説明

印刷インキ組成物

【課題】グラビア、フレキソ印刷用インキ組成物において、高濃度の水性顔料分散体とワニス組成物の配合により、ピグメントショックなく、貯蔵性安定性に優れ、高光沢、高濃度の印刷インキ組成物を、容易に提供する。
【課題手段】顔料と酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン‐アクリル樹脂樹脂(A)、ノニオン性活性剤および、水を含む溶剤からなる顔料分散体と酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)および酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)からなるワニス組成物を特定の割合で混合した印刷インキ組成物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール、カートン紙、包装紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等の印刷基材を対象とするグラビア、フレキソ印刷用インキ組成物において、高光沢、高濃度で貯蔵性安定性に優れ、用途に応じ各種添加剤、ワニス、溶剤を添加することにより、ピグメントショックなく各種のインキに容易に展開でき、短納期で印刷インキを生産できる高濃度顔料分散体とワニス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア、フレキソ印刷において、紙用印刷分野において、従来より水性インキが使用されているが、近年、包装容器の差別化、美粧性から高光沢、優れた印刷濃度、優れたレベリング性が印刷インキに要望されている。一方、インキの在庫管理の面から、必要量を短納期でデリバリーするシステムが不可欠になってきており、インキ生産時間の大部分を占める分散工程の短縮化、効率化が実施されている。最近は、顔料分散体をあらかじめ作成し、ディスペンシングシステム等により各種添加剤、ワニス、溶剤を加え、必要なとき必要量のインキを作成する新規生産方法も検討されているが、分散安定性が不十分であったり、各種添加剤投入時にピグメントショックを起こし発色不良になるものが多かった。
【0003】
かかる課題に対して、古くより樹脂型顔料分散体、界面活性剤型顔料分散体により顔料の発色向上、分散安定性向上の検討がなされてきたが、従来の界面活性剤型顔料分散体は界面活性剤などを大量に添加する必要があり、そのような手法では消泡性の低下や耐水性の低下を生じる。樹脂型顔料分散体はインキ展開時に添加剤、ワニス、溶剤によってピグメントショックを起こしやすく、分散安定性とピグメントショックを兼ね備えた顔料分散体はなかった。
また、ピグメントショックがなく、インキに展開可能な顔料分散体から構成される従来の印刷インキ組成物は、高速印刷適性や重ね刷り適性、また洗浄性のレベルが劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−331894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高濃度、高光沢、貯蔵安定性に優れ、インキ化時にピグメントショックを起こしにくい顔料分散体およびワニス組成物、さらに、これらによる高速印刷適性、重ね刷り適性および洗浄性が良好な印刷インキ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、顔料分散体とワニス組成物とを混合することにより得られる印刷インキ組成物において、
印刷インキ組成物全量に対して、
顔料分散体が25〜70重量%
であり、
ワニス組成物が30〜75重量%
であって、
顔料分散体が、
顔料、
酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン‐アクリル樹脂(A)、
ノニオン性活性剤
および
水を含む溶剤
からなり、
ワニス組成物が、
酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)、ワ ニス組成物全量に対して、1〜45重量%、
酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)、ワニス組成 物全量に対して、1〜45重量%、
水を除く溶剤、ワニス組成物全量に対して、0〜10重量%、
および
水、
からなることを特徴とする印刷インキ組成物に関するものである。
【0007】
また、本発明の第2の発明は、更に酸価200〜250であるスチレンーアクリル酸―マレイン酸エマルジョン(D)を含むことを特徴とする第一発明記載の印刷インキ組成物に関するものである。
【0008】
また、本発明の第3の発明は、前記顔料分散体の表面張力と前記ワニス組成物の表面張力との差の絶対値が、10mN/m(25℃)以下であることを特徴とする第1の発明または第2の発明記載の印刷インキ組成物に関するものである。
【0009】
さらに、本発明の第4の発明は、前記顔料分散体と前記ワニス組成物を印刷インキの調色充填装置を用いて混合してなる印刷インキ組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高濃度、高光沢、貯蔵安定性に優れ、インキ化時にピグメントショックを起こしにくい顔料分散体およびワニス組成物、さらに、これらによる高速印刷適性、重ね刷り適性および洗浄性が良好な印刷インキ組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
