説明

印刷ジョブ保持装置、認証印刷システム、印刷ジョブ管理方法

【課題】スプーラに印刷ジョブが長期にわたって保持され続ける状況を、印刷ジョブの削除によらずに回避することができる、新たな枠組みを提供する、
【解決手段】ユーザに対応づけて印刷ジョブをスプールするジョブ蓄積手段と、ユーザから取得した認証情報に基づいて該ユーザが認証された場合に、前記ジョブ蓄積手段から該認証されたユーザに対応する印刷ジョブを読み出し、印刷装置に送信する手段と、前記ジョブ蓄積手段によって印刷ジョブがスプールされたとき、該印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として、該印刷ジョブのスプール時を設定する手段と、対応する印刷ジョブが前記ジョブ蓄積手段にスプールされているユーザについて、該ユーザの蓄積基準時からの経過時間(ジョブ蓄積時間)を求める手段と、ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを通知する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプーラ等に保持された印刷ジョブに基づき印刷処理を実行する場合の、セキュリティを強化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷物からの情報漏洩(例えば、印刷物の盗難や盗み見、取り間違いなど)を防止する枠組みとして、認証デバイスを利用して認証できた者にのみ印刷を許可する認証印刷システムが知られている。例えば、特許文献1には、スプーラに認証印刷用の印刷データ(認証印刷ジョブ)を蓄積しておき、プリンタ装置から認証情報が送信されてきた場合に、対応する印刷ジョブをプリンタ装置に送信する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2004−118232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の枠組みは、印刷物からの情報漏洩に対しては有効と考えられるが、印刷ジョブからの情報漏洩、例えば、印刷ジョブを保持するスプーラに対して不正アクセスが行われ、その結果、印刷ジョブ自体がコピー等されて流出してしまうといった事態に対しては、これを防止することはできない。
【0004】
特に、ユーザが認証デバイスを利用して認証を受けないでいると、スプーラに印刷ジョブが長期にわたって保持され続けてしまうこととなり、印刷ジョブからの情報漏洩リスクはより高まると考えられる。
【0005】
このような問題に対し、スプーラにおいて印刷ジョブを保持してから一定時間経過した場合に、該印刷ジョブを削除することも考えられる。しかし、一旦、スプーラから印刷ジョブが削除されてしまうと、印刷を続行したいと考えるユーザは、自分の端末まで戻って印刷ジョブを再送信しなければならないため、不便を強いられることになる。
【0006】
そこで、本発明は、スプーラに印刷ジョブが長期にわたって保持され続ける状況を、印刷ジョブの削除によらずに回避することができる、新たな枠組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷ジョブ保持装置は、ユーザに対応づけて印刷ジョブをスプールするジョブ蓄積手段と、ユーザから取得した認証情報に基づいて該ユーザが認証された場合に、前記ジョブ蓄積手段から該認証されたユーザに対応する印刷ジョブを読み出し、該印刷ジョブを印刷装置に送信するジョブ送信手段と、前記ジョブ蓄積手段によって印刷ジョブがスプールされたとき、該印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として、該印刷ジョブのスプール時を設定する基準時設定手段と、対応する印刷ジョブが前記ジョブ蓄積手段にスプールされているユーザについて、該ユーザの蓄積基準時からの経過時間(ジョブ蓄積時間)を求める蓄積時間カウント手段と、ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを通知する蓄積ジョブ存在通知手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、印刷ジョブがスプールされたままとなっているユーザに対して該認証印刷ジョブに基づいて速やかに印刷を実行するよう促すことができ、その結果、印刷ジョブ保持装置に印刷ジョブが長期にわたって保持され続ける状況を、印刷ジョブの削除によらずに(従って、ユーザに印刷ジョブの再送信という負担をかけずに)、回避することが可能となる。
【0009】
