説明

単層物体及び多層物体の界面特性を検出及び測定するシステム及び方法

第1の層と第2の層との間の境界面の特性を求めるシステムは、試料に電磁放射線を出力する送信器と、試料によって反射された電磁放射線又は試料を透過した電磁放射線を受け取る受信器と、データ収集デバイスとを含む。データ収集デバイスは、試料から反射された電磁放射線又は試料を透過した電磁放射線をデジタル化して波形データを生成するように構成され、波形データは、試料から反射された放射線又は試料を透過した放射線を表し、第1の大きさ、第2の大きさ及び第3の大きさを有する。求めるべき材料特性は、一般に、第1の層と第2の層との間の接着強度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線を用いて材料特性を測定するシステム及び方法に関する。電磁放射線は、多くの工業用の測定用途に役立つ可能性がある。試料から反射された放射線及び/又は試料を透過した放射線のデータを収集すると、いくつかの特性を判断するのに用いることができる。例えば、電磁放射線は、一般に空港及び海港の走査システムに見られるものなど、試料が爆破装置であるであるかどうかを判断するのに用いられている。
【背景技術】
【0002】
しかし、電磁放射線は、多層試料の層が互いに適切に接着している場合の判断には用いられていない。さらに、破壊試験を除けば、多層試料の層間の接着を判断するのは非常に困難である。したがって、多層試料の層間の接着の強度を判断するための、非破壊の試験及び解析のシステムに対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
試料の第1の層と第2の層との間の境界面の材料特性を求めるためのシステム及び方法が説明される。システムは、試料に対して電磁放射線を出力する送信器、試料から反射された電磁放射線又は試料を透過した電磁放射線を受け取る受信器、及びデータ収集デバイスを含む。データ収集デバイスは、試料から反射された電磁放射線又は試料を透過した電磁放射線をデジタル化して波形データを生成するように構成され、波形データは、試料から反射された放射線又は試料を透過した放射線を表し、第1の大きさ、第2の大きさ、及び第3の大きさを有する。
【0004】
第1の大きさは、第1の層の最上面の境界面に供給された電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表す。第2の大きさは、第1の層と第2の層との間の境界面に供給された電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、第3の大きさは、第2の層の最下面の境界面に供給された電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表す。データ収集デバイスは、その後、第2の大きさ及び/又は第3の大きさを解析することにより、試料の第1の層と第2の層との間の材料特性を求めるように構成される。一般に、求めるべき材料特性は、第1の層と第2の層との間の接着強度である。
【0005】
データ収集デバイスは、第2の大きさを基準の大きさと比較することにより、試料の第1の層と第2の層との間の接着強度を求めるようにさらに構成される。データ収集デバイスは、第3の大きさを基準の大きさと比較することにより、試料の第1の層と第2の層との間の接着強度を求めるようにさらに構成される。最終的に、データ収集デバイスは、第3の大きさを第2の大きさと比較することにより、試料の第1の層と第2の層との間の接着強度を求めるようにさらに構成されてもよい。
【0006】
さらに、データ収集デバイスは、波形データを解析して、時間的に第3の大きさと第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するかどうか判断することにより、試料の第1の層と第2の層との間の接着強度を求めるようにさらに構成されることができる。データ収集デバイスは、時間的に第3の大きさと第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するとき、第1の層と第2の層との間の接着強度が低下していると判断することができる。
【0007】
利用される電磁放射線に関して、電磁放射線は、25GHzから10THzまでの周波数の、連続波又は時間領域のテラヘルツ放射線のいずれかのテラヘルツ放射線でよい。しかし、他のタイプの電磁放射線も利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】反射された電磁放射線を用いて試料の2つの層の間の特性を求めるためのシステムを示す図である。
【図1B】透過した電磁放射線を用いて試料の2つの層の間の特性を求めるためのシステムを示す図である。
【図2】2層試料の波形を示す図である。
【図3】試料のすべての境界面のピークの反射振幅を示す図である。
【図4】試料の界面反射のピークの振幅を示す図である。
【図5】試料の界面反射のピーク及び裏面反射のピークの振幅を示す図である。
【図6】3層試料を示す図である。
【実施例】
【0009】
