説明

単分子トランジスタおよび単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体

【課題】安定した機能を発揮できる、または、高機能の単分子トランジスタの提供。低コストで合成できるフラーレン誘導体を用いた単分子トランジスタの提供。さらに、例えば、これらの単分子トランジスタに用いられるフラーレン誘導体の提供。
【解決手段】フラーレンC70の特定の位置に金属を結合させたフラーレンC70誘導体および当該誘導体を用いたトランジスタにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単分子トランジスタおよびトランジスタに用いるフラーレン誘導体に関する。具体的には、ソース、ドレーンおよびゲートの機能を有するトランジスタ用のフラーレン誘導体およびそのフラーレン誘導体を用いたトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報処理に用いられるデバイスとしては、シリコン半導体を用いたトランジスタが主に用いられており、その性能の向上は、ゲートなどの加工寸法を縮小すること等により達成されてきた(Y. Wada, et. al., J. Appl. Phys.,74(12), 7321 (1993).(非特許文献1))。
他方、トランジスタの高機能化のために、1つの分子を用いる単分子トランジスタが研究されている。具体的には、フラーレンC60を用いた単分子トランジスタ(Park, H.; Park, J.; Lim, A. K. L.; Anderson, E. H.; Alivisatos, A. P.; McEuen, P. L. Nature 2000, 407, 57.(非特許文献2))が報告されている。
しかしながら、単分子トランジスタにフラーレンC60を用いると、フラーレンC60を構成する所定の原子がソース電極、ドレイン電極およびゲート電極等に固定したときだけにトランジスタとしての機能が発揮できることになる。このように、フラーレンC60を用いた単分子トランジスタでは、フラーレンC60が偶然に電極における所定の位置に固定されたときだけトランジスタとして機能するので、その製造が困難であり、不安定でもある。
また、フラーレンに付加基が付加されたフラーレン誘導体を用いた単分子トランジスタも報告されている(特開平11−266007号公報(特許文献1))。 しかしながら、当該文献で開示されたトランジスタで用いられているフラーレン誘導体はトランジスタとしての機能が低く、さらにはフラーレン誘導体の合成が困難で、その合成コストが大きくなってしまう。
【特許文献1】特開平11−266007号公報
【非特許文献1】Y. Wada, et. al., J. Appl. Phys.,74(12), 7321 (1993).
【非特許文献2】Park, H.; Park, J.; Lim, A. K. L.; Anderson, E. H.; Alivisatos, A. P.; McEuen, P. L. Nature 2000, 407, 57.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の状況の下、例えば、安定した機能を発揮できる、または、高機能の単分子トランジスタが求められている。例えば、低コストで合成できるフラーレン誘導体を用いた単分子トランジスタが求められている。
さらに、例えば、これらの単分子トランジスタに用いられるフラーレン誘導体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、フラーレンC70の所定の位置に金属を結合させたフラーレンC70誘導体を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下のような単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体および単分子トランジスタ等を提供する。
【0005】
[1] 下記式(1)、(21)、(22)、(31)または(32)
【化9】

[上記式中、R3はそれぞれ独立して有機基であり;
4は、有機基であり;
5は、それぞれ独立して、有機基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、金属原子であり;
Lは、それぞれ独立して、単結合、置換基を有してもよいC1〜C10のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C10のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC2〜C10のアルキニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく、これらのアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0〜5の整数であり;
qは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり;
nは、0〜4の整数であり;
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化10】

(式(A)中、R1は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり、
2は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり、
pは、0〜4の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
[2] 上記式(1)、(21)、(22)、(31)および(32)中、
3はそれぞれ独立してC1〜C5アルキル基であり;
4は、C1〜C5アルキル基であり;
5は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、それぞれ独立して、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルキニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0〜5の整数であり;
qは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
[1]に記載の単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
【0006】
[3] 下記式(1)
【化11】

[上記式中、
3はそれぞれ独立してC1〜C2アルキル基であり;
4は、C1〜C3アルキル基であり;
5は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化12】

(式(A)中、R1は、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体であって、
フラーレンC70に付加しているMtlを有する2つの基がそれぞれソース端子とドレイン端子であり、フラーレンC70に付加しているフェロセンを有する基がゲート端子である、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
当該フラーレンC70誘導体は、例えば電気化学的ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いられることが好ましい。
[4][3]に記載の、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体を含む単分子トランジスタであって、
上記式(1)中、
3はそれぞれ独立してメチルまたはエチルであり;
4は、メチルまたはエチルであり;
5は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
2は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
pは、0〜2の整数であり、
フラーレンC70に付加しているソース端子とドレイン端子とが導電性電極に接合し、ゲート端子を電気化学的に作動させる、単分子トランジスタ。
【0007】
[5] フラーレンC70誘導体であって、下記式(21)または(22)
【化13】

[上記式中、
3はそれぞれ独立してC1〜C2アルキル基であり;
4は、C1〜C3アルキル基であり;
5は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化14】

(式(A)中、R1は、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体であって、
フラーレンC70に付加しているMtlを有する2つの基がそれぞれソース端子とドレイン端子であり、フラーレンC70に付加しているカルボキシル基またはチオール基を有する基がゲート端子である、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
当該フラーレンC70誘導体は、例えば電極ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いられることが好ましい。
[6][5]に記載の、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体を含む単分子トランジスタであって、
上記式(21)または(22)中、
3はそれぞれ独立してメチルまたはエチルであり;
4は、メチルまたはエチルであり;
5は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
2は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
pは、0〜2の整数であり、
フラーレンC70に付加しているソース端子とドレイン端子が導電性電極に、ゲート端子がITO電極に接合している、単分子トランジスタ。
【0008】
[7] フラーレンC70誘導体であって、下記式(31)または(32)
【化15】

[上記式中、
3はそれぞれ独立してC1〜C2アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
qは、それぞれ独立して、0または4であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化16】

