説明

印刷システム及びそれによる再印刷方法と、そのプログラム並びにそれを記録した記録媒体

【課題】画像形成装置に内蔵するデータ記憶装置の記憶容量を大きくしなくても、システムとしての処理効率を高め、再印刷処理に要する時間を短縮できるようにする。
【解決手段】 ネットワーク3を介して接続されるクライアント装置1と画像形成装置2とからなり、クライアント装置1がプリンタドライバ12で作成した印刷データを印刷データ記憶部14に蓄積記憶し、識別情報作成部13で識別情報を印刷データと共に画像形成装置へ送信する。画像形成装置2はその印刷データを印刷制御部26で印刷処理し、識別情報を識別情報記憶部23に蓄積記憶する。再印刷時には、印刷データ取得部24がその識別情報によってクライアント装置1から印刷データを取得して、印刷制御部26に印刷処理させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」と略称する)等によるクライアント装置と、デジタル複合機やプリンタ等の画像形成装置とをネットワークを介して接続した印刷システム、およびそれによる再印刷方法、その再印刷方法を実現するためのプログラム並びにそのプログラムを格納した記録媒体に関する。特に、印刷データ等を蓄積保管するサーバを使用せずに、同じ印刷情報の再印刷を効率よく行えるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなネットワークで接続されたクライアント装置と画像形成装置による印刷システムにおいて、サーバを使わないで同じ印刷情報の再印刷を行なえるようにした従来の印刷システムとしては、PC等のクライアント装置からネットワークを介して印刷データを画像形成装置が受信すると、その印刷データをビットマップデータに展開して印刷出力するとともに、そのビットマップデータを画像形成装置内の画像データ蓄積部に蓄積保管し、その後クライアント装置から再印刷指示を受けると、その保管したビットマップデータを読み出して再印刷するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このように、保存したビットマップデータを使用して再印刷出力することによって、再印刷の際に印刷データを再送信する必要も、印刷データをビットマップデータに展開する必要もなくなるので、再印刷処理時間を大幅に短縮することができる。
【0003】
また、ネットワークに接続されたクライアント装置(PC)から画像形成装置に印刷データを送信して印刷指示をして印刷出力させたとき、その画像形成装置が印刷データを記憶する手段を備えていない場合には、識別情報のみを保管し、ネットワークに接続された記憶手段に余裕のある他のクライアント装置又は他の画像形成装置にその印刷データを転送してその記憶手段に記憶させ、再印刷が指示されたときには、識別情報に対応する印刷データを、上記保管先の他のクライアント装置又は他の画像形成装置に対して送信指示して送信させ、その印刷データによってビットマップデータを作成して再印刷を行うようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、通常印刷時にはクライアント装置(PC)から印刷データと設定情報を画像形成装置に送信し、画像形成装置がそれによってビットマップデータを作成して印刷出力するとともに、その設定情報のみを記憶部に保管し、印刷指示を行うクライアント装置にはその印刷データの元となった文書ファイルのアプリケーションデータを保存し、再印刷時には、画像形成装置が設定情報に対応する印刷データの送信を上記クライアント装置に指示すると、そのクライアント装置がアプリケーションデータから画像形成装置で印刷可能な印刷データを作成(再レンダリング)して画像形成装置へ送信し、その印刷データによって画像形成装置がビットマップデータを作成して印刷出力するようにしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−175290号公報
【特許文献2】特開2006−256041号公報
【特許文献3】特開2006−218649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような印刷システムでは、データ量が多いビットマップデータを画像形成装置内の画像データ蓄積部に蓄積保管するため、使用するクライアント装置の数が多い場合には、すぐにその画像データ蓄積部の保管領域が埋まってしまう(記憶容量オーバになる)という問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載されているような印刷システムの場合は、印刷時に、印刷データを転送して保管させるためのクライアント装置又は他の画像形成装置を探す処理や、その保管先に画像データを転送する処理が必要なため、システムとしての処理効率が悪いという問題と、セキュリティ上の問題が生ずる恐れがある。
【0008】
さらに、上記特許文献3に記載されているような印刷システムの場合は、再印刷を行う際に、クライアント装置がアプリケーションデータから再レンダリングを行って再び印刷データを作成する必要があるため、やはりシステムとしての処理効率が悪いという問題がある。
【0009】
この発明は、このようなサーバを使わずに再印刷を行える印刷システムにおいて、上記のような問題を解決するためになされたものであり、画像形成装置に内蔵するデータ記憶装置の記憶容量を大きくしなくても、システムとしての処理効率を高め、再印刷処理に要する時間を短縮できるようにし、セキュリティも確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による印刷システムは、ネットワークを介して接続されるクライアント装置と画像形成装置とからなり、クライアント装置が送信した印刷データを画像形成装置が受信して印刷出力する印刷システムである。
そして、上記の目的を達成するため、上記クライアント装置に、印刷が指示された文書のアプリケーションデータから印刷可能な印刷データを作成する印刷データ作成部(プリンタドライバ)と、その印刷データを特定できる識別情報を作成する識別情報作成部と、上記印刷データ作成部で作成された印刷データを蓄積記憶する印刷データ記憶部と、その印刷データを上記識別情報作成部で作成された識別情報と共に上記ネットワークを介して上記画像形成装置へ送信するデータ送信部とを備える。
【0011】
また、上記画像形成装置には、上記クライアント装置から送信された印刷データと識別情報とを受信するデータ受信部と、そのデータ受信部が受信した印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷制御部と、上記データ受信部が受信した識別情報を蓄積記憶する識別情報記憶部と、再印刷指示を行う入力部と、その入力部から再印刷指示がなされたとき、上記識別情報記憶部からその再印刷指示がなされた文書の識別情報を取得して、上記ネットワークを介して上記クライアント装置の印刷データ記憶部からその識別情報によって特定される印刷データを取得する印刷データ取得部とを備え、上記入力部から再印刷指示がなされたときには、上記印刷データ取得部が取得した印刷データに基づいて上記印刷制御部が印刷処理を実行するようにしたものである。