図1Aを参照すると、試料18aの第1の層14aと第2の層16aとの間の境界面12aの材料特性を求めるためのシステム10aが示されている。システム10aは、主要な構成要素として、光制御源20a、電磁放射線送信器22a、電磁放射線受信器24a、並びに光制御源20aによって出力された光信号を送信器22aと受信器24aの両方に供給する手段26a及び28aを含む。光信号を供給する手段26a及び28aは、光制御源20aによって発せられた光信号によって受信器24aが送信器22aに同期するようになっている。この実施形態では、手段26a及び28aはシングル・モード光ファイバである。しかし、手段26a及び28aは、マルチ・モード・ファイバとすることもでき、或いは光制御源20aから送信器22a及び/又は受信器24aへの光信号の光空間伝送とすることもできる。
【0010】
一般に、光制御源20aは様々な形態をとることができる。このような実施形態では、光制御源20aは、光パルスを出力するように構成されたレーザー源30aを含む。一般に、レーザー源30aは、フェムト秒の出力パルスを生成する。補償器32aが、レーザー源30aに光学的に結合される。レーザー源30aによって発せられた光パルスは、補償器32aに供給される。補償器32aは、手段26a及び28aが光ファイバの場合、光パルスが手段26a及び28aを介して移動するときの光パルスの引伸しを補正するために、光パルスに異符号分散を付加する。光パルスの、送信器22a及び受信器24aへの光空間伝送では、補償器32aは一般に不必要であり、省略することができる。補償器32a及びレーザー源30aは、光ファイバによって互いに光学的に結合されてよく、又は自由空間方式で互いに光学的に結合されてもよい。
【0011】
補償器32aによって適正な量の異符号分散が光パルスに与えられると、光パルスはスプリッタ34aに供給される。スプリッタ34aは、光パルスを分割して、第1の光ファイバ26a及び第2の光ファイバ28aに供給する。この実施形態では、第1の光ファイバ26aは、シングル・モード・ファイバであり、スプリッタ34aによって分割されたパルスが光ファイバ26aに供給される。同様に、第2の光ファイバ28aも、スプリッタ34aから分割されたパルスを受け取る光ファイバである。
【0012】
光ファイバ24aは、送信器22aに結合される。同様に、光ファイバ26aは、受信器24aに光学的に結合される。受信器22aが、光ファイバ26aからこれらの光パルスを受け取ると、受信器22aは、試料18aに対して放射線36aを出力することになる。受信器24aが光ファイバ28aから光パルスを受け取るとき、受信器24aは、送信器22aから発せられて試料18aで反射された放射線38aを受け取ることになる。このため、光ファイバ26a及び光ファイバ28aを伝わる光パルスによって受信器24aが送信器22aに同期されるというタイミングが非常に重要である。
【0013】
放射線38aが、受信器24aによって受信されると、受信器24aは、電気信号を生成する。電気信号は、データ収集システム40aによって解釈され、調整され、及び/又はデジタル化されることができる。データ収集システム40aは、受信器24aから電気信号を受け取るように、一般に受信器24aに電気的に結合される。
【0014】
この実施形態では、放射線36aは、試料18aで反射され、放射線38aとして受信器24aに送られる。しかし、本出願で開示されるシステム及び方法は、透過する放射線にも同様に適用可能であることを理解されたい。さらに、図1Bを参照すると、図1Aのシステム10aに類似のシステム10bが開示されている。同じ構成要素を示すのに同じ参照数字が用いられており、違いは、図1Aの参照数字は後に「a」が付いているのに対して、図1Bの参照数字は、代わりに、後に文字「b」が付いていることだけである。システム10bは、試料18bを通して放射線36bを送る送信器22bを示す。この放射線は、試料18bを通って透過され、放射線38bとして受信器24bに送られる。さらに、1つのシステムの中に、透過した放射線と反射された放射線の両方を組み込んで使用することができることを理解されたい。
【0015】
一般に、送信器22aから発せられる放射線36a及び送信器22bから発せられる放射線36bは、10GHzから50THzまでの周波数範囲のテラヘルツ放射線であるが、一般的には25GHzから10THzの範囲を有する。しかし、他の周波数範囲を用いることもできる。一般に、利用されるテラヘルツ放射線は、時間領域のテラヘルツ放射線になる。しかし、これと別のタイプの帯域幅の放射源が、連続波及び離散した帯域幅の放射源を含めて使用され得る。
【0016】
試料18aと18bは同一であり、したがって試料18aだけを説明するが、同じ説明が試料18bにも当てはまる。試料18aは、第1の層14a及び第2の層16aを有する。試料が、試料18aの両側にある第1の面42a(前面)及び第2の面44a(裏面)を有するのに留意することも重要である。2つの層14aと16aとの間に境界面12aがある。境界面12aは、一般に第1の層14aと第2の層16aとの間の接着領域である。
【0017】
