説明

単分子膜の製造方法

【課題】高密度に単分子膜を製造することで、単分子膜の性能を向上させる。
【解決手段】基材300の表面に樹脂層310を形成する樹脂層形成工程と、樹脂層310に凹凸形状312を形成する凹凸形状形成工程と、樹脂層310の凹凸形状310に単分子膜320を形成する単分子膜形成工程と、樹脂層310を加熱し溶融させ、樹脂層310を平坦化する加熱工程と、を有することを特徴とする単分子膜の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単分子膜の製造方法に係り、特に、高密度に単分子膜を形成することができる単分子膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置で用いられるインクジェットヘッドでは、ノズルプレートの表面にインクが付着していると、ノズルから吐出されるインク液滴が影響を受けて、インク液滴の吐出方向にばらつきが生じることがある。インクが付着すると、記録媒体上の所定位置にインク液滴を着弾させることが困難となり、画像品質が劣化する要因となる。
【0003】
そこで、ノズルプレート表面にインクが付着することを防止し吐出性能を向上させるため、またメンテナンス性能を向上させるため、ノズルプレート表面へ撥水膜を形成する方法が各種提案されている。ノズルプレート表面への撥水処理方法としては、フッ素樹脂やフッ素含有の単分子膜を用いる方法などがある。しかしながら、単分子膜を用いた場合は、インクジェットヘッド製造時に付着したパーティクルなどの影響で完全にノズル表面を成膜することは困難であった。また、フッ素含有の単分子膜は、電気陰性度が高いため、隣接する分子同士を高密度に配置することは困難であった。つまり、単分子膜は低密度にしか成膜することはできず、充分な撥水性能を実現することは困難であった。
【0004】
例えば、下記の特許文献1では、加工が終了したノズルプレートの表面に、その表面の微細な凹凸を平滑にするための下地層としてポリイミド層を形成し、その上にフッ素を含む化学吸着単分子膜を形成して撥液膜を形成することが記載されている。また、下地層と単分子膜の間に中間層を形成することにより、単分子膜の密度をさらに上げることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−201005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のノズルプレートは、凹凸を平滑にするためにポリイミド膜などの下地層を用いているが、基板表面のパーティクルなどの影響や単分子膜の立体障害の問題により、単分子膜を高密度に形成することは困難であった。したがって、充分な撥液性を得ることができていなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高密度に単分子膜を形成することができる単分子膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、基材の表面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層に凹凸形状を形成する凹凸形状形成工程と、前記樹脂層の前記凹凸形状に単分子膜を形成する単分子膜形成工程と、前記樹脂層を加熱し溶融させ、前記樹脂層を平坦化する加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1によれば、凹凸形状を有する樹脂層を形成し、樹脂層表面の表面積を大きくした後、単分子膜を形成している。その後、加熱工程により樹脂層を平坦化させることにより、凹凸形状の凹部側面に形成されていた単分子膜を樹脂層表面に形成することができる。したがって、樹脂層表面の単分子膜の密度を、凹部側面に形成されている単分子膜の分だけ増やすことができるので、高密度の単分子膜を形成することができる。
【0010】
請求項2は請求項1において、前記樹脂層は、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
【0011】
請求項2によれば、樹脂層が熱可塑性樹脂からなるので、加熱工程において樹脂層を加熱し軟化させ、樹脂層を平坦化することができる。
【0012】
請求項3は、請求項1または2において、前記樹脂層を形成する樹脂のTgが前記単分子膜の分解温度以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項3によれば、樹脂層を形成する樹脂のTgが、単分子膜の分解温度以下としているので、加熱工程により単分子膜が分解することを防止することができる。
【0014】
請求項4は請求項1から3いずれか1項において、前記凹凸形状形成工程が、ナノインプリント法で行われることを特徴とする。
【0015】
請求項5は請求項4において、前記ナノインプリント法が、熱ナノインプリント法、または、UVナノインプリント法であることを特徴とする。
【0016】
請求項4および請求項5によれば、凹凸形状をナノインプリント法で形成することで、簡便な操作で凹凸形状を形成することができる。ナノインプリント法としては、熱ナノインプリント法、UVナノインプリント法を好ましく用いることができる。
