説明

印刷システム、印刷装置およびコンピュータープログラム

【課題】プリンターが不適切な印刷を継続することを防止する技術を提供する。
【解決手段】ホスト装置100と、ホスト装置100に接続されて印刷を行なうプリンター200とを備える印刷システムPSであって、ホスト装置100は、PDLデータをプリンター200に出力するPDLデータ生成部113と、縮小イメージを生成する縮小イメージ生成部113とを備え、プリンター200は、ホスト装置100から出力されたPDLデータに基づいて印刷を実行する印刷実行部と、PDLデータから、印刷イメージを生成する印刷イメージ生成部215と、縮小イメージと印刷イメージとを比較し、両イメージの相関を判定するイメージ比較部216と、両イメージの相関があると判定した場合には、印刷実行部を制御して印刷を行なわせる印刷制御部とを備えた印刷システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューターに接続された印刷装置により印刷を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターから印刷装置にデータを送って印刷する際、コンピューターと印刷装置とは、印刷しようとする対象を表現する取り決めを共有している必要がある。このため、通常、コンピューターには、プリンターの種類に対応したプリンタードライバが組み込まれる。主に文字を扱うワードプロセッサや画像を扱うグラフィックスソフトなど、各種のアプリケーションプログラムから、印刷を実行すると、アプリケーションプログラムからは印刷対象を表現する印刷データがプリンタードライバに渡される。プリンタードライバーは、この印刷データを、印刷を行なう印刷装置であるプリンターが処理可能なデータ(以下「印刷ジョブデータ」と呼ぶ)に変換して出力する。
【0003】
従って、接続されているプリンターとプリンタードライバーとが不一致の場合や、コンピューターから出力されたデータの一部が、ノイズやケーブルの接続不良などに起因して欠落あるいは変化した場合、印刷を正常に行なうことができない。プリンターとプリンタードライバーの不一致による印刷の不具合は、コンピューターとプリンターが予め通信を行なうことで回避することができる(例えば下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−162457号公報
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、コンピューターとプリンターとの間の通信モードが最適なモードでない場合に発生する印刷の不良を防止するために、最適な通信モードを自動設定する技術である。従って、こうした従来技術では、ノイズなどに起因するデータの欠落や変化が生じると、そのデータ以降の印刷が不適切なものになってしまうという不具合を防止することはできなかった。
【0006】
データの欠損や変化によって、そのデータに対応した部分のみならず、それ以降の印刷が不適切なものとなってしまうのは、次の理由による。
(1)コンピューターからプリンタに送られる印刷ジョブデータには、印刷ジョブデータの解釈を規定した制御コードが含まれている。従って、この制御コードが正しくプリンタに読み込まれないと、制御コード以降の印刷ジョブデータが、本来の意味とは異なるものとして解釈されてしまい、印刷結果が不適切なものとなってしまう。
(2)文字には、シフトJISのように、複数バイトからなるコード体系が存在するが、こうしたコード体系では、同じデータが1バイト目にあるか2バイト目にあるかにより、解釈が異なる場合がある。従って、データが1バイトでも欠損すると、それ以降のデータが誤って解釈されてしまい、印刷結果が不適切なものとなってしまう。
【0007】
このような場合、印刷用紙、トナー、インク等の消耗品が無駄に使われることになるだけではなく、ユーザーは不適切な印刷が終わるのを待たなければならず、時間的にも不経済であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、データの解釈を誤って、プリンターが不適切な印刷を継続することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0010】
[適用例1]
コンピューターと、該コンピューターに接続されて印刷を行なう印刷装置とを備える印刷システムであって、前記コンピューターは、印刷ジョブデータを、前記印刷装置に出力する印刷ジョブデータ出力部と、前記印刷ジョブデータについての仮想的な印刷イメージである仮想イメージデータを生成する仮想イメージデータ生成部と、該生成した仮想イメージデータを、前記印刷装置に出力する仮想イメージデータ出力部とを備え、前記印刷装置は、前記コンピューターから出力された前記印刷ジョブデータが入力される入力部と、該入力された印刷ジョブデータに基づいて印刷を実行する印刷実行部と、前記印刷ジョブデータから、印刷用イメージデータを生成する印刷用イメージ生成部と、前記仮想イメージデータと前記印刷用イメージデータとを比較し、両イメージデータの相関を判定するイメージ判定部と、前記両イメージデータの相関が、所定以上あると判定した場合には、前記印刷実行部を制御して前記印刷を行なわせる印刷制御部とを備えた印刷システム。