好適には、前記蓄積ジョブ存在通知手段は、ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを示すメールを送信することを特徴とする。
【0010】
本発明の認証印刷システムは、本発明の印刷ジョブ保持装置と、印刷ジョブに基づいて印刷を実行する印刷装置と、ユーザ認証を行う認証ユニットとを備えた認証印刷システムであって、前記認証ユニットは、ユーザから取得した認証情報に基づいてユーザ認証を行う認証手段と、前記印刷ジョブ保持装置に、認証されたユーザの印刷ジョブ送信を指示するジョブ送信指示手段と、を備え、前記ジョブ送信手段は、前記認証ユニットから印刷ジョブ送信を指示された場合に、認証されたユーザに対応する印刷ジョブを前記印刷装置に送信することを特徴とする。
【0011】
本発明の印刷ジョブ管理方法は、ユーザに対応づけて印刷ジョブをスプールするジョブ蓄積工程と、ユーザから取得した認証情報に基づいて該ユーザが認証された場合に、スプールされている印刷ジョブのうち該認証されたユーザに対応する印刷ジョブを印刷装置に送信するジョブ送信工程と、を備えた印刷ジョブ管理方法であって、前記ジョブ蓄積工程によって印刷ジョブがスプールされたとき、該印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として、該印刷ジョブのスプール時を設定する基準時設定工程と、対応する印刷ジョブがスプールされているユーザについて、該ユーザの蓄積基準時からの経過時間(ジョブ蓄積時間)を求める蓄積時間カウント工程と、ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを通知する蓄積ジョブ存在通知工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の印刷ジョブ管理方法は、印刷ジョブ保持装置等の情報処理装置により実施することができるが、そのためのプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリ及び通信ネットワークなどの各種の媒体を通じてインストールまたはロードすることができる。
【0013】
なお、本明細書において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の手段や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば、スプーラに印刷ジョブが長期にわたって保持され続ける状況を、印刷ジョブの削除によらずに回避することができる、新たな枠組みを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態の認証印刷システム1の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、認証印刷システム1は、認証印刷ジョブを作成する端末装置10、認証印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行するプリンタ装置20、USBなどのデバイス接続インタフェースを介してプリンタ装置20に接続される認証デバイス100、認証デバイス100を介して入力された認証情報に基づいて認証処理を実行する認証サーバ30、認証印刷ジョブを保持するスプーラ40などを含んでいる。
【0016】
図に示すように、端末装置10、プリンタ装置20、認証サーバ30、スプーラ40は、通信ネットワークを介して互いに通信可能に構成されている。通信ネットワークは、LAN、インターネット、専用線、パケット通信網、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線、無線の両方を含んでいてよい。
【0017】
なお、図1では、端末装置10、プリンタ装置20、認証サーバ30、スプーラ40を1台ずつ記載しているが、設計に応じてそれぞれが1台以上となるように認証印刷システム1を構成してもよい。
【0018】
以下、各装置の構成を説明する。
【0019】
端末装置10は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、ユーザインタフェース、通信インタフェース、HDD等のハードウェアを備えて構成される(図2(a)参照)。
【0020】
