説明

印刷インキ組成物

【課題】オフセット枚葉印刷において、ワックスの種類、添加量を選定することで紙面上に印刷されたインキの耐摩擦性を維持しつつ、インキのオフセット印刷機圧胴への取られを少なくすることが出来るオフセット枚葉印刷インキ組成物の提供。
【解決手段】ワックス、バインダー樹脂、植物油類、石油系溶剤および顔料を含有してなるオフセット枚葉印刷インキ組成物において、ワックスが、平均粒子径3.5〜4.5μm、融点290〜340℃および真球度0.2〜0.7であるポリテトラフルオロエチレンワックス、ならびに平均粒子径1.0〜4.0μm、融点100〜200℃および真球度0.9〜1.0であるポリエチレンワックスであることを特徴とするオフセット枚葉印刷インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット枚葉印刷に関するもので、紙面上に印刷されたインキの耐摩擦性を維持しながら、インキのオフセット印刷機圧胴取られを少なくすることが出来るオフセット枚葉印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット枚葉印刷機では一旦紙面に転写されたインキが、セット及び紙面上で乾燥した状態で紙を裏返し、裏面にも印刷を行うことがある。(セットとは、インキ中の溶剤が紙に浸透し触れてもベタ付かなくなった状態、紙面上の乾燥とはセット後にインキ中植物油が酸化重合しインキが固まった状態のことである)。この裏面への印刷を行う場合、おもて面はブランケット胴と圧胴間で加圧された状態で圧胴に接触する為、圧胴にインキが付着する。この現象を圧胴取られと称する。
【0003】
一般に紙面上に印刷されたインキに耐摩擦性を付与させるために、ワックスとしてポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、みつろうなどを用いている。(特開2003−221536、特開2007−254629)これはインキ中に分散したワックスが、印刷後のインキ表面で突出することで接触面積を少なくし、またはワックス自体が薄く広がることでインキ表面を保護するからである。
【0004】
従来からのオフセット枚葉印刷インキ組成物では、紙面上に印刷されたインキに耐摩擦性を持たせる為にワックスを添加していたが、一方で従来使用していたワックスを多く含有するインキでは前述した圧胴取られが起き易く、裏面印刷時におもて面の印刷絵柄がとられたり、圧胴の洗浄を頻繁に行わなくてはならないので作業効率が著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−221536号公報
【特許文献2】特開2007−254629号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】角田隆弘 等編 「基本印刷技術」産業図書株式会社 昭和56年 3月5日第4刷
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はオフセット枚葉印刷において、前述したような課題を解決するものであり、耐摩擦性という印刷物の品質を維持したまま、圧胴取られを少なくすることが出来るものである。また、課題解決は本発明を用いることで可能となるものであり、その効果は印刷に用いる用紙や印刷機基材によらない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の従来の問題点を解決するため、鋭意検討した結果、ワックス、バインダー樹脂、植物油類、石油系溶剤および顔料を含有してなるオフセット枚葉印刷インキ組成物において、特定のワックスを含有したオフセット枚葉印刷インキ組成物により印刷された印刷物が、耐摩擦性に優れ、しかも、印刷時に圧胴取られが少なくすることが出来るという優れた性質を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ワックス、バインダー樹脂、植物油類、石油系溶剤および顔料を含有してなるオフセット枚葉印刷インキ組成物において、
ワックスが、平均粒子径3.5〜4.5μm、
融点290〜340℃
および
真球度0.2〜0.7
であるポリテトラフルオロエチレンワックス
ならびに
平均粒子径1.0〜4.0μm、
融点100〜200℃
および
真球度0.9〜1.0
であるポリエチレンワックス
であることを特徴とするオフセット枚葉印刷インキ組成物に関するものである。
【0010】
さらに、本発明は、さらに、下記ポリエチレンワックスA、ポリエチレンワックスBおよびポリエチレンワックスCから選ばれる一種類以上のワックスがオフセット枚葉印刷インキ組成物に含有されてなることを特徴とする上記のオフセット枚葉印刷インキ組成物に関するものである。
ポリエチレンワックスAが、
平均粒子径0.5〜1.0μm、
融点60〜140℃
および
真球度0.6〜0.8
であるものである。
ポリエチレンワックスBが、
平均粒子径1.5〜2.0μm、