そこで、本発明者らは上記の問題点を解消するために、鋭意検討を進めた結果、顔料、酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン‐アクリル樹脂(A)およびノニオン性活性剤からなる顔料分散体、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)および酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)の2種類の樹脂からなるワニス組成物を混合したインキ組成物が高濃度、高光沢、貯蔵安定性に優れ、かつインキ化時にピグメントショックを起こさないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明に用いる顔料分散体は、顔料、酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A)、ノニオン性活性剤及び、水を含む溶剤からなることを特徴とする。酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A)は、全顔料分散体中に、固形分で0.5〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。0.5重量%より少ないと貯蔵安定性が低下し。20重量%より多いと粘度が高くなり取り扱いが困難となる。より好ましくは、1〜10重量%の範囲で使用する。
【0013】
本発明におけるノニオン性活性剤は、化学構造の異なる2種類のノニオン性活性剤を使用することが好ましい。一つは、ポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドを付加することを特徴とする。(以後ノニオン性活性剤(a)とする)ポリプロピレングリコールの分子量は、500〜30000が好ましく、分子量が、500より小さいと顔料分散性が低下し、30000を超えると、レベリング性が低下する。より好ましくは、顔料分散性とレベリング性の両立を目的に、分子量は、1000〜5000の範囲とする。また、エチレンオキサイド付加量は、全分子中の10〜95%であることが好ましい。エチレンオキサイドの付加量が10%より低いと、分散安定性が低下し、95%を超えると、耐水性と乾燥性が低下する。分散安定性と耐水性、乾燥性の両立を目的に、エチレンオキサイドの付加量は、30〜90%とすることがより好ましい。ノニオン性活性剤(a)は、全顔料分散体中に、0.1〜5.0重量%の範囲で添加され、0.1%より少ないとワニス組成物と混合しインキ化する際に、ピグメントショックが発生しやすく、5.0%より多いと印刷インキ組成物の耐水性、乾燥性が低下しやすくなる。好ましくは、ピグメントショックと耐水性、乾燥性の両立の目的で、0.5〜3.0重量%の範囲で使用する。
【0014】
他のノニオン性活性剤としては、一般式(1)で表わされるアセチレニックジオールまたは、アセチレニックカルビトールであり、一般式(1)におけるNが、0〜60の範囲であることが好ましい。(以後ノニオン性活性剤(b)とする)Nが60を超えると、レベリング性が低下する。より好ましくは、Nは、0〜40の範囲のものを使用する。ノニオン性活性剤(b)としては、サーフィノールシリーズ(エアプロダクツ社製)が市販されている。ノニオン性活性剤(b)は、全顔料分散体中に、0.1〜5.0重量%の範囲で使用する。0.1重量%より少ないと、顔料分散体の光沢が低下し、5.0重量%より多いと、耐ブロッキング性が低下する。好ましくは、光沢と耐ブロッキング性の両立の目的で、0.2〜2.0重量%の範囲で使用する。
一般式(1)
【0015】
【化1】

【0016】
本発明に使用する顔料は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、ジケトピロロピロールなどに代表される有機顔料と、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンやカーボンブラックなどに代表される無機顔料があげられる。
【0017】
本発明に使用する溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチエルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジピロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンなどがあげられる。
【0018】
本発明の印刷インキ組成物は、前記した顔料分散体とワニス組成物を混合することにより得られる。ワニス組成物は、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)、酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)、水を除く溶剤および、水からなることを特徴とする。酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)は、酸価が、140より小さいと、再溶解性が低下し、330より大きいと、重ね刷り適性が低下する。好ましくは、酸価170〜220の範囲のものを使用する。酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)は、全ワニス組成物中に、固形分で1〜45重量%使用することを特徴とする。1重量%より少ないと印刷インキ組成物の再溶解性が低下し、45重量%より多いと印刷インキ組成物の耐水性が劣る。好ましくは、再溶解性と耐水性の両立の目的で、2〜10重量%の範囲で使用する。
【0019】
酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)は、酸価が、10より小さいと、ワニス組成物の安定性が低下し、120を超えると、印刷インキ組成物の耐水性が低下する。好ましくは、10〜80のものである。酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)は、全ワニス組成物中に、固形分で1〜45重量%を特徴とする。酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)が、1重量%より少ないと、重ね刷り適性が低下し、45重量%より多いと再溶解性が低下する。好ましくは、2〜15重量部の範囲で使用する。
【0020】