【0017】
請求項6は請求項1から5いずれか1項において、前記単分子膜形成工程の前に、前記樹脂層の表面処理工程を有することを特徴とする。
【0018】
請求項7は請求項6において、前記表面処理工程は、酸素プラズマ処理、または、UV処理であることを特徴とする。
【0019】
請求項6および請求項7によれば、単分子膜形成工程の前に、樹脂層の表面処理を行っている。樹脂層の表面処理を行うことで、樹脂層上の有機物などのコンタミネーションを除去し、未結合手(ダングリングボンド)および酸化層を形成することができる。したがって、単分子膜を高密度に結合させることができるとともに、密着性を向上させることができる。表面処理工程としては、酸素プラズマ処理、UV処理を好ましく用いることができる。
【0020】
請求項8は請求項1から7いずれか1項において、前記加熱処理は、前記樹脂層を形成する樹脂のTg以上に加熱することを特徴とする。
【0021】
請求項8によれば、加熱処理において、樹脂層を樹脂のTg以上に加熱することで、樹脂層を軟化させ、樹脂層を平坦化することができる。
【0022】
請求項9は請求項1から8いずれか1項において、前記単分子膜は、アルキルシランからなることを特徴とする。
【0023】
請求項10は請求項1から9いずれか1項において、前記単分子膜は、形成する材料にフッ素原子を含有することを特徴とする。
【0024】
請求項10によれば、フッ素原子を有する単分子膜を用いることで、撥水性を有する単分子膜を製造することができる。
【0025】
請求項11は請求項10において、前記基材がインクジェットヘッドのノズルプレートであることを特徴とする。
【0026】
請求項11によれば、基材としてインクジェットヘッドのノズルプレートを用いているので、ノズルプレート表面に撥水性を有する単分子膜を形成することができる。また、高密度な単分子膜を形成することができるので、撥水性能を向上させることができ、インクがノズルプレート表面に付着することを防止することができるので、吐出性能を向上させることができる。
【0027】
請求項12は請求項1から9いずれか1項において、前記単分子膜を形成する材料は、アルキル基に樹脂との接合性に優れた置換基を有し、前記単分子膜が、樹脂系材料の接合材であることを特徴とする。
【0028】
請求項12によれば、単分子膜を形成する材料のアルキル基に、樹脂との接合性に優れた置換基を有しているので、単分子膜に樹脂系材料を接合することで基材と樹脂系材料の接合材として使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の単分子膜の製造方法によれば、樹脂層を形成後、樹脂層に凹凸を形成することで、樹脂層表面の表面積を大きくすることができる。その後、単分子膜を形成し、加熱により樹脂層を平坦化することで、樹脂層の凹部側面に形成されていた単分子膜を表面に出すことができるので、樹脂層表面の単分子膜を高密度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。
【図2】インクジェットヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図3】図2中IV−IV線に沿う断面図である。
【図4】単分子膜の製造方法を説明する工程図である。
【図5】微細凹凸が形成されたノズルプレート表面の平面図である。
【図6】撥水膜を構成する分子の化学構造の概略図である。
【図7】他の単分子膜の製造方法を説明する工程図である。
【図8】他の単分子膜の製造方法を説明する工程図である。
【図9】他の単分子膜の製造方法を説明する工程図である。
【図10】他の単分子膜の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って、本発明に係る単分子膜の製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0032】
<インクジェット記録装置の全体構成>
まず、本発明の単分子膜の製造方法により製造された単分子膜を適用した例として、ノズルプレート、および、ノズルプレートを備えるインクジェット記録装置について説明する。
【0033】
図1は、インクジェット記録装置の構成図である。このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0034】
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排出部122を備えて構成される。
【0035】
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
【0036】
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0037】
図1に示すように、処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0038】