時間領域のテラヘルツ放射線36aのパルスが試料18aと相互作用すると、時間領域又は変換された分光領域の取得されたデータから、いくつかの有益な測定値を抽出することができる。可能性のある測定値には、試料の質量、厚さ、密度、屈折率、密度及び表面変化、並びに分光学(例えば含水率、多形同定)が含まれるがこれらに限定されない。テラヘルツの時間領域では、テラヘルツ放射線パルスにおける試料18aと相互作用した後の変化は、一般に、時間領域波形として入手可能である。それは、他のパラメータ(例えばパルス信号の振幅)を求めるために記録されるか、又は解析されることができる。
【0018】
例えば、パルスが試料18aを透過するとき、テラヘルツパルスの受信器24aへの到着は、同じパルスの空気経路を通る伝送と比較して、減衰され、遅延することになる。パルス遅延の量は、試料18aの群屈折率値及び試料用ビームの中の質量の量によって決定される。パルスの減衰も、屈折率(フレネル反射の損失)及び試料18aの材料のパルスの周波数成分の減衰に左右される。試料18a内の放射線の散乱も、パルスの振幅に影響を及ぼすことになる。
【0019】
単層又は多層の試料物体からのテラヘルツの時間領域パルスの反射を用いて、さらなる測定を行なうことができる。本出願で請求されるシステム及び方法は、試料18aの境界面12aの物理的特性を測定して定量化し、その情報を、さらに広範なクラスの特性測定(例えば境界面の接着又は分離度)を追加するのに用いることにより、機能を追加する。
【0020】
電磁放射線は、異なる材料又は異なる材料特性のあらゆる境界面でいくらかのエネルギーを反射する(フレネル反射)はずである(例えば、密度変化は、誘電率の変化をもたらし、したがって屈折率の変化を招く)。したがって、試料18aの前面/裏面及び境界面からの反射を観測することができる。反射されたパルスの振幅から、材料の物理的特性を直接計算することができる。例えば、反射された入射電力の割合(一般にRで示される)又は電界振幅(一般にrで示される)は、十分に確立されたフレネルの式に従って屈折率を計算するのに用いることができる。
【0021】
【数1】

【0022】
この式から、2つの材料の屈折率値の間の差が大きければ大きいほど、入射電力の反射される割合がより大きくなることが理解され得る。上記の式が有効になるには、反射が、垂直な入射におけるものである必要がある。境界面のまわりの材料のうちの1つ(例えば空気)の屈折率が既知の場合、第1の面42aの反射率の測定値を使用して、未知の材料の屈折率を直接計算することができる。さらに、垂直な入射では、入射する電磁放射線の2つの偏光状態の反射率は等しい。垂直でない入射で測定すると、2つの偏光状態に対する反射率値が不等になることについては、後に考察する。
【0023】
試料18aなどの多層物体の境界面について、絶対値を得るためには、層14a及び16aの1つ又は両方の屈折率が、あらかじめ定められている必要がある。しかし、屈折率値の相対的な差が重要情報を提供することができる例が多くある。
【0024】
1つの実例として、同じ材料又は別の材料の2つの層14aと16aとの間の接触がある。2つの層14a及び16aが同一で、層14aと16aとの間の接触が十分に密接であれば、理論上、エネルギーは反射されないはずである。このことは、層14aと16aが密接に接触しているとき、2つの境界面に対する逆振幅のパルスが完全に干渉し、したがって相殺するものとして視覚化することができる。この場合、反射されたエネルギーは存在しない。
【0025】
しかし、2つの層14aと16aが互いに分離しているとき、又は境界面12aで反対に圧縮されているとき、層14aと16aの境界面12aにおける隙間領域の誘電率/屈折率の値が変化することになる。層14a及び16aの屈折率が変化すると、この境界面12aに関する反射率も変化することになる。この境界面12aから反射されたパルスの振幅の測定値には、反射率の変化が反映されることになる。したがって、この振幅は、境界面領域の物理的特性及び材料特性の変化を監視するのに用いることができる。
【0026】
2つの層14aと16aが、初めから別の材料であれば、層14aと16aが密接に接触している場合でも、いくらかの反射率値が存在することになる。2つの干渉する反射の振幅は同一ではなく、したがって完全には相殺されないことになる。したがって、入射するエネルギーのいくらかの残余が、境界面12aで反射される。
【0027】
また、層14aと16aが分離しているか又は境界面12aにおいて圧縮されていると、層14a及び16aの物理的特性及び境界面12a自体の物理的特性が変化する。この変化の差分は、反射されたエネルギーの振幅から観測及び測定することができる。これらの変化の差分は、境界面12aの隙間の材料の屈折率値についての情報がなくても、観測及び測定することができる。
【0028】
別の実例では、境界面12aにおける層14aと16aが互いに接着される場合を検討する。境界面12aでは、2つの層14a及び16a並びに屈折率値の差分があることになる。ゼロでない屈折率値の差分により、いくらかの反射された電力があることになる。試料18aに関してこのポイントを示す1つの実例の時間領域波形が、図2に示されている。図2は、第1の面42aに供給された放射線の、反射された部分又は透過された部分を表す第1の大きさ46と、境界面12aに供給された放射線の、反射された部分又は透過された部分を表す第2の大きさ48と、第2の面44aに供給された放射線の、反射された部分又は透過された部分を表す第3の大きさ50とを示す。