融点80〜140℃
および
真球度0.6〜0.8
であるものである。
ポリエチレンワックスCが、
平均粒子径4.0〜7.0μm、
融点60〜140℃
および
真球度0.2〜0.7
であるものである。
【0011】
また、本発明は、植物油類が、大豆油または大豆油エステルであることを特徴とする上記のオフセット枚葉印刷インキ組成物に関するものである。
【0012】
さらに、本発明は、石油系溶剤が、アニリン点70〜110℃および沸点230〜350℃であることを特徴とする上記のオフセット枚葉印刷インキ組成物に関するものである。
【0013】
また、本発明は、上記のオフセット枚葉印刷インキ組成物を基材に印刷してなることを特徴とする印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
オフセット枚葉印刷において、紙面上に印刷されたインキに耐摩擦性を持たせる手段としてワックスを添加する方法があるが、このワックスを添加することによりインキがオフセット枚葉印刷機圧胴に取られ易くなってしまう。しかし、本発明である特定のワックスおよびその添加量を選定することで、紙面上に印刷されたインキの耐摩擦性を維持しつつ、印刷時に、インキのオフセット印刷機圧胴への取られを少なくすることが出来る。圧胴取られを少なくすることで印刷適性が向上され、また圧胴の洗浄を頻繁に行う必要がなくなるので作業効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施に当たり、詳細に説明を行う。
【0016】
本発明におけるオフセット枚葉印刷とは、画線部と非画線部を同一版面上に形成した版面にロールで水とインキを供給し、両者の反発作用で画線部のみに着肉したインキを一度ブランケットと呼ばれるゴムシート面に移し、そのブランケットに接触するように用紙を通し印刷面裏側から加圧して印刷する印刷方法である。また、裏面から加圧するのに用いるロールを圧胴と言う。
【0017】
本発明における耐摩擦性とは、紙面上インキの紙面同士及び対物との擦れに対する強度のことである。一般的に耐摩擦性が良好なインキを用いて印刷した印刷物は擦れに強く、擦れによる傷が付きにくい。
【0018】
一般的にオフセット枚葉印刷において、紙面上に印刷されたインキに耐摩擦性を持たせる手段としてインキにワックスを添加する方法がある。分散したワックスが、印刷後のインキ表面で突出することで接触面積を少なくし、またはワックス自体が薄く広がることでインキ表面を保護するからである。しかしながら、耐摩耗性を持たせるために、単純にワックスを添加するだけでは、圧胴取られが生じる場合が多い。一方、本発明のオフセット枚葉印刷インキにおいては、下記の特定のワックスを添加すると耐摩擦性にも優れ、圧胴取られが少ない。
【0019】
すなわち、本発明においては、下記のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックスおよびポリエチレンワックスを使用する。
【0020】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックスとは、低分子量四フッ化エチレンで作られた耐摩擦性に優れたPTFEワックスである。
【0021】
すなわち、平均粒子径が3.5〜4.5μm(平均粒子径は、(株)堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920型を用い、ワックスをSB−81と称する分散媒にて希釈後、透過率(L)(H)を90−95%になるよう調整し、ペーストセル法にて測定した。他のワックスに関しても同様である。)、融点が290〜340℃(融点はセイコーインスツルメンツ(株)製 示差走査熱量計 DSC6200を用い、10℃/minの昇温レートで加熱、5℃/minの降温レートで冷却という操作を2回繰り返し測定した。他のワックスに関しても同様である。)、真球度が0.2〜0.7のPTFEワックスである。
【0022】
PTFEワックスの添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して0.15〜1.20重量%が好ましく、更に好ましくは0.30〜0.90重量%である。0.15重量%未満の添加量では、充分な耐摩擦性を確保出来ず、1.20重量%を超過する添加量では、過剰なワックスが圧胴に取られてしまう。
【0023】
また、本発明において使用するポリエチレンワックスは、真球状ポリエチレンワックス、ポリエチレンワックスA、ポリエチレンワックスBおよびポリエチレンワックスCを適宜使用する。
【0024】
本発明におけるポリエチレンワックスAは、一酸化炭素ガスと水素ガスを原料として製造したポリエチレンを溶融し、所定の粒子径に調整した微細なポリエチレンワックスである。また平均粒子径が0.5〜1.0μm、融点が60〜140℃、真球度が0.6〜0.8のポリエチレンワックスである。ポリエチレンワックスAの添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して0.03〜2.70重量%が好ましく、更に好ましくは0.30〜1.50重量%である。0.03重量%未満の添加量では、充分な耐摩擦性を確保出来ず、2.70重量%を超過する添加量では、過剰なワックスが圧胴に取られてしまう。