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
【0039】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
【0040】
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(第2の搬送体)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
【0041】
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが好ましい。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0042】
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
【0043】
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0044】
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。
【0045】
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0046】
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。
【0047】
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
【0048】
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0049】
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
【0050】
定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内の熱可塑性樹脂微粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度を50℃以上に設定することで、定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
【0051】
また、インク中にUV硬化性モノマーを含有させた場合は、乾燥部で水分を充分に揮発させた後に、UV照射ランプを備えた定着部で、画像にUVを照射することで、UV硬化性モノマーを硬化重合させ、画像強度を向上させることができる。
【0052】
(排出部)
図1に示すように、定着部120に続いて排出部122が設けられている。排出部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
【0053】
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0054】
なお、図1においてはドラム搬送方式のインクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、ベルト搬送方式のインクジェット記録装置などにおいても用いることができる。
【0055】
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造について説明する。なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
【0056】
図2(a)は、インクジェットヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、インクジェットヘッド250の他の構造例を示す平面透視図である。図3は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図2(a)中、IV−IV線に沿う断面図)である。
【0057】
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッド250におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクジェットヘッド250は、図2(a)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252などからなる複数のインク室ユニット253を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0058】
紙搬送方向と略直交する方向に記録媒体124の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図2(b)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドブロック(ヘッドチップ)250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0059】
