説明

印刷システム、およびプログラム

【課題】印刷装置のインクタンクに劣化したインクが補充されることを回避する。
【解決手段】インクタンクから噴射ヘッドに供給されたインク量の計数値が限界値に達す
ると、インクの噴射を禁止する。そして印刷装置の操作者にインクタンクのインク量を確認するよう促す画像を表示して、インクが残っていた場合には、操作者の選択によって、インク量の計数値を一定量だけ復帰させる。こうすれば、インクタンクのインクが十分に少なくなってからインクを補充することができるので、インクボトル内のインクをすべて補充することができる。その結果、インクボトル内に残ったインクが劣化し、そのインクが補充される事態を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ヘッドからインクを噴射して画像を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターのように噴射ヘッドからインクを噴射することによって画像を印刷する印刷装置は、広く使用されている。噴射されるインクはインクカートリッジと呼ばれる専用容器に収容されており、インクの自重によって、あるいは送液ポンプによって噴射ヘッドに供給されている。
【0003】
噴射ヘッドの内部は、インクを噴射するための微細な噴射ノズルや、噴射ノズルにインクを導くための細いインク通路が形成された複雑な構造となっている。このため、性状の劣化したインクが供給されると噴射ノズルやインク通路などを目詰まりさせ、最終的には噴射ヘッドを取り替えなければならない事態が起こり得る。そこで、性状が劣化したインクが噴射ヘッドに供給されることを回避するために、インクカートリッジ内のインクが無くなった場合には、インクカートリッジごと交換することが行われている。こうすれば、インクが無くなると新たなインクカートリッジが装着されることになる。インクカートリッジ内のインクは、装着されない限り、長い期間に亘って適切な性状に保たれている。このため、常に適切な性状のインクを噴射ヘッドに供給することが可能となる。
【0004】
もっとも、インクカートリッジでは収容可能なインク量に限界があるので、大量に印刷する場合には、何度も印刷を中断してインクカートリッジを交換しなければならなくなる。そこで、印刷装置に設けたインクタンクからインクを供給するようにしておき、印刷中にインクが少なくなったら、別途用意しておいたインクボトルからインクタンクにインクを補充することで、連続して印刷可能にする技術も存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−211155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インクボトルなどからインクを補充することによって連続印刷を可能とした場合、性状が劣化したインクが補充されて、噴射ヘッドの内部を目詰まりさせてしまう虞が生じるという問題がある。これは次のような理由によるものである。たとえば、インクボトル内のインクを半分だけ補充したとする。インクボトルが未開封であれば内部のインクを長期間に亘って適切な性状に保っておくことができるが、ひとたび開封した後は、インクボトル内に残ったインクは時間の経過とともに劣化が進行する。従って、その後、半分残っているインクボトル内のインクがインクタンクに補充されると、性状の劣化したインクが噴射ヘッドに供給されて、噴射ヘッドの内部を目詰まりさせてしまう事態が生じ得る。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、インクボトルなどからインクを補充することで連続印刷が可能でありながら、劣化の進んだインクが補充されて噴射ヘッドの内部で目詰まりが生じることを回避可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明のプログラムは次の構成を採用した。すなわち、
外部からインクを補充可能なインクタンクと、該インクタンクから供給されたインクを噴射する噴射ヘッドと、を備え、該インクタンクから該噴射ヘッドに供給されたインク量の計数値が所定の限界値に達すると該噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する機能を有する印刷装置の動作を、コンピューターを用いて制御するためのプログラムであって、
前記インク量の計数値が前記限界値に達したか否かを少なくとも判別可能な情報を、前記印刷装置から取得する第1の機能と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達した場合には、前記インクタンク内のインク量を確認するように前記印刷装置の操作者を促す所定の確認画像を表示する第2の機能と、
前記確認画像を表示した後、前記印刷装置の操作者の選択に応じて、前記インク量の計数値を初期化する初期化動作、あるいは該計数値を前記限界値から所定値だけ戻す修正動作を前記印刷装置に指示する第3の機能と、
を、コンピューターを用いて実現することを要旨とする。
【0009】
このような本発明のプログラムにおいては、インク量の計数値が所定値に達するとインクの噴射を停止する機能を有する印刷装置の動作を、次のようにして制御する機能を有する。先ず、インク量の計数値が所定の限界値に達したか否かを判別可能な情報を印刷装置から取得する。ここで、印刷装置の内部でインク量を計数するに際しては、噴射ヘッドに供給されるインクの流量を直接計測することによってインク量を計数してもよいが、噴射ヘッドがインクを噴射する動作から、噴射ヘッドに供給されるインク量を間接的に計数しても良い。(1ドットで噴射されるインク量と噴射ドット数をかけることにより計数されるインク量)また、インク量を計数する態様は、噴射ヘッドにインクが供給されるにつれて、計数値が増加する態様で計数しても良いし、逆に、計数値が減少する態様で計数しても良い。また、本発明のプログラムは、印刷装置内でのインク量の計数値が限界値に達したか否かを判別可能な情報を取得できれば十分であり、従って、インク量の計数値を取得してもよいし、あるいは、インク量の計数値と限界値の大小関係を示す情報や、インク量の計数値が限界値に達したか否かのみを表す情報を取得してもよい。そして、インク量の計数値が限界値に達したと判定すると、インクタンク内の実際のインク量を確認するように、印刷装置の操作者を促す内容の所定の画像(確認画像)を表示する。その後、印刷装置の操作者の選択に応じて、インク量の計数値を初期化する動作(初期化動作)、あるいは計数値を限界値から所定値だけ戻す動作(修正動作)を印刷装置に指示する。
【0010】
こうすれば、インク量の計数値に含まれる誤差の影響で、インクタンク内にインクが残っているのに、インク量の計数値が限界値に達した場合でも、印刷装置の操作者がインクタンク内のインク量を確認して、インクが残っていれば、計数値を限界値から所定値だけ戻すことによって、再び印刷を開始することが可能となる。このため、インクタンク内のインクが無くなるか、もしくは、満タンのインクボトル内のすべてのインクを補充できる量となってからインクを補充することができるので、インクボトル内のインクをすべて補充することができる。その結果、インクボトル内に残ったインクが劣化し、そのインクが補充されてしまうことを回避することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のプログラムにおいては、次のようにしてもよい。印刷装置の操作者が容易にインクタンク内のインク量を確認できるように、インクタンク内のインク液面の位置が目視できるようにインクタンクを形成しておく。そして、インク量の計数値が限界値に達すると、インクタンク内のインク液面の位置に基づき、インクの補充の要否を判断するように促す確認画像を表示する。その結果、印刷装置の操作者がインクを補充する旨を選択した場合には、印刷装置に初期化動作(計数値の初期化)を行わせ、印刷装置の操作者がインクを補充しない旨を選択した場合には、印刷装置に修正動作(計数値の所定値だけ戻す動作)を行わせるようにしてもよい。
【0012】
また、上述した本発明のプログラムにおいては、次のようにしてもよい。印刷装置の操作者が容易にインクタンク内のインク量を確認できるように、インクタンク内のインク液面の位置が目視できるようにインクタンクを形成しておく。更に、インク液面の位置と比較することによってインクの補充の要否を判断するための下限ラインを、インクタンクに表示しておく。そして、インク量の計数値が限界値に達すると、インクタンク内のインク液面の位置と下限ラインとを比較して、インクの補充の要否を判断するように促す確認画像を表示する。その結果、印刷装置の操作者がインクを補充する旨を選択した場合には、印刷装置に初期化動作(計数値の初期化)を行わせ、印刷装置の操作者がインクを補充しない旨を選択した場合には、印刷装置に修正動作(計数値の所定値だけ戻す動作)を行わせるようにしてもよい。
【0013】
こうすれば、インクタンクの下限ラインとインク液面とを比較することによって、印刷装置の操作者が、インクの補充の要否を容易に判断することが可能となる。その結果、インクを補充するものと誤って判断したために、インクボトル内のインクをすべて補充することができずに、残ったインクがインクボトル内で劣化する事態を回避することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明のプログラムにおいては、次のようにしてもよい。まず、インクタンクに表示された下限ラインの下方にも、所定量のインクが予備インクとして収納されるようにインクタンクを形成しておく。そして、印刷装置の操作者がインク液面と下限ラインとを比較した結果、インクを補充しないと判断した場合には、印刷装置内のインク量の計数値を、予備インクのインク量に相当する計数値だけ限界値から戻す動作を、印刷装置に行わせるようにしてもよい。
【0015】
こうすれば、インク液面が下限ラインとほとんど同じ位置にあったために、インクを補充しないと判断されて、インク量の計数値が戻されてしまった場合でも、計数値が再び限界値に達するまでは、インクタンク内の予備インクを用いて印刷を継続することができるので、噴射ヘッドが空打ち状態となってダメージを被る事態を回避することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明のプログラムにおいては、次のようにしても良い。先ず、印刷装置に、複数のインクタンクを搭載し、それぞれのインクタンクに対して噴射ヘッドを設けておく。そして、インク量を計数するに際しては、インクタンク毎にインク量を計数し、何れかのインクタンクでインク量の計数値が限界値に達すると、そのインクタンクについての確認画像(インクタンクへのインクの補充を行うか否かを印刷装置の操作者に確認するための画像)を表示する。その結果、確認画像が表示されたインクタンクについて、インクタンクごとに、初期化動作または修正動作を印刷装置の操作者の選択に応じて印刷装置に行わせるようにしてもよい。
【0017】
こうすれば、複数種類のインクを用いて画像を印刷する印刷装置であっても、個々のインクタンク内のインクが十分に少なくなるまで印刷を継続することができる。
【0018】
また、上述した本発明は、上記のプログラムによって動作が制御される印刷装置や、該プログラムが実行されるコンピューターなどによって構成される印刷システムとしての態様で把握することも可能である。あるいは、上記のプログラムが印刷装置に組み込まれた印刷システムとして把握することも可能である。このような態様で把握された本発明の印刷システムは、
外部からインクタンクに補充されたインクを、噴射ヘッドを用いて噴射する印刷部と、該印刷部の動作を制御する制御部とを備える印刷システムであって、
前記制御部は、
前記印刷部で前記インクタンクから前記噴射ヘッドに供給されたインク量を計数するインク量計数手段と、
前記インク量の計数値が所定の限界値に達すると、前記噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する噴射停止手段と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達すると、前記インクタンク内のインク量を確認するように前記印刷システムの操作者に促す所定の確認画像を表示する確認画像表示手段と、
