説明

単層微粒子膜と累積微粒子膜およびそれらの製造方法

【課題】粒子サイズレベルで均一な厚みを有する単層微粒子膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程を有する。基材表面に1層形成された微粒子の膜が微粒子表面に形成された第1の有機膜と基材表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合している単層微粒子膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の積層膜に関するものである。さらに詳しくは、表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与した金属や金属酸化物よりなる無機微粒子、高分子や高分子ミセルよりなる有機微粒子、あるいは有機−無機ハイブリッド微粒子の積層膜に関するものである。
【0002】
本発明において、「無機微粒子」には、導体微粒子、半導体微粒子、絶縁体微粒子、磁気微粒子、蛍光体微粒子、光吸収微粒子、光透過微粒子、顔料微粒子が含まれている。「有機微粒子」には、有機蛍光体微粒子、有機光吸収微粒子、有機光透過微粒子、有機顔料微粒子、薬物微粒子が含まれている。「有機−無機ハイブリッド微粒子」には、DDS(Drug Delivery System)用薬物微粒子、化粧用微粒子、有機−無機ハイブリッド顔料微粒子が含まれている。
【背景技術】
【0003】
従来から、両親媒性の有機分子を用い、水面上で分子を並べて基板表面に単分子膜を累積するラングミュアー・ブロジッェット(LB)法が知られている。また、界面活性剤を溶かした溶液中で化学吸着法を用いて単分子膜を累積する化学吸着(CA)法が知られている。
【0004】
しかしながら、任意の基材表面に微粒子を1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(以下、単層微粒子膜という。)や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した被膜(以下、累積微粒子膜という。)及びそれらの製造方法は未だ開発、提供されていなかった。
【特許文献1】特開2007−118276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、電気機能、磁気機能、光機能等、各種機能を持ったミクロンサイズあるいはナノサイズの微粒子は数々開発製造されている。それら微粒子が持つ本来の機能を有効に利用するには、微粒子を均一な膜厚の被膜にする必要があるが、それら微粒子を用いて粒子サイズレベルで均一厚みの被膜を製造するという思想はなかった。
【0006】
本発明は、微粒子を用い、各種微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材表面に微粒子を1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(単層微粒子膜)や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した被膜(累積微粒子膜)及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、基材表面に1層形成された微粒子膜が基材表面に形成された第1の有機膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合しており、前記共有結合が、3,4−エポキシヘキシル基(化7)とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする単層微粒子膜である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明において、基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする単層微粒子膜である。
【0009】
第三の発明は、基材表面を少なくとも第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を少なくとも第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を洗浄除去することを特徴とする単層微粒子膜の製造方法である。
【0010】
第四の発明は、第三の発明において、基材表面を少なくとも第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および微粒子を少なくとも第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする単層微粒子膜の製造方法である。
【0011】
第五の発明は、第三および四の発明において、第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を、第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を用いることを特徴とする単層微粒子膜の製造方法である。
【0012】
第六の発明は、基材表面に層状に累積され微粒子膜が微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合しており、前記共有結合が、3,4−エポキシヘキシル基(化7)とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であるいることを特徴とする累積微粒子膜である。
【0013】
第七の発明は、第六の発明において、微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された微粒子と第2の有機膜が形成された微粒子とが交互に積層されていることを特徴とする累積微粒子膜である。
【0014】
第八の発明は、第七の発明において、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とする累積微粒子膜である。
【0015】
第九の発明は、少なくとも基材表面を第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の単層微粒子膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の単層微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の単層微粒子膜を形成する工程とを含むことを特徴とする累積微粒子膜の製造方法である。
【0016】
第十の発明は、第九の発明において、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とする累積微粒子膜の製造方法である。
【0017】
第十一の発明は、第九の発明において、第2の単層微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1の単層微粒子膜を形成する工程と第2の単層微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする多層構造の累積微粒子膜の製造方法である。
【0018】
第十二の発明は、第九の発明において、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする累積微粒子膜の製造方法である。
【0019】
第十三の発明は、第九の発明において、第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を、第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を、第3の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液をそれぞれ用いることを特徴とする累積微粒子膜の製造方法である。
【0020】
第十四の発明は、第三および九発明において、3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする単層微粒子膜または累積微粒子膜の製造方法である。
【0021】
第十五の発明は、第三および九発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする単層微粒子膜または累積微粒子膜の製造方法である。