図3に示すように、各ノズル251は、インクジェットヘッド250のインク吐出面250aを構成するノズルプレート260に形成されている。ノズルプレート260は、例えば、Si、SiO、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料、ポリイミドのような樹脂系材料で構成されている。
【0060】
ノズルプレート260の表面(インク吐出側の面)には、インクに対して撥液性を有する撥水膜262が形成されており、インクの付着防止が図られている。
【0061】
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル251と供給口254が設けられている。各圧力室252は供給口254を介して共通流路255と連通されている。共通流路255はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に分配供給される。
【0062】
圧力室252の天面を構成し共通電極と兼用される振動板256には個別電極257を備えた圧電素子258が接合されており、個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電素子258が変形してノズル251からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に供給される。
【0063】
なお、ノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0064】
また、ライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録紙16の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録紙16の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録紙16を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録紙16の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録紙16の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
【0065】
<単分子膜の製造方法>
次に、上述した撥水膜262を構成する単分子膜の製造方法について説明する。
【0066】
<第1実施形態>
図4は、本発明の第1実施形態に係る単分子膜の製造方法を説明した図である。本実施形態に係る単分子膜の製造方法では、ノズルプレート300の表面に樹脂層310を形成する工程(樹脂層形成工程)と、樹脂層310に微細凹凸312を形成する工程(凹凸形状形成工程)と、微細凹凸312が形成された樹脂層310上に撥水膜(単分子膜)320を形成する工程(単分子膜形成工程)と、樹脂層310を加熱し樹脂層310を平坦化する工程(加熱工程)と、を含んで構成される。以下、各工程について説明する。
【0067】
(1−1)樹脂層形成工程
まず、図4(a)に示すようにインク流路302、ノズル304が形成されたノズルプレート300を準備する。ノズルプレート300は上述した材料を用いて形成することができる。
【0068】
次に、図4(b)に示すように、ノズルプレート300のノズル304側に樹脂層310を形成する。樹脂層310は、通常の塗布により形成することができる。樹脂層310に用いられる樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂など、熱可塑性樹脂を用いることができる。また、樹脂のTgが、後述する単分子膜を構成する材料の分解温度以下であることが好ましい。下記の加熱工程で、単分子膜が分解することを防止することができる。本実施形態については、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)を用いて樹脂層を形成した。
【0069】
樹脂層310の膜厚は10nm以上2μm以下であることが好ましい。樹脂層310をこの範囲とすることで、加熱工程で樹脂層の平坦化が可能となり、良好な平坦性を確保する効果がある。本実施形態においては、膜厚は1μmであった。
【0070】
(1−2)凹凸形状形成工程
次に、図4(c)に示すように、樹脂層310上に微細凹凸312を形成する。微細凹凸312を形成することにより、樹脂層310の表面積が大きくなるので、次工程で形成される撥水膜320の面積を大きくすることができる。
【0071】
微細凹凸312を形成する方法としては、ドライエッチング法、レーザー加工法、サンドブラスト法などの加工方法、また、ナノインプリント法により行うことができる。ナノインプリント法により行う場合、UVナノインプラントや熱ナノインプラントにより行なうことができる。
【0072】
例えば、熱ナノインプリント法により微細凹凸312を形成する場合、予め準備した微細な凹凸が形成された型を樹脂層310に押し付けることで形成する。型は、シリコン、石英、Ni(ニッケル)、樹脂などで形成することができる。微細凹凸312の形成は、樹脂層310が形成されたノズルプレートを加熱しておく。本実施形態においては、PMMAを用いているので、約200℃に加熱しておくことが好ましい。加熱されたノズルプレート300に型を押し付け、型の反転型となる微細凹凸を樹脂層310に転写し、冷却することで樹脂層310を硬化させる。その後、型を剥離することで、微細凹凸312を形成する。