本願においては、顔料分散体に酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン‐アクリル樹脂(A)、ワニス組成物に酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)および酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)を使用する。混合に際してのピグメントショック、粘度の増加をより低減するため顔料分散体に使用する樹脂の酸価とワニス組成物に使用する2種類の樹脂の平均酸価とのバランスは重要である。
【0021】
また、ワニス組成物を構成する2種類の樹脂の平均酸価の算出においては、酸価10〜120であるスチレン−アクリルマルジョン(C)はコア/シェル型の構造を有するエマルジョンであることから、シェル層の酸価(AV3(s)とする)と当該エマルジョンに占めるシェル層の割合(固形重量比、Rとする)が重要である。これは酸価が樹脂の水溶液中での形態、安定性を決める大きな要因であるためである。コア/シェル型エマルジョンの場合、実質上はシェル層の酸価に支配される。
【0022】
本願においては、1)酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン‐アクリル樹脂(A)の酸価をAV1、2)酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)の酸価をAV2、固形重量分をW2、3)酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)のトータル酸価AV3、シェル層の酸価をAV3(s)、エマルジョンの固形分重量をW3、更に当該エマルジョンに占めるシェル層の割合(固形重量比)をRとした時、ワニス組
成物の平均酸価AVは下記計算式(1)で示される。
計算式(1)
【0023】
【数1】

【0024】
本願においては、顔料分散体に使用する樹脂の酸価AV1とワニス組成物に使用する前記平均酸価AVとのバランスは重要であり、それらは下記計算式(2)で表される
計算式(2)
【0025】
【数2】

【0026】
さらに好ましくは
計算式(3)
【0027】
【数3】

である。
【0028】
これらのワニス組成物において、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じてアルコールおよびグリコール系溶剤をワニス組成物全量に対して0〜30%の範囲で入れることができる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチエルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジピロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンなどがあげられる。
さらに、印刷物の要求物性に応じて、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、テフロン(登録商標)ワックス、スチレンビーズ、ベンゾグアナミンワックスなどを添加することができる。
【0029】
本願においては、さらに酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)を添加することで、再溶解性を向上させることができる。これにより、印刷する上での作業性を向上させ、更に、再溶解性に関わる、版づまりや版からみに代表される様々なトラブルを改善することができる。なお、本発明において、酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)はアルカリ可溶型樹脂を含まないこととする。
【0030】
また、ワニス組成物においては、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)の固形重量分をW2、酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)の固形分重量をW3、酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)の固形重量分をW4とした時、(W2+W3)/W4が1.0以下であれば再溶解性が特に優れる。
【0031】
前記、酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A)、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレンーアクリル樹脂(B)、酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)および酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)に使用されるビニルモノマーとしては、ラジカル重合性ビニル結合を有するカルボン酸類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、ラジカル重合性ビニル結合を有するジカルボン酸ジエステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン系ビニルモノマー類、含窒素複素環を有するビニルモノマー類、アミノ基を有するビニルモノマー、ラジカル重合性ビニル結合を有するエーテル化合物が使用できる。
【0032】
より具体的には、ラジカル重合性ビニル結合を有するカルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が上げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0033】