(式(A)中、R1は、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体であって、
フラーレンC70に付加している金属原子Mtlを有する2つの基がそれぞれソース端子とドレイン端子であり、フラーレンC70骨格をゲート端子とする、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
当該フラーレンC70誘導体は、例えば電子注入型ゲート端子や正孔注入型ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いられることが好ましい。
[8][7]に記載の、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体を含む単分子トランジスタであって、
上記式(31)または(32)中、
3はそれぞれ独立してメチルまたはエチルであり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
qは、それぞれ独立して、0または4であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
2は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
pは、0〜2の整数であり、
フラーレンC70に付加しているソース端子とドレイン端子とが導電性電極に接合し、フラーレンC70骨格に電子が注入されることによりゲート端子を作動させる単分子トランジスタ。
【0009】
なお、本明細書において、特定の部分構造を有するフラーレンC70誘導体は、特定された部分構造以外のフラーレンC70を構成する炭素に付加基が付加しているフラーレン誘導体を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の好ましい態様に係る単分子トランジスタは、例えば、安定した機能を発揮できる。本発明の好ましい態様に係る単分子トランジスタは、例えば、高い機能を発揮できる。本発明の好ましい態様に係る単分子トランジスタは、例えば、低いコストで製造できる。
本発明の好ましい態様に係る単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体は、例えば、安定した機能を発揮できる、または、高機能の単分子トランジスタに用いることができる。また、本発明の好ましい態様に係る単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体は低コストで合成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のフラーレン誘導体が用いられるトランジスタの態様は特に限定されないが、(1)電気化学的ゲート端子を有する単分子トランジスタ、(2)電極ゲート端子を有する単分子トランジスタ、および、(3)電子注入型ゲート端子を有する単分子トランジスタ、(4)正孔注入型ゲート端子を有する単分子トランジスタ等の態様に用いられることが好ましい。
【0012】
1.電気化学的ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体
本発明の電気化学的ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体は、たとえば上記式(1)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体である(以下、「誘導体1」という)。
ここで、誘導体1において、フラーレンC70骨格が量子ドットとして、フラーレン骨格に金属原子(Mtl)を介して結合している2つの付加基がそれぞれソース端子とドレイン端子として、フラーレン骨格に結合しているフェロセンを有する付加基がゲート電子として機能する。
【0013】
誘導体1を用いた単分子トランジスタにおいて、金属原子(Mtl)を有する2つの付加基を構成する金属原子(Mtl)、R3およびmは上述のとおりであるがMtlはFeまたはRuが好ましい。また、Mtlの先に結合している基は、上記式(1)に示されるとおりだが、好ましくは、mは0または5が好ましい。また、mが1以上の場合R3はメチルが好ましい。金属原子(Mtl)の先に結合している基は、シクロペンタジエニル基(Cp)、または、ペンタメチルシクロペンタジエニル基(Cp*)が特に好ましい。
【0014】
誘導体1を用いた単分子トランジスタにおいて、誘導体1におけるソース端子とドレイン端子として機能する2つの付加基は、それぞれ導電性の電極に接合できるが、金電極に接合することが好ましい。また、ゲート端子として機能する付加基は、電気化学的に作動できる。具体的には、例えば、酸化されるフェロセニル基を取り除くと、フラーレンC70骨格上の電子密度が上昇し、ソース端子とドレイン端子との間(例えば、金属原子(Mtl)間)の電子的相互作用が増加する。このようにして、誘導体1は、電気化学的ゲート端子を有するフラーレン誘導体として用いることができる。
【0015】
誘導体1は、例えば次のような方法で合成できる。(1)フラーレンC70と銅試薬とピリジンを反応させることにより、6つのアリール基がフラーレンC70に位置選択的に同時に付加した6重付加体を合成する。(2)当該6重付加体に有機基を有する金属原子を付加させる反応を行うことによって、6重付加型2核金属錯体が合成する。(3)このように合成された6重付加型2核金属錯体にフェロセニル基を有する有機銅試薬を反応させる。
【0016】
2.電極ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体
本発明の電極ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体は、たとえば上記式(21)または(22)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体である(以下、2種類の誘導体をあわせて「誘導体2」という)。
ここで、誘導体2において、フラーレンC70骨格が量子ドットとして、フラーレン骨格に金属原子(Mtl)を介して結合している2つの付加基がそれぞれソース端子とドレイン端子として、フラーレン骨格に結合しているカルボキシル基またはチオール基を有する付加基がゲート電子として機能する。
【0017】
誘導体2を用いた単分子トランジスタにおいて、金属原子(Mtl)を有する2つの付加基を構成する金属原子(Mtl)、R3およびmは上述のとおりであるがMtlはFeまたはRuが好ましい。また、Mtlの先に結合している基は、上記式(21)または(22)に示されるとおりだが、好ましくは、mは0または5が好ましい。また、mが1以上の場合R3はメチルが好ましい。金属原子(Mtl)の先に結合している基は、シクロペンタジエニル基(Cp)、または、ペンタメチルシクロペンタジエニル基(Cp*)が特に好ましい。
【0018】
誘導体2を用いた単分子トランジスタにおいて、誘導体2におけるソース端子とドレイン端子として機能する2つの付加基は、それぞれ導電性の電極に接合できるが、金電極に接合することが好ましい。また、ゲート端子として機能する付加基は、ITO電極に接合することが好ましい。
【0019】
誘導体2は、例えば次のような方法で合成できる。(1)フラーレンC70と銅試薬とピリジンを反応させることにより、6つのアリール基がフラーレンC70に位置選択的に同時に付加した6重付加体を合成する。(2)当該6重付加体に有機基を有する金属原子を付加させる反応を行うことによって、6重付加型2核金属錯体が合成する。(3)合成された6重付加型2核金属錯体にカルボン酸エステル基またはチオエステル基を有する有機銅試薬を反応させることによって、カルボン酸エステル基またはチオエステル基を有する八重付加型フラーレン2核金属錯体を合成する。(4)このように合成された金属錯体のカルボン酸エステル基の脱保護処理を行うことによって、式(21)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体を合成する。同様に、金属錯体のカルボン酸チオール基の脱保護処理を行うことによって、式(22)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体を合成する。
【0020】
3.電子注入型ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体
本発明の電子注入型ゲート端子を有する単分子トランジスタに用いるフラーレン誘導体は、たとえば上記式(31)または(32)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体である(以下、2種類の誘導体をあわせて「誘導体3」という)。
ここで、誘導体3において、フラーレンC70骨格が量子ドットとして、フラーレン骨格に金属原子(Mtl)を介して結合している2つの付加基がそれぞれソース端子とドレイン端子として、フラーレンC70骨格がゲート端子として機能する。
【0021】
誘導体3を用いた単分子トランジスタにおいて、金属原子(Mtl)を有する2つの付加基を構成する金属原子(Mtl)、R3、qおよびLは上述のとおりであるがMtlはFeまたはRuが好ましい。また、Mtlの先に結合している基は、上記式(31)または(32)に示されるとおりだが、好ましくは、qは0または4が好ましい。また、qが1以上の場合R3はメチルが好ましい。
【0022】
誘導体3を用いた単分子トランジスタにおいて、誘導体3におけるソース端子とドレイン端子として機能する2つの付加基は、それぞれ導電性の電極に接合できるが、金電極に接合することが好ましい。
【0023】
誘導体3を用いた単分子トランジスタでは、電子銃等を用いてC70骨格へ電子を直接注入することにより、C70骨格をゲート端子として作動させることができる。誘導体3を構成するジチオールとジカルボン酸を金等のナノギャップ電極上に置き、フラーレンC70骨格のパイ共役系上にゲート電圧をかけることにより、ソース端子とドレイン端子との間(2つの金属間)にトランジスタ特性を得ることができる。
【0024】
誘導体3は例えば次のような方法で合成できる。(1)フラーレンC70と銅試薬とピリジンを反応させることにより、6つのアリール基がフラーレンC70に位置選択的に同時に付加した6重付加体を合成する。(2)当該6重付加体に有機基を有する金属原子を付加させる反応を行うことによって、6重付加型2核金属錯体が合成する。(3)合成された6重付加型2核金属錯体に対し、末端に官能基をもつアルキル基を有する酸塩化物を用いたフリーデル・クラフツ反応を行い、シクロペンタジエニル基等の2つの有機基に官能基を導入する。(4)その後、(3)で導入された末端の官能基を変換して、6重付加型2核金属錯体のジカルボン酸である式(31)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体を合成する。同様に、6重付加型2核金属錯体のジチオールである式(32)で表される部分構造を有するフラーレンC70誘導体を合成する。
【0025】
本明細書中、「有機基」とは特に限定されるものではないが、たとえば、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基(−SY1、式中、Y1は置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基を示す。)、置換基を有していてもよいアリールチオ基(−SY2、式中、Y2は置換基を有していてもよいC6〜C18アリール基を示す。)、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基(−SO23、式中、Y3は置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基を示す。)、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基(−SO24、式中、Y4は置換基を有していてもよいC6〜C18アリール基を示す。)を示す。
【0026】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C7〜C20アルキルアリール基、C7〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0027】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「C7〜C20アルキルアリール基」は、C7〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0033】
本明細書において、「C7〜C20アリールアルキル基」は、C7〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0035】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシ基」は、C1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0037】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシ基」は、C6〜C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0038】
本明細書において、「アルキルチオ基(−SY1、式中、Y1は置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基を示す。)」及び「アルキルスルホニル基(−SO23、式中、Y3は置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基を示す。)」において、Y1及びY3は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0039】
本明細書において、「アリールチオ基(−SY2、式中、Y2は置換基を有してもよいC6〜C18アリール基を示す。)」及び「アリールスルホニル基(−SO24、式中、Y4は置換基を有してもよいC6〜C18アリール基を示す。)」において、Y2及びY4は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0040】
「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」、「アルキルチオ基」、「アリールチオ基」、「アルキルスルホニル基」、「アリールスルホニル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アルキン基、トリメチルシリル基、アミノ基、ホスホニル基、チオ基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、イミノ基、ハロゲノ基、アルコキシ基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上、置換可能な最大数まで導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
本明細書において、「置換基を有してもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0042】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「Ph」はフェニル基を表し、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Bu」はブチル基を表し、「tBu」は3級ブチル基を表し、「iPr」は2級プロピル基を表し、「Ac」はアセチル基を表し、「Cp」はシクロペンタジエニル基を表し、「Cp*」はペンタメチルシクロペンタジエニル基を表し、「Fc」はフェロセニル基を表す。
【0044】
[合成例1]Fe270[4−tBuC64]6Cp*2の合成
【化17】