【0073】
図5に微細凹凸312を形成した後の平面図を示す。図5(a)は樹脂層310にピラー状に凸部を形成し、微細凹凸312を形成した図であり、図5(b)は樹脂層310にホール状に凹部を形成し、微細凹凸312を形成した図である。本発明においては、いずれの形状でも形成することができる。微細凹凸312の凸部または、凹部のサイズは、図5においては、直径約10nm〜5μmの円形とすることができる。また、一辺約10nm〜5μmの四角形、または、形状は限定されず、これらのサイズに準ずるサイズとすることが好ましい。また、深さは約10nm〜5μmとすることが好ましく、アスペクト比は、0.5以上とすることが好ましい。微細凹凸312のサイズを上記範囲とすることにより、後の加熱工程で、樹脂層の平坦化安定して行うことができる。微細凹凸312の凹部のサイズが、上記サイズより大きい、または、深さが深い場合は、加熱工程により樹脂層310が平坦化されない場合がある。また、微細凹凸312の凹部のサイズが、上記範囲より小さい、あるいは、深さが浅い場合は、表面積が大きくならず、密度の高い撥水膜が形成できない場合がある。
【0074】
(1−3)単分子膜形成工程
次に、微細凹凸312が形成されたノズルプレート300に撥水処理を行い、撥水膜320を形成する。撥水膜320は、例えば、物理的気相成長法(ベーパー法、蒸着法、スパッタリング法など)や化学気相蒸着(CVD法、ALD法など)のドライプロセス法、塗布法、スピンコート法、ディップコート法などのウエットプロセス法などにより形成することができる。
【0075】
撥水膜320は、フッ素含有の単分子膜であることが好ましい。撥水膜320に用いられる材料としては、YSiX4−n(n=1、2、3)であらわされるケイ素化合物を用いることができ、Yは、末端が−CF基で終端された一つまたは複数の炭素鎖を含む置換基を用いることができる。炭素鎖は、完全に飽和していても、または部分的に不飽和であってもよく、炭素鎖中の炭素原子の一部については、水素原子がフッ素に置換されていてもよい。また、炭素鎖中の炭素数は3〜10個であることが好ましい。例えば、炭素鎖は、(CH(CFCF(ここで、M≧2およびN≧0、かつM+N≧2)の化学式で示すことができ、具体的には(CH(CFCFを例示することができる。また、Xは、ハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセトキシ基などの基質表面の水酸基あるいは吸着水との縮合により結合可能な基からなる。
【0076】
撥水膜320に用いられる材料としては、上述したようなフルオロアルキルシランを用いることができ、具体的には、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシラン(FDTS)用いることができる。また、ダイキン工業社製のオプツールDSX[CF3CFO−(CFCF−O−Si]、ティーアンドケー社製NANOSを用いることができる。
【0077】
樹脂層310には、酸素原子が含まれており、この酸素原子は、空気中の水分と反応し、樹脂層310の表面には、水酸基が存在する。そこで、上記撥水膜320を形成する材料であるケイ素化合物の置換基Xと反応して、樹脂層310の表面に撥水膜320が形成される。
【0078】
撥水膜320を構成する分子の化学構造の概略図を図6に示す。図6に示すように、樹脂層310に隣接する撥水膜320の分子、すなわち、単分子膜のうち樹脂層310に隣接する部分は、樹脂層310の表面上のOH基と結合することで、撥水膜320を形成する。また、Si原子の残りの結合手は、隣接するケイ素化合物のSiと結びついた酸素原子、もしくはOH基、またはそれらの両方と結合することができる。
【0079】
撥水膜形成工程の前に、樹脂層310の表面を表面処理することが好ましい。表面処理としては、例えば、プラズマ処理、UV処理、VUV処理、オゾン処理などによりノズルプレート300の樹脂層310表面の親水化処理を行う。表面処理を行うことにより、樹脂層310表面の有機物などのコンタミネーションを除去し、未結合手(ダングリングボンド)および酸化層を形成することができ、ケイ素化合物をより高密度に結合させることができる。
【0080】
本実施形態においては酸素(O)プラズマ処理を1分行った。酸素プラズマ処理は、プラズマツール、例えばアノードカップリング型プラズマツール(例えばアメリカ合衆国カリフォルニア州リヴァーモアのYield Engineering Systems製)若しくはカソードカップリング型プラズマツール又は誘導結合プラズマ(ICP)ツールなどで行うことができる。樹脂層310が形成されたノズルプレート300は、圧力が真空近く、例えば1Torr(1.3×10Pa)未満、例えば0.2Torr(27Pa)又は10−5Torr(1.3×10−3Pa)まで減圧されたプラズマツールの真空チャンバ内に置かれ得る。チャンバ内に酸素が例えば80sccmの流量で導入され得る。高周波電力(例えば500Wの電力)の印加が開始されると、Oプラズマが形成される。Oプラズマ処理は、1分間〜90分間、例えば5分間〜60分間にわたって行われ得る。ノズルプレートの内表面及び該表面の両方が、Oプラズマに曝露され得る。プラズマ処理の条件は、使用処理装置のチャンバ構造や、ノズルプレート300の材質によって異なり、材料、条件により適宜変更し、最適な条件で行なうことが好ましい。