前記確認画像を表示した後、前記印刷システムの操作者の選択に応じて、前記インク量の計数値を初期値まで戻すか、あるいは該計数値を前記限界値から所定値だけ戻す動作を行う計数値変更手段と
を備えることを要旨とする。
【0019】
このような本発明の印刷システムにおいても、インクタンクから噴射ヘッドに供給されたインク量を計数して、その計数値が所定の限界値に達すると、噴射ヘッドからのインクの噴射が停止されて、インクタンク内のインク量を確認するように促す確認画像が表示される。そして、インクタンク内のインク量が残っていた場合には、印刷装置内で計数されているインク量の計数値が限界値から所定値だけ戻されて、再び噴射ヘッドからインクを噴射することが可能となる。尚、印刷装置に、その印刷装置を制御するためのコンピューターを接続して画像を印刷する場合には、印刷装置に接続されたコンピューターと、印刷装置に搭載されている制御部の中でインク量を計数して計数値が所定の限界値に達すると噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する機能を司る部分とが、本発明の制御部に対応し、印刷装置の中で本発明の制御部に対応しない部分が、本発明の印刷部に対応する。また、印刷装置自身がコンピューターを搭載しており、外部のコンピューターに接続することなく画像を印刷する場合には、印刷装置に搭載されたコンピューターが本発明の制御部に対応し、それ以外の部分が本発明の印刷部に対応する。
【0020】
以上のような本発明の印刷システムにおいても、上述した本発明のプログラムと同様に、印刷装置でのインク量の計数値に含まれる誤差の影響を受けることなく、インクタンク内のインクが十分に少なくなってからインクを補充することができる。
【0021】
また、本発明の印刷システムにおいて、
インクタンクには下限ラインが設けられ、
インクタンクにはインクボトルからインクが補充され、
インクタンクに収容可能なインク容量と未開封のインクボトルに収容されるインクの容量の関係が、インクタンク内のインクの液面が下限ラインの位置にあるとき、未開封のインクボトルをインクタンク内に全て充填可能な関係としてもよい。
【0022】
このようにすれば、インクボトル内のインクをすべて補充することができずにインクが残ってしまい、そのインクがインクボトル内で劣化して、次回に補充されてしまう事態を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例の印刷装置としてのインクジェットプリンターを例示した説明図である。
【図2】本実施例の印刷システムの全体構成を示した説明図である。
【図3】本実施例のプリンタードライバーが実行するインク残量管理処理を示したフローチャートである。
【図4】モニター画面202に表示された補充インク選択画面を例示した説明図である。
【図5】モニター画面202に表示された補充インク選択画面の他の態様を例示した説明図である。
【図6】インク残量管理処理の中で実行されるインク残量修正処理を示したフローチャートである。
【図7】モニター画面202に表示されたインク残量確認画面を例示した説明図である。
【図8】タンクケースの確認窓からインクタンク内のインク残量を確認する様子を示した説明図である。
【図9】タンクケースの確認窓からインクタンク内のインク液面の位置を確認する様子を示した説明図である。
【図10】インク液面と下限ラインとが非常に接近している場合を例示した説明図である。
【図11】インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面を例示した説明図である。
【図12】インク残量管理処理の中で実行されるインク補充処理のフローチャートである。
【図13】タンクケースをインクジェットプリンターから取り外した様子を示す説明図である。
【図14】モニター画面に表示されたインク補充画面を例示した説明図である。
【図15】補充インクが収容されたインクボトルを例示した説明図である。
【図16】モニター画面上でインクID番号を入力するために表示される入力画面を例示した説明図である。
【図17】モニター画面上でインクID番号の再入力を促すために表示される再入力画面を例示した説明図である。
【図18】モニター画面上に表示された補充完了画面を例示した説明図である。
【図19】インクタンクにインクを補充可能となるインク残量が、インク液面が下限ラインに達していないインク残量を増加させる分量と同じ値に設定されている理由を示説明図である。
【図20】タンクケースの確認窓からインクタンク内のインク残量を確認可能な様を示した説明図である。
【図21】タンクケースをインクジェットプリンターから取り外した様子を示す説明図である。
【図22】インクジェットプリンターにタンクケースを固定するための構造を示し説明図である。
【図23】モニター画面202に表示されたインク残量確認画面を例示した説明図ある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って第1実施形態による実施例を説明する。
A.装置構成:
A−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造:
A−2.本実施例の印刷システムの構成:
B.インク残量管理処理:
B−1.インク残量修正処理:
B−2.インク補充処理:
【0025】
A.装置構成 :
A−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造 :
図1は、本実施例の印刷装置としてのインクジェットプリンター100を例示した説明図である。図示したインクジェットプリンター100は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー103が設けられ、背面側には、印刷用紙1をセットする給紙トレイ101が設けられている。また、インクジェットプリンター100の前面側で、前面カバー103の隣に相当する位置には複数の操作ボタン105が設けられており、更に、操作ボタン105が設けられた箇所の上面側には、タッチパネル式のモニター画面104が設けられている。前面カバー103は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷用紙1が排出される細長い排紙口102が現れる。給紙トレイ101に印刷用紙をセットして、モニター画面104あるいは操作ボタン105を操作すると、給紙トレイ101から印刷用紙1が吸い込まれる。そしてインクジェットプリンター100の内部で、印刷用紙1の表面に画像が印刷された後、排紙口102から排出されるようになっている。
【0026】
インクジェットプリンター100の側面には、箱形形状のタンクケース150が設けられている。詳細には後述するが、タンクケース150の内部には複数のインクタンクが設けられており、インクジェットプリンター100が印刷に用いるインクは、このインクタンクから供給されるようになっている。
【0027】
また、印刷する画像のデータ(画像データ)は、インクジェットプリンター100に接続されたコンピューター200によって画像処理が施された後、インクジェットプリンター100に供給される。インクジェットプリンター100は、コンピューター200から画像処理後の画像データを受け取ると、印刷用紙1上にインクによるドットを形成するか否かを表したドットデータに変換して、得られたドットデータに従って印刷用紙1上にインクを噴射することによってドットを形成する。その結果、印刷用紙1上に画像が印刷される。すなわち、本実施例では、インクジェットプリンター100と、画像データに所定の画像処理を施してインクジェットプリンター100に供給するコンピューター200とによって印刷システム10が構成されていることになる。
【0028】
A−2.本実施例の印刷システムの構成 :
図2は、本実施例の印刷システム10の全体構成を示した説明図である。また、図中には、インクジェットプリンター100の大まかな内部構造も示されている。先ず初めに、インクジェットプリンター100の内部構造について簡単に説明する。図2に示されるように、インクジェットプリンター100の内部には、印刷用紙1の上で往復動するキャリッジ110が設けられており、キャリッジ110には、インクを噴射する噴射ヘッド112が設けられている。本実施例のインクジェットプリンター100では、シアン(以下C)色、イエロー(以下Y)色、マゼンタ(以下M)色、黒(以下K)色の4色のインクを用いて画像を印刷可能であり、このことに対応して、インクの色毎に噴射ヘッド112が設けられている。
【0029】
キャリッジ110は、図示しない駆動機構に駆動されて、ガイドレール130によってガイドされながら印刷用紙1の上で往復動を繰り返す。また、インクジェットプリンター100には図示しない紙送り機構も設けられており、キャリッジ110が往復動する動きに合わせて印刷用紙1が少しずつ紙送りされていく。そして、キャリッジ110が往復動する動きと、印刷用紙1が紙送りされる動きとに合わせて、噴射ヘッド112から、C色のインク(以下、Cインク)、Y色のインク(以下、Yインク)、M色のインク(以下、Mインク)、あるいはK色のインク(以下、Kインク)を噴射することによって、印刷用紙1に画像が印刷される。
【0030】
噴射ヘッド112から噴射されるインクは、タンクケース150内に設けられたインクタンク151に収容されている。本実施例のインクジェットプリンター100では、Cインク、Yインク、Mインク、Kインクの4種類のインクを使用することから、インクタンク151もインクの種類毎に、Cインク用のインクタンク151C、Yインク用のインクタンク151Y、Mインク用のインクタンク151M、およびKインク用のインクタンク151Kの4つのインクタンク151が設けられている。尚、本明細書中では、特にインクの種類を区別する必要がない場合には、インクの種類毎のインクタンク151C,151Y,151M,151Kをまとめて単にインクタンク151と称することがあるものとする。これらインクタンク151内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ117を介して、インクの種類毎の噴射ヘッド112に供給される。
【0031】
更に、キャリッジ110がガイドレール130に沿って印刷用紙1の外側まで移動した位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、インクジェットプリンター100が画像を印刷していない間は、キャリッジ110はホームポジションに移動している。ホームポジションには、キャップ122が設けられており、このキャップ122は図示しない昇降機構によって上下方向に移動可能となっている。そして、キャリッジ110をホームポジションに移動した状態で、キャップ122をキャリッジ110の底面側に押し当てると噴射ヘッド112を覆うように閉空間が形成され、噴射ヘッド112内のインクが乾燥することを防止可能となっている。また、キャップ122には、負圧チューブ124を介して負圧ポンプ120が接続されており、キャリッジ110の底面側にキャップ122を押し当てた状態で負圧ポンプ120を作動させることで、噴射ヘッド112内のインクを吸い出すことが可能となっている。このため、噴射ヘッド112内で乾燥が進んでインクの粘度が増加してしまった場合でも、そのようなインクを吸い出して、噴射ヘッド112内のインクを適切な粘度に維持しておくことが可能である。
【0032】
また、インクジェットプリンター100には、論理演算や算術演算を行うCPUや、各種のプログラムやデータを記憶しているROM、EEPROM、CPUが一時的にデータを記憶するRAMなどによって構成された制御部140が搭載されている。制御部140は、コンピューター200から画像処理後の画像データを受け取ると、その画像データが表す画像を、インクのドットによって表現した画像データ(ドットデータ)に変換する。そして、ドットデータに従って、キャリッジ110が往復動する動作や、印刷用紙1を紙送りする動作、噴射ヘッド112がインクを噴射してドットを形成する動作を制御する。また、インクのドットを形成すると、その分だけのインクが消費されて、インクタンク151内のインク残量が減少していく。そこで本実施例の制御部140では、インクの種類毎のドットデータに基づいて、インクの種類毎にインクタンク151内のインク残量を計数してEEPROMに記憶しており、インク残量が所定の下限値(限界値)に達すると(計算上でインクがなくなると)、噴射ヘッド112からインクを噴射する動作を停止する。こうすることで、インクが供給されない状態で噴射ヘッド112が駆動されたために、噴射ヘッド112が大きなダメージを受けることを回避することが可能となる。