なお、この画像形成装置自体もこの発明によるものである。
【0012】
上記クライアント装置が、上記印刷データ記憶部に記憶させる印刷データを暗号化する手段を有し、上記画像形成装置が、上記印刷データ取得部が取得した印刷データが暗号化されている場合には、その印刷データを印刷処理する前に復号化する手段を有することにより、セキュリティを確実にすることができる。
【0013】
この発明による再印刷方法は、ネットワークを介して接続されるクライアント装置と画像形成装置とからなる印刷システムによって、クライアント装置が送信した印刷データを画像形成装置が受信して印刷出力した後、同じ印刷データの再印刷を行うための再印刷方法である。
そして、前述の目的を達成するため、上記クライアント装置が、通常の印刷時に文書のアプリケーションデータから印刷可能な印刷データを作成するとともにその印刷データを特定できる識別情報を作成するステップと、その印刷データを蓄積記憶するステップと、その印刷データを識別情報と共に上記ネットワークを介して上記画像形成装置へ送信するステップとを実行する。
【0014】
また、上記画像形成装置が、上記クライアント装置から送信された印刷データと識別情報とを受信したときには、その印刷データに基づいて印刷処理を行うステップと、受信した識別情報を蓄積記憶するステップと、再印刷指示がなされたときに、上記蓄積記憶した識別情報のうちの再印刷指示がなされた文書の識別情報によって、上記ネットワークを介して上記クライアント装置に蓄積記憶されている印刷データからその識別情報によって特定される印刷データを取得し、その取得した印刷データに基づいて印刷処理を行うステップとを実行する。
【0015】
上記再印刷方法において、上記クライアント装置が、上記印刷データを蓄積記憶するステップで、上記印刷データを暗号化して蓄積記憶し、上記画像形成装置が、上記再印刷指示がなされたときに印刷処理を行うステップで、上記クライアント装置から取得した印刷データが暗号化されている場合には、その印刷データを印刷処理する前に復号化するようにすれば、セキュリティを確実にすることができる。
【0016】
この発明によるクライアント装置用のプログラムとその記録媒体は、ネットワークに接続されるクライアント装置のコンピュータに、文書のアプリケーションデータから作成された印刷データを印刷データ記憶部に蓄積記憶させる機能と、その印刷データを特定できる識別情報を作成する機能と、上記印刷データを識別情報と共にネットワークを介して画像形成装置へ送信する機能とを実現させるためのプログラム、並びにそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0017】
この発明による画像形成装置用のプログラムとその記録媒体は、ネットワークに接続される画像形成装置のコンピュータに、クライアント装置からネットワークを介して印刷データと識別情報とを受信した場合に、その受信した印刷データに基づいて印刷制御部に印刷処理を実行させるとともに、受信した識別情報を識別情報記憶部に蓄積記憶させる機能と、入力部から再印刷指示がなされたとき、上記識別情報記憶部からその再印刷指示がなされた文書の識別情報を取得して、上記ネットワークを介して上記クライアント装置からその識別情報によって特定される印刷データを取得する機能と、その取得した印刷データに基づいて上記印刷制御部に印刷処理を実行させる機能とを実現させるためのプログラム、並びにそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、サーバを使わずに再印刷を行える印刷システムにおいて、画像形成装置に内蔵するデータ記憶装置の記憶容を大きくしなくても、システムとしての処理効率を高め、再印刷処理に要する時間を短縮できるとともにセキュリティも確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、この発明の対象とする印刷システムを構成するネットワーク環境の一例を示す概念図である。この印刷システムは、ネットワーク3を介して接続されるクライアント装置1と画像形成装置2とからなり、クライアント装置1が送信した印刷データを画像形成装置2が受信して印刷出力する。
【0020】
図2に示す例では、ネットワーク3はコンピュータネットワークであり、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)を使用するが、イントラネット、無線LAN、公衆回線網やインターネット網、VANなどを利用することも可能である。
クライアント装置1は、本体と表示部であるディスプレイと入力部であるキーボード等が別体あるいは一体に構成されたパーソナルコンピュータ(以下「PC」と略称する)等の情報処理装置であり、図2ではA〜EのクライアントPCとして示している。これらは、必要に応じたアプリケーションソフトによって、文書作成・編集、図形作成・編集、表計算、電子メール、インターネット等の各種の処理を行うことができる。これらの5台のクライアント装置1が、1台の画像形成装置2を共用する。
【0021】
画像形成装置2は、複写装置、印刷装置であるプリンタ、画像読取装置であるスキャナ、ファクシミリ装置等の複数の機能を備えたデジタル複合機(MFP)の例を示したが、各種のプリンタでもよい。すなわち、クライアント装置1からネットワーク3を介して送信された印刷データを受信して用紙に印刷して出力できる装置であればよい。但し、ハードディスク(HD)等の不揮発性のデータ記憶手段を備えていることが必要である。
【0022】
図3と図4は、この発明の印刷システムによる通常印刷時と再印刷時における基本的なデータの流れを説明するための概念図である。これらの図ではネットワークは図示を省略し、矢印線は単にデータの流れ方向を示している。
通常印刷(再印刷以外の印刷)の場合には図3に示すように、クライアント装置1は印刷すべき文書のアプリケーションデータから画像形成装置2で印刷可能な印刷データ4を作成するとともに、その印刷データ4を特定できる識別情報5を作成する。そして、作成した印刷データ4をハードディスク等の不揮発性大容量メモリに蓄積記憶するとともに、その印刷データ4と識別情報5と共に(連続してあるいは対応付けて)前記ネットワークを介して画像形成装置2へ送信する。
【0023】
画像形成装置2がその印刷データ4と識別情報5を受信すると、その受信した印刷データ4に基づいて印刷処理を行って用紙6に印刷出力するとともに、受信した識別情報5をハードディスク等の不揮発性メモリに蓄積記憶する。
【0024】
一方、画像形成装置2のオペレーションパネル等から、以前に一度印刷した印刷データを再度印刷する再印刷指示がなされたときには、図4に示す再印刷の処理を実行する。
この場合には、画像形成装置2が内部のメモリに記憶している識別情報のうちの再印刷指示がなされた文書の識別情報5をクライアント装置1に送信し、ネットワークを介してクライアント装置1に蓄積記憶されている印刷データから、その識別情報5によって特定される印刷データ4を取得し、その取得した印刷データ4に基づいて印刷処理を行って用紙6に印刷出力する。なお、蓄積記憶される各印刷データにはそれを特定できる情報がインデックス情報として含まれている。