【0029】
互いに接着された層14a及び16aについては、層14aと16aが完全に分離される箇所に至るまで、接着は変化する可能性がある。層14aと16aとの間がいくらか接触している場合及び/又は層14aと16aとの間が接着されている場合については、3つの反射の大きさが生じることになる。
【0030】
層14aと16aが完全に分離している場合には、1つ又は複数のさらなる反射ピークが見られる。2つの層の実例では、試料には、第1の層14aの前面及び裏面、同様に第2の層16aの最上面及び裏面の4つの境界面があることになる。第1の層42aの裏面からの反射と第2の層44aの前面からの反射の間の時間の測定値が、層14aと16aの分離距離を測定するのに用いられる。この実例では、第4のピークは、層14aと16aが完全に分離している状況でしか出現しないので、任意選択のピークと称される。層分離を検出するには、2層の材料の物理的性質値についての情報は不要である。
【0031】
層が完全に分離されている部分を含むが名目上は接着されている2層の試料18aが、反射で測定された。試料は、円形ベルトの中に製作されたものであるため、同じ位置を繰り返し測定することが可能であった。見つかったすべての境界面ピークに関する反射振幅が、図3に示されている。
【0032】
このデータは、試料18aの3回転(繰り返された測定)を表す。4つの反射ピークが観測されており、したがって、任意選択のピークが存在する。このデータによって、多層試料18aの1つ又は複数の様々な境界面からの部分的反射電力の測定が可能であること、また、完全に分離された層を有する試料の部分を検出して位置を突き止めるために、測定された振幅を用いることができることが確認された。これらの層の間にいくらかの接着(弱い接着状態)があれば、1つ又は複数の任意選択のピークの振幅が、完全な層分離状態を示すように設定された規定レベル未満へ低下することになる。
【0033】
しかし、境界面ピークの振幅は、依然として境界面の変化を示すはずである。接触した材料の場合と同様に、層間の接着が変化するとき、境界面の物理的性質は変化することになる。
【0034】
層間の接着を低下させる可能性のある条件は、分離する(すなわち引っ張る)力又は製造プロセスの誤調整である。境界面にある材料の密度は、境界面の隙間の空間では空気又は部分真空の導入に伴って変化する(この場合低減する)可能性がある。この材料の物理的変化が、密度変化を招き、次に境界面材料の屈折率に影響を及ぼす。具体的には、屈折率値の差分が変化することになる。
【0035】
層間の接着がない又は弱い欠陥領域が意図的に導入された2層の試料を、境界面で反射された電磁エネルギーの振幅を測定するために調査した。界面反射のピークの振幅が、図4にプロットされている。
【0036】
図4を参照すると、このデータでは、欠陥領域の4つの繰返しがあった。ここで、任意選択のピーク(図4のピーク3)が基本的にゼロであることに留意されたい。したがって、層の間に少なくともいくらかの接着が存在する。さらに、境界面12a(ピーク2)及び第2の面44a(ピーク4)の反射電力の繰り返された変化で、反射は、試料の弱い接着部分に対応する。欠陥領域では、反射振幅が増加する(この場合は、よりマイナス方向になる)。このピークの振幅は、境界面の接着に相関づけることができる。
【0037】
また、試料の裏面/空気の境界面に対応するピーク4の振幅が、欠陥領域では変化する(低減する)ことに留意されたい。このことが予期されている。後続の界面反射は、上側境界面の反射率が変化する空間的位置において、大きさが反対方向に変化することになる。この場合、境界面における弱い接着により、境界面の、より大きな屈折率の差分が生じることになる。接着が弱いと、境界面12aに空気/部分真空が存在することが可能になるはずであり、境界面に、より大きな屈折率変化をもたらす。このことは、境界面12aで、入射エネルギーのより大きな割合が反射されることになる。したがって、すべての後続の境界面に対する入射エネルギーは、より小さくなるはずである。この実例では、第2の面44aから反射されるエネルギーが低減される。境界面反射率の増加に付随して、後続の境界面の反射率が低下していることは、境界面特性の変化の有力な指標である。
【0038】
界面特性を変化させて、界面反射エネルギーを低減することが可能である。例えば密度といった材料の物理的特性の変化が、2つの材料間の屈折率のより滑らかな遷移をもたらす場合、反射エネルギーが低減することになる。このことにより、次いで、後続の境界面からの反射エネルギーが低減することになる。材料間の滑らかな遷移の極限では、対象の境界面での反射率がゼロになり得る。類似のプロセスが、正確な厚さの屈折率コーティング(すなわち反射防止コーティング)のスタックに対して生じ得る。
【0039】
1つの境界面の反射特性の振幅の観測と後続の1つ又は複数の境界面の反射特性の振幅の観測とを組み合わせると、より高感度な境界面特性(例えば弱い接着)の測定を提供することができる。1つの実例の計算として、対象の境界面の反射ピーク振幅(Pk)と次の境界面の反射ピーク振幅(Pkn+1)の比がある。