端末装置10は、通常のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置と同様の機能を備える。例えば、端末装置10は、ユーザインタフェースを介して種々の情報の入出力を行う入出力手段11、他の装置との間で通信インタフェースを介して種々のデータを送受信する通信手段12、プリンタ装置を制御するプリンタドライバ手段13などを備えている(図2(b)参照)。これらの各手段は、端末装置10内のROMやRAM、HDD、外部の記憶媒体等に格納されるプログラムをCPUが実行することにより機能的に実現される。
【0021】
プリンタドライバ手段13は、プリンタ装置20、認証サーバ30及びスプーラ40による認証印刷に対応しており、通常のプリンタドライバと同様に、対応するプリンタ装置が印刷処理可能な形式で印刷ジョブを作成する機能を備える。
【0022】
プリンタ装置20は、通常のプリンタ装置と同様の構成を備える(図2(c)参照)。
【0023】
例えば、プリンタ装置20は、用紙をプリンタ装置内に供給する給紙機構、印字を行う印刷エンジン、及び用紙をプリンタ機外に排出する排紙機構等により構成される動力機構部を備える。印刷エンジンは、通常、紙送機構、キャリッジ機構、印刷ヘッドなどを含んで構成され、インクジェットプリンタや熱転写プリンタのように1文字単位で印刷するシリアルプリンタ、1行単位で印刷するラインプリンタ、ページ単位で印刷するページプリンタ等に対応する各種印刷エンジンを用いることができる。
【0024】
また例えば、プリンタ装置20は、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース、コンソールパネル等のユーザインタフェース等からなる情報処理部を備える。
【0025】
プリンタ装置20の情報処理部は、原則として従来のプリンタ装置の情報処理部と同様の機能を備える。例えば、印刷ジョブを受信する受信手段21、印刷ジョブを解析してラスタ形式の印刷イメージを1バンド分又は1ページ分生成してイメージバッファに格納し、所定単位分(例えば1パス分)の印刷イメージをイメージバッファから印刷エンジンに転送し、印刷エンジンを制御しながら印刷を実行する印刷制御手段22等を備えている。
【0026】
また、認証印刷装置としての機能手段、例えば、認証印刷実行希望ユーザのIDカードから認証デバイス100を利用してID情報を読み出すID読出手段23、認証印刷実行希望ユーザについて、該ユーザのID情報を含む認証リクエストを作成し、認証サーバ30に送信する認証リクエスト手段24、認証されたユーザ(認証ユーザ)に対応する認証印刷ジョブ送信リクエストを作成し、認証サーバ30に送信するジョブリクエスト手段25などを備えている(図2(d)参照)。IDカードは、ID情報(ユーザ名、ユーザID、社員番号など)が記憶されているものであれば、認証デバイス100の構成に応じて磁気カード、ICカードなど既存の態様から自由に選択することができる。
【0027】
なお、これらの各手段は、プリンタ装置20内のROMやRAM、外部の記憶媒体等に格納されるプログラムをCPUが実行することにより機能的に実現される。
【0028】
認証デバイス100は、例えば磁気カードリーダ、バーコードリーダ、RFIDリーダなどであり、設計に応じて既存の種々の認証デバイスを用いることができる。
【0029】
認証サーバ30は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、ユーザインタフェース、通信インタフェース、HDD等のハードウェアを備えて構成される(図3(a)参照)。
【0030】
認証サーバ30は、認証印刷に対応した通常の認証サーバ30と同様の機能、例えば、プリンタ装置20から送信される認証リクエストに基づいて認証処理を実行する認証手段31、プリンタ装置20から送信されるジョブ送信リクエストに基づいて、スプーラ40に対し、認証ユーザに対応する認証印刷ジョブのプリンタ装置20への送信を指示するジョブ送信指示手段32などを備える(図3(b)参照)。
【0031】
なお、これらの各手段は、認証サーバ30内のROMやRAM、外部の記憶媒体等に格納されるプログラムをCPUが実行することにより機能的に実現される。
【0032】
スプーラ40は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、ユーザインタフェース、通信インタフェース、HDD等のハードウェアを備えて構成される(図3(c)参照)。
【0033】
スプーラ40は、通常のスプーラと同様の機能、例えば、端末装置10から送信される認証印刷ジョブを受信し、これを認証印刷実行権限保持ユーザ(権限ユーザ)に対応づけてスプールする認証印刷ジョブ蓄積手段41、認証サーバ30から受け付けた認証印刷ジョブの送信指示に基づき、対応する認証印刷ジョブをプリンタ装置20に送信する認証印刷ジョブ提供手段42などを備える(図3(d)参照)。