ラジカル重合性ビニル結合を有するジカルボン酸ジエステル類としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の酸成分とメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ペプタデカノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチエルエーテル、プロピレングリコールコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキオクチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等の水酸基含有成分とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
スチレン系ビニルモノマー類としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0035】
含窒素複素環を有するビニルモノマー類としては、ビニルピロリドン類、ビニルピリジン類、ビニルイミダゾール類、ビニルカルバゾール類、ビニルキノリン類、ビニルピペリジン類などが挙げられる。アミノ基を有するビニルモノマーとしては、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ラジカル重合性ビニル結合を有するエーテル化合物としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0036】
前記、酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A)、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレンーアクリル樹脂(B)は、公知の方法で製造される。例えば、窒素等の不活性ガス下、沸点が60〜200℃の、モノまたはポリアルキレングリコールあるいは、そのエーテルまたはエステル系溶媒、酢酸エステル系溶媒等の水混和性溶剤、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒等の水非混和性溶剤中に前記単量体を添加混合し、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゼンパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の反応開始剤を添加して、60〜170℃で1〜10時間、好ましくは4〜8時間ランダム共重合させたのち、有機溶媒を乾燥除去することにより得られる。
【0037】
また、酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)は、公知の方法で製造される。例えば、水溶性のスチレンーアクリル樹脂の存在下で、アクリルモノマーを添加混合し、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゼンパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の反応開始剤を添加して、60〜100℃で1〜10時間、好ましくは4〜8時間ランダム共重合させたのち、最終的なスチレン−アクリルエマルジョン(C)が得られる。
【0038】
また、酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)は、先ず窒素等の不活性ガス下、沸点が60〜200℃の、モノまたはポリアルキレングリコールあるいは、そのエーテルまたはエステル系溶媒、酢酸エステル系溶媒等の水混和性溶剤、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒等の水非混和性溶剤中にスチレン、アクリル酸およびマレイン酸を添加混合し、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゼンパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等から選ばれる反応開始剤を添加して、60〜170℃で1〜10時間、好ましくは4〜8時間ランダム共重合させたのち、有機溶媒を乾燥除去することによりシェル層となる樹脂を得る。次に前記のシェル層となるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョンをアルカリが添加された水中に添加し、加熱溶解させて水溶性樹脂ワニスを得、さらに、そこにスチレンおよびアクリル酸ブチルなどのモノマーと過硫酸アンモニウムを開始剤として添加することにより最終的なスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)が得られる。
【0039】
前記、酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A)、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレンーアクリル樹脂(B)、酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)、酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)の水性化に使用される中和剤としては、アンモニア水、アルカリ金属の水酸化物などの無機アルカリ、有機アミン等の有機アルカリが使用できるが、アンモニアが好ましい。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。
【0040】
本発明の顔料分散体を製造するには、まず顔料を酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A)、ノニオン活性剤を水と攪拌混練することで得られる。
【0041】
