説明

単結晶材料の異結晶域検出方法および装置

【課題】単結晶金属材料の製造上あるいは使用中に発生する欠陥としての異結晶域を、目視不可能な領域に存在する場合も含めて、非破壊で、簡便に検出可能な方法および装置を提供する。
【解決手段】単結晶材料からなり、ある肉厚を挟む表面と裏面とを有する被検査体の該表面から超音波を入射してその裏面からの反射波を検知する工程と;該入射から該裏面反射波検出までの時間を計測する工程と;少なくとも2箇所以上で計測した該裏面反射波検出時間のずれに基づいて異結晶域の存在を検知する工程(第1の方法)、あるいは該裏面反射波検出時間と予め得ておいた被検査体の形状情報から推定される裏面反射波検出時間とのずれに基づいて異結晶域の存在を検知する工程(第2の方法)と;を含む単結晶材料の異結晶域の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶材料からなる被検査体中を伝播する超音波の伝播時間を計測することにより、非破壊的に単結晶材料中の異結晶域(すなわち、局部的に単結晶の結晶方位あるいは組織が周囲とは異なる領域)を検出する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶材料からなる製品の品質検査・保守・運用のために単結晶材料中の異結晶域を検出することが必要な場合が多くある。例えば、近年では多くの航空機ジェットエンジンや発電用のガスタービンの動翼・静翼に単結晶合金が用いられている。これらの単結晶部品ではしばしば製造段階(例えば単結晶材料の徐冷による結晶化の工程、あるいは結晶化した単結晶材料の切削等による部品製造工程等)で異結晶域が発生することがある。またあるいは、運転時の損傷(例えば異物の衝突による打痕など)に起因した再結晶現象により異結晶域が生じることがある。異結晶域は材料の強度を著しく低下させる上、補修も困難であるため、異結晶の生じている部品は廃却される。従って、これらの異結晶域を検査によって検出する必要がある。単結晶材料における異結晶域の公知の検出方法としては、部品の外表面全体をエッチングして観察するマクロエッチ法や、部品にX線を照射して回折パターンから評価するラウエ法、あるいは、当該部位を切り出して研磨・エッチング後に顕微鏡で観察する顕微鏡観察法や、同様に切り出した試料に照射された電子が後方散乱することで形成された電子後方散乱回折像によって評価するEBSP法(電子後方散乱回折像法)などがある。しかし、いずれの方法も少なからぬ手間と時間を要する。さらにマクロエッチ法は部品の目視可能な外表面にしか適用できない;ラウエ法は部品全体の検査を行うのが困難である;顕微鏡観察法とEBSP法は部品を破壊しなければ検査できない;といった欠点がある。以上のように、特に、高温機器に使用されているNi基単結晶合金などにおける、従来の異結晶域の検出方法にはそれぞれ問題があった。
【特許文献1】特開2008−58244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、単結晶材料からなる部品等の被検査体における異結晶域の存在を、非破壊で、簡便に、肉厚の内部等の目視不可能な部位におけるものも含めて、検知可能な方法および装置を提供することを、主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、単結晶材料の結晶方位に応じて、入射された超音波の伝播速度が異なることに着目した結晶方位の測定装置および測定方法を提案している(特許文献1)。本発明者らは、上述の目的で研究した結果、上記特許文献1の方法を発展させることにより、単結晶材料中の異結晶域の検出が可能であるとの知見に到達した。すなわち、本発明の単結晶材料の異結晶域検出方法は、単結晶材料からなり、ある肉厚を挟む表面と裏面とを有する被検査体の該表面から超音波を入射してその裏面からの反射波を検知する工程と;該入射から該裏面反射波検出までの時間を計測する工程と;少なくとも2箇所以上で計測した該裏面反射波検出時間のずれに基づいて異結晶域の存在を検知する工程(第1の方法)、あるいは該裏面反射波検出時間と予め得ておいた被検査体の形状情報から推定される裏面反射波検出時間とのずれに基づいて異結晶域の存在を検知する工程(第2の方法)と;を含むことを特徴とするものである。
【0005】
また、本発明の単結晶材料の異結晶域検出装置は、超音波発生・検出手段と、該超音波発生・検出手段に電気的に接続され、単結晶材料からなりある肉厚を挟む表面と裏面とを有する被検査体の該表面から超音波を入射してその裏面からの反射波が検出されるまでの時間を計測する時間計測手段と、時間計測手段に電気的に接続され該時間データを記憶する記憶手段と、該記憶手段と電気的に接続された演算手段と、該演算手段と電気的に接続された可視化手段とを含むことを特徴とするものである。
【0006】