【0025】
したがって、画像形成装置2内には印刷データを特定できる識別情報を蓄積記憶するだけで済むので、そのために内蔵するデータ記憶装置の記憶容量はそれほど大きくなくても、多数のクライアント装置からの印刷データの識別情報を長期に亘って蓄積記憶できる。
また、印刷データを各クライアント装置内に個別に蓄積記憶するので、セキュリティも確保でき、印刷データで記憶しているため、再印刷を行う度にアプリケーションデータから印刷データを再度作成(再レンダリング)する必要がないので、システムとしての処理効率が高くなり、再印刷処理に要する時間を短縮できる。
【0026】
次に、図1によってこの発明による印刷システムの一実施形態を構成するクライアント装置と画像形成装置の各機能構成説明する。
ここでは、クライアント装置1と、画像形成装置2としてデジタル複合機(MFP)とレーザプリンタ(LP)が、ネットワーク3を介して接続されている部分を示している。この場合の画像形成装置2はプリンタ機能を使用するだけであるため、必要な機能構成はMFPでもLPでも同じであるから対応する各部に同じ符号を付している。矢印線はネットワーク3を介したデータの流れを示す。
【0027】
クライアント装置1はPCであり、ハード的には、CPUとROMやRAM等のメモリおよびハードディスクHDなどを内蔵した本体と、キーボードやポインティングデバイスなどの入力装置と、画面に情報を表示する表示装置(ディスプレイ)などを備えている。
そして、この発明に係わる機能としては、各アプリケーション11、プリンタドライバ12、識別情報作成部13、印刷データ記憶部14、および送受信部15の機能を有する。
【0028】
各アプリケーション11は、PCがアプリケーションプログラムを実行することによって実現する機能であり、クライアント装置1によって前述した文書作成・編集や図形作成・編集などを実現する機能である。使用するアプリケーションプログラムとしては、例えばWORD(登録商標)、EXCEL(登録商標)、電子メールソフト、Webブラウザなど多種のものがある。
【0029】
プリンタドライバ12は、各アプリケーション11によって作成されたアプリケーションデータ(中間データ)のうち、印刷が指示された文書のアプリケーションデータから、それを印刷する画像形成装置(プリンタ)の能力及び機能に合わせた印刷データを作成する印刷データ作成部である。ここで、「文書」とは、文字のデータに限るものではなく、図形や写真なども含む印刷単位となるデータをいう。また、印刷データは、例えばページ上のテキストとグラフィックスを同時に正確に記述するためのプログラミング言語であるページ記述言語(PDL:Page Description Language)で作成する。
【0030】
そのプリンタドライバ12で作成された印刷データを、印刷データ記憶部14によってハードディスクHDに蓄積記憶する。その記憶する各印刷データには、それを特定できる情報がインデックス情報として含まれている。
識別情報作成部13は、プリンタドライバ12で作成され、印刷データ記憶部14によって蓄積記憶される印刷データを特定できる識別情報を作成する。その識別情報は、記憶された印刷データを一意に示す情報(文書名:ファイル名など)と、ジョブID又は認証情報の少なくとも一方を含むのが望ましい。
【0031】
送受信部15は、ネットワーク3を使用する通信機能部であり、通常印刷時には、印刷データ作成部であるプリンタドライバ12で作成された印刷データを、識別情報作成部13で作成された識別情報と共に(対応付けてあるいは連続して)ネットワーク3を介して画像形成装置2へ送信するデータ送信部の機能を果たす。再印刷時には、画像形成装置2からの識別情報を受信し、印刷データ記憶部14からその識別情報に対応して読み出される印刷データを送信する機能を果たす。
【0032】
画像形成装置2は、2台ともこの発明で使用するプリンタとしての機能構成は同じであり、送受信部21、入力部22、識別情報記憶部23、印刷データ取得部24、印刷指示部25、および印刷制御部26の各機能を備えている。なお、ハード構成としては、全体の制御を司り上記の各機能を実行するためのマイクロコンピュータを構成するCPUとROM及びRAM等のメモリおよびハードディスクHDなどを内蔵し、印刷データに応じた印刷内容を実際に用紙に印刷するための電子写真方式のプリンタエンジンンも備えているが、それらは図示を省略している。
【0033】
送受信部21はネットワーク3を使用する通信機能部であり、クライアント装置1から送信される印刷データと識別情報とを受信するデータ受信部の機能を果たす。また、後述する再印刷指示がなされた場合には、識別情報を送信してクライアント装置1から取得した印刷データを受信する機能も果たす。
【0034】
入力部22は、この画像形成装置2に再印刷指示を行うための手段であり、この画像形成装置に設けられたオペレーションパネルであり、キー操作や液晶表示パネルに積層されたタッチパネルのタッチ操作などによって再印刷指示がなされる。あるいは、この画像形成装置2内に格納しているWebサーバ上のプログラムであってもよく、その場合クライアント装置1側のディスプレイにその再印刷指示用の画面を表示させて、そこで再印刷指示をすることが可能になる。
【0035】
識別情報記憶部23は、通常印刷時にクライアント装置1から印刷データと共に送信される識別情報を受信したとき、それをハードディスク(HD)等の不揮発性メモリに蓄積記憶するための機能部である。
印刷データ取得部24は、入力部22から再印刷の指示を受けた際に、識別情報記憶部23から対応する識別情報を取得して、送受信部21からネットワーク3を介してクライアント装置1へ送信し、そのクライアント装置1の印刷データ記憶部14からその識別情報によって特定される印刷データをネットワーク3を介して取得するための機能部である。
【0036】
印刷指示部25は、通常印刷時に受信した印刷データまたは再印刷時に印刷データ取得部23が取得した印刷データによる印刷処理を印刷制御部26に指示する機能部であり、印刷制御部に含めてもよい。
印刷制御部26は、印刷指示部25に印刷処理を指示された印刷データをページ単位のビットマップデータに展開し、そのデータを図示していないプリンタエンジンへ順次送って用紙に印刷して出力させるための制御を行う。
【0037】
次に、図5乃至図7によって通常印刷時におけるクライアント装置と画像形成装置による処理の流れを説明する。図5において、アプリケーション11から識別情報作成部13まではクライアント装置1側であり、図1に示した送受信部15は、ここでは図示を省略している。送受信部21と識別情報記憶部23および印刷制御部26は画像形成装置2側であり、図1に示したその他の機能部はここでは図示を省略している。
【0038】