【0033】
コンピューター200は、CPUや、ROM、RAMなどがバスによって相互にデータを通信可能に接続されて構成されており、ROMに記憶されている各種のプログラムを実行する。また、コンピューター200には、モニター画面202も搭載されている。ROMに記憶された複数のプログラムの中には、プリンタードライバー204と呼ばれるプログラムが記憶されている。コンピューター200の操作者(インクジェットプリンター100の操作者でもある。すなわち、コンピューター200とインクジェットプリンター100からなる印刷システム10を利用するユーザーである。以下、単に操作者と記載する。)が、文書作成アプリケーションなどからドキュメントの印刷を実行すると、CPUがプリンタードライバー204を起動する。プリンタードライバー204は、印刷しようとする画像データに対して所定の画像処理を施し、インクジェットプリンター100に出力する。
【0034】
また、本実施例のプリンタードライバー204の動作を、その機能に着目して分類すると、印刷対象の画像データに対して画像処理を施す機能に関する部分(画像変換モジュール)や、インクジェットプリンター100と相互に通信しながらインクタンク151のインク残量を管理する機能に関する部分(インク残量管理モジュール)や、インク残量管理モジュールから起動されてインクタンク151にインクを補充するための機能に関する部分(インク補充モジュール)などに分類することができる。尚、ここで言う「モジュール」とは、プリンタードライバー204の動作を、機能に着目して大まかに分類した仮想的な概念であり、実際には種々の形態で具現化することができる。たとえば、所望の機能が実現されるように複数のコマンドを連ねたプログラムコード群として具現化することもできるし、あるいは、所望の機能をハードウェア的に実現するLSI群として具現化することもできる。
【0035】
上述したように画像変換モジュールでは、印刷しようとする画像の画像データに対して所定の画像処理を施してインクジェットプリンター100に出力しているが、この処理自体は、一般的なプリンタードライバーで行われている処理と同様であるため、ここでは説明は省略する。また、本実施例のプリンタードライバー204では、インク残量管理モジュール(あるいはインク補充モジュール)がインクジェットプリンター100とデータを通信しながら、以下に説明するインク残量管理処理を実行することにより、インクジェットプリンター100でインク切れが発生して印刷できなくなる事態を回避するための印刷システム10の操作を操作者に案内している。更に、適正でない性状のインクが補充されて噴射ヘッド112の内部で目詰まりが発生することを防止するための印刷システム10の操作を操作者に案内している。以下では、こうした機能を実現するために、本実施例のプリンタードライバー204の内部でインク残量管理モジュールが実行している処理について説明する。
【0036】
B.インク残量管理処理 :
図3は、本実施例のプリンタードライバー204の中で行われるインク残量管理処理を示したフローチャートである。この処理は、プリンタードライバー204のインク残量管理モジュールが、インクジェットプリンター100の制御部140と通信しながら実行する処理である。
【0037】
図3に示されるようにインク残量管理処理では、先ず初めに、インクジェットプリンター100の制御部140から、インクタンク151内のインク残量をインクの種類毎に取得する(ステップS100)。図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140では、コンピューター200から受け取った画像データをドットデータ(画像をインクドットによって表現した画像データ)に変換して噴射ヘッド112やキャリッジ110の動作などを制御するとともに、ドットデータに基づいてインクタンク151のインク残量をインクの種類ごとに計数し、それを累積して記憶している。また、噴射ヘッドのクリーニングのために、負圧ポンプによって噴射ヘッドから吸い出されたインクの量も含めてインク残量を計数している。以下、制御部140で計数しEEPROM内で記憶している各インクタンク毎のインク残量を単にインク残量もしくはインク量の計数値という。尚、以下の処理は、すべて各色のインク毎に行われていることから、特にインクの種類を特定せずに行った説明は、すべてのインクについて該当するものとする。
【0038】
インクジェットプリンター100の制御部140からインク残量を取得したら、取得したインク残量が、所定の下限値に達したか否かを判断する(ステップS102)。その結果、何れかのインクタンク151のインク残量が所定の下限値まで減少していた場合は(ステップS102:yes)、インク残量修正処理(ステップS200)を開始する。詳細は後述するが、インク残量修正処理とは、操作者にインクタンク151のインク残量を確認させて、実際にはまだインクが残っていた場合には、インクジェットプリンター100の制御部で計数しているインク残量を修正する処理である。
【0039】
一方、インクジェットプリンター100から取得したインク残量が未だ下限値に達していない場合は(ステップS102:no)、インク残量を確認するための所定の操作が、操作者によって行われたか否かを判断する(ステップS104)。インク残量を確認するための所定の操作とは、たとえば、操作者がコンピューター200からプリンタードライバー204を起動してプリンタードライバーのウインドウを開き、開かれたウインドウからインク残量確認のボタンをクリックするような操作である。その結果、インク残量を確認するための操作が行われていない場合は(ステップS104:no)、処理の先頭に戻って、再びインクジェットプリンター100からインク残量を取得した後(ステップS100)、上述した一連の処理を繰り返す。
【0040】
これに対して、操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行った場合は(ステップS104:yes)、インク残量管理モジュールは、制御部140から取得したインク残量に基づき、おおよそのインクタンク151内のインク残量を示し、インクを補充するインク(補充インク)を選択するための画面を、コンピューター200のモニター画面202に表示する(ステップS106)。
【0041】
図4は、モニター画面202に表示された補充インク選択画面を例示した説明図である。図示されているように、補充インク選択画面には、Cインク、Yインク、Mインク、およびKインクのそれぞれについて、大まかなインク残量を示す画像が表示されている。また、大まかなインク残量を示す画像の下側にはチェックボックスが表示されており、操作者がチェックボックスにチェックを入れることによって、操作者がインクを補充するインクタンクを選択することが可能となっている。もっとも、インク残量が減っていないインクについてはインクを補充する必要はない。そこで、このようなインクについては、チェックボックスが選択できない態様で表示されている。図4中で、C、Y、M、Kの各インクのチェックボックスが細い波線で表示されているのは、これらのチェックボックスが選択できないことを表したものである。
【0042】
図5は、モニター画面202に表示された補充インク選択画面の他の態様を例示した説明図である。図5に示した例では、YインクおよびMインクについてはインク残量が所定値(たとえば満タン状態の3%以下)に減少しており、これらインクのチェックボックスが選択可能な態様で表示されている。図中でチェックボックスが太い実線で表示されているのは、選択可能な態様で表示されていることを表したものである。また、インク残量が所定値以下に減少したインクについては、三角形の中に!印を組み合わせた図形が、大まかなインク残量を示す画像の上に上書きされており、インク残量が減少していることが容易に認識できるようになっている。なお、図5では、YインクおよびMインクのインク残量が所定値以下に減少していた場合を例示したが、他のインク(たとえばCインク)のインク残量が所定値以下に減少していた場合には、そのインク(Cインク)についてのチェックボックスが選択可能な態様で表示されるとともに、そのインク(Cインク)の大まかなインク残量を表す画像の上に、三角形と!印とを組み合わせた図形が上書き表示される。
【0043】
以上に説明したように、図3に示したインク残量管理処理では、操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行うと(ステップS104:yes)、その時点でインク残量が所定値以下に減少しているインクがなければ、図
4に示した態様で補充インク選択画面が表示され、逆に、インク残量が所定値以下に減少しているインクがあれば、図5に例示した補充インク選択画面が表示される(ステップS106)。そして補充インク選択画面が、図4に示した態様で表示されていた場合は、何れのインクのチェックボックスも選択可能な態様で表示されていないので、操作者は、画面の右下隅の「次へ」と表示されたボタン(以下、「次へ」ボタン)を選択する。これに対して補充インク選択画面が、図5に例示した態様で表示されていた場合は、操作者が補充しようと思ったインクのチェックボックスにチェックが入れられた後、画面の右下隅の「次へ」ボタンが選択される。もちろん、操作者が何れのインクも補充しようと思わなかった場合は、何れのインクのチェックボックスにもチェックが入れられることなく、「次へ」ボタンが選択されることになる。
【0044】
図3のインク残量管理処理では、図4または図5に例示した補充インク選択画面をモニター画面202に表示すると(ステップS106)、操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS108では「no」と判断されて、待機状態となっている。そして、操作者によって「次へ」ボタンが押されると、プリンタードライバー204のインク残量管理モジュールがこれを検出して(ステップS108:yes)、今度は、インクを補充するよう選択されたインク(補充インク選択画面のチェックボックスにチェックが入れられたインク)が存在するか否かを判断する(ステップS110)。その結果、操作者がインクを補充するとして選択したインクタンク(補充するインク)が存在している場合は(ステップS110:yes)、後述するインク補充処理を開始する(ステップS300)。
【0045】
これに対して、補充インク選択画面が、図4に示したようにインクを選択できない態様で表示された場合や、あるいは、図5に示したようにインクを選択可能な態様で表示されたが、何れのインクも選択されなかった場合には、ステップS110では、補充すべきインクが存在していないと判断する(ステップS110:no)。そして、この場合は、後述するインク補充処理は行うことなく、そのままインク残量管理処理の先頭に戻って、インクジェットプリンター100からインク残量を取得した後(ステップS100)、上述した一連の処理を繰り返す。
【0046】
以上では、印刷システム10の操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行った場合に(ステップS104:yes)、補充インク選択画面を表示する
処理について説明した。このように、操作者が所定の操作を行うことにより、インクジェットプリンター100から取得したインク残量の値にかかわらず、コンピューター200のモニター画面202に補充インク選択画面を開いて、何時でも大まかなインク残量を表示させることが可能である。これに対して、インク残量管理モジュールがインクジェットプリンター100から取得したインク残量が所定の下限値に達していると判断した場合は(ステップS102:yes)、以下に説明するインク残量修正処理を開始する(ステップS200)。まず、モニター画面に、大まかなインク残量を表示するための画面を自動的に表示する。以下では、このようなインク残量修正処理について説明する。
【0047】
B−1.インク残量修正処理 :
図6は、インク残量修正処理を示したフローチャートである。この処理は、上述したようにインク残量管理処理の中で、何れかのインクのインク残量が所定の下限値に達したと判断された場合(図3のステップS102:yes)に、プリンタードライバー204のインク残量管理モジュール(図2を参照のこと)によって実行される処理である。