【0025】
本発明におけるポリエチレンワックスBは、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解によって製造したポリエチレンを溶融し、所定の粒子径に調整した微細なポリエチレンワックスである。また平均粒子径が1.5〜2.0μm、融点が80〜140℃、真球度が0.6〜0.8のポリエチレンワックスである。ポリエチレンワックスBの添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して0.03〜2.25重量%が好ましく、更に好ましくは0.25〜1.25重量%である。0.03重量%未満の添加量では、充分な耐摩擦性を確保出来ず、2.25重量%を超過する添加量では、過剰なワックスが圧胴に取られてしまう。
【0026】
本発明におけるポリエチレンワックスCは、一酸化炭素ガス、水素ガスを原料として製造したポリエチレンを粉砕し所定の粒子径に調整したポリエチレンワックスA、B比で粗大且つ真球度が低い耐摩擦性に優れたポリエチレンワックスである。また平均粒子径4.0〜7.0μm、融点が60〜140℃、真球度が0.2〜0.7のポリエチレンワックスである。ポリエチレンワックスCの添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して0.04〜1.05重量%が好ましく、更に好ましくは0.18〜0.88重量%である。0.04重量%未満の添加量では、充分な耐摩擦性を確保出来ず、1.05重量%を超過する添加量では、過剰なワックスが圧胴に取られてしまう。
【0027】
本発明における真球状ポリエチレンワックスとは、ポリオレフィンを水中で微粒子状に分散させ所定の粒子径に調整した真球状のポリエチレンワックスである。また平均粒子径1.0〜4.0μm、融点が100〜200℃、真球度が0.9〜1.0の耐摩擦性に優れた真球状ポリエチレンワックスである。真球状ポリエチレンワックスの添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して0.08〜0.64重量%が好ましく、更に好ましくは0.16〜0.48重量%である。0.08重量%未満の添加量では、充分な耐摩擦性を確保出来ず、0.64重量%を超過する添加量では、過剰なワックスが圧胴に取られてしまう。
【0028】
本発明においての真球度を一般式(1)にて定義する。なお、ワックスの粒子径はSEMを用いて各種ワックスにつき1000個ずつ評価した。
一般式(1)
【数1】

【0029】
本発明において、PTFEワックス、真球状ポリエチレンワックスおよびポリエチレンワックスCの添加量の総和は印刷インキ組成物の全量に対して1.80重量%以内とし、前述した3種ワックス、ポリエチレンワックスAおよびポリエチレンワックスBの添加量の総和は印刷インキ組成物の全量に対して3.00重量%以内とする。
【0030】
また、オフセット枚葉印刷機用インキ組成物に上記ワックス類を含有させるに際しては製品としてのオフセット枚葉印刷機用インキ組成物に所定量添加してもよく、製造時にミキサーにて添加してもよい。
【0031】
本発明のオフセット枚葉印刷インキ組成物の一例としては、
・顔料 5.00 〜 25.00 重量%
・バインダー樹脂 15.00 〜 50.00 重量%
・植物油類 30.00 〜 50.00 重量%
・石油系溶剤 10.00 〜 15.00 重量%
・乾燥促進剤 0.00 〜 3.00 重量%
・PTFEワックス 0.15 〜 1.20 重量%
・ポリエチレンワックスA 0.00 〜 2.70 重量%
・ポリエチレンワックスB 0.00 〜 2.25 重量%
・ポリエチレンワックスC 0.00 〜 1.05 重量%
・真球状ポリエチレンワックス 0.08 〜 0.64 重量%
・その他の添加剤 0.00 〜 10.00 重量%
が挙げられる。インキの種類としては、オフセット枚葉印刷インキ組成物が主なものであるが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明において使用される顔料としては、一般的な無機顔料及び有機顔料を示すことが出来る。無機顔料としては黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉、などを示すことができる。有機顔料としては、アゾ系として、C系(βナフトール系)、2B系及び6B系(βオキシナフトエ系)などの溶性アゾ顔料、βナフトール系、βオキシナフトエ酸アニリド系、モノアゾイエロー系、ジスアゾイエロー系、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、アセト酢酸アリリド系などの縮合アゾ顔料、フタロシアニン系として、銅フタロシアニン(αブルー、βブルー、γブルー)、塩素、臭素などのハロゲン化銅フタロシアニン、金属フリーのフタロシアニン顔料、多環顔料としてペリレン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系顔料を挙げることができる。顔料の添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して5.00〜25.00重量%である。