【0034】
ただし、本実施形態のスプーラ40は、図3(d)に示すように、認証印刷ジョブ蓄積手段41によって印刷ジョブがスプールされたとき、該認証印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として、該認証印刷ジョブのスプール時を設定する基準時設定手段43、対応する印刷ジョブが認証印刷ジョブ蓄積手段41にスプールされているユーザについて、前記蓄積基準時からの経過時間(以下、「ジョブ蓄積時間」という)を求める蓄積時間カウント手段44、ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、認証印刷ジョブが蓄積されていることを通知する蓄積ジョブ存在通知手段45などを備える点で、従来の構成とは異なっている。
【0035】
なお、これらの各手段は、スプーラ40内のROMやRAM、外部の記憶媒体等に格納されるプログラムをCPUが実行することにより機能的に実現される。
【0036】
以下、図4〜図6に示すフローチャート等を参照して、認証印刷システム1の動作について説明する。なお、本明細書において、フローチャート等に示す各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0037】
(認証印刷ジョブ蓄積段階:図4)
認証印刷実行希望ユーザが、端末装置10により認証印刷ジョブを作成する場合、以下の認証印刷ジョブ蓄積処理が実行される。
【0038】
まず、端末装置10のプリンタドライバ手段13は、外部又は端末装置10上で動作しているアプリケーションプログラム等から、プリンタ装置20を指定した認証印刷要求を受け付けると(S100)、プリンタ装置20が解釈可能な所定のプリンタ制御言語に基づき認証印刷ジョブを作成し(S101)、これをスプーラ40に送信する(S102)。
【0039】
認証印刷ジョブには、例えば、ジョブID、出力先プリンタの機種情報、ジョブ作成ユーザのID情報、権限ユーザのID情報、ドキュメント名、印刷設定情報などの情報を含めることができる。権限ユーザはジョブ作成ユーザと異なっていてよく、また一つの認証印刷ジョブによって複数の権限ユーザを指定できるように構成してもよい。
【0040】
スプーラ40の認証印刷ジョブ蓄積手段41は、端末装置10(プリンタドライバ手段13)から認証印刷ジョブを受信すると(S103)、該認証印刷ジョブから権限ユーザのID情報などを抽出し、これらに対応づけて該認証印刷ジョブをHDD等に記憶する(スプールする)(S104)。
【0041】
次に、基準時設定手段43は、前記抽出したID情報に対応するユーザの蓄積基準時として、S104における認証印刷ジョブのスプール時(又は、これに準じる時)を設定する(設定データを作成し、HDD等に記憶する)(S105)。認証印刷ジョブがスプールされる都度、S105が実行されるため、複数の認証印刷ジョブがスプールされているユーザについては、蓄積基準時として、最後にスプールされた認証印刷ジョブのスプール時が設定されることになる。
【0042】
図7に、認証印刷ジョブ蓄積手段41が管理するスプールデータ及び蓄積基準時設定データのデータ構造例を模式的に示す。
【0043】
(認証印刷実行段階:図5)
プリンタ装置20において、認証印刷実行希望ユーザから認証印刷の実行指示を受け付けると、以下の認証印刷処理が実行される。
【0044】
まず、プリンタ装置20のID読出手段23は、認証印刷実行希望ユーザのIDカードから認証デバイス100を介してID情報を読み出す(S200)。ID読出手段23には、認証デバイス100のタイプに対応した従来構成を採用できる。
【0045】
次に、認証リクエスト手段24は、認証印刷実行希望ユーザについて、該ユーザのID情報を含む認証リクエストを作成し、認証サーバ30に送信する(S201)。
【0046】
認証サーバ30の認証手段31は、プリンタ装置20から送信される認証リクエストを受信すると、該認証リクエストに含まれるID情報に基づいて、該ID情報に対応するユーザが権限ユーザであるかどうかを判断する(認証処理を実行する)(S202)。
【0047】
認証手段31は、例えば、LDAP認証サービスを提供するディレクトリサーバとして実現することができる。また、IDカードからID情報を取得できたことをもってユーザ認証成功とする簡易な構成も考えることができる。
【0048】
次に、認証手段31は、判断結果をプリンタ装置20に送信する(S203)。
【0049】
プリンタ装置20の認証リクエスト手段24は、判断結果を受信すると、該判断結果が認証失敗を示す場合(ID情報に対応するユーザが権限ユーザであると認証されなかった場合)(S204:NO)、認証印刷処理を終了する。