本発明おけるワニス組成物は、酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)を前記、酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)、必要に応じて酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)、水、ワックス、水溶性溶剤を攪拌混合することにより得られる。
【0042】
本発明における顔料分散体は、従来の界面活性剤型顔料分散体と比較して、界面活性剤の使用量が極めて少なく、更に併用する酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレンーアクリル樹脂(A)によって分散が極めて安定化されている。また、混合するワニス組成物に酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)、および酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)、必要に応じて酸価200〜250であるスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D)の樹脂を特定量使用することにより、顔料分散体をより安定化させている。このようにして得られた印刷インキ組成物は、ノニオン活性剤の使用量を低減しているため重ね刷り適性を始めとする印刷インキ組成物としての印刷適性に優れている。
【0043】
本発明の印刷インキ組成物は、前記、顔料分散体とワニス組成物を調色充填装置を用いて混合することにより得られる。混合においてはエアデイスパーや電動ディスパーも使用できる。よりピグメントショックがなく、良好な印刷適性を有する印刷インキ組成物を得るためには、顔料分散体の表面張力F1(mN/m)とワニス組成物の表面張力F2(mN/m)の差の絶対値が10以下であることが好ましく、さらに、5以下であることがより好ましい。本発明で規定する表面張力は、公知のウィルヘルミー法(プレート法)で測定でき、測定装置としては、CBVP−Z(協和界面科学製)等がある。
【0044】
本発明である印刷インキ組成物は、顔料分散体とワニス組成物との混合により得られるが、両者の混合においてはピグメントショック、粘度の増加等がないことが必要である。本発明においては顔料分散体とワニス組成物の表面張力の差の絶対値が重要であることを見出したもので、表面張力の差の絶対値が10mN/m以下の場合その効果が顕著になる。顔料分散体の表面張力(表面自由エネルギー)は、本来、その気/液界面におけるノニオン性活性剤、樹脂等の吸着量、それらの界面での配向、コンホメーション等に依る。気/液界面に存在するノニオン性活性剤、樹脂は、それらの内部(バルク)に存在するノニオン性活性剤、樹脂と平衡状態にある。顔料分散体の場合は、更に顔料を直接分散、安定化している顔料近傍のノニオン性活性剤、樹脂とも平衡状態であるといえる。ワニス組成物についても同様に気/液界面の樹脂は、内部(バルク)の樹脂と平衡状態にある。そのため、仮に気/液界面でのノニオン性活性剤、樹脂等の吸着量、配向に変化が生ずれば、系全体の平衡状態が崩れ、あらたな平衡状態に向かうと考えられる。
【0045】
顔料分散体とワニス組成物の表面張力(表面自由エネルギー)のギャップが大きいものを混合する場合にはそれらが安定化し、あらたな平衡状態になるために系内の状態が変化すると考えられる。表面張力の差は顔料分散体とワニス組成物の混合による、変化の大きさを示しているとも言える、これが大きいと、顔料分散体やワニス組成物の状態が大きく変化し、顔料分散体に使用されているノニオン活性剤や樹脂の吸脱着、再配向等を引き起こすため、混合時のピグメントショックや印刷インキ組成物の経時による不安定化が発生するものと考えられる。
【0046】
なお、本発明の印刷インキ組成物の性能低下をきたさない範囲で、水混和性溶剤、各種添加剤を添加混合することができる。水混和性溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類及びそのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類などが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチエルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジピロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等が使用できる。
【0047】
本発明の印刷インキ組成物には、一般に、水性インキで使用できる無機あるいは、有機体質顔料が使用できる。
各種添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、再溶解性向上剤、レオロジーコントロール剤等が挙げられる。
【0048】
本発明に用いる調色充填装置は、16〜20色分のインキタンクとその各々に接続したポンプと注入用ノズル、計量器、攪拌機が、及び、コンピュータが装備されており、予め、コンピュータに記憶された配合比で、インキの生産、調色作業が可能である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明において、特に断らない限り、「部」は、「重量部」であり、「%」は、「重量%」である。アルカリ可溶型スチレン−アクリル酸樹脂(A)の製造例を挙げ、次いで本発明の水性印刷インキ組成物の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(樹脂の製造例1)
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた反応容器にキシレン1594部を仕込み、内温が125〜130℃になるまで昇温した。次いでスチレン591部、アクリル酸204部、αメチルスチレン204部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド63部からなる混合液を滴下漏斗より4時間を要して滴下した後、同温度で3時間保ち重合反応を完結させた。更に180℃に昇温し、減圧下でキシレンを完全に除去し、酸価160、重量平均分子量が12000、数平均分子量が7000の共重合体を得た。得られた共重合体にアンモニア水及び脱イオン水を加えてpH8.6、固形分30%の酸樹脂水溶液を得た。これをアルカリ可溶型スチレン−アクリル酸樹脂(A1)とする。