【0011】
この印刷システムによれば、印刷装置は仮想イメージデータと印刷用イメージデータとを比較して、相関が所定以上あると判定した場合に印刷を行う。よって、コンピューターから出力され印刷装置に入力されるまでに、印刷ジョブデータにデータ欠損が発生した場合や、印刷装置が印刷ジョブデータの解釈を誤った場合には、印刷装置のイメージ判定部によって、仮想イメージデータと印刷用イメージデータとは相関がないと判定され、その印刷ジョブデータは印刷されない。従って、このような場合に、ノイズなどにより発生する不適切な印刷を防止することができる。仮想イメージデータと印刷用イメージデータとの比較は、いわゆるパターンマッチングの技術等を用いて行うことができる。パターンマッチングにより、両者の相関を示す数値を得て、この数値を、予め定めた閾値と比較し、閾値以上であれば互いに相関があると判定することができる。
【0012】
[適用例2]
前記コンピュータは、ページ記述言語(PDL)により表現したデータを、前記印刷ジョブデータとして出力する適用例1記載の印刷システム。
【0013】
この印刷システムによれば、印刷ジョブデータとしてページ記述言語で表現されたデータを出力できるので、印刷装置としてページプリンターを用いることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または2記載の印刷システムであって、前記コンピューターの前記仮想イメージ生成部は、前記仮想イメージデータとして、前記印刷対象の部分に対応したイメージデータを生成し、前記印刷装置の前記印刷用イメージ生成部は、前記印刷用イメージデータとして、前記仮想イメージデータに対応する前記印刷対象の部分のイメージデータを生成する印刷システム。
【0015】
この印刷システムによれば、仮想イメージデータ、印刷用イメージデータ、共に印刷対象の部分に対応したイメージデータであるので、両イメージの比較を簡易に行うことができる。
【0016】
[適用例4]
前記仮想イメージデータおよび前記印刷用イメージデータは、それぞれ印刷ページ単位で生成される適応例1ないし適用例3のいずれか記載の印刷システム。
【0017】
仮想イメージデータおよび印刷用イメージデータは、それぞれ印刷ページ単位で生成されるので、両イメージの比較もページ単位で行うことができ、全ページの内、途中のページまでは相関があると判定した印刷用データにおいては、その部分までの印刷を実行することができる。
【0018】
[適用例5]
コンピューターに接続されて印刷を行なう印刷装置であって、前記コンピューターから、印刷ジョブデータと、該印刷対象の仮想的な印刷イメージである仮想イメージデータとが入力される入力部と、該入力された印刷ジョブデータに基づいて印刷を実行する印刷実行部と、前記印刷ジョブデータから、印刷用イメージデータを生成する印刷用イメージ生成部と、前記仮想イメージデータと前記印刷イメージデータとを比較し、両イメージデータの相関を判定するイメージ判定部と、前記判定された両イメージデータの相関が、所定以上あると判定した場合には、前記印刷実行部を制御して前記印刷を行なわせる印刷制御部とを備えた印刷装置。
【0019】
この印刷装置によれば、仮想イメージデータと印刷用イメージデータとを比較して相関が所定以上あると判定した場合に印刷を行う。よって、コンピューターから出力され印刷装置に入力されるまでに、印刷ジョブデータにデータ欠損が発生した場合や、印刷装置が印刷ジョブデータの解釈を誤った場合には、印刷装置のイメージ判定部によって、仮想イメージデータと印刷用イメージデータとは相関がないと判定され、その印刷ジョブデータは印刷されない。従って、このような場合に、通常、発生する不適切な印刷を防止することができる。
【0020】
[適用例6]
印刷装置に接続されたコンピューターにより実行されるコンピュータープログラムであって、印刷対象を表現する印刷ジョブデータを、前記印刷装置に出力する印刷ジョブデータ出力機能と、該印刷対象の仮想的な印刷イメージである仮想イメージデータを生成するイメージデータ生成機能と、該生成した仮想イメージデータを、前記印刷装置が前記印刷ジョブデータから生成する印刷用イメージデータとの相関の判定用に出力する出力機能とを前記コンピュータに実行させるコンピュータープログラム。
【0021】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、印刷方法および装置、印刷システム、それらの方法または装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)印刷システムの構成