【0081】
(1−4)加熱工程
次に、図4(e)に示すように、微細凹凸312上に撥水膜320が形成されたノズルプレート300を加熱処理して樹脂層310を平坦化する。加熱処理は、ホットプレートや加熱オーブンを用いて、樹脂層310を形成する樹脂のTg(ガラス転移点)以上に加熱を行う。本実施形態で用いた樹脂は、PMMAであるので、加熱温度を170℃とし、ホットプレートで5分間加熱処理を行った。加熱工程により、ノズルプレート300上の樹脂層(PMMA層)310は平坦になった。
【0082】
加熱工程において、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長いと、樹脂層310がノズル304内部に流れ込むことがある。したがって、加熱温度と時間は、ノズル304内に樹脂が流れ込まない温度、時間で行なう。逆に、加熱温度が低い、加熱時間が短いと樹脂層310が充分に平坦化しない場合がある。また、ノズル304内に樹脂が流れ込んだ場合は、ノズルの裏面側(図4においてインク流路302側)からドライエッチング処理を行い、樹脂を除去する必要がある。
【0083】
図4(d)に示すように、撥水膜形成工程により形成された撥水膜320は、微細凹凸312の凹部の底面、側面、および、凸部の表面に形成されていたが、加熱処理により樹脂層310を平坦にすることができたので、凹部の側面にあった撥水膜320も樹脂層310の表面に移動させることができるので、撥水膜320の密度を向上することができる。
【0084】
<第2実施形態>
図7〜10は、本発明の第2実施形態に係る単分子膜の製造方法を説明した図である。第2実施形態に係る単分子膜の製造方法は、ノズル内面に保護膜を形成し、撥水膜がノズル内部に形成されないようになっている点が第1実施形態と異なっている。
【0085】
第2実施形態係る単分子膜の製造方法では、ノズルプレート400にノズル孔を形成する工程(ノズル孔形成工程)と、ノズルプレート400のノズル孔内面に保護膜500を形成する工程(保護膜形成工程)と、ノズルプレート400を薄板化し保護膜500を露出させる工程(ノズルプレート薄板化工程)と、ノズルプレート400の表面に樹脂層510を形成する工程(樹脂層形成工程)と、樹脂層510に微細凹凸512を形成する工程(凹凸形状形成工程)と、微細凹凸512が形成された樹脂層510上に撥水膜(単分子膜)520を形成する工程(単分子膜形成工程)と、樹脂層510を加熱し樹脂層510を平坦化する工程(加熱工程)と、ノズルの開口部に形成されている保護膜500を除去しノズルを開口する工程(ノズル穴開口工程)と、を含んで構成される。以下、各工程について説明する。
【0086】
(2−1)ノズル孔形成工程
本実施形態のノズルプレートは、SOI(Silicon On Insulator)基板400を用いて製造する。SOI基板400は、ハンドル層410、ハンドル層410の一面側に設けられたBOX(Buried Oxide)層(埋め込み酸化膜層)415、BOX層415のハンドル層410の反対側に設けられたデバイス層420とから構成されている(図7(a))。
【0087】
ここでは、ハンドル層410の厚さは約600μm、デバイス層420の厚さは約30μm、BOX層415の厚さは約1μmとなっている。
【0088】
まず、マスクアライメント用のレチクルマーク430をデバイス層420にエッチングする。さらに、デバイス層420の表面に酸化膜435、及びハンドル層410の表面に酸化膜440を形成する(図7(b))。これらの酸化膜は、例えば熱酸化法で形成することができ、厚さは少なくとも1μmとする。
【0089】
次に、酸化膜435をエッチングによりパターニングし、開口部450を形成する(図7(c))。開口部450は、酸化膜435が完全に除去され、デバイス層420が露出された状態となっている。
【0090】
エッチング方法としては、BOE(Buffered Oxide Etch)等のウエットエッチングや、ドライエッチングを用いることができる。
【0091】
続いて、酸化膜435の上に犠牲層460を形成する。次に、開口部450の位置に円形(又は楕円、長方形、正方形等)の開口部465を形成する(図7(d))。ここで、開口部450の中心と開口部465の中心は一致しており、かつ開口部465の口径は開口部450の口径よりも小さくなっている。
【0092】
また、開口部465は、デバイス層420及びBOX層415を貫通し、ハンドル層410の内部まで到達するように形成される。開口部465は、ハンドル層410の約1〜5μm(例えば2μm)だけ内部まで形成される。
【0093】