図5におけるクライアント装置1側では、アプリケーション11によって文書編集などが行われて、アプリケーションデータ(中間データ)による文書ファイルが作成され、印刷が指示されると、プリンタドライバ12がその中間データから、それを印刷する画像形成装置(プリンタ)2の能力や機能に合わせた印刷可能な形式の印刷データを生成する。その印刷データを印刷データ蓄積部13がハードディスク(HD)に蓄積記憶し、識別情報作成部13がプリンタドライバ12からの指示によって、その記憶した印刷データを特定できる識別情報を生成する。そして、プリンタドライバ12が生成した印刷データを識別情報作成部13が作成した識別情報と共に、図示していない送信部からネットワークを介して画像形成装置2へ送信する。
【0039】
このクライアント装置1におけるこの一連の処理を、図6にフローチャートで簡潔に示す。図6では判りやすくするため、クライアント装置1がこの通常印刷の処理を開始してから、ステップS11でアプリケーションからユーザが印刷を指示するようになっているが、実際にはアプリケーションからユーザが印刷を指示すると、この通常印刷の処理を開始する。
そして、ステップS11でプリンタドライバが印刷を指示された文書ファイルと印刷するプリンタ(画像形成装置2)を認識して、ステップS12でその文書ファイルのアプリケーションデータを印刷可能な形式に変換して印刷データを生成する。
【0040】
次いで、ステップS13でその印刷データを特定できる識別情報を生成(作成)し、ステップS14で印刷データを蓄積記憶する。このステップS13とS14はどちらを先に行っても、あるいは同時に並行して行ってもよい。
その後、ステップS15で、その印刷データを識別情報と共にプリンタ(画像形成装置2)に送信して、この処理を終了する。
【0041】
一方、図5における画像形成装置2側では、クライアント装置1から送信された印刷データと識別情報と送受信部21で受信すると、その印刷データを印刷制御部26に送り、印刷制御部26がその印刷データをページ単位のイメージデータに展開して、順次プリンタエンジンに送って用紙に印刷させる制御を実行する。
また、その印刷データと共に識別情報があった場合には、その識別情報を識別情報記憶部23へ送って、ハードディスク(HD)に蓄積記憶させる。
【0042】
画像形成装置2におけるこの一連の処理を、図7にフローチャートで簡潔に示す。
この図7でも判りやすくするため、画像形成装置2が通常印刷の処理を開始した後、ステップS21で印刷データと識別情報を受信するようになっているが、実際には印刷データと識別情報を受信すると通常印刷の処理を開始する。
そして、ステップS22で識別情報があるか否かを判断し、識別情報がなければステプS24へ進んで、その印刷データによる前述した印刷の処理を実行した後、この処理を終了する。ステップS22で識別情報があると判断すると、ステップS23でその識別情報を蓄積記憶した後、ステップS24で印刷データによる前述した印刷の処理を実行して、この処理を終了する。
【0043】
図8は、図1に示した印刷システムによる再印刷時における画像形成装置2側による処理の流れを説明する図である。この図では、図1に示した送受信部21は図示を省略し、図1に示さなかった印刷データ一時記憶部27を示しているが、印刷データ一時記憶部27は、印刷データの取得速度と印刷処理速度との差を吸収するためのバッフアメモリの役目をなすもので、特に新規なものではない。前述した図5に示した通常印刷時においても送受信部21による印刷データの受信速度と、印刷制御部26による印刷処理速度との差を吸収するために使用することができる。
【0044】
なお、この再印刷時にはクライアント装置1側は単に印刷データのデータベース(サーバ)として受動的に機能し、すべて画像形成装置2側の指令によって動作する。
図8において、この画像形成装置2のオペレーションパネル等の入力部22で、以前に一度印刷した印刷データを再度印刷する再印刷指示がなされると、その再印刷指示が印刷データ取得部24に送られる。印刷データ取得部24はその再印刷指示を受けると、識別情報記憶部23に蓄積記憶している識別情報中から再印刷指示された文書の識別情報を取得し、それを図示していない送受信部からネットワークを介してクライアント装置1へ送信する。
【0045】
そして、その識別情報によってクライアント装置1の図1に示した印刷データ記憶部14を検索して、その識別情報によって特性される印刷データを読み出して入出力部15から画像形成装置2へ送信させ、それを画像形成装置2が送受信部21で受信して印刷データ取得部24がその印刷データを取得する。
その取得した印刷データを印刷データ一時記憶部27がハードディスク(HD)等のメモリに一時的に記憶する。この印刷データ一時記憶部27は、印刷データの取得速度と印刷制御部26による印刷処理速度との差を吸収するためのバッフアメモリであり、記憶した印刷データは印刷処理が完了した後に消去するので、揮発性メモリを使用してもよい。
【0046】
そして、印刷データ一時記憶部27に一時記憶した印刷データを順次読み出して印刷指示部25が印刷制御部26に印刷を指示し、印刷制御部26はその印刷データをページ単位のイメージデータに展開して、順次プリンタエンジンに送って用紙に印刷させる制御を実行する。
【0047】
画像形成装置2におけるこの一連の処理を、図9にフローチャートで簡潔に示す。
この図9でも判りやすくするため、画像形成装置2が再印刷の処理を開始した後、ステップS31において入力部で再印刷指示を受けるようになっているが、実際には入力部で再印刷指示を受けるとこの再印刷の処理を開始する。
そして、ステップS32で再印刷可能なジョブを入力部(オペレーションパネルの表示器等)にリスト表示する。その後、ステップS33でユーザがその入力部で再印刷するジョブを選択すると、そのジョブの情報(文書名やファイル名等)を受け取り、ステップS34でそのジョブの情報に対応する識別情報を、蓄積記憶している識別情報中から取得する。
【0048】
その後、ステップS35でその取得した識別情報を使って、前述したようにクライアント装置1からその識別情報によって特定される印刷データをダウンロードする印刷データ取得の処理を実行し、その取得に成功すると、その取得した印刷データをバッファメモリに一時記憶する。次いで、ステップS37で、その印刷データを順次読み出して、前述したように用紙に印刷する処理を実行して再印刷の処理を終了する。
ステップS35で印刷データの取得に失敗した場合は、ステップS38で入力部にエラー表示をして、再印刷の処理を終了する。
【0049】
これらの図5〜図7によって説明した通常印刷時の処理、および図8と図9によって説明した再印刷時の処理は、この発明によるネットワーク3を介して接続されるクライアント装置1と画像形成装置2とからなる印刷システムによって、クライアント装置1が送信した印刷データを画像形成装置2が受信して印刷出力した後、同じ印刷データの再印刷を行うための再印刷方法の一実施形態に相当する。
【0050】
すなわち、クライアント装置による図6に示した処理におけるステップS12とS13が、通常の印刷時に文書のアプリケーションデータから印刷可能な印刷データを作成するとともに、その印刷データを特定できる識別情報を作成するステップであり、ステップS14がその印刷データを蓄積記憶するステップであり、ステップS15が、その印刷データを識別情報と共にネットワークを介して画像形成装置へ送信するステップである。