【0048】
図6に示されるように、インク残量修正処理を開始すると、先ず初めに、コンピューター200のモニター画面202にインク残量確認画面を表示する(ステップS202)。ここで、インク残量確認画面とは、操作者に、インクタンク151のインク液面の位置を目視して、インクタンク内に実際に残っているインク残量を確認するように促す画面である。以下、インクタンク内に実際に残っているインク残量を実際のインク残量という。インク残量確認画面の詳細については後述する。
【0049】
また、操作者に、目視によって実際のインク残量を確認させているのは次のような理由によるものである。まず、プリンタードライバー204がインクジェットプリンター100から取得したインク残量は、インクジェットプリンター100の制御部140が印刷用のドットデータに基づいて計数したインクの噴射量(インク噴射量)と、噴射ヘッド112からクリーニングのために吸引されるインクの量とを加算して算出し、そのインク噴射量を累積することによって求めたインク残量である。しかし実際のインク噴射量は、インクジェットプリンター100が使用される環境(たとえば周囲の温度など)や、インクジェットプリンター100の個体差によって変動するので、計算上のインク噴射量には多少の誤差が含まれている。そして、この誤差が集積することで、計算によって求めたインク残量が、実際のインク残量と一致しないことも起こり得る。そこで、計算上のインク残量が下限値に達すると、実際にインクタンク151のインク液面が下限ラインまで下がっているか否かを操作者の目視によって確認することにより、実際のインク残量が下限値に達しているか否かを確認するのである。
【0050】
図7は、モニター画面202に表示されたインク残量確認画面を例示した説明図である。図示されているように、インク残量確認画面にも、図4あるいは図5を用いて前述した補充インク選択画面と同様に、Cインク、Yインク、Mインク、およびKインクのそれぞれについて、大まかなインク残量を示す画像が表示されている。そして、それぞれのインク残量を示す画像を確認することで、計算上のインク残量が下限値に達しているか否かを容易に知ることができるようになっている。たとえば、図中に表示されたCインクのインク残量を示す画像、およびYインクのインク残量を示す画像には、丸の中に×印を組み合わせた図形が上書きされており、これらインクのインク残量が下限値まで減少している(インクタンク151がほとんど空になっている)旨が示されている。また、Mインクのインク残量を示す画像には、三角形の中に!印を組み合わせた図形が上書きされている。これは、図5を用いて前述した補充インク選択画面と同様に、インクを補充可能なレベルまでインク残量が減少している旨を示す表示である。更に、Kインクのインク残量を示す画像には、何れの画像も上書きされておらず、このインクについては、インクを補充可能なレベルにまでインク残量が減少していない旨が示されている。
【0051】
また、これら各インクのインク残量を示す画像の下方には、四角いチェックボックスが表示されている。更に、インク残量を示す画像の上方には、「インクタンク151内に残っているインク量を確認して、まだ下限ラインまで減少していないインクがあれば、チェックボックスにチェックを入れる」ように操作者を促す旨が表示されている。図1を用いて前述したように、インクタンク151はタンクケース150内に収容されているが、タンクケース150には後述する確認窓が設けられている。このため、操作者は、それぞれのインクタンク151内のインク残量を容易に確認することが可能となっている。
【0052】
図8は、タンクケース150に設けられた確認窓152からインクジェットプリンター100を観た図である。確認窓152から、インクタンク151内の実際のインク残量を確認できる。図示されているように、タンクケース150の側面には大きな確認窓152が形成されており、タンクケース150内に収容されたCインクのインクタンク151C、Yインクのインクタンク151Y、Mインクのインクタンク151M、Kインクのインクタンク151Kを、操作者がそれぞれ目視できるようになっている。また、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kは、透明あるいは半透明な樹脂材料で形成されている。このため、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kに残ったインクの液面の位置を目視によって確認することが可能である。
【0053】
また、図8に示されているように、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kには、下限ライン153が表示されている。この下限ライン153は、図3に示したインク残量管理処理の中でインク残量について判断された「下限値」に対応している。すなわち、下限ライン153は、インクタンク151が満タンの状態からドットデータに基づいてインク噴射量を減算して行き、インク残量が下限値まで減少したときに、インクタンク151内のインクの液面がちょうど低下する位置に設定されている。すなわち、所定の環境で、標準のインクジェットプリンター100を使用したときに、インクタンク151に初めてインクボトルからインクボトル内の全てのインクが充填されたときの、インクタンクの実際のインク量に対応する制御部140でのインク残量(インク残量100%)から、インク噴射量を減算していき、インク残量が所定の下限値まで減少したときに、実際のインクタンク151のインクの液面が位置する箇所が下限ラインよりもわずかに上となるように設定されている。
【0054】
図9は、タンクケース150の確認窓152からインクタンク151内のインク液面の位置を確認する様子を示した説明図である。図中に示した破線は、タンクケース150内に収容されたインクタンク151を表している。上述したようにインクタンク151は、透明あるいは半透明な樹脂材料で形成されているから、インクタンク151内のインク液面の位置を目視で確認することができる。また、図中に一点鎖線で示されているように、確認窓152からはインクタンク151に設けられた下限ライン153も、目視によって確認することができる。従って、操作者は、それぞれのインクタンク151内のインク液面が、下限ライン153に達しているか否かを容易に確認することが可能である。
【0055】
尚、図9に示されるように、インクタンク151の下限ライン153は、インクタンク151の底面よりも少しだけ上の位置に設けられている。すなわち、インク液面が下限ライン153に達しても、そのインクタンク151内には、まだ一定量(Vrs)のインクが予備インクとして残っているように、下限ライン153の位置が設定されている。インクタンク151の下限ライン153が、このような位置に設定されている理由については、後ほど詳しく説明する。
【0056】
以上に説明したように本実施例では、インク残量管理モジュールが、制御部140が計算しているインク残量が所定の下限値まで低下したと判断すると、図7に例示するようなインク残量確認画面が表示され、そして、操作者は、確認窓152から各インクタンク151内のインク液面の位置が、下限ライン153に達しているか否かを確認する。その結果、計算上はインク残量が下限値まで低下している(すなわち、インク液面が下限ライン153に達しているものと思われる)が、実際には、インク液面がまだ下限ライン153に達していない場合には、図7の画面上で、対応するインクのチェックボックスにチェックを入れるようになっている。
【0057】
図7に示した例では、計算上のインク残量が下限値を下回っているのが、Cインクと、Yインクの2つのインクであり、これらインクについてのチェックボックスだけが、チェックを入れて選択可能な態様で表示されている。これに対して計算上のインク残量が下限値に達していないインク(MインクおよびKインク)については、チェックボックスが選択できない態様で表示されている。また、図9に示したように、CインクおよびYインクのうちのYインクについては、実際に確認したインク液面が下限ライン153に達していないとして、操作者によりチェックボックスにチェックが入れられている(図9を参照のこと)。このようにして操作者は、タンクケース150の確認窓152から各インクの液面の位置を目視によって確認し、その結果に応じてチェックボックスにチェックを入れた後、画面の下方に「次へ」と表示されたボタンをクリックする。
【0058】
すると、図6に示したインク残量修正処理では、「次へ」ボタンが押されたと判断する(ステップS204:yes)。また、図7のインク残量確認画面をモニター画面202に表示した後(ステップS202)、操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS204では「no」と判断されて、待機状態となっている。
【0059】
そして、「次へ」ボタンが押されたと判断すると(ステップS204:yes)、今度は、計算上のインク残量の修正が必要なインク(すなわち、図7のインク残量確認画面上でチェックボックスにチェックが入れられたインク)が存在するか否かを判断する(ステップS206)。その結果、インク残量の修正が必要なインクが存在している場合は(ステップS206:yes)、インクジェットプリンター100の制御部140に向かってコマンドを送信することにより、インク残量の修正を指示する(ステップS208)。制御部140はこの指示を受けて、対応するインクのインク残量を所定量だけ増加させる。こうすれば、計算上のインク残量と、インクタンク151に残っている実際のインク残量とにズレが生じた場合でも、計算上のインク残量を実際のインク残量に近づけることが可能となる。インク残量の修正が必要なインクが存在していない場合は(ステップS206:no)、インク残量を修正することなく、直ちに図6のインク残量修正処理を終了して、図3のインク残量管理処理に復帰する。
【0060】
尚、本実施例では、噴射ヘッド112のインク噴射量は実際よりも若干多めに見積もられており、従って、計算上のインク残量は、実際にインクタンク151内に残っているインクのインク残量よりも常に少なめとなるように設定されている。これは、まだインクが残っている段階から早めに補充インクの用意を促すことで、インク切れによって印刷が続行できない事態が発生することを確実に回避できるようにとの配慮に基づくものである。このことに対応して、図3に示したインク残量管理処理では、計算上のインク残量が所定の下限値に達した場合にだけ(図3のステップS102:yes)、インク残量修正処理を開始して、操作者に実際のインク液面を確認させることとしている。
【0061】
もっとも、計算上のインク残量が、インクタンク151内に残った実際のインク量よりも多くなってしまう場合も起こり得る。そこで、実際にはインク液面が下限ライン153まで低下しているにも拘わらず、図7のインク残量確認画面ではまだインク残量が下限値に達していないことになっている場合には、操作者が、計算上のインク残量をモニター画面202上から減少させることによって、計算上のインク残量を実際のインク残量に合わせられるようにしても良い。例えば、ユーザーが画面でバー表示されているインク残量のバーをクリック&ドラッグし、バーの高さを調整すればよい。
【0062】
ここで、本実施例のインクタンク151では、インク液面が下限ライン153に達しても、インクタンク151内に一定量(Vrs)の予備インクが残るような位置に、下限ライン153が設定されている理由について説明する。上述したように本実施例では、計算上のインク残量が下限値に達すると、操作者にインクタンク151のインク液面の位置を目視させることにより、実際のインク残量が本当に下限値に達したか否かを確認している。ほとんどの場合は、インク液面の位置を下限ライン153と比較することで、インク残量が下限値に達したか否かを容易に判断することができる。ところが、インク液面の位置と下限ライン153とが非常に接近している場合には、事情が若干異なったものとなる。
【0063】