(A2)印刷システムとしての動作
B.変形例:
【0023】
A.第1実施例:
(A1)印刷システムの構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷システムPSを示す説明図である。この印刷システムPSは、コンピューターであるホスト装置100と、印刷装置であるプリンター200とを備えている。ホスト装置100とプリンター200とはネットワークNETを介して、互いに通信可能である。
【0024】
ホスト装置100は、周知のCPU110、ROM120、ハードディスク(HDD)130、RAM140、ネットワークインターフェイス(以下「NT−IF」と呼ぶ)150、外部入出力インターフェイス(以下「I/O−IF」と呼ぶ)170を備え、相互にバス180で接続されている。また、図示は省略するが、I/O−IF170には、ユーザーの指示を受ける入出力装置であるキーボードやマウス、画像を含む様々な情報をユーザーに向けて表示する表示装置として液晶ディスプレイが接続されている。表示装置としては、その他、CRTディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いてもよい。
【0025】
ROM120はホスト装置100の起動に必要なBIOSプログラムを記憶している。ホスト装置100の起動時にCPU110はROM120にアクセスし、BIOSを実行する。BIOSの実行に伴い、HDD130の所定のトラックに記憶されたオペレーティングシステム(以下「OS」と呼ぶ)がRAM140にロードされ、次に、このOSに制御を移行する。OSの起動時には、後述するプリンタードライバーなどの各種ドライバーが組み込まれる。ワードプロセッサや画像編集プログラムなどのアプリケーションプログラムは、このOS上で実行される。
【0026】
図1では、プリンタードライバー112はCPU110に備えられているものとして記載した。プリンタードライバー112はさらに、PDLデータ生成部113、縮小イメージ生成部114を備えている。CPU110が備えるこれら各部の働きは、HDD130に記憶されたプログラムが、OSの起動時に組み込まれ、アプリケーションプログラムから呼び出されることにより実行される。
【0027】
HDD130は、データを記憶する記憶装置で、前述のOS、アプリケーションプログラム、プリンタードライバープログラム等のプログラムや、ユーザーがアプリケーションプログラムを用いて生成したファイル等のデータを記憶する。また、HDD130に代えて、フラッシュメモリ等を用いたSDD(シリコンディスクドライブ)などの外部記憶装置を用いてもよい。
【0028】
このホスト装置100に、ネットワークNETを介してプリンター200が接続されている。以下、プリンター200の構成について説明する。プリンター200は、周知のCPU210、ROM220、RAM240、NT−IF250、プリンターエンジン290等を備え、これらの素子や回路はバス280で相互に内部接続されている。ROM220は、プリンター200の動作を全般的に制御するためのオペレーティングシステムや、ホスト装置100から受信したページ記述言語で記述されたデータを解釈するための解釈プログラム(インタープリター)や、その他、印刷処理に必要なプログラムを記憶している。
【0029】
CPU210は、印刷イメージ生成部215、イメージ比較部216、印刷制御部217を備えている。CPU210が備えるこれら各部の働きは、ROM220に記憶されたプログラムを実行することで実現される。これら機能部の詳細については、あとで詳しく説明する。
【0030】
RAM240は、ネットワークを介してホスト装置100から受信したデータを記憶する受信バッファや、印刷するデータを展開するためのバッファとして機能する。プリンターエンジン290は、感光ドラムを用いてトナーを印刷用紙上に転写・定着させて画像を形成する印刷機構である。プリンターエンジン290は、印刷制御部217からの制御により、実際に印刷を実行する。このプリンターエンジン290は、特許請求の範囲に記載の印刷実行部に相当する。
【0031】
(A2)印刷システムとしての動作:
図2は、印刷システムPSの動作における情報の流れを示したチャート図である。ホスト装置100上で動作しているアプリケーションプログラムによって作成された印刷データに基づいて、プリンター200が印刷を実行する場面を想定して説明する。ホスト装置100において、印刷データが作成されると、ホスト装置100はこの印刷データから2種類のデータを生成する。一つは、印刷データに基づく印刷イメージデータを圧縮した縮小イメージデータ(以下「縮小イメージ」と呼ぶ)を生成する。この縮小イメージが特許請求の範囲記載の仮想イメージデータに相当する。もう一つは、印刷データを、プリンター200が解釈可能なページ記述言語に変換したデータ(以下「PDLデータ」と呼ぶ)を生成する。このPDLデータが、特許請求の範囲記載の印刷ジョブデータに相当する。ホスト装置100は、各ページの縮小イメージ、PDLデータの順に、プリンター200に送信する。