【0051】
また、画像形成装置による図7に示した処理におけるステップS21とS24が、クライアント装置から送信された印刷データと識別情報とを受信したときには、その印刷データに基づいて印刷処理を行うステップであり、ステップS22とS23が、受信した識別情報を蓄積記憶するステップである。
【0052】
さらに、画像形成装置による図9に示した処理におけるステップS31〜S37が、再印刷指示がなされたときに、蓄積記憶した識別情報のうちの再印刷指示がなされた文書の識別情報によって(S31〜S34)、ネットワークを介してクライアント装置に蓄積記憶されている印刷データから、その識別情報によって特定される印刷データを取得し(S35)、その取得した印刷データに基づいて印刷処理を行う(S36,S37)ステップに相当する。
【0053】
また、この発明によるクライアント装置用のプログラムの実施形態は、図3に示したようなネットワーク3に接続されるクライアント装置1のコンピュータ(PC)に、文書のアプリケーションデータからプリンタドライバ12によって作成された印刷データを印刷データ記憶部14に蓄積記憶させる機能と、その印刷データを特定できる識別情報を作成する識別情報作成部13の機能と、上記印刷データを識別情報と共にネットワーク3を介して画像形成装置2へ送信する送受信部の機能とを実現させるための図6にフローチャートで示した処理のプログラムである。
【0054】
この発明によるクライアント装置用の記録媒体の実施形態は、上記クライアント装置用のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカードやメモリチップ等のクライアント装置に着脱可能な記録媒体である。
【0055】
そして、この発明による画像形成装置用のプログラムの実施形態は、図3に示したようなネットワーク3に接続される画像形成装置1のコンピュータ(CPU等からなるマイクロコンピュータ)に、クライアント装置1からネットワーク3を介して印刷データと識別情報とを受信した場合に、その受信した印刷データに基づいて印刷制御部26に印刷処理を実行させるとともに、受信した識別情報を識別情報記憶部23に蓄積記憶させる機能と、入力部22から再印刷指示がなされたとき、識別情報記憶部23からその再印刷指示がなされた文書の識別情報を取得して、ネットワーク3を介してクライアント装置1からその識別情報によって特定される印刷データを取得する印刷データ取得部24の機能と、その取得した印刷データに基づいて印刷制御部26に印刷処理を実行させる機能とを実現させるための、図7および図9にフローチャートで示した処理のプログラムである。
【0056】
この発明による画像形成装置用の記録媒体の実施形態は、上記画像形成装置用のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカードやメモリチップ等の画像形成装置に着脱可能な記録媒体である。
【0057】
上述したクライアント装置用のプログラムをネットワークを介してクライアント装置にダウンロードしたり、上記クライアント装置用の記録媒体に記録されているプログラムを読み取って内蔵のハードディスク等の不揮発性メモリに格納すれば、この発明による印刷システムを構成するクライアント装置として使用することができる。
また、上述した画像形成装置用のプログラムをネットワークを介して画像形成装置にダウンロードしたり、上記画像形成装置用の記録媒体に記録されているプログラムを読み取って内蔵のハードディスク等の不揮発性メモリに格納すれば、この発明による印刷システムを構成する画像形成装置として使用することができる。

次に、この発明による印刷システムおよび再印刷方法の実施形態における各種の追加機能について説明する。
図10は識別情報の構成例を示す図であり、この例では印刷データを一意に示す情報としての印刷データ情報(例えば“http://192.168.0.1/printadata/xxxx.dat”)と共に、ジョブID(例えば“1”)、認証情報(例えば“Usr/xxxx”)、および印刷時刻(例えば“2007/05/31 15:23:20”)の各情報を含んでいる。
【0058】
印刷データを一意に示す情報は「印刷データ情報」以外の情報(文書名やファイル名など)でもよい。その他の情報は必須ではないが、ジョブIDや印刷時刻情報を含んでいると、ユーザが再印刷すべき印刷データ選択する際にそれらを表示すると便利である。認証情報を含んでいれば、後述する認証処理を行うことができ、セキュリティ性を高めることができる。そのため、この識別情報には印刷データを一意に示す情報に加えて、ジョブID又は認証情報の少なくとも一方を含むようにするのが望ましい。また、これら以外の情報を含んでもよい。
【0059】
図1に示したクライアント装置1で、アプリケーションからユーザが印刷指示をする際に、再印刷設定の要否を選択できるようにした例を図11によって説明する。
図11は、その場合にクライアント装置1のディスプレイ上に表示する再印刷設定画面の例である。この場合、図1に示したクライアント装置(PC)1は、印刷データ作成部であるプリンタドライバ12で作成された印刷データを、印刷データ記憶部14に記憶させるか否かを設定する記憶要否設定手段を有する。そして、ユーザが印刷指示をする際にディスプレイ上に図11に示す再印刷設定画面を表示する。
【0060】
そして、「記憶する」が選択されて「登録」がクリックされると、印刷指示された文書の印刷データを印刷データ記憶部14に記憶して再印刷設定を行い、送受信部15は印刷データと共にその識別情報をネットワーク3を介して画像形成装置2へ送信する。
一方、「記憶しない」が選択されて「登録」がクリックされた場合は、印刷指示された文書の印刷データを印刷データ記憶部14に記憶せず、したがって再印刷設定を行わず、識別情報作成部13は識別情報を作成しない。その場合、送受信部15は印刷データのみをネットワーク3を介して画像形成装置2へ送信する。
【0061】
このようにすれば、1回限りで再印刷する必要がないことが明らかな文書のクライアント装置側での印刷データの蓄積記憶、および画像形成装置側でも識別情報の蓄積記憶が不要になるので、記憶装置を無駄なく有効に使用することができる。
【0062】
この再印刷設定を、ユーザが印刷指示をするときではなく予め設定できるようにして、その設定状態が「記憶する」の場合は、以後に作成した印刷データはすべて蓄積記憶し、それを特定する識別情報と共に送信するようにしてもよい。その場合、「記憶する」が設定されてないか「記憶しない」が設定されている場合は、作成した印刷データを蓄積記憶せず、識別情報も作成せず、印刷データのみを送信する。
このようにすれば、ユーザが印刷指示をする度に再印刷設定を行う手間がかからない。
【0063】
あるいはまた、上記記憶要否設定手段を、作成された印刷データの文書の条件によってその印刷データを印刷データ記憶部に記憶させるか否かを自動的に設定する手段にすることもできる。