【0022】
以下、本願発明の要旨を記載する。
【0023】
本発明は、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を洗浄除去する工程とにより、基材表面に1層形成された微粒子の膜が基材表面に形成された第1の有機膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合している単層微粒子膜を提供することを要旨とする。
【0024】
このとき、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成すると単層微粒子膜の膜厚制御を容易にできて都合がよい。
【0025】
さらに、第1の反応性の有機膜にエポキシ基を含め第2の反応性の有機膜にイミノ基を含めておくか、第1の反応性の有機膜にイミノ基を含め第2の反応性の有機膜にエポキシ基を含めておくと、基材表面に共有結合した単層微粒子膜を作製する上で都合がよい。
また、第1の反応性の単分子膜にエポキシ基を含め第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含めておくか、第1の反応性の単分子膜がイミノ基を含め第2の反応性の単分子膜がエポキシ基を含めておくと基材表面に共有結合した単層微粒子膜を作製する上で都合がよい。
【0026】
さらにまた、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると製膜時間を短縮する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いるとさらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
【0027】
またここで、微粒子表面に形成された第1の有機被膜と基材表面に形成された第2の有機膜が互いに異ならせておけば、単層微粒子膜を基材表面に1層のみ結合させる上で都合がよい。
【0028】
さらに、共有結合としてエポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合を用いると、基材に対して密着強度が優れた単層微粒子膜を提供する上で都合がよい。
また、微粒子表面に形成された第1の有機被膜と基材表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていると膜厚均一性を改善する上で都合がよい。
【0029】
さらに、本発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の単層微粒子膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の単層微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の単層微粒子膜を形成する工程とにより、基材表面に層状に累積され微粒子が微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合している累積微粒子膜を提供することを要旨とする。
【0030】
このとき、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜に同じものを用いると累積微粒子膜の製造方法を単層純化する上で都合がよい。
また、第2の単層微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1の単層微粒子膜を形成する工程と第2の単層微粒子膜を形成する工程を繰り返し行えば、多層構造の累積微粒子膜を容易に製造できる。
【0031】
さらに、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成すると、累積微粒子膜の膜厚を均一化する上で都合がよい。
【0032】
さらにまた、第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1および3の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含んでいると、エポキシ基とイミノ基の反応で層間で共有結合した累積微粒子膜を製造する上で都合がよい。
【0033】
さらにまた、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると製膜時間を短縮する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いるとさらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
またここで、微粒子表面に形成された有機被膜を2種類用い、第1の有機膜が形成された微粒子と第2の有機膜が形成された微粒子とを交互に積層すると多層の累積微粒子膜を単層純なプロセスで製造する上で都合がよい。
【0034】
さらに、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していると密着強度が優れた累積微粒子膜を提供する上で都合がよい。また、共有結合として、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合を用いると、強度の点で優れた累積微粒子膜を提供する上で都合がよい。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したとおり、本発明によれば、微粒子を用い、各種微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材表面に微粒子を1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(単層微粒子膜)や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した被膜(累積微粒子膜)及びそれらの製造方法を低コストで提供できる格別の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の単層微粒子膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の単層微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の単層微粒子膜を形成する工程とにより、基材表面に層状に累積され微粒子が微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合している累積微粒子膜を提供するものである。
【0037】
したがって、本発明では、2種類の被膜で被われた2種類の微粒子を用いることにより、各種微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材表面に微粒子を1層のみの並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(単層微粒子膜)や微粒子を1層のみの並べた膜を複数層累積した被膜(累積微粒子膜)提供できたり、それらを簡便で低コストに製造できる方法を提供できる作用がある。
【0038】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
また、本発明に関する単層微粒子膜や累積微粒子膜の微粒子には、表面に親水性の酸化物あるいは水酸化物を含む導電体粒子、半導体粒子、絶縁体粒子、磁性体粒子、蛍光体粒子、光吸収粒子、光透過粒子、顔料粒子、薬用粒子、化粧品用粒子、研磨材粒子、耐摩耗材粒子等があるが、まず、代表例として光透過粒子としてシリカ微粒子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0040】
まず、大きさが100nm程度の無水のシリカ微粒子1を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)あるいは(化2)に、示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、または有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサンとジメチルホルムアミド(50:50)混合溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0041】
【化1】