【0032】
プリンター200は縮小イメージとPDLデータとを受信する。プリンター200は、PDLデータを受信すると、PDLデータをラスタライズし、ビットマップ形式の印刷イメージデータ(以下「印刷イメージ」と呼ぶ)を生成する。この印刷イメージは特許請求の範囲に記載の印刷用イメージデータに相当する。印刷イメージの生成後、縮小イメージと印刷イメージとを比較する。比較方法の詳細については後述する。比較の結果、両イメージに相関があると判断した場合、その印刷イメージの印刷を実行する。また、両イメージに相関がないと判断した場合には、プリンター200は、ホスト装置100に対して印刷エラーステータスを送信し、ホスト装置100は、印刷処理中にエラーが発生し印刷処理を実行しなかった旨を、ディスプレイに表示しユーザーに知らせる。
【0033】
次に、印刷システムPSにおいて、上記処理を実行するために、ホスト装置100が実行するデータ送信処理の詳細を説明する。データ送信処理を図3のフローチャートに示した。上述したように、ユーザーによる操作によって、CPU110が、ホスト装置100が備えるアプリケーションプログラムに従い、印刷データを生成する(ステップS12)。印刷データには、絵、テキスト、表、グラフ等が含まれる。印刷データが生成されると、CPU110は、印刷データにラスタライズ処理を行い、さらにJPEG形式のデータ形式に圧縮し、縮小イメージを生成する。縮小イメージを生成した後、縮小イメージをネットワークを介して、プリンター200に送信する(ステップS14)。この処理はCPU110が、縮小イメージ生成部114に相当する機能として行う。この縮小イメージ生成部114は、特許請求の範囲に記載の仮想イメージデータ生成部及び仮想イメージデータ出力部に相当する。また縮小イメージはJPEG形式のデータに代えて、GIFやビットマップ等のラスターデータによるイメージでもよい。
【0034】
縮小イメージを送信した後、CPU110は、ステップS12で生成した印刷データを、プリンター200が印刷処理の際に解釈可能なページ記述言語(PDL)で記述したデータに変換し、PDLデータを生成する。PDLデータを生成した後、そのPDLデータをネットワークを介してプリンター200に送信する(ステップS16)。この処理はCPU110が、PDLデータ生成部113に相当する機能として行う。このPDLデータ生成部は、特許請求の範囲に記載の印刷ジョブデータ出力部に相当する。また、本実施例では、ホスト装置100がプリンター200に対して、縮小イメージの送信後にPDLデータを送信するとしたが、送信順序を逆にして、PDLデータの送信後に縮小イメージを送信するとしてもよい。こうすることで、プリンター200は、PDLデータに基づく印刷イメージの生成と、縮小イメージの受信とを並行して行うことができ、処理時間を短縮することができる。
【0035】
PDLデータの送信後、CPU110は、プリンター200によって印刷処理が成功したか否かのステータスを、プリンター200から受信するまで待機状態となる(ステップS18)。プリンター200から、印刷完了ステータスを受信すると、CPU110は、ホスト装置100のディスプレイに、印刷が完了した旨のメッセージをユーザーに向けて表示し(ステップS20)、ホスト装置100によるデータ送信処理は終了する。一方、プリンター200から、エラーステータスを受信すると、CPU110は、ホスト装置100のディスプレイに、印刷処理中にエラーが発生し印刷処理を実行しなかった旨のメッセージをユーザーに向けて表示し(ステップS22)、ホスト装置100によるデータ送信処理は終了する。
【0036】
次に、印刷システムPSにおいて、プリンター200が実行する印刷処理の詳細を説明する。印刷処理の工程を図4に示した。上述したように、ホスト装置100はステップS14(図3)において、プリンター200に縮小イメージを送信する。プリンター200のCPU210は、ホスト装置100から縮小イメージを受信すると(図4:ステップS32)、RAM240(図1)に記憶する(ステップS34)。次に、ホスト装置100がステップS16(図3)において、プリンター200にPDLデータを送信する。プリンター200のCPU210は、ホスト装置100からPDLデータを受信すると(ステップS36)、PDLデータをプリンター200が備えるPDL解釈プログラム(インタープリター)によって解釈し、中間言語に変換した後、ラスタライズし、ビットマップデータ(以下「印刷イメージ」とも呼ぶ)に変換し、RAM240に記憶する(ステップS38)。この処理はCPU210が、印刷イメージ生成部215に相当する機能として行う。なお、印刷イメージ生成部215は、特許請求の範囲に記載の入力部及び印刷用イメージ生成部に相当する。
【0037】
