説明

単分散粒子製造装置、単分散粒子製造装置用オリフィスプレート、及び単分散粒子集合体

【課題】パルス圧力を印加しながら均一なサイズの単分散粒子を製造する装置において、大量に製造できるようにする。
【解決手段】容器18の下側に、タンディッシュ14を設ける。更にその下側にオリフィスプレート15を配置し、該オリフィスプレート15に複数個のオリフィス16を設ける。シリンダロッド12を圧電アクチュエータ11連結してタンディッシュ14内を上下動させることにより、単分散粒子を大量に製造できるようにする。また溶融金属17が接触する部分を円対称にすると共に、オリフィスプレート15上の円対称軸を中心とする円周上に複数個のオリフィス16を設ける。このとき、均一なサイズの単分散粒子を大量に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス圧力を印加しながら均一なサイズの単分散粒子を製造する装置、この
装置に利用するオリフィスプレート、及び単分散粒子集合体に関する。特に、流動性材料が間欠的に噴出するオリフィスを複数個用い、その配置を工夫することにより、均一なサイズの単分散粒子の生産性を向上させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−155305号公報 サイズの揃った微小粒子、即ち微小単分散粒子は、今日種々の科学技術の分野で需要が増大している。例えば微小単分散粒子として知られている、ゾル−ゲル法によって作製されるラテックス粒子は、粒度(粒径)分布の標準偏差が平均粒径の約10%である。そのために、電子顕微鏡観察における標準サイズ粒子として用いられている。半導体工業では、ICチップの小型化や接合のために30〜40μmの粒度(粒径)の揃った球形半田粉が要望されている。また合金粉のHIP成形においても、材料に対して致命的な欠陥となる不均一空隙の形成を防ぐために、粒度(粒径)の揃った球形粉が必要であるとされている。 微小単分散粒子を作る方法として、数μm以下の酸化物微粒子に限れば、前述のゾル−ゲル法がある。一方、100μm以上の粒子を希望する場合は、プラズマ回転電極法(PREP法)がある。またある程度の粒度(粒径)幅が許容される場合は、一般的なアトマイズ粉を篩等で機械的に分級する方法も実用的である。
【0003】
しかし従来の方法では分級作業が必要不可欠である。さらに、粒子サイズを幅広く制御すること、すなわち希望のサイズの単分散粒子を得ることは一般に困難である。ゾル−ゲル法は、0.1〜1.2μmの微粒子の作製に限定される。またPREP法では、電極の回転安定性から、粒径約100μmがその作製限界である。現状における単分散粒子の応用分野を拡大するためには、分級作業が不要で、より自由に粒度(粒径)制御を行なうことが可能な作業プロセスの開発が望まれていた。
【0004】
このために本出願人等は、球形単分散粒子の製造方法及び装置を、特許文献1により提案した。
特許文献1に開示した技術は、圧電アクチュエータにパルス圧力を発生させて、溶融金属に伝達する。このパルス圧力に同期して、溶融金属に接触しているオリフィスから、溶融金属を1個ずつ単分散粒子として噴射して球状化し、冷却した後、球形単分散粒子を回収するものである。この製造方法及び装置によれば、製造しようとする単分散粒子の大きさに応じてオリフィスを選択することにより、オリフィス直径の0.9〜1.1倍の範囲にある球形単分散粒子を製造することが可能となった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また均一な大きさの単分散粒子を大量に生産することは、工業的に重要である。本発明は、オリフィスを複数個用い、その配置を工夫することにより、機械的な分級操作をすることなく、サイズの揃った単分散粒子を大量に生産できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、流動性材料を貯留するための容器と、この容器から流動性材料が供給される複数個のオリフィスを有するオリフィスプレートと、所定のパルス圧力を発生する圧電アクチュエータと、該圧電アクチュエータで発生したパルス圧力を該容器に貯留された流動性材料に伝達するパルス圧力伝達部と、該オリフィスから噴射された流動性材料を回収する回収部とを有することを特徴とする単分散粒子製造装置である。