図12は、その場合にクライアント装置1のディスプレイ上に表示する再印刷設定画面の例である。この画面上で、「すべて記憶しない」又は「すべて記憶する」を選択して「登録」をクリックすると、前述したように以後に作成した印刷データをすべて蓄積記憶するか、すべて蓄積記憶しないかを設定できる。
【0064】
また、「条件設定」を選択した後、「当てはまるものを記憶する」又は「当てはまるものを記憶しない」を選択して、「キーワード」を選択してそのボックス内にキーワードをスペースで区切って1つ以上入力し、「ユーザ」を選択してそのボックス内にユーザ名をスペースで区切って1つ以上入力して、「登録」をクリックすると、それ以後は、登録されたキーワードのいずれかを含み、登録されたユーザのいずれかが作成した文書の印刷データだけを自動的に記憶するか、あるいは自動的に記憶しないように設定することができる。なお、「キーワード」のボックス内に複数のキーワードやユーザ名を入力した場合、OR条件かAND条件かを選択できるようにするとよい。
【0065】
クライアント装置1は、印刷データ記憶部14に記憶した印刷データを削除する削除手段を有するとよい。そ場合、ディスプレイ上に図13に示すような「再印刷データ削除」の画面を表示する。
この画面には、印刷データ記憶部14に記憶している印刷データのインデックス情報を、例えば時系列で印刷時刻が古い順に順次スクロール表示する。そのうちの削除したいIDの左側のチェックボックスにチェックマークが入力され、「実行」がクリックされると、そのIDの印刷データを印刷データ記憶部14の記憶データから削除(消去)する。
複数の印刷データを同時に削除することもできる。
【0066】
このクライアント装置1の削除手段は、印刷データ記憶部14に記憶した印刷データを削除する際には、その印刷データを特定するために画像形成装置2の識別情報記憶部23に記憶されている識別情報も削除する機能を有するのが望ましい。
そのため、印刷データ記憶部14に蓄積記憶されていた印刷データを削除したときには、図14に示すように、削除指示によってクライアント装置1の印刷データ記憶部から削除した印刷データ4の識別情報を削除させるための削除指示(印刷データを特定できる情報が含まれている)を画像形成装置2へ送信する。画像形成装置2はその削除指示を受信すると、識別情報記憶部23に蓄積記憶している識別情報のうち、削除を指示された識別情報5を削除(消去)する。
【0067】
このクライアント装置1の削除手段はさらに、印刷データ記憶部14に記憶した印刷データを予め設定された条件によって自動的に削除する機能を有してもよい。
その場合、クライアント装置1のディスプレイ上に図15に示すような「自動再印刷データ削除設定」の画面を表示する。
【0068】
この画面で、「自動的に削除しない」が選択されて「登録」がクリックされた場合は、それ以後は蓄積記憶している印刷データの自動的な削除は行わない。一方、「自動的に削除する」が選択された後、「指定時間経過後に削除する」が選択され、日数、時間、分の少なくともいずれかが入力され、さらに「指定時刻に削除する」が選択されて、曜日の選択と時刻の入力がなされ、「登録」がクリックされると、自動的に削除するための入力された条件を設定する。この場合、印刷データ記憶部14に記憶した印刷データに関してその記憶後の経過時間を計測しておき、指定時間以上経過した印刷データは、その後の最初の指定曜日の指定時刻に削除する。
【0069】
ここで、画像形成装置2の再印刷の指示を行う入力部22の具体例を説明する。
この入力部が画像形成装置2に設けられたオペレーションパネルである場合には、そのオペレーションパネルのタッチパネル付き液晶表示パネルなどに、図16に示すような再印刷指示用の画面を表示する。この画面には、識別情報記憶部23に記憶している識別情報に基づいて、ユーザが判りやすい「文書名」等の印刷データを特定できる情報を順次スクロール可能に表示する。そこで、ユーザが再印刷したい文書名の先頭のチェックキーをタッチして選択した後、「実行」キーをタッチすれば、選択した文書の再印刷の指示を行うことができる。一度に複数の文書を選択して再印刷の指示を行うこともできる。
【0070】
この入力部が画像形成装置2内に格納しているWebサーバ上のプログラムである場合には、クライアント装置1のディスプレイ上に、図17に示すようにオペレーションパネル上の画面と同様な再印刷指示用の画面を表示することができる。それによって、ユーザはクライアント装置1側でその表示画面を見ながら、キーボードやポインティングデバイスを使用して、再印刷したい文書の再印刷指示を容易に行うことができる。
【0071】
画像形成装置2は、再印刷時に印刷データ取得部24が取得した印刷データを、ネットワーク3に接続された他の画像形成装置に転送して印刷させる手段を有することもできる。その場合には、画像形成装置2のオペレーションパネル上あるいはクライアント装置1のディスプレイ上に図18に示すような再印刷指示用の画面を表示する。
【0072】
この画面には、図16又は図17に示した再印刷指示用の画面と同様に、識別情報記憶部23に記憶している識別情報に基づいて、ユーザが判りやすい「文書名」等の印刷データを特定できる情報を順次スクロール可能に表示する。さらに、ネットワーク3に接続された印刷可能な画像形成装置を特定できるプリンタ名等の情報もリスト表示する。
そこで、ユーザが文書名とプリンタ名を選択して「実行」をタッチあるいはクリックすると、図19の概念図に示すように、画像形成装置2はその選択された文書名の識別情報5によって印刷データ取得部24がクライアント装置1の印刷データ記憶部14から印刷データ4を取得し、それを選択されたプリンタ名の画像形成装置20に転送し、そこで印刷処理を実行して用紙6に印刷出力させる。
【0073】
また、画像形成装置2の識別情報記憶部23に記憶している識別情報が認証情報を有している場合には、入力部22に認証手段を設けることによりセキュリティ性が高くなる。
その場合、ユーザが入力部22で再印刷の指示と共にパスワード等の認証情報を入力し、その入力された認証情報が、再印刷が指示された文書の識別情報に含まれた認証情報と一致した場合にのみ、その識別情報をクライアント装置1へ送ってそれによって特定される画像データを取得して印刷することができる。
【0074】
あるいは、画像形成装置2の印刷データ取得部24が、クライアント装置1の印刷データ記憶部14から印刷データを取得する際に、入力部22で再印刷が指示された文書の識別情報だけでなく、認証手段によって認証された認証情報を必要とするようにしてもよい。その場合は、印刷データ記憶部14は再印刷が指示された文書の識別情報と共に認証された認証情報を、クライアント装置1へ送り、その認証情報が、クライアント装置1側の印刷データ記憶部14に記憶されている印刷データの認証情報と一致した場合にのみ、その印刷データを画像形成装置2側へ送出する。
【0075】
また、クライアント装置1が、印刷データ記憶部14に記憶させる印刷データを暗号化する手段を有し、プリンタドライバ12が作成した印刷データを暗号化して印刷データ記憶部14に記憶させるようにし、画像形成装置2は、印刷データ取得部24が取得した印刷データが暗号化されている場合には、その印刷データを印刷処理する前に復号化する手段を有するようにすれば、セキュリティ性を一層高くすることができる。