RAM240に、縮小イメージと、印刷イメージとを記憶すると、CPU210は両イメージデータを読み込み、比較して、両イメージに相関があるかないかを判断する(ステップS40)。CPU210は、既存のパターンマッチング処理技術を用いて両イメージの比較を行う。両イメージの互いに対応する座標における画素値を比較し、所定の処理によって両イメージの一致度を算出する。一致度が所定の閾値以上にある時、両イメージを「相関あり」と判断する(ステップS42:Yes)。一方、一致度が所定の閾値以下にある時、両イメージを「相関なし」と判断する(ステップS42:No)。これらの処理はCPU210が、イメージ比較部216に相当する機能として行う。なお、イメージ比較部は、特許請求の範囲に記載のイメージ判定部に相当する。
【0038】
CPU210が、両イメージを「相関あり」と判断すると、印刷制御部217に相当する機能として、プリンターエンジン290を制御して、印刷イメージに基づいて、印刷を実行する(ステップS44)。印刷が終了すると、ホスト装置100に対して印刷完了ステータスを送信し(ステップS46)、プリンター200による印刷処理は終了する。一方、CPU210が、両イメージを「相関なし」と判断すると、ホスト装置100に対してエラーステータスを送信し(ステップS48)、プリンター200による印刷処理は終了する。
【0039】
以上、説明したように、第1実施例における印刷システムPSによると、プリンター200は、ホスト装置100から印刷データに基づく縮小イメージと、PDLデータとを受信する。そして、縮小イメージと、PDLデータを変換した印刷イメージとをパターンマッチングにより比較して、両イメージに相関ありと判断した場合にのみ、印刷を実行する。ホスト装置100とプリンター200とのケーブル接続不良や、外部からのノイズ等により、実際に印刷の実行に用いるPDLデータに欠損が存在した場合、欠損したPDLデータが制御コードであった場合には、生成される印刷イメージは、PDLデータをそのまま文字列とした印刷イメージになることがある。この欠損したPDLデータに基づく印刷イメージは、縮小イメージとは相関がないので、そのPDLデータに基づく印刷は実行されない。また、ホスト装置100とプリンター200とのケーブル接続不良の場合、縮小イメージも、プリンター200が受信した際にはデータ欠損している可能性がある。よって、縮小イメージに基づく欠損データと、PDLデータに基づく欠損データとを比較した際には、当然に相関なしとなり、印刷は実行されない。従って、このような印刷システムを採用することにより、いわゆるゴミ印字は防止できる。
【0040】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
(B1).変形例1:
上記実施例では、プリンター200でイメージ比較を行う際、縮小イメージと印刷イメージにおいて、全てのページを比較して、相関があるか、ないかの判断をしたが、変形例として、両イメージの1ページ分のみのイメージ比較を行うとしてもよい。このようにすると、イメージ比較に要する時間が短縮される。また、ホスト装置100で生成する縮小イメージ数を減らすことができる。さらに、プリンター200に送信する縮小イメージのデータ量も減少するので、縮小イメージの送信時間が短縮される。よって、縮小イメージの生成時間、縮小イメージの送信時間、イメージ比較時間が短縮され、ユーザー操作による印刷指示から、印刷完了までの時間を短縮することができる。
【0042】
上記変形例に加え、さらにイメージ比較に用いるイメージの量を減らすことも可能である。例えば、両イメージの1ページの内の、下半分のみや、下から4分の1のみ、若しくは左右どちらか一方のみの比較で、両イメージが相関があるかないかを判断することもできる。この場合、さらにユーザーによる印刷指示から、印刷完了までの時間を短縮することができる。
【0043】
(B2).変形例2:
ホスト装置100において、印刷データに基づいて縮小イメージを生成する際、縮小イメージを1ページ毎に作成するとし、プリンター200において、縮小イメージと印刷イメージとをページ単位でイメージ比較を行うものとしてもよい。こうすることで、ページ毎に、印刷イメージのデータ欠損の有無の判断ができる。よって、ホスト装置100からプリンター200にPDLデータを送信した場合、途中までのデータは欠損が無く受信されている場合に、データ欠損の無い部分までのPDLデータに基づく印刷を実行することができる。
【0044】
(B3).変形例3:
第1実施例では、ホスト装置100で、印刷データに基づいてPDLデータを生成し、プリンター200に送信していたが、印刷データが元からビットマップデータやJPEGデータ等のラスターデータであった場合は、印刷データはPDLデータには変換せずに、そのままのデータとしてプリンター200に送信するとしてもよい。もとより、縮小データは、そのビットマップデータやJPEGデータに基づいて生成し、プリンター200に送信する。従って、この場合でも、両イメージの相関を判定することができる。