スキーム1に示すように、C70[4−tBuC6462(120mg、73μmol)のTHF溶液(1.0mL)に対し、tBuOKのTHF溶液(80μL、1.0M、80μmol)を加えた。10分後、[FeCp*(CH3CN)3]PF6アセトニトリル溶液(0.10M, 0.85mL, 85μmol)を加えた。5分間撹拌したのち、再びtBuOKのTHF溶液(80μL、1.0M、80μmol)と[FeCp*(CH3CN)3]PF6アセトニトリル溶液(0.10M, 0.85mL, 85μmol) を加えた。反応混合物にトルエン(10mL)を加え、直接SiO2パッドで濾過後、濃縮した。得られた粗生成物を、HPLC分離(Buckyprep、250mm、トルエン:ヘキサン=3:7)を行なうことにより精製し、Fe270[4−tBuC64]6Cp*2(57.8mg、収率39%)を得た。また、トルエン/エタノール溶液から、X線結晶構造解析用の単結晶を得た。
【0045】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0046】
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ1.07 (br, 30H, Cp*), 1.34 (s, 18H, CH3), 1.39 (s, 18H, CH3), 1.62 (s, 18H, CH3), 7.36 (d, JH-H = 8.6 Hz, 4H, C6H5), 7.49 (d, JH-H = 8.0 Hz, 4H, C6H5), 7.67 (d, JH-H = 8.0 Hz, 4H, C6H5), 7.79 (d, JH-H = 8.0 Hz, 4H, C6H5), 7.98 (d, JH-H = 8.0 Hz, 4H, C6H5), 8.80 (d, JH-H = 8.0 Hz, 4H, C6H5); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 9.71 (10C, Cp*), 31.40 (6C, C(CH3)3), 31.44 (6C, C(CH3)3), 31.64 (6C, C(CH3)3), 34.47 (2C, C(CH3)3), 34.56 (6C, C(CH3)3), 34.82 (6C, C(CH3)3), 55.55 (2C, C70), 57.03 (2C, C70), 58.73 (2C, C70), 80.44 (2C, Cp*), 88.78 (2C, C70), 89.27 (2C, C70), 90.02 (2C, C70), 91.42 (2C+2C, C70), 125.00 (4C, C6H4), 125.23 (4C, C6H4), 125.31 (4C, C6H4), 127.81 (2C), 129.09 (4C, C6H4), 129.34 (4C, C6H4), 129.79 (4C, C6H4), 132.41 (2C), 133.21 (2C), 133.73 (2C), 137.35 (2C), 137.66 (2C), 137.85 (2C), 139.58 (2C), 140.18 (2C), 140.48 (2C), 142.76 (2C), 142.87 (2C), 143.61 (2C), 144.80 (2C), 145.00 (2C), 145.98 (2C), 146.23 (2C), 146.60 (2C), 146.95 (2C), 147.09 (2C), 147.77 (2C), 148.38 (2C), 148.50 (2C+2C), 149.69 (2C), 150.03 (2C), 150.08 (2C), 150.24 (2C), 150.49 (2C), 150.65 (2C), 152.02 (2C), 159.65 (2C), 163.07 (2C); APCI-TOF MS calcd for C150H108Fe2 (M+H)+; 2022.7267, found m/z = 2022.7203.
【0047】
また、トルエン/エタノール溶液から得た単結晶について、X線結晶回折により分析を行なった。結果は以下のとおりだった((a)はORTEP図、(b)は一側面から見たCPKモデル、(c)は他側面から見たCPKモデルを示す)。
【化18】

【0048】
[合成例2]:Ru270[4−tBuC646Cp2の合成
【化19】

スキーム2に示すように、C70[4−tBuC6462(300 mg, 0.183mmol)のTHF溶液(60mL)に対し、tBuOKのTHF溶液(0.20mL, 0.20mmol)を加えた。10分後、[RuCp(CH3CN)3]PF6(96mg, 0.22mmol)のアセトニトリル溶液を加えた。5分間撹拌したのち、再びtBuOKのTHF溶液(0.20mL, 0.20mmol)と[RuCp(CH3CN)3]PF6(96mg, 0.22mmol)のアセトニトリル溶液を同様に加えた。THFを留去して濃縮し,反応混合物にトルエン(10mL)を加え、直接SiO2パッドで濾過後、濃縮した。得られた粗生成物を、HPLC分離(Buckyprep、250mm、トルエン:ヘキサン=3:7)を行なうことにより精製し、Ru270[4−tBuC646Cp2(249mg、収率69%)を得た。
【0049】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0050】
1H NMR (CD2Cl2, 500 MHz) δ1.36 (s, 18H, t-Bu), 1.38 (s, 18H, t-Bu), 1.42 (s, 18H, t-Bu), 3.82 (s, 10H, Cp), 7.40 (d, J = 8.6 Hz, 4H, C6H4), 7.43 (d, J = 8.6 Hz, 4H, C6H4), 7.49 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4), 7.77 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4), 7.99 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4), 8.07 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 125 MHz) δ31.47 (6C+6C, t-Bu (Me)), 31.49 (6C, t-Bu (Me)), 34.83 (2C, t-Bu (C)), 34.85 (2C, t-Bu (C)), 34.88 (2C, t-Bu (C)), 55.13 (2C, C70 (sp3)), 56.88 (2C, C70 (sp3)), 59.18 (2C, C70 (sp3)), 74.43 (10C, Cp), 93.44 (2C, FCp), 94.00 (2C, FCp), 96.72 (2C, FCp), 97.28 (2C, FCp), 105.73 (2C, FCp), 124.86 (4C), 124.95 (4C), 125.24 (4C), 127.20 (2C), 128.25 (4C), 128.29 (4C), 128.96 (4C), 132.21 (2C), 133.91 (2C), 134.56 (2C), 136.99 (2C), 138.37 (2C), 141.77 (2C), 142.77 (2C), 143.01 (2C), 143.24 (2C), 143.33 (2C), 144.19 (2C), 145.36 (2C), 145.72 (2C), 146.32 (2C), 146.56 (2C), 147.11 (2C), 147.58 (2C), 147.65 (2C), 148.04 (2C), 149.07 (2C), 149.26 (2C), 149.39 (2C), 150.06 (2C), 150.34 (2C), 150.74 (2C), 150.80 (2C), 150.86 (2C), 151.24 (2C), 151.68 (2C), 151.75 (2C), 159.78 (2C), 163.41 (2C); HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C140H89Ru2+ [M+H]+ 1973.5046, found 1973.5038.
【0051】
[合成例3]:Ru270[4−tBuC646Cp*2の合成
【化20】