【0007】
本発明(2)は、前記容器の流動性材料貯留部分と、前記パルス圧力伝達部が円対称であり、前記オリフィスプレートが円対称軸に垂直に配置され、複数個の前記オリフィスが、オリフィスプレートと円対称軸との交点を中心とする円周上に配置されていることを特徴とする本発明(1)の単分散粒子製造装置である。
【0008】
本発明(3)は、前記容器の流動性材料貯留部分と、前記パルス圧力伝達部が円対称であり、前記オリフィスプレートが円対称軸に垂直に配置され、複数個の前記オリフィスが、オリフィスプレートと円対称軸との交点から所定の距離にある平面内に配置されていることを特徴とする本発明(1)の単分散粒子製造装置である。
【0009】
本発明(4)は、前記パルス圧力伝達部が円柱状のシリンダロッドであり、該シリンダロッドの断面の半径rに対し、円対称軸との交点から0.4×r〜1.5×rの距離にある前記オリフィスプレートの平面内に、前記オリフィスが配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明(3)の単分散粒子製造装置である。
【0011】
本発明(5)は、前記容器の流動性材料貯留部分と、前記パルス圧力伝達部が円対称であり、前記オリフィスプレートが円対称軸に垂直に配置され、複数個の前記オリフィスが、オリフィスプレートと円対称軸との交点を中心とする円平面内に配置されていることを特徴とする本発明(1)の単分散粒子製造装置である。
【0012】
本発明(6)は、円周上に複数のオリフィスが配置されていることを特徴とする単分散粒子製造装置用オリフィスプレートである。
【0013】
本発明(7)は、ある点から所定の距離にある平面内に複数のオリフィスが配置されていることを特徴とする単分散粒子製造装置用オリフィスプレートである。
【0014】
本発明(8)は、円平面内に複数のオリフィスが配置されていることを特徴とする単分散粒子製造装置用オリフィスプレートである。
【発明の効果】
【0015】
本発明(1)のように、複数のオリフィスを設けることにより、1パルスで形成される単分散粒子の量が多くなり、その生産性を向上させることができる。
本発明(2)のように、ほぼ同じ大きさのパルス圧力のかかる円周上に、同じ口径のオリフィスを複数個配置することにより、サイズの揃った単分散粒子の生産性を向上させることができる。パルス圧力の偏りを少なくするために、オリフィスを等間隔、均一に配置することが好ましい。
本発明(3)〜(5)によれば、サイズの揃った単分散粒子の生産性を更に向上させることができる。ほぼ同じ大きさのパルス圧力のかかる部分が半径方向にも広がって、許容範囲のサイズの単分散粒子が生産できることが期待できる場合は、オリフィスを所定の平面内に配置することが好ましい。この場合も、パルス圧力の偏りを少なくするために、ほぼ均一に配置することが好ましい。
本発明(6)〜(8)は、本発明(1)〜(5)の単分散粒子製造装置に用いるオリフィスプレートであり、サイズの揃った単分散粒子の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に依る各用語の意義について明らかにすると共に、本発明の最良形態について説明する。
「円対称」とは、立体図形をある軸を中心として任意の角度だけ回転しても元の図形に重なることである。この軸を「円対称軸」と定義する。
「ばらつき」とは、複数個の測定値などが平均値や標準値の前後に不規則に分布していることをいう。本発明では、製造された単分散粒子の集合体を光学顕微鏡で観察する。同時に、光学顕微鏡を用いて撮影した画像の解析から、各粒子の断面積を測定する。それから各粒子の直径を算出することにより、粒径分布、すなわち直径の平均値やそのばらつきの度合などを求めている。
【0017】
(実施の形態1)
図1に、本発明の一つの実施の形態である単分散粒子製造装置の断面概略図を示す。