図10は、インクタンク151内のインク液面の位置と下限ライン153とが非常に接近している場合を例示した説明図である。図示した例では、Cインク(紙面上で一番左のインクタンク151Cのインク)については、インク液面の位置と下限ライン153とが非常に接近しており、このような場合には、操作者がインクタンク151をインク液面よりも上方から観察するのか、下方から観察するのかによって、インク液面と下限ライン153との位置関係が逆転して見えることが起こり得る。あるいは、タンクケース150が僅かに傾いていたり、タンクケース150内でインクタンク151が僅かに傾いて搭載されていたりすると、実際にはインク液面が下限ライン153よりも下にあるのに、下限ライン153よりも上にあるように見えてしまう場合も起こり得る。更には、インク液面が下限ライン153にちょうど重なっている場合、操作者によって、チェックボックスにチェックを入れる場合と、チェックを入れない場合とが起こり得る。
【0064】
そして、実際にはインク液面が下限ライン153よりも下にあるにも拘わらず、操作者が、インク液面が下限ライン153よりも上にあると勘違いして、図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックを入れてしまうと、プリンタードライバー204からインクジェットプリンター100にコマンドが送信されて、そのインク(ここではCインク)についての計算上のインク残量が所定量だけ増加する(図6のステップS208)。その結果、インクジェットプリンター100の制御部140は、計算上のインク残量が再び下限値に達するまではインクタンク151(ここではインクタンク151C)にインクが残っていると判断して、噴射ヘッド112を駆動し続ける。そして、計算上のインク残量が再び下限値に達するまでの間に、インクタンク151内のインクが無くなってしまうと、噴射ヘッド112がインクを空打ちする状態となって、大きなダメージを被る場合が起こり得る。
【0065】
図9に例示したCインクのように、インク液面が下限ライン153よりも明らかに下にあるにも拘わらず、図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックを入れたのであれば、インク残量確認画面の指示に操作者が従わなかったのであるから、仮に噴射ヘッド112が大きなダメージを受けたとしても、仕方がない部分がある。しかし、図10に例示したCインクのように、操作者にはインク液面が下限ライン153よりも上にあるように見えたために、インク残量確認画面でチェックボックスにチェックを入れた場合には、操作者にしてみればインク残量確認画面の指示に従って操作したに過ぎない。それにも拘わらず、噴射ヘッド112がダメージを受けてしまうは大きな問題である。
【0066】
そこで、このような事態を避けるために、インクタンク151には下限ライン153よりも下方に一定量(Vrs)の予備インクが残るようになっている。そして、この予備インクのインク量は、操作者が図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックを入れた時に、インクジェットプリンター100の内部で増加するインク残量に相当するインク量(あるいは、そのインク量よりも少しだけ多いインク量)となっている。このため、インク液面が下限ライン153に非常に接近していた場合に、操作者が図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックを入れたとしても、予備インクが無くなる前に計算上のインク残量が下限値に達して、再びインク残量確認画面が表示される。そして、この段階では、インク液面が下限ライン153よりも明らかに下方に来ており、操作者が、インク残量確認画面のチェックボックスを誤ってチェックしてしまう虞はない。その結果、噴射ヘッド112が空打ちによって重大なダメージを受けることを回避することが可能となっているのである。
【0067】
以上のようにして、図7のインク残量修正処理でインク残量を修正した後(図7のステップS208)、図3のインク残量管理処理に復帰すると、コンピューター200のモニター画面202に補充インク選択画面が表示される(図3のステップS106)。すなわち、インク残量が下限値に達すると、操作者が操作することなく、自動的に図7のインク残量確認画面が表示され、操作者が画面の右下隅の「次へ」ボタンを選択すると、今度は補充インク選択画面が表示されることになる。
【0068】
図11は、インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面を例示した説明図である。図11に示した補充インク選択画面の基本的な構成は、図4あるいは図5を用いて前述した補充インク選択画面の構成と同様である。但し、図4あるいは図5に示した補充インク選択画面は、インク残量が下限値に達する前に、操作者が所定の操作を行うことによって表示される画面であることから、何れのインクについてもインク残量が下限値に達している旨の画像(丸の中に×印を組み合わせた図形の画像)が表示されることはない。これに対して、インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面では、図11に例示したように、インク残量が下限値に達している旨の画像が表示されることがある。これは、図7に例示したインク残量確認画面に従って、操作者が目視によってインク残量を確認した結果、インク液面が下限ライン153まで低下していたインクについてはインク残量が修正されることなく、補充インク選択画面が表示されるためである。
【0069】
図11に示した例では、Cインクについては図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックが入れられなかった結果、図11の補充インク選択画面においてもインク残量が下限値に達している旨を示す画像が表示されている。これに対してYインクについては、図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックが入れられた結果、図11の補充インク選択画面ではインク残量が下限値に達していないが、インクを補充可能である旨を示す画像(三角形に!印を組み合わせた図形の画像)に変更されている。
【0070】
そして、前述したようにインクジェットプリンター100の操作者が、図11の補充インク選択画面でチェックボックスにチェックを入れて、インクを補充するインクを選択した後、画面の右下隅に表示されている「次へ」ボタンを選択すると、インクを補充するためのインク補充処理(ステップS300)が開始されることになる。つまり、インク残量管理モジュールは、補充インク選択画面で操作者がインク補充をしたいインクのチェックボックスにチェックを入れて「次へ」ボタンが押されたと判断すると、インク補充モジュールを起動する。ここでは、操作者が補充インク選択画面で、CインクとMインクを選択したものとする。
【0071】
B−2.インク補充処理 :
図12は、インク補充処理のフローチャートである。この処理は、インク残量管理処理の中で、コンピューター200のプリンタードライバー204によって実行される処理である。具体的には、インク補充モジュールによって実行される。図示されるようにインク補充処理(ステップS300)を開始すると、先ず初めに、タンクケース150のロックを解除するコマンド(ロック解除コマンド)をインクジェットプリンター100に向かって送信する(ステップS302)。これは、次のような理由によるものである。
【0072】
図1に示したように、タンクケース150は、インクジェットプリンター100とは別体に構成されており、インクジェットプリンター100の側面に取り付けた状態で使用される。そして、通常時はインクジェットプリンター100から取り外せないようにロックされた状態となっている。しかし、タンクケース150がインクジェットプリンター100に取り付けられたままでは、タンクケース150内のインクタンク151にインクを補充することができない。そこで、インクを補充するに際しては、タンクケース150を取り外せるようにするために、コンピューター200からインクジェットプリンター100に向かってロック解除コマンドを送信する。インクジェットプリンター100の制御部140はロック解除コマンドを受け取ると、インクジェットプリンター100に内蔵された図示しないアクチュエーターを動かすことによって、タンクケース150のロック状態を解除する。その結果、操作者がタンクケース150を取り外せる状態となる。
【0073】
図13は、タンクケース150をインクジェットプリンター100から取り外した様子を示す説明図である。図13には、タンクケース150を取り外した後、インクジェットプリンター100に取り付けられていた側の面が上方を向くように、タンクケース150を回転させた状態が示されている。図示されているように、タンクケース150がインクジェットプリンター100に取り付けられる面には、4箇所に小さな突起154が立設されている。また、インクジェットプリンター100の面には、対応する位置に突起154の挿入孔109が設けられている。
【0074】
タンクケース150をインクジェットプリンター100に取り付ける際には、突起154の位置と挿入孔109の位置とを合わせて、突起154を挿入孔109に押し込むようにする。すると、突起154の先端に設けられた小さな貫通穴の部分が、挿入孔109の内部に設けられた図示しないロック機構に嵌合してロックされた状態となり、タンクケース150が取り付けられた状態となる。また、タンクケース150を取り外した状態では、タンクケース150の上面に設けられた上面カバー155を倒せるようになる。そして、上面カバー155を倒すと、図13に示したようにインクタンク151が現れる。その結果、それぞれのインクタンク151の側面に表示された上限ライン157を目視によって確認することが可能になる。更に、図13に示すようにタンクケース150を回転させた状態で上面カバー155を倒すことによって、インクタンク151の上面側に設けられたキャップ156を容易に取り外すことが可能となる。
【0075】
コンピューター200のプリンタードライバー204は、こうしてインクジェットプリンター100にロック解除コマンドを送信することによってタンクケース150のロック状態を解除したら(図12のステップS302)、今度は、コンピューター200のモニター画面202上にインク補充画面を表示する(ステップS304)。
【0076】
図14は、モニター画面202に表示されたインク補充画面を例示した説明図である。図示されているように、インク補充画面には、タンクケース150を取り外して、インクタンク151のキャップ156(図13参照)からインクを補充するように促す旨が表示されている。また、表示の下方には、インクを補充する際の注意事項として、後述するインクボトル160のインクをすべて補充してインクボトル160内にインクが残らないように注意することや、インクタンク151に設けられた上限ライン157(図13参照)をインク液面が超えないように注意するといった内容が表示されている。
【0077】
図15には、補充用のインクが収容されたインクボトル160が示されている。インクボトル160は、気密性や遮光性に優れた樹脂材料で形成された略円筒形状の容器であり、容器の頂部にはキャップ162が設けられている。また、インクボトル160の側面には、紙製のラベル164が貼付されており、このラベル164の外側には、後述するインクID番号が印刷されている。
【0078】
本実施例のインクボトル160は、キャップ162がインクボトル160に固着した状態で取り付けられており、この状態ではインクボトル160の内部が気密な状態に保たれている。インクを補充する際には、キャップ162をねじ切るようにして取り外すと、中から細長い注ぎ口が現れる。そこで、図13に示したようにタンクケース150を取り外した後、インクタンク151毎に設けられたキャップ156を空けて、インクボトル160内のインクを注入する。
【0079】
ここで、インクボトル160内のインク量は、インクタンク151のインク液面が下限ライン153まで低下した状態でインクボトル160内の全てのインクを注入すると、インクタンク151がほぼ満タンとなり、インク液面が上限ラインを超えないようなインク量に設定されている。更に、インクボトル160のキャップ162はインクボトル160に固着されているだけなので、インクボトル160から一旦取り外してしまうと、再びキャップ162を取り付けることができないようになっている。このため、図14に示したインク補充画面で表示されるインクボトル160内の全てのインクを補充する旨の注意事項に従って、操作者は自然と、インクボトル160内のインクを全てインクタンク151内に補充するようになる。
【0080】