スキーム3に示すように、C70[4−tBuC6462(200mg, 0.122mmol)のTHF溶液(40mL)に対し,tBuOKのTHF溶液(0.15mL, 0.15mmol)を加えた。10分後、[RuCp*(CH3CN)3]PF6(80mg, 0.158mmol)のアセトニトリル溶液を加えた。5分間撹拌したのち、再び,tBuOKのTHF溶液(0.15mL, 0.15mmol)と[RuCp*(CH3CN)3]PF6(80mg, 0.158mmol)のアセトニトリル溶液を同様に加えた。THFを留去して濃縮し,反応混合物にトルエン(10mL)を加え、直接SiO2パッドで濾過後、濃縮した。得られた粗生成物を,HPLC分離(Buckyprep、250mm、トルエン:ヘキサン=3:7)を行なうことにより精製し、Ru270[4−tBuC646Cp*2(190mg、収率74%)を得た。
【0052】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0053】
1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ1.17 (s, 30H, C5Me5), 1.29 (s, 18H, t-Bu), 1.40 (s, 18H, t-Bu), 1.58 (s, 18H, t-Bu), 7.23 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.35 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.50 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4), 7.73 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.90 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 8.59 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 100 MHz) δ10.43 (10C, Cp* (Me)), 31.42 (6C, t-Bu (Me)), 31.53 (6C, t-Bu (Me)), 31.67 (6C, t-Bu (Me)), 34.62 (2C, t-Bu (C)), 34.83 (2C, t-Bu (C)), 35.04 (2C, t-Bu (C)), 55.93 (2C, C70 (sp3)), 57.63 (2C, C70 (sp3)), 59.24 (2C, C70 (sp3)), 86.85 (10C, Cp* (C(sp2))), 92.48 (2C, FCp), 94.26 (2C, FCp), 94.92 (2C, FCp), 95.28 (2C, FCp), 107.16 (2C, FCp), 125.34 (4C), 125.55 (4C), 125.66 (4C), 126.69 (2C), 128.80 (4C), 129.14 (4C), 129.44 (4C), 132.51 (2C), 133.63 (2C), 134.24 (2C), 135.49 (2C), 138.31 (2C), 140.38 (2C), 140.83 (2C), 140.90 (2C), 141.21 (2C), 143.27 (2C), 143.45 (2C), 144.12 (2C), 145.32 (2C), 145.60 (2C), 146.38 (2C), 146.91 (2C), 147.29 (2C), 147.44 (2C), 147.61 (2C), 148.53 (2C), 148.60 (2C), 148.75 (2C), 149.02 (2C), 150.01 (2C), 150.07 (2C), 150.53 (2C), 150.87 (2C), 151.56 (2C), 152.04 (2C), 153.56 (2C), 159.24 (2C), 164.33 (2C); HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C150H109Ru2+ [M+H]+ 2113.6611, found 2113.6596.
【0054】
[実施例1]Fe2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp*2の合成
【化21】

スキーム4に示すように、銅試薬CuBr・SMe2(90.6mg, 0.440mmol)と、合成例1で得られたFe270[4−tBuC64]6Cp*2(89.0mg, 44.0mmol)のピリジン(9.0mL)とオルトジクロロベンゼン(9.0mL)との混合溶液に、グリニャール試薬XMgBr(式中X=FcC64, 0.45M, 0.98mL, 0.44mmol)のTHF溶液を室温で加え、その後40℃で13時間撹拌し、ヨウ化メチル2.0mLを加え反応を停止させた。生成液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/二硫化炭素=10/0〜0/10)によって精製した。強い赤色のフラクションを回収し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、HPLC分離(RPFullerene, 250mm, トルエン/アセトニトリル=5/5)を行うことにより精製し、Fe2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp*2(59.2mg, 25.7mmol, 収率59%)を得た.
【0055】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0056】
1H NMR (CD2Cl2, 500 MHz) δ 1.04 (s, 15H, C5Me5), 1.11 (s, 15H, C5Me5), 1.34 (s, 9H, t-Bu), 1.37 (s, 9H, t-Bu), 1.39 (s, 9H, t-Bu), 1.41 (s, 9H, t-Bu), 1.61 (s, 9H, t-Bu), 1.65 (s, 9H, t-Bu), 2.16 (s, 3H, C(sp3)-Me), 4.03 (s, 5H, Cp), 4.32 (t, J = 1.7 Hz, 2H, C5H4), 4.68 (d, J = 1.8 Hz, 2H, C5H4), 7.35-7.90 (m, 23H, C6H4), 8.04 (dd, J = 2.3, 8.0 Hz, 1H, C6H4), 8.63 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C6H4), 8.93 (d, J = 8.1 Hz, 2H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 125 MHz) δ 9.99 (5C, Cp* (Me)), 10.01 (5C, Cp* (Me)), 31.48 (3C, t-Bu (Me)), 31.51 (3C, t-Bu (Me)), 31.52 (3C, t-Bu (Me)), 31.55 (3C, t-Bu (Me)), 31.72 (3C, t-Bu (Me)), 31.76 (3C, t-Bu (Me)), 32.73 (1C, Me-C70 (sp3)), 34.70 (1C, t-Bu (C)), 34.78 (1C+1C+1C, t-Bu (C)), 35.04 (1C, t-Bu (C)), 35.12 (1C, t-Bu (C)), 55.61 (1C, C70 (sp3)), 56.13 (1C, C70 (sp3)), 56.24 (1C, C70 (sp3)), 57.23 (1C, C70 (sp3)), 57.94 (1C, C70 (sp3)), 58.60 (1C, C70 (sp3)), 59.54 (1C, C70 (sp3)), 63.10 (1C, C70 (sp3)), 66.85 (1C, C5H4), 67.00 (1C, C5H4), 69.40 (1C, C5H4), 69.42 (1C, C5H4), 70.01 (5C, Cp), 80.87 (5C, Cp* (C(sp2))), 80.92 (5C, Cp* (C(sp2))), 85.12 (1C, C5H4), 88.24 (1C, FCp), 88.85 (1C, FCp), 89.23 (1C, FCp), 90.06 (1C, FCp), 90.31 (1C, FCp), 91.32 (1C, FCp), 91.94 (1C, FCp), 92.95 (1C, FCp), 102.60 (1C, FCp), 104.25 (1C, FCp), 125.31 (2C), 125.55 (2C), 125.57 (2C+2C), 125.59 (2C), 125.73 (2C), 125.87 (1C), 125.95 (1C), 127.96 (1C), 128.24 (1C), 128.49 (1C), 128.97 (2C), 129.51 (2C), 129.68 (2C), 129.75 (1C), 129.82 (2C), 129.86 (2C), 129.95 (2C), 130.56, 131.21, 131.79, 133.16, 133.32, 135.24, 136.85, 136.97, 138.26, 138.58, 138.69, 138.72, 139.64 (1C+1C), 140.15, 140.29, 140.42, 140.58, 140.66, 140.72, 140.89, 140.92, 141.05, 141.29, 142.34, 142.81, 143.94 (1C+1C), 143.98, 144.21, 144.30, 144.33, 145.57, 145.83, 146.24, 146.27, 147.27, 147.52, 147.66, 147.85, 147.88, 148.02, 148.64, 148.80, 149.60, 150.51, 150.55 (1C+1C), 150.58, 150.61, 150.86, 151.01, 151.41, 152.71, 154.44, 154.55, 155.04, 156.51, 157.62, 158.96, 159.93, 160.88, 161.02, 161.63; HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C167H124Fe3+ [M]+ 2296.7751, found 2296.7733.
【0057】
[実施例2]Ru2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp2の合成
【化22】