【0042】
【化2】


【0043】
この吸着液に無水のシリカ微粒子1を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、無水のシリカ微粒子表面には水酸基2が多数含まれているの((a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒あるいは酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化3)あるいは(化4)に、示したような結合を形成し、微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3あるいはアミノ基を含む化学吸着膜4が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図1(b)、1(c))。
【0044】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
【0045】
その後、トリクレン等の塩素系溶媒を添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子5、あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子6をそれぞれ作製できた。
【0046】
【化3】



【0047】
【化4】



【0048】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、粒子径を損なうことはなかった。
【0049】
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成された微粒子が得られた。
【0050】
この方法の特徴は、脱アルコール反応であるため、微粒子が有機、あるいは無機物であったとしても使用可能であり、適用範囲が広い。
なお、微粒子の素材がAuの場合には、末端のSi(OCH)3を−SH、あるいはトリアジンチオール基で置換した薬剤、例えば、H2N(CH2)11−SH、あるいはH2N(CH2)−SH等を用いれば、Sを介してアミノ基を含む単分子膜が形成された金微粒子を製造できた。一方、−SHとメトキシシリル基を両末端にもつ薬剤、例えばHS(CH)3Si(OCH)3をもちいれば、Sを介して表面にメトキシシリル基を含む単分子膜が形成された金微粒子を製造できた。さらに、この金微粒子は、メトキシシリルキを表面に持つため、本実施例の単分子膜形成と同じように基材表面に直接単層金微粒子膜を形成できた。
【実施例2】
【0051】
実施例1と同様に、まず、ガラス基材11を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、前記式(化1)あるいは(化2)に、示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートあるいは酢酸を1重量%となるよう,それぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0052】
次に、この吸着液に、ガラス基材11を漬浸して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、ガラス基材11表面には水酸基12が多数含まれているの(図2(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒あるいは酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、前記式(化3)あるいは(化4)に、示したような結合を形成し、ガラス基材11表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜13(図2(b))あるいはアミノ基を含む化学吸着膜14(図2(c))が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0053】
その後、トリクレン等の塩素系溶媒を用いて洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス基材15、あるいは、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス基材16がそれぞれ作製できた。(図2(b)、2(c))
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、ガラス基材の透明性を損なうことはなかった。
【0054】
一方、塩素系溶媒を用いた洗浄を行わずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発しガラス基材表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、単分子膜に比べるとやや膜厚は厚くなるが、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成されたガラス基材が得られた。
【実施例3】
【0055】
次に、前記エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス基材15表面に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子6(前記アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス基材表面に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子の組み合わせでもよい。)をアルコールに分散させて塗布し、100℃程度に加熱すると、ガラス基材表面のエポキシ基と接触しているシリカ微粒子表面のアミノ基が下記式(化5)に示したような反応で付加して微粒子とガラス基材は二つの単分子膜を介して結合固化した。なお、このとき、超音波を当てながらアルコールを蒸発させると、被膜の膜厚均一性を向上できた。
【0056】
【化5】



【0057】
そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を洗浄除去すると、ガラス基材表面15に共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子が1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの単層微粒子膜17が形成できた。(図3(a))
一方、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス基材表面に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子の被膜を形成した場合には、ガラス基材表面に共有結合したエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子が1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの単層微粒子膜が形成できた。
ここで、シリカ微粒子の単層微粒子膜が形成されたガラス基材の光透過率を測定すると、シリカ微粒子の単層微粒子膜が形成されていないガラス基材より2%程度光透過率が良くなっていた。つまりこの被膜は、反射防止膜の機能があった。
【0058】
また、シリカ微粒子の単層微粒子膜の厚みが100nm程度であり、極めて均一性が良かったので、干渉色も全く見えなかった
【実施例4】
【0059】
さらに、微粒子膜の膜厚を厚くしたい場合、実施例3に引き続き、共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子が1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの単層微粒子膜17が形成されたガラス基材表面15に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子5をアルコールに分散させて塗布し、100℃程度に加熱すると、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子の単層微粒子膜が形成されたガラス基材表面のアミノ基と接触しているシリカ微粒子表面のエポキシ基が前記式(化5)に示したような反応で付加して、ガラス基材表面でアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われた微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子は、二つの単分子膜を介して結合固化した。
【0060】
そこで、再びクロロホルムで基材表面を洗浄し、余分で未反応のエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を洗浄除去すると、ガラス基材表面15にアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われた微粒子を介して共有結合した2層目のシリカ微粒子が1層のみ並んだ状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの2層構造の単層微粒子膜18が形成できた。(図3(b))
以下同様に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を交互に積層すると、多層構造の微粒子の被膜も累積製造できた。
【0061】
なお、上記実施例1および2では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは(化2)に,示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CH2OCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化6)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化7)で表される官能基を表す。
【0062】
【化6】