この単分散粒子製造装置は、流動性材料である溶融金属17を貯留するための容器18と、この容器18から溶融金属17が供給される複数個のオリフィス16を有するオリフィスプレート15と、所定のパルス圧力を発生する圧電アクチュエータ11と、該圧電アクチュエータ11で発生したパルス圧力を容器18に貯留された溶融金属17に伝達するパルス圧力伝達部、すなわちシリンダロッド12と、オリフィス12から噴射された溶融金属17を回収する回収部とを有する。
【0018】
容器18は、蓋18aによって密閉される。蓋18aには圧電アクチュエータ11に連結したシリンダロッド12が貫通している。圧電アクチュエータ11で発生するパルス圧力は、シリンダロッド12、及びシリンダロッド12に接触している溶融金属17に伝達する。また容器18には、不活性ガスを導入するためのガス導入口19が設けられている。
容器18の下側は、溶融金属保持用の中間容器であるタンディッシュ14になっている。
タンディッシュ14の下側には、例えばネジ式の支持筒28で、オリフィスプレート15が固定されている。オリフィスプレート15の固定は、ボルト等、他のもので行なうようにしてもよい。
【0019】
オリフィスプレート15には、複数個のオリフィス16を設ける。製造しようとする単分散粒子の大きさに応じて、その大きさに対応する口径を有するオリフィスを設ければよい。
オリフィス16からその口径にほぼ等しい大きさの球状の粒子を噴射するために、溶融金属17との濡れ性の低い材料を用いることが好ましい。例えば、ステンレス、アルミナ、カーボン、石英、ボロンナイトライド等を用いることが好ましい。
タンディッシュ14の断面の直径は、そこに入り込むシリンダロッド12の断面の直径よりも例えば0.1〜2.5mm大きくなっている。溶融金属17は、シリンダロッド12の下降によってタンディッシュ14に閉じ込められ、オリフィスプレート15に設けられた複数個のオリフィス16から噴射する。
【0020】
オリフィスプレート15の下側は壁21によって囲まれており、壁21にも不活性ガスを導入するためのガス導入口20が設けられている。壁21によって囲まれた空間の下側には回収部が設けられており、オリフィス16から噴射する溶融金属17が固化することによって得られる単分散粒子を回収する。
【0021】
次に、本装置を用いて単分散粒子を製造する方法について説明する。
初めに蓋18aを開けて、容器18に単分散粒子の材料、例えば金属を充填する。そして蓋18aを閉じた後、容器18の外側に配置された加熱装置13で加熱することにより、流動性材料、すなわち溶融金属17にする。溶解した金属17は、タンディッシュ14内に流れ込む。
【0022】
溶融金属17が酸素、水分等と反応しやすい材料である場合は、ガス導入口19から窒素、アルゴン等の不活性ガスを導入させながら製造することが好ましい。
圧電アクチュエータ11に周期的なパルス波を印加することにより、圧電アクチュエータ11からパルス圧力を周期的に発生する。このパルス圧力は、シリンダロッド12、溶融金属17に伝達される。パルス圧力によってシリンダロッド12が下降することにより、タンディッシュ14内に流れ込んだ溶融金属17は閉じ込められ、そしてオリフィス16から噴射する。
【0023】
パルス圧力の周期は、1〜500Hzの範囲で可能であるが、250Hz以下であることが好ましい。
シリンダロッド12の先端がタンディッシュ14に入り込む体積は、複数個のオリフィス16から噴射する溶融金属17の容積よりも大きいことが好ましい。すなわち、シリンダロッド12の断面の面積をs、シリンダロッド12がタンディッシュ14内を移動する距離をl、オリフィス孔は半径δrの円で、その数をnとおいたとき、
【数1】

であることが好ましい。
【0024】
そうでない場合は、球形となるために充分な量の溶融金属が各オリフィス16から噴射されず、ゆがんだ形状の粒子となる。
オリフィス16から噴射した溶融金属17は、落下する間に固化して下側に配置された回収部に回収される。
【0025】
落下しながら固化する溶融金属17の酸化を防止するために、ガス導入口20から不活性ガスを所定の速度で導入するようにしてもよい。
また回収部に液体槽を設け、オリフィス16から噴射した溶融金属を急冷して固化するようにしてもよい。