スキーム5に示すように、銅試薬CuBr・SMe2(104mg, 0.505mmol)と、合成例2で合成したRu270[4−tBuC646Cp2(100mg, 50.7mmol)のピリジン(10.0mL)とオルトジクロロベンゼン(10.0mL)との混合溶液に、グリニャール試薬XMgBr(X=FcC64, 0.45M, 1.12mL, 0.50mmol)のTHF溶液を室温で加え、その後40℃で18時間撹拌し、ヨウ化メチル1.0mLを加え反応を停止させた。生成液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/二硫化炭素=10/0〜0/10)によって精製した。強い赤色のフラクションを回収し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、HPLC分離(RPFullerene, 250mm, トルエン/アセトニトリル=5/5)を行うことにより精製し、Ru2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp2(43.4 mg, 19.3mmol, 収率38%)を得た。
【0058】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0059】
1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ1.33 (s, 9H, t-Bu), 1.34(s, 9H, t-Bu), 1.36(s, 9H, t-Bu), 1.40(s, 9H, t-Bu), 1.41(s, 9H, t-Bu), 1.45(s, 9H, t-Bu), 2.23 (s, 3H, Me), 3.82 (s, 5H, Cp), 3.84 (s, 5H, Cp), 4.02 (s, 5H, Cp), 4.33 (m, 2H, C5H4), 4.67 (m, 2H, C5H4), 7.34-7.50 (m, 15H, C6H4), 7.71 (d, J = 8.2 Hz, 2H, C6H4), 7.80 (d, J = 8.5 Hz, 2H, C6H4), 7.91 (d, J = 8.5 Hz, 2H, C6H4), 7.97-8.00 (m, 5H, C6H4), 8.13 (d, J = 8.5 Hz, 2H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 100 MHz) δ31.45 (3C, t-Bu (Me)), 31.47 (3C+3C+3C, t-Bu (Me)), 31.53 (3C+3C, t-Bu (Me)), 32.73 (1C, Me-C70 (sp3)), 34.77 (1C, t-Bu (C)), 34.78 (1C, t-Bu (C)), 34.79 (1C, t-Bu (C)), 34.82 (1C, t-Bu (C)), 34.86 (1C, t-Bu (C)), 34.87 (1C, t-Bu (C)), 55.28 (1C, C70 (sp3)), 55.38 (1C, C70 (sp3)), 55.74 (1C, C70 (sp3)), 56.54 (1C, C70 (sp3)), 57.36 (1C, C70 (sp3)), 58.73 (1C, C70 (sp3)), 59.52 (1C, C70 (sp3)), 63.19 (1C, C70 (sp3)), 66.83 (1C, C5H4), 67.01 (1C, C5H4), 69.45 (1C, C5H4), 69.47 (1C, C5H4), 70.03 (5C, Cp), 74.29 (5C, Cp), 74.35 (5C, Cp), 85.01 (1C, C5H4), 93.44 (1C, FCp), 94.10 (1C, FCp), 94.46 (1C, FCp), 95.22 (1C, FCp), 95.77 (1C, FCp), 96.62 (1C, FCp), 96.84 (1C, FCp), 98.03 (1C, FCp), 104.96 (1C, FCp), 106.34 (1C, FCp), 124.75 (2C), 124.77 (2C), 124.90 (2C), 124.95 (2C), 125.05 (2C), 125.14 (2C), 125.93 (1C), 125.94 (1C), 125.95 (1C), 125.96 (1C), 128.00 (2C), 128.17 (2C), 128.19 (2C), 128.39 (1C), 128.42 (2C), 128.63 (2C), 129.03 (1C), 129.04 (2C), 130.61, 130.94, 131.21, 133.56, 133.68, 134.55, 136.11, 137.54, 137.65, 138.49, 138.68, 138.75, 139.21, 140.43, 141.23, 141.42, 141.88, 142.17, 142.50, 142.59, 142.98, 143.14, 143.54, 143.73, 143.75, 143.77, 144.27, 145.06, 145.13, 145.77, 146.60, 146.64, 146.86, 147.07, 147.19, 147.43, 147.86 (1C+1C), 148.15, 149.09, 149.14, 149.21, 149.90, 150.13, 150.48, 150.54 (1C+1C), 150.58 (1C+1C), 150.67 (1C+1C+1C), 151.53, 153.41, 153.43, 153.76, 155.64, 156.42, 158.11, 158.95, 159.86, 160.95, 161.16, 161.65; HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C157H105FeRu2+ [M+H]+ 2249.5647, found 2249.5662.
【0060】
[実施例3]Ru2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp*2の合成
【化23】