このようにして、補充が必要な全てのインクを補充し終わったら、操作者は、図14のインク補充画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンを選択する。すると、図12のインク補充処理では、インク補充モジュールが「次へ」ボタンが押されたものと判断して(ステップS306:yes)、補充したインクのインクID番号を入力するよう促す画面を、モニター画面202上に表示する(ステップS308)。また、図14のインク補充画面を表示した後(ステップS302)、操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS306では「no」と判断されて、待機状態となっている。
【0081】
図16は、モニター画面202に表示されたインクID番号の入力画面を例示した説明図である。図示されているように、インクID番号の入力画面には、前述した補充インク選択処理で補充が必要と判断されたインク(操作者がインクを補充することを選択したインク)について、インクID番号を入力可能な状態で入力欄が表示されている。図16に示した例では、CインクおよびMインクの入力欄が、インクID番号を入力可能な状態で表示されている。また、補充が不要と判断されたインク(ここでは、YインクおよびKインク)については、インクID番号を入力できない状態で入力欄が表示されている。そこで、操作者は、インクボトル160のラベル164を確認して、ラベル164の外側に印刷されているインクID番号を入力した後、画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンをクリックする。
【0082】
すると、図12に示したインク補充処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判断して(ステップS310:yes)、入力されたインクID番号を読み取った後(ステップ
S312)、読み取ったインクID番号が適正であるか否かを判断する(ステップS314)。インクID番号は、複数の数字やアルファベットで構成された一見すると意味のないコードであるが、インクの種類(色)や、インクボトル160に充填された日時(秒単位まで含む)や、使用可能なインクジェットプリンター100の機種などの情報が含まれた一種の暗号データとなっている。そして、特定の鍵データを用いて解読した場合にだけ、これらの情報を復号して取得することが可能となる。
【0083】
プリンタードライバー204がコンピューター200にインストールされる際に、この鍵データはコンピューター200内のROMに記憶されており、インクID番号を読み取ると、鍵データを用いて解読する。その結果、正常に解読が完了して、得られた各種の情報(たとえばインクの種類や、インクジェットプリンター100の機種など)が正しければ、インクID番号が適正であると判断することができる。これに対して、インクID番号を解読できなかった場合や、一応解読はできたものの、たとえばインクの種類やインクジェットプリンター100の機種が実際とは違っているなどのように、解読によって得られた各種の情報が矛盾している場合には、そのインクID番号は適正でないと判断することができる。図12に示したインク補充処理のステップS314では、このようにして、インクID番号が適正であるか否かを判断する。また、詳細には後述するが、たとえ適正なインクID番号であっても、一度使用されたことのあるインクID番号が再び入力された場合には、そのインクID番号は適正でないと判断される。
【0084】
その結果、入力されたインクID番号が適正ではないと判断した場合は(ステップS314:no)、インクID番号の再入力を促す画面を、モニター画面202上に表示した
後(ステップS316)、再び、「次へ」ボタンが押されたか否かを判断する処理(ステップS310)を繰り返すことによって待機状態となる。
【0085】
図17は、モニター画面202上でインクID番号の再入力を促すために表示される画面(再入力画面)を例示した説明図である。図示されているように再入力画面には、先に入力されたインクID番号に加えて、そのインクID番号が適正であるか否かについての判断結果が表示されている。たとえば、図17に示した例では、Cインクについて入力したインクID番号は適正と判断されているが、MインクについてのインクID番号は適正でないと判断されている。そこで、操作者は、適正でないと判断されたMインクのインクID番号を再度入力した後、再び「次へ」ボタンをクリックする。すると、プリンタードライバー204は「次へ」ボタンが押されたと判断して(図12のステップS310:yes)、再入力されたインクID番号を読み取った後(ステップS312)、インクID番号が適正か否かを判断する(ステップS314)。
【0086】
その結果、全てのインクID番号が適正であると判断したら(ステップS314:yes)、今度は、適正と判断されたインクID番号を、使用済みID番号として、コンピューター200のROMに記憶する(ステップS316)。こうして記憶された使用済みID番号は、次回以降にインクID番号が適正であるか否かを判断するステップS314の処理で参照されて、入力されたインクID番号が正しく解読できて、尚且つ、解読された内容に矛盾がなくても、使用済みID番号に記憶されていた場合には、そのインクID番号は適正でないと判断されるようになっている。
【0087】
続いて、プリンタードライバー204は、インクジェットプリンター100の制御部140に向かってコマンドを送信することにより、インクジェットプリンター100の制御部140が計数している計算上のインク残量を、満タン状態に初期化させる(ステップS320)。図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140は、計算上のインク残量が下限値に達すると、噴射ヘッド112でインクを噴射する動作を停止してしまうが、こうしてプリンタードライバー204からコマンドを送信して、計算上のインク残量を初期化することにより印刷を再開することが可能となる。このように、入力されたインクID番号が適正であった場合にだけ、インク残量を初期化することが可能となることから、インクID番号は、本発明における「初期化データ」に対応するものとなっている。
【0088】
以上のようにして、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されている計算上のインク残量を復帰させたら、今度は、インクの補充が完了した旨を報知する画面(補充完了画面)をモニター画面202上に表示する(ステップS322)。図18には、コンピューター200のモニター画面202上に表示された補充完了画面が例示されている。こうして補充完了画面を表示したら、図12に示したインク補充処理を終了して、図3のインク残量管理処理に一旦復帰した後、インク残量管理処理の先頭に戻って、上述した一連の処理を繰り返す。
【0089】
以上に説明したように本実施例の印刷システム10では、噴射ヘッド112から噴射したインク量に基づいて、インクジェットプリンター100の制御部140がインク残量を計数している。そして、コンピューター200のプリンタードライバー204は、上述のインク残量管理処理を実行しながら、インクジェットプリンター100からインク残量を取得することによって、インクタンク151内のインク残量を監視している。その結果、計算上のインク残量が少なくなると、図12のインク補充処理を行うことによって、操作者にインクを補充させる。しかも、計算上のインク残量が下限値に達した場合には、図6のインク残量修正処理を行うことによって、インクタンク151内に残っている実際のインク量を操作者に確認させ、実際にはまだインクが残っている場合には計算上のインク残量を所定量だけ増加させることで、計算上のインク残量を実際のインク残量に近づけている。このため、インクタンク151にインクボトル160からインクを補充する方式を採用しているにも拘わらず、性状が適切でないインクが補充されて噴射ヘッド112内で目詰まりが発生することを回避することが可能となっている。以下では、この点について説明する。
【0090】
先ず、図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140はドットデータに基づいてインク残量を計数しており、計数したインク残量が下限値に達すると、噴射ヘッド112でインクを噴射する動作を停止してしまう。従って、印刷を継続するためには、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されているインク残量を初期化する必要があり、そのためには、インクタンク151にインクを補充する必要がある。そして、操作者がインクを補充すると、補充したインクのインクID番号を入力する画面がモニター画面202上に現れる。入力したインクID番号はプリンタードライバー204によって適正か否かが判断されて、インクID番号が適正であった場合にだけ、インク残量が初期化されて、再び噴射ヘッド112からインクを噴射可能となる。すなわち、インクタンク151にインクを補充しても、適正なインクID番号を入力しなければ、インクタンク151内のインクを噴射ヘッド112から噴射することができないようになっている。
【0091】
そして、前述したようにインクID番号は、複数の数字やアルファベットが一見無意味に並んだ一種の暗号データとなっているので、インクボトル160のラベル164に印刷されたインクID番号を見て入力するのでない限り、適切なインクID番号を入力することは事実上不可能である。その結果、操作者は、自然と、純正品(あるいはインクジェットプリンター100のメーカー推奨品)のインクボトル160を購入することになる。もちろん、一度購入した純正品のインクボトル160のインクID番号が何度も使用されたのでは、適正でない性状のインクが補充されることを回避することができない。しかし、一度適正であるとして受け付けられたインクID番号は、使用済みのID番号として記憶され、次にそのインクID番号が入力された時には、適正でないインクID番号と判断される。このため、インクを補充する際には、必ず新たに購入された純正品(あるいはメーカー推奨品)のインクボトル160からインクが補充されることになるので、適正でない性状のインクが噴射ヘッド112に供給されて、噴射ヘッド112を目詰まりさせてしまうことを回避することが可能となる。
【0092】
また、図4および図5を用いて前述したように、本実施例の印刷システム10では、インクタンク151内のインク液面が下限ライン153まで低下すると初めて、補充するインクを選択する画面がモニター画面202上に表示される(図5参照)。そして、インクボトル160内の全てのインクをインクタンク151に補充すると、インクタンク151のインク液面が、下限ライン153から上限ライン157のほぼ手前まで来るように、インクボトル160のインク収容量が設定されている。このため操作者は、インクを補充する際には自然と、インクボトル160内のインクを全て補充するようになる。しかも図14に例示したように、モニター画面202上では、インクボトル160内の全てのインクを補充する旨が表示されるので、インクボトル160内にインクを少し残すようなことはない。
【0093】
加えて、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されている計算上のインク残量が下限値に達すると、図7に例示したインク残量確認画面が表示されて、インクタンク151のインク液面の位置が下限ライン153に達しているか否かを、操作者が確認する。そして、インク液面がまだ下限ライン153に達していない場合は、計算上のインク残量を所定量だけ増やすように修正する。このように、インクタンク151にインクが残っている場合には、計算上のインク残量を所定量だけ増やすことによって印刷を継続することができる。このため、インクタンク151内に多くのインクが残っている状態で、インクが補充されることがない。換言すれば、インクタンク151内のインクがほとんど無くなった後に、インクが補充されることになる。
従って、インクボトル160内のインクを、すべてインクタンク151に補充することが可能となる。
【0094】