【0033】
本発明で使用されるバインダー樹脂とはロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂及び石油樹脂を示し、それらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。またバインダー樹脂は新日本石油(株)製AFソルベント6の10%希釈状態において白濁温度が40〜140℃が好ましい。(白濁温度はNOVOCONTROL社製、CHEMOTRONICにて測定した。)40℃未満だとワニスにした状態で充分なゲル弾性が得られず、140℃を超えると溶剤との親和性が悪くなる。
【0034】
本発明で使用されるバインダー樹脂は、植物油類及び/または石油系溶剤とアルミニウムキレート化合物のようなゲル化剤を添加して、190℃以上で溶解してワニス化したものを使用することができる。バインダー樹脂の添加量は印刷インキ組成物の全量に対して15.00〜50.00重量%である。
【0035】
本発明における植物油類とは植物油及び植物油由来の化合物であり、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセリドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリドと、それらのトリグリセリドから飽和または不飽和アルコールとをエステル反応させてなる脂肪酸モノエステル、あるいは植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類が挙げられる。
【0036】
植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。
【0037】
本発明で使用される石油系溶剤は芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下の原油由来の溶剤(石油系溶剤)である。この石油系溶剤はアニリン点が70〜110℃、沸点が230℃以上の石油系溶剤が適当である。アニリン点が70℃未満の場合には樹脂を溶解させる能力が高すぎる為インキ組成物の粘度が低くなりすぎ地汚れ耐性が充分でなくなる。またアニリン点が110℃を超える場合には樹脂の溶解性が乏しい為、インキ組成物の流動性が劣り、その結果光沢、着肉性が悪い印刷物しか得ることができず好ましくない。沸点が230℃未満の場合には印刷機上でのインキ中溶剤の放出量が多くなり、インキ組成物の流動性の劣化により、ローラー、版、ブランケットへのインキ組成物の堆積が起こり易くなる為、好ましくない。
【0038】
本発明で使用される乾燥促進剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、セカノイック酸、トール油脂肪酸、アマニユ脂肪酸、大豆油脂肪酸、ジメチルヘキサノイック酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイック酸、ジメチルオクタノイック酸などの有機カルボン酸の金属塩、たとえばカルシウム、コバルト、鉛、鉄、マンガン、亜鉛、ジルコニウム、塩などの公知公用の化合物が使用可能であり、印刷インキ表面および内部硬化を促進するために、これらの複数を適宜併用して使用することもできる。
【実施例】
【0039】
以下、具体例を示して本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施例により、何ら制限されるものではない。なお、本発明中「部」とは「重量部」を示し、特に断らない限り、「%」とは「重量%」を示す。
[実施例1〜5]
【0040】
顔料18重量%、バインダー樹脂29重量%、植物油類32重量%、石油系溶剤10重量%、乾燥促進剤3重量%、その他の添加剤4重量%を攪拌、3本ロールで練肉しインキ組成物を作製した。このインキ組成物に対し、表1の配合にてワックスを混合し、さらにインキ組成物の総重量%が100重量%となるように、バインダー樹脂、植物油類および石油系溶剤を増量し、3本ロールで再度練肉して実施例1〜5とした。
【0041】
【表1】


[比較例1〜5]
【0042】