【0050】
一方、該判断結果が認証成功を示す場合(ID情報に対応するユーザが権限ユーザであると認証できた場合)(S204:YES)、ジョブリクエスト手段25は、認証されたユーザ(認証ユーザ)のID情報を含む認証印刷ジョブ送信リクエストを作成し、認証サーバ30に送信する(S205)。
【0051】
認証サーバ30のジョブ送信指示手段32は、プリンタ装置20から送信される認証印刷ジョブ送信リクエストを受信すると、スプーラ40に対し、認証ユーザに対応する認証印刷ジョブのプリンタ装置20への送信を指示する(S206)。具体的には、認証印刷ジョブ送信リクエスト中のID情報(認証ユーザのID情報)を含む認証印刷ジョブ送信指示を作成し、スプーラ40に送信する。
【0052】
ここで、IDカードから読み出したID情報と、スプーラ40において認証印刷ジョブに対応づけているID情報とが異なるタイプである場合(例えば、スプーラ40では認証印刷ジョブを権限ユーザのユーザ名に対応づけているが、IDカードから読み出したID情報は権限ユーザの社員番号である場合)、ジョブ送信指示手段32は、同一ユーザに対応する種類の異なるID情報を予め対応づけたテーブルを参照して、スプーラ40において用いられているID情報を取得し、これを利用して認証印刷ジョブ送信指示を作成する。なお、かかるID情報の変換は、プリンタ装置20やスプーラ40において実行してもよい。
【0053】
スプーラ40の認証印刷ジョブ提供手段42は、認証サーバ30から認証印刷ジョブ送信指示を受信すると、該認証印刷ジョブ送信指示に基づき、対応する認証印刷ジョブをプリンタ装置20に送信する(S207)。
【0054】
具体的には、認証印刷ジョブ送信指示からID情報を抽出し、認証印刷ジョブ蓄積手段41を参照して該ID情報に対応する権限ユーザの認証印刷ジョブを検索し、対応する認証印刷ジョブが見つかった場合は、これを読み出してプリンタ装置20に送信する。この際、まず対応する認証印刷ジョブの一覧情報を作成してプリンタ装置20へ送信し、ユーザにその一覧情報に基づいて印刷を希望する認証印刷ジョブを選択させるように構成してもよい。
【0055】
また、プリンタ装置20への送信が終了した認証印刷ジョブを、所定のタイミング(例えば、プリンタ装置20から印刷終了通知を受け付けたタイミングなど)で、HDD等から削除する。更に、認証印刷ジョブが削除された結果、対応する認証印刷ジョブが認証印刷ジョブ蓄積手段41にスプールされていない状態となったユーザについて、該ユーザの蓄積基準時設定データをHDD等から削除する。
【0056】
プリンタ装置20では、受信手段21がスプーラ40からの認証印刷ジョブを受信すると、印刷制御手段22が、従来と同様に、該認証印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行する(S208)。すなわち、認証印刷ジョブを解析してラスタ形式の印刷イメージを1バンド分又は1ページ分生成してイメージバッファに格納し、認証印刷ジョブ中の制御コマンドに基づいて、所定単位分(例えば1パス分)の印刷イメージをイメージバッファから印刷エンジンに転送し、印刷エンジンを制御しながら印刷を実行する。これにより、認証印刷処理は終了する。
【0057】
(蓄積ジョブ存在通知段階:図6)
スプーラ40において、所定のタイミング(定期的なタイミング、認証印刷ジョブをスプールしたタイミング、認証印刷ジョブ送信指示を受信したタイミングなど)で、以下の蓄積ジョブ存在通知処理が実行される。
【0058】
スプーラ40の蓄積時間カウント手段44は、対応する認証印刷ジョブが認証印刷ジョブ蓄積手段41によってスプールされているユーザごとに、HDD等に記憶されている該ユーザの蓄積基準時設定データを読み出し、現時点から蓄積基準時を減算して、蓄積基準時からの経過時間(ジョブ蓄積時間)を求める(S300)。
【0059】
後述する蓄積基準時が再設定される場合を除き、上述したように、HDD等には、各ユーザの最後にスプールした認証印刷ジョブのスプール時が蓄積基準時として記憶されていることから、複数の認証印刷ジョブがスプールされているユーザについては、最後にスプールした認証印刷ジョブのスプール時を基準にジョブ蓄積時間が求められることになる。
【0060】
次に、蓄積ジョブ存在通知手段45は、ジョブ蓄積時間が所定の閾値(例えば、管理ユーザ等が予め設定した閾値)以上となっているユーザに対し、認証印刷ジョブがスプールされていることを通知する(S301〜S304)。
【0061】