【0051】
(樹脂の製造例2〜4)
以下、表1の配合に従い、樹脂の製造例1と同様の工程により、酸価の異なるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂A2〜A4を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
(樹脂の製造例5)
製造例1と同様の反応容器にキシレン1594部を仕込み、内温が125〜130℃になるまで昇温した。次いでスチレン700部、アクリル酸200部、αメチルスチレン100部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド63部からなる混合液を滴下漏斗より4時間を要して滴下した後、同温度で3時間保ち重合反応を完結させた。更に180℃に昇温し、減圧下でキシレンを完全に除去し、酸価150、重量平均分子量が15000、数平均分子量が9000の共重合体を得た。得られた共重合体にアンモニア水及び脱イオン水を加えてpH8.3、固形分30%の樹脂水溶液を得た。これをアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B1)とする。
【0054】
(樹脂の製造例6〜9)
表2の配合に従い、樹脂の製造例5と同様の工程により、酸価の異なるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B2)〜(B5)を得た。
【0055】
【表2】

(樹脂の製造例10)
製造例1と同様の反応容器にキシレン1594部を仕込み、内温が125〜130℃になるまで昇温した。次いでスチレン190部、アクリル酸20部、αメチルスチレン65部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド63部からなる混合液を滴下漏斗より4時間を要して滴下した後、同温度で3時間保ち重合反応を完結させた。更に180℃に昇温し、減圧下でキシレンを完全に除去し、重量平均分子量が10000、数平均分子量が8000の共重合体を得た。得られた共重合体にアンモニア水及び脱イオン水を加えてpH8.3、固形分30%の樹脂水溶液を得た。この樹脂水溶液にスチレン655部、ブチルアクリレート65部および過硫酸アンモニウム10部を攪拌しながら1時間かけて滴下し、固形分(W3)50%、トータル酸価(AV3)15、シェル層の酸価(AV3(s))90の樹脂エマルジョンを得た。これをスチレン−アクリルエマルジョン(C1)とする。
(樹脂の製造例11〜17)
表3の配合に従い、樹脂の製造例9と同様の工程により、酸価の異なるスチレンーアクリルエマルジョン(C2)〜(C8)を得た。
以下、顔料分散体の製造例を示す。
【0056】
【表3】



【0057】
(樹脂の製造例9)
製造例1と同様の反応容器にキシレン1594部を仕込み、内温が125〜130℃になるまで昇温した。次いでスチレン342部、アクリル酸147部、無水マレイン酸104部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド63部からなる混合液を滴下漏斗より4時間を要して滴下した後、同温度で3時間保ち重合反応を完結させた。更に180℃に昇温し、減圧下でキシレンを完全に除去し、重量平均分子量が130000、数平均分子量が15000の共重合体を得た。得られた共重合体にアンモニア水及び脱イオン水を加えてpH8.3、固形分30%の樹脂水溶液を得た。この樹脂水溶液にスチレン300部、ブチルアクリレート105部および過硫酸アンモニウム10部を攪拌しながら1時間かけて滴下し、酸価325、固形分32%の樹脂エマルジョンを得た。これをスチレン−アクリル酸−マレイン酸エマルジョン(D1)とする。
【0058】
(顔料分散体の製造例1)
フタロシアニン系青顔料 45.0%
アルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(A1) 10.0%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック重合物(ノニオン性活性剤(a))
(分子量8350、総分子中のエチレンオキシド付加%80%) 2.0%
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(ノニオン性活性剤 (b)) 1.0%
シリコーン消泡剤 0.1%
脱イオン水 41.9%
合計 100.0%
を配合、攪拌混合後、サンドミルにて、粒度がグラインドゲージで10μm以下になるまで分散し、ザーンカップ#4−20秒/25℃の水性顔料分散体(I)を得た。
【0059】
得られた水性顔料分散体Iは、40℃30日間貯蔵した後、25℃に戻し状態を確認したところ分離、沈殿無く、粘度はザーンカップ#4−21秒であった。
【0060】
(顔料分散体の製造例2〜6)
表4の配合に従い、顔料分散体の製造例1と同様の方法により顔料分散体(II)〜(VI)を得た。
【0061】
【表4】

【0062】
(ワニス組成物の製造例1)
アルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B2) 50.0%
スチレン−アクリルエマルジョン(C1) 30.0%
ポリエチレンワックス 4.0%
脱イオン水 16.0%
合計 100.0%
を配合、ディスパーにて、攪拌することにより、ワニス組成物iを得た。
【0063】
得られたワニス組成物を40℃30日間貯蔵した後、25℃に戻し状態を確認したところ、分離沈殿はなく、粘度はザーンカップ#4−19秒であった。
【0064】
(ワニス組成物の製造例2〜17)