本発明方法および装置における異結晶域の検出原理は、一般の超音波探傷法におけるような、傷のもたらす超音波反射面としての作用に基づく検出原理とは異なり、上記特許文献1の発明の基礎をなす、単結晶材料の結晶方位に応じて入射された超音波の伝播速度(音速)が異なるという現象、より一般的には物質中の音速はそのヤング率の平方根に比例するという現象に基づいて、単結晶材料に入射して裏面反射する超音波の入射から裏面反射波の検出までの時間の変化を通じて、異結晶域を検出するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
例えば、耐熱合金として知られるNi基単結晶超合金は、図1(a)に示すように面心立方格子結晶構造(すなわち、一辺aの立方格子の格子原点に加えて各格子面の中心に、Ni等の特定原子等で代表される同価点を有する結晶構造)を有し、これをその一軸方向(図1(a)の上下方向)[001]に引き上げつつ凝固させて形成した場合には、図1(b)(図1(a)の結晶格子の上部平面図) に示すように、[001]と直交する(001)面における互いに直交する2方向[100]および[010]方向、これらから各45度の中間方向の[110]、の各方向から同単結晶に入射した超音波の伝播速度間には、V[100]=V[010]<v[110](=約1.3×V[100])の関係が成立することが知られている。
【0008】
一般の超音波探傷法においては、図2に示すように、超音波入射に伴う検出ピークPi(t=0)と被検査体の裏面反射に伴う検出ピークPr(tr)に先立って、傷や他の欠損からの反射波の検出ピークPf(tf<tr)が現れることによって、傷や他の欠損を検出する。これに対し、本発明の異結晶域の検出方法では、異結晶域と正常結晶域との界面が超音波の反射面としては作用しないので、傷等に基づく反射ピークは期待できないが、検査対象の単結晶材料についての形状、超音波伝播速度の結晶方位依存性等のデータを正確に把握しておけば、被検査体の裏面反射に伴う本来の検出ピークPr(tr)から微妙にずれた裏面反射ピークにもとづいて、肉厚方向に存在する異結晶域の存在が検出可能であることの知見に基づいている。
【0009】
以下、本発明の単結晶材料の異結晶域検出方法および装置の実施の形態について、主に耐熱合金として知られるNi基単結晶超合金からなるガスタービン動翼・静翼を念頭に置き図面を参照して説明する。
【0010】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について、例えばz方向に凝固した(z軸が凝固方向で[001]になっている)単結晶を想定して、以下、説明する(主に請求項1〜8に対応)。図3(a)の様に被検査体1表面にプローブ2を接触させる。プローブ2は超音波発生・検出手段21と保持手段22とを含んでおり(図4(a))、超音波発生・検出手段21としてはセラミック製あるいは高分子製の圧電素子などが挙げられるがこれに限定されるものではなく、超音波を発生・検出できるものであればよい。保持手段22は、超音波発生・検出手段21を保持し、被検査体1表面に対して安定して接触できるように作用するものであり、樹脂、金属などいずれの材質であっても良い。プローブ2の端面は、グリセリンなどの潤滑媒体を介して被検査体1表面に接触させることが望ましい。あるいは被検査体を水中に浸漬して、水を媒体として非接触でプローブ2からの超音波を被検査体1に入射させても良い。異結晶域の検出精度を上げるために、超音波発生・検出手段21は、その複数個を規則的に配列することが望ましい。図4(b)のように超音波発生・検出手段21で、被検査体1に超音波を入射し、反射波を検出する。超音波発生・検出手段21は信号伝達手段3を介して時間計測手段4へ接続され、時間計測手段4において超音波の入射から反射波検出までの時間を計測する。計測された時間情報は、プローブ2の移動方向(y)におけるy=y1という位置情報と共に記憶手段5に記憶される。次にy方向にプローブを移動させy=y2として同様に超音波の入射から反射波検出までの時間を計測し、記憶手段5に記憶させる。記憶された情報は演算手段6にて演算され、その出力は、各種ディスプレイ等の可視化手段7にて、例えば図3(b)に示すようなグラフとして表示される。この際、y=y2の位置に異結晶域CAが存在したとすると、図3(a)の例のように非検査体の形状がyによらず一定であっても超音波の入射から反射波検出までの時間に違い(図3(b)の○と×のずれ)が生じる。この違いによって異結晶域の存在を検知できる。前述したように一般に、物質中の音速はそのヤング率の平方根に比例する。従って、単結晶からなる部品中に一部でも異結晶域が存在するとその部分では音速が変化する。本手法はこの原理を用いて異結晶を検知するものである。当然yは上記の2点だけでなく、非検査体1の必要検査領域全体に渡ってデータ採取を行う。
【0011】