【0026】
容器18の溶融金属17が貯留される部分、タンディッシュ14、及びシリンダロッド12は円対称にすることが好ましい。このシリンダロッド12を上下動させたとき、オリフィスプレート15上では、円対称軸を中心とした円周上でほぼ同じ大きさの圧力がかかる。この円周上に同じ口径のオリフィス16を複数個配置することにより、均一なサイズの単分散粒子を大量に製造することができる。
【0027】
図2に、オリフィス配置の一例を示す。これは図1の単分散粒子製造装置をオリフィスプレート15側から見た平面図である。シリンダロッド12の断面は円形になっている。この円と中心軸を同一とする円周22上に、6個のオリフィス16を配置している。このとき、圧電アクチュエータ11が1回動作する毎に6個のオリフィス16から溶融金属が噴射するために、単分散粒子の生産性を高めることができる。
落下中の溶融金属が結合して大きな粒にならないようにするために、各オリフィスは、オリフィスの直径の2倍以上離しておくことが好ましい。
【0028】
また単分散粒子製造装置が安定に動作して均一なサイズの粒子を製造できるようにするために、円周22上でオリフィス16が等間隔、均一になるように配置しておくことが好ましい。
【0029】
単分散粒子の材料として用いられる金属としては、銅、銀、金、錫等、或いはこれらを含む合金がある。金属に限定されるものではなく、モノマー系樹脂も製造可能である。このことは、以下の実施の形態でも同じである。
【0030】
(実施の形態2)
図3に、オリフィス配置の他の例を示す。オリフィス配置以外の部分は、実施の形態1と同じである。
ほぼ同じ大きさのパルス圧力のかかる部分が半径方向にも広がって、許容範囲のサイズの単分散粒子を製造できることが期待できる場合は、図3に示すように半径方向にも広げてオリフィスを配置するようにしてもよい。
タンディッシュ14に入り込むシリンダロッド12の先端の円断面の半径をrとおいたとき、オリフィスプレート15と円対称軸との交点から、0.4×r〜1.5×r離れた位置にオリフィス16を配置することが好ましい。
【0031】
複数個のオリフィスが0.4×rより内側にある場合、パルス圧力が各オリフィスに均一に分散されなくなる。
またオリフィス16を1.5×rより離れた位置に配置する場合、それに応じてタンディッシュ14を広げなければならない。このとき、シリンダロッド12とタンディッシュ14との間の隙間が大きくなる。パルス圧力がかかったときに、溶融金属17の一部が隙間から戻ってしまい、オリフィス孔とほぼ同じ径の溶融金属を噴射するのに十分な圧力がかからなくなる。
【0032】
この場合も実施の形態1と同様に、落下中の溶融金属が結合して大きな粒にならないようにするために、各オリフィスは、オリフィスの直径の2倍以上離しておくことが好ましい。また単分散粒子製造装置が安定に動作して均一なサイズの粒子を製造できるようにするために、オリフィス16は均一に配置しておくことが好ましい。
本実施の形態の場合は、より多くのオリフィスを配置することができ、単分散粒子の生産性を更に高めることができる。
【0033】
(実施の形態3)
図4に、本発明の他の実施の形態である単分散粒子製造装置の概略図を示す。図中、図1と同じものは同一符号で示す。実施の形態3のパルス圧力伝達部は、図1に示したシリンダロッド12の代わりに、伝達ロッド23及びダイアフラム24を用いている。
溶融金属17を貯留する容器26の下側には、底が狭くなっている逆円錐型容器27が設けられている。更にその下側には、オリフィスプレート15があり、オリフィスプレート15に複数個のオリフィス16を設ける。
【0034】
逆円錐型容器27の上部には、ダイアフラム保持部25に保持されたダイアフラム24が取り付けられている。ダイアフラム24は溶融金属17に接触している。圧電アクチュエータ11で発生するパルス圧力は、伝達ロッド23を通じて、ダイアフラム24及び溶融金属17に伝達する。
【0035】
次に、本装置を用いて単分散粒子を製造する方法について説明する。
容器26に、単分散粒子の材料、例えば金属を充填する。そして容器26の外側に配置された加熱装置13で加熱することにより、流動性材料、溶融金属17にする。溶解した金属17は、逆円錐型容器27に流れ込む。