表5の配合に従い、ワニス組成物の製造例1と同様の方法によりワニス組成物(ii)〜(xvii)を得た。
【0065】
【表5】

【0066】
(実施例1)
以下、本発明における印刷インキ組成物の製造法を説明する。
ワニス組成物(ii)75.0部の中に、顔料分散体(I)25.0部を添加し、ディスパーにより攪拌し、印刷インキ組成物(1)を得た。得られた印刷インキ組成物はピグメントショックなく、粘度はザーンカップ#4−16秒であった。これを印刷したものの光沢、発色および重ね刷り適性は非常に良好であった。これを40℃にて30日間貯蔵した後、25℃に戻し状態を確認したところ、分離沈殿はなく、粘度はザーンカップ#4−19秒であり、貯蔵安定性も良好であった。
(実施例2〜28)
表6、7の配合に従い、実施例1と同様の方法で、印刷インキ組成物(2)〜(28)を得た。
【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
(比較例1)
ワニス組成物(i)20.0部の中に、顔料分散体(I)80.0部を添加し、ディスパーにより攪拌し、印刷インキ組成物(29)を得た。得られた印刷インキ組成物はピグメントショックなく、粘度はザーンカップ#4−16秒であった。これを印刷したものの光沢、発色および重ね刷り適性は非常に良好であったが、耐摩擦性に劣っていた。これを40℃にて30日間貯蔵した後、25℃に戻し状態を確認したところ、分離沈殿はなく、粘度はザーンカップ#4−19秒であり、貯蔵安定性も良好であった。
【0070】
(比較例2〜7)
表8の配合に従い、比較例1と同様の方法で、印刷インキ組成物(29)〜(35)を得た。
【0071】
【表8】



【0072】
実施例1〜28、比較例1〜7で得られた印刷インキ組成物について、ピグメントショック、経時安定性、再溶解性、耐水性、発色性、重ね刷り適性、耐摩擦性の評価を行った。評価方法、
評価基準を、以下に、示す。
【0073】
(評価方法及び、評価基準)
ピグメントショック
ワニス組成物中に、顔料分散体を所定量添加する。100rpmで、10秒間攪拌したものについて、グラインドゲージを用いて粗粒の発生の有無を確認。
◎:10μm以下
○:20μm以下
△:30μm以下
×:30μm以上
実用レベルは、○以上である。
【0074】
経時安定性
40℃にて30日間保管した後、25℃に戻したものについて粘度上昇を確認
◎:3秒以内
○:10秒以内
△:30秒以内
×:30秒以上
実用レベルは、○以上である。
【0075】
再溶解性
印刷インキ組成物を硝子板にバーコーター#4で塗工し、ドライヤーにて3秒間風乾させる。塗膜にインキをたらし、塗膜に穴があくまでの時間を測定。
【0076】
◎:1秒以下
○:5秒以下
△:5秒以上10秒以下
×:10秒以上
実用レベルは、○以上である。
【0077】
耐水性
印刷インキ組成物を硝子板にバーコーター#4で塗工し、ドライヤーにて3秒間風乾させる。塗膜に水をたらし、塗膜に穴があくまでの時間を測定。
◎:20秒以上
○:10秒以上20秒以下
△:10秒以下
×:1秒以下
実用レベルは、○以上
【0078】
発色性
印刷インキ組成物を硝子板にバーコーター#4で塗工し、ドライヤーにて3秒間風乾させる。東洋インキ製造製水性インキ「アクワコンテNEO」と比較し、その発色を評価
◎:アクワコンテNEO以上
○:アクワコンテNEOと同等
△:アクワコンテNEO以下
×:発色不良
実用レベルは、○以上である。
【0079】
重ね刷り適性
東洋インキ製造所有のフレキソ校正機を用いて重ね刷り適性を評価
レベリング性、トラッピング性、版からみ性
◎:上記3項目が全て良好
○:上記2項目が良好
△:不良項目あり
×:全て不良
実用レベルは、○以上である。
【0080】
耐摩擦性
ハンドプルーファーを用いて印刷物を作成し、学振型耐摩擦性試験機にて評価
対上質紙、500g×100回
◎:全く色落ちせず
○:上質紙にうっすら色がつく
△:上質紙に色がはっきりつく
×:印刷物にキズが入る
実用レベルは、○以上である。
【0081】
以上の結果から、本発明により、顔料分散体とワニス組成物の混合時に、ピグメントショックがなく、発色性、貯蔵安定性に優れ、且つ、印刷適性(重ね刷り適性、再溶解性)と塗膜物性(耐水性、耐摩擦性)を両立した印刷インキ組成物を得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散体とワニス組成物とを混合することにより得られる印刷インキ組成物において、
印刷インキ組成物全量に対して、
顔料分散体が25〜70重量%
であり、
ワニス組成物が30〜75重量%
であって、
顔料分散体が、
顔料、
酸価150〜220であるアルカリ可溶型スチレン‐アクリル樹脂(A)、
ノニオン性活性剤
および
水を含む溶剤
からなり、
ワニス組成物が、
酸価140〜330であるアルカリ可溶型スチレン−アクリル樹脂(B)、ワ ニス組成物全量に対して、1〜45重量%、
酸価10〜120であるスチレン−アクリルエマルジョン(C)、ワニス組成 物全量に対して、1〜45重量%、
水を除く溶剤、ワニス組成物全量に対して、0〜10重量%、
および
水、
からなることを特徴とする印刷インキ組成物。
【請求項2】
さらに、酸価200〜250であるスチレンーアクリル酸―マレイン酸エマルジョン(D)を含むことを特徴とする請求項1記載の印刷インキ組成物。
【請求項3】
前記顔料分散体の表面張力と前記ワニス組成物の表面張力との差の絶対値が、10mN/m(25℃)以下であることを特徴とする請求項1または2記載の印刷インキ組成物。
【請求項4】
前記顔料分散体と前記ワニス組成物を印刷インキの調色充填装置を用いて混合してなる印刷インキ組成物。


【公開番号】特開2012−214690(P2012−214690A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285958(P2011−285958)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】