好ましくは、演算手段6には被検査部品の肉厚分布(プロファイル)等の形状情報などを格納した部品(被検査体)データベース8を接続して、必要に応じて演算手段6によってその情報を読み出すことが出来るように構成される。入射から反射波検出までの時間のグラフ上に部品形状の情報から得られる肉厚プロファイルを描画させて、実測のプロット比較することで異結晶域を検知することも出来る。なお、部品を構成する単結晶材料(の主たる結晶方位)ごと、あるいは材質ごとに入射から反射波検出までの時間の絶対値は変化するが、本例においては、例えばあるyの値におけるプロファイル(複数のプロットの相対的な位置関係)は変わらない。従って、部品データベース8から読み出されるプロファイルは形状情報から得られる肉厚のプロファイルで良く、表示上で自由に上下可能とし、実測プロットと重ね合わせて比較評価できることが望ましい。
【0012】
ここで、記憶手段5、部品データベース8は、例えば、ハードディスク装置、メモリなどのデータ記憶装置で構成され、外部出力インターフェイス、外部入力インターフェイスなどを介して、時間計測手段4や演算手段6と情報の交信が可能に接続されている。演算手段6は、例えば、コンピュータなどで構成され、ハードディスク装置などに格納された各プログラムをCPUなどの演算部で作動させ、演算を行う。演算の具体例として、(イ)データベース8に入っている設計肉厚データと音速データから理想的な時間tを演算すること、(ロ)y=y1のデータとy=y2のデータの「差」を演算すること、(ハ)計測され時間データと上記(イ)で演算された時間データの「差」を演算すること、などが挙げられる。また、上記した各手段は、データ入力部として、例えば、情報を入力するためのキーボードやマウスなどを備えてもよい。また、可視化手段は例えば液晶ディスプレーなどで構成されている。あるいはプリンターのような紙媒体への可視化手段でもよい。
【0013】
ちなみに、プローブ2にて時間データを採取する際に、必要とされるプロット間隔に対してx方向の位置x1、x2 …に、配列したプローブ内の超音波発生・検出手段21のx方向配列間隔(x2−x1)が広い場合には、一定のyにおいて、超音波発生・検出手段21の間隔以内の範囲で、超音波発生・検出手段21をx方向に微小移動(Δx<x2−x1)することにより、本来のx=x1,x=x2 …の位置に加えて,x=x1+Δx,x=x2+Δx …など追加の位置で時間データを採取し、それらを記憶手段5へ併せて記憶させて演算手段6で密度の高いプロットデータとして統合しても良い。
【0014】
<第2の実施形態>
次に第2の実施形態について説明する。すなわち、第1の実施形態と異なり、被検査体1の超音波入射面11が曲面であるか、あるいは凹凸を有する場合の例を示す。
【0015】
この形態では、図5のとおりプローブ2は、超音波発生・検出手段21、それを支持する管23およびその管23を保持する保持手段22と、信号伝達手段3に取付けられたストッパー24から成っている。さらに、管23の内部には弾性部材25が封入され、超音波発生・検出手段21と力学的に接続されている。保持手段22は隣接する管23同士を力学的に接続する役割を有しており、樹脂、金属等からなる。また管23中の弾性部材25は、ゴム、金属バネなどからなっており、これにより、プローブ2(の超音波発生・検出手段21)が、被検査体1の形状に追随することが可能となっている。管23は、金属・樹脂いずれの素材でも良いが、内面(超音波発生・検出手段との接触面)はテフロンなどの低摩擦素材を配していることが望ましい。管23、ストッパー24および弾性部材25は、プローブ2中において、超音波発生・検出手段21の補助的な保持手段として機能する。
【0016】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図6を参照して説明する。この実施形態は、第2の実施形態と同様に、被検査体1の超音波入射面が曲面であるか、あるいは凹凸を有する場合に好適である。被検査体1を水30などの媒体中へ浸漬して検査する場合の例を示すと、図6に示すように、水中でのプローブ2の超音波発生・検出手段21と、被検査体の超音波入射面11との距離を一定に保つための距離維持手段26を有したプローブ2を用いることで、上記水中距離を一定に保つことが可能となる。
【0017】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、結晶方位による音速の変化を考慮して評価値の変動を補完する手法に関する。図7(a)に示すような[001]方向に1方向凝固法により形成された一定肉厚の中空円筒上の被検査体1と円筒座標系を例にとると、図7(b)のようにθ方向へプローブを配してz方向へスキャンしていく方法と、(c)のようにz方向へプローブを配してθ方向へスキャンしていく方法の2種類が、いずれも好適に用いられる。
【0018】