【0036】
溶融金属17が酸素、水分等と反応しやすい材料である場合は、窒素、アルゴン等の不活性ガスを導入しながら製造することが好ましい。
圧電アクチュエータ11に周期的なパルス波を印加することにより、圧電アクチュエータ11からパルス圧力を周期的に発生する。このパルス圧力は、伝達ロッド23を通じて、ダイアフラム24、溶融金属17に伝達する。パルス圧力でダイアフラム24がたわむことにより、オリフィス16から溶融金属17を噴射する。
【0037】
パルス圧力の周期は、50〜130Hzであることが好ましい。
パルス圧力を印加したときにダイアフラム24が溶融金属17側にたわむ体積は、複数個のオリフィス16から噴射する溶融金属17の容積よりも大きいことが好ましい。
容器26の溶融金属17が貯留される部分、逆円錐型容器27、及びダイアグラム24は円対称にすることが好ましい。圧電アクチュエータ11のパルス圧力が伝達されたとき、オリフィスプレート15上では、円対称軸を中心とした円周上でほぼ同じ大きさの圧力がかかる。この円周上に同じ口径のオリフィスを複数個配置することにより、均一なサイズの単分散粒子を大量に製造することができる。単分散粒子製造装置が安定に動作して均一なサイズの粒子を製造できるようにするために、円対称軸を中心とした円周上に、オリフィス16が等間隔、均一になるように配置しておくことが好ましい。
【0038】
ほぼ同じ大きさのパルス圧力のかかる部分が円平面内全体に広がって、許容範囲のサイズの単分散粒子が生産できることが期待できる場合は、その円内にオリフィスを配置するようにしてもよい。この場合、より多くのオリフィスを配置することができ、単分散粒子の生産性を更に高めることができる。
【0039】
(実施の形態4)
図5に、本発明の更に他の実施の形態である単分散粒子製造装置の概略図を示す。図中、図1と同じものは同一符号で示す。
実施の形態4では、シリンダロッド12の先端と、タンディッシュ14の径をほぼ同じにしている。そして容器18にノズル29を設けている。圧電アクチュエータ11のパルス圧力でシリンダロッド12を上下動させることにより、溶融金属17はノズル29、タンディッシュ14を通じて、オリフィス16から噴射される。
圧電アクチュエータ11でパルス圧力を発生したときに、オリフィスプレート15上の円対称軸を中心とした円周上でほぼ同じ大きさの圧力がかかる場合は、この円周上に複数個のオリフィスを配置することが好ましい。このとき、均一なサイズの単分散粒子を、大量に製造することができる。
【0040】
ほぼ同じ大きさのパルス圧力のかかる部分が半径方向にも広がって、許容範囲のサイズの単分散粒子を製造できることが期待できる場合は、図3に示すように半径方向に広げてオリフィスを配置するようにしてもよい。
【実施例】
【0041】
図1に示した装置に、図6に示したオリフィスプレートを取り付けた。そして、Sn−3.0Wt%Ag−0.5Wt%Cuの単分散粒子を製造する実験を行なった。
図6に示すように、オリフィスプレート15上には、中心から半径3mmの円周上に、180度広げて2個のオリフィス16が配置されている。
シリンダロッド12とダンディッシュ14は、5〜30mmの範囲にあるものをいくつか使って実験を行なった。
容器18内の温度は略260℃に保ち、2つのガス導入口19、20からはアルゴンガスを導入した。
【0042】
パルス波生成装置から、周波数125Hzのパルス波を圧電アクチュエータ11に印加した。このとき、2個のオリフィス孔から、孔とほぼ同じ太さのすじとなって真直ぐ落ちていくのを観測することができた。
【0043】
作製された単分散粒子の光学顕微鏡写真を、図7に示す。サイズが均一で、真球に近い粒子になっていた。
図8に、光学顕微鏡に備えられている画像解析手段で測定した単分散粒子の粒径分布を示す。粒径は170.1〜175.9μmの範囲に入っており、平均粒径は172.9μmであった。この平均粒径から±3%の範囲(167.7〜178.1μm)に入っている粒子が99.99%以上あり、良好な粒径分布が得られた。更に噴射の様子から、直径6mm以外の円周上にオリフィスを配置しても、粒径の揃った分散粒子を製造できることが期待できる。