顔料18重量%、バインダー樹脂29重量%、植物油類32重量%、石油系溶剤10重量%、乾燥促進剤3重量%、その他の添加剤4重量%を攪拌、3本ロールで練肉しインキ組成物を作製した。このインキ組成物に対し、表2の配合にてワックスを混合し、さらにインキ組成物の総重量%が100重量%となるように、バインダー樹脂、植物油類および石油系溶剤を増量し、3本ロールで再度練肉して比較例1〜5とした。
【0043】
【表2】

【0044】
<圧胴取られ評価>
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られたインキ組成物を用いてオフセット枚葉印刷機で、おもて面を以下の条件で印刷した。紙面上のインキ組成物を完全に乾燥させる為に一晩以上放置し裏返して同機に通した。この時に1胴目圧胴へのインキ組成物付着を目視にて評価した。なお、評価結果を表7に示す。インキ組成物付着が少ないものを○、付着がひどく目立つものを×、中間のものを△とした。△、×は実用域ではなく、不十分である。
・ 用紙 :パールコートN
・ 印刷速度 :15000sph
・ 印刷枚数 :2000枚
・ 印刷濃度 :黄 1.40、紅 1.50、藍 1.60、墨 1.80
(濃度は印刷機付属の濃度測定機にて測定した。)
【0045】
<耐摩擦性評価>
実施例及び比較例で得られたインキ組成物を用いて枚葉印刷機で、おもて面を以下の条件で印刷した。紙面上のインキ組成物を完全に乾燥させる為に一晩以上放置し、学振型耐摩擦性試験機で評価した。なお、評価結果を表3に示す。傷付きが少ないものを○、傷付きが酷いものを×、中間のものを△とした。△、×は実用域ではなく、不十分である。
・ 用紙 :パールコートN
・ 印刷速度 :15000sph
・ 印刷濃度 :黄 1.40、紅 1.50、藍 1.60、墨 1.80
(濃度は印刷機付属の濃度測定機にて測定した。)
・ 耐摩擦試験機 :テスター産業株式会社製 学振型摩擦堅牢度試験機
重り 200g、 往復回数 10回
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示すように、PTFEワックス0.15〜1.20重量%、真球状ポリエチレンワックス0.08〜0.64重量%を含有しているインキ組成物(実施例1〜5)では、圧胴取られ評価において良好な結果であり且つ耐摩擦性評価も良好であった。これに対し比較例1〜5では圧胴取られ評価または耐摩擦性評価において充分な結果になっておらず、2つの性能を兼備するものは得られなかった。
【0048】
さらに印刷機(株式会社小森コーポレーション製)において、おもて面を印刷済みの印刷物を裏返して10万枚印刷した場合、実用例1〜5のインキ組成物は問題なく印刷出来たが、比較例1〜5のインキ組成物は、途中で印刷トラブル等があり、印刷を止めて、洗浄等を行う必要が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックス、バインダー樹脂、植物油類、石油系溶剤および顔料を含有してなるオフセット枚葉印刷インキ組成物において、
ワックスが、平均粒子径3.5〜4.5μm、
融点290〜340℃
および
真球度0.2〜0.7
であるポリテトラフルオロエチレンワックス
ならびに
平均粒子径1.0〜4.0μm、
融点100〜200℃
および
真球度0.9〜1.0
であるポリエチレンワックス
であることを特徴とするオフセット枚葉印刷インキ組成物。
【請求項2】
さらに、下記ポリエチレンワックスA、ポリエチエレンワックスBおよびポリエチレンワックスCから選ばれる一種類以上のワックスが、オフセット印刷インキ組成物に含有されてなることを特徴とする請求項1記載のオフセット枚葉印刷インキ組成物。
ポリエチレンワックスAが、
平均粒子径0.5〜1.0μm、
融点60〜140℃
および
真球度0.6〜0.8
であるものである。
ポリエチレンワックスBが
平均粒子径1.5〜2.0μm、
融点80〜140℃
および
真球度0.6〜0.8
であるものである。
ポリエチレンワックスCが
平均粒子径4.0〜7.0μm、
融点60〜140℃
および
真球度0.2〜0.7
であるものである。
【請求項3】
植物油類が、大豆油または大豆油エステルであることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット枚葉印刷インキ組成物。
【請求項4】
石油系溶剤が、アニリン点70〜110℃および沸点230〜350℃であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のオフセット枚葉印刷インキ組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載のオフセット枚葉印刷インキ組成物を基材に印刷してなることを特徴とする印刷物。

【公開番号】特開2010−248286(P2010−248286A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96076(P2009−96076)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】