スキーム6に示すように、銅試薬CuBr・SMe2(58.5mg, 0.284mmol)と、合成例3で合成したRu270[4−tBuC646Cp*2(60.0mg, 28.4mmol)のピリジン(6.0mL)とオルトジクロロベンゼン(6.0mL)との混合溶液に、グリニャール試薬XMgBr(X=FcC64, 0.45M, 0.631mL, 0.28mmol)のTHF溶液を室温で加え、その後40℃で22時間撹拌し、ヨウ化メチル2.0mLを加え反応を停止させた。生成液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/二硫化炭素=10/0〜0/10)によって精製した。強い赤色のフラクションを回収し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、HPLC分離(RPFullerene, 250mm, トルエン/アセトニトリル=5/5)を行うことにより精製し、Ru2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp*2(39.6mg, 16.6mmol, 収率58%)を得た.
【0061】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0062】
1H NMR (CD2Cl2, 500 MHz) δ1.17 (s, 15H, C5Me5), 1.22 (s, 15H, C5Me5), 1.26・(s, 9H, t-Bu), 1.33 (s, 9H, t-Bu), 1.36 (s, 9H, t-Bu), 1.38 (s, 9H, t-Bu), 1.56 (s, 9H, t-Bu), 1.61 (s, 9H, t-Bu), 2.20 (s, 3H, Me), 4.02 (s, 5H, Cp), 4.33 (m, 2H, C5H4), 4.68 (m, 2H, C5H4), 7.17-7.83 (m, 23H, C6H4), 8.08 (m, 1H, C6H4), 8.44 (d, J = 8.6 Hz, 2H, C6H4), 8.72 (d, J = 8.6 Hz, 2H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 125 MHz)δ10.45(5C, Cp* (Me)), 10.50 (5C, Cp* (Me)), 31.43 (3C, t-Bu (Me)), 31.50 (3C, t-Bu (Me)), 31.53 (3C, t-Bu (Me)), 31.55 (3C, t-Bu (Me)), 31.68 (3C, t-Bu (Me)), 31.72 (3C, t-Bu (Me)), 32.78 (1C, Me-C70 (sp3)), 34.59 (1C, t-Bu (C)), 34.68 (1C, t-Bu (C)), 34.78 (1C, t-Bu (C)), 34.79 (1C, t-Bu (C)), 35.00 (1C, t-Bu (C)), 35.08 (1C, t-Bu (C)), 55.68 (1C, C70 (sp3)), 56.05 (1C, C70 (sp3)), 56.13 (1C, C70 (sp3)), 57.35 (1C, C70 (sp3)), 58.13 (1C, C70 (sp3)), 58.63 (1C, C70 (sp3)), 59.61 (1C, C70 (sp3)), 63.20 (1C, C70 (sp3)), 66.85 (1C, C5H4), 67.02 (1C, C5H4), 69.41 (1C, C5H4), 69.98 (1C, C5H4), 70.02 (5C, Cp), 85.15 (1C, C5H4), 86.66 (5C, Cp* (C(sp2))), 86.70 (5C, Cp* (C(sp2))), 92.55 (1C, FCp), 93.31 (1C, FCp), 94.16 (1C, FCp), 94.35 (1C, FCp), 94.81 (1C, FCp), 95.10 (1C, FCp), 95.41 (1C, FCp), 96.03 (1C, FCp), 106.28 (1C, FCp), 107.83 (1C, FCp), 125.20 (2C), 125.40 (2C), 125.42 (2C), 125.49 (2C), 125.55 (2C), 125.57 (2C), 125.89 (1C), 125.96 (1C), 126.59 (1C), 127.99 (1C), 128.02 (1C), 128.73 (1C+2C), 128.77 (2C), 128.98 (2C), 129.18 (2C), 129.27 (2C), 129.37 (2C), 130.63, 131.26, 131.37, 133.28, 133.45, 134.57, 134.97, 136.22, 136.75, 138.50, 138.61, 138.71, 139.70, 140.42, 140.43, 141.00, 141.10, 141.19, 141.20, 141.24, 141.32, 141.41 (1C+1C), 141.62, 142.43, 143.00, 143.19, 144.27, 144.28, 144.63, 144.78, 144.89, 145.94, 146.38, 146.69, 147.35, 147.56, 147.61, 147.78, 147.98, 148.12, 148.32, 148.46, 148.56, 149.92, 149.93, 150.00, 150.29, 150.33, 150.52, 150.62, 150.78, 152.10, 154.08, 155.33, 155.58, 155.65, 157.09, 157.72, 158.13, 160.47, 160.51, 160.98, 161.50; HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C167H125FeRu2+ [M+H]+ 2389.7212, found 2389.7252.
【0063】
[比較例1]Ru2{C70[4−tBuC646[FcC64]Me}Cp*2の合成
【化24】

スキーム7に示すように、銅試薬CuBr・SMe2(58.5mg, 0.284mmol)と、Ru270[4−tBuC646Cp*2(60.0mg, 28.4mmol)のピリジン(6.0mL)とオルトジクロロベンゼン(6.0mL)との混合溶液に、グリニャール試薬PhMgBr(0.967M, 0.294mL, 0.284mmol)のTHF溶液を室温で加え、その後40℃で22時間撹拌し、ヨウ化メチル2.0mLを加え反応を停止させた。生成液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/二硫化炭素=10/0〜0/10)によって精製した。強い赤色のフラクションを回収し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、HPLC分離 (RPFullerene, 250mm, トルエン/アセトニトリル=5/5)を行うことにより精製し、Ru2{C70[4−tBuC646PhMe}Cp*2(30.8mg, 14.0mmol, 収率49%)を得た。
【0064】
[比較試験]実施例3で合成した化合物と比較例1で合成した化合物との比較
実施例3で合成したRu2{C70[4−tBuC6H4]6(C64Fc)Me}Cp*2と、比較例1で合成したRu2{C70[4−tBuC646PhMe}Cp*2について、ジクロロメタン中で、それぞれのサイクリックボルタンメトリーを、nBu4NB(3,5−(CF32634存在下で測定した。
図1はこれらの化合物のサイクリックボルタモグラムである。
また、2つの化合物の酸化電位と2つのルテニウム原子での酸化電位の差δEの値も測定した。その結果は表1のとおりであった。
【表1】

【0065】
図1が示すように、実施例3の化合物は可逆的に3電子の酸化が生じたが、比較例1の化合物は可逆的に2電子の酸化が生じた。また、表1に示すように、実施例3の化合物と比較例1の化合物のそれぞれのδE(0.31V,0.29V)を比べると、0.02V異なっていた。実施例3の化合物が、比較例1の化合物より小さなδEの値をとることは、酸化を被るフェロセニル基を導入した結果、フラーレンC70骨格上の電子密度が低下し、フラーレンに直接結合する2つのルテニウム原子間での電子的相互作用が減少したことを意味している。このように、ゲート端子として機能するフェロセン部位に正の電圧を印加することによって、フラーレン上の2つのルテニウム原子間の電子移動を抑制できた。
【0066】
[実施例4]Ru2{C70[4−tBuC646[C64COOEt]Me}Cp2の合成
【化25】

4−ヨウ化安息香酸エチル (0.051mL, 0.30 mmol)と、THFとの混合溶液に、グリニャール試薬としてiPrMgBrのTHF溶液 (0.86M, 0.32mL, 0.28mmol)を−25℃で加え、撹拌を2時間行った。スキーム8に示すように、この混合溶液を銅試薬CuBr・SMe2(62.7mg, 0.304mmol)と、Ru270[4−tBuC646Cp2(50.0 mg, 25.3mmol のピリジン(5.0mL)と、オルトジクロロベンゼン(5.0mL)との混合溶液に、−25℃で加え、その後40℃で18時間撹拌し、ヨウ化メチル2.0mLを加え反応を停止させた。生成液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/トルエン=10/0〜0/10)によって精製した。強い赤色のフラクションを回収し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を、HPLC分離(RPFullerene, 250mm, トルエン/アセトニトリル=5/5)を行うことにより精製し、Ru2{C70[4−tBuC646[C64COOEt]Me}Cp2(5.9mg, 2.8mmol, 収率11%)を得た。
【0067】
合成した化合物について、1H−NMRを行なった。結果は以下のとおりだった。
【0068】
1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ1.34 (s, 9H+9H, t-Bu), 1.36 (s, 9H, t-Bu), 1.38 (t, J = 7.0 Hz, 3H, CH3CH2) 1.39 (s, 9H, t-Bu), 1.41 (s, 9H, t-Bu), 1.45 (s, 9H, t-Bu), 2.18 (s, 3H, Me), 3.82 (s, 5H, Cp), 3.84 (s, 5H, Cp), 4.36 (q, J = 7.0 Hz, 2H, CH3CH2), 7.33-8.22 (m, 28H, C6H4).
【0069】
得られたRu2{C70[4−tBuC646[C64COOEt]Me}Cp2のカルボン酸エステル基の脱保護処理を行いカルボキシル基にすることによって、Ru2{C70[4−tBuC646[C64COOH]Me}を合成できる。
【0070】
[合成例4]Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2Br]2の合成
【化26】