ここで、前者の場合は得られる時間データのグラフは図7(b)の右側に示すようになる。すなわち、部品データベースに格納されている被検査体の形状情報のみから得られる肉厚プロファイルと大きく異なる結果が得られる。これは単結晶材料部品の異方性によるものであり[001]方向軸を包囲する円筒材料の周りをθスキャンすることは、図1(a)および(b)に示したように、同単結晶材料の[100]→[110]→[010]…と、順に、異なる結晶方位方向に超音波を入射させることに相当し、結晶方位の差に基づき、超音波伝播速度の遅い[100]および[010]方向では裏面反射時間が長くなり、伝播速度の速い[110]方向では裏面反射時間が短くなる。このような場合、それぞれのθにおける隣接するz同士(z=z1とz=z2)のデータの差を演算して、表示することで、異常の有無を検知し易くすることが出来る。その際は部品データベースを参照して表示するプロファイルも同様に隣接するz同士の差に相当したプロファイルを表示させる。(なお、図7(b)に設計上の肉厚プロファイルとして示す水平な直線は、結晶方位を考慮せずに設計上の形状のみでプロファイルを表すと、単結晶材料では、音速の結果のプロファイルと全く一致しないことを示すために表示してある。
【0019】
図7(b)の例とは異なり、図7(c)に示すようにプローブの1列のデータ採取で異方性が出にくい方向を選んでもよい。この場合θによって絶対値は変動するがプロファイルは部品データベースによるそれ(この例では、均等肉厚に基づく一定反射時間データ)と一致する。
【0020】
図7(b)および(c)のいずれの場合にも、さらには、部品データベース8および演算手段6に部品の結晶方位の情報(部品の結晶方位および結晶方位と音速の関係)を与えておくことで、実測された2種以上のデータの比較でなく、結晶方位を考慮した入射から反射波検出までの時間の理論プロファイル(例えば図7(b)のz=z2に相当する理論プロファイル(この例ではz=z1の実測プロファイルに近似したものとなる)または図7(c)のθ=θ2のプロファイルに相当する理論プロファイル(この例ではθ=θ1の実測プロファイルに、θ=θ1とθ=θ2の結晶方位差に伴う音速差に基づく時間差を加味した反射時間データとなる))を演算して表示し、実測されたデータ(例えば図7(b)のz=z2のプロファイルまたは図7(c)のθ=θ2)と比較できるようにしても良い。このような、理論プロファイルの計算は、部品(被検査体)が欠陥のない単結晶材料であると仮定して、肉厚ごとに異なる反射検出時間を計算し、結晶方位による超音波伝播速度(音速)の変化を考慮して修正することにより行われる。結晶方位による超音波伝播速度(音速)の変化に関しては、例えば面心立方格子構造を有する代表的なNi基超合金の代表的な結晶方位における音速データ(例えば、V[100]、V[210]、V[110]、V[111]など)、およびそれ以外の中間方位における音速データは、部品データベース8中に格納される。代表的な方位における音速データのみデータベース8中に格納しておいて、中間方位での音速データは、内挿により導くこととしてもよい。
【0021】
上記した、理論プロファイルと、実測反射時間プロファイルとの比較による異結晶域の検出態様は、図7のように肉厚が一定の直円筒状部品のような単純なプロファイルでなく、より複雑な形状のプロファイルにおける異結晶域の検出精度を向上するために好ましい。例えば、2位置での実測データ間の比較では、両者間での理論プロファイルが一致することが前提で、いずれか一方が正しいと仮定しないと、異結晶域が検出できないのに対し、理論プロファイルであれば、測定データ間の比較によらずとも、個々の位置での理論データプロファイルと実測データの比較により異結晶域の検出が可能になるからである。これは、傷に基づく反射波の検出のように明瞭な検出が可能な超音波探傷法とは異なり、微妙な裏面反射波の時間ずれに基づく本発明法による異結晶域の検出精度を向上する上で重要な利点となる。
【0022】
<第5の実施形態>
上記の実施の形態においては一列に配列された超音波発生・検出手段21を例に説明してきたが、1つの超音波発生・検出手段を用いて、その位置をシフトしながら繰り返し超音波の入射および反射波の検出を行うことにより、本発明法による異結晶域の検出法を実施することも可能である。この場合、狭い領域を検査できるし、装置が簡便・安価で済むという利点がある。具体的には、例えば図8(a)のようにプローブをスキャンすることで前記と同様の検査が可能となる(図において保持手段等は省略されている)。逆に、一列でなく複数列の超音波発生・検出手段を配した構造であってもよい(図8(b))。この場合は一度に広い領域を迅速に検査できる利点がある。
【0023】
なお、上記の実施の形態は面心立方構造の単結晶超合金からなるガスタービンの動翼・静翼を念頭に置いた例で説明してきたが、それ以外にも本発明の範囲内に様々な形態が可能であることは当業者にとって容易に理解されるであろう。
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、単結晶金属材料の製造上あるいは使用中に発生する欠陥としての異結晶域を、目視不可能な領域に存在する場合も含めて、非破壊で、簡便に検出可能な方法および装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は一軸[001]方向凝固法による単結晶材料の面心立方格子構造の模式斜視図、(b)は同格子構造の上部平面図。