仮に、インクボトル160内のすべてのインクを補充する前に、インクタンク151が一杯になったために、インクボトル160内にインクが残ってしまったとする。前述したように、純正品のインクボトル160であっても、一旦開封すると、インクボトル160内のインクの性状は、時間の経過とともに劣化が進行する。従って、一旦開封された後、インクボトル160内に残ったインクが補充されると、噴射ヘッド112の内部を目詰まりさせてしまう虞がある。しかし、上述したように、本実施例の印刷システム10では、操作者がインクを補充する際に、インクボトル160内にインクを残すことはない。このため、インクボトル160が一旦開封されたため、インクボトル160内でインクの劣化が進んだために、噴射ヘッド112内が目詰まりするような事態を回避することができる。
【0095】
加えて、上述したように、一度入力されて受け付けられたインクID番号は使えないので、次回の補充の際には必ず新たなインクボトル160が購入され、そして、そのインクボトル160内のインクを全て投入すると、インクタンク151内のインク液面はほぼ上限ライン157に達してしまう。しかも図14に例示したように、モニター画面202上では、インクタンク151内のインク液面が上限ライン157を超えないように注意する旨が表示されている。このため、たとえ、古いインクボトル160内にインクが少し残っていたとしても、その古いインクがインクタンク151に補充されて、噴射ヘッド112内を目詰まりさせてしまうことを回避することが可能となる。
【0096】
尚、1本目のインクボトル160のインクをすべて補充してもインクタンク151が満杯状態とならなかったために、2本目のインクボトル160を開封して補充される事態が発生したとする。この場合、当然、2本目のインクボトル160にはインクが残ってしまう。そして、インクID番号は、1本目のインクボトル160に添付されていたインクID番号を入力すればよいので、2本目のインクボトル160のインクID番号が使用されることはない。従って、次回のインク補充時に、2本目のインクボトル160に残っていたインクが補充されて、2本目のインクボトル160のインクID番号が入力されると、結果的に、性状の劣化したインクが供給されて、噴射ヘッド112を目詰まりさせてしまう虞が生じる。本実施例では、こうした事態を回避するために、インクタンク151にインクを補充可能となるインク残量(図5の補充インク選択画面でチェックボックスを選択可能となるインク残量)、インクタンク151の上限ライン157の位置、およびインクボトル160に収容されているインク量が、次の関係となるように設定されている。
【0097】
先ず、図5の補充インク選択画面でチェックボックスを選択可能となるインク残量(以下では、このインク残量を「補充可能インク残量R」と呼ぶものとする)は、図7に示したインク残量確認画面で選択されたインク(インク液面が下限ライン153に達していないインク)について、インク残量が増加する分と同じインク残量(以下では、このインク残量を「増分インク残量dI」と呼ぶものとする)に設定されている。これは、次のような理由によるものである。
【0098】
図19は、インクタンク151にインクを補充可能となるインク残量(補充可能インク残量R)が、インク液面が下限ライン153に達していないインク残量を増加させる分量(増分インク残量dI)と同じに設定されている理由を示す説明図である。たとえば、あるインク(ここではCインクとする)についての計算上のインク残量が下限値に達したときのインク液面が、図19(a)に示す状態であったとする。すなわち、計算上のインク残量が下限値に達したインク(ここではCインク)のインク液面は、ほんの僅かだけ下限ライン153の上にあり、そして、そのインクよりも少しだけ計算上のインク残量が多いインク(ここではYインク)が存在していたとする。この場合、Cインクのインク液面は下限ライン153よりも上にあるので、操作者は、図7のインク残量確認画面のチェックボックスにチェックを入れたとする。すると、Cインクについての計算上のインク残量は、増分インク残量dIだけ増加する。
【0099】
そして、そのまま印刷が継続されると、今度は、Yインクについての計算上にインク残量が下限値に達して、インク残量確認画面が表示される。当然、Cインクのインク液面は、前回に確認したときよりも低下しているから、下限ライン153よりも下にある。従って、操作者は、Cインクを補充しなければならないと考えるものである。しかし、前回にインク液面を確認した際にCインクのインク残量が増やされているので、計算上のインク残量はまだ下限値に達していない。すなわち、実際のインク液面の位置を確認して、計算上のインク残量を増やしている関係上、計算上のインク残量が下限値に達していなくてもインクを補充できるようにしておく必要がある。そして、最も厳しい条件としては、計算上のインク残量を増やした直後にインクを補充する場合を想定すればよい。結局、計算上のインク残量が、下限値から増やされた直後のインク残量(下限値よりも増分インク残量dIだけ多い状態)である場合でも、インクを補充可能としておけばよい。すなわち、補充可能インク残量R(インクが補充可能となるインク残量)を、下限値に増分インク残量dIを加えたインク残量と同じあるいは、より大きな値に設定しておけばよいことになる。尚、図10を用いて前述したように、増分インク残量dIは、インクタンク151の予備インク(下限ライン153よりも下にあるインク)のインク量(Vrs)に対応するインク残量となっている。
【0100】
また、以上の説明では、補充可能インク残量Rは、下限値のインク残量に増分インク残量dIを加えた値と同じ、もしくはより大きな値に設定しておけばよいものとして説明した。しかし本実施例の補充可能インク残量Rは、下限値に増分インク残量dIを加えた値に設定されている。これは、次のような理由によるものである。
【0101】
先ず、理想的な状態として、インク残量が下限値に達した時点でインクボトル160からインクが補充されたものとする。この場合、インクを補充する時点でインクタンク151に残っているインク量は、インク液面が下限ライン153にある時のインク量であるから、予備インクのインク量Vrsとなる。従って、インク補充後のインクタンク151内のインク量は、予備インクのインク量Vrsに、インクボトル160に収容されているインク量を加えたインク量となる。次に、インクを補充する時点でインクタンク151のインク量が最も少ない状態は、予備インクを使い切った状態である。従って、この場合は、インク補充後のインクタンク151内のインク量は、理想的な状態よりも、予備インクのインク量Vrsだけ少ないインク量となる。一方、インクを補充する時点でインクタンク151のインク量が最も多い状態は、計算上のインク残量が補充可能インク残量Rに達した直後の状態である。従って、この場合は、インク補充後のインクタンク151内のインク量は、理想的な状態よりも、補充可能インク残量Rに相当するインク量だけ多いインク量となる。尚、厳密には、計算上のインク残量である補充可能インク残量Rと、実際のインク量とのバラツキも考慮しなければならないが、ここでは無視できるものとして省略している。
【0102】
ここで、インクボトル160のインクをすべて補充しても、インクタンク151のインク液面が上限ライン157を超えないようにする必要がある。従って、上限ライン157は、理想的な状態(すなわち、インク液面が下限ライン153に達した時点でインクが補充された状態)でインク液面がくる位置よりも、補充可能インク残量Rに相当するインク量の分だけ上の位置に設けておく必要がある。一方、インク補充後のインク液面は、理想的な状態のインク液面よりも、予備インクのインク量Vrsに相当する分だけ下に来る場合も起こり得る。この場合、インクボトル160のインクをすべて補充しても、インク液面は上限ライン157よりも下に来る。そしてこの差は、補充可能インク残量Rに相当するインク量と予備インクのインク量Vrsとを加えたインク量に相当する。この差があまりに大きくなると、1本目のインクボトル160を補充しても、これだけでは足らないと、操作者が考えて、2本目のインクボトル160からインクを補充してしまう事態が起こり得る。こうした事態を回避するためには、補充可能インク残量Rをできるだけ小さな値にしておく必要がある。本実施例では、このような理由から、補充可能インク残量Rの値が、取り得る範囲の中で最も小さな値(すなわち、増分インク残量dIと同じ値)に設定されているのである。
【0103】
(第2の実施形態)
以下では、下の順序に従って本発明の第2の実施形態による実施例を説明する。
C.装置構成:
C−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造:
C−2.本実施例の印刷システムの構成:
D.インク残量管理処理:
D−1.インク残量修正処理:
D−2.インク補充処理:
【0104】
C.装置構成
C−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造 :
図20は、第2実施形態による実施例の構成を示す説明図であり、特にタンクケース150の部分を説明する図である。
第1の実施形態と第2の実施形態の違いは下の通りである。
図20に示すように、第2の実施形態のインクタンク151は、第1の実施形態によるインクタンク151に設けられた下限ラインがない。その代わり、操作者がインクタンク151内に残っている実際のインクの残量の確認をするときに、インクの液面の位置(すなわち、インク残量に相当する)を公知の測定道具で確認させる。具体的には、物差しの目盛りで測定する。そして、第2の実施形態のインクジェットプリンターはインクタンク内に収容されている実際のインク残量測定のための物差しを収容する物差し収容部を有する点、タンクケースをインクジェットプリンターへ固定する構成が異なる。
その他の点は、第1の実施形態と同じである。以下の説明では、第1の実施形態と共通の装置構成と、D.インク残量管理処理については説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成と処理について説明する。
なお、第2の実施形態を説明する図において、第1の実施形態と同じ構成には同じ参照番号が付されている。
【0105】
図20に示されているように、タンクケース150の側面には大きな確認窓(開口)152が形成されており、タンクケース150内に収容されたCインクのインクタンク151C、Yインクのインクタンク151Y、Mインクのインクタンク151M、Kインクのインクタンク151Kをそれぞれ目視できるようになっている。また、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kは、透明あるいは半透明な樹脂材料で形成されている。このため、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kに残ったインクの液面Lvの位置(すなわちインクの残量)を目視によって確認することが可能である。
【0106】
図20に示すように、インクジェットプリンター100とタンクケース150が平面PFに置かれている。この状態で後述する物差し収容部に収容された物差し300を取り出して、物差し300の一端を平面PFに押しあて、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kに残っているインクの液面に対応する物差しの目盛り310を確認することで、インクタンク151の水位Lvを定量的に確認することができる。
これにより、第1の実施形態の下限ライン相当のインク残量の位置を確認することができる。なお、本実施例では、インクタンクの水位Lvの定量的確認に必要とされる精度を考慮して、10mm間隔で目盛り210が設けられている。本実施形態では、平面PFから20mmの位置を第1の実施形態の下限ラインに相当する位置とする。操作者は、物差しでインク水位Lvを測定することにより、制御部140で計数しているインク残量を修正する必要があるか、また、インクタンク151にインクを補充する必要があるかどうかを判断することができる。
【0107】
<物差し収容部とタンクケースのインクジェットプリンターへの固定>:
図21は、インクジェットプリンター100にタンクケース150を固定する構成を示した説明図である。図21には、タンクケース150を取り外した後、インクジェットプリンター100に取り付けられていた側の面が上方を向くように、タンクケース150を回転させた状態が示されている。図示されているように、タンクケース150がインクジェットプリンター100に取り付けられる面には、タンクケース150の上面側の2箇所にフック158が立設されている。また、インクジェットプリンター100の側面(タンクケース150が取り付けられる面)には固定カバー170が設けられており、固定カバー170には、フック158に対応する位置に固定部172が設けられている。