この開口部465は、多数のエッチング工程によって形成することができる。また、開口部465のエッチング後、犠牲層460を除去する。
【0094】
次に、開口部465を含む開口部450に、ライナー膜470を形成する(図8(e))。このライナー膜470は、開口部465を含む開口部450の次工程のエッチングに対する保護膜として機能する。ライナー膜470としては、窒化物、二酸化ケイ素、あるいは金属を用いることができる。窒化物ライナーであれば、低圧化学蒸着法(LPCVD)によって形成することができ、酸化物ライナーであれば、プラズマ(PECVD)や熱酸化処理により形成することができる。ライナー膜470の厚さは、最小で0.2μmとする。
【0095】
さらに、開口部465におけるライナー膜470の空洞部に、フォトレジスト480をパターニングする(図8(f))。
【0096】
次に、ライナー膜470をエッチングし、開口部450の位置のデバイス層420を露出させる(図8(g))。このとき、酸化膜435もエッチングされ、その厚みが減少する。
【0097】
開口部450の位置におけるデバイス層420の露出した部分をエッチングすることで、テーパー部490を形成する(図8(h))。例えば、KOH(水酸化カリウム)を用いた結晶異方性エッチングを行うことで、テーパー部490を四角錐状のテーパー形状に
形成することができる。
【0098】
次に、リン酸あるいはフッ化水素によりライナー膜470およびフォトレジスト480を除去し、ノズル孔を形成する(図9((i))。
【0099】
(2−2)保護膜形成工程
次に、酸化膜435、および、開口部450に保護膜500を形成する(図9(j))。保護膜500は、SiO、SiN、金属膜などにより形成することができる。保護膜500の形成方法は、熱酸化法、CVD法、スパッタ法などのより形成することができる。保護膜500の厚さは1μm未満とすることが好ましい。ここでは、熱酸化法でSiO膜を形成した。
【0100】
(2−3)ノズルプレート薄板化工程
次に、研磨やドライエッチングなどにより酸化膜440およびハンドル層410を除去する(図9(k))。図9(k)からは、図9(i)のノズルプレート400を反転させて説明を行う。酸化膜440の除去は、例えば、ドライエッチングにより行なうことができる。ハンドル層410は、研磨によりおおまかに除去した後、残りの部分を保護膜500およびBOX層415と選択的にウエットエッチング又はドライエッチングをすることにより除去することができる。
【0101】
ここで、開口部465はハンドル層410の約1〜5μmだけ内部まで形成され、さらに開口部465には保護膜500が形成されているため、ハンドル層410が除去されてBOX層415が露出した面には、保護膜500が突出した突出部505が存在している。
【0102】
(2−4)樹脂層形成工程
次に、BOX層415上に樹脂層510を形成する(図9(l))。樹脂層510の形成方法としては、(1−1)樹脂層形成工程と同様の方法により行なうことができる。
【0103】
(2−5)凹凸形状形成工程
次に、樹脂層510上に微細凹凸512を形成する(図10(m))。微細凹凸512の形成方法としては、(1−2)凹凸形状形成工程と同様の方法により行なうことができる。
【0104】
(2−6)単分子膜形成工程
次に、微細凹凸512上に撥水膜520を形成する(図10(n))。撥水膜520の形成方法としては、(1−3)単分子膜形成工程と同様の方法により行なうことができる。
【0105】
(2−7)加熱工程
次に、微細凹凸512上に撥水膜520が形成された樹脂層510を加熱処理して樹脂層510を平坦化する(図10(o))。加熱処理の方法としては、(1−4)加熱工程と同様の方法により行うことができる。
【0106】
(2−8)ノズル穴開口工程
最後に、開口部465の保護膜500を除去し、ノズル穴開口部550を形成する(図10(p))。保護膜500の除去は、ノズル表面(吐出面)側からドライエッチング法により除去することができる。
【0107】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、樹脂層510に微細凹凸512を設け、この微細凹凸512の凹部の底面、側面、および、凸部の表面に撥水膜520を形成する。そして、加熱処理により樹脂層510を平坦にすることで、微細凹凸の凹部の側面にあった撥水膜も樹脂層310の表面に移動させることができるので、撥水膜320の密度を向上させることができる。また、撥水膜320の形成時には、ノズル穴開口部550は保護膜500により閉じられているので、撥水膜320を形成する材料が、ノズル内部に流れ込むことを防止することができる。
【0108】
<単分子膜の他の例>
単分子膜の形成方法について、インクジェット記録装置のノズルプレート表面に形成される撥水膜を例にして説明をしたが、本発明はこれに限定されず、次の用途に用いられる単分子膜に対しても使用することができる。
【0109】
[接着剤の下地層]
本発明の単分子膜の製造方法により製造された単分子膜は、接着剤の下地層として用いることができる。接着剤の下地層として用いられる材料として、YSiX4−n(n=1、2、3)であらわされるケイ素化合物で、Yは、樹脂との接合性に優れたビニル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基の少なくとも1つの官能基を有する置換基であることが好ましい。