【図2】一般の超音波探傷法における反射波の検出パターンのグラフ。
【図3】(a)本発明に係る検出装置の構成図、(b)本発明に係る検査結果の表示の一例。
【図4】(a)および(b)は本発明に係る超音波プローブの構造を示す模式図。
【図5】(a)〜(c)は本発明に係る超音波プローブの構造を示す模式図。
【図6】本発明に係る超音波プローブの構造を示す模式図。
【図7】(a)〜(c)は本発明に係る、材料異方性を考慮した検査方法を示す模式図。
【図8】(a)および(b)は本発明に係る超音波プローブの構造とスキャン方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0026】
1:被検査体 (11:超音波入射面、12:超音波反射面、CA:異結晶域)
2:プローブ
21:超音波発生・検出手段
22:保持手段
23:管
24:ストッパー
25:弾性部材
26:距離維持手段
3:信号伝達手段
4:時間計測手段
5:記憶手段
6:演算手段
7:可視化手段
8:部品(被検査体)データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶材料からなり、ある肉厚を挟む表面と裏面とを有する被検査体の該表面から超音波を入射してその裏面からの反射波を検知する工程と、該入射から該裏面反射波検出までの時間を計測する工程と、少なくとも2箇所以上で計測した該裏面反射波検出時間のずれに基づいて異結晶域の存在を検知する工程とを含むことを特徴とする、単結晶材料の異結晶域検出方法。
【請求項2】
単結晶材料からなり、ある肉厚を挟む表面と裏面とを有する被検査体の該表面から超音波を入射してその裏面からの反射波を検知する工程と、該入射から該裏面反射波検出までの時間を計測する工程と、該裏面反射波検出時間と予め得ておいた被検査体の形状情報から推定される裏面反射波検出時間とのずれに基づいて異結晶域の存在を検知する工程とを含むことを特徴とする、単結晶材料の異結晶域検出方法。
【請求項3】
予め得ておいた被検査体の形状情報から裏面反射波検出時間を推定する際に、被検査体の結晶方位の情報を参照して演算することを特徴とする、請求項2に記載の単結晶材料の異結晶域検出方法。
【請求項4】
超音波発生・検出手段と、該超音波発生・検出手段に電気的に接続され、単結晶材料からなりある肉厚を挟む表面と裏面とを有する被検査体の該表面から超音波を入射してその裏面からの反射波が検出されるまでの時間を計測する時間計測手段と、時間計測手段に電気的に接続され該時間データを記憶する記憶手段と、該記憶手段と電気的に接続された演算手段と、該演算手段と電気的に接続された可視化手段とを含むことを特徴とする、単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項5】
少なくとも2つの超音波発生・検出手段を含むことを特徴とする、請求項4に記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項6】
前記演算手段に電気的に接続された、被検査体の形状情報が格納された部品データベースを含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項7】
前記部品データベースに被検査体の形状情報とともに結晶方位に関する情報が格納されていることを特徴とする、請求項6に記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項8】
前記超音波発生・検出手段を保持する保持手段を含むことを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項9】
前記保持手段が変形可能な素材を含み、超音波発生・検出手段の方向を変化させうる構造であることを特徴とした請求項8に記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項10】
超音波発生・検出手段を支持する管と、該超音波発生・検出手段と該管とを力学的に接合する弾性部材とを含み、該超音波発生・検出手段と該管との相対的な位置関係が可変であることを特徴とする、請求項9に記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。
【請求項11】
前記超音波発生・検出手段と被検査体との距離を一定に保ち得る距離維持手段を含むことを特徴とする、請求項8に記載の単結晶材料の異結晶域検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−300371(P2009−300371A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157942(P2008−157942)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】