まず、ジョブ蓄積時間が所定の閾値以上となっているユーザを検出し(S301)、該検出したユーザのID情報を含むメールアドレス取得リクエストを作成して、各ユーザのメールアドレスを管理する管理サーバに送信する(S302)。認証サーバ30がメールアドレスを管理している場合は、認証サーバ30に対して送信してもよい。
【0062】
メールアドレス管理サーバは、メールアドレス取得リクエストを受信すると、該メールアドレス取得リクエスト中のID情報に対応するメールアドレスをデータベースから取得し、該ID情報及び該取得したメールアドレスを含む返信情報を作成して、スプーラ40に送信する(S303)。図8(a)に、インターネットを介してスプーラ40とメールアドレス管理サーバとで通信する場合のメールアドレス取得リクエストのTCP/IPパケットの例を、図8(b)に、同じく返信情報のTCP/IPパケットの例を模式的に示す。
【0063】
蓄積ジョブ存在通知手段45は、メールアドレス管理サーバから返信情報を受信すると、該返信情報中のメールアドレスを利用して、前記検出したユーザに対し、認証印刷ジョブが一定時間以上、認証印刷ジョブ蓄積手段41にスプールされたままとなっていることを警告するメールを送信する(S304)。このために、蓄積ジョブ存在通知手段45は、通常のメーラーとしての機能を備えている。
【0064】
次に、蓄積ジョブ存在通知手段45は、前記警告メールを送信したユーザの蓄積基準時として、S304における警告メールの送信時(又は、これに準じる時)を設定する(HDD等に記憶された設定データを更新し、蓄積基準時を再設定する)(S305)。これにより、次に蓄積ジョブ存在通知処理が実行されたとき、警告メールを送信した時点からの経過時間がジョブ蓄積時間として測定されることになる。
【0065】
このように本実施形態では、認証印刷ジョブがスプールされたときに、対応するユーザの蓄積ジョブ通知基準時として、該認証印刷ジョブのスプール時を設定し、蓄積ジョブ存在通知処理を実行した際に、蓄積基準時からの経過時間が閾値以上となっているユーザに対して、スプールされた認証印刷ジョブが存在していることを通知する構成としているため、認証印刷ジョブがスプールされたままとなっているユーザに対して該認証印刷ジョブに基づいて速やかに印刷を実行するよう促すことができる。その結果、スプーラ40に認証印刷ジョブが長期にわたって保持され続ける状況を、認証印刷ジョブの削除によらずに(従って、ユーザに認証印刷ジョブの再送信という負担をかけずに)、回避することが可能となる。
【0066】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。例えば、上記実施形態では、印刷装置としてプリンタ装置を備える認証印刷システムについて説明したが、本発明は、複写機、ファクシミリ、複合機などの印刷装置を備える認証印刷システムに対しても適用可能である。
【0067】
また上記実施形態では、端末装置10、プリンタ装置20、認証サーバ30、スプーラ40を別体として説明しているが、いずれかの機能の一部又は全部を他の装置(上記10〜40以外の装置であってもよい)が備えるように構成してもよい。例えば、プリンタ装置20が認証印刷ジョブ蓄積手段41を備える構成としてもよい。
【0068】
また上記実施形態では、プリンタ装置20が認証サーバ30に対して認証リクエスト及び認証印刷ジョブ送信リクエストを送信する構成としているが、これらのリクエストをスプーラ40に送信する構成としてもよい。この場合、スプーラ40は、認証リクエストを受信すると、該認証リクエストに基づいて認証サーバ30に認証を依頼し、その判断結果をプリンタ装置20に送信する。またスプーラ40の認証印刷ジョブ提供手段42は、認証印刷ジョブ送信リクエストを受信すると、認証ユーザに対応する認証印刷ジョブをプリンタ装置20に送信する。
【0069】
また例えば、蓄積時間カウント手段44として、対応する認証印刷ジョブがスプールされているユーザごとに、蓄積基準時からの経過時間を測定する通知用タイマを設け、基準時設定手段43が、認証印刷ジョブがスプールされたときに、該認証印刷ジョブに対応するユーザの通知用タイマを初期化する(再スタートする)ことで、該認証印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として該印刷ジョブのスプール時を設定する構成としてもよい。この場合、蓄積ジョブ存在通知手段45は、各ユーザの通知用タイマを参照することで、蓄積基準時からの経過時間を直接、求めることができる。なお、S305における蓄積基準時の再設定は、通知用タイマを初期化すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】認証印刷システム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】端末装置10、プリンタ装置20の構成を示すブロック図である。