係数∝APkn/APkn+1
【0040】
ここで検討する接着の実例では、この係数が2つの層14aと16aとの間の接着を示すようにしたい。上記関係の値は、接着が向上すると減少することになる。好ましい方法は、接着の向上とともに増加する係数を有することになる。したがって、2つの層14aと16aとの間の接着についての正相関を示す「接着係数」は、次式で定義される。
接着係数=1/(APkn/APkn+1)=APkn+1/APkn
【0041】
この係数は、製造中の2層の試料18aを研究するのに用いられた。連続して生産される試料の中に、意図的に欠陥が導入された。完全に分離された欠陥が、試料18aの中に直ちに生成された。次いで、段階的に制御して、公称の完全に接着された試料状態へ戻すやり方で、製造プロセスが再調整された。境界面の反射ピーク及び裏面44aの反射ピークの振幅が観測され、「Error! Reference source not found.」の状況で接着係数が計算された。
【0042】
図5では、十分に接着された試料18aの通常動作が、おおよそ185秒のタイムマークまで観測され得る。その時点で、完全に分離した層間剥離タイプの欠陥を生成するように、製造プロセスが意図的に誤調整される。次いで、製造プロセスは、プロセスを制御状態に戻すように段階的に調節される。最終的な状態は、完全な接着製品が再び製造されることである。界面反射の振幅測定から計算された接着係数によって、この挙動が明らかになる。ゼロ接着への即時ジャンプが185秒に見られ、このとき多層材料が個々の層に分離する。次いで、一連の試料特性の状態が、観測される。
【0043】
【表1】

【0044】
試料の特性状態は、試行中に講じられた処置に対応する。その処置は、完全に分離された製品の即時出現、及び製造プロセスを公称の安定稼働へ戻すため後続の段階的調節である。
【0045】
また、この測定結果は、接着の他のオフラインの物理的測定(例えば引張り強度)に比例していた。したがって、このようなパラメータをオンラインで非接触測定するように、この係数を較正することができる。ここで示された実例は、境界面の接着を検討するものであるが、推進された本発明は、このような特性測定に限定されない。境界面の物理的特性に影響を及ぼすあらゆるプロセス(例えば境界面での材料の硬化)が、同じシステム及び方法を用いて調査され得る。
【0046】
上記の議論は、試料面に対して垂直な検査を検討したものである。フレネルの式は、境界面の反射率を説明するものであり、軸外測定用の電磁放射線の様々な偏光状態に対して変化する。完全なフレネルの式は、
【数2】


及び
【数3】


であり、ここで、θ、θ及びθは、それぞれ入射光線の角度、反射光線の角度及び透過光線の角度である。
【0047】
検査の角度を変化させることにより、反射率は影響を受けることになる。広範な屈折率値と非常に大きいか又は小さい屈折率値を有する個々の材料との間で、境界面の反射電力の量を変更するのに、この機能を利用することができる。センサ又は試料の表示角度が変化している間に測定を行なうと、追加の情報/結果の確認が提供される。
【0048】
前の実例では、説明されたハードウェア及びシステムは、片側の反射測定を用いるものであった。この測定法では、反射されたパルスの時間及び振幅を正確に求めることができる。示されたように、境界面から反射された電磁エネルギーの振幅は、特定の界面特性を求めるのに用いられ得る。
【0049】
試料が、試料18aなどの多層の場合には、試料遅延の源における不確実さの可能性がある。反射では、測定された試料層の時間遅延は、1つ又は複数の層の厚さ変化又は材料/質量変化(例えば密度変化)のいずれかによるものであり得る。したがって、多層の試料では、厚さ/材料特性を、試料に関するいくらかの付加的な情報から切り離すことができないことが多い。片面反射測定は、個々の層に関するいくらかの情報を提供することができるが、やはり、他の試料特性についての情報なしでは不十分である。
【0050】
図6を参照して、試料透過を同時に測定することにより、試料46を説明するのに必要な試料特性の数を減少させることができる。この実例では、最上層48と最下層50は同一の材料である。最上層48及び最下層50の厚さが分かっていても、中心層52を通過する電磁放射線54の時間遅延は、厚さ変化又は材料密度変化によるものである可能性がある。同時の透過測定も行なわれる場合、中心層52の質量による時間遅延を、より高精度で見いだすことができる。
【0051】
この実例に関する対象は、中心層52の材料の時間遅延の差分(ΔtL2)である。試料全体の厚さと外側を覆う層48及び50の厚さとは、既知であるか、又は設定値であるものと想定される。反射測定は、ΔtL2(中心層52の伝搬時間の差分)を正確に測定することができる。しかし、前述のように、ΔtL2値の変動が、層厚さ変化によるものなのか、或いは層質量変化又は層密度変化によるものなのか、判断するのに十分な情報がない。
【0052】
透過測定を行なえば、この不適切さを改善することができる。
透過では、
ΔtTotal=ΔtSample−ΔtAir
ΔtTotal=ΔtL1+ΔtL2+ΔtL3
であり、反射では、