【0076】
この発明による再印刷方法においても、クライアント装置1における通常の印刷時に、プリンタドライバ12が作成した印刷データを暗号化して蓄積記憶するステップを有し、
画像形成装置2における再印刷時に、クライアント装置1に蓄積記憶されている印刷データから取得した印刷データが暗号化されていた場合には、それを復号化して印刷処理を行うステップを有するようにすればよい。
【0077】
この発明による印刷システムおよび再印刷方法と、それを実現するためのプログラムあるいはそのプログラムを記録した記録媒体は、上述した実施形態および各種の追加機能のほかにも種々の変更や機能の追加が可能である。
この発明による印刷システムを構成するクライアント装置および画像形成装置だけでも発明を構成している。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、PC等によるクライアント装置と各種の画像形成装置とをネットワークを介して接続した印刷システム、およびそれによる再印刷方法に利用でき、特に、印刷データを蓄積保管するサーバを使用せずに、同じ印刷情報の再印刷を効率よく行なえるようにするのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明による印刷システムの一実施形態を構成するクライアント装置と画像形成装置の各機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の対象とする印刷システムを構成するネットワーク環境の一例を示す概念図である。
【図3】この発明の印刷システムによる通常印刷時における基本的なデータの流れを説明するための概念図である。
【図4】この発明の印刷システムによる再印刷時における基本的なデータの流れを説明するための概念図である。
【図5】図1に示した印刷システムによる通常印刷時におけるクライアント装置側と画像形成装置側での処理の流れを説明する図である。
【0080】
【図6】図5におけるクライアント装置側の処理の流れを簡潔に示すフロー図である。
【図7】図5における画像形成装置側の処理の流れを簡潔に示すフロー図である
【図8】図1に示した印刷システムによる再印刷時における画像形成装置側による処理の流れを説明する図である。
【図9】図8によって説明した画像形成装置側の処理の流れを簡潔に示すフロー図である。
【図10】この発明に使用する識別情報の構成例を示す図である。
【0081】
【図11】クライアント装置のディスプレイ上に表示する再印刷設定画面の例を示す図である。
【図12】クライアント装置のディスプレイ上に表示する再印刷設定を自動的に行えるようにするための設定画面の例である。
【図13】クライアント装置のディスプレイ上に表示する再印刷データを削除するための画面の例を示す図である。
【図14】クライアント装置側で再印刷データを削除したときに画像形成装置側で識別情報を削除するための指示の流れを示す概念図である。
【0082】
【図15】クライアント装置のディスプレイ上に表示する再印刷データを自動的に削除する設定をするための画面の例を示す図である。
【図16】画像形成装置の入力部であるオペレーションパネルに表示する再印刷指示用の画面の例を示す図である。
【図17】入力部が画像形成装置内に格納しているWebサーバ上のプログラムである場合に、クライアント装置のディスプレイ上に表示される再印刷指示用の画面の例を示す図である。
【図18】再印刷時に画像形成装置が取得した印刷データをネットワークに接続された他の画像形成装置に転送して印刷させる場合の再印刷指示用の画面の例を示す図である。
【図19】画像形成装置が再印刷時に取得した印刷データをネットワークに接続された他の画像形成装置に転送して印刷させる場合のデータの流れを説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0083】
1:クライアント装置 2:画像形成装置 3:ネットワーク
4:印刷データ 5:識別情報 6:用紙
11:各アプリケーション 12:プリンタドライバ
13:識別情報作成部 14:印刷データ記憶部
15:送受信部(データ送信部) 20:他の画像形成装置
21:送受信部(データ受信部) 22:入力部
23:識別情報記憶部 24:印刷データ取得部
25:印刷指示部 26:印刷制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続されるクライアント装置と画像形成装置とからなり、前記クライアント装置が送信した印刷データを前記画像形成装置が受信して印刷出力する印刷システムであって、
前記クライアント装置に、
印刷が指示された文書のアプリケーションデータから前記画像形成装置で印刷可能な印刷データを作成する印刷データ作成部と、
該印刷データを特定できる識別情報を作成する識別情報作成部と、
前記印刷データ作成部で作成された印刷データを蓄積記憶する印刷データ記憶部と、
該印刷データを前記識別情報作成部で作成された識別情報と共に前記ネットワークを介して前記画像形成装置へ送信するデータ送信部とを備え、
前記画像形成装置に、
前記クライアント装置から送信された前記印刷データと前記識別情報とを受信するデータ受信部と、
該データ受信部が受信した印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷制御部と、
前記データ受信部が受信した識別情報を蓄積記憶する識別情報記憶部と、
再印刷指示を行う入力部と、
該入力部から再印刷指示がなされたとき、前記識別情報記憶部からその再印刷指示がなされた文書の識別情報を取得して、前記ネットワークを介して前記クライアント装置の前記印刷データ記憶部から該識別情報によって特定される印刷データを取得する印刷データ取得部とを備え、
前記入力部から再印刷指示がなされたときには、前記印刷データ取得部が取得した印刷データにに基づいて前記印刷制御部が印刷処理を実行するようにしたことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記識別情報は、クライアント装置内に記憶された印刷データを一意に示す情報と、ジョブID又は認証情報の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷システムにおいて、前記クライアント装置は、前記印刷データ作成部で作成された印刷データを前記印刷データ記憶部に記憶させるか否かを設定する記憶要否設定手段を有することを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
前記記憶要否設定手段が、前記作成された印刷データの文書の条件によって該印刷データを前記印刷データ記憶部に記憶させるか否かを自動的に設定する手段であることを特徴とする請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷システムにおいて、前記クライアント装置は、前記印刷データ記憶部に記憶した印刷データを削除する削除手段を有することを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