【0110】
基板上に上述した撥水膜の製造方法と同様の方法により、単分子膜の製造を行う。形成された単分子膜は、凹凸を形成し平坦化しているので、高密度に形成することができる。
【0111】
単分子膜の材料として、例えば、樹脂系材料との接合性に優れたアミノ基をもった材料を用いることで、アミノ基を介して単分子膜に第2の基材である樹脂系材料を接合させることができる。ビニル基、メタクリル基、エポキシ輝、アミノ基、メルカプト基などの官能基と第2の基材である樹脂系材料との接合は、従来公知の接着方法で使用される条件を採用することができ、例えば、熱、光などのエネルギーを付与することにより接合することができる。
【0112】
このように、単分子膜は撥水性を有する材料に限定されず、様々な材料の単分子膜の製造に対して、本発明の製造方法は使用することができる。また、他の単分子膜の用途として超親水膜、接着剤等の密着層としてのシランカップリング剤に用いることができる。
【符号の説明】
【0113】
100…インクジェット記録装置、112…給紙部、114…処理液付与部、116…描画部、118…乾燥部、120…定着部、122…排出部、124…記録媒体、154…処理液ドラム、156…処理液塗布装置、170…描画ドラム、172M、172K、172C、172Y…インクジェットヘッド、176…乾燥ドラム、180…温風噴出しノズル、182…IRヒータ、184…定着ドラム、186…ハロゲンヒータ、188…定着ローラ、192…排出トレイ、196…搬送ベルト、300…ノズルプレート、302…インク流路、304…ノズル、310、510…樹脂層、312、512…微細凹凸、320、520…撥水膜(単分子膜)、550…ノズル穴開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層に凹凸形状を形成する凹凸形状形成工程と、
前記樹脂層の前記凹凸形状に単分子膜を形成する単分子膜形成工程と、
前記樹脂層を加熱し溶融させ、前記樹脂層を平坦化する加熱工程と、を有することを特徴とする単分子膜の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層は、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層を形成する樹脂のTgが前記単分子膜の分解温度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項4】
前記凹凸形状形成工程が、ナノインプリント法で行われることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項5】
前記ナノインプリント法が、熱ナノインプリント法、または、UVナノインプリント法であることを特徴とする請求項4に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項6】
前記単分子膜形成工程の前に、前記樹脂層の表面処理工程を有することを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項7】
前記表面処理工程は、酸素プラズマ処理、または、UV処理であることを特徴とする請求項6に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項8】
前記加熱工程は、前記樹脂層を形成する樹脂のTg以上に加熱することを特徴とする請求項1から7いずれか1項に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項9】
前記単分子膜は、アルキルシランからなることを特徴とする請求項1から8いずれか1項に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項10】
前記単分子膜は、形成する材料にフッ素原子を含有することを特徴とする請求項1から9いずれか1項に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項11】
前記基材がインクジェットヘッドのノズルプレートであることを特徴とする請求項10に記載の単分子膜の製造方法。
【請求項12】
前記単分子膜を形成する材料は、アルキル基に樹脂との接合性に優れた置換基を有し、前記単分子膜が、樹脂系材料の接合材であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項に記載の単分子膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−76374(P2012−76374A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224032(P2010−224032)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】