スキーム9に示すように合成例2で合成されたRu270[4−tBuC646Cp2(139mg, 70.5mmol)と、CS2(5.0mL)とを混合した濃赤色溶液に、AlCl3(46.9mg, 0.352mmol)と、ClCOCH2CH2CH2Br(0.041mL, 0.35mmol)と、CS2(5.0mL)とを混合した溶液を室温で加え、その後15分間撹拌し、水約10mLを加え反応を停止させた。反応混合物をクロロホルムを用いて抽出し、抽出液を無水MgSO4で乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)によって精製し、Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2Br]2(87.6mg, 38.6mmol, 55%)を得た。
【0071】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0072】
1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ1.27 (m, 4H, CH2CH2CH2), 1.38 (s, 18H, t-Bu), 1.40 (s, 18H, t-Bu), 1.42 (s, 18H, t-Bu), 2.07 (m, 4H, CH2CO), 2.75 (m, 4H, CH2Br), 3.52 (s, 2H+2H, C5H4), 4.49 (s, 2H, C5H4), 4.55 (s, 2H, C5H4), 7.42 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 7.49 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 7.56 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4), 7.68 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4), 7.94 (d, J = 8.0 Hz, 4H, C6H4), 8.07 (d, J = 8.3 Hz, 4H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 100 MHz) δ27.04 (2C, CCCBr), 31.47 (6C, t-Bu (Me)), 31.48 (6C+6C, t-Bu (Me)), 34.02 (2C, CBr), 34.86 (2C, t-Bu (C)), 34.92 (2C, t-Bu (C)), 34.94 (2C, t-Bu (C)), 37.22 (2C, CCO), 55.33 (2C, C70 (sp3)), 56.84 (2C, C70 (sp3)), 59.13 (2C, C70 (sp3)), 74.11 (2C, C5H4), 74.80 (2C, C5H4), 78.01 (2C, C5H4), 78.33 (2C, C5H4), 84.66 (2C, C5H4), 93.71 (2C, FCp), 94.28 (2C, FCp), 98.86 (2C, FCp), 99.64 (2C, FCp), 106.80 (2C, FCp), 125.11 (4C), 125.29 (4C), 125.53 (4C), 125.71 (2C), 128.14 (4C), 128.21 (4C), 128.78 (4C), 132.25 (2C), 133.98 (2C), 134.58 (2C), 135.77 (2C), 138.38 (2C), 142.20 (2C), 142.33 (2C), 142.51 (2C), 142.59 (2C), 143.34 (2C), 144.37 (2C), 145.35 (2C), 146.03 (2C), 146.65 (2C), 147.08 (2C), 147.63 (2C), 147.65 (2C+2C), 148.05 (2C), 149.05 (2C), 149.08 (2C), 149.17 (2C), 149.91 (2C), 150.02 (2C), 151.07 (2C), 151.09 (2C), 151.23 (2C), 151.26 (2C), 151.34 (2C), 151.87 (2C), 159.07 (2C), 163.35 (2C), 199.47 (2C, CO); HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C148H99Br2O2Ru2+ [M+H]+ 2269.4093, found 2269.4049.
【0073】
[合成例5]Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2SAc]2の合成
【化27】

スキーム10に示すように、合成例4で合成されたRu270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2Br]2(80.0mg, 35.2mmol)とテトラヒドロフラン(8.0mL)とN,N−ジメチルホルムアミド(8.0mL)とを混合した濃赤色溶液に、チオ酢酸カリウム(40.3mg, 0.353mmol)を室温で加え10分間撹拌し、水約20mLを加え反応を停止させた。反応混合物をクロロホルムを用いて抽出し、溶媒を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)によって精製し、Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2SAc]2(72.7mg, 32.2mmol, 91%)を得た。
【0074】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0075】
1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ1.20-1.32 (m, 4H, CH2CH2CH2), 1.36 (s, 18H, t-Bu), 1.41 (s, 18H, t-Bu), 1.43 (s, 18H, t-Bu), 1.94 (t, J = 7.4 Hz, 4H, CH2CO), 2.18 (s, 6H, CH3CO), 2.21-2.31 (m, 4H, CH2S), 3.53 (s, 2H, C5H4), 3.58 (s, 2H, C5H4), 4.44 (s, 2H, C5H4), 4.55 (s, 2H, C5H4), 7.44 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 7.45 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 7.57 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.62 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 7.96 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 8.08 (d, J = 8.4 Hz, 4H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 100 MHz) δ24.12 (2C, CCCS), 28.51 (2C, CH2S), 30.72 (2C,CH3CO), 31.45 (6C, t-Bu (Me)), 31.48 (6C, t-Bu (Me)), 31.49 (6C, t-Bu (Me)), 34.87 (2C+2C, t-Bu (C)), 34.95 (2C, t-Bu (C)), 37.54 (2C, CH2CO), 55.35 (2C, C70 (sp3)), 56.85 (2C, C70 (sp3)), 59.13 (2C, C70 (sp3)), 74.17 (2C, C5H4), 74.59 (2C, C5H4), 78.07 (2C, C5H4), 78.20 (2C, C5H4), 84.84 (2C, C5H4), 93.43 (2C, FCp), 94.33 (2C, FCp), 98.80 (2C, FCp), 99.75 (2C, FCp), 106.66 (2C, FCp), 125.10 (4C), 125.24 (4C), 125.52 (4C), 125.92 (2C), 128.05 (4C), 128.23 (4C), 128.82 (4C), 132.23 (2C), 133.98 (2C), 134.57 (2C), 135.55 (2C), 138.38 (2C), 142.31 (2C), 142.38 (2C), 142.45 (2C), 142.54 (2C), 143.32 (2C), 144.36 (2C), 145.35 (2C), 146.04 (2C), 146.64 (2C), 147.08 (2C), 147.44 (2C), 147.59 (2C), 147.64 (2C), 148.09 (2C), 148.99 (2C), 149.06 (2C), 149.18 (2C), 149.89 (2C), 149.92 (2C), 150.93 (2C), 151.11 (2C), 151.26 (2C), 151.43 (2C), 151.51 (2C), 152.03 (2C), 158.93 (2C), 163.48 (2C), 195.45 (2C, CH3CO), 199.69 (2C, CH2CO); HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C152H105O4Ru2S2+ [M+H]+ 2261.5536, found 2261.5569.
【0076】
[実施例5]Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2SH]2の合成
【化28】