前記削除手段は、前記印刷データ記憶部に記憶した印刷データを削除する際には、該印刷データを特定するために前記画像形成装置の識別情報記憶部に記憶されている識別情報も削除する機能を有することを特徴とする請求項5記載の印刷システム。
【請求項7】
前記削除手段は、前記印刷データ記憶部に記憶した印刷データを予め設定された条件によって自動的に削除する機能を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記再印刷の指示を行う入力部が、前記画像形成装置に設けられたオペレーションパネルであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記再印刷の指示を行う入力部が、前記画像形成装置内に格納しているWebサーバ上のプログラムであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の印刷システムにおいて、
前記画像形成装置は、再印刷時に前記印刷データ取得部が取得した印刷データを、前記ネットワークに接続された他の画像形成装置に転送して印刷させる手段を有することを特徴とする印刷システム。
【請求項11】
前記入力部は、再印刷の指示に際して認証を行う認証手段を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記画像形成装置の前記印刷データ取得部が、前記クライアント装置の前記印刷データ記憶部から印刷データを取得する際に、前記認証手段によって認証された認証情報を必要とすることを特徴とする請求項11に記載の印刷システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の印刷システムにおいて、
前記クライアント装置は、前記印刷データ記憶部に記憶させる印刷データを暗号化する手段を有し、前記画像形成装置は、前記印刷データ取得部が取得した印刷データが暗号化されている場合には、その印刷データを印刷処理する前に復号化する手段を有することを特徴とする印刷システム。
【請求項14】
印刷データを蓄積記憶する印刷データ記憶部を備えたクライアント装置とネットワークを介して接続され、該クライアント装置が送信した印刷データを受信して印刷出力するる画像形成装置であって、
前記クライアント装置から送信さる印刷データとその識別情報とを受信するデータ受信部と、
該データ受信部が受信した印刷データに基づいて印刷処理を実行する印刷制御部と、
前記データ受信部が受信した識別情報を蓄積記憶する識別情報記憶部と、
再印刷指示を行う入力部と、
該入力部から再印刷指示がなされたとき、前記識別情報記憶部からその再印刷指示がなされた文書の識別情報を取得して、前記ネットワークを介して前記クライアント装置の前記印刷データ記憶部から該識別情報によって特定される印刷データを取得する印刷データ取得部とを備え、
前記入力部から再印刷指示がなされたときには、前記印刷データ取得部が取得した印刷データにに基づいて前記印刷制御部が印刷処理を実行するようにしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
ネットワークを介して接続されるクライアント装置と画像形成装置とからなる印刷システムによって、前記クライアント装置が送信した印刷データを前記画像形成装置が受信して印刷出力した後、同じ印刷データの再印刷を行うための再印刷方法であって、
前記クライアント装置が、
通常の印刷時に文書のアプリケーションデータから前記画像形成装置で印刷可能な印刷データを作成するとともに該印刷データを特定できる識別情報を作成するスッテプと、
その印刷データを蓄積記憶するステップと、
該印刷データを前記識別情報と共に前記ネットワークを介して前記画像形成装置へ送信するステップとを実行し、
前記画像形成装置が、
前記クライアント装置から送信された印刷データと識別情報とを受信したときには、該印刷データに基づいて印刷処理を行うステップと、
前記受信した識別情報を蓄積記憶するステップと、
再印刷指示がなされたときに、前記蓄積記憶した識別情報のうちの再印刷指示がなされた文書の識別情報によって、前記ネットワークを介して前記クライアント装置に蓄積記憶されている印刷データから該識別情報によって特定される印刷データを取得し、その取得した印刷データに基づいて印刷処理を行うステップとを実行する
ことを特徴とする再印刷方法。
【請求項16】
前記クライアント装置は、前記印刷データを蓄積記憶するステップで、前記印刷データを暗号化して蓄積記憶し、
前記画像形成装置は、前記再印刷指示がなされたときに印刷処理を行うステップで、前記クライアント装置から取得した印刷データが暗号化されている場合には、その印刷データを印刷処理する前に復号化すること特徴とする請求項15に記載の再印刷方法。
【請求項17】
ネットワークに接続されるクライアント装置のコンピュータに、
文書のアプリケーションデータから作成された印刷データを印刷データ記憶部に蓄積記憶させる機能と、
該印刷データを特定できる識別情報を作成する機能と、
前記印刷データを前記識別情報と共に前記ネットワークを介して画像形成装置へ送信する機能とを実現させるためのプログラム。
【請求項18】
ネットワークに接続される画像形成装置のコンピュータに、
クライアント装置から前記ネットワークを介して印刷データと識別情報とを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷制御部に印刷処理を実行させるとともに、前記受信した識別情報を識別情報記憶部に蓄積記憶させる機能と、
入力部から再印刷指示がなされたとき、前記識別情報記憶部からその再印刷指示がなされた文書の識別情報を取得して、前記ネットワークを介して前記クライアント装置から該識別情報によって特定される印刷データを取得する機能と、
その取得した印刷データに基づいて前記印刷制御部に印刷処理を実行させる機能とを実現させるためのプログラム。
【請求項19】
請求項17に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項20】
請求項18に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図3】
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【図4】
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【図14】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−223690(P2009−223690A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68430(P2008−68430)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】