【0044】
周波数60、80、100Hzでパルス波を印加したときも、オリフィス孔とほぼ同じ太さのすじとなって真直ぐ落ちていくのを観測することができた。そして周波数125Hzを印加したときと同様に、良好な粒径分布が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一つの実施の形態である単分散粒子製造装置の概略図である。
【図2】オリフィス配置の例を示す平面図である。
【図3】オリフィス配置の例を示す平面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態である単分散粒子製造装置の概略図である。
【図5】本発明の更に他の実施の形態である単分散粒子製造装置の概略図である。
【図6】本発明で用いたオリフィスプレートの平面図である。
【図7】本発明の実施により得られた単分散粒子の光学顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施により得られた単分散粒子の粒径分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
11:圧電アクチュエータ
12:シリンダロッド
13:加熱装置
14:タンディッシュ
15:オリフィスプレート
16:オリフィス
17:溶融金属
18、26:容器
19、20:ガス導入口
21:壁
22:円周
23:伝達ロッド
24:ダイアフラム
25:ダイアフラム保持部
27:逆円錐型容器
28:支持筒
29:ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性材料を貯留するための容器と、この容器から流動性材料が供給される複数個のオリフィスを有するオリフィスプレートと、所定のパルス圧力を発生する圧電アクチュエータと、該圧電アクチュエータで発生したパルス圧力を該容器に貯留された流動性材料に伝達するパルス圧力伝達部と、該オリフィスから噴射された流動性材料を回収する回収部とを有することを特徴とする単分散粒子製造装置。
【請求項2】
前記容器の流動性材料貯留部分と、前記パルス圧力伝達部は円対称であり、前記オリフィスプレートは円対称軸に垂直に配置され、複数個の前記オリフィスは、オリフィスプレートと円対称軸との交点を中心とする円周上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の単分散粒子製造装置。
【請求項3】
前記容器の流動性材料貯留部分と、前記パルス圧力伝達部は円対称であり、前記オリフィスプレートは円対称軸に垂直に配置され、複数個の前記オリフィスは、オリフィスプレートと円対称軸との交点から所定の距離にある平面内に配置されていることを特徴とする請求項1記載の単分散粒子製造装置。
【請求項4】
前記パルス圧力伝達部は円柱状のシリンダロッドであり、該シリンダロッドの断面の半径rに対し、円対称軸との交点から0.4×r〜1.5×rの距離にある前記オリフィスプレートの平面内に、前記オリフィスが配置されていることを特徴とする請求項3記載の単分散粒子製造装置。
【請求項5】
前記容器の流動性材料貯留部分と、前記パルス圧力伝達部は円対称であり、前記オリフィスプレートは円対称軸に垂直に配置され、複数個の前記オリフィスは、オリフィスプレートと円対称軸との交点を中心とする円平面内に配置されていることを特徴とする請求項1記載の単分散粒子製造装置。
【請求項6】
円周上に複数のオリフィスが配置されていることを特徴とする単分散粒子製造装置用オリフィスプレート。
【請求項7】
ある点から所定の距離にある平面内に複数のオリフィスが配置されていることを特徴とする単分散粒子製造装置用オリフィスプレート。
【請求項8】
円平面内に複数のオリフィスが配置されていることを特徴とする単分散粒子製造装置用オリフィスプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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