【図3】認証サーバ30、スプーラ40の構成を示すブロック図である。
【図4】認証印刷ジョブ蓄積段階を説明するためのフローチャートである。
【図5】認証印刷実行段階を説明するためのフローチャートである。
【図6】蓄積ジョブ存在通知段階を説明するためのフローチャートである。
【図7】認証印刷ジョブ蓄積手段41が管理するスプールデータ及び蓄積基準時設定データのデータ構造例を示す図である。
【図8】メールアドレス取得リクエスト及び返信情報のTCP/IPパケットの例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 認証印刷システム、10 端末装置、11 入出力手段、12 通信手段、13 プリンタドライバ手段、20 プリンタ装置、21 受信手段、22 印刷制御手段、23 ID読出手段、24 認証リクエスト手段、25 ジョブリクエスト手段、30 認証サーバ、31 認証手段、32 ジョブ送信指示手段、40 スプーラ、41 認証印刷ジョブ蓄積手段、42 認証印刷ジョブ提供手段、43 基準時設定手段、44 蓄積時間カウント手段、45 蓄積ジョブ存在通知手段45、100 認証デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対応づけて印刷ジョブをスプールするジョブ蓄積手段と、
ユーザから取得した認証情報に基づいて該ユーザが認証された場合に、前記ジョブ蓄積手段から該認証されたユーザに対応する印刷ジョブを読み出し、該印刷ジョブを印刷装置に送信するジョブ送信手段と、
前記ジョブ蓄積手段によって印刷ジョブがスプールされたとき、該印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として、該印刷ジョブのスプール時を設定する基準時設定手段と、
対応する印刷ジョブが前記ジョブ蓄積手段にスプールされているユーザについて、該ユーザの蓄積基準時からの経過時間(以下、「ジョブ蓄積時間」という)を求める蓄積時間カウント手段と、
ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを通知する蓄積ジョブ存在通知手段と、を備えることを特徴とする印刷ジョブ保持装置。
【請求項2】
前記蓄積ジョブ存在通知手段は、ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを示すメールを送信することを特徴とする請求項1記載の印刷ジョブ保持装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の印刷ジョブ保持装置と、印刷ジョブに基づいて印刷を実行する印刷装置と、ユーザ認証を行う認証ユニットとを備えた認証印刷システムであって、
前記認証ユニットは、
ユーザから取得した認証情報に基づいてユーザ認証を行う認証手段と、
前記印刷ジョブ保持装置に、認証されたユーザの印刷ジョブ送信を指示するジョブ送信指示手段と、を備え、
前記ジョブ送信手段は、前記認証ユニットから印刷ジョブ送信を指示された場合に、認証されたユーザに対応する印刷ジョブを前記印刷装置に送信することを特徴とする認証印刷システム。
【請求項4】
ユーザに対応づけて印刷ジョブをスプールするジョブ蓄積工程と、
ユーザから取得した認証情報に基づいて該ユーザが認証された場合に、スプールされている印刷ジョブのうち該認証されたユーザに対応する印刷ジョブを印刷装置に送信するジョブ送信工程と、を備えた印刷ジョブ管理方法であって、
前記ジョブ蓄積工程によって印刷ジョブがスプールされたとき、該印刷ジョブに対応するユーザの蓄積基準時として、該印刷ジョブのスプール時を設定する基準時設定工程と、
対応する印刷ジョブがスプールされているユーザについて、該ユーザの蓄積基準時からの経過時間(以下、「ジョブ蓄積時間」という)を求める蓄積時間カウント工程と、
ジョブ蓄積時間が閾値以上となっているユーザに対し、印刷ジョブがスプールされていることを通知する蓄積ジョブ存在通知工程と、を備えることを特徴とする印刷ジョブ管理方法。
【請求項5】
請求項4記載の印刷ジョブ管理方法をコンピュータで実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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