【0063】
【化7】



【0064】
なお、実施例1および2に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0065】
また、膜形成溶液の溶媒としては、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0066】
具体的に使用可能なものは、クロロシラン系非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0067】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単層独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0068】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0069】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0070】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0071】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0072】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0073】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0074】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0075】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
上記実施例1〜4では、シリカ微粒子とガラス基材を例として説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわち水酸基の水素やアミノ基あるいはイミノ基の水素などを含んだ微粒子で有れば、どのような微粒子や基材にでも適用可能である。
【0077】
具体的には、「無機微粒子」として、導体微粒子、半導体微粒子、絶縁体微粒子、磁気微粒子、蛍光体微粒子、光吸収微粒子、光透過微粒子、顔料微粒子、「有機微粒子」として、有機蛍光体微粒子、有機光吸収微粒子、有機光透過微粒子、有機顔料微粒子、薬物微粒子、「有機−無機ハイブリッド微粒子」として、DDS(Drug Delivery System)用薬物微粒子、化粧用微粒子、有機−無機ハイブリッド顔料微粒子等の積層体に、また、「基材」には樹脂板、金属板、セラミックス板等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施例における微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図2】本発明の第2の実施例におけるガラス基材表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図3】本発明の第3および第4の実施例におけるガラス基材表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は単層微粒子膜が形成された基材表面の図、(b)は、単層微粒子膜が2層形成された基材表面の図を示す。
【符号の説明】
【0079】
1 シリカ微粒子
2 水酸基
3 エポキシ基を含む単分子膜
4 アミノ基を含む単分子膜
5 エポキシ基を含む単分子膜で被われたシリカ微粒子
6 アミノ基を含む単分子膜で被われたシリカ微粒子
11 ガラス基材
12 水酸基
13 エポキシ基を含む単分子膜
14 アミノ基を含む単分子膜
15 エポキシ基を含む単分子膜で被われたガラス基材
16 アミノ基を含む単分子膜で被われたガラス基材
17 単層微粒子膜
18 2層構造の単層微粒子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に1層形成された微粒子膜が基材表面に形成された第1の有機膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合しており、前記共有結合が、3,4−エポキシヘキシル基(化7)とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする単層微粒子膜。
【請求項2】
基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項1記載の単層微粒子膜。
【請求項3】
基材表面を少なくとも第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を少なくとも第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を洗浄除去することを特徴とする単層微粒子膜の製造方法。
【請求項4】
基材表面を少なくとも第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および微粒子を少なくとも第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項3記載の単層微粒子膜の製造方法。
【請求項5】
第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を、第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を用いることを特徴とする請求項3および4のいずれか1項に記載の単層微粒子膜の製造方法。
【請求項6】
基材表面に層状に累積され微粒子膜が微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合しており、前記共有結合が、3,4−エポキシヘキシル基(化7)とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であるいることを特徴とする累積微粒子膜。
【請求項7】
微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された微粒子と第2の有機膜が形成された微粒子とが交互に積層されていることを特徴とする請求項6記載の累積微粒子膜。
【請求項8】
第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とする請求項7記載の累積微粒子膜。
【請求項9】
少なくとも基材表面を第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の単層微粒子膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の単層微粒子膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の単層微粒子膜を形成する工程とを含むことを特徴とする累積微粒子膜の製造方法。
【請求項10】
第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とする請求項9記載の累積微粒子膜の製造方法。
【請求項11】
第2の単層微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1の単層微粒子膜を形成する工程と第2の単層微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項9記載の多層構造の累積微粒子膜の製造方法。
【請求項12】
第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項9記載の累積微粒子膜の製造方法。
【請求項13】
第1の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を、
第2のイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液を、
第3の3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液の代わりに、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒としての有機酸と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液をそれぞれ用いることを特徴とする請求項9に記載の累積微粒子膜の製造方法。
【請求項14】
3,4−エポキシヘキシル基(化7)を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項3および9のいずれか1項に記載の単層微粒子膜または累積微粒子膜の製造方法。
【請求項15】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項3および9のいずれか1項に記載の単層微粒子膜または累積微粒子膜の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−290406(P2007−290406A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198341(P2007−198341)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【分割の表示】特願2005−311031(P2005−311031)の分割
【原出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】