スキーム11に示すように、合成例5で合成された、Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2SAc]2(6.3mg, 2.8mmol)と、テトラヒドロフラン(1.0mL)とを混合した濃赤色溶液に,水酸化カリウムのメタノール溶液(0.60M, 0.092mL, 55.2mmol)を室温で加え10分間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液0.02mLを加え反応を停止させた。溶媒を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=10/0〜9/1)によって精製し、Ru270[4−tBuC646[C54COCH2CH2CH2SH]2(3.8 mg, 1.7mmol, 63% )を得た。
【0077】
合成した化合物について、1H−NMR、13C−NMRおよびMS分析を行なった。結果は以下のとおりだった。
【0078】
1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ1.33 (s, 18H, t-Bu), 1.44 (s, 18H, t-Bu), 1.46 (s, 18H, t-Bu), 1.64-1.67 (m, 4H, CH2CH2CH2), 2.06-2.24 (m, 4H, CH2CO), 2.39-2.55 (m, 4H, CH2S), 3.62 (s, 2H, C5H4), 3.71 (s, 2H, C5H4), 4.14 (s, 2H, C5H4), 4.92 (s, 2H, C5H4), 7.37 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.49 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.54 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 7.61 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4), 8.01 (d, J = 8.2 Hz, 4H, C6H4), 8.19 (d, J = 8.5 Hz, 4H, C6H4); 13C NMR (CD2Cl2, 100 MHz) δ24.23 (2C, CCCS), 31.45 (6C, t-Bu (Me)), 31.52 (6C+6C, t-Bu (Me)), 34.84 (2C, t-Bu (C)), 34.94 (2C, t-Bu (C)), 35.01 (2C, t-Bu (C)), 37.66 (2C, CCO), 39.50 (2C, CH2S), 55.32 (2C, C70 (sp3)), 56.79 (2C, C70 (sp3)), 59.09 (2C, C70 (sp3)), 73.02 (2C, C5H4), 76.01 (2C, C5H4), 77.77 (2C, C5H4), 78.31 (2C, C5H4), 85.98 (2C, C5H4), 94.10 (2C, FCp), 94.59 (2C, FCp), 98.37 (2C, FCp), 98.78 (2C, FCp), 106.84 (2C, FCp), 125.11 (4C), 125.35 (4C), 125.46 (4C), 126.21 (2C), 127.83 (4C), 128.41 (4C), 129.01 (4C), 131.94 (2C), 133.93 (2C), 134.54 (2C), 136.43 (2C), 138.40 (2C), 141.69 (2C), 142.30 (2C), 142.41 (2C), 142.55 (2C), 143.28 (2C), 144.34 (2C), 145.32 (2C), 146.16 (2C), 146.51 (2C), 146.94 (2C), 147.07 (2C), 147.56 (2C), 147.70 (2C), 148.22 (2C), 148.29 (2C), 148.47 (2C), 148.69 (2C), 149.28 (2C), 149.82 (2C), 150.94 (2C), 151.32 (2C), 151.47 (2C), 151.78 (2C), 152.67 (2C), 152.84 (2C), 158.23 (2C), 163.73 (2C), 200.60 (2C, CO); HRMS (APCI-TOF, positive) m/z calcd for C148H100O2Ru2S2+ [M]+ 2176.5252, found 2176.5195.
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の活用法として、例えば、トランジスタ等の電子デバイスを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例3の化合物と比較例1の化合物のサイクリックボルタモグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、(21)、(22)、(31)または(32)
【化1】

[上記式中、R3はそれぞれ独立して有機基であり;
4は、有機基であり;
5は、それぞれ独立して、有機基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、金属原子であり;
Lは、それぞれ独立して、単結合、置換基を有してもよいC1〜C10のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C10のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC2〜C10のアルキニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく、これらのアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0〜5の整数であり;
qは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり;
nは、0〜4の整数であり;
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化2】

(式(A)中、R1は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり、
2は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり、
pは、0〜4の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
【請求項2】
上記式(1)、(21)、(22)、(31)および(32)中、
3はそれぞれ独立してC1〜C5アルキル基であり;
4は、C1〜C5アルキル基であり;
5は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、それぞれ独立して、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルキニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0〜5の整数であり;
qは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
請求項1に記載の単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
【請求項3】
下記式(1)
【化3】

[上記式中、
3はそれぞれ独立してC1〜C2アルキル基であり;
4は、C1〜C3アルキル基であり;
5は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化4】

(式(A)中、R1は、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体であって、
フラーレンC70に付加しているMtlを有する2つの基がそれぞれソース端子とドレイン端子であり、フラーレンC70に付加しているフェロセンを有する基がゲート端子である、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
【請求項4】
請求項3に記載の、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体を含む単分子トランジスタであって、
上記式(1)中、
3はそれぞれ独立してメチルまたはエチルであり;
4は、メチルまたはエチルであり;
5は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
2は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
pは、0〜2の整数であり、
フラーレンC70に付加しているソース端子とドレイン端子とが導電性電極に接合し、ゲート端子を電気化学的に作動させる、単分子トランジスタ。
【請求項5】
フラーレンC70誘導体であって、下記式(21)または(22)
【化5】

[上記式中、
3はそれぞれ独立してC1〜C2アルキル基であり;
4は、C1〜C3アルキル基であり;
5は、それぞれ独立して、C1〜C5アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化6】

(式(A)中、R1は、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体であって、
フラーレンC70に付加しているMtlを有する2つの基がそれぞれソース端子とドレイン端子であり、フラーレンC70に付加しているカルボキシル基またはチオール基を有する基がゲート端子である、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
【請求項6】
請求項5に記載の、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体を含む単分子トランジスタであって、
上記式(21)または(22)中、
3はそれぞれ独立してメチルまたはエチルであり;
4は、メチルまたはエチルであり;
5は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
mは、それぞれ独立して、0または5であり;
nは、0〜2の整数であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
2は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
pは、0〜2の整数であり、
フラーレンC70に付加しているソース端子とドレイン端子が導電性電極に、ゲート端子がITO電極に接合している、単分子トランジスタ。
【請求項7】
フラーレンC70誘導体であって、下記式(31)または(32)
【化7】

[上記式中、
3はそれぞれ独立してC1〜C2アルキル基であり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
qは、それぞれ独立して、0または4であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である、
Arは、それぞれ独立して、下記式(A)
【化8】

(式(A)中、R1は、C1〜C3アルキル基であり;
2は、それぞれ独立して、C1〜C3アルキル基であり;
pは、0〜2の整数である。)
で表される基である。]
で表される部分構造を有する、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体であって、
フラーレンC70に付加している金属原子Mtlを有する2つの基がそれぞれソース端子とドレイン端子であり、フラーレンC70骨格をゲート端子とする、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体。
【請求項8】
請求項7に記載の、単分子トランジスタ用のフラーレンC70誘導体を含む単分子トランジスタであって、
上記式(31)または(32)中、
3はそれぞれ独立してメチルまたはエチルであり;
Mtlは、それぞれ独立して、FeまたはRuであり;
Lは、単結合、置換基を有してもよいC1〜C5のアルキレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレン、置換基を有してもよいC2〜C5のアルケニレンまたは置換基を有してもよいC6〜C30のフェニレンであり、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたはフェニレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−COO−、−CO−もしくは−OCO−で置き換えられてもよく;
qは、それぞれ独立して、0または4であり;
式(A)中、
1は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
2は、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり;
pは、0〜2の整数であり、
フラーレンC70に付加しているソース端子とドレイン端子とが導電性電極に接合し、フラーレンC70骨格に電子が注入されることによりゲート端子を作動させる単分子トランジスタ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−288421(P2008−288421A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132739(P2007−132739)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】