ΔtL1=(t−t−dL1/c)/2 dL1=層1の厚さ
ΔtL2=(t−t−dL2/c)/2 dL2=層2の厚さ
ΔtL3=(t−t3−dL3/c)/2 dL3=層3の厚さ
である。
【0053】
層48と層50が同一の厚さ(dOuter)であると想定し、次いで、ΔtTotalの透過の式に上記の反射の諸式を代入して、ΔtL2について解くと、
ΔtL2=ΔtTotal+dOuter/c−(t−t+t−t)/2
が得られる。
【0054】
反射のみの測定については、ΔtL2の解は、
ΔtL2=(t−t)/2−((dTotal−2dOuter)/c)
追加された透過測定の算定方式は、次の理由により、ΔtL2値の精度改善をもたらす。
1)透過/反射測定は、反射のみの測定における2dOuterとは対照的に、dOuterの変動にのみ敏感であり、
2)反射のみの測定は、dTotalの変動に敏感である。透過/反射の組合せ測定は敏感でない。
【0055】
ΔtL2に関する精度の改善された値(すなわち中心層52の質量のみによる遅延)が分かると、次いで層の厚さ及び密度を見いだすことができる。前述のように、dTotalの値は、試料のまわりの内部較正エタロン構造を利用するように、ハードウェアを追加し、方法を変更して見いだすことができる。全体の試料厚さが未知の場合、このハードウェア/方法が必要とされることがある。しかし、ここで説明された本発明であれば、これら追加の構成要素は不要である。両面反射測定を行なえば、内部較正エタロン構造に対する必要性が解消される。
【0056】
上記で開示された対象は、例示であって限定するものではないと考えられるべきであり、また、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内に入るこのような変更形態、付加拡張機能、及び他の実施形態をすべて対象として含むように意図されている。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物の最も広範な許される解釈により、法律によって認められる最大範囲に決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限されたり限定されたりすることがないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の第1の層と第2の層との間の境界面の材料特性を求める方法において、
前記試料に対して電磁放射線を出力するステップと、
前記試料によって反射された電磁放射線又は前記試料を透過した電磁放射線を受け取るステップと、
前記試料から反射された前記電磁放射線又は前記試料を透過した前記電磁放射線をデジタル化して波形データを生成するステップであって、前記波形データが、前記試料から反射された前記放射線又は前記試料を透過した前記放射線を表し、前記波形データが、第1の大きさ、第2の大きさ、及び第3の大きさを有し、
前記第1の大きさが、前記第1の層の最上面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第2の大きさが、前記第1の層と前記第2の層との間の前記境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第3の大きさが、前記第2の層の最下面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表す、ステップと、
前記第2の大きさ及び/又は前記第3の大きさを解析することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の材料特性を求めるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記材料特性が接着強度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の大きさを基準の大きさと比較することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の大きさを基準の大きさと比較することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の大きさを前記第2の大きさと比較することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電磁放射線がテラヘルツ放射線である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テラヘルツ放射線が、連続波のテラヘルツ放射線である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記テラヘルツ放射線が、時間領域のテラヘルツ放射線である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記テラヘルツ放射線の周波数が、25GHzから10THzの間にある、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記波形データを解析して、時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するかどうか判断することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の接着強度を求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するとき、前記第1の層と前記第2の層との間の接着強度が低下していると推断するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試料の第1の層と第2の層との間の境界面の接着強度を求める方法において、
