論理のためのスイッチファブリックを含有し得る。本実施形態では、制御信号は、最上準位のコントローラ、最低準位の測定結果、または他の任意の準位に由来し得る。
【0047】
本開示の別の実施形態では、上記に説明されたシフトレジスタは、レシプロカル量子論理(RQL)を使用して実装することができる。図12は、RQLシフトレジスタを示すが、これは、図11の階層的制御の実装で使用され得る。本開示の一実施形態では、0および1のパターンは、図12にあるように、回路図の中にハード配線することができる。本開示のさらに別の実施形態では、パターンは、ソフトウェアによって、またはファームウェアによって定義することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビットの共鳴周波数を制御するための装置であって、
電磁場を生成するための第1の回路と、
該電磁場を受容するように該第1の回路の近位に位置付けられる、第2の回路であって、少なくとも1つの量子ビットを有する、第2の回路と、
該電磁場を活性化して、それによって、該量子ビットの該共鳴周波数を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に変化させるためのコントローラと
を備える、装置。
【請求項2】
放射周波数を前記量子ビットに連続的に提供するための放射源をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記放射源は、前記第1の共鳴周波数と実質的に同一の放射周波数を提供する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記電磁場の持続時間を制御する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記量子ビットは、ジョセフソン接合位相量子ビットを定義する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の回路は、SFQ、RSFQ、およびCMOS論理から成る群より選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の回路は、少なくとも1つのSQUIDをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
量子ビットの外部制御のための方法であって、
誘導要素を使用して外部電磁場を提供することと、
少なくとも1つの量子ビットを有するSQUID回路を提供することであって、該量子ビットは、第1の共鳴周波数と第2の共鳴周波数とを有する、ことと、
該量子ビットの該共鳴周波数を該第1の共鳴周波数から該第2の共鳴周波数に変化させるように、該外部電磁場を該SQUID回路と係合させることと
を含む、方法。
【請求項9】
前記量子ビットの前記共鳴周波数を前記第2の共鳴周波数から前記第1の共鳴周波数に変化させるように、前記外部電磁場を前記SQUID回路から係合解除することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記誘導要素は、SFQ、RSFQ、CMOS、およびゲート論理から成る群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記量子ビットは、ジョセフソン接合位相量子ビットを定義する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記SQUID回路は、少なくとも1つの量子ビットに連結される誘導要素をさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記誘導要素は、複数のジョセフソン接合位相量子ビットに連結される誘導要素を有するSFQ論理を定義する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
量子ビットのエネルギー状態を制御するための方法であって、
第1の周波数の放射を該量子ビットに連続的に伝送することと、
該量子ビットで該連続放射を受容することであって、該量子ビットは、第1の共鳴周波数に対応する第1のエネルギー状態と、第2の共鳴周波数に対応する第2のエネルギー状態とを有する、ことと、
該量子ビットの該エネルギー状態を該第1の共鳴周波数から該第2の共鳴周波数に変化させるための、切替回路を提供することと
を含む方法。
【請求項15】
前記第2の共鳴周波数は、前記第1の周波数と実質的に同一である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記切替回路は、前記量子ビットの外部にある、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記切替回路は、量子ビットと電磁的に通信する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記切替回路は、前記量子ビットを前記第1の周波数で共鳴させたりそれを止めさせたりするように構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記量子ビットは、ジョセフソン接合位相量子ビットを定義する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
量子ビットの共鳴周波数を変化させるための装置であって、
第1の量子ビットを有する第1の回路と、
第2の量子ビットを有する第2の回路であって、該第2の量子ビットは、少なくとも1つのキャパシタを通して該第1の量子ビットと通信する、第2の回路と、
電磁インダクタンスを該第1の回路に提供して、それによって、該第1の量子ビットのエネルギー状態を第1の共鳴周波数から第2の共鳴周波数に切り替えるための源と
を備える、装置。
【請求項21】
前記源は、SFQ、RSFQ、RQL、CMOS、またはゲート論理のうちの1つを備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記キャパシタは、前記第1の量子ビットおよび前記第2の量子ビットが実質的に同じ共鳴周波数である時に、該第1の量子ビットと該第2の量子ビットとの間に調和振動を提供する、請求項22に記載の装置。
【請求項23】
前記第1の回路は、SQUIDを備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記電磁インダクタンスを係合および係合解除するための切替回路をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
裁断正弦波信号を発生させるための装置であって、
正弦波源と、
非破壊読み出し(NDRO)を伴う論理ゲートと、
フィルタと、
該正弦波源と該非破壊読み出しのクロックとの間の接続と、
該非破壊読み出しと該フィルタとの間の接続と
を備える、装置。
【請求項26】
前記フィルタは、前記正弦波源の周波数とは異なる周波数を選択するように選択される、帯域通過フィルタである、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記帯域フィルタの前記周波数は、前記正弦波源の第2高調波だけを通過させるように選択される、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記NDROゲートは、前記正弦波入力の偶数次高調波において実質的にいかなる出力も生成しないように設計される、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記NDROは、SFQ、RSFQ、またはRQL論理のうちの少なくとも1つを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記帯域通過フィルタの前記周波数は、前記正弦波源の第2高調波だけを実質的に通過させるように選択される、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
量子ビットのための1つ以上の制御信号を階層的に発生させるための装置であって、
複数の論理量子ビットであって、各論理量子ビットは、複数の物理量子ビットから成り、誤り訂正スキームに従って階層的に配設される、複数の論理量子ビットと、
該複数の量子ビットのうちの少なくとも1つと通信する複数のコントローラであって、階層的に配設され、かつ各コントローラが制御シーケンスによって定義される、複数のコントローラと
を備える、装置。
【請求項32】
前記複数のコントローラは、前記誤り訂正スキームの前記階層と並列するように階層的に配設される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
各コントローラは、前記階層の中で各コントローラの真上にある前記コントローラによって制御される、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記複数のコントローラの各々は、循環シフトレジスタを含有する、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記制御シーケンスは、前記シフトレジスタのハードウェアに内蔵される、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記制御シーケンスは、ソフトウェアによって定義される、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記循環シフトレジスタは、レシプロカル量子論理を使用して実装される、請求項34に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−523747(P2011−523747A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511754(P2011−511754)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/045167
【国際公開番号】WO2010/011409
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(510028280)ノースロップ グルムマン システムズ コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】