【0045】
(B4).変形例4:
上記実施例においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第一実施例における印刷システムPSを示す説明図である。
【図2】印刷システムPSが行う処理における情報の流れを示したチャート図である。
【図3】ホスト装置100が行うデータ送信処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】プリンター200が行う印刷処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
100…ホスト装置
110,210…CPU
112…プリンタードライバー
113…PDLデータ生成部
114…縮小イメージ生成部
120,220…ROM
130…ハードディスク(HDD)
140,240…RAM
150,250…ネットワークインターフェイス(NT−IF)
170…外部入出力インターフェイス(I/0−IF)
180,280…バス
200…プリンター
215…印刷イメージ生成部
216…イメージ比較部
217…印刷制御部
290…プリンターエンジン
PS…印刷システム
NET…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターと、該コンピューターに接続されて印刷を行なう印刷装置とを備える印刷システムであって、
前記コンピューターは、
印刷ジョブデータを、前記印刷装置に出力する印刷ジョブデータ出力部と、
前記印刷ジョブデータについての仮想的な印刷イメージである仮想イメージデータを生成する仮想イメージデータ生成部と、
該生成した仮想イメージデータを、前記印刷装置に出力する仮想イメージデータ出力部と
を備え、
前記印刷装置は、
前記コンピューターから出力された前記印刷ジョブデータが入力される入力部と、
該入力された印刷ジョブデータに基づいて印刷を実行する印刷実行部と、
前記印刷ジョブデータから、印刷用イメージデータを生成する印刷用イメージ生成部と、
前記仮想イメージデータと前記印刷用イメージデータとを比較し、両イメージデータの相関を判定するイメージ判定部と、
前記両イメージデータの相関が、所定以上あると判定した場合には、前記印刷実行部を制御して前記印刷を行なわせる印刷制御部と
を備えた印刷システム。
【請求項2】
前記コンピュータは、ページ記述言語(PDL)により表現したデータを、前記印刷ジョブデータとして出力する請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の印刷システムであって、
前記コンピューターの前記仮想イメージ生成部は、前記仮想イメージデータとして、前記印刷対象の部分に対応したイメージデータを生成し、
前記印刷装置の前記印刷用イメージ生成部は、前記印刷用イメージデータとして、前記仮想イメージデータに対応する前記印刷対象の部分のイメージデータを生成する
印刷システム。
【請求項4】
前記仮想イメージデータおよび前記印刷用イメージデータは、それぞれ印刷ページ単位で生成される
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の印刷システム。
【請求項5】
コンピューターに接続されて印刷を行なう印刷装置であって、
前記コンピューターから、印刷ジョブデータと、該印刷対象の仮想的な印刷イメージである仮想イメージデータとが入力される入力部と、
該入力された印刷ジョブデータに基づいて印刷を実行する印刷実行部と、
前記印刷ジョブデータから、印刷用イメージデータを生成する印刷用イメージ生成部と、
前記仮想イメージデータと前記印刷イメージデータとを比較し、両イメージデータの相関を判定するイメージ判定部と、
前記判定された両イメージデータの相関が、所定以上あると判定した場合には、前記印刷実行部を制御して前記印刷を行なわせる印刷制御部と
を備えた印刷装置。
【請求項6】
印刷装置に接続されたコンピューターにより実行されるコンピュータープログラムであって、
印刷対象を表現する印刷ジョブデータを、前記印刷装置に出力する印刷ジョブデータ出力機能と、
該印刷対象の仮想的な印刷イメージである仮想イメージデータを生成するイメージデータ生成機能と、
該生成した仮想イメージデータを、前記印刷装置が前記印刷ジョブデータから生成する印刷用イメージデータとの相関の判定用に出力する出力機能と
を、前記コンピューターに実行させるコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−176219(P2010−176219A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15820(P2009−15820)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】