前記試料に対して電磁放射線を出力するステップと、
前記試料によって反射された電磁放射線又は前記試料を透過した電磁放射線を受け取るステップと、
前記試料から反射された前記電磁放射線又は前記試料を透過した前記電磁放射線をデジタル化して波形データを生成するステップであって、前記波形データが、前記試料から反射された前記放射線又は前記試料を透過した前記放射線を表し、前記波形データが、第1の大きさ、第2の大きさ、及び第3の大きさを有し、
前記第1の大きさが、前記第1の層の最上面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第2の大きさが、前記2つの層の間の前記境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第3の大きさが、前記第2の層の最下面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表す、ステップと、
前記波形データを解析して、時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するかどうか判断することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるステップとを含む方法。
【請求項13】
時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するとき、前記第1の層と前記第2の層との間の接着強度が低下していると推断するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電磁放射線がテラヘルツ放射線である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記テラヘルツ放射線が、連続波のテラヘルツ放射線である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テラヘルツ放射線が、時間領域波のテラヘルツ放射線である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記テラヘルツ放射線の周波数が、25GHzから10THzの間にある、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
試料の第1の層と第2の層との間の境界面の材料特性を求めるシステムにおいて、
前記試料に対して電磁放射線を出力する送信器と、
前記試料によって反射された電磁放射線又は前記試料を透過した電磁放射線を受け取る受信器と、
前記試料から反射された前記電磁放射線又は前記試料を透過した前記電磁放射線をデジタル化して波形データを生成するように構成されたデータ収集デバイスであって、前記波形データが、前記試料から反射された前記放射線又は前記試料を透過した前記放射線を表し、前記波形データが、第1の大きさ、第2の大きさ、及び第3の大きさを有する、データ収集デバイスとを含み、
前記第1の大きさが、前記第1の層の最上面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第2の大きさが、前記第1の層と前記第2の層との間の前記境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第3の大きさが、前記第2の層の最下面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、
前記データ収集デバイスが、前記第2の大きさ及び/又は前記第3の大きさを解析することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記材料特性を求めるように構成されるシステム。
【請求項19】
前記材料特性が接着強度である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記データ収集デバイスが、前記第2の大きさを基準の大きさと比較することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるようにさらに構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記データ収集デバイスが、前記第3の大きさを基準の大きさと比較することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるようにさらに構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記データ収集デバイスが、前記第3の大きさを前記第2の大きさと比較することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるようにさらに構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