【0108】
固定カバー170には、底部178と底部178の外周から立設する壁部177によって凹部179が形成されており、この凹部179が物差し300を収容する「物差し収容部」として機能する。したがって、この凹部179を物差し収容部179ともいう。壁部177の一方の固定部172に隣接する位置には物差し300を物差し収容部179に案内する案内開口176が設けられている。この案内開口176によって、物差し300を物差し収容部179に収容し、物差し収容部179から物差し300を取り出すことができる。なお、図21に示されているとおり、物差し300の全部が物差し収容部179に収容されている必要はなく、物差し300の一部が物差し収容部179からはみ出していても、物差し300の姿勢が安定していればよい。
【0109】
次に、インクジェットプリンター100へのタンクケース150の固定について説明する。タンクケース150をインクジェットプリンター100に固定する際には、フック158が固定部172の少し上に来るようにタンクケース150を持ち上げておき、ここからインクジェットプリンター100が載置されている平面PFの方向にタンクケース150を降下させる。こうすると、上からフック158が固定部172に嵌合し、タンクケース150がインクジェットプリンター100に取り付けられる。
【0110】
こうしてインクジェットプリンター100にタンクケース150が取り付けられた状態で印刷を行っているうちに、インクタンク151内のインクの残量が少なくなった場合には、第1の実施形態と同様に、インク残量管理モジュールのガイドに従って、インクタンク151にインクを補充する。先ず、タンクケース150を持ち上げて固定カバー170から取り外し、図21に示すように、インクジェットプリンター100側の面が上を向くようにタンクケース150を倒す。すると、タンクケース150の上面に設けられた上面カバー155が倒されて、インクタンク151の上面側に設けられたキャップ156が取り外しやすくなるので、キャップ156を取り外し、インクタンク151内にインクボトル160からインクを補充する。
【0111】
図22は、インクジェットプリンター100を平面PFに載置している状態でのタンクケース150のフック158と固定カバー170の固定部172とが嵌合する部分の拡大図である。図示されるように、本実施例のインクジェットプリンター100では、タンクケース150とインクジェットプリンター100とを地面に置いた状態で、タンクケース150のフック158の付け根の位置が固定カバー170の固定部172の先端の位置よりも少し高くなるようになっている。従って、インクジェットプリンター100を地面に載置した状態ではタンクケース150が地面に自立するようになっており、これにより、ほとんどの時間(インクジェットプリンター100が平面PFに置かれている時間)はタンクケース150の重みが固定カバー170に掛からないようになっている。従って、固定カバー170を介してインクジェットプリンター100にタンクケース150の重みがかかり続けることで、クリープ(creep)によってインクジェットプリンター100に亀裂が入ることを防ぐことができる。
【0112】
C−2.本実施例の印刷システムの構成:
第2実施形態のインクジェットプリンターを用いた印刷システムの構成は、第1の実施形態と共通であるので、説明を省略する。
【0113】
D.インク残量管理処理:
D−1:インク残量修正処理:
第2の実施形態におけるプリンタードライバー204が実行するインク残量処理は第1の実施形態の図3、図6のフローチャートに示した処理と同一であるが、第1の実施形態では、操作者に実際のインク残量の確認を促すときにインクタンク151に収容されているインク残量がインクタンク151の下限ラインに対してどの位置にあるかにより確認することを促していたのに対し、第2の実施形態では物差しを利用して実際のインク残量の確認を促す。これにより、第2の実施形態では、S202で表示するインク残量確認画面が異なる。図23は、第2の実施の形態によるモニター画面202に表示されるインク残量確認画面を例示した図である。インク残量を大まかに示す画像の表示、インク残量を示す画像の下に□のチェックボックスが表示される点は第1の実施形態と同様である。インク残量を示す画像の上に示されるメッセージは次の通りである。「タンク内に残っているインクの量を確認してください。もし、インク水位がインクタンクの底から20mm以上であるときにはチェックボックスにチェックを入れてください。インクの量の確認のため、プリンターに同梱されている物差しを使ってください。」
【0114】
第1の実施形態の下限ラインによってインクレベルを確認していたことにかえて、第2の実施形態では物差しによってインクレベルを確認する点のみがことなり、後の処理や効果は第1の実施の形態と同一である。
また、インク補充処理において、第1実施例では、まず、「タンクケースのロック解除」処理をしたが、第2実施例ではこのステップは省略される。
【0115】
D−2:インク補充処理:
第2実施形態におけるインク補充処理は、第1実施形態のインク補充処理と共通であるため、説明を省略する。
【0116】
E.変形例 :
上述した第1の実施形態および第2の実施形態の印刷システム10では、プリンタードライバー204がコンピューター200上で、図3のインク残量管理処理を実行するものとして説明した。しかし、インクジェットプリンター100にも、CPUやRAM、ROMによって構成される制御部140や、モニター画面104、操作ボタン105などが設けられていることから、インクジェットプリンターの制御部140がインクジェットプリンター100上で、図3のインク残量管理処理を実行するようにしても良い。
【0117】
第2実施形態の公知の測定道具として、目盛りがふられた物差しとして説明したが、測定道具は物差しに限定されない。例えば、平面PFから下限ラインに相当する高さを持つ物体であればよく、ブロックなどでもよい。
【0118】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1…印刷用紙、 10…印刷システム、 100…インクジェットプリンター、101…給紙トレイ、 102…排紙口、 103…前面カバー、103…排紙口、 104…モニター画面、 105…操作ボタン、109…挿入孔、 110…キャリッジ、 112…噴射ヘッド、117…インクチューブ、 120…負圧ポンプ、 122…キャップ、124…負圧チューブ、 130…ガイドレール、 140…制御部、150…タンクケース、 151…インクタンク、 152…確認窓、153…下限ライン、 154…突起、 155…上面カバー、156…キャップ、 157…上限ライン、 160…インクボトル、162…キャップ、 164…ラベル、 200…コンピューター、202…モニター画面、 204…プリンタードライバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からインクを補充可能なインクタンクと、該インクタンクから供給されたインクを噴射する噴射ヘッドとを備え、該インクタンクから該噴射ヘッドに供給されたインク量の計数値が所定の限界値に達すると該噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する機能を有する印刷装置の動作を、コンピューターを用いて制御するためのプログラムであって、
前記インク量の計数値が前記限界値に達したか否かを少なくとも判別可能な情報を、前記印刷装置から取得する第1の機能と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達した場合には、前記インクタンク内のインク量を確認するように前記印刷装置の操作者を促す所定の確認画像を表示する第2の機能と、 前記確認画像を表示した後、前記印刷装置の操作者の選択に応じて、前記インク量の計数値を初期化する初期化動作、あるいは該計数値を前記限界値から所定値だけ戻す修正動作を前記印刷装置に行わせる第3の機能と
を、コンピューターを用いて実現するためのプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムであって、
前記インクタンクは、該インクタンク内のインク液面の位置が前記印刷装置の操作者の目視可能に形成され、
前記第2の機能は、前記確認画像として、前記インクタンク内のインク液面の位置により、前記インクの補充の要否を判断するように、前記操作者を促す画像を表示する機能であり、
前記第3の機能は、前記操作者が前記インクを補充する旨を選択した場合には前記印刷装置に前記初期化動作を行わせ、該印刷装置の操作者が前記インクを補充しない旨を選択した場合には該印刷装置に前記修正動作を行わせる機能であるプログラム。
【請求項3】
請求項1に記載のプログラムであって、
前記インクタンクは、該インクタンク内のインク液面の位置が目視可能に形成されるとともに、該インク液面の位置と比較することによって前記インクの補充の要否を判断可能な下限ラインが表示されたインクタンクであり、
前記第2の機能は、前記確認画像として、前記インクタンク内のインク液面の位置と前記下限ラインとを比較することによって前記インクの補充の要否を判断するように、前記印刷装置の操作者を促す画像を表示する機能であり、
前記第3の機能は、前記印刷装置の操作者が前記インクを補充する旨を選択した場合には前記印刷装置に前記初期化動作を行わせ、該印刷装置の操作者が前記インクを補充しない旨を選択した場合には該印刷装置に前記修正動作を行わせる機能であるプログラム。
【請求項4】
請求項2に記載のプログラムであって、
前記インクタンクは、前記下限ラインの下方にも所定量のインクが予備インクとして収容されているインクタンクであり、
前記第3の機能は、前記修正動作として、前記印刷装置内の前記インク量の計数値を、前記予備インクのインク量に相当する計数値だけ前記限界値から戻す動作を、該印刷装置に行わせる機能であるプログラム。
【請求項5】
請求項1に記載のプログラムであって、
前記印刷装置は、複数の前記インクタンクと、該インクタンク毎に設けられた前記噴射ヘッドと、該インクタンク毎に計数した前記インク量が前記限界値に達すると該インクタンク毎にインクの噴射を停止する機能とを備えており、
前記第1の機能は、前記インク量の計数値が前記限界値に達したか否かを、少なくとも前記インクタンク毎に判別可能な情報を取得する機能であり、
前記第2の機能は、前記インク量の計数値が前記限界値に達した前記インクタンクについて、前記確認画像を表示する機能であり、
前記第3の機能は、前記確認画像が表示された前記インクタンクについて、前記印刷装置の操作者の選択に応じて前記インクタンクごとに、前記初期化動作または前記修正動作を前記印刷装置に行わせる機能であるプログラム。
【請求項6】
外部からインクタンクに補充されたインクを、噴射ヘッドを用いて噴射する印刷部と、該印刷部の動作を制御する制御部とを備える印刷システムであって、
前記制御部は、
前記印刷部で前記インクタンクから前記噴射ヘッドに供給されたインク量を計数するインク量計数手段と、
前記インク量の計数値が所定の限界値に達すると、前記噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する噴射停止手段と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達すると、前記インクタンク内のインク量を確認するように前記印刷システムの操作者に促す所定の確認画像を表示する確認画像表示手段と、
前記確認画像を表示した後、前記印刷システムの操作者の選択に応じて、前記インク量の計数値を初期値まで戻すか、あるいは該計数値を前記限界値から所定値だけ戻す動作を行う計数値変更手段と
を備えている印刷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−66563(P2012−66563A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4591(P2011−4591)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】