前記電磁放射線が、テラヘルツ放射線である、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記テラヘルツ放射線が、連続波のテラヘルツ放射線である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記テラヘルツ放射線が、時間領域のテラヘルツ放射線である、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記テラヘルツ放射線の周波数が、25GHzから10THzの間にある、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記データ収集デバイスが、前記波形データを解析して、時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するかどうか判断することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の接着強度を求めるようにさらに構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
前記データ収集デバイスが、時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するとき、前記第1の層と前記第2の層との間の接着強度が低下していると判断するようにさらに構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
試料の第1の層と第2の層との間の境界面の接着強度を求めるシステムにおいて、
前記試料に対して電磁放射線を出力する送信器と、
前記試料によって反射された電磁放射線又は前記試料を透過した電磁放射線を受け取る受信器と、
前記試料から反射された前記電磁放射線又は前記試料を透過した前記電磁放射線をデジタル化して波形データを生成するように構成されたデータ収集デバイスであって、前記波形データが、前記試料から反射された前記放射線又は前記試料を透過した前記放射線を表し、第1の大きさ、第2の大きさ、及び第3の大きさを有する、データ収集デバイスとを含み、
前記第1の大きさが、前記第1の層の最上面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第2の大きさが、前記2つの層の間の前記境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、前記第3の大きさが、前記第2の層の最下面の境界面に供給された前記電磁放射線の反射された部分又は透過した部分を表し、
前記データ収集デバイスが、前記波形データを解析して、時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するかどうか判断することにより、前記試料の前記第1の層と前記第2の層との間の前記接着強度を求めるように構成されるシステム。
【請求項30】
前記データ収集デバイスが、時間的に前記第3の大きさと前記第2の大きさとの間に第4の大きさが存在するとき、前記第1の層と前記第2の層との間の接着強度が低下していると判断するようにさらに構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記電磁放射線がテラヘルツ放射線である、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記テラヘルツ放射線が、連続波のテラヘルツ放射線である、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記テラヘルツ放射線が、時間領域波のテラヘルツ放射線である、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記テラヘルツ放射線の周波数が、25GHzから10THzの間にある、請求項31に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−507640(P2013−507640A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534314(P2012−534314)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/052467
【国際公開番号】WO2011/047016
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(505409166)ピコメトリクス、エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】